第7回アメリカ研修旅行報告-RlT・NTlD・GALLAUDET大学のキャンパス配置・教育の概要について- 聴覚部建築工学科 萩田 秋雄 要旨:1998年3月22日から3月31日まで、アメリカのロチェスターエ科大学(RIT)、国立ろう工科大学(NTID)、ギャローデット大学(Gallaudet university)の視察研修旅行に参加した。 本稿では、この視察の概要、各大学のキャンパス配置、教育の概要について報告する。 キーワード:アメリカ研修旅行、ロチェスターエ科大学(RIT)、国立ろう工科大学(NTID)、ギャローデット大学、キャンパス配置、学部学科構成、学位 Keyword:Study tour to USA、 ROCHESTER INSTITUTE OF TECHNOLOGY、 NATIONAL TECHNlCAL、INSTITUTE FOR THE DEAF、 GALLAUDET UNIVERSITY、Campas Planning、 Colleges and Schools Degrees 1.はじめに  1998年3月22日から3月31日までの10日間、アメリカのろう教育の高等教育機関の視察を実施した。視察対象先はロチェスター工科大学(RIT)、国立ろう工科大学(NTID)、ギャローデット大学である。本学学生20名(デザイン学科1名、建築工学科8名、電子情報学科電子専攻2名、情報工学専攻9名)、教官4名、事務官1名の計25名の参加であった。各視察先の研修内容はきわめて多岐にわたる内容で、教官個々人・学生それぞれの希望にきめ細かく対応して頂いた。その主な内容は以下の通りである。 [第7回アメリカ研修旅行主な視察研修内容] 1998年3月22日 RIT(ロチエスターエ科大学) NTID(国立ろう工科大学)訪問 *ディナー:ワトソンダイニングホール(全員) 1998年3月23日 *挨拶及びNTIDの概要説明(全員) *オリエンテーション・スケジュール説明(全員) *NTIDリンドン・バインズ・ジョンソンピル視察(全員) *RITキャンパス視察(全員) *TCT(筑波技術短期大学)卒業生湯山君(RIT情報工学1年生)宅訪問(学生) *歓迎レセプション:NTID学長主催(全員) *ロックベンチャー(岩登り)体験(全員) 1998年3月24日 *建築コース授業見学マッピング、建築設計授業(建築工学科教官・学生) *電子・情報コース:NTID応用コンピューター技術視察(電子情報工学科教官・学生) *コンピュータグラフィック授業見学(学生・教官) *Academic writing3・授業見学(教官) *学生に対するFinancial serviceについての説明(職員) *英語授業の構成・カリキュラムに関する説明(教官) *建築コースの先生方とのミーテング(建築工学科教官・学生) *Non-fiction reading2.授業見学(教官) *Audiologist and Coordinater of Accessibility programsに関する説明(教官) *電子印刷・出版システム見学(全員) *学生寮見学(学生) *American sign language授業見学(学生) *雇用センターに関する説明(職員) *TCTとNTID間のインターネットによる交流(全員) *フイッシャー先生宅ホームパーテイ(教官) *ショッピング(学生) *学生寮訪問・交流(学生) 1998年3月25日 *建築コース、CADによる設計授業見学(建築工学科教官・学生) *NTID Learning centerの視察 スマートルームでの授業の説明(全員) *学生へルスセンターに関する説明(職員) *Fingerspelling and numbers授業見学(教官) *NTID Imaging artコース見学(デザイン・建築工学科学生・教官) *ワイナリー見学(ロチェスター郊外)(教官) *Business/Computer Science Support Class/Lab見学(全員) *デカロ先生主催ディナー(全員) *パフォーマンス:Michel Thomasを偲ぶ、衣装あわせリハーサル見学(全員) *学生寮訪問・交流・ゲームその他(学生) 1998年3月26日 *ナイヤガラ見学(全員) 1998年3月27日 GALLAUDET大学訪問 *留学生センター説明(全員) *英語学校説明(全員) *ギャローデット大学歴史的建物視察(全員) *学生センター昼食 *ろう学校幼稚部・小中学部・高等部視察(全員) *留学生寮視察(全員) *日本人留学生他との交流、TCT卒業生早川君(G大2年:Computer Science) 他の日本人留学生と交流(全員) 1998年3月28日 *ワシントン見学(全員) 1998年3月29日 *ニューヨーク見学(全員) 2.ロチェスター工科大学  ロチェスターエ科大学の現在にいたる歴史の概要は以下の通りである(文献1)。 1803年ナサニエール・ロチェスター(Nathaniel Rocbester:ロチェスター市の開発者)現在のロチェスター市街地に当たるところの土地を購入、1811年から売り出す。 1825年アーリー運河を開発、ロチェスター交易地としてだんだんと発展 1826年フランクリン大学(Franklin Institute)設立 1829年ナサニエール・ロチェスター、学術協会(The Athenaeum)設立 1838年ロチェスター学術協会・若者協会(Rochester Athenaeum and Young Men's Association)Henry O Reilly設立 1847年ロチェスター学術協会・機械工学協会(Rochester Athenaeum and Mechanics Association)William A. Reynolds Corinthian Hall設立 1891年ロチェスター学術・機械工科大学(The Rochester Athenaeum and Mechanics Institute)設立 1944年大学名をロチェスターエ科大学(Rochester Institute of Technology)に変更 1968年メインキャンパスを市街地から現キャンパスへ移転  以上の歴史に見るように、ロチェスター市自体が開発者の名前をとって名づけられた都市であり、ロチェスターエ科大学は、その開発の歴史のなかで作られたさまざまな学術組織が、統合して形成されたものである。  1998年U.S.News&World Reportによる大学ランキングによると、地域総合大学(Regional Universities)北部地区(Northern地区)上位枝にランクされており(総合点:93.3、学術面の評価:2位、学生の質:10位、教授陣の充実度:36位、教育予算:4位、在学生の満足度:44位、卒業生の満足度:62位)、この地域の中心大学として、地域に根ざした大学として発展してきたといえよう。 3.国立ろう工科大学(NTID)の成立経過  こうした設立過程をとったRITという大学の一部として国立ろう工科大学(NTID)が設立されたわけであるが、その経過の概要は以下の通りである(文献1)。  アメリカのジョンソン大統領が、Public Low89~36に1965年署名、それをうけて、1965年聴覚障害学生のための単科大学レベルの技術大学設立に関する勧告グループ(National Advisory Group to establish an institute for college-level technical training of deaf students connected with an exsiting college or university)が設置された。つづいてろう者のための国立技術大学法(National Technical Institute of the Deaf Act)が作られ、1966年委員会チームによる数度の調査の結果、雇用機会があること、すばらしいろう教育プロフラムの提示、ろう問題に対する深い理解、技術教育の蓄積、ロチェスターろう学校(the Rochester School for the Deaf)の存在などの理由から、RITにNTIDを設立することが選択された。1966年10月、RITにNTIDが併設・設立され、1969年はじめて70人のろう学生が入学し現在に至っている。 4.ロチェスターエ科大学の構成と取得学位  ロチェスター工科大学は8つのカレッジと、その下に多くの学部・履修プログラムが用意されている。この場合のカレッジは単科大学の意味で、取得学位の内容は、履修証明(Certification)、日本の準学士と考えられるもの(Diploma、AA、AS、AAS、AOS:2~4年)、学士と考えられるもの(BS、BFA、B.Tech:4~6年)、修士とかんがえられるもの(MBA、ME、MFA、MS、MST)、学術博士などである。大学の種類、学部構成は以下の通りである。(文献2) 応用科学・工学大学 College of Applied Science&Technology コンピュータ科学・情報工学部 School of Computer Engineering Technology&Information Technology 工学技術学部 School of Engineering Technology 食品学部 School of Food ホテル学部 School of Hotel 旅行管理学部 School of Travel Management 商業大学 College of Business 生涯教育大学 College of Continuing Education 工科大学 College of Engineering 映像芸術・科学大学 College of Imaging Arts and Sciences アメリカエ芸学部 School For American Craftsmen 芸術・デザイン学部 School of Arts and Designs 写真芸術・科学部 School of Photographic Arts and Sciences 印刷管理・科学部 School of Printing Management and Sciences 映像科学センター Center for Imaging Sciences 一般教養大学 College of Liberal Arts 科学大学 College of Sciences 国立ろう工科大学 National Technical Institute for the Deaf RITで取得できる学位、履修年限。大学・学部によって多様な履修方法がある。 *Certificate:Certification 2年間 *Diploma:Diploma 3年間 *AA:Associate in Arts *AS:Associate in Science *AAS Degree:Associate in Applied Science Degree4年間 *AOS Degree:Associate in Occupational Studies Degree3年間、2年間 *BS:Bachelor of Science5年間、4,6年間 *BFA:Bachelor of Fine Arts4年間 *BTech:Bachelor of Technology5年間、4年間 *MBA:Master of Business Administration *ME:Master of Engineering *MFA:Master of Fine Arts *MS:Master of Science *MST:Master of Science for teachers *phD:the nation's only doctor program in imaging science 映像科学学術博士 NTIDの構成と取得学位は以下の通りである。(資格と履修年数:略称) *Certificate:Certification2年間:Cert *Diploma:Diploma3年間:Dip *AASDegree:Associate in Applied Science Degree 3年間:AAS *AOSDegree:Associate in Occupational Studies Degree 3年間:AOS ビジネスキャリア学部 School of Business Careers 応用会計 Applied Accounting :Dip/AAS 商業 Business Occupations :Cert 商業技術 Business Technology :AOS オフィス技術 Office Technology :Dip/AAS コンピュータキャリア Computer Careers 応用コンピュータ技術:Cert/Dip/AAS Applied Computer Technology 科学・工学キャリア学部 School of Sciences and Engineering Careers 応用科学/健康関連職業 Applied Science/Alied Health Careers 医学実験技術 Medical Laboratory Technology:AAS 医療事務技術 Medical Record Technology :AAS 眼科光学みがき技術 Ophthalmic Optical Finishing Technology :Cert/Dip/AOS/AAS 工学技術キャリア Engineering Technology Careers 職業進路教育・調査1年間体験コース Career Orientation and Exploration Year Experience コース共通必修が多い 建設工学 Construction Technologies 建築製図 Architectural Drafting :Dip 建築工学 Architectural Technology:Dip/AAS 土木工学 Civil Technology:AAS 電子機械工学 Electromechanical Technology:AAS 工業工学 Industrial Technologies 工業製図 Industrial Drafting :Dip 工業製図工学 Industrial Drafting Technology:AAS 生産プロセス工学 Manufacturing Processes Technology:AOS 視覚コミュニケーション学部 School of Visual Communications 応用芸術キャリア Applied Art Careers :Dip 応用芸術・CG:AAS Applied Art&Computer Graphics 写真/メディアエ学キャリア :Dip/AAS Photo/Media Technology Careers 注文ラボラトリーサービス:Dip/AAS Custom Laboratory Services メディア生産オプション:Dip/AAS Media Production Option 印刷生産工学キャリア Printing Production Technology Careers 印刷生産工学:Cert/Dip/AAS/AOS Printing Production Technology 学士前学習 Pre-Baccalaureate Studies 犯罪裁判 Criminal Justice 工学 Engineering 科学 Science ソーシャルワーク Social Work 教育通訳 Educational Interpreting:AAS(2年間)  この他に全学共通のプログラムとして、C.O.R.E Yearexperiance:職業教育プログラムやCoopertive educat ion and Placement:職業教育プログラム+学外実習十学内での実労働プログラムという、充実した教育プログラムを持っている。ろう及び難聴者学生数おおよそ1100名は約11000名の健聴学生と共に学んでいる。 5.R1Tのキャンパス配置・NTIDの平面図  RITのキャンパス配置は図1の通りである。ロチェスターは、ニューヨーク州第3の都市で、大学の敷地は市の郊外地で、広さは1300エーカーである。 またNTIDの平面図は図2~4の通りである。 6.ギャローデット大学の歴史  ギャローデット大学は以下のような歴史的経過をたどり設立された、聾者の大学である。 1857年コロンビア盲ろう唖大学(Columbialnstitute for the Instruction of the Deaf and Dumband the Blin.)設立 1864年国立聾唖大学(the National College for the Deaf and Dumb)設立 1865年視覚障害者はマリーランド大学(Maryland Institution)に移転 国立聾唖大学(The National Deafmute College)設立 1885年小学部(The Primary Department)が大学キャンパスに移転:Kendall School l894年ギャローデット大学(Gallaudet College) 1969年モデルろう中学校(The Model Secondary School for the Deaf)開設 1970年ケンダル学校(Kendall School)がケンダルデモンストレーション小学校(The Kendall Demonstration Elementary School)に認定される。 1986年ギャローデット総合大学(Gallaudet university)となる。 7.ギヤローデツト大学の概要(文献3)  「ギャローデット大学-卓越した伝統-」という大学のパンフレットによって、大学の概要を紹介する。 *ギャローデットの概要  ギャローデット大学は広領域の学問と研究、公共サービスの提供を通して、ろう者と難聴者を対象とした私立の多目的な教育施設とリソースセンターを持った大学である。ギャローデット大学は、1984年アブラハムリンカーン大統領によって学位の授与が認められ、議会は1986年ギャローデットをユニバーシティ(総合大学)として認可した。1988年大学理事会はギャローデット大学の最初のろう者の学長としてLキングジョーダン博士を指名した。  今日、2000人以上のろうおよび難聴者の学生が学位のためのプログラムに登録している。ギャローデットのキャンパスは、文化的にも歴史的にも豊かな教育環境を有している首都ワシントンDCに位置している。ワシントン北東のケンドルグリーンの99エーカーのキャンパスは長い歴史とろう者の豊かな文化を有している。  大学は人間の知性の発達に必要な芸術と科学の教育の提供を確約している。またろう者と難聴者個々人の人生を高める目的をもった研究を行い、ろう者と難聴者、その家族、友人たち、彼らと共に働く専門家たちを支援することを確約している。 *教育  ギャローデット大学は多様な独特な学習機会を通して質の高い教育を提供している。ギャローデット大学はろう者及び難聴者学生に限って計画された世界でも唯一の教養大学として広く知られている。教官、職員そして教室の内外をとわず学生間のコミュニケーションは、手話及び読み書きの英語を両方とも使用している。学生は学内生活のあらゆることにフルに参加でき、その結果として教養教育の目標である幅の広い総合的な教育と体験をすることができる。近年ギャローデット大学には231人の教授がおり、その59%の人は最高学位を有し、39%の人は聴覚に障害を持つ人である。 *教育課程  大学には50以上の学部と大学院の教育課程がある。そして以下の学校で、BA、BS、SMA、MS、MS WMEd、EdS、そしてphDの学位を獲得できる。  大学・学部構成は以下の通り。 芸術・科学大学 College of Arts and Sciences コミュニケーション学部 School of Communiication 教育・人文科学部 Scool of Education and Human Services 経営学部 Scool of Management 学部学習部 School of Undergraduate Studies 大学院 The Graduate School 生涯教育大学 College for Continuing Education  ギャローデット大学の大学院は、健聴者・聴覚障害者共に入学できる。 *学生数 1996年秋1344:学部学生、 575:大学院学生 114:手話専門学習 2033:総数 *大学前教育(国の委任プログラム) モデルろうセカンダリー学校(高等学校) 生徒数300人全米対象 ケンダルデモンストレーション小中学校 生徒数200人 ワシントンDCメトロポリタン地域対象 *英語学校(ELL) 留学ろう学生のための第2言語としての英語学校 *交換・訪問学生 オハイオ州オバーリンカレッジ、西マリーランドカレッジとの交換・訪問学習による単位認定、ドイツとの教職員・学生の交換留学制度 他大学からの2セメスターまでの学生の受け入れ *優等生プログラム 学問的に能力のある学部学生に対する、潜在能力を最大限に理解させる厳しく激励的で挑戦的なカリキュラムをもつ教育プログラム *外国研究 大学の教官は世界各国の歴史、政府、芸術、言語、文化を調査しているグループを指導している。学生はこうした国々のろう学生と交流すると大学の単位を獲得できる。 *大学連合 ワシントン首都圏エリア大学連合への参加:10総合 大学、2単科大学 *大学教育アドバイス&職業センター *アメリカ手話技能センター *経済的支援 *学生生活/諸活動  アジア太平洋協会、黒人デフ学生ユニオン、ギャローデットダンスコミュニテイ、ギリシャ協会、ギャローデットヒスパニック協会、国際学生クラブ、決して遅くないクラブ(Never-too-late Club)、コンサート、劇場活動、字幕フイルム、音楽パフォーマンス、その他の文化的・教育的イベント *授業料と報酬秋/春1996-1997 授業料(アメリカ人学生) $5610 寄宿舎部屋代(2人部屋) $3575 食事(21ミールプラン) $2695 ユニット/健康管理費 $800 総計 $12680 *大学図書館 世界中のろう関係コレクション、ワシントン地区大学図書館ネットワーク(400万冊以上の蔵書目録) *同窓会 *生涯教育大学 生涯教育クラス、延長大学院コース、ワークショプ専門教育セミナー、会議、電話相談、消費者教育、上級生寄宿舎プログラム、雇用への挑戦プログラム、ビジネス文書などのプログラムの提供 *地方センター 全米5111の単科大学、コミュニティカレッジとの連携のための地方センター *ケロッグ相談センター 大小の会議室、理事会室、ゲスト宿泊室、電話相談等 *ろう国際センター 交換留学、国際研修プログラム、訓練セミナー、学会 共同研究など *ギャローデット研究所 ろう関係研究に関する国際的に認められた研究所、ろう教育における教育・コミュニケーション実践、子供の発達実践、遺伝学、ろう消費者の利益となる技術などの研究 *国立ろう情報センター 全米及び全世界の聴覚障害者およびそのあらゆる関係者に対する情報提供 *印刷&教材 Gallaudettoday、Previewの発行、書籍の発刊、視聴覚教材の作成、その他ギフト用品、Perspective(教師向けジャーナル)、World Around You(学生向け雑誌)の発行 *手話プログラム 全米の人々に対する手話教育、サマーコースの開設は生まれつきの手話使用者に強い相互の関係を提供するアメリカ手話を勉強する機会を提供している。 *技術支援 学生・教職員に対するコンンピューターなどの新しい機器使用の支援 *来訪者センター 年間1000人以上の来訪者 マルチメディアを使ったろうについての展示 8ギヤローデット大学のキャンパス配置(文献4)  ギャローデット大学のキャンパス配置は図5の通りである。 9.おわりに  以上、ここでは、RIT、NTID、Gallaudet大学の概要を示したが、アメリカの聴覚障害者に対する高等教育の現状を見るときわめて参考となるシステムとなっていることを感じる。  第1に障害者に対する高等教育に対する充実した設備・人員配置である。授業に対する手話通訳者の派遣その他の情報保障のみならず、ラーニングセンターなどの勉学保障の充実度はきわめてレベルが高いものがある。  第2には学生個々人の適性・可能性を伸ばすための選択性の高い.充実した大学・学部・コースのカリキュラムの多様な在り方である。NTIDにおける聴覚障害者を対象としたコース・カリキュラムの設定のみならず、RITでの授業への参加、更にはRITへの進学の保障と極めて柔軟なシステムをとっている。また工科系大学とはいえ、アート、経営学、商業その他の幅広いコースを設定しており、学生の適性に応じた選択ができるようになっている。  第3には、希望すれば基本的に入れるというユニバーサルな大学となっており、授業も極めてわかりやすいものにあらゆる工夫がなされていること、また学習支援システムが充実していること(ラーニングセンター、学習相談センターなど)、実学的な教育が重視されていることなど、学生の可能性を伸ばすシステムとなっていることである。しかし単位取得などは比較的厳しく、卒業も簡単ではなく、障害を持つというハンデキャップに対しては、そのハンディキャップをおぎなう仕組みはつくり教育の機会平等は保障するが、スタートラインにたてば厳しい競争があるというシステムとなっている。  こうしたアメリカの教育システムは今後のわが国の聴覚障害者の高等教育の在り方に極めて大きな示唆を示していると考えられる。 参考文献 1.DANER.GORDON:ROCHESTER INSTITUTE OF TECHNOLOGY Industrial Development and Educational Innovation in an American City 1982 THE EDWIN MELLEN PRESS 2.RIT General Information&Undergraduate Program 1992‐93 3.GALLAUDET UNIVERSITY A TRADITION OF EXCELLENCE 4.GALLAUDET UNIVERSITY Self-Guided Campus Tour Summary:This is a report on the 7th study tour to the university&Colleges for the deaf and hard hearing students in USA promoted by Tsukuba College of Technology, and mainly this report refers to the outline,Colleges&Schools, Campas planning, degrees of the Rochester Institute of Technology and National Technical Institute for the Deaf, Gallaudet University in USA. 図2 NTID(国立ろう工科大学)建物平面図(1階) 図3 NTID(国立ろう工科大学)建物平面図(2階) 図4 NTID(国立ろう工科大学)建物平面図(3階) 図5 GALLAUDET(ギャローデット)大学キャンパス配置図