公開講座「パソコンを利用した点訳入門」アンケートから 宮川 正弘,栗原 亨,斎藤 玲子,長岡 英司,三宅 輝久,遠藤 純子,辰巳 公子* (筑波技術短期大学視覚部情報処理学科) *点訳アシスタント 要旨 表記2回目の公開講座概要を記し,対する受講者の希望,満足度,感想についてのアンケートを分析した。受講者は「点訳の技術を向上させたい」人と「パソコンを点訳に使ってみたい」人の2者に分かれると思われる。点字に対する共通の興味を尊重しつつ,今後はこの2者に対応した講座あるいは講習会を開催するのが地域交流の点からも望ましいと思われる。 キーワード:点字,点訳,公開講座,パソコン,地域交流 1.はじめに目的と受講者  表記タイトルでの公開講座は2回目'1である。前回の結果を踏まえ講座の目的は, 1.点字について広く知っていただく, 2.フリーソフトBASE2)を用いた点訳技術の入門, を目指した.合わせて本学の活動についても理解を深めてもらうこととした。講座に満足してもらい,点訳ボランティア志望へのきっかけにもなることが講座開設の目標であった。1998年1月に細目と担当者を決め,直前に配布資料の印刷製本とソフト(BASE, TDC, EXTRA, Ebra)のインストールを行った。  応募者37名はつくば市内(29)それ以外(8)であり,男性1人以外は全て女性で,職業は公務員(32才),会社員(29,35,38),団体職員(46),教師(46),専門学校生(43)以外は主婦(29名)とあった。年齢層は27-29(3人),30-39(11人),40-49(16人),50-56(6人),記載無し(1人)であった。  この中から16名(男性1,女性15)を無作為に選んだ(龍ヶ崎市,水海道市,茎崎町から各1名,残りはつくば市居住である)。パソコンが自宅にある方はNEC(6),富士通(1),マツキントッシュ(5)である。勤め先にパソコンがある方が他に3名であった。 2.講座の内容  講座は7月6日(月)-10日(金)10:00-12:00 5日間延べ10時間行った。下表に講座の内容を示す。講義を主体とした1日目を除き,残りの日は主講師を一人として,残りの講師全員が点訳実習に対応した。最終日には修了証書を手渡し,アンケートに記載していただいた。 1日目 点字と視覚障害 2日目 DOSの基本操作 3日目 BASE基本操作,課題 4日目 BASE応用:環境設定,課題入力 5日目 墨字と点字の印刷,課題による達成度の評価,自動点訳入門 3.受講者の感想-アンケートから-  受講者に対し,1.受講の目的と達成度,2.点字およびパソコンの経験程度,3.講座の期間,難易度,テーマについての興味の度合い,について答えてもらった。以下に,その集計結果を示し若干の考察を行う。 3.1受講目的と満足度 点字の習得 4 点字処理ソフトの習得 11 習得というよりも点字の世界を知りたかった。 1 ソフトを使って(点字を処理)してみたかったという立場であろう。目的の達成度については, 十分満足 2 まあ満足 10 不満が残った 3 3.2点字とパソコンの経験 点字に経験なし 10 点字学習経験有り 5  点字の学習経験は,高校生の時の校内のボランティア活動2,自分で点字教材をそろえた(が身につかなかった)1,その他2である。 パソコンの利用経験については, ほとんどない 5 ワープロ使用 5 日常的に使用 5  パソコン使用の場面は,統計処理,Eメール,図表作成,和文・英文作成,ワープロであった。 3.3期間 適切である 9 その他 6 その他を答えた人の意見は もう少し日数があるほうが良かったと思う。 2 週末をはさんで欲しかった。 1 もっとじっくりと勉強したかったが、入門として期間、時間は適切かもしれない。 1 初めて習う場合は時間が短すぎたように思われます。 1 7-10日ぐらいはほしい。 1 と分散しているので,これは主催側の都合で決めて,以後の勉強の道を示すことで良いと思われる。 3.4テーマについての反応  講座の難易度に対する反応は やさしい 0 適度 8 難しい 7 である。この程度で良いという事であろう。テーマ毎についての反応は以下の通り テーマ 良い 不適切 点字についての話(1日目) 12 1 DOSコマンド(2日目) 13 0 点字ソフトBASE(3-4日目) 12 0 自動点訳ソフト(5日目) 11 1  合計が15に満たないのは無印である。3日目が不適切で4日目が良いとしたのが1ある。 4.おわりに  表記公開講座についての受講者の評価・感想をアンケートからまとめた。本学の活動についての理解を広く社会に求める立場からも,受講者の意図を尊重した講座開設を心がけたいと思う。 謝辞  受講しアンケートにご協力いただいた16名の方にお礼を申し上げます。また小林 真氏にはパソコンの準備等多大のご協力をお願いしました。 参考文献 1)伊奈 論:「公開講座「パソコンを利用した点訳入門」の概要と結果」,筑波技術短期大学テクノレポート,4巻,205-209,1998 2)清原 定信:BASE Ver、1.60(フリーソフト),無量寺出版所,1996. 付録(受講者の感想) 最も役立ったこと ●点字を読む人生も大変だが点字を作成する側も大変なことだとよくわかった。 ●入り口に立ったというかんじです。 ●点字を点訳する上で何が大切かが改めてわかったこと。 ●点字が生まれた時代や背景、点字コードの思想などの講義が聞けてよかった。 ●パソコンのコマンドが少し理解できた。 ●点字について少しは認識できた事。 ●BASEが少し理解できた。 ●点字エディターが便利、障害者に関する知識がすこし深まった。 ●点字の規則を知り、覚えられるものかもしれないと思った。 ●点字の文には点字の文の書き方があるということ(分かち書きなど)。 ●パソコンでの点訳について学べたこと、今後の活動の方向が見えたこと。 ●MS DOSを少し知ることが出来た。 ●BASEの活用方法を知った。 ●役に立てられるかどうかは今後の課題です。 最もおもしろかったこと ●点訳の世界に触れてよかった。 ●点字の成り立ちなどの話。 ●自分が入力した文章が墨字と点字で印刷できたこと。 ●実習、入力、印刷など。 ●点字を実際に入力し、打ち出された自分の文章が見られた事。 ●休み時間にホームページリーダーをよんでいらっしゃる学生さんに接することができたこと。 ●DOSコマンド。 ●点字のなりたち。 ●パソコン操作。 ●全て。 ●例文(課題)の入力。 ●フランスでのお話。 全体についての感想 ●難読症の子にどう読みを教えるかという点でいいヒントを得た。 ●もう少し勉強したかったです。Eメールも勉強したかったです。 ●私の場合、基本になるパソコンの使い方から勉強しないと、この講座は無理があった。 ●全盲の人が減っているとのことなので、それでも点字図書が不足しているのかどうか知りたいと思った。 ●目の見えない子に数の概念をどう教えるかという点でいいヒントを得た。 ●点訳法を知らないと使えないことがわかりました(単に文章を打ち込めば自動的に約束事も含めて点訳できると思っていましたので)。この期間では短すぎると思います。 ●私にとっては非常に難しい内容で、自分のしている事が全くわかりませんでした(パソコンは一度も扱ったことがありません)。又、パソコンを使ったことのある人にとっては、点字がわからなければ文章作成はできないのではないでしょうか。と言う訳で対象がはっきりしない分、中途半端な企画だったように思います。時間をかけて一からパソコンができたら面白かったと思います。このような講座を受ける方はそれなりの目的を持ってきていると思いますので考慮して頂けたらと思います。 ●パソコンに熟知している先生の説明は良くわかるが。 ●私は点字は少し勉強したことがあるが、コンピュータには不案内でした。逆の方もいらっしゃるようです。どういう人を対象としているか、もう少し具体的でもよかったのではないでしょうか。 ●気軽な気持ちで参加したが、視覚障害者の環境は思ったより悪いものであること、などが分かりもっと広く一般に理解を求めることの必要を感じた。 ●Windowsで学べるコースがあれば受講したい。 ●とても良いときをすごす事が出来ました。受講しているときはわかるのですが家で復習すると出来ないのが残念です。 ●受講者のレベルを指定してほしい。まったく知らない人と経験者では習得に差が出ると思います。 ●先生方が親切でとても受けやすかったです。同じような講座はもうありませんか。