アメリカの聴覚障害者高等教育の状況視察報告― 第8回研修旅行(ギャローデット大学、RIT、NTID)― 建築工学科 橋本 公克 元松戸市立中学校教諭 橋本 映世 要旨:①ギャローデット大学は、ろう者・難聴者に質の高い教育を行う教養大学であり、国立のケンドール初等部から高等部を併設し、教育研究に大きく貢献している。②NTIDでは、各学科代表による教育研究協議(Consortium)により運営され、RITとの緊密な連携による教育を展開し、Learning Centerや学習相談センターなど、学習支援が充実している。また、NTIDの建築工学科では、企業研修を通して実務的な教育を重視している。③印象として、大学のコースとカリキュラムの設定や充実した設備と教育サポートスタッフの配置など、日本型サポートシステムづくりに、示唆するものを感じとれた。 キーワード:ギャローデット大学、ロチェスター工科大学(RIT)、国立ろう工科大学(NTID)、アメリカ手話(ASL)、聴覚障害者 1.はじめに:1999年3月6日~3月15日まで、本学聴覚部教官6名と学生30名による、第8回アメリカ研修旅行に同行した、視察調査の記録である。  最初に、ギャローデット大学の説明によるアメリカ手話(ASL)の歴史と、ろう者の社会でのASLの役割について述べ、次に、アメリカで最初のろう者の大学①ギャローデット大学及び、②ロチェスター工科大学(RIT)と国立ろう工科大学(NTID)の聴覚障害学生サポートについて、翻訳資料を主に、視察の概要を以下に述べる。尚、訪問先の大学概要は、既に前年度視察した教官により報告されているので、今回は、主に特徴ある教育研究と組織に焦点をあて、視察した範囲で述べる。 2.アメリカの手話(American Sign Language(ASL)*1 2.1 ASL の歴史  1817年、Thomas Hopkins GallaudetとLaurent Clercが、アメリカで最初のろう学校を建てた。それ以前は、ろう者についての情報はない。ヨーロッパから来た人が、祖国で使われていた手話の知識を持って来たり、また、両親が健聴なろうの子供は、自分なりの手話“home sign”として作った、ということも考えられる。  交通機関や学校や組織がないので、他の地域との交流がほとんどなかった1817年以前は、さまざまなsign language又は、signの形が使われていたと思われる。  ASLの起源の有力な話は、トーマス・ギャローデットが、ろう者を教育する方法を学びにフランスに行き、フランス語の手話とパリのろう者の学校で手話を使っての指導方法を勉強した。後に彼は、教師の一人ローレント・クラークという、ろうの教師と共にアメリカに戻った。  1817年、ギャローデットとクラークは、最初のろう学校を建て、その後クラークは、40年以上、指導者としてアメリカに留まった。  この学校を作った一つの大切な意義は、沢山のろう者を初めて集め、ろう者の共同体の発展を促したこと。 二つ目は、クラークが指導した沢山の人々の中には、ニューヨーク、ケンタッキー、ヴァージニア、インディアナ、ペンシルバニア、オハイオ、ケベック等の各州で、後に、ろう学校の校長になった健聴者がいたことである。 この人達が、更に北アメリカの他の地域にASLの使い方を広めた。  最近までアメリカのろう者は、1817年に急にフランス語の手話を学んで使いはじめ、それ以前には手話はなかったと信じられていた。しかし、1800年初期には、この国に住む約2000 人のろう者によって、幾つかの手話が使われていたと思われる。  ギャローデットの言語学研究所のJames Woodward(1976)は、クラークが教える以前に、手話の知識を持った人が、少なくともいたことを証明する、重要な言語学的証拠を見つけている。これらの人々は、自分達の手話とフランス語の手話を融合させて、手話を完成させた。  ASLは、1817年以前に、アメリカで使われていた手話と昔のフランス語の手話をプラスしたものである。ウッドワードによると、ASLの60%は、フランス語の手話の表示からきていると思われる。この事は、ASLの40%の表示は他のところから由来している。即ち、クラークとギャローデットが、フランス語の手話を導入する前に、アメリカのろう者によって使われていた手話からである。 2.2 ろう者の社会とASLの役割  ASLは、約50万人のアメリカ人とカナダ人が使用している。健聴者はほとんどASLを知らない。また、ASLを知らないろう者もいる。  ASLを、どうして使わないろう者がいるのであろうか。必ずしも全てのろう者、難聴者が、ろう者の社会に入っているわけではない。健聴者の社会に入りたいと願っている人もいる。ろう者の社会は、共通の手話、共通の体験、価値を持つろう者、難聴者で成り立つ。ろう者は、お互いにASLを使うことにより、お互いにメンバーと認め合っている。  何ゆえASLは、ろう者の社会でそんなに重要なのか。ASLの役割を理解するために、この社会を理解する必要がある。ろう者のほとんど大多数は、ろう学校に通う。これ等の多くは、同年齢の健聴生と離れてろう学生が一緒に学び、食事・睡眠・遊ぶ・寄宿学校である。学校を卒業すると、ろう者を雇用する限られた所で一緒に働く傾向にある。少なくとも、ろう者の85~90%は、ろう者の社会で結婚する。学校でも成人になってからも、ろう者は地域のスポーツ大会やイベント等で、一緒になることが多い。字幕つき映写会・特別なツアー・同窓会等にも、ろう者だけが集まる。学問で・社会で・仕事関係で、連続して接触することにより、ろう者は結合力のある、お互いに支えあう共同体をつくってきた。  たいていのろう者(ほぼ90%)または、健聴の両親を持っている、ろうの子供は、聞こえないか、流暢に使えない話し言葉を使っているので、家族とのコミュニケーションは限られている。多くの情報は、はじめて学校の仲間から得られる。  親密な人間関係が出来上がるのは、耳よりむしろ目からの情報であり、ASLを通してである。ASLはろうの両親によって教えられる。ろうの両親をもつ子供達は、他のろうの子供達に、ASLの使い方を伝えていく。  どの社会にも言葉があり、考えや体験を表すと同様、ろう者はASLを通して自分達の文化を学び、彼らの経験を互いに分け合うのである。 3.ギャローデット大学*2 3.1 大学の歴史と概要  ギャローデット大学は、教育・研究と公共サービスの提供を通して、ろう者と難聴者を対象とした多目的な教育施設とリソースセンターを持つ、私立大学である。 1884年リンカーン大統領の時、学位授与が認められた。 1886年ギャローデットをユニバーシティーとして認可。 1988年ろうのキングジョーダン博士を初の学長に指名。 学部: ①文理学部②コミュニケーション学部③教育及び、ヒューマンサービス学部④経営学部⑤教養学部⑥大学院(ろう者、難聴者、健聴者も受け入れ) 学生数:1996年秋の調査計2033人(内訳、学部生1344院生575、手話と専門コース114) 教職員と学生間のコミュニケーションは、教室の内外を問わず、手話・書き言葉・話し言葉が使われる。現在231人の教員がおり、その59%は最終の学位を持ている。 また、教員の35%が、ろう者、又は難聴者である。 キャンパスは、首都ワシントンDCの北東、ケンドールグリーンに位置し、99エーカーのキャンパスは、豊かな教育環境を有している。 3.2 大学のアドバイスと職業センターについて。  専攻科目が決まっていない学生は、相談室の専門家のアドバイスが受けられる。また、障害をもつ学生は、障害学生相談室を通して、個人の要求に合わせたサポートサービスを受ける。手話通訳・ノートテーキング・近づきやすさの相談など、障害学生相談室を通して行われる。 実際の運用は代理店とか協会が、介助装置とか特別な設備・車いす修理・盲導犬の訓練・個人指導等を行う。全ての学部生も院生も、キャリアーセンターで行われる職業サービスを受けられる。そのサービスには、職業カウンセリング、就職準備、職業開発コース、雇用プログラム、職業紹介所、企業研修プログラム、体験研修プログラム等がある。  体験研修は、学部の学生が専攻の科目や就職に関連した仕事を開発するために行われる。国内の求人には、工場、政府の代理機関、社会福祉事業団体などがある。  ギャローデット大学の卒業生は一般的に、他のろう者より収入が多い。キャリア・センターの最近の調査では、卒業生の多くがろう者教育に従事していて、それが、実業界、公益団体や政府などにつながっている。卒業生は、母校で働く傾向がある。 3.3 Pre-College National Mission Program (初・中等教育・国立ミッションプログラム)  ギャローデット大学は、国立で授業料無料の二つのモデル校(ケンドール初等・中等部と高等部)を通して、ろうの青少年育成に国の指導的役割りを果たしてきた。  1867年、Amos Kendollによって設立された。KDES(ケンドール初等・中等部)は、1970年、革新的なプログラムを開発、幼児から15才までのろうの子供のモデル校として、Demonstration Scool(モデル校)と名付けられた。ワシントン市内の約200人の子供が、このプログラムに登録している。  MSSDは4年制の総合高等部であり、1969年、国立として設立された。アメリカ国内及び、その領域から、合計約300人の通学生と寄宿生がいる。この二つのモデル校には、世界中から年間約2000人以上の見学者が来る。 3.4 Regional Centers (地方センター)  ギャローデット大学の五つのセンターは、以下の地方大学と連携している。 カリフォルニアOhlone College フロリダFlagler College ハワイKapiolani Community College カンサスJohnson County Community College マサチュセッツNorthern Essex Community College 3.5 International Center on Deafness(ICD:国際ろうセンター)  ICDは、ろう者及び難聴者のために、国と国の間に太い絆をつくる事と、教育・文化・社会・就職の機会の向上を目的としている。交換プログラム、トレーニング・セミナー、会議・共同の調査を通して、ICDは海外の大学や学校と共に研究し、情報交換をしている。 3.6 Gallaudet Research Institute(GRI:ギャローデット研究所)  GRIは、ろうに関する研究では、国際的に認められ、ろう、及び、難聴者の人口調査は権威がある。GRIは、ろう者の教育・子供の教育・遺伝学・ろう者に役立つ工学的技術を研究している。ギャローデット大学の教員は、ろう者一人一人の対策や、指導を向上させる方法を見つけるために、GRIと共同研究を進めている。 3.7 National Information Center on Deafness(NICD:国立ろう情報センター)  NICDは国内外の依頼者に、ろう又は、難聴の全ての面で、情報を提供するソース・センターとして役立っている。毎年NICDは何千という郵便・電話での情報を、ろうの子をもつ親・ろう者・難聴者・家族・友人・教育者その他関係者などに送っている。また、NICDの利用者向けの出版物を、何万もの人々に届けている。 3.8 Sign Language Programs (手話プログラム)  手話コースには、国中からギャローデット大学へ学びに来る。夏季コースでは手話を使う人と集中的に交流の時間をもうけ、アメリカ手話を学ぶ機会を提供している。 4.ロチェスター工科大学(RIT)と国立ろう工科大学(NTID)*3 4.1 大学の概要  ロチェスターは、ニューヨーク州第三の都市で、キャンパスは市の郊外に、広さ1300エーカーの自然の豊かな広大な敷地にある。RITは私立大学で、その敷地の一部に、国立のろう工科大学(NTID)が設立されている。  RITは、以下のカレッジからなる。 ①応用科学・工学大学②商業大学③生涯教育大学④工科大学⑤映像芸術・科学大学⑥一般教養大学⑦科学大学⑧国立ろう工科大学(NTID)  又、NTIDには①ビジネスキャリア学部②科学・工学キャリア学部③視覚コミュニケーション学部がある。  ろう及び難聴の学生は、約11000名の健聴の学生と共に学んでいる。 1944年:大学名Rochester Institute of Technology(RIT)ロチェスター工科大学に変更 1966年:National Technical Institute of the Deaf(NTID)を、RITの一部として併設、設立。 1968年:メインキャンパスを、市街地から現在のキャンパスに移転した。 4.2 NTID Learning Consortium (学習協会:教育・学習の学部間協力)*4  Learning Consortium(学習協会)は、NTIDとRITの他の7学部と、カリキュラムで協力関係にあり、Learning Center(教育・学習センター)や、Self-Instruction Lab(自学自習室)の起点となっている。  このConsortiumの目標は、聴覚障害学生が大学で成果を上げるように、サポートすることである。ここでは、発展するニーズに対応する、学科や全てのカリキュラムの中で、学生がすぐに利用できる核となる事を企画している。  NTIDのそれぞれの部門の代表者が集まった、この協会の目標は、次のようなことである。 ①教師と学生との間の学習を促進したり支援する。 ②教授法の改革の議論の場としての役割を果たす。 ③教師達が教育に関するアイディアについて話し合ったり、教育に関して互いに支援し合う場としての役割を果たす。 ④学習方法の開発、応用、普及を促す。 4.3 Learning Center(LC:教育・学習センター)  目標:創造的、質の高い教育的サポートである。  LCは、人間性・身体的・科学技術を総合的に考えている。人と技術的な資源が集まり、教育・学習の目標を達成するための場所である。また、センターは教師と学生の間の関係を支援し、その関係を損なわないように配慮され、次のものを提供している。 ①通常の授業時間外に学生に指導するために、学習センターを利用する各部局から教授やチューター。 ②授業や個人学習を支援する40数台のコンピューターを備えたラボ。 ③RITのカレッジ進学や卒業後の成功のために、重要な技能と知識についてのワークショップやセミナー。 ④遠隔学習とリンクしたハイテク技術を備えた教室。 ⑤グループ指導のための場。 ⑥学生のテストや評価の場。 目的:以下を目的としている。 ①指導と学習の関係をサポートし、深めること。 ②教育改革の感化を与える役割をする。学生及び、同僚と勉強する機会を教師に与えること。教育の複雑さを研究したり、コンピューター・マルチメディアや遠隔教育技術などの、教育方法の開発をすること。 ③指導の仕方がオープンで孤立しないよう援助すること、教育の成果を上げるには、何が大切で、何が必要ないか、学部内でまた、学部を越えて意見を交換し考察する。討論の場として役たつこと。共通したカリキュラムや教育の関心事を追及する役割りを果たすこと。 4.4 Learner Resources :学習者の手段・方策  学習者は、学科で決められた個人指導や、学科以外の個人指導も受ける事ができる。指導者はNTIDの全学科の指導者で構成されているので、学科以外やクラスの個人指導も受けられる。個人指導は、英語・理数・工学・口語・ASL・コンピュータソフトウエアーの応用を含む広い範囲で行われている。  学習者は、Smart Classroom(SC:コンピュータ内臓の教室)を利用できる。SCでは、コンピュータ及び、他の科学技術を基にした、マルチメディアを通しての改革をサポートしている。遠隔教育の改革に役立っている。 ①大学での授業のみならず、幅広く成果を上げるための“話し方”“知識”“心構え”“ワークショップ(工場などで実務の体験教育)”等がある。ワークショップには単位を得るコースと、単に自立のための体験コースがある。 ②コンピュータ部門は、“個人の学習”と“個別指導”並びに、カリキュラムの課題をサポートしている。 ③ビデオ室は視聴の他、ビデオによる相談をする。 ④指定された場所では、個人または、小グループの個別指導や学習に利用される。 4.5 Self-Instruction Lab (SIL:自学自習室)  SILは、手話と英語のコミュニケーションに利用される。ラボでは独自のフォーマットで発声と確認の練習をする事ができる。手話のコミュニケーションと技術の向上は、反復練習が必要である。一人一人の学習スタイルをサポートする教材と備品はもちろん、学習の必要にかなうフレキシブルなスケジュールを提供している。  SILでは、手話と英語のコミュニケーションを上達するには、19のキャレルを利用する。キャレルは、カラーテレビ・モニターとVTRが付いている。キャレルでは、次のようなものを利用できる。 ビデオ、オーディオテープ、マックのパソコンCDロム、など。ラボには装置の他に、ワークシートや文書の教材も備えている。ラボの教材は補充室に置かれていて、個人の練習と勉強のために使うことができる。 ①学習者は、動作を解析したコマのスクリーンを使って、スクリーンの相手と個別に練習できる。 ②SILに隣接し、個別に録音・再生する部屋がある。 ③ラボでは英語の朗読、理解度、黙読や音読、同時通訳等の統一テストがある。 ④SILはコミュニケーションを上達させるために、コンピュータとマルチメディアの学習改革を推し進める。 ⑤ラボでは、国内外のコミュニケーション教育に関する情報を受ける機会を与えている。 ⑥ラボはRIT の学生・教授・スタッフ及び、ASLを使っている一般の人達にも利用できる。 ⑦SILは、年間通して開かれている。 4.6 NTIDの建築工学コースの概要*3 ①建築材料Ⅰ:この講座では、建物に使われる材料についての情報を提供する。材料の特徴や原産地・情報源・標準的な形状や寸法・ユニットの寸法と製品について学ぶ。材料と製品の標準的な参考資料と索引システムを利用する。 ②建築材料Ⅱ:建築材料Ⅰのコースからの情報を応用する。ここで学ぶ課題は建築物の分類、材料の比較・選択と特注品の詳細などを含む。 ③主な構造システム:主な構造システムとコンポーネントを認識し表現する。そのシステムは鉄骨枠、現場打ちコンクリート・PCコンクリート・石造物・鉄骨根太・軽量枠と重い梁などを含む。学生達は、構造計画、ディテール、スケジュールなどを理解する。 ④建築設計製図Ⅰ、Ⅱ:作図技術、施工の工程監理を学ぶ。一つ以上の建築を企画設計する。工程は基本設計、実施設計と詳細、及び電気・設備・構造設計を含む。 以下の図面を含む。敷地計画、平面計画、内部・外部計画、壁と断面詳細、インテリアと外部の透視図、工程表など、学生達は、手書きとCADの作図技術の両方を学ぶ ⑤建築設計製図Ⅲ:構造計画及び構造システムに関連した、詳細図の作成。 ⑥構造計算:面積と容積計算の基礎とCAD による詳細計算への応用を学ぶ。また、代数、幾何、三角法、sin cosin等で計算する。 ⑦平面計画:ここでは基礎技術を学ぶ。基礎技術とは以下のことを含む。基礎的調査、敷地調査と公の記録のデータ収集。データーベースの管理と分析。データの図形表示、計画の構成と作業など。学生はオリジナルな計画図をチームで作成。戸外と研究室で行う。 ⑧建築プロジェクトⅠ、Ⅱ:このコースで、学生は一つ以上の設計を仕上る。野外での調査と測量、図面化、模型、詳細図、実施図面を作成する。また、建築事務所の体験をする。環境を疑似体験する。⑨建築史:西洋建築史を通して、建築様式と技術を学ぶ、これはデザインと構造の分野で、今日の話題のバックグランドになっている。 ⑩建設費の見積り:建設費の算出の基礎的概念と技術を学ぶ。内容は原価と数量調査、材料費、設備費、ユニット単価。コスト分析、地域性と単価の変動。予備費、総額と利潤などである。 ⑪建築設備:機械設備と電気設備の操作を理解する。 給水と排水・防火設備・暖房と吸気、空調、動力、照明と配線を含む。また、工程表を作成し提出する。  尚、このプログラムは、現在、学習している学生にのみ適用し、新入学は許可しない。 5.あとがき:特徴と印象を以下にまとめた。  ①ギャローデット大学は、ろう者・難聴者のための質の高い教養大学であり、国立のケンドール初等中等部から高等部を併設し、教育研究に大きく貢献している。卒業生の多くは、ろう社会の国内外でリーダーとしての役割りをになっている。  国立ろう情報センターは、聴覚障害者の全ての面で、情報を提供するソース・センターとして役立っている。 また、大学の出版社は、ろうに関する世界最大の出版社の一つである。また、国際ろうセンターは、海外の大学と情報交換し共同研究を行っている。 ②ロチェスター工科大学(RIT) と国立ろう工科大学(NTID)の関係は、コース・カリキュラムの設定の他、NTIDで、一定の学力に達するとRIT への進学の保障などの、システムをとっている。また、工科系の大学でありながら、芸術・経営学・商業など、幅広いコースを設定していて、学生の適性に応じた選択ができる。 ③NTIDでは、各学科代表による教育研究協議(コンサーティム)により運営され、RITとの緊密な連携による教育を展開し、ラーニングセンターや、学習相談センターなど、学習支援システムが充実している。また、実務的な教育を重視している。  充実した設備と授業に対する手話通訳など、教育のサポートは充実している。学生個人の適性や可能性を伸ばすための選択幅は広く、学部・コースにカリキュラムの多様性がある。また、単位取得や卒業に当たっては、情報障害に対して、それを保障するが評価は厳しいと聞く。 ④研修に参加した学生のアンケート調査から、 a.ギャローデット大学では、手話を主体にした“声なし主義”の考え方は、難聴者には少し疑問を感じた。次に、b.NTIDでは、口話+手話のコミュニケーションであり、機器と情報支援が充実していると感じた。 RITとNTIDの学生が、同じキャンパスで学園生活をしているのを見て、Deafの学生にとって交流もでき視野が広がると感じた。また、 c.大学の見学の他、歴史的な建築とか文化、更には、各専門分野の視察も旅行前に予備知識を入れ、研修旅行を行って欲しかった。等の意見や要望があった。 ④今回、アメリカの聴覚障害者高等教育の視察を通して、大学のコース・カリキュラムの設定やラーニング・コンサーティム、また、充実した設備や教育支援体勢など、今後の日本型サポートシステムづくりに、いくつかの示唆するものを感じ取れた。 文献 1. American Sign Language - A Look at Its History, Structure,and Community-. Charlotte Baker (Gallaudet College) Carol Padden (University of California,San Diego) 2. Visiting Gallaudet University 3. RIT 1998-99 Undergraduate Bulletin 4. NTID Learning Consortium 写真1. ギャローデット大学のキャンパス全景 写真2. ギャローデット大学でASLの研修を受ける 写真3. NTID、学生会館周辺の自然豊かな環境 写真4. 学生会館2F食堂、NTID教職員と談話・昼食会 写真5. NTID Learning Center 写真6. NTID Self-Instruction Lab で研修を受ける 写真7. NTID 一般教育の授業風景 写真8. NTID Learning Center と筑波技短との交信 写真9. David E. Lawrence 助教授から、カリキュラムの説明を受ける 写真10. 建築学科William R.LaVigne 助教授の授業、一般構造の講義とCAD による作図・設計 The Report on the Present State of the Higher Education of the Hearing Impaired Persons in U. S. A. - from the 8th Field Trip to Gallaudent, RIT and NTID - Dr. Tomokatsu HASHIMOTO Professor of Architectural Engineering Couse Tsukuba College of Technology Ex-teacher of Junior High School Teruyo HASHIMOTO Summary  The six teachers and thiety students of Tsukuba Collede of Technology visited Gallaudet University and National Technical Institute for the Deaf (NTID) from 6th to 15th March. Gallaudent University is the world's only university with an undergraduate program designed exclusively for deaf and hard of hearing people. A private, multipurpose educational institution and research center, Gallaudet also serves deaf, hard of hearing, and hearing people through academic research and public service programs. The hert and soul of Gallaudet is quality education. Students are challenged to work to the best of their abilities, and the University's faculty is challenged to teach innovatively. For 130 years, Gallaudet University has been an academic institution, a cultural center, and a symbol of the abilities of deaf people.  Respected internationally as a world leader in career-oriented and professional education, Rochester Institute of Technology has been setting an innovative pace since 1829. A private, coeducational university in upstate New York, RIT offers academic programs that combine outstanding teaching, a strong foundation in the liberal arts and sciences, modern classroom dacilities and work experience gained through the university's cooperative education program.  NTID, one of Rochester Institute of Technology's seven colleges, provides deaf students with educational programs that lead to meaningful employment in business, industry govenment and education. NTID represents the world's first effort to educate large numbers of deaf students within a college campus planned principally for hearing students. Nearly 1100 deaf students from across the United States as well as from several U. S. territories and other countries study and reside at RIT.  NTID provides RIT's deaf students with technical and pre-prefessional training in more than 30 programs. An NTID education prepares students for fechnical careers in areas such as applied sccounting, applied art and computer graphics, and etc. Traditionally, 95 percent of NTID graduates who enter the work force find employment in their fields of study.  Deaf students who take courses or matriculate into of RIT's six other colleges may request educational access services, which may include sign language interpreting in class-rooms and laboratories and notetaking. Students aldo may request wducational support services such as tutoring, personal and career counseling and academic advising, NTTD also offers an associate degree in educational interpreting.  NTID Learning Consortium  The NTID Learning Consortium is an evolving partnership between academic departments and educational programs throughout NTID (and the rest of RIT) and the resources of the Learning Center and the Selfinstruction Lab.  This parthnership focuses on the effective and innovative support of the college success by deaf and hard of hearing student, in terms of established curricular objectives and graduation outcomes. The partnership is designed to provide increased learning opportunities and readily accessible educational resource for students across the full range of academic disciplines and student development programs.