インターネットを介した専門用語手話動画像データベースの活用 筑波技術短期大学教育方法開発センター(聴覚障害系)1) 同電子情報学科電子工学専攻2) 同電子情報学科情報工学専攻3) 同建築工学科4) 同機械工学科5) 同デザイン学科6) 元同教育方法開発センター(聴覚障害系)7) 元同建築工学科8) 三好 茂樹1) 内野 權次1) 石原 保志1) 大沼 直紀1) 小林 正幸1) 川口 博7) 安東 孝治2) 内藤 一郎2) 村上 裕史3) 井上 亮一8) 桜庭 晶子4) 今井 計4) 岡田 昌章5) 米山 文雄5) 伊藤 三千代6) 前島 健6) 要旨:本学では、平成2年度から平成7年度にかけて専門用語手話動画像を作成した。この動画像はビデオテープに記録され利用してきた。これらの情報をコンピュータに取り込み、手話映像を単語単位のファイルに分け、画像圧縮を加えた。また、手話動画像ファイルをインターネットを介して利用するために、動画像配信用のWebサーバーを構築し、手話単語が検索可能なホームページの作成を行った。インターネットによる動画像配信は時間・場所にとらわれない利用形態であるため、好きな時間帯・好きな場所で気軽に利用出来るという利点がある。このようなことからも、インターネットによる動画像配信は、本学の重要な資源である専門用語手話動画像をより有効に活用できる一形態となるであろう。 キーワード:専門用語 手話 Webサーバー CGIスクリプト MPEG-2 1.はじめに  近年、パーソナルコンピュータやネットワーク技術の発達が著しく、インターネットを介した動画像配信も実用的な段階に移行してきた。また、本学でも動画像配信に対応できる高速ネットワークの実現に向けた努力がなされ、運用が始まった[1]。  ところで、本学では平成2年度から平成7年度までに、専門用語手話の映像資料を作成した[2]。この映像資料はビデオテープを媒体として筑波技術短期大学図書館に配架され、利用されてきた。また、レーザーディスクを利用した検索システムの開発も行われた[3][4][5]。  技術の発展に合わせ、この専門用語手話動画像をより有効利用するために、平成12年度および平成13年度筑波技術短期大学教育改善推進プロジェクトの一つとして、インターネットを介して手話動画像を学内や学外へ公開するための準備を進めてきた[6]。具体的には、専門用語手話映像をコンピュータを用いて単語毎に分割し、各動画像ファイルに圧縮を加えた。また、インターネットを介してそれらの手話動画像ファイルを利用出来るようにするために、Web Serverを構築した。  本報告では、上記の詳細について述べる。 2.ディジタルデータへの変換  最初の専門用語手話動画像はビデオテープに納められていた。このために、ランダムアクセスが出来ず、単語単位の検索やコンピュータとの連携には不向きであった。この問題点を解決するめに、手話の映像をコンピュータ内に取り込み、単語単位に動画像ファイルに変換した。また、MPEG-2データ圧縮アルゴリズムを利用して動画像ファイルに圧縮を加えた。この理由は、そのままの動画像ディジタルデータがかなり大きな容量であるため、これを短時間で伝送するために必要であるからである。  ファイル化された手話動画像の種類および単語数は表1の通りである。なお、各動画像は320画素×240画素の大きさである。1ファイル当りの容量は平均870 k byte程度である。 表1 動画像の種類と単語数 3.Web Serverの構築  ネットワーク上で利用できる専門用語手話動画像データベースを実現し、本学学内または学外へ公開するために、Web Serverの構築を行った。利用したサーバーPCのスペックはCPU:Intel Pentium III(600MHz), Memory: 128Mbyte, Hard Disk: 20GByteであり、 無停電電源やバックアップ用のストリーマも備えている。OSにはLinuxを用いた。また、WebサーバーとしてApatchを用いた。  ホームページでは、CGI(Common Gateway Interface)という機能を利用して、クライアント側の要求に応じた結果を返すことが出来るようにした(図1)。CGIスクリプトの特徴は,クライアントの要求に応じて返送する結果を変えることができるという点にある.この機能によって、専門用語手話動画像データベース・サーバーに蓄えられている動画像データから、望むファイルを検索し、閲覧するためのプログラムを作成することが可能となる。なお、検索用CGIスクリプトは、Perlで記述した。  作成したホームページの概観を図2に示す。図中、上部の枠内には、専門用語手話動画像データベースのロゴと、単語検索に使用するカテゴリー選択部や入力部を配置した。また、「データベースについて」という部分を設け、データベースの利用方法や利用の際の注意事項等について記述したページとリンクを張った。入力部から検索語を入力し、サーバーへ送信すると、サーバーは検索語を受け取る。その検索語に対応した処理を行い、結果を利用者へ送り返される。検索結果は、図中、左下部に表示される。この検索結果の中から、必要な単語を選択すると、図中、右下部に動画像が表示される。 4.インターネットを介した検索例  ここでは、検索方法等の詳細について述べる。まず、利用者がブラウザ(Internet Explorer, Netscape Navigatorなど)から、専門用語手話動画像データベースに接続すると図2のような画面が表示される。検索方法は2通り用意した。 検索方法1:  利用者が指定した検索範囲となる用語の区分から検索語を入力し、該当する結果から選択する方法 検索方法2:  利用者が指定した検索範囲となる用語の区分に含まれている単語すべてをリストアップし、そのリストから選択する方法  上記2種類の方法での検索例を以下にそれぞれ示す。 4.1 検索例(1)  図2の上部を拡大したものを図3に示す。図中、破線枠の部位①で検索用語の区分を選択する。初期状態では「すべての用語」に設定されている。これは6つの用語区分のすべてから探すということを意味している。また、各用語区分を選択することで、検索範囲を絞り込むことが出来る。  次に、図中、②で示した検索語入力の箇所に検索したい語を入力する。その後、[検索]ボタンを押し、検索を開始させる。入力した文字を含む単語を検索結果として表示される(図4左側参照)。この検索結果リストから、表示したい単語を選ぶことで、その単語に対応した手話動画像が、映し出される(図4右側参照)。 4.2 検索例(2)  まず、検索範囲となる用語の区分を選択する。初期状態では「すべての用語」に設定されている。この中から表示させたい用語区分を選択し、[検索範囲内の用語をすべてリストアップする]ボタンを押す。選択した用語区分に含まれている単語すべてをリストアップされる(図4左側に表示される)。このリストから、表示したい単語を選ぶことで、その単語に対応した手話動画像が、映し出される(図4右側参照)。また、「すべての用語」を選択した場合には、データベースに納められている動画像データすべてをリストアップされる。 図1 CGI利用時の情報の流れ 図2 ブラウザで見たホームページ概観 5.まとめ  教育改善推進プロジェクトとして、手話動画像のディジタル化と、手話動画像データベースを学内・学外に公開するためのWebサーバーの構築をおこなった。手話動画像の検索は、開発言語Perlを用いて記述したCGI(ホームページ上で実行されるプログラム)スクリプトにより実現した。データベースのホームページ上には、利用者の要求に対応できるように複数の入力部等を配置した。利用者はこの入力等から検索語等の情報を入力し、Webサーバーへと送る。サーバーは要求に応じた様々な処理を行い、その結果を利用者に返す仕組みになっている。利用方法は、各範疇から単語を選ぶ方法や単語を入力し検索できるように工夫を施した。データベースに関する注意事項や利用方法については、図3の④に示したホームページの[データベースについて]という箇所にリンクを張った。一方、手話動画像自体は、MPEG-2圧縮を施すことでデータ伝送時間の短縮を狙った。  上記のように、ネットワークに対応したソフトウェアを開発することによって、インターネットに接続してるパーンピュータならば、特殊な装置やソフトウェア無しに、Webブラウザ(Internet Explorer, Netscape Navigator等)のみで手話動画像データベースを利用出来るようにした。我々が開発した本専門用語手話動画像データベースWeb版へは、筑波技術短期大学教育方法開発センター(聴覚障害系)のホームページから利用出来るようにした。  インターネットによる動画像配信は時間・場所にとらわれない利用形態であるため、好きな時間帯・好きな場所で気軽に利用出来るという利点がある。このようなことからも、インターネットによる動画像配信は、本学の重要な資源である専門用語手話動画像をより有効に活用できる一形態となるであろう。  現在,その動作確認のため,学内向けに試行的運用を行っている. 図3 検索語入力等を配置した部位 謝辞  各専門用語手話の作成に多大なる御協力を頂いた宍戸 考一氏(アド・クリエーター株式会社)、水野 松太郎氏(株式会社 間組CADセンター)、川出 康雄氏(株式会社 本田技研栃木研究所第5ブロック)、米山 良一氏(構造計画研究所)、大山 博氏(日本テキサス・インスツルメンツ)および沖田繁朗氏(ジャスティック)に感謝致します。  なお、本開発は、平成11年度および平成12年度教育改善参報保障とネットワーク利用の推進経費の助成を受けた。 図4 検索結果の表示 参考文献 [1] 浅草 肇,内野 權次 他:情報保障とネットワーク利用の現状と将来. 筑波技術短期大学テクノレポート7(1),1-4, 2000. [2] 川口 博,内野 權次 他: 筑波技術短期大学 教育方法開発センター 資料集, 22, 1990. [3] 内野 權次:コミュニケーション学習用専門用語の動画電子検索システムの開発. 第31回全日本聾教育研究大会 研究収録集, 127-128, 1997. [4] 内野 權次,川口 博 他: 筑波技術短期大学 教育方法開発センター 年報, 5(1), 1, 1996. [5] 内野 權次: レーザーディスクの原理およびパソコンとの接続使用について.聴覚障害教育工学, 16(2), 12-24.1992. [6] 内野 權次,川口 博 他: 筑波技術短期大学 教育方法開発センター 年報, 8(1), 4, 2000. Practical use of Database System of Technical Term Represented by Sign Language through the Internet Shigeki MIYOSHI1), Kenji UCHINO1), Yasushi ISHIHARA1), Naoki ONUMA1), Masayuki KOBAYASHI1), Hiroshi KAWAGUCHI7), Takaharu ANDO2), Ichiro NAITO2), Hiroshi MURAKAMI3), Ryoichi INOUE8), Shoko SAKURABA4), Hajime IMAI4), Masaaki OKADA5), Fumio YONEYAMA5), Michiyo ITO6) and Takeshi MAESHIMA6) 1) Division for the Hearing Impaired, Research Center on Educational Media, Tsukuba College of Technology 2) Electronic Engineering Course, Department of Information Science and Electronics, Tsukuba College of Technology 3) Information Engineering Course, Department of Information Science and Electronics, Tsukuba College of Technology 4) Department of Architectural Engineering, Tsukuba College of Technology 5) Department of Mechanical Engineering, Tsukuba College of Technology 6) Department of Design, Tsukuba College of Technology 7) (Formerly) Division for the Hearing Impaired, Research Center on Educational Media, Tsukuba College of Technology 8) (Formerly) Department of Architectural Engineering, Tsukuba College of Technology Abstract:The technical terms represented by sign language have been recorded on videotapes. The sequential moving pictures on the videotapes were divided every term by a computer. The sign language word files that were obtained as a result were compressed by using the MPEG-2 coding algorithm. In order to use these files effectively, a Web Server was constructed. Then, a Home Page was designed to be able to be used as a reference. The important properties of Tsukuba College of Technology were properly utilized for students and staff by exhibiting the moving pictures of the technical terms on the Internet. Key Words:Technical term, Sign Language, Web Server, CGI Script, MPEG-2 Coding algorithm