パソコン要約筆記の遠隔支援に関する現状報告 筑波技術短期大学聴覚部一般教育等 小林 庸浩 要旨:パソコン(PC)要約筆記に対する遠隔支援システムの開発に関するこれまでの経過、および、現状に関する報告を行う。また、遠隔支援に参加してくれている要約筆記入力ボランティア育成のための活動の現状報告も行う。 キーワード:PC要約筆記、遠隔支援、入力ボランティアの育成 1.はじめに  一般教育の授業では教養教育科目に関して、非常勤講師に頼らざるを得ないため、聴覚障害教育に不慣れな非常勤講師たちの授業には何らかの情報保障システムを導入する必要がある。特に、入学後間もない学生たちは、聾学校出身のかなり手話に堪能な学生と、普通校出身の手話をほとんど知らない学生の両者がかなりの比率で混在するため、情報保障システムの導入にしても簡単でない側面を持っている。これまでにも専任の教員によるサポート、手話通訳士によるサポート、リアルタイム字幕によるサポート、パソコン(PC)要約筆記によるサポートが行われてきた。専任の教員によるサポートは手話が上手というだけでなく、各授業の内容をよく理解している必要があり、サポートする教員に大きな負担を与える。各教員が担っている負担ですらかなり大変な現状では、この方法を続けてゆくことには無理がある。また、先に述べたように、1年に入った時点では手話がわからない学生も多く、手話通訳によるサポートだけでは十分でない。学生全員に対するサポートとしては文字によるサポートを行わざるを得ない。文章の字幕投影によるサポートでは専門の速記者によるリアルタイム字幕提示がよいことは言うまでもない。しかし、費用の点でごく一部の授業にしか導入できず、これからの情報保障の方法としてこの大学で採用できないことは明らかである。また、昨年の3学期に哲学の授業で行った実験、(1)教官によるサポート、(2)手話通訳士によるサポート、(3)PC要約筆記によるサポートの3つをサイクリックに導入して、1年生全員のアンケートから得られた結果においても、PC要約筆記に対する学生の支持が1番多かった。[1]さらに、要約筆記のよい点は、文章が残るため、授業の要約を必要な訂正を加えた上で学生に配布できることである。学生が要約の配布を願っている強いデータもあり、PC要約筆記の利点の一つと考えてよい。その上、費用の点でも、リアルタイムの3分の1以下、手話通訳士の場合の3分の2弱の費用でまかなえる点も重要である。こうした点から、今年は非常勤講師による一般教育等の教養科目にはリアルタイムに関する費用の援助が受けられる社会学の1コマをのぞいて、すべてPC要約筆記を入れて行っている。  PC要約筆記の問題点の一つは、PCを打ち込むボランティアを確保することである。条件として、1.PCの打ち込む能力の高さ、だけでなく、2.授業のある時間帯に時間が取れること(打ち込みの能力が高い人は仕事を持っている人が多い)、さらに、3.教室にきてもらうための十分な交通手段を持っている、(近いか、車を持っている)ことが必要になる。結局、ほとんど主婦の力を借りなければならない上に交通手段でも制約を受け、なかなか実際に活動できる能力とモビリティを持った十分な人員がそろわない。1.と2.に関しては今年の3月に立ち上げられたNPO団体、PCY298で入力に関する勉強会を開いて育成活動をしているが、その活動に関しては5章で述べることにする。この報告の一番の問題点である遠隔支援システムの導入が必要になる理由は、まさに、3.の問題に関してである。少ないボランティアの人々を有効に活用するための一つの方法と考えていただけばよい。この報告では、教育推進改善経費「非常勤講師の授業における情報保障の方法に関する研究」のプロジェクトの中で昨年からはじめた、独立行政法人産業技術総合研究所(以後、産総研と呼ぶ)との共同研究であるPC要約筆記の遠隔支援に関する研究の途中経過を報告する。まだ、改善の余地や、これかやらなければならない課題も多いが、一応の成功を収めて、現実に使っている現在のシステムを知ってもらうことも必要なことと思い、この報告を書くことにした。 2.遠隔支援とその実験に関して  PC要約筆記に関してはいまさら説明の必要もないと思うので省略する。遠隔支援の導入は、平成14年度から継続している学内プロジェクト「非常勤講師の授業における情報保障の方法に関する研究」の一環として取り上げた。遠隔支援のシステムやソフトの開発を手がけていた産総研のグル-プ(代表:樋口 哲也、責任者:関田 巌)からの申し込みを受け、学内プロジェクトの責任者として私が技短の責任者となり、共同研究が産総研と技短の間で結ばれた。技短の役割は、もっぱら実際の授業に応用することにより、システムの不具合や、改善すべき点、次に向けて必要なことなどを検討してゆくことである。このシステムを技短に導入する際にまず問題になったことは、学内LANの使用に関してであった。遠隔支援では教室の情報をできるだけ多くPC入力者に送るため、音声だけでなく、黒板の文字や教師の動きなどできるだけ教室にいる学生と同じ視覚情報も得られるよう方向を変えられるカメラを設置して入力者がカメラの方向も操作できるように配慮してある。このためかなりな量の情報の発信が必要となるため、情報処理検討委員会にLANを使っての情報発信を申請した。しかし、学外から直接技短のLANに入り込む必要があり、セキュリティの関係で問題があるため時期尚早として受け付けられなかった。はっきり実用化できる保証ない段階でのLANの使用に慎重になった委員会の考えはよくわかる。そこで、まず、実験もかねて、情報を送る速度や容量に少々問題はあるが、電話回線、ADSLを使ってやってみることにした。現在使用しているのは、ADSLアクセスIP8フレッツプランである。この回線ではカメラによるスムーズな映像が十分に送れない点はあるが、入力者にとって、一番大切な視覚情報である、教師が書いた黒板上の文字の読み取りに支障はない。なお、カメラによる文字情報は聴き取りが難しい専門用語(板書してくれるようにお願いしてある)が使われたとき威力を発揮する。とくに、PC要約では、補助入力者がそうした難解な文字の入力訂正を行えるのがよい。  まず、非常勤講師による講義が主に行われている213教室にカメラ、パソコン、ディスプレイを設置し、実験体制を整えたのが平成15年の3月である。当初、3月中に実験を終え、4月からの授業で使う予定であったが、音声や画像の送信が思ったより上手く行かず、実際に産総研に入力者を入れての遠隔支援の実験授業が行われたのは6月23日であった。この日は産総研と技短に新聞各紙とともにNHKの取材も入り、当日の午後6時台の首都圏ニュース(NHKテレビ)と手話ニュース(NHK教育テレビ)で放映された。話の内容は、筆者が自然科学の考え方について、ある程度専門的な用語や、聞きなれない人名なども入れて話したが、画像が少々ギクシャクする点はあったものの、入力者にとって十分の情報が得られることがわかり、一応の成功となった。この日は期末試験の前日で、実験授業に学生の参加を呼びかけることはできなかったが、参加された教員、特に、聴覚障害をもたれている方から及第点をいただけたことは大変励みになった。さらに、電話を使った音声伝達による時間の遅れを心配していたが、これに関しても、あまり気にならないという意見を聞け、安心した。このあと、夏休みに微調整をして2学期からの使用に備えた。 3.物理学における実験的授業  2学期は情報保障を必要とする非常勤講師による授業がなかったので、システムの安定性を確かめることもあり、私が受け持っている物理学の授業で使ってみることにした。物理や数学のような式を多く使う授業では要約筆記はあまり有効ではないと考えられるが、213室が使える時間帯という条件もあり、比較的式を使わない内容をやっているデザイン学科の授業で使ってみた。この授業では実験を見せるための映像をかなり使っており、映像と字幕を同時に使うこと(特に黒板、映像、字幕の位置関係)に対する学生の反応も知りたかった。また、私自身がやってみることにより要約筆記を受ける教師側に関する情報を得たかったこともある。無論、実験のビデオは字幕つき映像なので、映像を流している間は要約筆記は打ち込まない。画面を止めて、私が説明するときは入れる、という形で行った。私は手話も同時に使って行った。また、要約の内容は私が訂正したあと学生たちに配布した。授業に対する学生の反応を知るための簡単なアンケート調査も行った。アンケートを行ったのは始めの4週間と最終回の5回である。 (1)黒板と映像と字幕の位置関係:学生側から見て、1番左に補助用の白板、黒板、映像を写すスクリーン、1番右に要約筆記の文字を写すスクリーンの順にした。スクリーンの位置を1番左に置くことも考えたが、実験の映像と離れてしまうため、映像の隣にした。これに関しては学生もその位置でよいとの評価がほとんどだった。 (2)教師としての感想:慣れていないため、要約の字幕を十分確認しながら授業を進めることができなかった。まだまだ十分でない手話の技術と字幕への注意の両方を完全にコントロールできなかったということもある。また、要約の文章は必ず数秒遅れて現れるため、手話を読んでいる学生と字幕を読んでいる学生の反応の違いが気になることがあった。(学生のアンケートでは、手話も使ってほしいという意見が半分以上だったので使い続けた。)手話を使えない非常勤講師の場合にはこの問題はない。強く感じたことは、教師側として、黒板を使うことで要約筆記者に専門用語の伝達と同時に時間的なゆとりを与えることの必要性である。学んだことは、物理の授業では数式を使わないわけにはいかず、いくつかの式を同時に板書することは避けがたい。そして、説明のとき黒板の一つの式を指して「この式を使って」とやってしまう。しかし、字幕の文章を読んでいる学生には「この式」を知るためにはいったん文章から目を離し、黒板を見なければならない。字幕の文章が遅れると、黒板を見た時点では私が指差しをやめてしまっていて、「この式」がどの式を指すのかわからなくなる場合がある。この問題は、要約筆記の入力者から指摘されたことで、私自身ははっきり認識していなかった。それ以降、式は番号やA、B、C・・・の記号などを使って区別し、「A式を使って」というような説明にした。これは、手話だけのときのように、学生が常に話者を見ている場合との大きな違いである。この問題も、ほとんど式など使うことのない教養系の授業の場合にはあまり問題にはならないであろう。しかし、要約筆記を受けている場合、黒板に書いた文字や提示している画面の中のものを指して、「あれ、これ、それ」というような指示代名詞による表現を使うことは避けたほうがよいという忠告はできるかもしれない。 (3)学生のアンケート結果:「授業の内容を理解するために」ということで、以下のような3つの問いを5段階評価でつけてもらった。 A. PC要約の文章に頼りましたか。 (5.頼った~1.頼らなかった) 5回のアンケート(延べ56人)の平均値は3.7であった。各回毎の平均値は5回すべて4.1~3.4の間に入り、大きなばらつきはない。 B. PC要約はあったほうがよいか。 (5.あったほうが良い~1.必要ない) 5回のアンケートの平均値は4.5であった。各回毎の平均値は4.7~4.3の間にあり、ほとんどばらつきはない。 C. PC要約の文章は読みやすかったですか。 (5.読みやすかった~1.読みにくかった) 5回のアンケートの平均値は4.5であった。各回毎の平均値は4.6~4.2の間にあり、ほとんどばらつきはない。  Aの結果が低いのは手話を読める学生たちの文字情報にはあまり頼らないという評価があるためである。しかし、Bの結果でわかるように、手話を読める学生たちもかなり文字情報を使っていることがわかる。Cの結果からは、要約の文章に関してはかなり評価が高いことがわかる。  また、このほか要約の文章の速さに関して、1.もっと早く、2.大体良い、3.もっと遅く、の3択で聞いた結果、平均が2.3という結果だった。圧倒的に2の選択が多かった。現在のスピードで打ってよいという結果が出たことになるが、これは日本語の能力における差が大きいので、クラスによる変動は避けられないだろう。  最後に、最終回の授業のアンケートで行った「要約筆記を入れた2学期の授業は1学期の授業と比較してわかりやすかったと思いますか」という問いに関する回答の結果を示してこの章を終わりたい。回答は以下のとおりであった。(回答数11) 1.とてもわかりやすくなった。 5人 2.少しわかりやすくなった。 4人 3.変わらない。 1人 4.分かりにくくなった。 1人 ちなみに、4.と答えた学生の感想は以下のとおりである。 「簡単すぎてつまらなくなった。」 この学生にとっては、手話で十分わかるので、遅れて現れる文字情報を待つのがもどかしかったのであろう。しかし、圧倒的多数は手話の内容および自分の理解の確認のため文字情報を必要としているという感想であった。 4.哲学および社会学の授業におけるにおける実践  現在、3学期の授業では、哲学の授業3コマと社会学の授業2コマにPC要約を入れている。(社会学の残り1コマはリアルタイム字幕を入れている。) 遠隔支援システムを使っているが、万が一のトラブルを考えて技短に来ることが可能な要約筆記の方2名に教室に入っての支援をお願いしている。これまで1度もトラブルはないが、これからも少なくとも1名の支援者には教室に入ってもらうようにしたほうが良いと思う。なお、授業前後の遠隔支援のシステムの立ち上げと終了、さらに、PC要約の文章の学生への配布などは、すべて教育研究支援室の技官・時野谷さんにやっていただいている。現在まで、まったく問題もなく順調に行われており、システムの信頼性が示されているだけでなく、経費の軽減とともに、専任の教員が直接携わる仕事はほとんどなくなり、教員の負担の軽減にもなっている。  この二つの授業の講師は今年初めて技短の授業を受け持つ非常勤の先生方である。手話を知らないのは無論のこと、これまで聴覚障害者との接触もなかった先生方である。あらかじめ、二人には技短の学生の語学力などに関する情報を話して、1.とにかくゆっくり話してほしい(無論、学生に顔を向けた状態で)、2.専門用語だけでなく、少し難しいかなと思われる単語はできるだけ板書して欲しい、3.時々字幕を見て話のすすめ方を調整して欲しい、とお願いしてある。12月中に4回の授業を行っているが、二人の感想は、かなりきちんとした内容を打ってもらえている。また、ゆっくり話す努力は、そのこと自体が、言葉の選択を十分行い、文章も簡潔に表現しようと勉められるなど、自分のこれまでの授業に対する反省にもなる、との評価ももらっている。後半の感想に関しては、私がここに移って得たものと同じである。困るのは、学生との対話だといっている。教師の問いかけに対し、字幕に文章が現れるまで反応がないこと。このタイムラグは慣れるのにかなり時間を必要としそうだ。また、時として学生の発言がわからないこともあるが、それ以上に学生の発言を他の学生に伝えることの大切さを忘れがちになる。(これは要約筆記を受けているときだけの問題ではないが。)最も違和感を覚えるのは、学生が自分を見ていないということのようだ。私も2学期の実験授業の際の経験で時折感じたことであるが、私が説明しているのに何人かの学生はスクリーンのほうを向いている場合があった。二人の場合はほとんどの学生が字幕のほうを見ていて、話し手である自分を見ていないのだから話しづらいだろうと思う。議論をしたい場合、この問題はかなり深刻になることが考えられる。学生とのコミュニケーションに関してはこれからの課題として取り組みたい問題であるが、学生が字幕のほうを向いてしまうという問題は解決策がないように思える。  先に述べたように、社会学の授業では一コマの授業にリアルタイム字幕を導入している。これまでの授業に関して両者の文章を読み比べてみた。(私ともう一人、授業を受けていない健聴者(教員ではない)、の二人で読んだ。) 二つの文章から理解できる内容はまったく同等といってよい、というのが二人の一致した意見である。手直しをしていない両者の文章を載せようとも考えたが長くなりすぎるので割愛することにする。リアルタイム字幕がPC要約の3倍以上の費用がかかることを考えれば、リアルタイム字幕を使う理由はほとんどないといってよさそうである。ただ、次の章で問題とされるように、PC要約筆記の入力ボランティアが足りず、いつでも必ず対応できる状態にない現状では、時としてリアルタイム字幕を入れなければならないこともあるだろう。 5.PC要約筆記入力者の養成  PC要約筆記が他の情報保障(手話通訳)と比較してのよさは、講義内容が学生に配布できる文章として残ることと、安さである。この安さを支えていてくれるのが入力ボランティアの方々である。遠隔支援の第一の目標は入力ボランティアを全国ネットで組織することであるが、まだまだその段階には程遠い。昨年、技短を支援してくれているボランティアが中心になってNPO団体PCY298が作られた。(代表:関田 巌、現在メンバーは22人、昨年の常陽リビング10月4日の第1面で紹介されている。) この会は技短の支援をはじめ、邦画の字幕の挿入などの活動を行っている。さらに、入力ボランティアの養成のため月に2回講習会を開いている。そのうち1回(毎月第2金曜日、19時30分から22時)技短の213室を使って実践的な練習をしている。私も講師として話をする役を担っている。はじめにPC要約の初歩的な設定などの復習、打ち込みの練習があり、そのあと講師役の話を二人で組んで打ち込む練習を行っている。会員は家庭の主婦、退官された方、昼間仕事を持っている方(ほとんどが女性)で、集まれるのは毎回会員の半分程度であるが、皆、夜遅くまで熱心に練習している。しかし、多くの方の技量はまだ実際に支援活動に携われるところまで行っていない。かなりの技量を持った方はいても、そうした人たちはほとんど昼間専門の仕事を持っているため、技短の支援活動のような平日昼間の活動はできない。専門にPCの打ち込みの仕事をやったことのない方たちにとって、月2回の練習ではとても十分な技量の上達は望めない。かといって、一人でパソコンの入力の練習をするのはそう簡単ではない。技短の教室を使ってもらっているのも、ひとつには、現場に入ってもらって、少しでもモティベーションを高めてもらえないかとの考えもあってのことである。まだまだ遠隔装置を使って家にいても練習に参加できるような状態には程遠いので、どうしても来てもらわなければならない。こうした支援業務に興味を持ちながらも、技術的および時間と空間の壁から参加できない人たちをこれからどう戦力となってもらえるようにするかが問われているが、今のところこれといった解決策はない。大学としてこうしたボランティア団体との連携、および、積極的な支援を考えてゆくべき時期に来ていると思う。 6.おわりに  この報告は教育改善推進経費「非常勤講師の授業における情報保障の方法に関する研究」の一貫として行われているPC要約筆記の遠隔支援に関する現状報告である。これまでに、1.学生の希望、2.教員の負担を減らす、3.経費の削減、の点から考えてPC要約筆記に焦点を当てて進めてきた。遠隔支援の導入の必要性は真に3の点、経費の削減、をさらに進めてゆくために欠かせない技術と考えて導入したものである。これから法人化を迎え、さらに重要な問題となってくるであろう経費の削減はボランティアの協力に負うところが大きい。この最も大切な部分に関しては、すでに述べたように、まだまだこれからの課題がいろいろ残されている。技短自身がこれらの問題にどう対処してゆくかということが、問題を解決してゆくための大きな鍵になってくるだろう。  最後に、これからの教養科目に関する一つの考え方を述べて終わりにしたい。今、遠隔支援のシステムは213と214の二つの部屋で同時にできるように設定してある。実際の授業での実践は完了していないが、特に問題はないと思われる。この二つの部屋で同時開講できるようになれば、現在非常勤講師にお願いしている教養系科目を2科目同時に開講でき、さらに、2部屋のキャパシティを考えれば、2コマで1学年分の人数をまかなえる。これにより、教養系科目の非常勤講師の授業コマ数を現在の12コマから8コマに減らせる。さらに、非常勤の授業時間を会議のため空けている水曜日の3、4、5限の中の2コマに持ってくれば、教養系科目で使っている時間帯を空けることができる。単位を落とした学生にとっても専門の授業時間と重なることがなく好都合であろう。こうして空いた時間を使って、数学や国語にも習熟度別授業体制をとることを考えることも面白い。現在の入学時の学生の学力を考えれば、また、最近の学生会からの要望事項の一つでもある習熟度別クラス編成の拡大はこれから避けては通れない問題である。こうしたことに繋がっていけば、遠隔支援の導入が本当に活かされることになると思う。 謝辞  この報告の終わりにあたって、プロジェクトの皆さんの協力と、システムの開発・管理・維持をやってくださっている産総研の関田氏、また、積極的にPC要約筆記の入力を引き受けてくださっているPCY298会員の皆さんに心から御礼を言わせていただきたいと思います。また、遠隔支援システムの設置にあたり、足りない費用の1部を一般教育等の共通経費から援助してくれることを快く所諾してくださった一般教育等の教員の皆様にもお礼を申し上げます。 文献 [1] 石原 保志、及川 力、小林 庸浩、細谷 美代子、斎藤 まゆみ、小林 正幸:学外講師が担当する授業における聴覚障害学生に対する情報保障方法の検討―手話通訳、パソコン要約筆記、要約解説の比較―、筑波技術短期大学テクノレポート、10(2)、9-16、2003. Report on Remote Operation Support of Summarized Translation by PC KOBAYASHI Tsunehiro Department of General Education, Division for Hearing Impaired, Tsukuba College of Technology Abstract: A report on the development and the present situation of the remote operation support system of summarized translations by PC (personal computer), which are introduced in lectures for the hearing impaired students, is presented. The present situation of the movements and trainings of the volunteers who carry the summarized translations and the inputs by PC is also reported. Key words: Summarized Translations by PC, Remote operation support, Training of volunteers