第5回筑波技術短期大学視覚部アメリカ研修 筑波技術短期大学障害者高等教育センター1) 同鍼灸学科1年2) 情報処理学科1年3) 青木 和子1) 天野 和彦1) 泉 正之2) 久保田 朋子2) 吉田 有希3) 要旨:平成16年7月3日から7月11日までの日程で、学生3名、教員2名が本学の姉妹校であるアメリカのニューヨーク州立大学バッファロー校(UB)とナショナル聾工科大学(NTID)、さらにニューヨーク市立大学のバルークカレッジを主として訪問した。これは、視覚部アメリカ研修旅行としては第5回目である。UBでは、障害補償技術センターを訪問し、またELIの英語のクラスへ参加した。さらには、バッファロー市の視覚障害センターや自立生活センターの訪問などを通じアメリカにおける高等教育の現状や障害者へのサービス、社会自立の状況について理解を深めた。ロチェスターではNTIDの施設見学を行った。今回はさらに、本学開設の際にひとつのモデル施設となったニューヨーク市立大学バルークカレッジにある視覚障害者のためのコンピュータセンターを訪問した。 キーワード:海外研修、ニューヨーク州立大学バッファロー校、ナショナル聾工科大学、ニューヨーク市立大学バルークカレッジ 1.研修概要 青木 和子(障害者高等教育センター・基礎教育部門) 1.1 目的・計画  視覚部海外研修としてのアメリカ旅行は今回で5回目を数えるが。今回ははじめて日本人だけの引率で実施することになった。以下が今年度の目的および日程である。 ・目的:1 本学と交流協定を結んでいる米国の2大学を訪問、交流を深める。 2 米国における視覚障害者に対する各種支援の状況などを関連機関の訪問を通して理解する。 3 米国文化を体験し、国際理解を高める ・研修期間:平成16年7月3日(土)から7月11日(日) ・研修先:ニューヨーク州立大学バッファロー校(UB) 国立聾工科大学(NTID) ニューヨーク市立大学バルークカレッジ ・日程: 7月3日(土)成田空港発(NW14) ミネアポリス経由バッファロー着(UBゲストハウス泊) 7月4日(日)ナイアガラ瀑布観光(UBゲストハウス泊) 7月5日(月)自立生活センター(ILC)訪問(UBゲストハウス泊) 7月6日(火)UBにて研修  午前CAT(Center for Assistive Technology) CIRRIE (Center for International Rehabilitation Research Information & Exchange) 訪問 午後 ELI(English Language Institute)英語授業参観 Olmsted 視覚障害センター訪問 (UBゲストハウス泊) 7月7日(水)ロチェスターへ移動 NTID(National Technology of Institute for the Deaf) 訪問 (ロチェスター泊) 7月8日(木)ロチェスターからニューヨークへ移動 ニューヨーク市立大学 バルークカレッジ視覚障害者 コンピュータセンター訪問(マンハッタン泊) 7月9日(金)自由行動 (マンハッタン泊) 7月10日(土)ニューヨーク発(NW17) 7月11日(日)成田空港着 1.2 経過 1.2.1 事前学習  昨年の反省を踏まえ、事前学習では個々の学生の視覚障害の状況の把握、それに基づくサポートの仕方、持ち物チェック等に加え、訪問先であるニューヨーク州の3都市、バッファロー、ロチェスター、ニューヨーク市についての情報を積極的に学習させた。さらに、英語での自己紹介を文章で書き、発表する練習を行った。これらの準備は、現地でどうしても受身になりがちな学生たちが、コミュニケーションを取る上で実際におおいに役立った。 1.2.2 主な訪問地での研修 (1)自立生活センター(ILC)  7月4日はアメリカの独立記念日である。そのことは当然計画段階で念頭にあり、当日行われる花火などを楽しみにもしていた。しかし、翌日の月曜日がいわゆる代休にあたり、公的な機関はほとんど休みになることは計算外であった。しかし、ILCはわざわざ我々を迎えるために所長をはじめ主だった職員が休日出勤してくれていた。始めての公式訪問に学生たちも緊張気味であったが、お茶とクッキー、温かい笑顔に迎えられほっとしたようであった。ILCでは、新しい事業として地下室に建設中の様々な障害者の日常生活訓練のためのモデルルームを見学した。この設備は昨年までは、UBのCAT(Center for Assistive Technology)にあったものを、最新の設備を付け加える形でここに移したとのことであった。ダン所長は、自らが視覚障害者であるが、我々を先導し諸設備を説明してくださる姿は、自立生活センターの目指すところをまさに身をもって体現していた。ILCには、このほかの面でも今回大変お世話になった。各施設への移動のために運転手つきの車を我々に提供してくださったのである。これは広い意味でのILCの行っているサービスの一環であるが、公共の交通機関が乏しいバッファローの移動に不自由を感じていた我々には大変ありがたいことであった。 (2)UB CAT・CIRRIE  CATとCenter for International Rehabilitation Research Information & Exchange(CIRRIE)は、UBの中で筑波技術短期大学との姉妹校提携の中心となる部局である。実際にここのストーン先生と秘書のキャシーが我々の研修旅行の様々なアレンジを担当してくださっている。今回は、ストーン先生から直接、センターで行われてきた「文化の違う移民に対するリハビリテーション・サービス」計画の概要についての説明を受けた。アメリカでは、1980年以降、およそ85万人が毎年移民としてこの国に居住し、アメリカ国民の10人に1人が、アメリカ以外で生まれ育っているとのことである。このような状況は、当然障害者やリハビリテーション関連のサービスを提供する上で、様々な文化的摩擦を引き起こす。そこで、このプロジェクトでは、リハビリを行う側に対し、患者の文化的背景を理解し適切な配慮が行えるようガイドラインを作成しつつあるとのことであった。ヨーロッパ諸国においても、障害者関連の諸施設および教育機関おいても、移民への対処法が必ず記載されているという状況があり、大変興味深いお話であった。CATでは、視覚障害者関連の支援機器についての説明を受けた。 (3)ELI英語研修センター  この海外研修では、毎回UBが開設している英語研修センターでの英語研修が組まれてきた。ここで学ぶ学生はUBの学生ではなく、英語の研修を主目的として留学している学生がほとんどである。 3ヶ月から9ヶ月のコースで、それぞれのレベルに応じたクラスで学ぶ。実際のところ、日本人の学生が多いことに昨年驚いた。他には韓国、中国、中近東の国々などの出身者で、こういった文化の異なる人たちとの交流もまた、貴重な経験となるのであろう。うちの学生たちは、オブザーバーという形で授業に参加させてもらう。今年は、日程の都合で1時間の参加であったが、はじめて付き添いの手から離れて一人で行動しなければならない状況と英語を話さなければという緊張感で、クラスに参加する前は皆、こわばった表情をしていたが、クラスが終わって戻ってきたときは一様に笑顔であった。しかし、もっと参加したいかどうかは意見が分かれた。ELIのマネージャーとの話の中で印象に残ったのは、過去に本学から3名が長期の語学留学の形でここにお世話になったが、彼女はその3名について、一人一人の名前は勿論、留学中の生活や学習状況などをきちんと把握されており、うまくいった例、いかなかった例についてその背景も含めて分析をされ、大変参考になった。 (4)Olmsted 視覚障害者センター  夕方でしかも一時間ほどの見学であったが、視覚障害者仕様のパソコンを使った訓練では、われわれのために訓練生がわざわざ残って対応してくれた。ここの訓練生は、訓練終了後ホテル関係の仕事につくということであった。このセンターは歴史が長く、ほかにも視覚障害者を対象とする様々なサービス(縫製工場、高齢者向けデイサービスなど)を行っている。 (5)NTID 国立聾工科大学  ニューヨーク州は、東西に長い。そのほぼ西の端にバッファロー、ナイアガラの滝は位置する。UBからわれわれを乗せたILCのバンは、東へ向かって高速道路を走った。1時間あまりで、NTID訪問の拠点となるロチェスターのホテルに到着した。NTIDはロチェスター工科大学の一部であり、聴覚障害学生を対象としたカレッジである。訪問の時期が夏休み期間になっているため、施設の見学が中心であった。  ロチェスターは、ニューヨーク州の中で3番目に大きい都市である(一番はニューヨーク市、2番目はバッファロー市)。歴史的な景観を残すエリー運河沿いは一見に値する。 (6)バルークカレッジ CCVIP  バルークカレッジは、まさにマンハッタンの一部をキャンパスとする都市型大学であるが、その一部にわれわれの最後の公式訪問場所であるCCVIP(Computer Center for Visually Impaired People)がある。この施設は本学の開設にあたり、モデルとした施設のひとつである。職員の一人は、10数年前に訪れた本学の黒川教授を覚えておられた。この日は本来は、夏季セミナーが行われているはずだったが、申し込み者が少なく中止となったということで、我々とCCVIPスタッフとの交流会のような形になった。学生たちは用意していた自己紹介をパソコンを通して行った。以下は、CCVIPのホームページにのった写真である。 1.2.3 課外活動  全体日程を短縮したため、課外活動は限られたものになったが、UB滞在中に恒例のナイアガラの滝見学と、UBスタッフであるレイン先生宅への招待があった。先に述べたCATのディレクターであるレイン先生のお宅には、ストーン先生、昨年来日され本学で講演をしてくださったノチャスキー先生と日本人としてUBで活躍されている富田先生とそのご家族もおいでになり、なごやかで楽しい会になった。  帰国前日は一日フリータイムとして設定していいたが、学生たちには事前に資料を基に計画を立てるように指示をした。本来なら付き添いなしで自由行動をとらせたいところであったが、安全を考え全員で行動することとした。その結果、次のようなルートでマンハッタンを満喫した。木曜の午後、エンパイアステートビルへ。金曜の朝、地下鉄でグランドゼロへ。跡地は整備され、新しいシンボルタワーの建設準備が始まっていた。次は、自由の女神に会うためフェリーに乗り込む。再び北上し、メトロポリタン美術館へ。最後はヤンキースタジアム。移動はすべて地下鉄を使った。 1.2.4 セキュリティチェック体制にみる米国事情  昨年は、乗り継ぎ地での厳重なセキュリティチェックとそれに伴う混乱のため、大幅に現地到着が遅れ、その上荷物が届かないという事態に、9.11以来の米国のおかれている状況にいきなり直面することになった。それに対し、今回はすべてが非常に順調で、予定時刻より早くバッファローに到着したため、出迎えてくださるはずのUBのストーン先生の姿がなく、しばらくこちらが待つことになった。しかし、その後2回、厳しいセキュリティチェックにあうことになる。最初は、バッファロー、ロチェスターの訪問を終え、ニューヨーク市へ空路で向かうロチェスター空港における荷物検査、および身体検査であった。国内線での移動なので、比較的楽に通過できると思っていたが、5人全員が無事通過するのに30分以上かかった。まずは、3 人ほどの係官がスーツケースを本人の目の前で開け、荷物のほとんどを取り出し、底まで丁寧にチェックするのであるが、その作業がとても手際がいいとはいえず、荷物の持ち主はじっとその手先を見詰めること10分近く。何か言われるのではないか、という緊張とすべてを人前にさらされているような恥ずかしさもあり、かなり忍耐を必要とする時間であった。荷物検査の後は身体検査で、これも一人ずつ一定の距離を置かされ、いすに座ってまず靴を脱ぐように指示される。まるで、犯罪者になったような気分だ。立ったり座ったり、体の向きを変えたりなどの指示が続く。今年の参加者には、全盲の学生がいなかったのは、幸いだったとこのとき感じる。何故なら周りの状況が見えない上に、次々と英語での指示に従わなければならないのは、相当つらい。しかし、係官も「ごめんね、決まりだから」というようなことをつぶやき、学生が不安そうな様子を見せたときは、我々付き添いが近くに行って援助することを認めてくれた。今後は、事前学習においてこのような場面での対応策を学習させる必要を感じた。2回目の厳しいチェックは、なんとヤンキースタジアムに入場するときであった。ニューヨーク市マンハッタンでの自由行動の締めくくりとして全員が楽しみしていたヤンキースタジアムには、地下鉄を使って行った。ニューヨークの地下鉄は、その20年前を知るものにとっては驚くべき変貌振りであった。駅改札口周辺やホームにもニューヨーク市警のユニホーム姿の警官の姿があちこちに見られ、客としてはしっかり守られているという安心感がもてる。駅構内もそうだが車内のどこにも落書きなどは見られない。なんと言うことはない、東京の地下鉄と何も変わらないのである。ただ一度だけ、ある駅から大きな荷物を持った男が乗り込み、いきなりその荷物をあけて手品をはじめた。乗客を巻き込みながら次の停車駅までの5,6分が彼のショウタイムなのである。電車が止まりドアが開くと、彼はさっさと隣の車両に移った。あー、ここはニューヨークなんだと実感させられる瞬間であった。試合開始前、われわれは夕食を食べながら観戦しようと、食料品を大量に買い込み、いざ入場しようとしたところ、「バッグは、一人ひとつだよ」と軽くはね返された。そこでとにかくお腹に詰め込めるものは詰め込み、お土産などをそれぞれのバッグに入れ、なんとか一人ひとつのバッグという状態で2度目の入場口へ向かった。ところが今回は、われわれの持っているバッグが大きすぎるからだめ、と言い渡される(皆、移動に便利なようにリュックサックや大型のショルダーバックを持っていた)。周囲を見ると確かにみんな小さなバッグか手ぶらであった。熟読玩味したガイドブックのどこにもそのようなことは書いてなかった!と、怒っても手遅れである。もう試合は始まる。一人33ドルの入場料が無駄になる・・・と全員呆然とした。しかし、あきらめるのはあまりにも悔しい。日本のように貸しロッカーなどはない。そこで、青木が全員のバッグを預かり近くのマクドナルドで待とう、ということにした。途中で天野氏が交代してくれたため、とりあえず全員が試合を楽しむことができた。空港以外でもこのように不特定多数の人が多く集まる場所では、厳しいチェック体制が引かれているということを、身をもって知らされた。多分、長く記憶に残るエピソードとなるだろう。 図1 UBにて 図2 バルークカレッジCCVIPにて 図3 レイン先生宅にて 2.引率者として  天野 和彦(障害者高等教育センター・基礎教育部門)  今回の研修において,とくに大切であったと感じられたことを反省と感想を含めて述べ,それらをふまえて今後への課題と思われることをまとめとした。 2.1 事前ミーティングの開催  参加学生の決定から出発までの間,事前研修ということで全員が週1回のペースでミーティングをひらいた。そこでの主な内容は次のとおりであった。 ・参加者顔合わせ:ミーティングを重ねることでお互いのコミュニケーションを深めていくこととともに,参加学生個々の障害,日常生活上での問題とそれへのサポートの方法などを細部にわたって確認しておくことが重要であると思われる。 ・当研修の目的およびスケジュールの説明と必要経費の提示 ・各訪問機関,各訪問都市およびアメリカ合衆国についてのビデオ鑑賞や資料の配付 ・英語でのコミュニケーションを少しでも図るために,英語教材の提示と貸し出し:英語力を伸ばすということだけではなく,英語への慣れと今ある力をもとに何とかコミュニケーションを図るということに目を向けることも大切であると思われる。実際に起こりうる具体的な場面(入国審査,機内での受け答え,自己紹介など)を想定して,どうするのか,どういえばいいのか,などを繰り返しシミュレーションしておく必要がある。 ・携行品確認,スーツケース貸し出し:服装については,現地の気候情報や日常生活と訪問先を考慮した服装の用意なども知らせる。 ・課外活動(ニューヨーク)のスケジュール計画:ニューヨークでの1日を自分たちで計画させた。現地での体調なども考慮し,前夜にルートの最終決定を行った。 2.2 移動手段の手配 ・フライトや訪問先への訪問時刻など具体的なタイムテーブルにあわせて,シミュレーションを行い,時間的な余裕をみて調整をする。また,集合から解散までの移動手段についても細かく検討し,出発前に手配をしておくこと。 2.3 現地最新情報の入手 ・2001年9月11日のテロ事件以降,アメリカでは入国審査のみならず,国内のいたるところでセキュリティチェックが想像以上に厳しくなっている。場所によっては,携行品のチェックだけでは済まず,手荷物の持ち込みそれ自体を制限している。そのような事態が起こりうるということをあらかじめ心に留めておくこととともに,トラベルエージェンシーやインターネットなどを通じて,訪問先での最新情報に触れておくことが大切である。また,危険にあわないよう注意すべき点や危険に遭遇した場合の対処なども準備しておいたほうがよいと思われる。 2.4 まとめ ・準備:参加学生のできるだけ早い時期(できれば前年度)での決定がなされることと事前ミーティングを継続して定期的に行うのがよいと思われる。先にも述べたが,参加学生の人数や個々の障害によって,学生個人が準備により長い時間が必要になることはもちろん,あわせて引率側にもサポート体制の調整や細かい準備により長い時間をかけなければならないからである。形式的には団体行動であるとはいえ,ひとつのグループとしてスケジュールをこなしていくこと(移動など日常的なことも含め)が非常に大きな負担になることも当然予想される。引率側のサポート体制に数的質的な限界があるのだとすれば,参加学生の決定について,この点を考慮する必要もあるのではないかと思われる。 ・シミュレーション:出発から解散までの具体的なタイムテーブルにあわせて,必要なこと,起こりうることをできるだけ細かくしつこいくらいに想定して,スケジュールの調整や移動手段の手配,リスクマネジメントをおこなっておく。 ・余裕を持つこと:ほとんどのことについては,シミュレーションやリスクマネジメントを細かくやることでスムーズに対応できると思われる。何かあったり,何かありそうなときには,活動途中でも切り上げたり,中止したりすることも視野に入れておくべきである。体調管理についても,自分で感じているよりも疲れていることがあることに留意する必要がある。スケジュールは,(体調などを含めて)グループの平均水準ではなく,最低ラインにあわせて計画され,現地では変更されるように考慮されるべきである。日程が週末や祝祭日と重なる場合には,現地でのスケジュール変更を余儀なくさせられる可能性もある。 ・英語力:研修参加が決まった段階から,耳慣らし程度のことはしておいてもよいと思われる。また,最低限必要と考えられること(入国審査,機内でのこと,自分の障害のことも含めての自己紹介,買い物,不測の事態など)をシミュレーションして繰り返し練習しておくこと。引率者もある程度の通訳が可能なように,訪問先の予備知識や専門用語を入れておく必要がある。  参加学生のみなさんにとって,この研修が少なからず有意義なものであることを期待するとともに,関係各位にお礼を申し上げます。最後に,全体のとりまとめからスケジュール細部の調整にいたるまでご尽力くださった青木助教授に心より感謝いたします。 3.学生の感想  今回の研修の参加者は3名であったが、1名はその後体調を崩し、休学中である。 3.1 「アメリカ研修へ行って」  吉田 有希(情報処理学科1年)  今回はアメリカでの障害者関連施設の見学というのが主な目的でした。  まず、筑波技術短期大学の姉妹校であるバッファロー大学へ伺いました。敷地がとても広く、「さすがアメリカ!」という印象を受けました。そこでは主に視覚障害者保障器具を見ました。一番驚いたことが、日本の拡大読書機に比べ、文字色のレパートリーが豊かであるということです。背景が黒に白文字というのは日本の拡大読書機でもありますが、他にも背景が黒でオレンジや緑、黄色の文字というように使う人の見やすさに応じていくつか選択できるようになっていました。他にも明るさが何段階かで調節でき、とても使いやすそうでした。  パソコンには拡大ソフトや読み上げソフト(Jaws)などが入っており、視覚障害者にとっての文字補償の環境が整っているように思われました。  他にも、日本でいう職業訓練校みたいなところや聴覚障害者の通っている学校など様々なところを見学しました。今回見学をしたところでの全体的な印象としては、日本に比べそれぞれの障害に応じた補償器具や周りの人たちの対応、設備が行き届いているということです。  私は今回始めての海外だったので、何もかもが始めての体験ばかりでした。初めは言葉が通じるか不安だったのですが、現地へ行ってみると、思っていたよりも苦労はしませんでした。アメリカへ行ってひとつ気づいたことは、地域によって、発音の仕方や話すスピードが違うということです。  今回の研修をきっかけに、今度はもっと英語を習得してからアメリカやその他の国々に行ってみたいと改めて思いました。 3.2 海外研修レポート  久保田 朋子(鍼灸学科1年)  今回の研修では、本校と交流協定を結んでいるニューヨーク州立大学バッファロー校の訪問、視覚障害者関係施設の訪問、米国文化の体験が大きな目的であった。  バッファロー校への訪問では、その敷地の大きさと開放感に圧倒された。また見学させてもらった留学生向けの授業では、意外にもクラスの大部分が日本人で、日本でネイティブの先生に教えてもらっているような安心感を覚えた。しかし、授業は無論すべて英語で行われるので、耳と頭をフル回転させて授業についていくのがやっとであった  視覚障害者関係施設の訪問では、拡大読書器(注1)や合成音声ソフト(注2)など様々な補償機器を見せていただいた。同じ視覚障害者関係施設といっても、それぞれの施設で視覚障害者へのアプローチ方法が異なり、この点は日本にも共通すると感じた。  米国文化の体験は、飛行場に着いたときからニューヨークを離れるまでの間がその対象であるが、その中でも、バッファロー校の教授のホームパーティに招待していただいたことが一番印象的であった。観光地や市街地の観光も十分刺激的であったが、一般家庭の方々と生身で接することができたという点では、ホームパーティへの参加は今回の研修ならではのイベントでありとても貴重な体験をさせていただいた。日本ではホームパーティはそれほど盛んではないので、私たち学生は当初どのように振る舞えばよいのか分からなかったが、周囲の方々が自然に話しかけてくれ、とても楽しい時を過ごすことができた。このようにうち解けた雰囲気の中で一緒に食事をしながら話をすることで、普段とは違う話やよりよい人間関係が作られていくのだと、アメリカ文化におけるホームパーティの意義を感じた。 注1:活字の書類を自分の見やすい大きさに拡大したり、色を反転させたりして低視力の人でも活字を見やすくする機器。 注2:パソコン画面に表示されている文字を読み上げてくれるソフト。 Fifth Study Tour to the United States of America from the Division for the Visually Impaired, Tsukuba College of Technology Kazuko AOKI 1) Kazuhiko AMANO 1) Masayuki IZUMI 2) Tomoko KUBOTA 2) Yuki YOSHIDA 3) 1)Research Center on Higher Education for the Hearing and Visually Impaired, Tsukuba College of Technology 2)Student of the Department of Acupuncture/Moxibustion 3)Student of the Department of Computer Science, Division for the Visually Impaired, Tsukuba College of Technology Abstract: A group from the Tsukuba College of Technology visited the State University of New York at Buffalo (UB) , the National Technical Institute for the Deaf (NTID) and the Computer Center for Visually Impaired People (CCVIP) at Baruch College of City University of New York, from July 3rd until July 11th, 2004. This was the 5th study trip. Two members of the Research Center on Higher Education for the Hearing and Visually Impaired , and three students from the Division for the Visually Impaired participated. At UB, we toured the Center for Assistive Technology (CAT), which conducts research and provides education and services for adaptive devices and the students attended classes in the English Language Institute (ELI), which prepares international students for university study. We were also invited to join the home party by the UB staff. To learn about support services and social resources for disabilities in the US, we visited the Olmsted Center for the Visually Impaired and the Independent Living Center of Western New York. In Rochester, we had a tour of NTID. Visiting New York City was the first time for five study tours. The main purpose was to visit the Computer Center for CCVIP, which was one of the model institutions of our college. Key Words:Study tour, Visually impaired, State University of New York at Buffalo (UB), National Technical Institute for the Deaf (NTID), Computer Center for Visually Impaired People(CCVIP)