「触って観る」アートプロジェクト活動の概略報告 筑波技術大学 安田 輝男 生田目 美紀 岡本 明 長岡 英司 井上 征矢 要旨:視覚に障害のある人も、作品に手で触れて鑑賞できる「触って観る」ポスター・アートの展示を、昨年に引き続き、本学と二科会との共同企画で実施した。その実施状況と成果についての概略を報告する。 キーワード:視覚障害、触覚、触覚伝達デザイン、ユニバーサルデザイン、アート 1.はじめに  視覚に障害のある人にもポスター等の作品を鑑賞してもらうために立体ポスターを試作・制作してきた本学「触って観る」アートプロジェクトは、今年度も積極的に活動を継続した。その活動状況と成果について報告する。 2.筑波技術大学 二科展デザイン部 受賞作品特別展 「触って観る」ポスターコーナー  2008年1月25日から28日まで、つくば西武ホールにて開催された当特別展展示会場の中央に、立体ポスター8点が展示された。当コーナーへは本学の視覚に障害のある学生、つくば地区の高校に通う視覚に障害のある学生の関係者も来場。本特別展は、新聞、情報誌等で取り上げられ、「触って観る」アート展および本学のPRの良い機会となった。 賑わう会場 取材風景 特設アートコーナー 視聴される本学大沼学長 3.第46回二科茨城支部展 「触って観る」特設アートコーナー  2008年5月17日~22日まで、水戸県民文化センターで開催された当特設コーナーでは、デザイン作品(22点)のみならず、洋画(6点)、写真(5点)の作品も立体化され、触る彫刻作品も展示。二科4部門全作品を「触って観る」ことができた。また、以前から要望のあった、音声による画像情報システムの展示も試みた。 4.第93回二科展デザイン部「触って観る」アート特別コーナー  2008年9月3日~15日まで、東京六本木・国立新美術館で開催された当特別コーナーでは、これまでいただいたアドバイスを生かして23点の立体ポスターを制作。そのうちの1点には音声解説も付加され、「昨年より一層、鑑賞しやすくなった」等の反響があり、前年同様に、高い関心が寄せられた。 賑わう「触って観る」コーナー 視聴されるベトナム大使夫人(中央)一おいて右は二科会デザイン部今村代表 5.ロシア ノボシビリスク州立点字図書館と交流  2008年9月4日、ロシア ノボシビルスク州立点字図書館長Yuriy Lesenevskiy氏(写真右)とロシア正教司祭Andrey Fedorov氏(写真左)が、本学総合デザイン学科を訪問し、「触って観る」ポスターを鑑賞。写真右から二人目は、ロシア語が堪能な宮川 正弘 本学名誉教授である。 日露の交流(総合デザイン学科教室にて) 6.いばらきデザインセレクション2008  本学「触って観る」アートプロジェクトの展示・啓蒙活動が「知事選定」に選ばれた。審査委員長の蓮見 孝 先生(筑波大学大学院教授)からは、「バリアフリーで新しいアートの鑑賞領域の試みが、新たなコミュニケーションを切り開く可能性を持つ。コストや製作の簡便さに配慮し、普及させるための具体的検討がなされている」との選定コメントをいただいた。つくば地区では、12月6日~10日の間<つくば市民ギャラリー>で展示された。 つくば市民ギャラリーでの展示 7.筑波大学 展覧会 <ミュージアムの活用と未来>  2008年10月21日~26日まで、筑波大学「ミュージアムの活用と未来-鑑賞行動の脱領域的研究」の展示会と講演会等が開催。筑波大学大学院教授・五十殿利治先生の御計らいで、「触って観る」アートプロジェクトの活動説明パネルと「触って観る」ポスター3点(音声情報付き1点)を展示した。また、26日には、「『触って観る』アートの研究開発とその普及啓蒙」と題して安田が講演を行った。当講演会には、視覚に障害があり視覚障害者の美術鑑賞に関する研究者でもある半田 こずえさんにも参加していただき、貴重なアドバイスもいただいた。 筑波大学総合交流多目的スペーでの展示 8.本学 春日キャンパス学園祭  2008年11月8日~9日に開催された、本学の春日キャンパス(視覚障害系)学園祭において、「触って観る」アート展が特設された。本学の天久保キャンパス(聴覚障害系)の学生が作ったポスターを、本学の視覚に障害のある学生が鑑賞してもらうという、両キャンパスの有意義なコラボレーションが実現した。会場に視覚に障害のある本学学生や保護者の皆さん、視覚障害教育の関係者の方々等、多数の方々に、一つひとつの作品を楽しみながら丁寧に触って鑑賞していただいた。音声情報付きの「触って聴く」ポスターも好評であった。 「触って観る」アート展会場 9.結城信用金庫ロビー展  2008年10月2日~31日まで、結城信用金庫本店ロビーにおいて本学学生の作品を展示していただいた。展示作品は本学学生がデザインした「ユーシンリポート」(経営内容報告書)及び「ユーシンインフォメーション」(営業用パンフレット)の表紙デザインである。また、視覚に障害のある方にも鑑賞していただくために、表紙デザインを立体化した「触って観る」アートや、結城信用金庫のロゴマークを立体化したものも展示。 展示風景 10.第23回国民文化祭・いばらき 2008美術展  第23回国民文化祭・いばらき2008美術展デザインの部で、本学「触って観る」アートプロジェクトが制作したポスター2連作品「触って観るポスター掲示板」と「眼で観るポスター掲示板」が、それぞれ「つくば市議会議長賞」「入選」を受賞。審査委員長の福田 繁雄 先生(日本グラフィックデザイナー協会会長)からは「視覚伝達を新しいプリント表現技術の視点から素晴らしい提案に展開させた(筑波技術大学「触って観る」アートプロジェクト)」との講評をいただいた。 つくば美術館で「触って鑑賞」する来場者 11.水戸医療センター  2008年12月5日より、二科会茨城支部長・井坂 忠 先生の御計らいで、水戸医療センター2階の「アート・スポット茨城二科会」の展示コーナーに、前述の本学「触って観る」アートプロジェクト制作の「触って観るポスター掲示板」(第23回国民文化祭・いばらき2008美術展デザインの部で「つくば市議会議長賞」)および「眼で観るポスター掲示板」(同入選)が展示された。 手前から「眼で観るポスター掲示板」 謝辞  「触って観る」ポスター・アート展示に際しては、二科会の皆様方及び多くの方々から多大なるご支援・ご協力をいただきました。ここに、感謝の意を表する次第です。  音声情報システムに関しましては、東京カートグラフィックス(株)/(財)テクノエイド協会のご協力をいただきました。  尚、本研究は、平成20年度科学研究費(課題番号19653119)および(財)筑波技術大学教育研究助成財団「触って観る」ポスター等の主要美術展・美術館での公開展示への助成金による研究である。 文献 [1] 安田 輝男・生田目 美紀・岡本 明・長岡 英司・井上 征矢:二科「触って観る」ポスター・アートの概略報告,筑波技術大学テクノレポート,Vol.15, Mar. 2008 Report of Outline of“See by touching” Poster & Art in NIKA Exhibition YASUDA Teruo NAMATAME Miki OKAMOTO Akira NAGAOKA Hideji INOUE Seiya National University Corporation Tsukuba University of Technology Abstract: We have practiced ,it lasts in last year, ”See by touching” Poster & Art exhibition which is able to be appreciated by visually impaired user, with NIKA Association. We have reported of Outline of the affairs and the result.. Keyword: Low vision, The sense of touch, Touch Communication Design, Universal Design, Art