筑波技術大学保健科学部附属東西医学統合医療センター患者の利用状況やサービスに関するアンケート調査 筑波技術大学 保健科学部附属東西医学統合医療センター1) 筑波技術大学 視覚障害系支援課2) 筑波技術大学 保健科学部保健学科3) 櫻庭 陽1) 近藤 宏1) 佐久間 亨1)根本 由紀子1)木村 里美1)國府田 昌代2)平山 暁1)柴崎 正修1,3)木下 裕光1,3) 要旨:筑波技術大学保健科学部附属東西医学統合医療センターの患者を対象に、利用状況とサービスに関するアンケート調査を行った。その結果、利用部署は、鍼灸が最も多かった(83名(56.1%))。利用診療科数は、単独が多かった(80名(77.7%))。診療とリハビリテーション、鍼灸の併用状況は、診察のみが51名(49.5%)、併用が52名(52.9%)であった。併用患者は、鍼灸との併用が多かった(41名(40.0%))。来院の動機は“家族、や知人の紹介”(69名(64.5%))と“鍼灸に興味があった”(45名(53.6%))が多かった。サービスに関する質問では“待、ち時間”に関する2項目の点数が悪かった。 キーワード:統合医療,患者,利用状況,サービス 1.はじめに  西洋医学と東洋医学を融合した統合医療のパイオニアである筑波技術大学保健科学部附属東西医学統合医療センター(以下、本センター)は、平成23年度にリハビリテーション科とリハビリテーション室を設置するなど、日々、施設や設備の充実をはかり教育や研究、そして地域の医療に貢献している。近年、医療を取り巻く状況は大きく変化しており、医療の質のみならず、サービスにも目が向けられている。この状況を踏まえ、患者サービスを強化する目的で東西医学統合医療センター運営委員会において、サービス向上ワーキンググループを設置した。今回、その取り組みの一つとして、患者を対象にアンケート調査を行い、サービスの現状を把握した。 2.方法  アンケートの実施期間は、平成23年10月13日~11月30日である。対象は、アンケートの趣旨に賛同した本センターの患者で、自力で回答できる能力を有する者とした。アンケート用紙は、来院時に総合受付にて配付し、院内あるいは自宅に持ち帰って記入した後、対象者自身が受付に設置した回収箱に投函した。アンケートは無記名式で自筆による選択及び記述式とした。主なアンケート内容は回答者の属性、本センターの利用状況と来院の動機、サービスに関する内容である。実施期間中、数回に分けてアンケートを回収し、期間終了後にデータ入力を行い、解析を行った。 3.結果 3.1 回答者の属性  アンケートは148名から回収した。性別は男性が55名(37.2%)、女性が93名(62.8%)であった。年齢別では60、70歳代(各37名、25%)が最も多く、80歳代(3名、2.0%)が最も少なかった(表1)。 表1 回答者の年齢と性別 3.2 利用状況およびその内容  利用状況は、“はじめて”が5名、“2回以上”が141名であり、2名が無回答であった。回答者の利用部署(複数回答可)は、鍼灸が83名(56.1%)と最も多かった(表2)。 表2 回答者の利用部署(複数回答可)  本センターは大きな二つの特徴を有する。一つは、小規模な施設ながら、多数の診療科を開設していること、もう一つは医師によってリハビリテーションや鍼灸、あるいはその両方の処方を行うことである。以下に、診療科数(単独または複数)別のリハビリテーションや鍼灸の利用状況を示す(表3)。集計にあたり、必ず受けているはずの診療科の回答が無く、鍼灸やリハビリテーションを受療していると回答した45名は除外した。単独診療科利用患者は、80名(77.7%)であった。複数利用患者は23名(22.3%)であり、内訳では漢方内科と整形外科が最も多く、複数利用患者全体の4割近くにあたる9名であった。次に、リハビリテーションや鍼灸の併用状況であるが、医師の診察のみとほぼ同じであった(各51名(49.5%)、52名(50.9%))。併用患者は鍼灸との併用が多く(41名(40.0%))、鍼灸のみの併用が26名、鍼灸とリハビリテーションの併用が15名であった。 表3 利用診療科数別のリハビリテーションと鍼灸併用状況 3.3 来院前の周知状況と来院の動機  来院する前から本センターを周知していた患者は69名(46.6%)であり、知らなかった患者は72名(48.6%)、未回答は7名(4.8%)であった(図1)。  来院の動機については複数回答可能な選択形式で回答を得た。回答結果は、情報を得た手段(以下、手段)と興味を持った内容(以下、興味)に分けて表4に示す。手段については“家族や知人の紹介”が69名(64.5%)と最も多く、次いで“他の医療機関の紹介”、“ホームページをみて”であった(各28名(26.2%)、13名(12.1%))。興味については“鍼灸、に興味があった”が45名(53.6%)と最も多く、次いで“統合医療を実践しているから”が32名(38.1%)、“漢方に興味があった”が27名(32.1%)であった。 図1 設問“本センターを知っていたか?”の結果 表4 来院の動機 3.4 サービス等に関する内容  本センターのサービス等については表5に示す12項目について、満足を5点、ほぼ満足を4点、普通を3点、やや不満を2点、不満を1点として回答を得た。この際、利用していない部署の回答については該当者のみ回答することとした。表5に、各項目の平均点と各項目で不満の2点以下と回答した患者の人数を示す。全ての項目において、平均点が4.1点以上であった。項目“職員の応対はていねいですか?”においては平均4.8点と最高点を得た。一方、“診察までの待ち時間”と“温度や湿度などの快適性はいかがですか?”の項目が最低の4.1点であった。 3.5 自由記述  アンケートの最後に自由記述欄を設けて意見や要望を聴取した。それらの結果を表6に示す(一部の文章は改変した)。 表5 サービス等について 表6 自由記述 ※一部の文章を改編。 4.考察  本センターの患者は高齢者が多いが、本アンケートの回答者についても50から70歳代が多く、男女比はおよそ1:2であった。利用状況を見みると、鍼灸(56.1%)が最も多く、次いで漢方内科(24.3%)が多かった。この結果は、長年にわたり本センターが実践している東洋医学(漢方や鍼灸)を用いた統合医療の特徴が反映していると思われる。次に、利用している診療科数の結果であるが、表3に示した通り、複数の診療科を利用している患者は二割程度にとどまった。このことは、既に他院にかかっていたり、複数の診療科があっても診療の曜日が限定されることが複数受診につながらないのかもしれない。一方、リハビリテーションや鍼灸などの併用状況は、診察のみとほぼ等しく、併用患者は鍼灸との併用が多かった。この結果は、来院の動機(表4)で鍼灸に興味がある患者が多かったことが大きな要因であろう。実際、2010年度の鍼灸受療患者は年間9392名に上っている[1]。リハビリテーションが少ないのは、開設が平成23年4月からであり、診療曜日も限られていることが影響しているだろう。今後、診療曜日の増加によりリハビリテーション患者も増えることが予測される。この結果で注目すべき点は、診察、リハビリテーション、鍼灸を併用している患者が15名いることである。本センターの特長を考えたとき、このような併用事例が増加し、患者の症状改善や満足度の向上につながることが最善であると考える。  来院前の周知状況は“知らなかった”(48.6%)が“知っていた”(46.6%)をわずかに上回った。また、自由記述でも指摘されているとおり、アピールが不足しているため認知されていないのが現状であると考える。現況では、いわゆる口コミでの来院が多いことから、来院して下さる患者に対するサービスを徹底するほか、若い年齢層の開拓としてインターネットやメディアを利用したアピールを行い、認知度を上げる努力も平行して行わなければならないだろう。さらに、統合医療に興味を持っている患者が多く(38.1%)、自由記述でも東西の強い連携を望む声が聞かれた。これらの指摘は真摯に受け止め、東西の連携をどのように強化していくかを検討、実践し、本センター独自の統合医療を確立し、発信していかなければならないと考える。  患者サービス等についての結果は、平均点で見ると総じて良好であったと考える(表5)。しかし、2点以下の評価を複数得た診察室と鍼灸の待ち時間や案内表示については対応が必要である。待ち時間については、診療の状況にもよるので、根本的な解決策を見つけることは容易ではないが、それを補うために頻繁な声かけや、待ち時間を感じさせないような工夫が必要であろう。案内表示については、対応を検討したいと思う。  自由記述の結果について、指摘や改善に関する内容については早急な対応しなければならない。しかし、時間を要する内容については、計画的に改善に向けてアクションを続けることが肝要である。最後に、本センターに関わる全ての職員、研修生にとって非常に勇気づけられるコメントをたくさんいただいた。これらの声を大切に、今後も教育や研究のみならず、地域の医療に貢献していきたい。 参考文献 [1] 近藤 宏,櫻庭 陽, 他 : 地域医療における統合医療を目指して 筑波技術大学保健科学部附属東西医学統合医療センター 2010年度 鍼灸部門 外来報告.筑波技術大学テクノレポート. 19(2); 73-7, 2012. A Questionnaire About Patient Usage and Service Conducted at theCenter for Integrative Medicine, Tsukuba University of Technology SAKURABA H1), KONDO H1), SAKUMA T1), NEMOTO Y1), KIMURA S1), KUNIFUDA M2),HIRAYAMA A1), SHIBASAKI M1).3), KINOSHITA H1).3) 1)Center for Integrative Medicine, Tsukuba University of Technology 2)Academic Affairs Section for Students with Visual Impairment, Tsukuba University of Technology 3)Faculty of Health Sciences, Tsukuba University of Technology Abstract: We created a questionnaire for the patients of the Center for Integrative Medicine, Tsukuba University of Technology to learn about patient usage and services. The results of the questionnaire revealed that the service most used by patients was acupuncture and moxibustion (83 persons or 56.1%). Many patients used a single-doctor service (80 persons or 77.7%). Some patients only came for examinations (51 persons or 49.5%). Some patients made use of concomitant services of rehabilitation and/or acupuncture and moxibustion (52 persons or 52.9%). A number of patients used both acupuncture and moxibustion services (41 persons or 40.0%). We asked patients about their reasons for visiting the center. Some patients responded that they were “interested in acupuncture and moxibustion” (45 persons or 53.6%) and some responded that they had received "an introduction from their family or an acquaintance” (69 persons or 64.5%). Patient respondents noted that there were problems with “waiting time.” Keywords: Integrated medicine, Patient, Usage, Service