筑波技術大学保健科学部附属東西医学統合医療センター患者の利用状況やサービスに関するアンケート調査2 櫻庭 陽1),武笠 瑞枝1),水木 知恵1),大圖 仁美1),佐久間 亨1),近藤 宏1),平山 暁1),木下 裕光1,2) 筑波技術大学 保健科学部附属東西医学統合医療センター1) 筑波技術大学 保健科学部保健学科 2) 要旨:2011年に引き続き,2013年も筑波技術大学保健科学部附属東西医学統合医療センターの患者を対象に,利用状況とサービスに関するアンケート調査を行った。その結果,利用部署は漢方内科が最も多かった(85名(47.5%))。来院の動機は“知人,の紹介”(59名(33.0%))が多かった。サービスに関する質問では,スタッフの応対に対して満足とする回答が多かった(153名(85.5%))。今後,利用したいことは“鍼灸”(74名(41.3%))が多かった。 キーワード:統合医療,患者,利用状況,サービス 1.はじめに  筑波技術大学保健科学部附属東西医学統合医療センター(以下,当センター)は開設以来,教育や研究,地域医療に貢献することを目的に診療を行っている。当センターは医師の診療を中心として臨床検査や放射線検査,リハビリテーションや薬局によって構成される診療部門と,鍼灸治療を行う施術部門にわけられる。機能的側面からみると,西洋医学とともに医師が処方する漢方と鍼灸からなる東洋医学を統合した医療を実践する統合医療施設であり,本邦でも貴重な存在である。2011年に引き続き,当センターの患者を対象に,利用状況やサービス全般に関するアンケート調査を行ったので報告する。 2.方法  実施期間は平成25年8月5日~30日の診療日,17日間である。対象は,アンケートの趣旨に賛同した当センターの患者で,自力で回答できる能力を有する者とした。アンケート用紙は来院時に総合受付にて配付し,院内あるいは自宅に持ち帰って記入した後,対象者自身が待合室内に設置した回収箱へ投函することで回収した。アンケートは無記名式の選択及び記述式とした。主なアンケート内容は回答者の属性や当センターの利用状況と来院の動機,サービスに関する内容である。実施期間終了後にデータ入力を行い,解析を行った。 3.結果 3.1 回答者の属性  アンケートは179名から回収した。性別は男性が56名(31.1%),女性が120名(67.0%)であった。年齢別では60歳代が55名(30.7%)と最も多く,10名未満の回答年代は20歳代(5名(2.8%))と80歳代(7名(3.9%))であった(表1)。 3.2 居住地と交通手段  回答者の居住地は,つくば市内と市外が各々76名(42.5%),84名(46.9%)で非常に近い結果であった(表2)。無回答は19名(10.6%)だった。また,市外では土浦市や牛久市など,つくば市に隣接している市町村が多かった。その一方で,県内の水戸市や他県等の遠方からも来院していた。  交通手段については,車が最も多く(143名(79.9%)),車を併用している患者をあわせると8割を超えていた(表2)。車以外の交通手段利用患者は1割未満(16名(8.9%)であった。 3.3 利用状況およびその内容  当センターの利用について,“はじめて”が16名(8.9%),“2回以上”が155名(86.6%)であり,8名(4.5%)が無回答であった。利用部署は複数回答可能で回答を得た結果,当センターの特色である東洋医学の漢方内科が85名(47.5%)で最も多く,鍼灸も77名(43.0%)で2番目に多かった(表2)。整形外科も鍼灸と同様の結果であり,平成23年度より開設したリハビリテーションは38名(21.1%)であった。 3.4 来院前の周知と来院の動機  来院する前から当センターを知っていたかどうかについて質問した結果,“知っていた”が95名(53.1%),“知らなかった”が82名(45.8%),無回答は2名(1.1%)であった(図1)。  次に来院の動機については複数数回答可能な選択形式で回答を得た(表4)。結果は“知人の紹介(当院患者)”が59名(33.0%)と最も多かった。また,”知人の紹介(当センター患者以外)”の23名(12.8%)をあわせると5割近く82名(45.8%)がいわゆる口コミであった。次いで当センターの特色である東洋医学の漢方と鍼灸に対する興味が各々49名(27.4%),43名(24.0%)と多かった。 3.5 サービス等や今後の利用希望に関して  サービス等に関する内容は,表5に示す9項目について“満足”,“ 普通”,“ 不満”の選択方式で聴取した。前年度末に環境美化を目的に改修した中庭についても,項目を設けた。全項目の中で“スタッフの対応”を満足とした回答者が最も多く(153名(85.5%))“受付,から会計の流れ”(135名(75.4%)),“清潔感” (110名(61.4%))が続いた。一方,満足とした回答者が少なかったのは,“中庭”(56名(31.1%))と“読み物や掲示物”(65名(36.3%))であった。全項目においてに不満とした回答者は少数であった。  2011年のアンケートで指摘された駐車場の使いやすさについて,車を利用している(併用含む)132名について質問したところ,駐車場は使いやすいと回答した者が148名,そうでない者が14名,無回答が4名であった[1]。  次に,今後利用してみたい部署について,現在行っていないマッサージも含めて複数回答可能な選択形式で質問した(表6)。その結果,鍼灸が最多の74名(41.3%),次にマッサージ(71名(39.7%))であった。 表1 年齢と性別 ※名(%)で示す。 表2 居住地(上)と交通手段(下) ※名(%)で示す。 表3 利用部署(複数回答可) ※名(%)で示す。 図1 設問“本センターを知っていたか?” の結果 ※名(%)で示す。 表4 来院の動機(複数回答可) ※名(%)で示す。 表5 サービス等について ※上段は人数(名),下段は割合(%)で示す。 表6 今後の利用希望部署(複数回答可) ※名(%)で示す。 3.6 自由記述  最後に自由記述欄に記載された内容を,肯定的なコメント,要望,苦情に分けて表7に示す。 表7 自由記述 ※一部の文章を改編。 4.考察  回答者の年代は当センターの患者同様,40から70歳代が多く,男女比もおおよそ前回と同様の比率(1:2)であったことから,本結果は当センターの実情を反映していると考える。幅広い年齢相に利用してもらいたいと考えているが,30歳代までの若い世代の利用が増えないのは診療時間が一般的な勤務時間とオーバーラップしていることが要因と考えている。実際,退職を迎える60歳代が多いことからも容易に推察できる。  居住地と交通手段の結果から,市内または近隣の住民が自動車で来院しているようである。地域医療に貢献するという意味では良いが,その反面,自動車を利用できない地域の住民はあまり利用していないと考えられる。公共交通機関を利用する患者に対する方策が必要であろう。  最多の利用部署は漢方(47.5%)であり,来院の動機も多かった(27.4%)。また,鍼灸も利用者(43.0%),動機(24.0%)ともに多く,当センターの特長が表れた結果と言える。他の診療科では,整形外科が多かった。本邦では,鍼灸保険適用疾患が運動器疾患であることから,患者に整形外科と鍼灸が容易に連想しやすい。実際,当センターの鍼灸治療の対象疾患は運動器疾患が多い[2]。また,リハビリテーションの開設も結果に反映されたのかもしれない。  当センターの周知状況は“知っていた”が“知らなかった”を上回った(2011年は“知らなかった”が48.6%,“知っていた”が46.6%)。さらに,来院の動機もいわゆる口コミが5割を超えた(50.8%)。以上のように認知や口コミが高まった結果は,スタッフが真摯に現状の診療に取り組み,患者一人一人に丁寧に接した結果であろう。実際,サービス面でもスタッフの対応に満足している患者が最も多く,自由記述でもたくさんの肯定的なコメントをいただいた。また,診療スキルの向上の取り組みも開始している。2011年のアンケートでは東西の強い連携を望む声が聞かれ,それを実現するために,医師と理学療法士,鍼灸師等のスタッフが合同カンファレンスを開催し,情報の共有や治療方針や方法の検討を行っている。以上のように,現状に満足することなく,ソフト面における向上を図りたいと思う。  ハード面の充実については,アンケートで評価が低かった読み物や掲示物,中庭などを整備,改善して,院内環境の美化,改善に努め,診察や各種検査,リハビリテーションや鍼灸などで院内にいる時間が増える患者が快適な時間を過ごせるような取り組みを進めていきたい。その他,自由記述等の要望や苦情を真摯に受け止め,可能な限り改善をしなくてはならない。最後に,本センターに関わる全てのスタッフに大変に勇気づけられるコメントを数多くいただいた。これを励みにして,教育や研究,地域医療に貢献していきたい。 参考文献 [1] 櫻庭 陽, 近藤 宏,他 : 筑波技術大学保健科学部附属東西医学統合医療センター 患者の利用状況やサービスに関するアンケート調査. 筑波技術大学テクノレポート. 19(2); 73-7, 2012. [2] 近藤 宏, 櫻庭 陽, 他 : 地域医療における統合医療を目指して 筑波技術大学保健科学部附属東西医学統合医療センター 2010年度 鍼灸部門 外来報告. 筑波技術大学テクノレポート. 19(2); 73-7, 2012. Questionnaire on Patients’ Use of Services at the Center for Integrative Medicine, Tsukuba University of Technology SAKURABA Hinata1), MUKASA Mizue1), MIZUKI Tomoe1), OHZU Hitomi1), SAKUMA Toru1), KONDO Hiroshi1), HIRAYAMA Aki1), KINOSHITA Hiroaki1,2) Center for Integrative Medicine, Tsukuba University of Technology1) Faculty of Health Sciences, Tsukuba University of Technology2) Abstract:As in 2011, we created a questionnaire for patients of the Center for Integrative Medicine at Tsukuba University of Technology to collect information about patients’ use of services in 2013. The results of the questionnaire revealed that the service most used by patients was Kampo medicine (85 persons or 47.5%). We asked patients about their reasons for visiting the center. Some patients responded that they received “an introduction from an acquaintance” (59 persons or 33.0%). In a question about service, patients were satisfied with the staff's reception (153 persons or 85.5%). The medicine to use from now on had much acupuncture and moxibustion (74 persons or 41.3%). Keywords: Integrated Medicine, Patient, Usage, Service