ろう・難聴者に適したバスケットボール試合中の情報伝達法―片手サインの提案と情報伝達手の導入― 新林 玖妃1 設楽 明寿1,2 米山 文雄1 加藤 伸子1 白石 優旗1 1筑波技術大学 Tsukuba University of Technology 2筑波大学 Tsukuba University 概要:バスケットボールでは攻守の切り替えが激しいスポーツであり,試合中に正確な情報を迅速に伝える必要がある.しかし,ろう・難聴者は,補聴器・人工内耳の有無に関わらず,特に背後から指示を受け取るのが難しい.したがって,本研究では,試合中のプレイへの影響が少ない「片手サイン」を提案するとともに,その指示内容の認識を常時可能とする「情報伝達手」を新たに導入する.ここで,情報伝達手は,コートの周囲に複数人配置し,選手の表出する片手サインを読み取ると同時に,同じサインを表出することで背後からの指示を理解できるようになる.本論文では,提案した片手サインの妥当性と情報伝達手の最適配置の評価実験を行うとともに,実利用に向けた課題について議論する. キーワード:バスケットボール,デフバスケットボール, デフスポーツ, 片手サイン,反応時間,情報伝達手, 支援技術 1. はじめに  デフスポーツは,一般に聴者が楽しむ・競い合うスポーツと基本的なルールは変わらないスポーツである[1].  その一つにデフバスケットボール(デフバスケ)があり,試合中の審判の合図や,審判とともに試合の進行をサポートし記録を正確に保持する役割の「テーブルオフィシャル」がブザーの音が鳴るのと同時に「フラッグマン」が目立った色の旗を振ることによって視覚的に状況を判断ができる様にする「情報保障」が用意されていることが多い[2].しかし,審判の合図やテーブルオフィシャルなどの,試合を進めるに必要な情報しか対応されていないのが現状である.  また,バスケットボール(バスケ)にろう・難聴者が参加した場合,補聴器や人工内耳装用の可否に関するルールは明記されていない.しかし,デフバスケでは,デフリンピックを代表例として,試合中の補聴器や人工内耳の装用が禁止されている[2].したがって,補聴器や人工内耳の装用の有無によって音情報を取得する状況が異なると想定されることから,ろう・難聴者は背後にある情報を得るのが難しく,ドリブルにおけるボールが跳ねる音などの環境音による状況を判断しづらい問題が生じている.  それに加え,ろう・難聴者と聴者では試合中のコミュニケーション方法が異なる.ろう・難聴者の場合は,手話,アイコンタクト,ジェスチャー等で指示内容を視覚的に伝え合っている.聴者は,アイコンタクト,ジェスチャー等の視覚情報だけではなく,掛け声等の音声による聴覚的情報も含めて指示内容等を伝え合っている.そのため,バスケはボールゲームの中でも特に攻防が目まぐるしく展開され,絶え間なく状況が変化する競技であることが言及されている[3]ことから,ろう・難聴者では,視覚情報のみで迅速に確実な情報を伝え合うことが難しいと想定される.  そこで,本研究では,バスケの試合中のろう・難聴者同士が指示内容等の情報をリアルタイムに視覚情報で伝え合うことができる方法を提案する.具体的には,日本手話,ASL(アメリカ手話),ジェスチャーの3つの手腕動作を参考とし,片手動作で表現可能かつプレイへの影響の少ない「片手サイン」を提案する.また,選手が出したサインをほかの選手が直接見ることができなくてもリアルタイムで情報伝達可能にする役割を持つ「情報伝達手」を図1のようにコート外に配置することも同時に提案する.  本稿では,新たに提案する片手サインと情報伝達手について説明するとともに,片手サインの視認性,情報伝達手の最適な配置の2 点の評価実験について述べる.最後に,実験結果から,提案手法の有効性と課題について議論する. 図1 選手と情報伝達手の配置図 (青丸と緑丸はそれぞれ別チームで,濃色は選手,淡色は情報伝達手を表す) 2. 関連研究  ろう・難聴者のバスケに関しては,須田の提唱したサインバスケットボール(サインバスケ)[4]が代表例である.サインバスケとは,日本語,日本手話,日本語対応手話と異なる育ちや環境が違う,ろう・難聴者のためのバスケ競技に特化した共通身体言語を作ることを挙げている.しかしながら,選手が出したサインをほかの選手が直接見えていなくてもリアルタイムで情報伝達できるよう考慮されているとは限らない.また,片手手話だけでなく両手手話も混在しており,そのまま使用するとプレイに支障をきたす可能性がある.  一方,デフスポーツの支援技術についても複数件報告されている.中島のデフリンピック帯同の報告[5]では,陸上・水泳競技はスタート合図を光で提示,バスケットボール競技はゴールボードの枠が光ることで反則・得点の合図を提示等の工夫がされていたと述べられている.また,穂苅らのシステム[6]も審判の合図等を触覚刺激で提示通知するシステムとなっており,スポーツ全般に対応されている.  競技特性を考慮した支援技術として,スタート合図を目で視認する光刺激スタートシステム[7]がある.このシステムでは,クラウチングスタートによるスタートの流れについて,審判の指示内容の種類によって色を変更している.更に,視覚刺激よりも触覚刺激の方が早く反応できることから提案された,スタート合図を触覚刺激で提示するシステムも研究開発されている[8].  しかしながら,いずれも試合の進行に必要な審判合図等の情報を想定されているものであり,試合中の選手同士が指示内容を伝え合うことを想定されていない. 3. 提案方法  本研究の肝である,片手サインと情報伝達手について,順に説明する. 3.1 片手サイン  我々は,ろう・難聴者同士がバスケ試合中に,必要な情報をリアルタイムで迅速かつ確実に伝達可能なコミュニケーション方法として,プレイに影響の少ない片手動作で表示できるサインを考案した.この「片手サイン」は,意味が現存している言語や,実際にバスケをプレイする上で使われている動作のため,日本手話,ASL,実際のプレイのジェスチャーに基づいて作成する方針とした.今回,ファーストステップとして作成した3つのサイン「シュート」「パス」「GO」を表1に示す.表1 に示す通り,3つのサインともに,手を頭部より上に掲げて表示している.これは,遠くからでも容易に視認できるためである.  3つのサインのうち,「シュート」と「GO」では,頭の上から前に移動する前後方向の 動作で手形が異なる.一方,「パス」は頭の上から外側へ移動する左右方向の動作かつ「シュート」と手形は同じである.  本論文では,動作方向が同じでも手形が異なれば識別できるのか,手形が同じでも動作方向が異なれば識別できるのかを評価実験により検証する. 3.2 情報伝達手  「情報伝達手」は,バスケの試合中にろう・難聴者の選手が他の選手に必要な情報を伝達している内容が見えていない選手に対してリアルタイムに情報伝達する役割を持つ.  具体的には,情報伝達手は図1 に示した様に,コート外に複数人配置する.1 人の選手が他の選手に指示や,自分チーム,相手チームの状況を片手サインで伝えているとき,情報伝達手は見えていない選手に対して,同じ内容をそのまま片手サインで伝達する.  実際にバスケに導入するためには,ろう・難聴者の選手にとって見えやすい情報伝達手の配置を決める必要がある.したがって,ために本論文では,中心視野と周辺視野の範囲[5]に基づいた配置によって評価実験を設計し,検証する. 表1 サインリスト シュート 手のひらを上から下に向けるように振り下ろす. パス 手をパーにして横に手の甲を表へ向けるように動かす. GO 人差し指で後ろから前に動かす. 4. 実験方法  情報伝達手の適切な配置と見えやすい片手サインの決定のための実験を行った.本実験では実験協力者を,ろう・難聴者かつバスケのクラブチームや部活動への所属経験を持ち合わせている者を対象とした.本実験の実験参加者の個人特性を表2に示す.  本実験の実験参加者は,ろう・難聴者の選手として実験を行った.ろう・難聴者の選手と情報伝達手を図2の位置に配置した.  情報伝達手は中心視野と周辺視野の範囲[9]に基づき,選手の正面を0°として,情報伝達手の配置の角度を20°,40°,60°,80°に設定した.情報伝達手の配置の距離は,バスケットコートは縦15m,横28mとなっているため,距離の最大値をハーフコート最大の横の長さ14mを基準として4分割した.したがって,情報伝達手の距離は1.75m,3.50m,7.00m,14.00mに配置した.  ここで,情報伝達手の配置の順序は,角度を20度から80度の順に,それぞれの角度に対して1.75mから14.00mの順としたものを「正順」と定義する.「逆順」は,角度を80度から開始して降順で行い,それぞれの角度に対して距離は1.75mから14.00mの順で行うものとして定義する.  実験参加者は,正順と逆順それぞれの順番で実験を2回行った.  実験時には,図3のように,ろう・難聴選手が試合時を想定した上で視線が別方向に向かないよう1点に集中させるため,選手の目線の高さに合わせたタブレットに表示される1秒毎に変化する数字を黙読するタスクを課すことで,視線を固定させた.  情報伝達手は,1つの角度と距離に対して,本研究で考案した表1 のサインリストにある「シュート」,「パス」,「GO」の中から乱数にしたがって10回表示する.ここで,表示するサインに大きな偏りが発生しないようにするため,乱数は1つのサインに対して10回のうち最低2回,最大4回まで表示される制限付きのランダム選択アルゴリズムを採用した.  ろう・難聴選手は,7号級のバスケットボール(ボール)を胸の位置に持ち,情報伝達手から表示された片手サインに対応した動作を行うように指示した.対応する動作は以下の通りである.  「シュート」を認識した場合は,真上にボールをあげる.「パス」を認識した場合,正面にボールを出す.「GO」を認識した場合,真下にボールを下げる.  1つの角度と距離の配置に対して10回片手サインを試行した後,次の配置に移る前に実験参加者にその配置に対して「片手サインの見えやすさ」と「片手サインの見えやすさによるストレス」を図4に示す5段階リッカート尺度によるアンケートを行った.  反応時間の計測は,情報伝達手が片手サインを表示し終えた時間から,それを視認した実験参加者の動作の開始までの所要時間とした.フレームレート60iのインターレース方式であるビデオカメラで撮影を行った.撮影したデータをELANにより0.001秒単位で時間計測した.ここで,片手サインを表示し終えたタイミングは,片手サイン停止時を基準とした  実験参加者は正順と逆順での実験のすべてを終えた後に,情報伝達手の導入の提案の評価と片手サインの提案と意味の理解しやすさについて5段階リッカート尺度,並びに,自由記述によるアンケート評価を行った.  本研究では,片手サインの正答率が高く,かつ反応時間が短いものであり,かつ,実験中に取得する「片手サインの見えやすさ」と「片手サインの見えやすさによるストレス」のリッカート尺度,更には,実験後の自由記述を含むアンケートに基づき,効率の良い情報伝達手の配置と片手サインの動作を決定する.  なお,本研究は,筑波技術大学研究倫理委員会の承認を得て実施された(承認番号2023-46). 表2 実験参加者(5名)の個人特性 図2 ろう・難聴者と情報伝達手の配置図 (黒半円:ろう・難聴者の選手 緑半円:情報伝達手の配置赤星:視線固定の目印とする) 図3 タブレットの数値による視線固定 図4 リッカート尺度によるアンケート 5. 実験結果  情報伝達手の各角度と距離の配置において,片手サインの正答率,片手サインのみやすさ,片手サインのストレス,片手サインに対する反応時間,並びに,実験後のアンケートについて得られた結果について,順に示す. 5.1 片手サインの正答率  実験参加者5名分による正順と逆順に分けたそれぞれの正答率の個別データを図5に示す.図5より90%以上で占められている配置は1.75m40度以下,3.5m20度以下,7.0m20度以下,14m20度であることがわかる.  実験参加者5名分の各角度4種類と各距離4種類の16通り,それぞれの配置に対して10回試行した,正順と逆順を合わせて合計1600問に対する片手サインの正答率結果を図6にて示す.図6より,1.75mの20度から40度まで全ての角度,3.50m40度以下,7.00m20度,14m20度は正答率が95%以上占めている結果が得られていることがわかる.  正順と逆順を合わせて合計1600問のうちの誤答に対してどの指示内容を何に誤答した結果を図7に示す.図7より,誤答数159個のうち最も誤答が多かったものは指示内容が「シュート」に対して「GO」と回答したもので,合計62回であり,全体の39%を占めていることがわかる.次に多かったものは「GO」に対して「シュート」と回答したものであり,合計59回で,全体の37%を占めている.  指示内容が「シュート」の時,「GO」と誤答した結果を図8に示す.「シュート」と「GO」の片手サインの動作は動作方向が同じであるが手形が異なる.図8より,1.75m40度以下,3.50m20度では誤答数が0であることに対し,動作方向が同じ場合,手形の違いが認識しにくいと考えられる.  指示内容が「GO」の時,「シュート」と誤答した結果を図9に示す.図9より,7.00mから14.00mまで全ての角度にて誤答していることにより,7.00m以上で同じ動作の場合は手形の区別がしにくいことがわかる.  指示内容が「パス」の時,「シュート」と誤答した結果を図10に示す.図10より,指示内容が「パス」の場合,距離が1.75mの場合は角度が20度から80度,距離が3.5mの場合は角度が20度で識別できている.しかし,40度以上になると誤答している.  図8,図9,図10より,距離が7.0m以上になると「シュート」,「GO」と誤答しているため,距離が7.0m以上になると動作の方向が認識できていないと考えられる.さらに,14mでは指示内容が「パス」だけでなく,「シュート」と「GO」全ての角度に対して誤答されているため,片手サインを行う配置として適してないと考えられる. 5.2 片手サインの見やすさ評価  それぞれの配置による片手サインの見やすさの結果を正順と逆順に分けて視力の高い人から順に図11にて示す.図11から分かる通り,実験参加者全員が「はっきり見える」と回答したのは,1.75mの40度であることが得られた.また,「はっきり見える」と「やや見える」で占められているのは20度,40度の1.75mと3.50mである結果が得られた.一方で,14mの80度では実験参加者全員が「全く見えない」と回答を得られた.  視力を考慮した上で1.75m40度以下,3.5m40度以下では結果が「はっきり見える」と「やや見える」で占められていることによりろう・難聴者の選手にとって片手サインの見やすい配置と考えられる.7m40度以下では,「どちらとも言えない」,「やや見えにくい」と回答が見られた. 5.3 片手サインのストレス評価  それぞれの配置から出力される片手サインの見えやすさによるストレスについての結果を正順と逆順に分けて図12にて示す.図12から分かる通り,20度の1.75の40度では「全くストレスを感じない」という結果が得られた.一方で14.00mのうち,60度,80度では「はっきりストレスを感じる」と「ややストレスを感じる」占められている.しかし,No.1の正順の14m80度の回答では「全くストレスを感じない」という結果が得られた.これは,片手サインが「全く見えない」状況であるため,「全くストレスを感じない」と回答となった. 5.4 片手サインに対する反応時間  情報伝達手が片手サインをし終えてから,実験参加者が片手サインに従った動作を開始までを反応時間として設定した.正順と逆順を合わせた全ての反応時間の結果を図13にて示す.  図13より,一番反応時間が短い配置は40度の1.75mの302msであることがわかる.次に1.75m20度,3.50m40度以下,60度の1.75mが350msを切っていることがわかる.400ms未満のものでは7m40度以下,1.75m80度となる.一方で,20度と40度の時,14.00mでは平均反応時間が400ms以上かかっており,60度と80度の3.50m以上の距離では400ms以上の平均反応時間がかかっている.したがって,片手サインに対して反応しやすい配置は反応時間が400ms未満である1.75m80度以下,3.50m40度以下,7.00m40度以下と考えられる. 5.5 実験後のアンケート  実験後に実施した5段階リッカート尺度による質問内容を図14に,得られた結果を図15に示す.  図15の質問4から,今回使用した片手サインのうち「GO」の片手サインは「どちらとも言えない」が3名「あまりそう思わない」が2名回答しているため見えにくいことがわかった.図15の質問6より,「シュート」の片手サインは,「シュート」と「GO」の片手サインでは,表1に示す通り,共に頭より上の位置から前に動作する前後動作で行われ,手形だけ異なる.これらのように動作する方向が同じである片手サインで手形が違う場合は,2回動作を繰り返すなど動作回数で区別をつけると良いと考えられる.一方で,動作の方向が違う片手サインでは1.75m80度以下,3.50m20度以下では誤答がなく,3.50m40度以上,7.00mの60度以上から誤答になっている.したがって,動作方向の異なるものは7.00m40度まで識別が可能だということが言える. 図5 片手サインの個別正答率 (実験参加者5名) 図6 片手サインの正答率(距離vs角度) 図7 誤答内容の内訳 図8 シュートをGOに誤答の内訳(距離vs角度) 図9 GOをシュートに誤答の内訳(距離vs角度) 図10 パスをシュートに誤答の内訳(距離vs角度) 図11 片手サインの見やすさ(実験参加者5名) 図12 ストレス度(実験参加者5名) 図13 片手サイン反応時間(実験参加者5名) 図14 実験後リッカート尺度による質問内容 図15 実験後リッカート尺度回答結果 6. 考察  図5,図6,図9,図10の結果より,正答率,見やすさ,見やすさによるストレスを総合的に踏まえた上で,情報伝達手の配置として適切な配置は,正答率が95%以上占めていることにより,1.75m40度以下,3.5m40度以下,7m20度であり,実際の試合にも導入可能だと考える.  図7~10の結果より,片手サインは,動作の方向が同じである「シュート」と「GO」では動作方向が同じである場合,手形の識別がしにくいと考えられる.したがって,同じ方向へ動作を行う場合は動作の回数を2回繰り返すなど回数に区別をつけると良いと考えられる.図6の正答率と図10の誤答率により.動作の方向が違う場合は,7.00m2040度ならば識別は可能であると考えられる. 7. まとめと今後の課題  本研究では,ろう・難聴者のバスケ試合中に適した片手サインの提案と情報伝達手の導入を行うため,日本手話,ASL,ジェスチャーを基にバスケ試合中に影響の少ない片手サインを考案した.片手サインの見やすさと情報伝達手の適切な配置を決定するための実験を行った.  フレームレートが60iであるビデオカメラで撮影したものを基に,各配置での片手サインの正答率とELANによる時間分析で反応時間を求めた.実験中の片手サインの見やすさと,見やすさによるストレスの質問,実験後の自由記述を含むアンケートより,総合的に最も情報伝達しやすい配置を分析した.その結果,ろう・難聴者の選手の正面から1.75m40度以下,3.50m40度以下,7.00m20度の位置が適切な配置であることが考えられた.正答率を95%占めており,実現可能であることが言える.  また,見やすい片手サインについては動作の方向が同じ場合は動作を繰り返す回数で区別する.動作が異なる場合は適切な配置として決定された距離と角度内では識別が可能であると考えられる.  今後の課題として,ろう・難聴者が実際の試合を想定して行うとき,情報伝達手の適切であると決められた配置に情報伝達手を起用することにより,実際に試合中に使用可能かどうかを検証する必要がある. 参考文献 [1] 白石 優旗, 設楽 明寿, デフスポーツにおける支援技術: 競技特性・ルールと技術の関係, 第151回日本音響学会研究発表会講演論文集, 2024年, No?.2-6-1, p.p.1-2 [2] I.T.I.C. 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[3] 岡村 幸恵, 柴田 雅貴, 大門 芳行, バスケットボール競技における状況判断と戦術行動に関する―考察: 状況を設定したトレーニングに着目して. 日本女子体育大学紀要, 39: pp.17-26, 2009. [4] 一般社団法人B-BALLY’d(ビバリード) 代表理事須田 正広,サインバスケットボールを追求する,(発行年不明), 〈https://b-bally-d.com/signbasketball/〉(参照 2024-02-15). [5] 第21回夏季デフリンピック大会帯同報告,中島 幸則,帝京大学医療技術学部スポーツ医療学科,帝京大学スポーツ医療研究,3巻,pp.13-16,2011,http://hdl.handle.net/10682/1029 [6] 穂苅 真樹, 沖 俊典, 聴覚障害者スポーツのための報知·警告システムの開発, スポーツ産業学研究, 2015, 25巻, 1号, p.1_89-1_95, 公開日 2015/05/27, Online ISSN 1884-2534, Print ISSN 1343-0688, https://doi.org/10.5997/sposun.25.1_89, [7] 青山 利春, 竹見 昌久, 岡本 三郎, 「光スタートシステム」の開発・普及活動の取り組み, 聴覚障害, 67巻, 743号, pp.21-26, 2013 [8] Akihisa Shitara, Miki Namatame, Sayan Sarcar, Yoichi Ochiai, Yuhki Shiraishi, HaptStarter: Designing haptic stimulus start system for deaf and hard of hearing sprinters, International Journal of Human-Computer Studies, Volume 182, 2024, 103168, ISSN 1071-5819, https://doi.org/10.1016/j.ijhcs.2023.103168.(https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1071581923001775) [9] 須見 芳紀, 小林 昰禎, 吉田 公基, 工藤 義昭, 周辺視の反応時間について(第1報), 1972-09