修士論文 キルギス共和国における外国手話言語教育の導入に関する予備的研究 令和3年度 筑波技術大学大学院修士課程技術科学研究科 情報アクセシビリティ専攻 BOLOTBEK KYZY SAIKAL 筑波技術大学 修士(情報保障学)学位論文 目次 第 I 部 序論 3 第 1 章 キルギス共和国における教育と言語 5 第 1 節 キルギス共和国の学校教育制度 5 第 1 項 一般学校教育制度 5 第 2 項 特別支援学校教育制度 6 第 2 節 キルギス共和国における言語の状況 8 第 1 項 音声言語 8 第 2 項 手話言語 9 第 3 節 キルギス共和国における聴覚障害者協会および手話言語通訳の状況 10 第 1 項 聴覚障害者協会 10 第 2 項 手話言語通訳 10 第 4 節 まとめ 12 第 2 章 先行研究と本研究の動機 13 第 3 章 論文の目的と構成 15 第 1 節 研究の目的 15 第 2 節 研究の方法 15 第 3 節 論文の構成 15 第 II 部 本論 17 第 4 章 調査 1.ビシケク市在住の聴覚障害青年に対する質問紙調査 19 第 1 節 目的 19 第 2 節 方法 19 第 3 節 質問項目の構成 19 第 4 節 結果 21 第 5 節 考察 25 第 5 章 調査 2.全日本ろうあ連盟 青年部会員に対する質問紙調査 28 第 1 節 目的 28 第 2 節 方法 28 第 3 節 質問項目の構成 28 第 4 節 結果 30 第 5 節 考察 36 第 6 章 調査 3.日本で外国手話言語教育を実施する民間団体役職者へのヒアリング調査 39 第 1 節 目的 39 第 2 節 方法 39 第 3 節 質問項目の構成 39 第 4 節 結果 41 第 5 節 考察 42 第 III 部 結論 45 第 7 章 総合考察 47 第 8 章 本研究の限界 50 巻末資料 51 謝辞 82 引用・参考文献 83 第 I 部 序論 第 1 章 キルギス共和国における教育と言語 本章では、キルギス共和国の一般学校教育、聴覚障害教育、音声言語、手話言語、手話 言語通訳、聴覚障害者協会に関する概要を述べる。なお、記載にあたっては、キルギス共 和国の法律、聾特別支援学校長及び中途失聴・難聴特別支援学校教副学長へのヒアリング 調査結果(巻末資料 1, 2)、筆者の学部卒業論文(Болотбек кызы С., 2019)、国連特別専門 家の調査報告(Fernand,2021)、及び関連省庁への確認結果を文献として使用する。 第 1 節 キルギス共和国の学校教育制度 キルギス共和国と日本の学校教育制度は、キルギス共和国の初等・中等教育が 11 年間 であるのに対して、日本では 12 年間であるという違いはあるが、基本的にはほぼ同様の内容である。しかし、特別支援学校の制度には大きな違いが見られる。以下これらについて具体的に記述する。 第 1 項 一般学校教育制度 キルギス共和国の法律によると、学校教育は初等教育が 4 年(6/7 歳~9/10 歳)、前期中 等教育が5年(10/11 歳~14/15 歳)、後期中等教育が 2 年(15/16 歳~16/17 歳)となって いる。初等・前期中途・後期中等教育を一般教育学校、ギムナジウム学校1、ライシアム学 校2のいずれかで受けることになり、それぞれ入学・進学条件が異なる。また、初等・前期 中等教育は義務教育であり、その後、後期中等教育機関に含まれる実業専門学校(2 年)、 または、カレッジ(3 年)に進学することができる。後期中等教育を受け、全国試験に合 格すれば高等教育機関である大学、インスティテュート3、アカデミー4への入学ができる。 カレッジでの専攻を高等教育機関で連続する際に、4 年ではなく 3 年の教育になる。【図 1】一般学校教育制度は日本の学校教育制度と比較したものである。 1 生徒の適性と能力に応じて、人文科学分野の一般教育カリキュラムを実施する教育機関。 2 生徒の適性と能力に応じて、自然科学・物理学・数学分野などの一般教育カリキュラムを実施する教育機 関。 3 特定分野の専門家を育成する。 4 1つの特定分野で専門家を育成する。 【図1】一般学校教育制度 第 2 項 特別支援学校教育制度 キルギス共和国の聴覚障害児童・生徒に対する教育機関は、聾特別支援学校と中途失聴・ 難聴特別支援学校の二種類があり、前者は首都に 1 校5と、南部(首都から約 600km 離れている)に 1 校、後者は首都に 1 校6が設置されている。どちらに入学するかについては、心理医学教育相談所7が判定する。 法律によると、これら特別支援学校の第 1 段階(初等教育)は一般学校と同じ4年であ るが、第 2 段階(前期中等教育)は一般学校の5年より1年長い6年とされている。その ため、義務教育期間は一般学校と異なって 10 年になる。なお、第3段階(後期中等教育) は一般学校と同じ2年である。しかし、第3段階まで進学する生徒は少数であり、ほとん どの生徒が第 2 段階卒業後、実業専門学校に進学して、美容師や自動車整備士などの職業 技術を学ぶ現状がある。なお、学校教育制度上は、聴覚障害のある生徒も高等教育機関に 進学することが可能とされているが、両校の管理職に対して実施したヒアリング調査によ ると、中途失聴・難聴特別支援学校で高等教育機関に進学した例が僅かにあるのみとのことである。 5 生徒数 310 名、教職員数 82 名(2019 年度)。 6 生徒数 312 名、教職員数 84 名(2019 年度)。 7 キルギス共和国教育科学省制度により設置される教育相談機関。 キルギス共和国教育科学省の副大臣の質問回答(巻末資料5)によると「身体的または精神的な障害がある児童に対しては、治療、扶育、教育、社会適応と社会参加を 保障するために、特別グループ、学級、組織を編成することが法律で定められている。」と のことであり、実質的には聴覚障害のある児童が高等教育機関に進学するための環境は、 ほとんど整えられていないことが示唆される。 聾特別支援学校校長へのヒアリング調査によると、キルギス共和国では、ロシア連邦の 聾特別支援教育プログラムが導入されており、授業も主にロシア語で実施されるが、キルギス語で指導する学級もあるとのことである。教育目的は、卒業後一般社会に適応するこ ととされており、ロシア語の口話や発音の練習が中心となっている。手話言語は補助手段とみなされ、児童の理解を助けるために用いるものとされており、聾特別支援学校校長の 説明では、キルギス共和国には手話言語の研究所がなく、「キルギス手話言語」ではなく 「ロシア手話言語」の名称が使われるということである。 聾特別支援学校の教員は、国立大学特殊教育学及び心理矯正学科で育成されている。しかし、教育の困難さ故に辞める人が多く、教員不足の状況にある。 中途失聴・難聴特別支援学校では、ユニット I(聴覚障害による言語発達の軽度な遅滞 がある児童対象)とユニット II(聴覚障害による言語発達の深度な遅滞がある児童対象) に分けて教育が提供されている。聾特別支援学校と異なり、一般学校教育のプログラムが 用いられてる。教育言語はロシア語であるが、重複障害のある児童にはキルギス語による 授業が用意されている。教育目的は音声言語の理解と会話能力を向上させることにあり、 手話言語は補助手段として使う場合を除いて、基本的にその使用が禁止されている。【図2】はキルギス共和国の聴覚障害に関する特別支援学校教育を日本のそれと比較したものである。 第 2 節 キルギス共和国における言語の状況 第 1 項 音声言語 日本は言語に関する法律が存在しないが、言語政策として日本語が「国語」(national language)と位置付けられている。一方、キルギス共和国は、憲法でキルギス語が「国家語」 (state language)、ロシア語が公用語(official language)と定められている。国家を代表する「国家語」と公的な場面で使用する「公用語」という 2つの異なる表現が使われている が、法律的に明確な区別がされているわけではない。ロシア語が公用語とされるのは、ソ ビエト連邦時代のロシア語普及政策の影響が残り、またキルギス共和国に暮らす 80 以上 の民族間のコミュニケーション手段として使用されていることに理由がある。エスノローグ8によると、2018 年の調査では国民人口 638.1.6 万人の内、キルギス語使用者が 451 万 人、ロシア語使用者 286.8 万人となっており、一般的にロシア人と他の民族の多くが住む 首都では主にロシア語が使用され、首都以外の州、市、村では主にキルギス語、地域によってウズベク語、タジク語などの使用者が多いという傾向がある。 8 世界中の言語使用データベース https://www.ethnologue.com/ 国民は学校に入学する際に教育言語としてキルギス語とロシア語のどちらかを選ぶ権 利を有する。また、それ以外の言語を使用する少数民族に属する国民は、その民族の言語で教育を受けることができる。そして、国家語(キルギス語)か公用語(ロシア語)を習 得するための科目が義務付けられている。しかし、高等教育機関では、キルギス語で書か れた論文や教材が不足していること、また全国の大学 64 校中 43 校が首都ビシケク市に集 中していることなどの理由により、ロシア語の使用が優位な状況にある。 第 2 項 手話言語 障害者(直訳:健康の可能性に制限がある個人)の諸権利と保障に関するキルギス共和 国法は手話言語を次のように規定している。 「キルギス共和国においては、個人間の交流手段として手話言語(直訳;ジェスチャー 言語)が認められ、支持されており、生活の様々な領域におけるその発展と適用に関し諸 措置が講じられる。国は、健康の可能性に制限を持つ個人の諸権利擁護のため必要不可欠 な場合、手話言語通訳サービスを保障する義務を負う。」 これに対して、日本の法律では、障害者基本法に「全て障害者は、可能な限り、言語(手 話を含む。)その他の意思疎通のための手段についての選択の機会が確保されるとともに、 情報の取得又は利用のための手段についての選択の機会の拡大が図られること。」とある のみで、手話言語自体について定義する法文がない。その意味では、キルギス共和国にお いては国家レベルにおける手話言語の法的認知がなされていると言えるが、Болотбек кызы С.(2019)が指摘するように、手話言語の発展と適用に関する諸措置が取られている現状 とは言えない状況にある。また、日本では手話言語を使用する聴覚障害当事者の団体や、 複数の高等教育機関、研究機関で手話言語の研究が展開されているのに対し、キルギス共 和国では手話言語の研究に関する報告がない。 聾特別支援学校校長へのヒアリング調査では「キルギス手話言語」と呼ばれる手話は存 在しないということであった。というのも、キルギス共和国で用いられている手話は「ロ シア手話言語」であるという見方がなされており、エスノローグでもロシア手話言語の使 用者は 3.2 万人である(2021 年調査)という記述が見られる。Буркова С.И., Варинова О.А. (2012)が「旧ソビエト連邦の国々(キルギス共和国が含まれる)で使われる手話言語が 同一であるかを調査した研究では、ロシア手話言語とキルギス共和国の手話言語の間に差 は少ないという結果が出ている。しかし、さらなる研究が必要である。」と述べていること を紹介しておきたい。 第 3 節 キルギス共和国における聴覚障害者協会および手話言語通訳の状況 第 1 項 聴覚障害者協会 1951 年に設立された世界ろう連盟(WFD: World Federation of Deaf)は、手話言語を使用 する聴覚障害のある当事者による国レベルの団体が130 ヵ国から一団体ずつ加盟している が、キルギス共和国からの加盟はない。隣国であるウズベキスタン、カザフスタン、タジキスタンから加盟があるのと対照的である。日本では、手話言語を使用する聴覚障害のあ る当事者の全国団体が 1947年に創立されており、1959 年に世界ろう連盟の加盟を果たしている。このように、WFD の加盟団体、すなわち手話言語を使用する聴覚障害のある当事者自身が団体を設立し、手話言語と聴覚障害者の地位向上を目指して取組みを展開してい る現状がある。キルギス共和国に WFD の加盟団体がないということは、この国で手話言語と聴覚障害者の地位向上を目ざす取組みが展開されていないことを意味する。 ただし、視覚障害者団体や行政が主導する福祉的な団体はいくつかある。例えばキルギス共和国視聴覚障害者協会9は、主に視覚障害者と聴覚障害者の雇用活動に取り組んでいる 団体で 2019 年度は約5千人の聴覚障害者(18 歳以上の成人)が登録している。この協会 で長期間手話言語通訳に従事することで手話通訳者の証明証が発行されるようである。他 には、国際連合開発計画(UNDP)、韓国のシロアム(Siloam Center for the Blind)、労働社 会開発省の後援を受ける公的財団「プラス」10の組織下に「機会均等」というソーシャルセ ンターがあることが確認されている。このセンターでは聴覚障害者が無償でグラフィック デザイン、ビデオ編集、会計、コンピューターリテラシー、データデジタル化の教育を受けることができる(巻末資料 6)。 9 http://www.kosg.kg/ 10 https://fp.kg/ 第 2 項 手話言語通訳 キルギス共和国の法律では、手話言語通訳者の地位、手話言語通訳サービスの対象、養 成、放送番組への付与が次のように規定されている。 「手話言語通訳者は、手話を音声言語に翻訳及び逆翻訳する専門家である。 聴覚及び会話能力に障害を有する個人に対し、以下の場合、手話言語通訳サービスが提供される: ・教育及び保健機関において; ・取調活動が行われる際及び民事、行政、刑事事件をめぐる裁判プロセスに参加する際; ・諸文書あるいは契約の公証手続きの際; ・運転技能やコンピューターリテラシーを学習する際; ・国の、あるいは地方自治体のサービスを受ける際; ・法律に規定された、その他の場合. 手話言語サービスを受ける方法及び手話言語通訳料支払いの方法は、キルギス共和国政府により決定される。 国は、手話言語通訳者、聾特別支援学校教師、障害学者(直訳;欠陥学者、障害児の生理・心理・教育学的研究をする専門家の旧ソ連的表現)、言語聴覚士を毎年養成する義務を負う。 放送機関は、法律に従い、手話言語通訳あるいは字幕付きのニュース番組を流す義務を負う。」 しかし、Fernand(2021)によると、キルギス共和国に手話言語通訳者は4名しかおらず、 その全員が首都に居住しているとのことである。このうち 3 名は、先に述べたキルギス共 和国視聴覚障害者協会の証明証を有し、残る 1 名はロシア連邦の大学で学び同国の手話言 語通訳資格を有している。首都外の州、市、村などに住む聴覚障害者(全体の 40%)が、 手話言語通訳のサービスを受けているかどうかは不明とされている。この状況に対し、 Fernand(2021)は「キルギス共和国の政府にとって手話言語通訳制度の設立が緊急である」 と述べている。同様に Болотбек кызы С. (2019) でも、キルギス共和国に手話通訳制度が 確立されてないことが確認されている。しかし、キルギス共和国司法省の公式ウェブサイトでは、司法分野で手話通訳が可能な証明証を持っている手話言語通訳者 60 名のリスト が記載されている。司法省担当者の説明によると、「手話言語通訳者の認定はキルギス共和 国法務省の権限の範囲内にはなく、ホームページに掲載された 60 名の通訳者リストは、 UNDP とフィンランド外務省が助成するキルギス共和国視聴覚障害者協会のプロジェクト(研修)にて修了証を授与された者のリストである」ということである(巻末資料 10)。 一方、「Current Time」というテレビとデジタルネットワークのウェブサイトには、2021 年 4 月 18 日よりキルギス共和国で新しい手話通訳を養成するソーシャルプロジェクトが 開始されたとの記事が掲載されている。プロジェクト担当者の話によると、この担当者は 20 歳のコーダ(CODA: Children of Deaf Adults)で、希望者から受講料を取って手話言語(口話、コミュニケーション方法、手話単語などが含まれる)を指導しているとのことである。 また、基本的な受講期間は 7-8 ヶ月程で、手話言語の会話練習に聴覚障害のある人が参加 することもある。受講完了者への手話言語通訳証明証の発行については、以前はキルギス共和国視聴覚障害者協会と国際連合開発計画(UNDP)から発行されていたが、現在は発行 されていないとのことである。このため、証明証の発行について様々な方面と話し合いを しているが、手話言語を教えること自体の制度がなく、行政的な支援を受けにくい状況に あるとのことだった。 一方、日本の状況を見ると、法律に手話通訳者の位置付けを規定するものはないが、身体障害者福祉法第4条の2に手話通訳事業、障害者総合支援法第 77 条第1項第6号に地 域生活支援事業の意思疎通支援が規定されている。手話言語を使用する聴覚障害のある当 事者団体と手話言語通訳者団体の長年の取組みによって、厚生労働省令等の施行とともに、手話通訳養成、認定、設置、派遣の制度が整備されている。国レベルでは手話通訳士資格 の認定があり、登録者数は 2022 年1月 31 日現在で 3,831 名となっている11。 第 4 節 まとめ 本章では、キルギス共和国における学校教育制度や手話言語政策について、日本の現状 と比較しながら述べてきた。ここでは、キルギス共和国では聴覚障害のある児童が聾特別 支援学校と中途失聴・難聴特別支援学校のいずれかに通っているが、高等教育機関への進 学率は低い状況にあることが示された。また、音声言語はキルギス語とロシア語が法的に 認知されており、地域によって使用される言語や使用者が異なっていた。一方、手話言語 は法律に規定があるものの、使用者の権利が認められているとは言い難い現状にあり、「キ ルギス手話言語」ではなく「ロシア手話言語」の名称が使われていた。あわせてキルギス 共和国に手話言語を使用する聴覚障害のある当事者の団体の存在は認められず、手話言語 通訳制度も充実した状況にあるとは言えなかった。このことから法律に規定される内容に 現状が追いついていないことが見てとれ、この意味では法律に規定される内容が薄くても 制度と人材が充実している日本の社会と正反対の状況にあるといえよう。 11 http://www.jyoubun-center.or.jp/slit/list/ 第 2 章 先行研究と本研究の動機 Fernand(2021)がキルギス共和国における手話言語と手話言語通訳者の現状を報告しているが、研究論文としては Болотбек кызы С. (2019)がある。この論文は、キルギス共和国 の①手話通訳者 3 名への面接調査、②きこえる国民 111 名への質問紙調査、③聴覚障害が ある国民 17 名への質問紙調査、④聾特別支援学校教員 5 名への質問紙調査を実施してい る。これらの調査結果として、キルギス共和国の現状を①手話言語と手話言語通訳に関す る制度が確立されていない、②手話言語通訳者の社会的地位が低い、③手話言語の専門家 と手話言語通訳者が不足している、④専門手話言語通訳者の認定資格制度がない、⑤高等 教育機関に手話言語の専門教員や手話言語通訳者が配置されていないとまとめている。そ して、「キルギス共和国で政府が手話言語に関する施策を実現するに時間がかかることを 考えると、ろう者が国際的な会議やスポーツ大会に参加して外国の状況を自ら学ぶことが 重要であり、そのために国際手話(International Sign)の導入が必要であろう。このことに より、きこえる国民との交流も促進され、バリアフリーの意識が高くなるだろう。同時に 手話言語通訳者の養成とろう教育の充実が急務だ。」と結論づけている。しかしながら、手 話言語を使用する聴覚障害のある当事者による団体の有無に関する記述がなく、アメリカ 手話言語(American Sign Language: ASL)ではなく国際手話を導入することの理由も示され ていないことから、結論として示された内容について裏付けを取る必要があるだろう。一 方、手話言語を使用する聴覚障害のある当事者の団体が 1947 年から活動しており、手話 言語の社会的認知が進み、手話言語通訳制度の整備がなされている日本において国際手話 や ASL の導入がどういう役割を果たしているかを調査することで、上記結論への裏付けと なるデータを得られる可能性があろう。 一方、日本において国際手話や ASL の導入がいかになされたか、そして手話言語を使用する聴覚障害のある国民の言語意識を含む世界観にいかなる影響を与えたかを総合的に 論ずる文献は、筆者が調べる限り見当たらない。これに対して、学校教育における ASL の 導入の成果と課題、展望を論ずる文献は複数ある。例えば、山澤・小田(2016)は全国の公立特別支援学校(聴覚障害)の小学部の外国語活動の現状、課題などを調査した結果「特 別支援学校の外国語活動におけるゲストティーチャーには、単に英語が話せる人というだ けではなく、ASL ができる人や海外のろう文化に詳しい人などが授業に招かれていた」と 述べている。そして「外国活動を担当する教員の自身の英語力や ASL 力も深く関係してい ると考えられる」ことから「教員に対する ASLの研修会を設けたり、教員向けの ASL の指 導書や教材等を充実させたりすることの必要性も感じられた」と指摘している。上原他(2018)は「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画(文部科学省,2013)が進め られる一方、聴覚障害のある子どもへの英語学習における支援は非常に遅れている」現状 を明らかにし、「グローバル化に対応した外国語教育施策を考える際、手話を使用する聴覚 障害児に対して、世界で最も多く使われる手話であるASLを語学教育の一環として導入するのは極めて自然な流れである。」と考察している。この研究を継承する形で、浦田他(2019)は、日本語と日本手話言語、英語と ASL を音韻論、形態論、統語論の 3 つの観点から言語 学的に対比した上で、聴覚障害学生の英語学習支援に関しては、「ASL の導入には様々な利 点や教育的効果が期待されるが、それを導入するための人材や教材等の確保に課題があり、 それを解決していくことは勤務である。」と結論づけている。これらの文献から、日本の特 別支援教育(聴覚障害)の現場で ASL の導入がいくつかの形でなされており、その必要性 を論ずる研究が複数あるものの、全体的には実践報告にとどまるものが多く、ASL の導入による教育効果、児童に与えた影響を調査する研究はなされていないということが言える。 第 3 章 論文の目的と構成 第 1 節 研究の目的 キルギス共和国における聴覚障害青年の言語使用状況と言語意識を把握し、日本における聴覚障害青年の外国手話言語に関する言語使用状況と言語意識を調査することで、キル ギス共和国に外国手話言語教育を導入することの意義と可能性を検討する。 第 2 節 研究の方法 論文の目的を達成するため、以下の3つの調査を実施し、得られた結果を分析して総合 的に考察する: 1) ビシケク市在住の聴覚障害青年を対象に質問紙調査を実施し、言語使用状況と言語 意識、外国手話言語への関心の度合いを明らかにする。 2) 全日本ろうあ連盟青年部会員を対象に質問紙調査を実施し、外国手話言語の使用状 況と言語意識を明らかにする。 3) 日本で外国手話言語教育を実施する民間団体役職者を対象にヒアリング調査を行っ て、日本における外国手話言語教育の経緯を把握する。 第 3 節 論文の構成 本論文の構成は、第 I 部序論、第 II 部本論、第 III 部結論で構成する。第 I 部序論で は、キルギス共和国の教育、言語、手話言語通訳等の状況を概観し、本研究の動機と目的 について述べる。第 II 部本論では3つの調査で得られた結果を示し、分析と考察を行う。 最後の第 III 部結論では、総合考察を述べる。具体的な構成を以下の【図 3】論文の構成 で示す。 第 I 部 序論 第1章 キルギス共和国における教育と言語 第 1 節 キルギス共和国の学校教育制度 第 2 節 キルギス共和国における言語の状況 第 3 節 キルギス共和国における聴覚障害者協会および手話言語通訳の状況 第 4 節 まとめ 第 2 章 先行研究と本研究の動機 第 3 章 論文の目的と構成 第 1 節 研究の目的 第 2 節 研究の方法 第 3 節 論文の構成 第 II 部 本論 第 4 章 調査 1.ビシケク市在住の聴覚障害青年に対する質問紙調査 第 5 章 調査 2.全日本ろうあ連盟青年部会員に対する質問紙調査 第 6 章 調査 3.日本で外国の手話言語教育を実施する民間団体役職者に対するヒアリング調査 第 1 節 目的 第 2 節 方法 第 3 節 質問項目の構成 第 4 節 結果 第 5 節 考察 第 III 部 結論 第 7 章 総合考察 第 8 章 キルギス共和国に国際手話教育を導入することの意義 第 9 章 本研究の限界 【図 3】論文の構成 第 II 部 本論 第 4 章 調査 1.ビシケク市在住の聴覚障害青年に対する質問紙調査 第 1 節 目的 本調査の目的は、キルギス共和国のビシケク市在住の聴覚障害青年を対象に質問紙調査 を実施し、言語使用状況と言語意識、外国手話言語への関心の度合いを明らかにすることである。 第 2 節 方法 コロナ禍の影響による制約を受けて、ビシケク地域においてインターネットを通して調 査を行う方法が考えられたが、キルギス共和国の聴覚障害者にとって調査に関する説明な どの文章による内容が理解されるかという疑問によって、序論で紹介したソーシャルセン ター「機会均等」に勤務する手話言語通訳者(以下、協力者とする)に質問紙調査を委託 する方法をとった(筑波技術大学研究倫理委員会承認番号 2021-02)。 ソーシャルセンターが提供する職業訓練に参加する聴覚障害者のうち、聾特別支援学校 卒業生 25 名と中途失聴・難聴特別支援学校卒業生 25 名を調査対象とし、年齢は 20 歳から 35 歳までとした。調査説明文書、同意書、ロシア語で作成した質問紙等をソーシャルセ ンターに送付し、協力者が調査説明文書、同意書の内容をロシア手話言語に訳した動画を 作成し、調査対象者の確保を行った。2021年4月5日から 20 日までの期間で質問紙調査 が実施され、回答が書かれた質問紙と同意書 50 名分が筆者の元に郵送された。 回答を集計し、必要に応じてノンパラメトリック検定による統計的処理も含めて分析を行い、考察とした。 第 3 節 質問項目の構成 質問項目は I.基本属性、II.学校時代の言語生活、III.現在の言語生活、IV.手話言語 意識の大区分のもと、学校時代に手話言語を使う環境があったか、音声言語を使いこな せる状況にあるか、自国と外国の手話言語をどう意識しているかを把握できる質問項目で構成とした。質問紙はキルギス共和国特別支援学校で使用されているロシア語を用いた(巻末資料3)。日本語に訳したものを【図4】に示す。 【図 4】 調査 1. 質問項目の構成 I. 基本属性 1)年齢:_____(2021 年 4 月 1 日の時点で) 2)学校卒業年:____ 3)出身校:□ 中途失聴・難聴特別支援学校教 □ 聾特別支援学校 II. 学校時代の言語活動 4)小学校低学年の授業(教室)で先生は手話言語を使っていましたか。 □ はい □ いいえ □ さまざま 5)小学校低学年の授業(教室)で自分が手話言語を使うことは禁じられていましたか。 □ はい □ いいえ 6)中学校の授業(教室)で先生は手話言語を使っていましたか。 □ はい □ いいえ □ さまざま 7)中学校の授業(教室)で自分が手話言語を使うことは禁じられていましたか。 □ はい □ いいえ III. 現在の言語活動 8)3 つの言語について自分のレベルだと思われる段階に〇を付けてください。 レベル 言語 キルギス語 ロシア語 英語 全然できない1 挨拶ぐらいできる2 簡単な会話ができる3 日常会話ができる4 難しい内容でもできる5 IV. 手話言語意識 9)自分が使っている手話言語はどれだと思いますか。 □ ロシア手話言語 □ キルギス手話言語 □ どれも同じ 10)以下からできる外国手話言語を選んでください。 □ 国際手話 □ アメリカ手話言語 □ どれもできない 11)機会があれば何手話言語を習いたいと思いますか。 □ 国際手話 □ アメリカ手話言語 □ 思わない 第 4 節 結果 I.基本属性 年齢、卒業年、卒業校の回答結果から、全員が条件に該当することが確認され、全回答を有効回答と判定した。なお、年齢については下記の分布となった(【図5】回答者の年齢分布)。 【図5】回答者の年齢分布 II.学校時代の言語活動 学校の授業で教員が手話言語を使っていたかを問う設問では、第1段階(初等教育:日 本の小学校低学年)の授業に関しては、聾特別支援学校卒業者から「はい」 16 名(64%)、 「いいえ」 4 名(16%)、「さまざま」 5 名(20%)、中途失聴・難聴特別支援学校卒業者から 「はい」 5 名(20%)、「いいえ」 4 名(16%)、「さまざま」 15 名(60%)という回答があっ た(【図 6】第1段階の授業における教員の手話言語使用に関する記憶)。 【図 6】第1段階の授業における教員の手話言語使用に関する記憶 第3段階(後期中等教育:日本の中学校)の授業に関しては、聾特別支援学校卒業者か ら「はい」18 名(72%)、「いいえ」2 名(8%)、「さまざま」5 名(20%)、中途失聴・難聴 特別支援学校卒業者から「はい」3 名(12%)、「いいえ」8 名(32%)、「さまざま」14 名 (56%)という回答があった(【図 7】第3段階の授業における教員の手話言語使用に関す る記憶)。 【図 7】第3段階の授業における教員の手話言語使用に関する記憶 次に学校の教室で自分自身が手話言語を使用することを禁じられていたかを問う設問 では、第1段階(初等教育)の授業に関しては、聾特別支援学校卒業者から「はい」3 名 (16%)、 「いいえ」 22 名(84%)、中途失聴・難聴特別支援学校卒業者から「はい」18 名 (72%)、「いいえ」6 名(24%)、無回答 1 名(4%)という回答があった(【図 8】第1段 階の授業において手話言語使用を禁じられていたかの記憶)。 【図 8】第1段階の授業において手話言語使用を禁じられていたかの記憶 第3段階(後期中等教育)の授業に関しては、聾特別支援学校卒業者から「はい」3 名(12%)、 「いいえ」22 名(88%)、中途失聴・難聴特別支援学校卒業者から「はい」18 名(72%)、 「いいえ」7 名(28%)という回答があった(【図 9】第3段階の授業において手話言語使 用を禁じられていたかの記憶)。 【図 9】第3段階の授業において手話言語使用を禁じられていたかの記憶 以上の結果を見ると、第1段階と第3段階両方に共通する傾向として、聾特別支援学校 卒業者は、教室で教員が手話言語を使用しており、自身の手話言語使用を禁じられてはい なかったという回答が多かった。一方、中途失聴・難聴特別支援学校卒業者は、教室で教 員が手話言語を使用したりしなかったりさまざまであり、自身の手話言語使用は禁じられ ていたという回答が多かった。 III.現在の言語活動 序論で述べたように手話言語通訳制度の整備が不十分であるキルギス共和国の現状で は、聴覚障害のある国民が社会参加を果たすための条件の一つとして音声言語による会話 がどの程度できるかが重要になっているものと思われる。このためキルギス語、ロシア語、 英語について会話力を自己評価させる設問について尋ねたところ、50 名中 48 名の回答を得られた。 聾特別支援学校卒業者 24 名と中途失聴・難聴特別支援学校卒業者 24 名の回答 を【図 10】に示す。 【図 10】音声言語会話力の自己評価 聾特別支援学校卒業者については、ロシア語とキルギス語において簡単な会話または挨 拶程度の自己評価が多く見られ、英語は挨拶程度以下の自己評価が全てという傾向が見ら れた。中途失聴・難聴特別支援学校卒業者については、ロシア語は日常会話の自己評価が 圧倒的に多く、キルギス語は全てが同程度の回答数、英語は挨拶程度以下の自己評価が多 いという傾向が見られた。統計的処理を加えての分析と考察を次節で行う。 IV.手話言語意識 自分が使っている手話言語の 名称を問う設問では、【図 11】に示す通り、49 回答のうち 中途難聴特別支援学校卒業者の 1 名を除く 48 回答がロシア手話言語を選択する結果がでた。 【図 11】 自分が使う手話言語 国際手話とアメリカ手話言語について、使える言語と習いたい言語を選択する設問に対 しては、【図 12】【図 13】に示す回答を得た。 使える言語については、聾特別支援学校卒業者は「国際手話」20 名(80%、「アメリカ 手話言語」4 名(16%)、「どれもできない」1 名(4%)、中途失聴・難聴特別支援学校卒業 者は「国際手話」15 名(60%)、「アメリカ手話言語」6 名(24%)、「どちらもできない」 7 名(28%)という回答であった。なお、国際手話もアメリカ手話もできると回答した人 数は聾特別支援学校卒業者 2 名、中途失聴・難聴特別支援学校卒業者 3 名であった。 【図 12】 できる外国手話言語 習いたい言語については、聾特別支援学校卒業者は「国際手話」23 名(92%)、「アメリ カ手話言語」5 名(20%)、「思わない」0 名、中途失聴・難聴特別支援学校卒業者は「国際 手話」18 名(72%)、8 名(32%)、2 名(8%)という回答であった。なお、国際手話もア メリカ手話も習いたいと回答した人数は聾特別支援学校卒業者 3 名、中途失聴・難聴特別 支援学校卒業者 3 名であった。 【図 13】 習いたい外国手話言語 第 5 節 考察 1) 学校時代の言語生活に関する回答結果から、聾特別支援学校の教室では教員が手話言 語を使用しており、生徒も手話言語の使用を制限されてはいなかったことがうかがえる。一方、中途失聴・難聴特別支援学校の教室では教員の手話言語使用がまちまちで あり、生徒は手話言語の使用を制限されていたことがうかがえる。この結果は両校の 管理職へのヒアリング結果とも一致している。聾特別支援学校の校長は「子どもたちがお互い話しをする時には、どうしても手話が使われる。私たちがどれだけ使用禁止 としても、彼らは手話利用した方が会話しやすいから使う。」と述べている。これに対 して中途失聴・難聴特別支援学校の校長は、「手話は禁止している」、「授業中には聴覚 や発話を良くさせるよう教育する」と述べているが、生授業以外の場面では、生徒た ちが手話言語を用いているのであろう様子ことを示唆される。また、両校が寄宿舎制 であり、300 名を超える生徒が 10 年間の学校生活を共にすることを考えると、両校と も手話言語を使う集団が形成される環境にあることが推察できる。 2) 音声言語会話力の自己評価に関する回答結果にフリードマン検定(SPSS 使用)を実施 したところ、聾特別支援学校卒業者については、英語とキルギス語の間に差が見られ なかったが(p=0.511)、英語とロシア語(p=0.0)、キルギス語とロシア語(p=0.001) には 0%水準の有意差がみられた。なお、平均値はキルギス語 2、ロシア語 3、英語 1.5、 中央値は、キルギス語 2、ロシア語 3、英語 2 であった。一方、中途失聴・難聴特別支 援学校卒業者については、英語とキルギス語(p=0.024)、英語とロシア語(p=0.0)、 キルギス語とロシア語(p=0.045)と、全ての言語間に 0%水準の有意差が見られた。なお、平均値はキルギス語 2.8、ロシア語 3.7、英語 1.8、中央値はキルギス語 3、ロシア語 4、英語 2 であった。また、聾特別支援学校卒業者グループと中途失聴・難聴特 別支援学校卒業者グループの間では、英語に有意差がみられなかった(p=0.223)が、 ロシア語(p=0.005)とキルギス語(p=0.028)に有意差がみられた。 これら統計的処理の結果から、聾特別支援学校卒業者はロシア語会話への自己評価が キルギス語と英語と比して高いものの、中途失聴・難聴特別支援学校卒業者との比較 では劣ること、そして中途失聴・難聴特別支援学校卒業者はロシア語、キルギス語、 英語の順で自己評価が高いことが言える。これは、特別支援学校の教育言語がロシア 語であること、各校生徒の保有聴力に差があること、両校の教育方針における手話言 語の扱い方の違い、家族から離れて寮生活を送っている環境などの要素が関与してい るものと思われる。また音声言語、特に国家語であるキルギス語及び公用語であるロシア語の会話力について、きこえる国民と同等であると自己評価する回答が非常に少なかった。この結果は、Fernand(2021)に記述されるように、キルギス共和国において聴覚障害のある国民が社会参加を果たせる状況に十分ではないことを示唆している。 また、特別支援教育における音声言語の教育に課題があることも示唆されるが、これについては本研究の範囲を超えているため、ここでは深く論しないこととする。 3) キルギス共和国においては手話言語使用者自身がキルギスではなく「ロシア手話言語」 の呼称を用いていることが明らかになった。この理由として、キルギス共和国の手話言語に関する研究がないこと、特別支援学校においてはロシア連邦の聴覚特別支援学 校教育プログラムが導入されていること、教育言語はロシア語がメインであることな どが考えられる。先述のエスノローグではロシア手話言語がキルギス共和国でも使用 されているとの記述がある一方、ロシア連邦の少数言語研究・保存研究所のウェブサ イト12ではロシア手話言語が旧ソビエト連邦の国々、ウクライナ、ベラルーシ共和国、 カザフスタン共和国、ウズベキスタン共和国、タジキスタン、モルドバ共和国で使われると記載されており、そこにキルギス共和国は含まれていない。また、ウズベキスタン共和国で使用される手話言語については、国際協力機構(JICA)の助成を受けて 同国の聴覚障害当事者団体が編集に関わった手話辞書のタイトルが「ウズベキスタン ろう者の手話言語」とされている。一方、インターネット上の報道サイト«Газета.uz»13 には、ウズベキスタン共和国の独立以来の経過において、ロシア手話言語の方言とし て認知されている同国の手話言語に「ウズベク手話言語」の呼称を与えるかは未解決 であることが記載されている。このように、キルギス共和国を含む旧ソビエト連邦の 国々ではロシア手話言語の方言または派生状況に関する調査研究が乏しく、手話言語 を使用する聴覚障害当事者のコミュニティでも独立した呼称を用いるか否かという手 話言語に対するアイデンティティが意識されていない状況にあると思われる。 4) 国際手話とアメリカ手話言語については、聾特別支援学校卒業者も中途失聴・難聴特 別支援学校卒業者もともに国際手話ができるとの回答及び国際手話を習いたいとの回 答がアメリカ手話言語のそれと比して多い結果となった。ただし、この調査ではそれ ぞれの技能に関する自己評価を求める設問がなく、また習いたい理由を向かう等設問 もないため、単にこの結果を示すにとどめ、次章以降の他の調査結果をあわせて総合 考察で取り上げるものとする。なお、キルギス共和国の聴覚障害青年からアメリカ手話言語は米国のろう者との交流に限られるが、国際手話は全ての国々のろう者との交 流に使えるというコメントがあったことを記す。 12 https://minlang.iling-ran.ru/lang/russkiy-zhestovyy-yazyk 13 https://www.gazeta.uz/ru/2020/09/23/sign-language/ 第 5 章 調査 2.全日本ろうあ連盟 青年部会員に対する質問紙調査 第 1 節 目的 本調査の目的は、日本人の聴覚障害青年を対象に質問紙調査を実施し、外国手話言語の 使用状況と言語意識を明らかにすることである。 第 2 節 方法 日本には手話言語を使用する聴覚障害当事者団体として、一般財団法人全日本ろうあ連盟が 1947 年の創立以来、聴覚障害者の権利擁護と生活向上を目指した取組みを継続して いる。この団体では全国 47 都道府県の加盟団体と別に、年代やジェンダーに応じた下部 組織として高齢部、青年部、女性部が独自の取組みを展開している。本調査では青年部の 会員(18 歳から 40 歳まで人)を対象に Google フォームを用いる質問紙調査をオンライン にて実施する方法をとった(筑波技術大学研究倫理委員会承認番号 2021-07)。回答期間は 2021 年 8 月 10 日から 8 月 31 日までの期間に設定し、合計 134 人から回答を得た。 回答を集計し、必要に応じてクロス集計を行い、カイ2乗検定及びノンパラメトリック 検定による統計的処理も含めて分析を行い、考察とした。 第 3 節 質問項目の構成 序論で述べたように、キルギス共和国と日本では聴覚障害者を取り巻く状況が大きく異なるために、調査1の質問項目に合わせる形は取らず、主に外国手話言語の使用状況と言 語意識に焦点を当てる構成とした。I. 基本属性、II. 外国手話言語ができる、III. 外国手話 言語ができない、の大項目で構成した質問項目を【図 14】に示す。 I.基本属性 1)年齢 2)いつ日本手話言語を使うようになりましたか。 3)青年部に入る前から日本手話言語を使っていました。 4)世界各国で手話言語がちがうことを知ったのはいつ頃ですか。 5) 外国の手話言語ができますか。 はい いいえ II. 外国手話言語ができる 6)下の表にある言語について自分の技 能レベルを選んでください。 7)アメリカ手話言語はどこで学びましたか。 8)国際手話はどこで学びましたか。 9)外国の手話言語を学び、どのようなことを感じましたか。 III. 外国手話言語ができない 10)外国の手話言語を覚えたいと思いま すか。 はい いいえ III.a 11)覚えたい理由を教えてくださ い。 12)どの手話言語を覚えたいと思い ますか。 III.b 13)覚えたいと思わない理由を 教えてくださ い。 【図 14】 調査 2. 質問項目の構成 第 4 節 結果 回答 135 件のうち無効とした 1 件を除く 134 件を有効回答とし集計対象とした。 I. 基本属性 回答者の年齢分布は【図 15】に示すとおり、多い順に 31~35 歳 56 名(42%)、26~30 歳 37 名(28%)、20~25 歳 26 名(19%)、36~40 歳 15 名(11%)となった。 【図 15】回答者の年齢分布 日本手話言語を使い始めた時期を問う設問では【図 16】に示す回答が得られた。一般的 に知られているように、聴覚障害者が手話言語を使い始める時期はまちまちであり、ここでもその傾向が現れた。「その他」(母に手話を教えて貰いながら発音訓練していた)を就学前後の時期と仮定すると、本調査の回答者 134 名中 111 名(82.8%)が学校を卒業するまでに使い始めていることがわかる。 【図 16】手話言語を使うようになった時期 青年部に入る前から手話言語を使用していたかを問う設問では、【図 17】に示す通り、 「はい」112 名(84%)、「いいえ」22 名(16%)という結果が出た。ここから手話言語を 使用することが青年部の会員となる条件になっているのではなく、会員となってから手話言語を使い始めていたり、または今も使っていない青年がいることが確認された。 【図 17】 青年部入会前後の手話言語使用状況 手話言語に関する知識の一つとして、世界各国で手話言語が違うことを知った時期を問 う質問を設定したところ、手話言語を使い始めた時期の回答と似た分布が見られた(【図 18】手話言語に関する知識)。これらの回答結果については、クロス集計した結果を次節で 考察することとする。 【図 18】手話言語に関する知識 外国手話言語ができるかどうかを問う設問では、できるとの回答が 39 名(29%)、できないとの回答が 95 名(71%)という結果が出た(【図 19】外国手話言語の使用状況)。 以降は、この二つのグループに分けて回答結果を記述する。 【図 19】外国手話言語の使用状況 II. 外国手話言語ができる回答者 外国手話言語ができると回答した 39 名に日本手話言語、アメリカ手話言語、国際手話 の技能を自己評価させる設問では、日本手話言語について「問題なくできる」の回答が 33 件(85%)と多く、中レベルを下回る回答はゼロであった。一方、アメリカ手話言語 と国際手話言語については、「問題なくできる」の回答が見られるものの、前者は中レベ ルより下となる「簡単な挨拶ができる」が最も多く、後者は中レベル周辺になる「簡単 な挨拶ができる」及び「簡単な会話ができる」が多いという結果が出た。統計的処理を 実施しての考察は次節で行う(【図 20】手話言語に関する自己評価)。 【図 20】 手話言語に関する自己評価 アメリカ手話言語と国際手話以外にできる外国手話言語については、韓国手話言語、 フィンランド手話言語、フランス手話言語、デンマーク手話言語、ベトナム手話言語、 中国手話言語の名前が挙げられた。 アメリカ手話言語または国際手話を学んだ場所を問う設問への回答を【図 21】に示す。 両方に共通して半数以上が選択した選択肢は使用者との交流であった(23 名(59.0%)、 24 名(61.5%))。アメリカ手話言語に関しては学校関連が多い傾向もあり、その他の回答 内容を含めた考察を次節で行う。 【図 21】アメリカ手話言語/国際手話を学んだ場所 外国手話言語を学び感じたことを選択肢から選ぶ設問で得た回答を日本手話言語意識、 言語知識、学習前後の変化の 3 つに分けて示す。日本手話言語意識については、半数を超 える 20 名(51.3%)の回答者が「日本手話言語に誇りを持てる」を選択し、「日本手話言語 を身につけていて良かった」15 名(38.5%)、「日本手話言語をもっと上手くなりたい」13 名(33.3%)と続く結果が出た(【図 22】日本手話言語意識)。一方、日本手話言語のユニー クさ及び単語・文法に関する選択がそれぞれ6名(15.4%)、4名(10.1%)と少なかった。 【図 22】 日本手話言語意識 言語知識に関する設問では、両者とも半数以上が選択したものはないが、【図 23】に示 す通り、国際手話について「もっと覚えて上手くなりたい」が 25 名(64.1%)と半数以上 の回答を得た。「日本手話言語と単語/文法が違う」も比較的多く選択されており、アメリ カ手話言語がやや上回る結果が出た。 【図 23】 言語知識 アメリカ手話言語または国際手話を学んだ後の変化については、【図 24】に示されるよ うに、「とくに感じたことはない」の選択がゼロであり、「国際交流が増えて嬉しい」が 28 名(71.8%)と半数を超えて選択される結果となった。次いで「アメリカ手話言語、国際手 話以外の手話言語を学びたい」が 15 名(38.5%)と続いた。 【図 24】 学習前後の変化 III. 外国手話言語ができない回答者 外国手話言語ができないと回答した 95 名のうち 78 名(82%)が外国手話言語を覚えた いと回答していた(【図 25】外国手話言語の使用状況)。 【図 25】 外国手話言語の使用状況 覚えたい理由については、【図 26】に示す通り、「外国人と交流したい」が 61 名(78%)、 「国際的な視野を広げたい」が 52 名(67%)と半数以上から選択されていた。 【図 26】 外国手話言語を覚えたい理由 覚えたい手話言語を問う設問では、【図 27】の通り、「国際手話」32 名(41%)、「アメリ カ手話言語」4 名(5%)、「両方」が 42 名(54%)という結果が出た。なお、「その他」6 名 (8%)のうち 3 名が「韓国手話」、残りの 3 名が「台湾の手話言語」、「中国」、「フランス 手話」と記述した。 【図 27】 何手話言語を覚えたいのか アメリカ手話言語も国際手話も覚えたいと思わないと回答した 17 名にその理由を問う 設問では、「興味がない」が 9 名(53%)と半数以上であった(【図 28】外国手話言語を覚 えたい理由)。なお、「その他」については「覚えたいが、教えてくれる人がいない」、「外 国の手話言語ではなく国際手話を覚えたい」、「もしいつか、やりたいとしたら、やってみたい」の記述があった。 【図 28】外国手話言語を覚えたいと思わない理由 第 5 節 考察 1) 日本手話言語を使い始めた時期を問う設問結果と世界各国で手話言語が違うことを 知った時期を問う設問結果を対象にクロス集計及びカイ 2 乗検定を実施した(統計分 析プログラム STAR)結果を【表 1】に示す。「▲」は一番有意に多く、どの項目と関 連性(p<.01)があるかを示す。表1で複数の▲が左上から右下に連なる分布と、左下 にいくほど数が少なくなる分布から、手話言語を使い始めるまでは世界で手話言語が 違うという知識を身につける機会がほぼなかったことうかがえる。手話言語を使い始 めた後の分布を見ると、使い始めてまもなくこの知識を身につけた回答者と社会に出 てから身につけた回答者のグループに分けられよう。これはろう学校の教育において 外国手話言語に触れる機会がある一方、その機会がない回答者は社会に出てからとな る状況の可能性を示唆している。 【表 1】質問2と質問 4 のクロス集計 2) 外国手話言語ができるとの回答 39 件について、日本手話言語、アメリカ手話言語、国 際手話の自己評価の結果にフリードマン検定(SPSS ソフトウェアを使用)を実施した ところ、日本手話言語とアメリカ手話言語、国際手話の間に 0%水準の有意差が見られ たが(p=.000)、アメリカ手話言語と国際手話の間には有意差がみられない(p=.925) という結果が出た。平均値は、日本手話言語が 4.8、アメリカ手話言語が 2.4、国際手 話が 2.8、中央値は、日本手話言語が 5、アメリカ手話言語が 2、国際手話が 3 であっ た。この結果より、外国手話言語ができると回答した者のほぼ全員が日本手話言語を 問題なく使えると評価する一方、アメリカ手話言語と国際手話については日本手話言 語ほどには使えていなく、そして国際手話がアメリカ手話言語をやや上まわると評価 していることが確認された。なお、アメリカ手話言語と国際手話言語の自己評価結果 に対して相関係数(excel を使用)を求めたところ、0.314 と弱い相関関係が認められた。 3) アメリカ手話言語と国際手話を学んだ場所については、「それぞれの使用者との交流」、 「インターネット上の動画」、「民間団体が提供する講座」が両者に共通して多く見ら れた。両者の違いについては、アメリカ手話言語をろう学校(英語授業、国際交流) または大学の授業(英語、アメリカ手話言語)で学んだとする回答が 21 件と国際手話 と比して多く、その他でも米国留学で学んだという回答が 2 件あったことから、アメ リカ手話言語は米国または英語と関連して学ぶ機会が多いことが予想される。一方、 国際手話については学校で学んだとする回答がのべ 4 件とアメリカ手話言語と比して 少なく、その他でも青年部関連の企画で学んだとする回答が 7 件あったことから、ア メリカ手話言語と異なるニーズと学ぶ環境があることがわかる。これについては調査 3の結果を踏まえて総合考察にて再度触れる。 4) アメリカ手話言語または国際手話を学んで感じたことを問う選択肢形式の設問で 39 件の半数以上選択があったものは、「国際交流が増えて嬉しい」28 件、「国際手話をもっ と覚えて上手くなりたい」25 件、「日本手話に誇りを持てる」20 件であった。また、 日本手話言語、アメリカ手話言語、国際手話の言語としての違いや、日本手話言語の 再認識に関する選択肢を選ぶ回答者が多かった結果を併せると、外国の手話言語を学 ぶことで自国の手話言語への気づきが促される可能性があろう。大津(1982,1989) は「二つ以上の言語体系が得られている場合には、それらを比較対照することが可能 になり、脳に内蔵している文法知識を客体化して利用することができるメタ言語能力 が発達しやすくなる。」と、言語を意識化させる能力について述べている。また岡田(1998)は「外国語と母語の相違点だけではなく、共通点も意識することにより、メタ言語能力を活性化することができ、相互的に適切な運用能力を育てることにつながる。」と述べており、これら外国語教育研究の知見を手話言語に当てはめて検討できる だろう。なお、日本手話言語の言語的特性に関する項目の選択が少なかったことは、 日本手話言語使用者への日本手話言語に関する科目としての教育が整備されていない 日本の現状を示唆する可能性がある。 5) 日本手話言語を使っていないと回答した5名を含む、外国手話言語ができないとの回答 95 件のうち、外国手話言語を覚えたいという回答は 78 件(82%)であった。その 理由として「外国人と交流したい」が 61 件、「国際的な視野を広げたい」が 52 件と選 択されたことは、上記(4)で「国際交流が増えて嬉しい」が多かった結果と一致するも のである。さらに、学びたい手話言語として国際手話が 74 件(77.9%)、アメリカ手話 言語が 46 件(48.4%)選択されていることから、外国人と交流して国際的な視野を広 げたいために国際手話またはアメリカ手話言語を学びたいと考える、本調査回答者の 平均的な姿が見えてこよう。 第 6 章 調査 3.日本で外国手話言語教育を実施する民間団体役職者へのヒアリング調査 第 1 節 目的 本調査の目的は、調査1、調査2で得られた、キルギス共和国(ビシケク地域)及び日 本における聴覚障害青年の外国手話言語使用状況と意識に関して考察を深めるために、日 本で外国手話言語教育を実施する民間団体役職者を対象にヒアリング調査を行って、日本 のろう者コミュニティにおける外国手話言語教育の経緯と背景を把握することにある。 第 2 節 方法 日本においてアメリカ手話言語の教育を実施している特定非営利活動法人日本 ASL 協会14の事務局長、国際手話の教育を実施している一般社団法人日本国際手話通訳・ガイド 協会15の代表理事、国際交流を推進している一般財団法人全日本ろうあ連盟青年部16の中央 委員4名に対し、2021 年 12 月 2 日に半構造化面接法によるヒアリング調査を Web 会議 サービス Zoom(ズーム)にて個別に実施した(筑波技術大学研究倫理委員会承認番号 2021- 23)。手話言語通訳を配置し、記録動画で手話及び音声から書記日本語の記録を作成した。 第 3 節 質問項目の構成 日本 ASL 協会と日本国際手話通訳・ガイド協会に対しては共通する質問項目を準備し た。全日本ろうあ連盟青年部に対しては主に調査 2 で得られた結果に関する質問を準備し、 ヒアリング調査中に対象者の回答によって質問を追加する形とした。あらかじめ準備した 質問項目を【図 29】に示す。 14 https://www.npojass.org/ 15 https://jiiga.com/ 16 http://jfdys.net/ 1)特定非営利活動法人 日本 ASL 協会ヒアリング調査内容 2)一般社団法人日本国際手話通訳・ガイド協会ヒアリング調査内容 質問 1.日本 ASL 協会の設立きっかけは何でしょうか。 質問 2.外国手話言語(国際手話含む)の講習会の開催は日本の聴覚障害者ときこえる人たちへどのような影響がありましたか。 質問 3.講習会の参加者は、聴覚障害者ときこえる人のどちらが多いですか。 質問 4.日本の手話言語を身につけていなくても外国の手話言語(国際手話含む)を習得することはできますか。 質問 5.全日本ろうあ連盟青年部会員へ行ったアンケート調査の結果では、国際手話への 関心が強いという結果になった。その理由は何と思われるでしょうか。 質問 6.本協会はアメリカ手話言語を選んで指導されてる理由は何でしょうか。 3)一般財団法人 全日本ろうあ連盟 青年部 質問 1.アンケート回答にあった「青年部の企画」とはなんですか。 質問 2:国際手話とかアメリカ手話言語を教える企画というのもありますか。 質問 3:国際交流に関するどのようなものが行われていますでしょうか。 質問 4:この国際交流に参加するために、例えば、国際手話ができることのような何か条 件がありますでしょうか。 質問 5.アンケートの結果としては、国際手話に興味を持ってる人の方が多かったです。 その理由は何でしょうか。 質問 6.アンケート調査結果によると、外国手話言語(国際手話を含め)ができないが、 覚えたいという回答者が(82%)多かった。それで、国際手話の講習会に青年部の会員と して参加するのに何か条件がありますでしょうか。 質問 7.:これまでの国際交流の中で色々な状況に関わってきて、国際手話の方が良いか、 アメリカ手話でも良いかコメントをもらえますか。 質問 8.皆さんが国際交流、国際手話の講習経験があるということで、それの自国の文化 や言語に関する影響がありましたか。 【図 29】 調査 3. 質問項目の構成 40 第 4 節 結果 ヒアリング調査の記録動画より作成した書記日本語記録(巻末資料7、8)を用いて、 日本ASL 協会と日本国際手話通訳・ガイド協会の回答を【表 2】に整理した。 【表 2】日本 ASL 協会と日本国際手話通訳・ガイド協会の回答の概要 全日本ろうあ連盟青年部中央委員の回答については、書記日本語記録(巻末資料9)か ら主なものを抜粋して以下に示す。 ・世界ろう連盟青年部、アジア地域事務局青年部、全日本ろうあ連盟青年部、各地域の青 年部それぞれにおいて国際交流または国際手話に関する企画を実施している。 ・青年部ではアメリカ手話言語ではなく国際手話に絞って会員が国際手話を学ぶ機会を増 やすようにしている。 ・国際手話を学ぶ動機は国際交流の欲求が主であると考えるが、青年部として国際手話の 学習を奨励していることも影響していると思われる。 ・アメリカ手話言語を学べば世界中のろう者と話せると思い込んでいたが、そうではな意 ことがわかったために国際手話の学習に切り替えた会員もいる。 ・きこえる人同士は国際交流で英語がないとなかなか上手くいかないようだが、きこえな い人同士では日本の手話言語と相手国の手話言語のすり合わせから国際手話コミュニ ケーションが成り立つので、そこが良い面である。 ・国際交流をする中で自国のことを知らない自分に気づいた会員もいる。 ・国際交流において各国の状況を学び合い、そこから収穫を得て自国にて青年部の設立に つなげる例がある。 第 5 節 考察 1) 日本 ASL 協会及び日本国際手話通訳・ガイド協会の役職者を対象に実施したヒアリン グ調査では、1988 年の米国留学経験者による日本 ASL 協会の設立から 1991 年に東京 で開催された世界ろう者会議と続く中で、米国留学や国際交流への関心が高まり、ア メリカ手話言語の学習者が増加したという経緯を確認できた。日本 ASL 協会のウェブ サイト17によると、当協会は設立以来アメリカ手話言語の教育を中心としているが、米 国以外の国々との国際交流のニーズの高まりに応えて 1997 年に国際手話教育も開始 している。この流れで、本調査でも確認できたように 2008 年に国際手話学習者を中心 に日本国際手話通訳・ガイド協会が設立されたということになる。日本におけるろう 者コミュニティの歴史を単純に見ると、1947 年の全日本ろうあ連盟創立から 40 年ほ どが経過して外国の手話言語への関心が広がり始めたことになる。また、1990 年代は 国連「国際障害者年」キャンペーンが社会における障害者への理解を広げ、手話通訳 士試験がはじまるなど手話言語通訳制度の充実が図れた時期になる。 17 https://www.npojass.org/ 2) 世界ろう者会議が開催された 1991 年から 30 年が経過した現在、アメリカ手話言語と 国際手話のそれぞれにおいて、両手話の学習と普及を目的にした団体が設立され、継 続してきていることもヒアリング調査で確認できた。日本のろう者コミュニティにお いては、米国留学や米国人ろう者との交流を目的にアメリカ手話言語を学び、より幅 広く国際的なろう者との交流を目的に国際手話を学ぶという構図が共有されているこ とが窺える。 3) 全日本ろうあ連盟青年部中央委員へのヒアリング調査から、同青年部がアジア太平洋 地域レベルで国際交流を企画することで、国際手話を使用する機会が増加し、国際手 話への関心が広がり、地域青年部などでの国際手話講習会の企画につながるという流 れができていることを確認できた。これからは、調査2でアメリカ手話言語より国際 手話への関心度が高い傾向が見られたことの一要因となっている可能性があるだろう。 一方、ヒアリング調査では国際交流を経験することで自国の文化への気づきがあるが、 自国の手話言語への気づきはないというコメントが得られた。しかしながら、調査2 の結果によると自国の文化とともに自国の手話言語への気づきが起きていることが示 されており、実際の学習者の実感の中では、手話言語へ気づきが生じていることが分 かる。 4) 他国の聴覚障害青年が国際交流で国々の状況を学び合い自国の青年部立ち上げにつな げる例がヒアリング調査で紹介された。嶋本(2012)が 2006 年に「1.リーダーシッ プについて学ぶ。2.アジア太平洋ろう者の社会・生活について学ぶ。3.各国の言 語、文化、経験についてお互いに相互理解を深めていく。」をテーマにアジア太平洋地 域のろう青年キャンプを実施したことを述べている。このキャンプでは国際手話でコ ミュニケーションが図られるものであり、その後も継続して開催されている。そして 2010 年開催の第5回キャンプの成果について「発展途上の経済的に厳しい国でも、『公 式行事として明確な目的が掲載された資料を添付し、政府へ渡旅費を申請できること が最大の喜びと成果』と、耳にするようにもなりました。これは、単に旅費が貰える だけでなく、聴覚障害者自身が政府とコンタクトできるようになったということであ り、非常に大きな成果と言えるでしょう。この青年たちが将来、政府と対等に交渉す るためのノウハウを得て、近隣の国々のろう者ネットワークを構築し、いつかはその 国のろう協会の顔として、世界ろう連盟アジア太平洋地域事務局代表者会議に出席し てほしい。その日が遠くないであろうことを、今からとても楽しみにしています。」と 述べている。この記述から(1)他国の聴覚障害青年が国際交流企画への参加を契機 として国政府に要望を伝える取組みができるなどの例があることと、(2)全日本ろう あ連盟青年部の会員も同様に国際交流を通して他の国々における聴覚障害者の取組み状況を学び、日本での取組みに活かしていることが読み取れる。国際交流のコミュニ ケーション手段として国際手話が大きな役割を果たしていることは明らかである。 第 III 部 結論 第 7 章 総合考察 本研究では、キルギス共和国に外国手話言語教育を導入することの意義と可能性を検討 することを目的に、①ビシケク市在住の聴覚障害青年及び②全日本ろうあ連盟青年部会員 を対象に質問紙調査を実施し、③日本で外国手話言語教育を実施する民間団体役職者を対 象にヒアリング調査を行った。この結果、以下の点について考察することができた。 調査①では、(1)キルギス共和国の聴覚障害に関する特別支援学校では生徒間で手話言 語が使用されていることがうかがえる。(2)ロシア語とキルギス語の使用が混在するキル ギス共和国であるが、手話言語話者の言語に対する自己評価がは低く、社会において聴覚 障害者の社会参加が十分に達成されているとは言いがたい。、(3)ビシケク市在住の聴覚 障害青年は自国の手話言語を「ロシア手話言語」と呼んでおり、手話言語に対するアイデ ンティティがどこまで確立されているか不明である。(4)ビシケク市在住の聴覚障害青年 はアメリカ手話言語よりも国際手話の学習に関心がある、という点を考察した。 調査②では、(1)国によって手話言語が違うという知識を身につけるのは手話言語を使 うようになってからである、(2)アメリカ手話言語は英語学習や米国留学などに関連づけ て学ぶ機会があり、国際手話は国際交流などと関連づけて学ぶ機会がある、(3)アメリカ 手話言語または国際手話を学んだ青年部会員が日本の手話言語への気づきを促されてい る可能性がある、(4)青年部会員は国際手話への関心が非常に高い、という点を考察した。 調査③では、(1)日本のろう者コミュニティにおいて、国際会議や米国留学者の帰国な どの要因により、まずアメリカ手話言語、ついで国際手話への関心が広がってきた、(2) 米国留学や米国人ろう者との交流を目的にアメリカ手話言語を学び、より幅広く国際的な ろう者との交流を目的に国際手話を学ぶという認識の共有がある、(3)全日本ろうあ連盟 青年部が国際交流を推進していることが、青年部会員の国際手話への関心度の高さにつな がっている、(4)国際交流で外国の情報を得ることが自国での取組みにつながる例があ り、国際交流には国際手話の習得が不可欠である、という点を考察した。 以上の考察内容をもとに、キルギス共和国における手話言語を使用する聴覚障害者の国 際交流に関するレディネスを日本の状況と比較しながら整理する。 1) 手話言語を使用する聴覚障害当事者の組織について:日本においては、手話言語を 使用する聴覚障害当事者の全国的な組織が 1947 年に創立されている。この組織は全 国 47 都道府県に加盟団体を擁し、彼ら自身の権利擁護と生活向上を目指して発展し てきた。そして設立から約 40 年が経過した 1991 年に東京で世界ろう者会議が開催 され、これを契機として国際交流が加速した。この組織はアジア太平洋地域においても国際交流を主導しているが、この交流は個人ではなく各国の手話言語話者の全 国組織を単位として進められていることに注目したい。一方、キルギス共和国にお いては、国際交流に参加するための基本単位としての全国的な組織が設立されてい ない現状にある。 2) 高等教育機関への進学について:日本においては、聴覚特別支援学校で一般学校と ほぼ同等の教育が行われており、聴覚障害学生に特化した大学の設立を含めて、高 等教育機関への進学環境が整備されてきている。一方、キルギス共和国は、特別支援 学校から高等教育機関に進学する環境が整備されていなく、進路が職業訓練に限ら れるなど、聴覚障害者が幅広い教養や専門的な知識を身につける機会を保障されて いない状況にある。 3) アメリカ手話言語と国際手話の教育について:日本においては、聴覚障害青年が特 別支援学校や大学の語学授業でアメリカ手話言語または国際手話を学ぶ機会があっ たことが調査で明らかになっている。また、アメリカ手話言語と国際手話の教育を 目的とする民間団体が設立されており、全日本ろうあ連盟青年部でも国際手話の教 育が推進されている。一方のキルギス共和国では、特別支援学校に語学授業が設け られているかどうかが不明であり18、アメリカ手話言語や国際手話を教育する民間団 体も存在しない。 4) 自国の手話言語について:日本では日本手話言語が日本固有の言語の一つとして広 く認識され、この手話言語を使用する聴覚障害者も言語に対するアイデンティティ を確立していることが調査の結果から見て取れる。一方、キルギス共和国において は、聴覚障害者自身も含めた国民が自国の手話言語をロシア手話言語と呼ぶが、ロ シア連邦で使用される手話言語との相違点が明らかにされていなく、全く同一のも のなのか、方言的な位置付けになるのか、独立したものであるのか、という知識が共 有されていない可能性がある。 以上の現状を見ると、キルギス共和国では、まだ国際交流を進める準備ができていない、 すなわち時期尚早ではないかという見方も成り立つだろう。しかしながら、本研究の結果 では、国際手話教育と国際交流は表裏一体のものであり、かつ国際交流自体が、聴覚障害 者の国際的な視野を広げ、自らが使う手話言語に対するアイデンティティを意識するとと もに、自国における当事者の取組みを促す可能性があることも明らかになった。よって、 国際手話教育の導入から始めて国際交流の契機を探る方法も可能性として考えられる。 18 個人コミュニケーションによると、キルギス共和国の中途失聴・難聴特別支援学校では英語授業が実施されていないとのことである。 特に本調査においてはキルギス共和国の聴覚障害青年の多くがアメリカ手話言語ではな く国際手話を学びたいと回答していた。彼らがロシア手話言語を使用すれば旧ソビエト連 邦構成国間の交流が可能な状況にあるにもかかわらず、国際手話の学習へ強い関心を示し ていたことは、キルギス共和国と全く異なる社会システムを有する世界中の様々な国々と 交流したいという欲求の現れなのはないかと考えられる。 以上の考察から、キルギス共和国の現状において可能な方策の一つとして、ビシケク市で 聴覚障害青年が実際に集まって職業訓練を受けている場19を活用し、この職業訓練を運営 する団体と協同して国際手話教育と国際的な研修あるいは国際交流の両方を兼ねた内容 のプロジェクトを実施することを提案したい。学校教育の枠組みによる制限から特別支援 学校での実施は困難であろうし、何もないところで全く新しいことを開始することもキル ギス共和国の現状では困難であるだろう。 キルギス共和国の政府が法律の内容を政策に移すために、省令や施行令など下位法規を 整備し、手話言語及び通訳に関する施策を実行に移すまでに、社会的な認知の拡大も含め てさらなる時間がかかるであろう。この時間を少しでも短縮するためには、政府の取組み に期待するだけでなく、聴覚障害者が当事者による団体を結成して彼らのニーズや要望を 政府や社会に向けて発信するエンパワメント的な取組みが並行して展開されることが望 ましいと言える。 そしてそのためには、キルギス共和国の聴覚障害者が、他の国々で聴覚障害のある当事 者がどのようにして社会参加を実現しているのか、団体をどのように立ち上げているのか、 当事者の意見や要望をいかにして政府等に伝えていくのか、きこえる国民に手話言語の普 及と通訳者育成をどうやって図るのか、法律の内容をいかにして制度や施策で実現するか などの知識を学ぶ機会を提供する必要があろう。これらを指導できる人材がキルギス共和 国にはないので、他国の聴覚障害のある当事者団体のリーダーや手話言語の研究者、手話 言語通訳養成の専門家が、キルギス共和国の聴覚障害のある国民に国際手話で助言や指導 を行う形の国際協力事業が行われることを期待したい。 19 9 ページに紹介した公的財団「プラス」など。 第 8 章 本研究の限界 本研究は下記の点で限界があることを記したい。 (1) 新型コロナウイルス感染症の流行により日本への入国をはじめとして、研究計画 全体に大幅な調整を強いられた。特にキルギス共和国及び日本の聴覚障害者への ヒアリング調査が困難であった。よって、米国など外国への留学経験を有し、国 際手話やアメリカ手話言語を使用する聴覚障害者の自言語に対する意識を研究 対象に含められなかった。 (2) 日本では聴覚特別支援学校の英語教育においてアメリカ手話言語が導入されて いる現状があるが、本研究の関心がアメリカ手話言語でなく国際手話にあった関 係で、研究対象に含めていない。 (3) キルギス共和国と日本の両方において実施した質問紙調査は調査対象の範囲が 極めて限られているため、各国の聴覚障害のある国民全体の状況を反映している ものとは言い難い。また、調査1と2で質問項目が異なるように、両国を比較す る視点を取り入れていなかった。 巻末資料 資料 1. 聾特別支援学校教校長へのヒアリング調査記録(筆者による和訳) Интервью с директором специализированной общеобразовательной школы-интернат для глухих детей КР. 2020 年 10 月 5 日 1. Можете рассказать об истории этой школы. (В каком году открылась? Кто является инициатором?) 本学校の歴史についてお話してもらえますか。(どうやって、いつ開催されたかなど。) “Наша школа начала функционировать в 1934 году. В 2019 году нам было 85 лет. Это одна из старейших школ-интернатов. Сначала наша школа находилась на улице Тоголок Молдо, рядом с церковью. Когда началась война наш интернат взяли под госпиталь, а дети были отправлены в Токмок. Они там жили, учились и благодаря директору нашей школы, Гаврин-первый директор, он собирал всех глухих детей по Кыргызстану и открывал классы и начинал учить. Вот и по сей день мы продолжаем учить детей в этой школе. Вот эта школа была построена в 1961 году и с тех пор мы здесь находимся. Из стен нашей школы были выпущены десятки тыс.детей, которые нашли свое место в мире. Наши дети также как и слышащие дети. Кто хочет ищет работу и будет работать. Есть дети, как и слышащие, не хотят работать находят причину, лишь бы не работать.” 和訳:本学校は 2019 年に 85 周年だったから、1934 年に創立されたわけ。最初は違う場所に 位置していた。戦争が始まった時に病院として使われることになり、生徒たちはトクモック (首都に近い市)に移動された。その後、初校長である Gavrin さんはキルギス全国のきこ えない子どもたちを集めて教えていた。本学校は 1961 年に建てられ、現在に至る。社会的 な居場所を見つけた何万人の生徒が卒業した。きこえない子どもたちは、きこえるこどもた ちと同様で、何かやりたい人は努力してやることを見つける。やりたくない人には、言い訳が多い。 2. Общее количество учителей на данный момент. 和訳:現在の教師人数は何人ですか。 “В школе где-то 50 учителей и 32 воспитателя.” 和訳:約 50 人の教師と 32 人の寄宿指導員が勤めています。 3. Какая квалификация у учителей? 和訳: 教師の資格について教えてください。 “Сурдопедагоги есть, но их мало. Даже хочу вас огорчить тем, что на наш факультет сурдопедагогики не было желающих поступить. Готовит нам специалистов наш кыргызский педагогический университет им.Арабаева, факультет клинической психологии, сурдопедагогика. Но молодых не тянет сюда просто из-за того, что работать с такими детьми тяжело. В этом году к нам пришли 2 специалиста. Одна поработала неделю и сказала: “Нет, не могу! Это мне тяжело.” 和訳:ろう学校の教員がいるが、少ない。残念なことにろう教育学部に入部したい人もいな かった。専門家は Arabaev キルギス教育大学の臨床心理学部・ろう教育専攻で育成される。 しかし、このような子供たちを教えるのは難しいから、若い人たちはここで働きたくない。 今年は 2 人の専門家が来たが、1人は 1 週間働いてみて「これは難しい。できない。」といっ てやめた。 4. Какие мероприятия проводятся для повышения квалификации учителей? 和訳:教師のスキルアップさせるためにどのような活動が行われますか。 “Мы идем на ровне со временем. Мы каждые 5 лет проводим повышение квалификации учителей на базе университета Арабаева. Нам преподаватели кафедры дефектологии приходят и читают методику, тем повышают нашу квалификацию. В этом году во время пандемии педагогический коллектив наш тоже пополнил знания-освоили компьютерные диагностики, то есть они научились работать в ворде, экселе и остальным.” 和訳:私たちは時代と歩調を合わせている。格 5 年に 1 回 Arabaev 大学をもとに、スキル アップ活動が行なわれる。欠陥学部の教員たちが講義などを実施している。今年もパンデ ミック中にコンピューターリテラシーなどの能力をアップさせることができた。 5. Общее количество учащихся на данный момент. 和訳:現在の生徒人数は何人ですか。 “В настоящее время обучаются 310 детей.” 和訳:現在は 310 人の生徒が教育を受けている。 6. Сколько классов? Как вы распределяете учеников по классам? 和訳:いくつの学級がありますか。生徒たちをどうやって学級に分けますか。 “32 класс-комплекта. 16 — это начальная школа и 16-старшие классы. Обучаются дети от 6 до 18 лет со всех регионов Кыргызстана. Мы в школу сами не берем. У нас есть специальная медико-педагогическая консультация. Откуда дети поступают уже с заключением и там пишут куда их направляют или в класс с нормальным интеллектом, или со вспомогательным уклоном.” 和訳:32 の学級がある。その中、16 は初等学校、16 は上級学級になっている。キルギスの 格州から 6 歳から 18 歳までの子どもたちが教育を受けている。 子どもを学校に自由に受け入れることができない。医学教育委員会というのがあり、この 委員会の判断によって、子どもは通常の学級か特別支援学級に入る。 7. Ученики, окончившие эту школу, в какие колледжи, вузы и т.д. могут поступить? На какие специальности? 和訳:本学校を卒業した後、どんなカレッジ、大学に進学することができますか。どんな 専門を学ぶことができますか。 “Дело в том, что по положению глухие дети обучаются и получают документ 9-летнего образования. Во-первых, это связано с тем, что глухим очень тяжело воспринимать весь речевой материал, который есть. Если сравнить со слепыми все-равно вся информация идет через слуховой аппарат. Так как мы не слышим наши дети только получают то, что мы им даем и в основном у нас зрительное восприятие. Поэтому даже по методике мы учимся только до 9-го класса программу даем. Потом наши дети поступают в лицеи — это 18-й лицей (швеи), 27-й лицей-там есть специальные группы для глухих. Там они получают несколько профессий — это парикмахеры, салатницы, работники ПК, сварщики, рабочие СТО и т.д. Вот такие рабочие профессии, которые мы можем получить.” 和訳:事実、状況に応じて、聴覚障害児は教育を受けて、義務教育終了の証明書をもらう。 ろう者にとってすべての教材の知覚が難しい。視覚障害者と比べると、情報はやはり耳を 通して伝達される。きこえない子どもたちは、情報を主に目を通して受け取るので、学校の 情報に限られる。義務教育を受けてからろう者向けのグループがある実業専門学校に進学 する。美容師、ウェルダー、サービスステーションの労働者の資格を取れる。 8. На каком языке проводятся уроки? Обучаете ли жестовому языку? 和訳:授業が何語で行われますか。手話言語が教えられますか。 “Если обучение ведется на русском языке, то у нас жесты тоже берем за основу русский жестовый язык. Наша главная цель — это не то, чтобы научить детей махать руками. Мы должны детей научить говорить, чтобы выйдя в социализацию, когда они выйдут за пределы школы, чтобы они могли обратиться к слышащему человеку с просьбой, спросить: “Где находится аптека?”, “Как могу доехать до этого?” поэтому мы работаем вот именно над развитием разговорной речи учащихся, а жестовая речь-это как дополнительная. Но я еще раз скажу и думаю не ошибусь, что жестовый язык — это родной язык глухих.” 和訳:教育はロシア語で実施されるため、手話もロシア手話をもとに使わる。教育の主な目 的は、手を振るのを教えることではない。子どもが社会に出てからきこえる人に「薬局はど こにあるか」、「どうやってある場所にいけるか」などをきくことができるように教える。だ から、音声能力に焦点を当て、手話は補助手段として見られる。しかし、手話はろう者の母 語であると述べるのは間違いないと思う。 9. Есть ли кыргызский жестовый язык? 和訳:キルギス手話言語とはありますか。 “Кыргызского жестового языка нету, я вам еще раз подчеркиваю у нас нету института дефектологии. Но мы делаем перевод, то есть жесты русские, а значение на кыргызский переводим. У нас есть специальные уроки кыргызского языка, где на ряду со знакомством слова знакомят сразу жестом. Мы очень прекрасно поем песни на жестовом языке.” 和訳:キルギス手話はない。もう一度強調しておきたいが、キルギスには欠陥学研究所が存 在しない。しかし、ここでロシアの手話を使って、意味をキルギス語に変えたりする。単語 を手話と一緒に紹介しながら教えるキルギス語の授業がある。そして、手話言語で歌うと のは得意。 10. Но жестовый язык в школе больше как вспомогательный язык? 和訳:手話言語は主に 補助手段とされますか。 По идеи он был приоритетом, он не должен быть главным. Но в любом случае он используется, потому что дети между собой все-равно будут говорить. Как бы мы им не запрещали им легче. А так (голосом) они говорят с нами, они произносят слова, когда читают какой-то рассказ они читают, потом переводят жестам, потом они понимают. Если они не понимают, они спрашивают, как произносится это слово и слово-жесты идут параллельно. (11:58-12:53) 和訳:手話は優先的だったが、メインにするべきではない。いずれにせよ、子どもたちはお 互いと手話で話し合うから手話は使われる。私たちはどのように使用禁止としても、彼ら は会話しやすいから使う。一般的には、生徒たちは教員と音声を使って会話する。読書の時 にも単語を音声で表してから手話に訳して理解する。単語の発音が分からない時には、発 音を教える。同時に手話も使われる。 10. Расскажите о программе обучения вашей школы? 和訳:本学校の教育プログラムについてお話してもらえますか。 “Хочу отметить, я всегда говорю об этом, что у нас в Кыргызстане нету института дефектологии, которые разрабатывал бы методики именно на кыргызском языке. Так как нету мы берем ориентиры на Россию и занимаемся только по программе обучения глухих детей России на русском языке. (8:51-9:12) 和訳:また強調したいのは、教材をキルギス語で開発する欠陥学研究所がない。だからロシ アのロシア語での教育プログラムだけが基本的に用いられる。 11. Все ли преподаватели владеют жестовым языком? 和訳:教員の皆が手話言語を習得 していますか。 “Сказать все-это будет неправда. Процентов 80 знают жестовую речь. Знают дактиль. Почему, потому что, когда мы берем учителей и воспитателей они не знают, поэтому мы им даем время. Через 6 или 9 месяцев мы у них принимаем экзамен по дактили и жестовому языку.” 和訳:教員の皆が習得しているというと違う。80%くらいは手話会話が分かる。指文字がで きる。教員や寄宿指導員を雇う時には手話言語を習得していないから、時間を与える。半年 か 9 か月後に指文字や手話の試験がある。 12. Можете рассказать подробнее касательно этого экзамена? 和訳:この試験について詳 しく教えてもらえませんか。 “Билетная система. Из 6-7 человек из администрации принимают экзамен. Есть билеты: прочитать рассказ-продактилировать. Прочитать рассказ-рассказать жестами или будет написано дактилема и они должны считать. Должны уметь считать предложения, рассказ, слово. Так и принимаем экзамен. Если человек не смог один из видов работы (4-5) сдать, то мы даем какое-то время на пересдачу. Если они не пересдадут значит мы с ними прощаемся.” 和訳:管理職員の 6-7 人が監督する。文書を読んで指文字で表す課題、文書を読んで手話で 表す課題、指文字で書かれた文書を読む課題がある。不合格の場合はもう一度試験を受け る機会がある。それでも不合格の人は仕事を続けることができない。 13.Когда в Арабаеве готовят специалистов не обучают жестовому языку? 和訳:Arabaev 大学で専門家を育成する時に手話言語を教えないのですか。 “Я даже сказать не могу. Это лучше у них спросить.” 和訳:それは分からない。直接きいた方が良いと思う。 14.О каких проблемах и недостатках в общем можете рассказать? 和訳:一般的にどのような課題があると考えられますか。 “1-я проблема — это нехватка специалистов. Почем нехватка, потому что окончив университет, они приходят сюда. Теория-одно, практика-другое. Тяжело работать с такими детьми у нас бывает текучесть. В основном среди воспитателей. Далеко не пойдем, вот сейчас у нас подготовительный классы приходят, получается так, что они никогда не посещали детский сад, они даже не знают, как попроситься в туалет. Этот же воспитатель должен пойти, вымыть, подмыть, одеть и опять посадить в класс. Многие молодые к этому не готовы. Поэтому они уходят. Уходят в частные детские сады, работают логопедами. Я думаю, те учителя, воспитатели, которые проработали в нашей школе получают большой опыт как они сами говорят, что школа их многому научила. 2-я проблема — это нехватка учебников. Вот в этом году опять-таки общественный фонд “Технолэнд” занимается оцифровкой наших старых учебников. Вот сейчас должны искать 5 55 спонсоров для выпуска этих учебников, чтобы дети уже занимались более красочными учебниками.” 1 つ目は、専門家の不足。その理由は、大学の学習中には研修を受けないから。卒業してか ら就職して、実際に働いてみてやめるのは、特に寄宿指導員の中に多い。例えば、 幼稚園に通っていなかった子どもたちをお手洗いに連れて行ったりするなどの世話をする 必要がある。その世話するなどの全てを 1 人の指導員がやる。若い人たちにとってはそれ が難しい。だから、大勢は私立幼稚園での仕事とか、言語療法士としての仕事を選ぶ。2 つ 目の問題は、教科書の不足。「Technoland」という公的資金は、ここにある古い教科書をデ ジタル化をしてくれているが、それを発行しにサポーターが必要。 資料 2. 中途失聴・難聴特別支援学校副学長へのヒアリング調査記録(筆者による和訳) Интервью с зам.директора специализированной школы-интернат№21 для слабослышащих и похднооглохших детей 2020 年 9 月 23 日 1. Можете рассказать об истории этой школы. (В каком году открылась? Кто является инициатором?) 和訳:本学校の歴史についてお話してもらえますか。(いつ、どうやって開催されたか) “В 1972 году открыли обычную общеобразовательную школу, но потом решили на базе этой школы открыть специальную школу общеобразовательную для слабослышащих и позднооглохших детей. Таким образом в 1974 году эта школа была открыта специально как школа-интернат для слабослышащих и позднооглохших, с тех пор эта школа существует. Находимся на полном гособеспечении.” 和訳:1972 年に普通の一般学校が開校されたが、その後、この学校をもとに特別支援学校 の開校が決定された。このように、本学校は 1974 年に難聴障害者及び途聴覚障害者のた めの寄宿学校として開校されいまに至る。完全に政府に後援されます。 2. Общее количество учителей на данный момент. 和訳:現在の教師人数は何人ですか。 “Общее количество учителей 84. С утра работают учителя, после обеда воспитатели, ночью работают еще воспитатели.” 和訳:教師人数は84 人。午前中に教師が通勤し、午後から寄宿舎指導員が担当する。 3. Какая квалификация у учителей? 和訳:教師の資格についてお話してもらえますか。 “Все учителя и воспитатели с высшим образованием. Сурдопедагоги у нас работают в начальной школе. Ни один педагог не без образования. Потому что в начальной школе закладывается база.” 和訳:教師や寄宿舎指導員の全員が高等教育資格を持っている。基礎知識をは初等学校で 築かれるから、すべての教師が小学校で働いている。資格を持っていない教員が1人もい ない。 4. Какие мероприятия проводятся для повышения квалификации учителей? 和訳:教師の資格を向上させるためにどのような活動が行われますか。 “Для повышения квалификации учителей наши учителя посещают КАО (Кыргызская академия образования). В прошлом году осенью очень многие учителя посетили. Но там дают по общеобразовательной школе, у нас таких курсов как специально для слабослышащих нет. Раньше у нас практиковалось, но уже года 2 или 3 курсов не было.А так со славянского или с института Арабаева специалисты приходили на каникулах читали лекции. Эти курсы проводятся правительством. 和訳:教師は資格を向上させるためにキルギス教育アカデミによるコースに参加する。去 年の秋に多くの教師が参加した。でも、そこは一般教育のプログラムを提供し、難聴者教 育向けのプログラムがない。前はあったが、もう 2-3 年前から受けていない。そして、スラ ブ大学や Arabaev 大学所属の専門家は休暇中に講義をしていた。このコースは政府に行わ れる。 5. Какое количество учащихся? 和訳:生徒人数は何人ですか。 “Детей у нас 312 на сегодняшний день.” 和訳:現在においては、312 人の学習者がいる。 6. Сколько классов? Как вы распределяете учеников по классам? 和訳:いくつの学級がありますか。生徒たちをどうやって学級に分けますか。 “На данный момент укомплектовано 29 классов. Детей набираем так: приходят в 1 класс дети с заключением. Медико-педагогическая комиссия дает заключение ребенку, что он именно в этой школе должен учиться. Без заключения мы детей не принимаем. Они вот так в 1 класс поступают так и переходят во 2 класс.” 和訳:今は 29 の学級がある。小学校に入学する時に、子どもはこの学校で教育を受けると いう医学教育委員会による判断書が必要。この判断書がなければ、子どもを受け入れるこ とができない。このように小学校 1 年になり、そのまま進学していく。 7. Ученики, окончившие эту школу, в какие колледжи, вузы и т.д. могут поступить? На какие специальности? 和訳:本学校を卒業した後、どんなカレッジ、大学に進学することができますか。どんな 専門を学ぶことができますか。 “У нас очень тесное сотрудничество с проф.тех.лицеями (4, 27, 18, 17). В общем наши дети по окончании нашей школы обязательно поступают в эти проф.тех.лицеи. Все поступают, нету такого, чтобы кто-то остался на улице, грубо говоря.” 和訳:本学校はいくつか(No.4,27、18、17)の実業専門学校と緊密に協力している。一般 的に、本学校を卒業してから必ずこの実業専門学校に入学する。卒後者の全てが入学し、 進学しなかったという生徒がいない。 8. Могут ли поступить в вузы? 和訳:高等教育機関に進学することができますか。 “У нас предусмотрено еще 12-летнее обучение. Сейчас обучение 10-летнее. Когда учащийся заканчивает 10 лет мы ему даем свидетельство об окончании основной школы, ну как 9 классов в обычной школе. Чтобы поступить в вуз мы должны 12 лет ученика проучить, но это зависит от знания детей, желания родителей. Многие думают, так как наши дети инвалиды с детства, чтобы закончить 12 классов и получить аттестат они должны проучиться еще 2 года. За это время, 2 года, они могут закончить профтех. лицей и уже начать работать, зарабатывать деньги. А так у нас есть дети, которые закончили 12 классов, поступили в вузы, выучились на операторов, на программистов, один наш ученик вообще режиссер.” 和訳:本学校は 12 年間の教育も行っている。今は 10 年間の教育になっている。生徒は 10 年間教育を受けてから、義務教育終了証明書(一般学校の 9 年間の教育と同じ)をもらう。 高等教育機関に進学するために 12 年間の教育を受けないといけない。しかし、これは生徒たちの知識や両親の希望による。多くの両親は、子供は幼い頃から障害を持っているから、 後期中等教育卒業証明証をもらうためにさらに 2 年間勉強しないといけない、その代わり に 2 年間で実業専門学校を卒業して働き始め、お金を稼ぐことができると思われる。でも、 本学校で 12 年間教育を受けて高等教育機関に入学してオペレーター、プログラマー、映画 ディレクターになった卒業者もいる。 9. Вузы принимают без проблем? 和訳:高等教育機関は問題なく受け入れますか。 “Естественно, должны сдать экзамен.” 和訳:当然、全国試験の合格が必要。 10. На каком языке проводятся уроки? 和訳:授業が何語で行われますか。 “У нас с русским языком обучения школа. Но у нас есть классы с кыргызским языком обучения. В этих классах, таких классов 9, обучаются дети, у которых не только недоразвитие слуховое, но и другие побочные дефекты, допустим, умственная отсталость, ДЦП. Такие дети обучаются на кыргызском языке, так как когда на каникулах ездят домой или после уроков дома должны заниматься, подкреплять свои знания и их родители кыргызскоязычные и им легче для их устного развития.” 和訳:本学校の教授言語はロシア語だが、キルギス語の学級もある。キルギス語の学級で は、聴覚に障害があるだけではなく、他の障害も持っている、例えば、知的障害とか脳性麻 痺のある生徒たちが学ぶ。彼らはキルギス語話者である両親と一緒に休暇中か授業後に課 題をやったりしないといけないから。 11.Как насчет жестового языка. 和訳:手話言語に関してはどうですか。 “Жестовый язык-вспомогательное средство. Эта школа для слабослышащих и жестовая речь у нас не применяется, только по стольку по скольку. А жестовая речь в школе глухих. Там жестовая речь у них и даже есть отдельный предмет жестовой речи. У нас такого нету.” 和訳:手話言語は補助手段。本学校は難聴者向けの学校だから手話言語は少ししか使用さ れない。手話はろう学校で使われ、科目もあるが、ここはない。 12. Нету такого, чтобы запрещать ученикам использовать жестовый языка во время урока, например? 和訳:授業中に手話言語の使用が禁止されることはありませんか。 “Вот вам говорю, это вспомогательное средство. Вообще мы запрещаем. Потому что мы добиваемся того, чтобы... Мы развиваем слуховое восприятие. Наша цель...Если ребенок пришел с 3 степенью тугоухости, мы должны по мере этих занятий развивать слух, чтобы, например, довести его до 2 степени тугоухости и развиваем речь.” さっき言ったように、手話は補助手段。聴力を良くさせるために手話は禁止される。本 学校の目的は、聴覚障害が3レベルである生徒を2レベルに下げることだから、授業中に は聴覚や発話を良くさせるよう教育する。 13. В Кыргызстане какие жестовые языки используются? 和訳:キルギスではどの手話 言語が使われますか。 “Жестовый язык обычный советского союза.” 和訳:通常のソビエト連邦の手話。 確認:Русский жестовый язык то есть? ロシア手話言語ですか。 “Да.” 和訳: はい。 14. А кыргызского жестового языка не существует? 和訳:キルギス手話言語とはありま せんか。 “Может быть и существует. Я же говорю я не знаю. Я не зациклена на жестовой речи, потому что у нас это как вспомогательное средство. Если хотите узнать все о жестовой речи вам нужно поехать в школу для глухих. Там и все расскажут.” 和訳:あるかもしれない。私は知らない。ここで手話は補助手段であるから、手話を中心に していない。手話について詳しく知りたければ、ろう学校で教えてくれるから、そこでき いてください。 資料 3 ビシケク市在住の聴覚障害青年に対する質問紙(ロシア語) Анкета для людей с нарушениями слуха КР (Бишкек). Дата:______________ I. Личная информация. 1. Возраст:_____(на 1 апреля 2021 г.) 2. Год окончания школы:____ 3. Школа, которую Вы окончили: □ Специальная общеобразовательная школа-интернат для глухих детей КР (г.Бишкек) □ Специализированная школа-интернат №21 для слабослышащих и позднооглохших детей (г. Бишкек) II. Касательно языка во время обучения в школе. 4. Использовали ли учителя жестовый язык на уроках в младших классах начальной школы? □ да □ нет □ по - разному 5. Запрещали ли Вам использовать жестовый язык на уроках в младших классах начальной школы? □ да □ нет 6. Использовали ли учителя жестовый язык на уроках в средних классах? □ да □ нет □ по – разному 7. Запрещали ли Вам использовать жестовый язык на уроках в средних классах? □ да □ нет III. Касательно уровня владения языком. 8. Округлите те места, которые, по Вашему мнению, соответствуют Вашему уровню владения языком из нижеприведенных. IV. Касательно жестовых языков. 9. По Вашему мнению, какой язык Вы используете? □ Русский жестовый язык □ Кыргызский жестовый язык □ Оба языка одинаковы 10. Выберите из нижеприведённого списка иностранный язык, на котором Вы можете говорить? □ Международный жестовый язык □ Американский жестовый язык □ Ни на одном 11. Если бы была возможность учить иностранный жестовый язык, то какой из нижеприведенных хотели бы учить? □ Международный жестовый язык □ Американский жестовый язык □ Никакой 資料 4.全日本ろうあ連盟青年部会員へのオンライン調査用紙 1 資料 5.キルギス共和国教育科学省による返事 (資料 5.筆者による和訳) キルギス共和国教育科学省は以下のことを通知します。 1 つ目の件については、2002 年 4 月 30 日付けのキルギス共和国法「教育につい て」第 93 条に従い、身体的または精神的な発達がある児童に対しては、治療、扶 育、教育、社会適応と社会参加を保障するために、特別なグループ、学級、組織が編 成されます。 2 つ目の件については、他の省庁が管理する高等教育機関(外務省外交アカデミー、キルギス共和国大統領下の管理アカデミー、内務省アカデミー、キルギス共和国陸軍士官インスティテュート、キルギス共和国国際大学、B.Beishenalieva 記念キルギス国立文化芸術大学、K.Moldobasanov 記念国立音楽院)が専門高等教育機関とさ れています。修士課程及び Aspirant 課程(日本でいう修士課程と博士課程の間に値 する課程)も用意されています。 3 つ目の件については、現在において、キルギス共和国で医療分野、文化分野、鉱 業分野における専門家が育成されています。 資料 6.ソーシャルセンター「機会均等」について(筆者による和訳) «ПЛЮС» Коомдук фонду Кыргыз Республикасы, Бишкек шаары, 720028, Абай көчөсү, 24 +996 312 54 62 72 +996 555 43 44 16 Общественный фонд «ПЛЮС» Кыргызская Республика, г.Бишкек, 720028, ул.Абая, 24 +996 312 54 62 72 +996 555 43 44 16 PLUS Public Foundation 24 bld., Abay Street, 720028, Bishkek, Kyrgyz Republic +996 312 54 62 72 +996 555 43 44 16 公的財団「プラス」のプロフィール 公的財団「プラス」は 2012 年に様々な障害を持つ人々に設立された。その目的は、障害 を持つ人々を支援するための有用な社会的プロジェクトのリハビリテーションと高齢者の 社会的統合である。 活動の本質 主な活動は、聴覚障害および視覚障害を持つ人々の情報へのアクセスを容易にするサー ビスの提供である。財団は、視覚障害者向けの情報と資料を公開し、それらにアクセスで きるようにしている。そして、本財団は聴覚障害を持つ人々のために実生活に必要な教育 を行い、聴覚障害者および難聴者向けのグラフィックデザインの教育コース、その後の雇 用も実施する。 経営者と従業員 12 人の従業員が勤め、その中 6 人は様々な障害を持つ従業員である。 実績 内容省略 www.fp.kg https://www.facebook.com/pg/ravnye.vozmojnosti.kg https://twitter.com/scrv_ru https://www.instagram.com/scrvkg/ 資料 7.特定非営利活動法人 日本 ASL 協会へのヒアリング調査記録 質問 1.日本 ASL 協会の設立きっかけは何でしょうか。 「1.1980 年代頃にギャローデット大学、ボロニー大学、カリフォルニア州立大学ノースリッジ校(CSUN)などに留学してアメリカ手話を身につけて帰国された方が何名かいた。その人たちが集まって自分たちで何かできるかないうことだった。 2.1988 年、1991 年に世界ろう者会議があった。それに向けて全日本ろうあ連盟が国際手話の勉強をすればと大きな盛り上がりがあった。ろう者たちもそういう手話を勉強したいという気持ちを持ち始めた時期だった。 3.アメリカ手話、国際手話を勉強したいという声が沢山上がってきたので、アメリカ手 話、国際手話を教えるということになった。教え始めた時には、個人的に喫茶店で会って教えるというような形だった。希望者が増えてきたことと教える人がいたので、組織を作っ て講座をきちんとしなければならないということで、1988 年に本協会が設立された。」 質問 2. 外国手話言語(国際手話含む)の講習会の開催は日本の聴覚障害者ときこえる人たちへどのような影響がありましたか。 「聞こえる人に対しては手話を勉強するのは福祉で行政が責任を持って実際受講者を集 めて教えるということで、無料のことが多かった。アメリカ手話言語と国際手話を教える 際に受講料を取って指導していたので、どうしてお金を取るのかという声があった。聞こ える人たちは手話をお金を払っても勉強するという考えは実際にあると思われる。 聴覚障害者に対しては、以前、外国手話を学ぼうという考え方がなかった。例えば、聾学 校の英語の場合は、ローマ字の指文字で教える、英語から日本語に翻訳するのようなことであったよう。それで英語を学ぶ楽しさ、日本との違いなどの気持ちを○○○ことが少な かったよう。アメリカ手話言語の場合は、音の日本語を真似したり、書き取りの練習をした り英語のいろはを教えるような形でされていたといわれている。しかし、協会でアメリカ 手話と国際手話を学ぶ時に、ろう者は初期英語はいらない。それで、日本手話でアメリカ手 話を学んで、アメリカ手話で通じることができた時の喜びを講習会で受講して知ったとい う声がある。それをきっかけに海外に留学して、海外のろう者と交流する楽しさを知った ということもあった。そして、スポーツを通して外国のろう者と交流することが多い。」 質問 3: 講習会の参加者は、聴覚障害者ときこえる人のどちらが多いですか。 「講習会が開催された時に受講生は、英語が好きだからアメリカ手話も勉強してみよう という聞こえる人がいたが、ろう者の方が多かった。今はろう者が 60%、きこえる人が 40% くらいになっている。 以前は、こえない人ができること、趣味などが少なかった。今は、語学だけが楽しむこと ではなく、他にも色々な楽しむことが増えてきたことも関係あると思われる。そして、この講習会に通うのではなく、自分が外国に行って、現地で身に付けようと思う人が増えてき ている。」 質問 4:日本の手話言語を身につけていなくても外国の手話言語(国際手話含む)を習得す ることはできますか。 「日本で、きこえる人・きこえない人と関係なく手話が分からずにアメリカ手話だけを 勉強したいという人がいるので、基本はできると思われる。しかし、きこえる人の場合は、 視覚言語を学ぶのは大変なことがあると思われる。例えば、空間、時勢、表情、手話の強弱、 調査との音声ともやはり違いがあるから、音声を使わずに表現できるかどうか。もう一点 は、アメリカ手話を勉強しアメリカのろう者に会ってコミュニケーションができるが、例 えば、「ネーム」という手話を日本手話でどうやって表すかときかれた時に日本に興味を持 てるかどうかということもあると思われる。また、日本に来た外国のろう者と、例えば、「ふさお」のようなろう者が経営しているお店で交流することができる。しかし、日本のろう者 と繋がりがなければ、このような外国のろう者とも繋がるのは難しい。協会としても、アメ リカ手話の勉強を基本的に少しでも日本の手話を習得した人に勧める。 また、本協会でアメリカ手話言語の受講中にろう者の受講生とも交流し、通じ合えたら と思い始め、やはり、まず自国の手話が必要だと気づいて、自国の手話を学び始めたという 人が沢山いる。通訳になりたいというきこえる人の場合も、アメリカ手話の勉強を始めた 後に日本の手話の勉強が必要だと気付いた人が何人かいる。」 質問 5:全日本ろうあ連盟青年部会員へ行ったアンケート調査の結果では、国際手話への関 心が強いという結果になった。その理由は何と思われるでしょうか。 「アメリカ手話はアメリカやカナダで使われているものなので、例えば、アメリカに留学して勉強したいという目標を持っている人は、アメリカ手話を選ぶ。色々な国の人と交 流をしたいと考える人たちは国際手話を選ぶと思われる。要すると、何をしたいかによっ てどれかを選択するものになるのではないか。 質問 6:日本 ASL 協会はアメリカ手話言語を選んで指導されてる理由は何でしょうか? 「1988 年に協会が東京に開設された時に、ろう者が高校を卒業した後にもっと勉強した いと思うと、通訳がなく大学に入れないような状況が続いていた。アメリカには高等教育 を受けることができる環境があった。それで、例えば、ギャローデット大学に留学したい という人がいた。世界の国々においても、アメリカに留学をする人たちが沢山いた。留学 後、自分の国に帰ってくるから、世界各国の中でアメリカ手話のできる人たちが沢山いる という状況になったわけ。そして、その大学で学んだ知識があるので、現地でリーダー的 な役割を担う人たちも沢山いた。 アジアもフィリピン、マレーシア、シンガポールがアメリカ手話の影響が強く受けてい る国であった。発展途上国に行って教育をサポートするようなシステムがあったと思われ る。教育をサポートする時にはアメリカ手話を使うので、アメリカ手話がそこでも広がっ ていた。 ろう者はすでにアメリカ手話言語ではなく、自国の手話が必要だということに変わって きたが、当時はアメリカ手話は国際共通言語のようなイメージで優先で強い時代であった。 それらがきっかけで、アメリカ手話言語を中心に講習会が開催され、今も続けている。 また、色々な国の手話を教える時に学習、技術、知識、トレーニングが必要になる。アメ リカ手話の場合は、教材、教え方の研究に関する資料が沢山あった。教えるのに資格を取 ることもでき、教えられるゲストも呼ぶことができる。それで、やはりアメリカ手話の方 が優先であった。 国際手話は、以前であれば世界ろう連盟が作った資料のようなパンフレットだけであっ たと思われる。国際手話は日常生活で使うような言語ではなく、時代によって変わってくるものである。国際手話は、例えば会議で使えるから勉強したいという人が沢山いると思 われるが、教えられる人たちはどうなのか。今は、交流を重ねていく中で技術を身につけていたり、自分の経験を伝えていくような形になっているのではないか。教材もないかな と思われる。それで、当協会は国際手話は少し、アメリカ手話言語はメインということに なっている。」 資料 8.一般社団法人日本国際手話通訳・ガイド協会へのヒアリング調査記録 質問 1. 日本国際手話通訳・ガイド協会の設立きっかけは何でしょうか。 「国際手話がまだ広がっていないような時、2008 年に設立された。1991 年に世界ろう者 会議が日本で開かれて 2008 年までの間、国際手話に関する行事というものは特に行われて いなかった。たまたま、日本 ASL 協の担当国際手話教室を始め 20 人ぐらいの生徒が学び 始めた。一年ほど学んだ後に上級のような講座がなく、勉強を続けることができなかった。 勉強を続けたいという人が多かったが、企画か教室というものがなくて非常に困っていた。 それで、そのグループが集まって、1 ヶ月に一回の講習会を国際手話文化クラブ名称で開い て学び続けていた。正式な協会として設立した方がいいのではないかという声が出て、国 際手話通訳者協会この協会自体が設立された。」 質問 2. 外国手話言語(国際手話含む)の講習会の開催は日本の聴覚障害者ときこえる人 たちへどのような影響がありましたか。 「以前は海外に行くとか、友人に会うとか、いろんなところでコミュニケーションする ために国際手話を勉強したいと集まっていた。最近は世界ろう者会議までにきちんと学び たいとか、色々な所を見学したいとかきちんと目標を持って学ぶ人が増えてきている。また、国際手話を学び始めて、これは国際手話だと知っていく人たちが多いと思われる。」 質問 3: 講習会の参加者は、聴覚障害者ときこえる人のどちらが多いですか。 「ろう者の場合は、外国から来る色々な人たちに出会え沢山のコミュニケーションがで きて国際手話に触れる機会がある。きこえる人の場合は、このような機会がなく、国際手 話とはなんだろう勉強してみようと好奇心で集まってくる。それで、割合で言うとろう者 が 20%ぐらい、ろう者は 0%ぐらいで聞こえる人の方が多い。」 質問 4:日本の手話言語を身につけていなくても外国の手話言語(国際手話含む)を習得 することはできますか。 「日本語で国際手話を考えているからできる。聞こえるは、日本語と国際手話をご自身の中で比較をして、考えて取得していける。」質問 5:全日本ろうあ連盟青年部会員へ行ったアンケート調査の結果では、国際手話への 関心が強いという結果になった。その理由は何と思われるでしょうか。 「アメリカ手話を覚えたいと言という時は、アメリカに行くとかアメリカでのコミュニ ケーションになる。国際的な出会いかコミュニケーションを考えると国際手話になる。 国際手話とは、色々なタイプや種類があり、それぞれが違うもの。海外に行って色々な 人と交流して国際手話を学んで帰ってきて、本協会で講座を受講すると自分が海外で学ん できた国際手話と違うのようなこともある。それで混乱して辞める人が沢山いる。 青年部の活動というのは、やはり海外に広まって国際的な色々な活動、世界ろう者会議 などに参加する。そして、日本に国際手話ができるろう者が沢山いる。その影響がすごく 強いのかなと思われる。」 質問 6:日本 ASL 協会はアメリカ手話言語を選んで指導されてる理由は何でしょうか? 「日本 ASL 協会で国際手話を受講した人たちが国際手話はそういうもんじゃない、何か 違うと思われた人たちがいた。その後、色々な海外に自分自身が出かけて色々な国際手話 を見たり学んだりしていると、やはり最初に学んだこととまったく違うと思って、その違 う理由を知りたいということから、本協会で国際手話を中心に教え始まった。」 資料 9.一般社団法人 全日本ろうあ連盟 青年部へのヒアリング調査記録 質問 1.アンケート回答にあった「青年部の企画」とはなんですか。 「アジア青年キャンプ 2 年に1回、子どもキャンプ 4 年に 1 回、世界ろう者キャンプと 色々な色々な行事や企画が行われ、アンケートに答えた人は何の企画を記入したか不明。」 質問 2:国際手話とかアメリカ手話言語を教える企画というのもありますか。 「青年部の範囲でアメリカ手話は全然考えなく国際手話だけに絞っている。それは、音 声言語の場合は共通言語として英語だが、手話の場合は色々な国の人が集合する時に皆が 一緒に交流ができるアメリカ手話ではなく国際手話になる。それで、国際手話を学んだり、 教えたりする場を設けている。企画としては国際手話の体験、日本に来る外国人と交流す る企画がある。青年部の上に全日本ろうあ連盟の国際委員会があって、一緒にズームを使っ て国際手話を教える計画を進めている。」 質問 3:国際交流に関するどのようなものが行われていますでしょうか。 「質問 1 での企画は国際交流に関する活動になる。そして、5 月から 9 月までに月に一 回色々な企画が中に入った活動が行われた。例えば、日本、フィリピン、韓国とインドネ シアの 4 カ国の青年部の代表者が自分の国の青年部の活動、組織とは何かについて国際手話で報告をした。その後、見ていた人とフェイスブック、ズームで質疑応答の交換をしな がら交流するのようなことがあった。」 質問 4:この国際交流に参加するために、例えば、国際手話ができることのような何か条 件がありますでしょうか。 「国際的なキャンプと会議というのがあり、アジアの場合は基本的に 17 歳から 35 歳ま で、世界的な場合は 18 歳から 30 歳までという条件がある。国際手話ができないで状況で キャンプに参加した人もいるから、国際手話の習得が義務ということではない。それ以外 は、それぞれの行事によって参加できる人数が限定されるようなことがある。 地域事務局に 17 カ国が参加しているが、まだ参加してない国がいくつかある。青年部が設立した後に参加したいが、組織がまだ出来ていない。それで、まずアジア青年キャンプに参加し交流してから、自分の地域に戻って青年部を立てようという国が増えている 質問 5.アンケートの結果としては、国際手話に興味を持ってる人の方が多かったです。そ の理由は何でしょうか。 「以上の内容と同じで国際交流をするためにアメリカ手話ではなくて、世界の皆が使え る国際手話が必要。そのことについて青年部の方からも話しているから、その影響がある かもしれない。」 質問 6.アンケート調査結果によると、外国手話言語(国際手話を含め)ができないが、覚 えたいという回答者が(82%)多かった。それで、国際手話の講習会に青年部の会員とし て参加するのに何か条件がありますでしょうか。 「全国に9ブロックの青年部と、47 都道府県に青年部が設置されている。企画はそれぞ れに行われるので、年齢に関係なく誰でも参加できるとか、青年の会員に限定するとかの ような参加条件は各都道府県の考え方による。 また、都道府県の青年部によって興味を持つ人数が少なく講習会を設けることが難しい 地域もある。例えば、大阪の場合は、国際手話の教室があり、繋がりがあって青年部が企画 をできることもある。それで、地域によって結構、差があると思われる。 12 年前頃は、国際手話を学ぶ場所と本がなく、国際手話を学ぶ企画というのもなかった。 5 年前ぐらいから、青年部会員がモデルになって国際手話を表現している国際手話の本が ろうあ連盟と一緒に発行している。また、国際手話を学ぶ場が増えて、自分で本を読んで 覚えたいのような諸外国のろう者と交流したいという人が増えてきている。」 質問 7.:これまでの国際交流の中で色々な状況に関わってきて、国際手話の方が良いか、 アメリカ手話でも良いかコメントをもらえますか。 ①「国際交流の中でフランスのキャンプに参加したことがある。フランスというのは、ア メリカ手話と少し国際手話がミックスされているところがある。国際手話ができない状況 で参加したので国際手話でのやり取りとアメリカ手話でのやり取りのそれぞれの違いを見 分けられなかった。基本は、国際手話で進んでいるが、ヨーロッパあたりではアメリカ手 話に慣れている人同士で会話をしている様子もある。それを見た時に自分が参加するのが 難しく苦しい経験をした。基本的には、国際手話がメインで行事や企画が進んでいて、国 際手話を身につけたいろ思っている。」 ②「最初に高校の時にアメリカ手話を学んで世界共通だと思っていた。イギリスに行って、 イギリス手話で話されて通じなかった。どうして通じないの、アメリカ手話は世界共通で はないのと苦しい思いで日本に帰ってきた。アジアと色々な国に行く中で、やはり全く違 う言語だという経験をしたので、国によって身につけているものも違う。それぞれの手話 言語を身につけなければならないと思った時に青年部に入って、国際手話というのがある と知った。国際手話通訳の人の公演を見に行って、世界共通言語はこれだと知った。その 時から少しずつ学んできた。近頃は青年部の役員になってからは、アジア地域の青年部の 代表者会議の方があり、そこに参加した時に国際手話でのやり取りがされている様子を見 た。自分ができるかなと手話を表現してみたら、やはり通じないところがあったが、身振 などでなんとか通じようという気持ちがあった。通じた時には、本当に嬉しかったという経験をした。これが国際手話だというもの、これが世界の現状だという見聞きしてきた。」 ③「2 年前ぐらい国際手話を学ぶ機会があって学んだ。その時に学んだことが全然身につか なく、全部を忘れてしまった。その後に、青年部の役員になって活動を始めてから企画に 参加するために国際手話ができる青年部の仲間に色々を教えてもらって、どうにか身につ けたという。青年部について国際手話で発表するようになり、もっとスキルアップしたい と思うようになった。それで、学ぶよりも実際に現場で自分で表現するということが大事 だと思う。」 ④「この青年部の役員になった時に世界の青年部の子どもキャンプに英語、ASL 、国際手 話ができない状況で参加した。このキャンプはアメリカで行われて、20 以上の国から参加 者がいた。しかし、アメリカで行われたから実行委員会の説明などは ASL であった。ASL は指文字がすごく多く英語を指文字で表示されても分からなく、非常に嫌な思い出が残っ ている。2 回目の交流はアジア青年キャンプであった。それは、アジアの青年部の人たちが 集まって交流する場なので、ASL が使われていない。青年部は国際手話に慣れていない人 たちが沢山いるので、自分の国の手話と身振りでなんとか通じ合って、会話もすごく楽し かった。 きこえる人の場合、自分と相手が英語ができない時に話せるまで多分すごく時間がかか るのではないかと思う。ろう者の場合、国際手話が分からなくても日本の手話ができるの で、相手は自分の国の手話ができるから身振りを加えてコミュニケーションができる。そ れは国際手話のいい面と思う。」 質問 8.皆さんが国際交流、国際手話の講習経験があるということで、それの自国の文化や言語に関する影響がありましたか。 ①「日本にいるから、日本のことを知っていると思い込んでいたが、アジア青年キャンプに参加した時に、日本について質問が沢山あった。その時に、自分の国について知らない ことが沢山あると分かった。改めて日本人として勉強しなければならないことを学ばなけ ればならないことが沢山あると思った。」 ②「質問の多くは食べ物のことで、食べ方、マナーなど。例えば、韓国の場合はお茶椀を置 いて食べなければならない、そのマナーの違いはどうしてと質問されて、なかなか話せな かったことがある。やはり国によって色々な事が違う、日本に関する色々な興味を持って いる人も沢山いるのだと。」 ③「日本の手話に対してどうかとことは、そこまで深く考えたことがない。逆に日本手話 は当たり前に自分が使っているので、振り返ってみても気づきは無い。日本手話も国際手 話も何か同じような、すでに自分たちはコミュニケーションを取れる手段になるといいな と、両方の手話をもっと広めたいと思う。」 資料 10. キルギス共和国司法省による返事 (筆者による和訳) 手話通訳者のリストについて 2021 年 12 月 29 日の NO Б-7639 司法分野での手話通訳者に関する件については以下の 通りに通知します。 キルギス共和国憲法第 13 条「キルギス共和国の大臣の内閣について」に従い、大臣の 内閣は、この憲法で指定された権限に基づいて、省庁、委員会、その他の執行機関間でそ の実施のための機能を分配します。 2021 年 3 月 5 日付けのキルギス政府令第 78 号により承認された、キルギス共和国法務 省の規則によると、キルギス共和国の法務省は、規制法、法医学、弁護士、公証役場、保 護観察、刑務活動、また国際司法裁判所、仲裁裁判所、外国の裁判所、他の専門裁判所、 キルギス共和国の最高裁判所、キルギス共和国の憲法裁判所および地域司法にてキルギス 共和国とキルギス共和国内閣の利益代表を確保する分野における国の政策の策定と実施の ための機能を提供する行政機関であります。 以上のことから、司法分野における手話通訳者の資格認定は、キルギス共和国法務省の 権限の範囲内ではないことをお知らせします。 また、司法分野における手話通訳者の名簿がキルギス共和国法務省のホームページに は、国連開発計画(UNDP)及びフィンランド外務省によるプロジェクト「キルギス共和国 における法的権限付与のための司法への持続可能なアクセスに向けて」の範囲で記載され たことを留意します。 なお、上記のプロジェクトの支援を受けて、キルギス共和国視聴覚障害者協会の主導で法的な詳細を備えた手話通訳者向けのコースを修了した後に証明書が発行されました。 謝辞 本論文の執筆にあたり、多くの方々にご支援いただきました。 指導教員の大杉豊教授に研究の着想から、調査、論文執筆まで多大な温かいご指導ご鞭撻を賜りました。副指導教員の小林ゆきの講師に貴重なご相談の機会を頂きました。心より感謝いたします。 審査では、白澤麻弓准教授及び宮城愛美講師にご指導とご助言を賜りました。感謝申し上げます。 日本ASL 協会の高草久美子事務局長、日本国際手話通訳・ガイド協会の砂田武志代表理事、日本ろうあ連盟青年部の吉田委員長、清水事務局長、安斎会計部長、中村事務局員及び全日本ろうあ連盟青年部会員の皆さまより貴重な情報の収集にご協力を頂きました。改めて感謝いたします。 キルギス共和国における調査の実施及び情報収集へのご協力を頂いた聾特別支援学校Djamanbaeva Kanykei校長、中途失聴・難聴特別支援学校Aknazarova Zamira副学長、「機会均等」ソーシャルセンターのTolonova Aidaiセンター長、Jumakadyr kyzy Nurziyaさま、「HelpSchool」プロジェクトリーダーのKaziev Sadykさま、また調査にご協力を頂いた皆さまへお礼申し上げます。 筑波技術大学に留学する機会を与えてくださった文部科学省、在キルギス日本国大使館に感謝申し上げます。 本学大学院への入学に当たり、元ビシケク人文大学 東洋国際関係学部日本語日本文学講座 講座長氏原名美教授に貴重なアドバイスを賜りました。心より感謝いたします。 日本留学中に筑波技術大学の先生方、事務局の皆さまから多大なご支援を頂きました。厚く感謝申し上げます。 大学院の同期の皆さまに感謝いたします。日本手話言語、ろう文化など様々なことについて知識を深めることができました。 引用・参考文献 引用・参考文献 1. Fernand de Varennes, 2021. Report of the Special Rapporteur on minority issues.Visit to Kyrgyzstan.https://digitallibrary.un.org/record/3900299(最終参照 (最終参照 2022年 1月 5日). 2. Болотбек кызы С., “Перспективы сурдоперевода в КР на примере японского и русского жестовых языков” (邦題: 日本 とロシア の例でキルギス共和国における 手話通訳の見通し、カラサエフ記念ビシケク人文大学(現在:ビシケク国立大学)東洋際関係学部 卒業論文,2019. 3. Буркова С.И., Варинова О.А., “К вопросу о территориальном и социальном варьировании русского жестового языка” (邦題: ロシア手話言語の領土的及び社会的変化に関して)(PDF), Русский жестовый язык: Первая лингвистическая конференция. Сборник статей, 2012. 4. 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"Этот язык был роднее, чем русский и кыргызский” Этот язык был роднее, чем русский и кыргызский” Этот язык был роднее, чем русский и кыргызский” Этот язык был роднее, чем русский и кыргызский” Этот язык был роднее, чем русский и кыргызский” Этот язык был роднее, чем русский и кыргызский” Этот язык был роднее, чем русский и кыргызский” Этот язык был роднее, чем русский и кыргызский” Этот язык был роднее, чем русский и кыргызский” Этот язык был роднее, чем русский и кыргызский” Этот язык был роднее, чем русский и кыргызский” Этот язык был роднее, чем русский и кыргызский” Этот язык был роднее, чем русский и кыргызский” Этот язык был роднее, чем русский и кыргызский” Этот язык был роднее, чем русский и кыргызский” Этот язык был роднее, чем русский и кыргызский” Этот язык был роднее, чем русский и кыргызский” Этот язык был роднее, чем русский и кыргызский” Этот язык был роднее, чем русский и кыргызский” Этот язык был роднее, чем русский и кыргызский” Этот язык был роднее, чем русский и кыргызский” Этот язык был роднее, чем русский и кыргызский” Этот язык был роднее, чем русский и кыргызский” Этот язык был роднее, чем русский и кыргызский” Этот язык был роднее, чем русский и кыргызский” Этот язык был роднее, чем русский и кыргызский” Этот язык был роднее, чем русский и кыргызский” Этот язык был роднее, чем русский и кыргызский” (邦題: その言語はロシアとキル その言語はロシアとキル その言語はロシアとキル その言語はロシアとキル その言語はロシアとキルギス語よりも母だった ) , Current Time, 2021年 7月 31, https://www.currenttime.tv/a/kyrgyzstan-asia-finger-speech/31377802.html (最終参照2021年 12月 24日). 11. 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