モンゴルの視覚障害マッサージ師の現状調査研究 平成27年度 筑波技術大学技術科学研究科 保健科学専攻鍼灸学コース バトバヤル ガンゾリグ 目次 I. 研究の背景 1 1. モンゴルの基本情報 1 2. モンゴルの視覚障害者の教育とリハビリテーション 1 3. 視覚障害者雇用状況 1 4. モンゴルの視覚障害マッサージ師養成の歩みと現状 2  (1)116学校における職業訓練 2  (2)地方での講習の実施 2  (3)新訓練センターの建設とコースの充実 2  (4)認定マッサージ師数 2 5. モンゴルの視覚障害マッサージ師の就労 3 II.研究の目的 3 III.対象と方法 3  1. 調査方法 4  2. 調査期間 4  3. 対象 4  4. アンケートの内容 4  5. 倫理的配慮 4  6. 分析方法 4 IV.結果 4  1. 回収率 4  2. 課程選択分布 4  3. アンケート項目回答 5   (1)性別 5   (2)年齢 5   (3)教育レベル 5   (4)文字使用状況 5   (5)視力状況 5   (6)マッサージ師養成コースを卒業した年次 5   (7)マッサージに従事した年限 5   (8)副業に従事の有無 5   (9)実務に従事の有無 5   (10)開設者への問い 5    1) 施術所所有状況 6    2) 施術所の構造について 6    3) 従業員数 6    4) 取扱い患者数 6 (11) 勤務者への問い 6  1) 勤務先 6  2) 勤務先での取扱い患者数 6 (12)所在地 6 (13)報酬 6 (14)取扱患者の疾患 6 V. 考察 6  1. アンケートの回収率 7  2. 回答者の属性 7  3. 回答者の教育レベル 7  4. 視力状況 7  5. マッサージ業の就労 8  6. 施術所環境及び施術状況 8  7. 報酬または給与 8  8. 患者の主症状 9 VI.結論 9 VII.文献 9 図表 11 謝辞 40 筑波技術大学 修士(鍼灸学)学位論文 I. 研究の背景  1. モンゴルの基本情報  1) モンゴルは、アジア大陸のほぼ中央部に位置する国である。ロシアと中国に挟まれた形の内陸国で、国土面積は156万4100平方キロメートル  民族:モンゴル人(全体の95%)及びカザフ人等で、日本の約4倍である。  首都ウランバートルの人口は136万3000人で約45.5%が集中している。   正式名:モンゴル国   公用語:モンゴル語   人口:約300万人(2015年4月)   通貨:ツグルグ(MNT)<1円は16.07ツグルグ(2015年8月)>  2.モンゴルの視覚障害者の教育とリハビリテーション  2) モンゴルには、盲学校が1校あり、1964年に盲聾学校として設立された。中学校レベルまでの教育がなされていたが、1998年以降は、高校レベルまでの教育が行われている。2005年に、聾学校から独立し、現在、同盲学校で学んでいる生徒は約80名で、職員は30名程働いている。  一方、モンゴル盲人連合協会(*)は、1999年に視覚障害者の訓練とリハビリテーションの提供を目的として、視覚障害者職業訓練センターを設立し、2015年9月1日から労働省の管轄で専門教育職業訓練センター、いわゆる専門学校として教育を提供している。当センターでは、視覚障害者を対象に専門教育として、医療マッサージ(**)、コンピューター技能、音楽、繊維製品加工技能の各専門コース、また、日常訓練コースとして点字、歩行訓練などを提供している。1年間で、約80名の視覚障害者が訓練を受けている。  *:モンゴル盲人連合協会(Mongolian National Federation of the blind)は、モンゴルの視覚障害者領域に関する全てにかかわり、彼らの社会的自立を促進する目的で、1978年に設立されたNGO法人団体である。  **:マッサージとは、一般的には、手または特殊な器械を用いて身体を擦り、揉み、叩きなどして行う治療法とされる。今回の発表では、モンゴルの視覚障害者が行っている手技療法、日本式按摩マッサージ指圧及びモンゴル伝統マッサージを総称する語とする。  3.視覚障害者雇用状況3)4)  モンゴルの視覚障害者数は16673名で、そのうち7000人(約43%)は就労年齢(男性:18~60歳,女性18~55歳)である。だが、そのうちの有職者は約4%である。2012年のモンゴル盲人連合協会の調査によると、モンゴル国内では287人の視覚障害者が就労している。  就労している職種は、マッサージ業138名、国立盲人工場での繊維加工製品作成作業66名、残りの83名は、公務員、教員、音楽関係、法律関係、NGO団体、自営業等である。  4.モンゴルの視覚障害マッサージ師養成の歩みと現状5)  (1)116学校における職業訓練  モンゴル盲人連合協会が、2005年からモンゴルの視覚障害者にマッサージ師養成コースを開始してから今年で11年目になる。  最初は、ウランバートル市にある第116学校(盲学校)の一室にて、訓練活動を行っていたが、2005年に、職業訓練センターの授業の一環として、マッサージ師養成6か月間コース(現在でも行われている)を開始した。  当初、教室の設備が整っていないため、わずか6人の視覚障碍者を対象に訓練を行っていた。また、マッサージ講師も不足し、マッサージに関する教材や、教科書もなかった。それで同センターの職員らが、日本で使用していたマッサージに関する教材や教科書を少しずつモンゴル語に訳し、必要な資料を作っていった。  2007年から、それまで借りていた1室を二部屋に増やし、(78平方メートル)マッサージコースを希望する受講生を15名ほどを受け入れられる態勢を整えた。  (2) 地方での講習の実施  モンゴルは広大で、21の県がある。当時、職業訓練センターの職員らは、ウランバートルで地方の視覚障害者のマッサージ訓練をしようとしたが、彼らの多くがそれぞれの家庭の事情があり、ウランバートルへ学びに行くことができないでいた。  そこで、地方での小さなマッサージ訓練が計画され(2か月間コース)、マッサージを習いたいという地方の視覚障害者たちの要望を受けて、同センターの職員が、各地へ出かけていった。  2007年から2014年5月までに同コースが8回実施された。その各県名示すと、次のようになる。  ナライッハ市、スフバートル県(2回)、ゴビスムベル県、オルホン県、ホブスゴル県、ドルノド県、オムノゴビ県の1市6県。  また、2008年にマッサージ指導員養成1年間コースを、8名に対し実施した(1回のみ)。  (3) 新訓練センターの建設とコースの充実  そして、2011年に、職業訓練センターの訓練活動を広げる目的で、新しい建物(総床面積340平方メートル、教室4部屋、職員室二部屋、寄宿室4部屋、そのほかに、食堂、洗面場、洗濯室、トイレ、シャワー室などを含む)を完成させた。  本建物が完成されたことにより、地方からウランバートルへ来てマッサージ師養成コースを実施するセンターへの通所が困難な視覚障害者たちを受け入れる態勢が整えられた。  本建物が完成したことと同時に、アジア医療按摩指導者ネットワーク(Asia Medical Massage Instructors Network AMIN6)が作成した医療マッサージガイドラインを元に、日本式按摩や、モンゴル伝統マッサージの内容を含む初級医療マッサージの1年間コース(1000時間)を実施し、2013年現在、2回目の卒業生を迎えている。  (4) 認定マッサージ師数  2014年5月までに、モンゴル盲人連合協会にマッサージ師として認定された視覚障害者は175名である。  そのほかに、1995年にモンゴル国立老人病院が主催となって、視覚障害者に対し、医療マッサージ師養成1年間コースを1回のみ行った。その卒業生10名の他に、マッサージの教育訓練は特別受けていないが、自身の才能を生かしてマッサージ業を営む視覚障害者が数名いると見られる。  ここで、2005年9月から、2014年3月15日までの8年6ヵ月間に、モンゴル盲人連合協会の訓練センターでマッサージ技術の訓練を受け、モンゴル盲人連合協会に認定されたマッサージ師数を示す。  モンゴル盲人連合協会認定マッサージ師のコース別人数(総数190名)   a.マッサージ師養成6か月間コース=128名   b.マッサージ師指導員養成1年間コース(2008年に行われた)=8名(全員前期卒業生)   c.地方で実施したマッサージ師養成2か月間コース=38名   d.初級医療マッサージ師養成1年間コース=17名(その中の8名が前期卒業生)  5.モンゴルの視覚障害マッサージ師の就労  5)モンゴル盲人連合協会が2007年2月に、マッサージ訓練を終えた視覚障害のマッサージ師に職場を提供することを目的に、モンゴル政府の障害者雇用促進事業により資金援助を受けて、最初の施術所(名称:ベストマッサージセンター)、さらに、2007年8月に、2つ目の施術所を、それぞれ開設した。  その後、視覚障害マッサージ師が自分で施術所を経営するというケースが年々増加している。その増加の要因は、障害者が新しい事業を始めるのに、国からの資金の一部が援助される制度があることである。  モンゴル盲人連合協会が、これらの施術所の営業を統一させる目的で、マッサージ営業基準を定めて、その基準に達していればベストマッサージセンターの名称を使用して営業するように許可を与えている。  2015年現在、視覚障害者が経営しているベストマッサージセンターは、全国におよそ30か所設けられている(ウランバートル市に20か所)。マッサージ職に就いている視覚障害マッサージ師の多くが、これらのマッサージ施術所に所属している。 II. 研究の目的  現在、モンゴルでは、医師や一部の看護師を除いて、マッサージ業に携わっている視覚障害者は、医療マッサージ師として認められず、リラクゼーションを目的としたマッサージを行っている。つまり、視覚障害のあるマッサージ師はモンゴルの医療現場に携わることができない状況である。彼らが、医療従事者として認められるためには、まず、視覚障害者のマッサージ分野において、国のライセンス制度(国家資格制度)を確立することが必要であり、そのためには、高いレベルの教育(専門学校及び大学での教育)を視覚障害者に課すことを目指したカリキュラムを構築することが重要である。そして、マッサージ師養成やマッサージ領域に関する法制度を整える必要がある。  本研究は、モンゴルにおけるマッサージ師養成制度や、マッサージ業領域の発展を目指し、そのために必要な基礎資料を作成することを目的として、モンゴルの視覚障害者のマッサージ業領域の現状をアンケート調査するものである。 III.対象と方法  1. 調査方法  調査は、記名のアンケートを用いた調査法で、モンゴル盲人連合協会と筑波技術大学の連名で行った。自身でアンケートに記入が可能なものには、アンケート用紙(モンゴル語の墨字)と返信用封筒(切手を貼ったもの)を118名に郵送し、回答を依頼した。アンケート記入が困難な者に対しては、代筆記入を可能とした。回答は、直接モンゴル盲人連合協会宛に郵送し、一部メールやファックスにても返信可能とした。  返信のなかった者に対しては、直接面談することも検討した。実際に、31名には、直接アンケート用紙を手渡して、回答を依頼した。15名に対しては、電話にて回答を依頼した。26名に対しては、モンゴル盲人連合協会の職員がアンケート内容を読み上げ、回答を得た。全回答者の77.0%(97名)が代筆記入となっていた。  2. 対象  モンゴル盲人連合協会にマッサージ師として認定された職業訓練センターの卒業生175名と、主に1995・1996年ごろに他の機関でマッサージの訓練を受けた視覚障害者、マッサージの教育訓練を受けず、マッサージ業を営む視覚障害者15名(その他)の合計190名とした。  3. 調査期間  2014年1月~同年4月の4ヵ月  4. アンケートの内容(資料1,2)  アンケート内容は、①プロフィール(性別、年齢、教育レベル、文字使用、視力)、②就労に関すること、③収入に関すること、④取り扱い患者の症状とし、独自に作成した。概ね選択方式とし、一部、記述式とした。  5. 倫理的配慮  本研究で取得するデータは、被験者の個人情報(氏名・性別・年齢・)と実験データ(アンケート)である。実施責任者と実施分担者が各個人研究室で解析する。実施責任者と実施分担者が学術雑誌や学術講演会等で発表するが、個人が特定されうるデータは一切公表しない。また、本研究の目的以外では利用せず、また実施責任者と実施分担者以外の者には提供しない。  6. 分析方法  データは、コンピューター上で、マイクロソフト エクセル統計2012に入力し、実数と百分率で表した。 IV.結果  1. 回収率  アンケート回収率は、職業訓練センターの卒業生117名、その他9名、合わせて126名66.3%であった。  2. 課程選択分布  卒業課程は、マッサージ師養成6か月間コースが81名(64.3%)と最も多く、次いで、地方でのマッサージ師養成2か月間コースが15名(11.9%)、続いて初級医療マッサージ師養成1年間コース14名(11.1%)、マッサージ師指導員養成1年間コース7名(5.6%)、その他9名(7.1%)であった。  3. アンケート項目回答  (1)性別(図1,表1)  性別は、男性が62名(49.2%)、女性が64名(50.8%)となり、男女比率はほぼ同じである。  (2)年齢(図2,表2)  年齢は「31歳~40歳」が49名(38.9%)と最も多く、次いで「41歳~50歳」33名(26.2%)、「21歳~30歳」31名(24.6%)、「51~60歳」12名(9.5%)、「20歳未満」1名(0.8%)であった。  (3)教育レベル(図3,表3)  教育レベルは、「高校卒業」46名(36.5%)、「中学校卒業」39名(31.0%)、「大学卒業」18名(14.3%)、「小学校卒業」10名(7.9%)、「その他」5名(4.0%)の順であった。「教育を受けていない」が8名(6.3%)であった。  (4)文字使用状況(図4,表4)  文字使用状況は、「墨字使用」が62名(49.2%)、次いで「点字使用」39名(31.0%)、「その他」2名(1.6%)で、「使用できない」が23名(18.3%)であった。  (5)視力状況(図5,表5)  視力状況は、「全盲」が49名(38.9%)と最も多く、「0.01未満」が30名(23.8%)、「0.01~0.1未満」15名(11.9%)、「0.1以上~0.5未満」14名(11.1%)、「0.5以上~1.0未満」16名(12.7%)、「1.0以上」1名(0.8%)であった。  (6)マッサージ師養成コースを卒業した年次(図6,表6)  マッサージ師養成コースは、「2013年」が31名(24.6%)と最も多く、「2010年」20名(15.9%)、「2012年」18名(14.3%)、「2011年」16名(12.7%)となっており、2010年以降が増加している。  (7)マッサージに従事した年限(図7,表7)  マッサージに従事した年限に回答したのは97名であった。そのうち、「1年以上~3年未満」が34名(35.1%)、「1年未満」23名(23.7%)、「3年以上~5年未満」18名(18.6%)の順で、「3年未満」が57名(58.8%)と過半数を超え、「20年以上」が1名(1%)であった。  (8)副業に従事の有無(図8,表8)  副業に従事しているのは、21名(16.6%)で、そのうち、「マッサージが主」19名(15.8%)、「他業種が主」2名(1.6%)であった。  (9)実務に従事の有無(図9,10,表9,10)  実務については、従事「無」が32名(25.4%)、「有」が94名(74.6%)であった。実務に従事していない理由として、「結婚・出産・家事手伝い」17名(53.1%)、「他業種へ勤務」6名(18.8%)であった。  (10)開設者への問い  1) 施術所の所有状況(図11,表11)  実務に従事している中で「開設している」が26名(27.65%)、「勤務している」が68名(72.34%)となった。開設している26名のうち、施術所の所有は、「賃貸」23名(88.5%)、「自分の持ち物」3名(11.5%)であった。  2) 施術所の構造について(図12,表12)  施術所が「ライフライン(浄水、下水、あるいは、公共の湯暖房設備)に繋がっている」17名(65.4%)、「マッサージ以外の目的でも使用されている」6名(23.1%)であった。  3) 従業員数(図13,表13)  従業員数について、「2人」8名(30.8%)、「本人だけ」7名(26.9%)、「1人」6名(23.1%)「4人」が3名(11.5%)・「3人」「5人」が1名(3.8%)であった。  4) 取扱い患者数(図14,表14)  一日平均の取扱い患者数については、「5人未満」13名(50%)、「5人以上~10人未満」11名(42.3%)と10人以下が92.3%と大多数を占めた。  (11)勤務者への問い  1) 勤務先(図15,表15)  勤務している者で、勤務先については、「マッサージ施術所(ベストマッサージセンター)」59名(86.8%)と最も多い。次いで、「病院・医院」4名(5.9%)となっている。  2) 勤務先での取扱い患者数(図16,表16)  勤務している者の取扱い患者数は、「5人未満」57名(85.1%)、「5人以上~10人未満」9名(13.2%)であった。  (12)所在地(図17,表17)  開設や勤務先などの所在地は、モンゴルの首都である「UB(ウランバートル)」75名(80%)と最も多かった。次で、第2の都市である「ORA(オルホン県)」が6名(6.4%)であった。  (13)報酬(図18,表18)  報酬または給与は、「40万ツグルグ以上~50万ツグルグ未満」が25名(26.7%)と最も高かった。以下、ツグルグは、ツグと表記する。  「20万ツグ以上~50万ツグ未満」では、56名(59.57%)と過半数を大きく上回ることがわかる。9名(9.6%)が「100万ツグ以上」となっている。  (14)取扱い患者の疾患(図19,表19)  取扱い患者の主な疾患は、「肩こり」78(17.37%)、「腰痛」77(17.15%)、「頭痛」61(13.58%)「頚腕症候群」41(9.13%)、「下肢痛(座骨神経痛を含む)」36(28.6%)、「神経痛」33(26.2%)であった。 V. 考察  1. アンケート回収率  アンケート回収率は、職業訓練センターの卒業生117名、その他9名、合わせて126名、66.3%と高い結果を示した。この結果はモンゴル盲人連合協会が職業訓練センターの卒業生やその他マッサージ師を含む全ての会員らと様々な面で卒業後も関わり、彼らの自立向上に努めていることが要因と考える。  回答者の課程選択分布では、「マッサージ師養成6か月間コース」が81名(64.3%)と最も多かった。これは、全対象者の67.4%にあたる128名が「マッサージ師養成6か月間コース」を終えていることからこのような結果を予測できた。  2. 回答者の属性  本研究の回答者の属性を、藤井らの報告7)と比較して考察すると、性別では、男性が62名(49.2%)、女性が64名(50.8%)であり、男女比がほぼ同じであるのに対し、日本では(85.2%)で男性の割合が高く、モンゴルは女性のマッサージ師が活躍する割合が高い。また、年齢構成では、日本では、50歳以上が6割余り(平均年齢56.8歳)を占めており高齢化の傾向にあるのに対して、モンゴルでは「20歳~50歳」が113名(89.7%)と、比較的若い年齢のマッサージ師が多く、本分野の今後の発展を担う若い人材が育ってきていることが伺える。  3. 回答者の教育レベル  全体の45.24%に当たる57名が「高校レベル」の教育を受けていなかった。つまり、中学までかそれ以下の教育しか受けていないか、あるいは教育そのものを受けておらず、全体として、教育レベルが非常に低いことがわかる。男女比で見ると、「中学レベル」では、男性が23名(59.0%)と高く、一方「高校レベル」では、女性が30名(65.2%)と高くなっている。全体で見ると、教育レベルは男性よりも女性の方が高いことがわかった。墨字や点字の使用状況に対する問いでも、墨字や点字が使用できないもの23名中、男性が16名(69.6%)と、女性7名(30.4%)より多かった。このように、職業訓練センターの卒業生は、男性よりも学歴の高い女性が多く、男 性は教育歴があまりない人も少なからずいる結果であった。このような教育レベルの差を、今後高いレベルの教育を提供するうえで、どのような解決方法で一定化させていくのかが、これからの課題点と考えられ、さらに検討する必要性が求められる。  4. 視力状況  視力の状況は、79名(60.7%)が「0.01未満」であり、その中で、「全盲」が49名(38.9%)と最も多かった。視力に関する男女比は、「全盲」が男性32名(65.3%)と高く、逆に「0.1以上~0.5未満」では9名(64.3%)、「0.5以上~1.0未満」では12名(75.0%)と女性が圧倒的に高い結果であり、視力は、全体的に女性の方が良いことが分かった。  このような結果となった理由は、これまで職業訓練センターが実施してきたマッサージ養成コースの入学を希望する者が多い場合には、希望者の中の比較的若い者を優先的に受け入れたことと、視力の面でも学歴の面でもレベルが低い者は、モンゴルの社会で自立し難い状況にあったので、モンゴル盲人連合協会は、そのような視覚障害者の自立を促進することを方針として、入学者を受け入れていたためと考えられる。  一方で、日本では、あん摩マッサージ指圧師全体(6,000人の業者)の3割が視覚障害のある業者であり、その85%余りが重度(障害等級の1級、2級)の障害を有していた8)。  5. マッサージ業の就労  全回答者126名中マッサージ業に従事している者が94名(74.6%)おり、従事している年限では、94名中、「3年未満」が57名(58.8%)と過半数を超え、「20年以上」は1名(1%)であった。これで見ると、モンゴルの多くのマッサージ師がまだ実務歴が短いことが分かる。また、副業に従事しているのは、21名(全体の16.6%)で、19名(15.8%)がマッサージが主、2名(1.6%)が他業種が主と、回答した。また、マッサージの実務に従事していないのは、32名(25.4%)で、その理由として最も多いのは、結婚・出産・家事手伝い(17名=53.1%)となっている。さらに、実務に従事している中では、マッサージ治療院を「開設している」が26名(27.65%)、「勤務している」が68名(72.34%)であった。そして、開設している26名のうち、わずか3名(11.5%)が、施術所の建物の所有者であり、大多数は、賃貸の施設で施術所を開設していた。  6. 施術所環境および施術状況  モンゴルでは、施術所が、ライフラインに繋がっていないと、衛生的にふさわしくない環境であると判断されるため、インフラを整えることが重要となる。ライフラインが整っていない施術所が6店舗(23.1%)、また、マッサージ以外の目的でも使用されている施術所が3店舗(11.5%)あることから、今後、マッサージ施術所の建物や設備などに関する基準を定め、統一させ、衛生面や施術環境を充実させる必要があると考える。  開設している施術所での雇用については、従業員数「2人」が8名(30.8%)と最も多く、従業員数「4人」が3名(11.5%)、「5人」が1名(3.8%)であり、従業員を雇用しているのは全体の73.0%であった。これに対して、日本では、従業員を雇用している視覚障害業者は16%にとどまる一方、その雇用従業員数も9割が5人未満で占められていて、日本では小規模経営であるとされる8)。  取扱い患者数では、「5人未満」が13名(50%)と過半数であった。また、5人以上~10人未満が11名(42.3%)であり、両者を合わせれば、10人未満が24名(92.3%)と大半を占めた。取り扱い患者数については、日本では、視覚障害業者の3割は、一ヶ月に扱う患者数が30人未満で、100人未満の累積率は7割を超えている8)と報告されている。これは、障害者年金制度の違いなども反映しているが、単純に患者数のみでみると、モンゴルのマッサージ師の取り扱い患者数をつきに直すと月20日の実務とすると月100人未満が50%、月200人未満が90%以上となり、日本のあん摩マッサージ師より取り扱い患者数はかなり多いと言えよう。  勤務先では、「マッサージ施術所(ベストマッサージセンター)」が59名(86.8%)と最も多く、ついで、「病院・医院」が4名(5.9%)となっている。男女比率では、男性39名(57.4%)・女性29名(42.6%)であった。取扱い患者数では、「5人未満」が57名(85.1%)と圧倒的に多かった。これは、背景のところで述べたように、モンゴル盲人連合協会が視覚障害マッサージ師に対して進めてきた就労促進事業が一定の成果を見せている結果であるといえる。  所在地では、開設や勤務先などの所在地を記述するように問うているが、モンゴルの首都である「UB(ウランバートル)」が75名(80%)と最も多かった。ついで、第2の都市である「ORA(オルホン県)」が6名(6.4%)となっていた。ほとんどがUBであったのは、モンゴルにおいては、UBにモンゴルの全人口300万人の約4割、ORAに約1割が居住しており、大都市に多くの人々が生活していることが原因と考えられる。  7. 報酬または給与(表20,21)  報酬または給与に関しては、全体で、「40万ツグ以上~50万ツグ未満」が25名(26.7%)と最も高く、「20万ツグ以上~50万ツグ未満」の合計が56名(59.57%)と過半数を上回っていた。また、9名(9.6%)が「100万ツグ以上」となっていた。これを性別で見ると、「20万ツグ以上~40万ツグ未満」が21名(67.75%)、「60万ツグ以上~80万ツグ未満」が7名(87.5%)とそれぞれ男性の比率が高かった。卒業過程と報酬(表20)、または教育レベルと報酬(表21)をそれぞれクロス集計して比較してみたが、統計学的な有意差は見られなかった。  このような結果となったのは、回答者の大多数が終えているマッサージ師養成6か月間コースや、地方でのマッサージ師養成2か月間コースなどが、実技を中心として行われているため、訓練コースの違いや教育歴の差が報酬の差に現れなかったのではないかと考えられる。つまり、実技の実力が高く、接客の仕方など、臨床能力が優れていれば、重度の視力障害を有していても、あるいは教育レベルが低くても、大学の教授クラスより高い収入を得ることが不可能ではないというのが、モンゴルの現状である。モンゴルの国家統計委員会の2011年の発表によると、モンゴルの国家公務員の平均月給は、43万4300ツグルグ4)である。視覚障害マッサージ師の月給は、公務員と同じくらいで、平均的な給与レベルと考えられる。一方、日本では、視覚障害業者の年間施術料収入は、300万円未満が約6割、500万円未満が約8割8)であり、日本の公務員の平均月給は30万円強に比べて低い水準にある。これは、両国の障害者福祉のための年金制度などの違いがあるので一概には言えないが、モンゴルでは、視覚障害者がマッサージ師としての生活が行える環境にあることが確認された。  8. 患者の主症状  施術対象患者の主な症状としては、「肩こり」(17.37%)、「腰痛」(17.15%)、「頭痛」(13.58%)「頚腕症候群」(9.13%)であり、この4症状の合計で過半数を超えていた。これは、日本のあん摩マッサージ・鍼灸の施術を受ける患者の主な症状に関する小川ら9)の調査結果で上位3症状が、腰痛、肩凝り、頚腕症候群であったことと比較すると、「肩こり」、「腰痛」、「頚腕症候群」が上位であることは日本とモンゴルで同じであったが、「頭痛」が3位に入っていたことは、日本の18位と大きく異なる点であった。これは、モンゴルの気候風土や生活のあり方などが原因と考えられ、モンゴルにおける施術対象患者の特徴的な傾向ではないかと考えるが、今後さらに検討が必要であろう。 VI. 結論  本研究は、モンゴルの視覚障害者のマッサージ業領域の現状をアンケート調査したものであり、モンゴルの視覚障害者、あるいは視覚障害マッサージ師の現状に関する初の研究である。  モンゴルで視覚障害のあるマッサージ師として就労している合計190名に対しアンケート調査を行い、126名(66.3%)から回答を得た。モンゴルの視覚障害マッサージ師は、モンゴル盲人連合協会の訓練センター等で学んだ後、約75%という高い就労率を示し、平均的に、一般公務員並みの報酬を得て生活していた。  本研究は、今後、モンゴルの視覚障害者が行うマッサージ業をさらに発展させるための基礎資料となると考えられる。 VII. 文献 1) 外務省のホームページ:http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/mongolia/ 2) Horloo D.私が開いた学校.ウランバートル.2014. 3) Gerel D、障害者のリハビリテーションに関するレポート、ウランバートル、2014. 4) 国家統計委員会.モンゴルの国民や世帯などに関する統計調査.2010. 5) Batnov J.モンゴル盲人連語協会、我々が歩んできた30年間.ウランバートル.2008. 6) AMINのホームページ:http://www.e-amin.org/ 7) 藤井 亮輔.鍼灸按摩事業所の営業件数と市場規模に関する調査.全日本鍼灸学会雑誌.2010;60(5):792-801. 8) 岩本 光弘,大橋 由昌,指田 忠司,原島 雅之,藤井 亮輔,吉泉 豊晴.独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構障害者職業総合センター,鍼灸マッサージ業における視覚障害者の就労動向と課題(調査研究広告書No.69)―視覚障害者の商業的自立支援に関する研究 サブテーマⅠ,“視覚障害者の働く場の確保・拡大のための方策及び必要な就労支援策に関する研究”にかかる報告―サマリー.2005. 9) 小川 卓良,形井 秀一,箕輪 政博.第5回現代鍼灸業態アンケート集計結果【速報】.医道の日本.2011;(815):191-224 資料(図表) 資料1 アンケート調査依頼文  モンゴルの視覚障害マッサージ師の現状の調査のアンケート協力願い  研究名 モンゴルの視覚障害マッサージ師の現状調査  平成26年3月15日  所属 筑波技術大学大学院技術科学研究科保健科学専攻鍼灸学コース2年生  バトバヤル ガンゾリグ  指導教授 形井 秀一  現在モンゴルでマッサージに携わっている視覚障害者は、医療マッサージ師として認められず、リラクゼーションを目的としたマッサージを行っている。つまり、モンゴルの医療現場に携わることができない状況である。私たちが、医療従事者として認められるためには、まず、視覚障害者マッサージのライセンス制度(国家資格制度)を確立することや、高いレベルの教育(専門学校及び大学)を視覚障害者に課すことを目指したカリキュラムを構築することなどが重要である。そのためには、マッサージ師養成やマッサージ領域に関する法制度を整える必要がある。  それに向けて私たちが早急に行うべきことは、現在モンゴルでマッサージ業に携わっている全視覚障害者に対し、現状の詳しい調査をし、基礎資料を作成することであると考えている。  そこでマッサージ師の皆様にご協力をお願いいたします。  なお、アンケート用紙は研究者が監理し、調査結果は本研究以外の目的では使用しません。また、学会等で発表する予定ですが、その場合も個人の名前や個人情報が分かる形での発表は一切行いません。  ご協力をよろしくお願いいたします。 資料2 アンケート用紙 No.  年 月 日  モンゴルで、マッサージ師資格を取得した視覚障害者の現状状況アンケート調査票 *回答欄に記入する前に、記入要領や全体的によく読み、理解した上で記入をしてください。(2014年3月15日(土)までのことを記入して下さい) 以下の調査票アンケートは、あてはまる数字を○で囲み、または( )内に記入して下さい。 氏名: (    ) 学校名: (    ) 課程名 卒業課程を○で囲んで下さい。1~4に該当しない場合は、その他にその理由を記入してください。 1. マッサージ師養成6か月間コース 2. マッサージ師指導員養成1年間コース・(2008年に行われた) 3. 地方でのマッサージ師養成2か月間コース 4. 初級医療マッサージ師養成1年間コース 5.その他: (    ) 問い 記入要領 回答欄 1. 性別 1. 男 2. 女 2. 年齢 1. 20歳未満 2. 21歳以上~30歳未満 3. 30歳以上~40歳未満 4. 40歳以上~50歳未満 5. 50歳以上~60歳未満 6. 60歳以上 3. 教育レベル 必ず、該当する番号を一つ選んで○で囲んで下さい。どちらにも該当しない方は、その理由をその他に、記入してください。 1. 義務教育を受けていない 2. 小学校 3. 中学校 4. 高校 5. 大学 6. その他: (    ) 4. 文字使用状況 1~3に該当しない方は、その理由をその他に、記入してください。 1. 使用できない 2. 墨字使用 3. 点字使用 4. その他: (    ) 5. 視力状況 必ず、矯正された視力を○で囲んで下さい。 1. 全盲 2. 0.01未満 3. 0.01以上~0.1未満 4. 0.1以上~0.5未満 5. 0.5以上~1.0未満 6. 1.0以上 6. マッサージ師養成コース終了を認定された年次 マッサージ師養成コースを終えた年次を○で囲んで下さい。モンゴル盲人連合に認定されていない方は、その他のところで記入してください。 1. 2005年 2. 2006年 3. 2007年 4. 2008年 5. 2009年 6. 2010年 7. 2011年 8. 2012年 9. 2013年 10. その他: ( ) 7. マッサージ業に従事した年次 実際に、マッサージ業に従事した年次を、○で囲んでください。 1. 1年未満 2. 1年以上~3年未満 3. 3年以上~5年未満 4. 5年以上~10年未満 5. 10年以上~20年未満 6. 20年以上 8. 副業に従事の有無 この問いは、マッサージ業に従事しながら、他業種にも従事している方のみが答えてください。該当しない方は、記入しないでください。 他業種の職種を記入してください。(    ) 1. マッサージが主 2. 他業種が主 9. 実務に従事の有無 1.有 ●開設されているかたは、問10へ    ●勤務されているかたは、問11へ 2. 無し⇒その理由を次から選んでください: A. 他業種へ勤務 b. 学生・進学中 C. 結婚・出産・家事手伝い D. 就職・開業準備中 e. 病気療養中 f. その他(    ) マッサージ業務に従事しているかたは「1.有り」とします、従事していないかたは「2.無し」とし、この場合は、その理由を1つ選んで下さい。 10. 開設されているかた(出張施術での開設を含む)(以下のうち、該当するものに全て○を付けてください) A. 施術所の所有状況 1. 施術所が、自分の持ち物 2. 施術所が、賃貸である B. 施術所の使用または、構造に関する状況 1. 施術所が、ライフラインに繋がっている(下水道、上水道、湯暖房を含む器具) 2. 施術所が、ライフラインに繋がっていない 3. 施術所が、マッサージ以外の目的でも使用されている C. 従業員数 [  人](ご本人のみの場合は0と記入してください) D. 取扱患者数(治療院の一日平均) 取扱患者数(一日平均)は、施術所での最近1年間について該当するものを選んで下さい。 1. 5人未満 2. 5人以上~10人未満 3. 10人以上~15人未満 4. 15人以上~20人未満 5. 20人以上~30人未満 6. 30人以上~40人未満 7. 40人以上~50人未満 8. 50人以上 11. 勤務されている方 A. 勤務先 (以下のうち、ひとつだけ○を付けてください) 主たる勤務先を一つだけ選んで下さい。この場合、主たる勤務先とは、収入ならびに従事時間数の多いものとします。 1. マッサージ施術所(ベストマッサージセンター) 2. マッサージ施術所(ベストマッサージセンター以外) 3. 出張施術のみ 4. 病院・医院 5. 医療施設または「温泉施設(特養を含む) 6. スポーツクラブ 7. レジャー(サウナ等)施設 8. 会社などの企業団体(ヘルスキーパー) 9. マッサージ師教育指導員 10. その他: (    ) B. 取扱患者数(あなたの一日平均) 取扱患者数(一日平均)は、最近1年間のあなた自身について該当するものを選んでください。 1. 5人未満 2. 5人以上~10人未満 3. 10人以上~15人未満 4. 15人以上~20人未満 5. 20人以上~25人未満 6. 25人以上 12. 開設所在地または勤務所在地 都道府県名: (    ) 前記「10」または「11」に該当する都道府県名を記入して下さい。 13. 報酬または給与(月額)【モンゴルのツグルグ(以下ツグとする)で計算する】 (日本の1円が、モンゴルの約17.5ツグに相当する) マッサージ師資格で得られた報酬または給与について、最近1年間の平均月収(税込)として該当するものを選んで下さい。 前記「10」または「11」と符合いたします。 1. 10万ツグ未満 2. 10万ツグ以上~20万ツグ未満 3. 20万ツグ以上~30万ツグ未満 4. 30万ツグ以上~40万ツグ未満 5. 40万ツグ以上~50万ツグ未満 6. 50万ツグ以上~60万ツグ未満 7. 60万ツグ以上~70万ツグ未満 8. 70万ツグ以上~80万ツグ未満 9. 80万ツグ以上~90万ツグ未満 10. 90万ツグ以上~100万ツグ未満 11. 100万ツグ以上 14. 取扱患者の主な症状 あなたが取り扱った患者で、最も多い症状から5つを○で囲んで下さい。 1. 腰痛 2. 肩こり 3. 膝関節疾患 4. 下肢痛(坐骨神経痛を含む) 5. 肩関節疾患 6. 頚腕症候群 7. 不定愁訴・自律神経失調症 8. 健康管理 9. スポーツ障害 10. 頭痛 11. 婦人科疾患 12. 泌尿器疾患 13. 消化器疾患 14. 関節リウマチ 15. アレルギー性疾患 16. 神経痛 17. 肥満 18. 循環器疾患 19. 心身症 20. 欝病 21. 胆・肝疾患 22. 小児疾患 23. 呼吸器疾患 24. 耳鼻眼歯の疾患 25. その他: (    ) 本人のサイン: (    )代筆者のサイン: (    ) ご記入いただき、ありがとうございました。 性別 n=126 図1 男女の割 表1 男女の割合  全体では、男性が62名(49.2%)、女性が64名(50.8%)となり、男女比率がほぼ同体である。 年齢 n=126 図2 年齢 表2 年齢  全体では「30歳~40歳」が49名(38.9%)と最も多く、ついで「40歳~50歳」が33名(26.2%)となり、その次「20歳~30歳」が31名(24.6%)となった。 教育レベル n=126 図3 教育レベル 表3 教育レベル  全体の45.24%に当たる57名が「高校レベル」の教育を受けてないことから、教育レベルが非常に低いことがわかる。 文字使用状況 n=126 図4 文字使用状況 表4 文字使用状況  全体では「墨字使用」が、62名(49.2%)と最も高くなっている。 視力状況 n=126 図5 視力状況 表5. 視力状況  視力状況では、79名(60.7%)が「0.01未満」だった。その中で「全盲」が49名(38.9%)と最も多かった。 マッサージ師養成コースを認定された年次 n=126 図6 マッサージ師養成コース終了を認定された年次 表6. マッサージ師養成コース終了を認定された年次  全体では、「2013年」が31名(24.6%)と最も多く「2006年」が1名(0.8%)と最も少なかった。 マッサージ業に従事した年次 n=97 図7. マッサージ業に従事した年次 表7. マッサージ業に従事した年次  全体では「3年未満」が57名(58.8%)と過半数を超え、「20年以上」が1名(1%)となった。これで視ると、多くのマッサージ師がまだ実務歴が短いことがわかる。 副業に従事の有無 n=21 図8. 副業に従事の有無 表8. 副業に従事の有無  副業に従事しているのは、21名、全体の(16.6%)で、19名(15.8%)がマッサージが主、2名(1.6%)が他業種が主と回答した。 実務に従事の有無 n=126 図9. 実務に従事の有無 表9. 実務に従事の有無  全体では、実務に従事 「無」が32名(25.4%)と低く、「有」が94名(74.6%)と圧倒的に多い。 実務に従事していない理由 n=32 図10. 実務に従事していない理由 表10. 実務に従事していない理由  実務に従事していない理由として「結婚・出産・家事手伝い」が17名(53.1%)と最も多い。 施術所の所有状況 n=26 図11. 施術所の所有状況 表11. 施術所の所有状況  実務に従事している中で「開設している」が26名(27.65%)、「勤務している」が68名(72.34%)となった。開設している26名のうち、わずか3名(11.5%)が、施術所の建物の所有者であることがわかる。 施術所の使用または構造の状況 n=26 表12 施術所の使用または構造の状況 表12 施術所の使用または構造の状況  モンゴルでは施術所が、ライフライン(浄水・下水・公共の湯暖房機具)に繋がっていないと、衛生的にふさわしくない環境であると判断されかねない。そのような施術所が6店舗(23.1%)また、マッサージ以外の目的でも使用されているが3店舗(11.5%)あることから今後、マッサージ施術所の建物や設備などに関する基準を定め、統一させる必要がある。 従業員数 n=26 図13 従業員数 表13 従業員数  開設しているでは「本人だけ」が7名(26.9%)と最も多かった。従業員数が「4人」が3名(11.5%)・「5人」が1名(3.8%)といずれも女性であった。 取扱患者数 n=26 図14 取扱患者数 表14 取扱患者数  この問いでは、「5人未満」が13名(50%)と過半数を示した。 勤務先 n=26 図15 勤務先 表15 勤務先  全体では、「マッサージ施術所(ベストマッサージセンター)」が59名(86.8%)と最も多い。ついで、「病院・医院」が4名(5.9%)となっている。 取扱患者数 n=68 図16 取扱患者数 表16 取扱患者数  全体では、「5人未満」が57名(85.1%)と圧倒的に多かった。 所在地 n=94 図17 所在地 表17 所在地  この問いでは、開設や勤務先などの所在地を記述となっているが、モンゴルの首都である「UB(ウラーンバートル)」が75名(80%)と最も多かった。ついで、第2の都市である「ORA(オルホン県)」が6名(6.4%)となっている。 報酬 n=92 図18 報酬または給与 表18 報酬または給与 *モンゴルの約17ツグルグ(ツグ)が、日本の1円に相当する。  全体で、「40万ツグ以上~50万ツグ未満」が25名(26.7%)と最も高かった。  「20万ツグ以上~50万ツグ未満」では、56名(59.57%)と過半数を大きく上回ることがわかる。9名(9.6%)が「100万ツグ以上」となっている。 取扱疾患 n=449 図19 取扱疾患 表19 取扱疾患  「肩こり」(17.37%)、「腰痛」(17.15%)、「頭痛」(13.58%)「頚腕症候群」(9.13%)、が過半数を超えて主な症状となっている。 表20 卒業過程と報酬または給与 表21 教育レベルと報酬または給与1 謝辞  本研究を行なうにあたり、筑波技術大学大学院技術科学研究科の形井 秀一 教授には、調査から論文執筆に至るまで、終始熱心なご指導、ご激励を頂きました。心より感謝申し上げます。また、同大学大学院技術科学研究科の緒方 昭広 教授、藤井 亮輔 准教授、野口 栄太郎 教授、大越 教夫 教授、には、熱心なご指導やご助言を頂きました。  客員研究員の前田 尚子さんには論文執筆にあたって多大なるご協力を頂きました。また、修士1年生のバトバヤル・エンフマンダハさん、研修生の金子 純子さんには大変お世話になりました。  また、モンゴル盲人連合協会のみなさん並びにモンゴル盲人連合協会付属専門教育職業訓練センターのみなさん、卒業生のみなさん、アンケート調査に協力してくださった皆さんにも厚く御礼を申し上げます。  以上のように、本研究は多くの方々のご協力によって成立しました。心より深く感謝し、厚く御礼申し上げます。 モンゴルの視覚障害マッサージ師の現状調査研究 著者:バトバヤル ガンゾリグ 所属:筑波技術大学技術科学研究科 保健科学専攻鍼灸学コース 発行年月日:2016年3月1日