文部科学省認定教育関係共同利用拠点 障害者高等教育研究支援センター 教育アクセシビリティの向上を目指すリソース・シェアリング~合理的配慮がなされた環境における高等教育修学の保証~ 「障害者高等教育拠点」事業平成 27年度報告書 国立大学法人筑波技術大学障害者高等教育研究支援センター 目次 事業概要 2 活動報告 3  他大学教職員を対象とした FD/SD研修会の開催 4  キャリア発達支援 14  ろう者学教育コンテンツ 22  情報保障 26  視覚障害情報保障機器の評価と大学間連携 34  体育・スポーツ 37  語学に関するアカデミック・アドバイスの提供 42  英語教育コンテンツ 44 成果物紹介 45 巻末資料 53  各実績一覧 54  研修会等の開催報告 57  FD/SD研修会開催アンケート 60  各担当者一覧 71 「障害者高等教育拠点」事業概要 教育アクセシビリティの向上を目指すリソース・シェアリング~合理的配慮がなされた環境における高等教育修学の保証~   筑波技術大学は、わが国で唯一の聴覚障害者と視覚障害者のための高等教育機関です。開学以降、聴覚や視覚に障害のある学生に対する様々な情報保障技術や教育プログラムの開発、教育方法の研究開発を行ってきました。これらの成果が認められ、平成 22年に文部科学省から「教育関係共同利用拠点[障害者高等教育拠点]」として認定を受けました。  本事業は、本学がこれまで蓄積してきた指導・支援ノウハウを全国の高等教育機関に提供する取組であり、聴覚・視覚障害学生が在籍する大学等からの相談に対応するほか、障害特性に応じた教育コンテンツ・情報保障技術の提供、他大学の教職員を対象とした FD/SD研修会の開催、他大学で開催される各種講習会への講師派遣等を実施しております。  本事業の教育的リソースが活用されることにより、これから聴覚・視覚障害学生の支援を開始する大学等においても、情報授受のバリアのない修学環境の構築が促進されることで、全国の高等教育機関の教育アクセシビリティ向上の実現を目指します。 参考 Webサイト 文部科学省教育関係共同利用拠点の認定について http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/daigakukan/1292089.htm 「障害者高等教育拠点」事業 4本の柱 他大学の教職員を対象としたFD/SD 研修会の開催 聴覚・視覚障害学生支援に関する相談対応 指導・支援に関するリソース・ライブラリの構築 各種講習会への講師派遣 「 FD/SD研修会」の各回のテーマ、「指導・支援に関するリソース・ライブラリ」で作成するコンテンツのテーマ: ■キャリア発達支援■ろう者学■情報保障(聴覚障害関連)■体育・スポーツ科目への支援 活動報告 ※各取組からの報告における「利用件数・利用のべ人数・大学実数」、「支援件数・大学実数」(3.実績・成果の□枠内に記載)について: ■大学等高等教育機関(本学除く)の利用または支援について記載する。 ■利用… FD/SD 研修会・講習会開催、講師派遣、コンテンツ利用、技術指導、技術提供など ■支援… 相談・アドバイスの実施 他大学の教職員を対象としたFD/SD 研修会の開催 担当者:宮城愛美、宇都野康子、戸井有希 1 .取組の目的  本取組では全国の大学における障害学生指導・支援担当教職員を対象に、本事業および本センターで蓄積してきた聴覚・視覚障害学生の指導・支援に関するノウハウや情報を全国の大学に提供することを目的として、各種の FD/SD研修会を開催した。  研修会の開催にあたっては、これまで本学を中心に構築してきた障害学生支援ネットワーク( PEPNet-Japan(※ 1)、 VISS-Net(※ 2)、障害学生支援交流会)と連携して広く情報を共有し、本事業について周知と利用の促進を図ることで、全国の大学における聴覚・視覚障害学生の修学環境の向上に資することを目指した。 (※ 1)本センターに事務局を置く「日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク」。 (※ 2)本センター障害者支援研究部・支援交流領域が運営する「視覚障害学生支援メーリングリスト」。 2 .活動報告 1)他大学の教職員を対象とした FD/SD研修会の開催(企画・運営)  全国の聴覚・視覚障害学生の指導・支援に携わる教職員を対象とした FD/SD研修会として、各回の主担当の取組および本取組との協働により 2件を企画・開催した( 7月開催「 FD/SD研修会~障害学生の入学後の支援、ゴールを見据えて~」、 2月開催「語学教育のイコールアクセスを考える」)。このほか、各取組において個別に実施された研修会や講習会、講師派遣のうち他大学教職員の FD/SDに相当するものについても記載する。  また、 11月に筑波大学と共催で、「第 5回筑波障害学生支援研究会」を開催した。なお、本研究会は、本センター障害者支援研究部・支援交流領域の教員、 T-TAC(筑波聴覚障害学生高等教育テクニカルアシストセンター)構築事業担当者と本取組担当者の協働により企画運営にあたるとともに、本学内の FD/SD研修会としても位置付けられたため、上記以外の学内教職員の協力も得ながら開催したものである。(本学「平成 27年度学長のリーダーシップによる教育研究等高度化推進事業(区分 D:教育研究等改革・改善事業)」の活動として実施) 2)障害学生支援に関するニーズ調査  平成 28年度以降の FD/SD研修会について、各地域の障害学生支援に関する課題に沿ったテーマによる開催を予定している。開催地域およびテーマ選定の参考となるよう、下記の活動を行なった。 ■アンケート調査実施に向けた項目の整理 ■FD/SDのニーズ把握のための情報収集 3)広報活動  本事業の利用促進に向け、各取組について紹介することを目的として、下記の活動を行なった。 ■事業パンフレットおよび広報用コンテンツの作成・配布 ■事業 Webサイトのリニューアル ■各種研修会やイベント等への出展 3 .実績・成果 利用件数・利用のべ人数・大学実数: 8件・ 294名・ 118校 ※下表に記載の参加者数のうち、本学教職員を除く。 1)他大学の教職員を対象とした FD/SD研修会の開催(企画・運営)  平成 27年度に開催した FD/SD研修会について、開催回数および内訳を下表に示す。 (表) 開催月 場所 研修会等のタイトル※カッコ[ ]内は、主担当の取組名 参加者数 7月 上智大学 「 FD/SD研修会~障害学生の入学後の支援、ゴールを見 据えて~」※上智大学との共催により実施[キャリア発達支援]および本取組担当者 展示担当:[情報保障]、[視覚障害情報保障機器の評価と大学間連携][体育・スポーツ]、[ろう者学] 66名(47大学・ 1機関 ) 9月 法政大学 視覚障がい者スポーツ競技『ゴールボール』実技講習会 ※法政大学障がい学生支援室主催 [体育・スポーツ] 12名(1大学 ) 11月 筑波大学 「障害学生に対する合理的配慮:障害者差別解消法の施 行を前に~弱視学生を含む集団指導での配慮と工夫~」 ※筑波大学体育センター主催 FD研修会[体育・スポーツ] 25名(1大学 ) 11月 筑波技術大学 「第 5回筑波障害学生支援研究会:合理的配慮提供に向 けた建設的対話のあり方を考える~障害者差別解消法 の施行を目前に~」※筑波大学との共催により実施  本学:本センター障害者支援部門・支援交流領域教員、 T-TAC構築事業担当者、および本取組担当者を中心に、FD・ SD企画室との連携により実施  136名(70大学・ 4機関 ) 2月 石打スキーセンター 聴覚障害者スポーツに関する講習ならびに本学学生との スポーツ交流 [体育・スポーツ] 10名(1大学 ) 2月 筑波技術大学 「語学教育のイコールアクセスを考える」 [語学教育に関するアカデミック・アドバイスの提供]お よび本取組担当者 38名(26大学・ 4機関 ) 3月 茨城キリスト教大学 「障害のある学生に対する教育支援の在り方~視覚障害 学生への合理的配慮の提供を例に~」 ※茨城キリスト教大学障害学生支援に関する FD研修会[体育・スポーツ]、[視覚障害情報保障機器の評価と大学間連携] 19名(1大学 ) 3月 石川県政記念しいのき迎賓館 「障害学生の体育 (授業 )を考える」 ※平成 27年度北陸体育学会における教育講演 [体育・スポーツ] 23名(13大学 )  上記のうち、全国の聴覚・視覚障害学生の指導・支援に携わる教職員を対象とした FD/SD研修会 3件について、以下に詳細を記す(プログラム中の氏名については敬称略、所属については開催当時)。 ■「 FD/SD研修会~障害学生の入学後の支援、ゴールを見据えて~」 【開催概要】 日時:平成 27年 7月 24日(金) 会場:上智大学四谷キャンパス(東京都千代田区紀尾井町 7-1) 対象者:障害学生の指導・支援、およびキャリア支援に携わる全国の高等教育機関の教職員、教育関係機関(特別支援学校等を含む)の教職員、および研究機関の職員等 主催:筑波技術大学障害者高等教育研究支援センター、上智大学 【プログラム】 10: 00~ 10: 15 開会・挨拶 10: 15~ 10: 30 事業概要説明 10: 30~ 12: 00 事例報告  報告者:法政大学多摩事務部総務課障がい学生支援室担当 佐藤千夏      國學院大學教育開発推進機構 鈴木崇義     上智大学学生局学生センター 秋山哲也 13: 00~ 15: 00 パネルディスカッション パネリスト: ハローワーク品川 障害者専門支援員/筑波技術大学 監事 小林武弘 筑波技術大学 保健科学部 情報システム学科 教授 坂尻正次 司会:筑波技術大学 副学長 石原保志 15: 00~ 16: 00 情報交換会・個別相談 16: 10~ 16: 30 質疑応答・総括・閉会 【実施報告】  本研修会は、各プログラムの実施をとおして、高等教育機関における障害学生支援での本事業の活用方法の提案や、今後の聴覚・視覚障害学生の指導・支援のあり方について意見交換等を行なう目的で、上智大学との共催により開催した。  午前のプログラムでは、本事業の概要説明に続き、法政大学、國學院大學、上智大学から支援体制や実践事例、および本事業の活用事例等について報告がなされた。  午後は、[キャリア発達支援]の取組を中心に、「聴覚・視覚障害学生のキャリア発達支援」をテーマとしてパネルディスカッションを実施した。パネルディスカッションでは、本学における就職・キャリア形成に関する指導や支援の事例、障害者雇用に関する社会的背景やニーズについて話題提供がなされ、その後、卒業後を見据えたキャリア発達支援のあり方について、参加者からの質問を交えて意見交換を行なった。  その後の情報交換会では、前半の時間はグループに分かれお互いの課題を共有し、後半の時間には参加者全体で自由に情報交換を行なった。  なお、本研修会の開催にあたり、事前に参加者に対して、学内における障害学生のための就職・キャリア支援の状況(体制や実践例、課題など)についてアンケートを行ない、パネルディスカッションの進行の参考とした(詳細は[キャリア発達支援]の取組報告を参照)。 ※本研修会の開催アンケートの結果については、 p.60~ 65に掲載する。 写真:事例報告の様子 写真:情報交換会の様子 ■「第 5回筑波障害学生支援研究会:合理的配慮提供に向けた建設的対話のあり方を考える~障害者差別解消法の施行を目前に~」 【開催概要】 日時:平成 27年 11月 5日(木) 会場:筑波技術大学天久保キャンパス 対象者:全国の高等教育機関、および関連機関(高等学校・特別支援学校等を含む)の教職員、障害学生支援について研究している大学院生等 主催:筑波技術大学、筑波大学 【プログラム】 10: 30~ 10: 40開会行事 10: 40~ 11: 00文部科学省挨拶・合理的配慮に関連する行政の現状報告 報告者:高等教育局学生・留学生課課長補佐 小代哲也 11: 00~ 12: 15基調講演「合理的配慮にもとづく障害学生支援-米国の支援・紛争解決事例をもとに-」講師:筑波技術大学障害者高等教育研究支援センター准教授白澤麻弓 12: 30~ 13: 00話題提供 1「発達障害学生支援における合理的配慮-筑波大学における実践を踏まえて-」講師:筑波大学ダイバーシティ・アクセシビリティ・キャリアセンターアクセシビリティ部門准教授五味洋一 14: 00~ 15: 00話題提供 2「意思表明支援の視点から見た合理的配慮」講師:明治学院大学学生サポートセンターコーディネーター岡田孝和 京都産業大学ボランティアセンター事務室安田真之 15: 15~ 16: 45パネルディスカッション進行:筑波技術大学副学長石原保志 筑波大学ダイバーシティ・アクセシビリティ・キャリアセンターアクセシビリティ部門長竹田一則 パネリスト:基調講演、話題提供者全員 16: 45~ 17: 00総括、閉会 【実施報告】  「筑波障害学生支援研究会」は、筑波大学との共催により、全国の高等教育機関(大学・短期大学・高等専門学校)、および関連機関(高等学校を含む)の教職員・関連企業関係者等を対象として、平成 23年度より毎年 1回、障害学生支援に関するテーマを選定し、講演や事例発表等のプログラムを提供している。第 5回目を迎えた今年度は、本学が主幹校となり、平成 28年 4月の障害者差別解消法施行を見据え、合理的配慮の提供に向けて大学として求められる支援の合理性と合意形成、支援内容決定プロセスの中で必要とされる視点と判断について議論することを目的として開催した。  文部科学省の報告では、障害者差別解消法の施行によりすべての大学で合理的配慮の提供が求められるが、教職員の対応要領策定がゴールではないこと、一定の水準を維持するための運用が重要であり、国としても予算や情報提供を通したサポートを行う旨の報告があった。基調講演では、来年度の法施行により今後は大学が法に照らし合わせて合理的か否かを判断し、支援を提供していく必要があることが強調され、先進事例としてアメリカの取り組みや紛争解決事例が紹介された。また、話題提供として、筑波大学からは発達障害学生の支援の事例を紹介しながら、[何をもって合理的と考えるか][合理的配慮の範疇を超える場合の対応][グレーゾーンの学生への支援]の 3つのポイントに沿って発表があった。続いて、明治学院大学、京都産業大学から「意思表明支援の視点から見た合理的配慮」と題して[障害学生が自覚したニーズを表明しやすい支援][複数の手段が選択できるような支援]について事例が紹介されたほか、[全ての障害学生が意思を表明出来ているのか][どのような点が意思表明を難しくしているのか]を考える必要性について、コーディネーターとしての視点から発表がなされた。  登壇者全員によるパネルディスカッションでは、参加者から寄せられた質問を基に、高等教育機関における障害学生支援のあり方、障害者の意思表明をどのように捉えるか、支援の合理性を検討する際の判断基準について活発な意見交換が行なわれた。 (写真)写真:パネルディスカッションの様子 (写真)写真:基調講演の様子 ■「語学教育のイコールアクセスを考える」 【開催概要】 日時:平成 28年 2月 20日(土) 会場:筑波技術大学天久保キャンパス 対象者:全国の高等教育機関、障害学生の語学指導担当者および支援担当者 主催:筑波技術大学障害者高等教育研究支援センター 【プログラム】 13: 00開会行事 13: 05~ 15: 30 発表 1「聴覚障害学生を対象とした英文読解指導の課題:授業アンケート結果を基に」講師:筑波大学教授/筑波技術大学非常勤講師卯城祐司 発表 2「筑波技術大学におけるごく普通のフランス語授業の意義と実状」講師:筑波大学・筑波技術大学非常勤講師佐藤淳一 説明「英語技能試験における聴覚障害者対応について」講師:立教大学兼任講師/筑波技術大学非常勤講師細野昌子 発表 3「ろうの当事者による英語指導:聞こえない大学生への英語指導の経験から」講師:日本社会事業大学・筑波技術大学非常勤講師森亜美 発表 4 「英語で行われる授業での情報保障支援の実践と今後の課題」講師:山形大学障がい学生支援センター講師有海順子 15: 35~ 16: 25発表者によるパネルディスカッション 16: 25~ 16: 30 総括・閉会 【実施報告】  本研修会では[語学教育に関するアカデミック・アドバイスの提供]の取組を中心に、各プログラムの実施をとおして、聴覚障害学生への語学指導・支援のあり方について、広く情報共有を図ることを目的として開催した。  各発表においては、本学および一般大学で学ぶ聴覚障害学生の英語やフランス語の指導方法、語学授業の支援方法に関する実践事例について報告がなされた。また、そのほか情報提供として本取組担当者(語学に関するアカデミック・アドバイザー)より、英検・ TOEICなどの英語の技能試験における聴覚障害者の特別措置について解説を行なった。続いて、発表者全員によるパネルディスカッションでは、聴覚障害学生の語学授業における発音指導のあり方や、聞こえる学生と同じ授業を受けた際の評価方法、情報保障のあり方を主なテーマとして取りあげた。これらのテーマは大学等の語学の授業において課題とされることが多く、パネルディスカッションにおいても参加者を交えて教員・職員それぞれの立場から活発な意見交換がなされた。 ※本研修会の開催アンケートの結果については、 p.66~ 70に掲載する。 (写真)写真:事例報告の様子 2)障害学生支援に関するニーズ調査 ■アンケート調査実施に向けた項目の整理  平成 28年度以降に、地域毎に障害学生支援・指導に関する課題やニーズを抽出することを目的として、全国の高等教育機関教職員(障害学 生支援担当者)を対象としたアンケート調査の実施を予定している。今年度は、本事業で開催してきた研修会における参加者アンケートや他機関で実施された障害学生支援関連の調査などを参考に、実施時期や方法、調査対象や項目について検討を行なった。 ■FD/SDのニーズ把握のための情報収集  全国の高等教育機関における障害学生支援の取り組みや、障害者差別解消法施行に伴う課題やニーズを把握することを目的として、下記の他大学・機関主催のセミナー等に参加した。これらをとおして、今後、本事業に寄せられる相談等に対応するために情報収集を行なうとともに、本事業で開催する FD/SD研修会のテーマの選定等の参考とした。 【参加した研修会と各概要】 ①全国高等教育障害学生支援協議会第 1回大会( 6月、対象:全国の高等教育機関における障害学生支援関連教職員および研究者、大学院生、関連組織・団体等):  本大会は、障害者差別解消法の施行に向けた学内体制整備に関する情報提供や問題点の共有を主な目的として開催された。 1日目のプレカンファレンスでは、セミナーおよび法人分科会(国公立分科会へ参加)をとおして、差別解消法と合理的配慮の提供に向けて今後各国公立大学で作成される「対応要領」のモデル案について解説がなされ、体制整備に必要な考え方や留意点、差別や配慮の具体事例等について参加者による意見交換が行なわれた。 2日目のメインカンファレンスでは、基調講演「米国の障害学生支援に関する制度と課題」、内閣府・文部科学省・厚生労働省の各担当者による情報共有セッションが行なわれ、差別解消法や合理的配慮の現状と今後の動向について解説がなされた。 ②京都大学「バリアフリーシンポジウム 2015 -高等教育のアクセシビリティ-」( 7月、対象:全国の高等教育機関の教職員および障害学生支援関係者):  障害学生支援をすすめるための組織やシステムを考える機会の提供を目的として、京都大学学生総合支援センター主催で開催された。話題提供および講演をとおして主催校含め国立大学 3校より障害学生支援の体制や取り組み事例について報告があったほか、パネルディスカッションでは、事例報告を担当した講師 3名をパネリストとして、参加者との活発な意見交換が行なわれた。 ③日本学生支援機構「平成 27年度全国障害学生支援セミナー『体制整備支援セミナー 1』」( 10月、対象:障害学生支援に携わる高等教育機関の管理者・教職員):  本セミナーは、平成 28年 4月の障害者差別解消法の合理的配慮規定等の施行への円滑な対応を支援するため、文部科学省の「対応指針」関係の説明等を行なうことを目的として開催された。行政説明では文部科学省より、わが国の障害者施策の動向と大学等における今後の動向について解説がなされ、講演では「『障害者差別解消法』の実施に関する『対応指針』」をテーマとして、講師より「差別的取り扱い」「合理的配慮」、「私立大学に求められる取り組み」について解説がなされた。続いて、国立・私立大学各 1校から、障害学生支援における学内の体制整備の充実に向けた取り組みについて報告がなされた。 ④日本学生支援機構「平成 27年度全国障害学生支援セミナー『体制整備支援セミナー 3』」( 2月):  本セミナーは、障害学生支援に携わる高等教育機関の管理者・教職員を対象として、国公立の大学等における「対応要領」の作成を支援するため、国立大学協会が作成した対応要領の雛形の説明や国立大学における対応要領の作成事例の紹介を行なうことを目的として開催された。行政説明や講演をとおして、障害者差別解消法や基本方針、私立大学等への対応指針、国立大学等への国等職員対応要領雛形を基に、障害学生支援に関わる施策の動向や基本理念、高等教育機関において必要とされる取り組みについて、具体例を交えて解説がなされた。また、国立大学 1校から、対応要領策定に関する取り組みについて報告がなされた。 3)広報活動 ■事業パンフレットおよび広報用コンテンツの作成・配布  本事業や各取組を紹介するためのパンフレットを 6月に作成し、全国の高等教育機関の障害学生支援担当者およびこれまで本事業を利用した教職員に配布した。また、さらに効果的な広報を目指し、 3月にパンフレットの全面改訂を行なうとともに、各取組のテーマに関するポイントを PRするためのコンテンツ「障害者高等教育拠点アドバイスシート」を作成し、併せて全国の高等教育機関に配布した。このほか、取組活動および実績紹介のポスターを作成し、各種研修会やイベント等への出展の際に掲示した。 ■事業 Webサイトのリニューアル  本事業で作成してきたコンテンツ等のアクセシビリティを考慮し、各種リソースのライブラリ構築を目的として、事業 Webサイトのリニューアルに向けた作業を行なった。 ■各種研修会やイベント等への出展  本事業で実施した研修会において、各取組の活動や実績に関する展示ブースを設置し、担当者から参加者へ紹介した。また、関連するイベント( 12月:全日本ろうあ連盟主催「情報アクセシビリティフォーラム 2015」、 PEPNet-Japan主催「第 11回日本聴覚障害学生高等教育支援シンポジウム」等)においても出展・広報活動を行なった。このほか、各取組において、関連する学会や大会などで発表の機会があった際には、担当者をとおして参加者に向けてパンフレットを配布した。 (写真)写真:情報アクセシビリティフォーラムでの出展の様子 まとめと平成 28年度の活動に向けて  今年度開催した全国の聴覚・視覚障害学生の指導・支援に携わる教職員を対象とした FD/SD研修会終了後に実施したアンケートにおいても、教員・職員それぞれの立場から概ね内容が有益であったという回答が得られた。また、一大学より複数名の参加や、複数回の参加もあったことからも、各大学のニーズに沿ったテーマで開催することができたことがうかがえる。来年度も引き続き、各取組に関連したテーマや障害学生支援において関心の高いテーマを選定・開催していく予定である。開催にあたっては、障害学生支援について課題を抱えている大学を中心として、連携構築に向け近隣大学には特に参加を呼びかけ、また、障害学生支援に関わる団体等も参加対象とすることを視野に入れる。  また、地域毎に障害学生支援・指導に関する課題やニーズを抽出することを目的として、全国の高等教育機関教職員(障害学生支援担当者)を対象としたアンケート調査を実施する。この結果と、前事業(平成 23~ 26年度)を含め、これまで開催してきた FD/SD研修会の参加者アンケートや情報収集等の結果と合わせて、来年度の研修会開催地域およびテーマ選定に反映させる。  このほか、本事業の周知・利用をさらに促進させるため、引き続き、広報活動を積極的に行なっていく。  また、他大学や他の教育関係共同利用拠点と連携した取り組みについても視野に入れ、本事業のより一層の推進および発展に向けて取り組んでいく。 キャリア発達支援 担当者:石原保志 1 .取組の目的  卒業後を見据えた障害学生のキャリア発達支援について、主に FD/SD研修会や講習会の開催等をとおして、具体的なノウハウを各機関と共有する。また、社会からのニーズを考慮し、障害特性に応じた社会的スキル習得を含め、大学としてのキャリア教育・支援のあり方について情報共有を図る。併せて、他大学で障害学生の就職支援に関わる教職員に、本学がこれまで蓄積してきたリソースを提供する。 2 .活動報告  他大学の障害学生支援担当およびキャリア支援担当教職員を対象として開催した「 FD/SD研修会~障害学生の入学後の支援、ゴールを見据えて~」のプログラムのうち、「キャリア発達支援」をテーマとしたパネルディスカッションを実施し、障害学生の就職支援を担当している機関の有識者、本学の教員をパネリストとして、本学における就職・キャリア形成に関する指導や支援の事例、障害者雇用に関する社会的背景やニーズについての話題提供がなされた後、卒業後を見据えたキャリア発達支援のあり方について、参加者からの質問を交えた意見交換が行われた。  FD/SD研修会参加者には、申込時に「障害学生のための就職・キャリア支援に関する事前質問」を研修会参加者にアンケートへの回答を依頼した。目的は、本取組をテーマとしたパネルディスカッションにおけるテーマや扱う事例を検討し、また今後の取組を推進するための情報収集であった。本アンケートの結果をもとにして、平成 28年度に実施する「障害学生支援の就職・キャリア支援」に関するアンケートの質問項目の整理や課題の抽出を行った。 3 .実績・成果 利用件数・利用のべ人数・大学実数: 65名・ 47大学  FD/SD研修会で実施したパネルディスカッションにおいて、下記の質疑応答がなされた。 Q:障害学生の発達的課題として挙げられる「体験不足」について、高等教育機関で実施可能な体験プログラムの例とは? A:一般社会の体験として、学内外におけるアルバイトが挙げられる。  そのほか、本学では地域社会との交流として、つくば市との連携により一般の方々に障害者の実情を説明する機会を設けている。説明することにより、自らの障害を客観的に知ることが出来ると考えられる。また、エンパワメントやセルフアドボカシーのような能力・態度を養うために、障害をもつ先輩の体験談などを聞く機会を障害学生に提供することも有効なプログラムではないか。  そのほか、一般の大学でも、ボランティア活動やスポーツ、外国との交流など、可能な限り多くの体験の場を得ることにより、経験が蓄積されていくと思う。(石原より回答) Q:一般枠での就職を希望している学生に対して、障害者枠を勧めたほうがよいのか? A:本学の事例になるが、年生の夏まで「一般枠」にこだわって就活していた学生がいた。知識としては「障害者枠」について理解をしているが、気持ちの中で受け入れられない面があったようだった。しかし、集団面接会で会話に参加することが困難な状況におかれ、その結果として自分の意見が言えず、落ちてしまった。そのような経験を重ねて、自ら「障害者枠」で受けたほうが有利であることに気付いたようだった。このように、親や教職員に言われて従うのではなく、自ら体験し、学ぶ、納得して進路を決めていくというステップも必要だと思う。(石原より回答) Q:研修会のテーマである「ゴールを見据えて」の「ゴール」とは? A:「ゴール =就職」ではなく、就職したあとも含まれると考えている。「ゴールとは人生そのものである」と言いたいところではあるが、大学生活の中でそこまで見据えることは難しいので、せめて卒業・就職後 10年くらいを見据えたイメージで指導・支援をしていくとよいのではないだろうか。(石原より回答) (写真)写真:パネルディスカッションの様子 (写真)写真:筆者(石原) (図)(図) 当日の配付資料より一部抜粋 【障害学生のための就職・キャリア支援に関する事前質問事項項目】 1、障害学生のための就職・キャリア支援の取組の有無 2、( 1で実施している場合)具体的な取組やプログラムの例 3、障害学生のための就職・キャリア支援担当窓口・部署 4、障害学生支援と就職・キャリア支援の担当部署間の連携の有無 5、(窓口・部署が障害学生支援とは別の窓口が担当している場合)具体的な連携方法や体制等 6、障害学生の就職・キャリア支援に関する課題や質問等 【参考】 回答(抜粋) 1 ) 障害学生のための就職・キャリア支援の取組について、具体的な取組やプラグラムの例をご記入ください。 ■障害学生対応担当者の配置 ■個別対応 ■個別相談 ■学生への情報提供と活用指導(障害枠雇用の求人、公的な受入れ機関、人材紹介・情報関連企業、就職活動に関するプログラム等) ■学内での就職関連セミナーでの配慮(座席など)。 ■障害学生対象の就職セミナー・ガイダンス開催 ■就労・キャリア支援プログラムの実施 ■障害学生 OBOGとの懇談会の実施 ■低年次からのキャリア支援(インテーク面談を通して)。 ■関連部署間の合同ミーティング実施(障害学生支援、キャリア、カウンセリング等) ■同行支援 ■面談に同席 ■学内外の就職関連機関(キャリアセンター、ハローワーク等)への学生紹介 ■専門支援団体への学生紹介 2 ) (1)について)担当窓口になっている部署名をご記入ください。 ■キャリア関連の部署(キャリアセンター、キャリア支援課等) ■障害学生支援関連の部署(障害学生支援室等) ■学生支援関連の部署(学生センター、学生課等) ■支援以外の事務担当課(教務課等) ■学生相談関連の部署(学生相談室等) ■各部署が対応(内容に応じて) ■委員会が対応(複数部署のメンバーで組織) ■学部・学科単位で対応 ■無し 3) 障害学生支援および就職・キャリア支援の担当部署間の連携について、具体的な連携方法や体制等をご記入ください。 ■障害学生の状況についての情報共有(随時、定期的) ■対応について共同で検討・実施(定期的、必要に応じて) ⇒学修や生活状況をふまえた支援、ニーズに即した就職情報の提供、対応の一貫性を図る等 ・担当者間の連絡 ・合同ミーティングの実施 ・学生の個別面談の共同実施 ・当該関連部署の教職員をメンバーとした委員会等の設置、等 ■障害学生のための就職セミナーの合同実施 ■障害学生対象の就職イベントの情報共有 ■就職・キャリア関連イベントでの障害学生へのサポート(情報保障、移動支援等) ■必要に応じて学外組織と連携( NPO法人、福祉関係機関等) 4 ) 障害学生の就職・キャリア支援に関する課題や質問等がありましたら、ご記入ください。 ■学生本人の障害に対するとらえ方に関すること 例)・障害者手帳を取得していない(グレーゾーン)の学生への対応   ・障害があることを認めない学生への対応   ・障害者枠による採用試験の指導を積極的に行えない   ・一般枠での就職活動を希望する学生への指導   ・就労活動に積極的でない学生への対応   ・家族への関わり方、等 ■障害学生の就職支援に関する情報・ノウハウの不足(障害に関する知識、具体的な指導・支援方法(※)、就職先・仕事内容の具体例、OBOGの紹介等) ※例) ・障害学生に特化したプログラムの企画、実施 ・視覚障害学生の就労や支援の事例 ・聴覚障害学生の支援に適した教材 ・発達障害学生への対応(就労先の開拓、就労定着支援、支援方法の確立、専門職員の配置等) ・精神障害学生への対応 ■障害の種類・程度による対応の個別性 ■学内外の機関との連携のあり方(連携方法、担当すべき範囲等) ■外部での実習における支援(インターンシップ、就業体験等) ■学内の就労支援体制の確立(適切な人材配置、支援の流れ、準備してくべき前提条件等) ■国家試験における配慮・対応のあり方 ■内定・入職後のフォロー(必要な配慮についての説明等) 5 ) 障害学生支援(全般)における現在の課題・関心等についてご記入ください。<支援体制> ■ハード面、ソフト面両方が整っていかないとなかなか充実した支援体制にならないのではないかと感じている。 ■障害学生支援担当者以外の教職員に障害学生の基礎知識や対応方法などの研修をしてきた大学があれば、どう取り組んでいったかお聞きしたい。 ■学内における情報共有 ■小規模大学なので担当部署はなく、そのときどきで適切な部署が対応し、部署間の担当者同士で情報交換をして支援をしている。障害学生の学年があがるにつれて、いろいろな部署との関わりが予想され、情報共有などがきちんとできるか危惧している。同じ規模の大学ではどのような対応をしているのかお伺いしたい。 ■他部署との連携・情報共有の仕方。 ■障害学生の受け入れ態勢、障害特性に応じた支援内容の確立、具体的(明確)な連携の方法。 ■障害学生支援の中でも主に修学支援を担当する部署が、どこまでの支援(キャリア相談や心理相談、など)をするべきかについて。 ■支援室の人材不足、資金不足、学生によるサポート体制のさらなる充実。 ■大学院生、重度障害のある学生、外国人留学生や発達障害学生に対する支援スタッフの養成(高度化・専門家養成)。 ■支援スタッフの育成。 ■学生主体で支援活動を行ってきたが、大学として提供するサービスの質の維持・向上のために、支援学生のマネジメントが求められている。 ■支援学生のモチベーションを持たせる方法。 ■本学は障害者認定されている学生の対応実績が少ないため、他大学での実例などを知り、本学であればどのような対応が可能か、どのような備えが必要か検討したい。 ■合理的配慮、インクルーシブ教育制度づくり、グレーゾーンの学生対応など。 ■障害者手帳を持っていないが障害の可能性がある学生の支援について、具体的な取組みを知りたい。 <合理的配慮> 全般: ■障害者差別解消法、本方針に基づく「対応要領」の作成。 ■学内におけるガイドラインの作成。 ■障害者すべてに対応することは現実には不可能。どこまで対応すればよいか、常に自問している。 ■合理的配慮の提供について大学としてどこまでが可能なのか、反対にどこまでが限界なのか、個々のケースに基づき考えていく必要があると思われる。また、事例を積み上げ、合意形成において指針となる物差しのようなものが作成できることが望ましいと考えられる。 ■日々の業務の中で行う発達障害や精神障害などに対する合理的配慮の線引きは判断に迷うことも多く、支援方法についても課題が多いと感じている。 ■これまで視覚・聴覚障害や肢体不自由のある学生の入学がなかったため、具体的な取組み自体がない。平成 28年度から私立大学で努力義務となる合理的配慮について、委員会担当として視野を広げたい。 ■評価や支援の面で合理的配慮の判断が難しいケースの対応:例えば、発達障害学生の支援範囲、高次脳機能障がい学生の評価方法、精神疾患のある学生の支援方法、教室に入室できない等、特殊な疾患のある学生の評価方法等。 ■就職支援にかぎらず、修学上の支援方法についても障害の種類・程度に応じてどのように行うべきか、「合理的な支援」とはどのようなものなのか、具体的に知りたい。 聴覚・視覚障害関連: ■ノートテイカー不足、ノートテイク講習会について。 ■聴覚障害学生が卒業した後のノートテイカーたちの育成、および業務先について。 ■本学では授業支援として学生アルバイトにノートテイカーをお願いしているが、他大学ではどのような支援をされているのか、具体策を教えていただきたい。 ■聴覚・視覚の支援における新しいアプリの開発・導入されているものはあるか。 発達障害関連: ■発達障害の学生の支援について。 ■発達障害学生支援における学内体制の整備について。 ■発達障害の傾向があり、相談室で心療カウンセラーの世話になっている学生が増えているが、障害者手帳もなく職員にも専門知識がないので、対応方法がわからない。 ■発達障害が疑われる学生の対応について(支援が不要であっても周囲に迷惑がかかっている)。 ■本人が支援要望をしていない障害学生への支援の進め方(特に発達障害)。 その他: ■理系の実験では、危険な薬品のラベルや反応の色を見分けたり、細かい手技を行ったりする分野もあるため、障害学生の理系大学における選択肢は最初から限られているというイメージがあるが、工夫すれば希望をかなえることができるか? ■災害時の対応・注意点等、聴覚・肢体不自由学生のいる場合。 ■親子依存の学生の対応について(スクーリングにおける母による送迎、代筆、庇護など)。 ■支援を必要とする学生がいることを教員側に伝えるときの注意点。 ■通信課程における対応方法、学内連携の在り方について。 ■大学職員の障害学生への無理解が学生の人生を左右する場合もあるのだと責任を感じている。 <キャリア> ■障がい学生(精神障害含む)における就職・キャリア支援の現状と実際の就業状況等。 ■発達障害の学生が増えており、その学生のキャリア支援についても取り組んでいく必要がある。 ■現状を見ると、学内の環境整備やコーディネーター /支援者の専門性に関する研修実施に重点が置かれているため、今後は、就活関係の研修にすら参加制約の多い当事者の学生自身が参加してスキルアップできるような研修の場を増やしていくことが大切ではないか。 ■学校の近郊で、他大学を含有した就活障害者学生同士の交流会ができないか。 <その他> ■大学では高校まで受けてきた支援と異なったり、授業内容も格段と難しくなって学生自身もサポートをうまく使いこなせないことがある。高校と大学をつなぐために何か行うべきこと、または行っていることは何か知りたい。 ■手帳の有無で、大きく左右される状況は、なんともしがたい。 ■本学は理系の大学であるからか、障害者については、学生として迎え入れる存在というよりも、学生が就職後ケアすべき対象、というような雰囲気がある気がする。(しかし、本学には車椅子バスケットボールサークルがあるなど、学生の側には障害者理解についての興味関心が育っているように思う。) ■サポート学生の障害(者)の理解と実際の支援を通しての学びの向上のために必要なことは何か? ■過去にほとんど事例がないので、各大学の皆様からご教授いただきたい。 ■他大学での取り組み好事例等があれば水平展開願いたい。 ■身体障害学生の対応事例があまりないため、他大学の取り組みを教えていただきたい。 ■他大学ではどのように合理的配慮の対応を行っているのか、事例を共有できる仕組みがあるか。 ■学内外への障害学生支援の情報発信。 [回答数/参加者数: 62名/ 64名、 47機関/ 47機関(大学院および通信課程も同一機関として)] ろう者学教育コンテンツ 担当者:大杉豊、小林洋子、管野奈津美 1 .取組の目的  授業科目としての「ろう者学」は、聴覚障害学生を対象とするエンパワメント指導に活用できる学問であるが、一般大学においては指導ノウハウや指導者の不足から講義などの開設が困難とされているのが現状である。そこで、平成 22年度〜平成 26年度に実施された「聴覚・視覚障害学生のイコールアクセスを保障する教育支援ハブの構築」事業にて「ろう者学」の指導カリキュラム及びコンテンツを制作し、大学の教職員・聴覚障害学生が活用できる電子ライブラリのプラットフォームを開発した。  平成 27〜 31年度の事業においては、さらなるコンテンツの充実・強化を図るとともに、キャリア発達支援に係る学内プロジェクトと合同で全国の高等教育機関において聴覚障害学生にキャリア指導を行う教職員が利用できる教材を開発し、本学での試用による改善作業を経て、電子ライブラリを通して各機関とのリソース・シェアリングの可能な環境を整えることを目標とした。 2 .活動報告  本取組の主な活動は以下の通りである。 1)教育コンテンツの改良・拡充・試用 2)公開講座「ろう者学セミナー」の企画・開催 3)一般財団法人国際ユニヴァーサルデザイン協議会との合同ワークショップの開催 4)ろう者学ランチトークの開催 5)広報活動 3 .実績・成果 利用件数・利用のべ人数・大学実数: 16件・ 17名・ 4校 1)教育コンテンツの改良・拡充・利用  前事業で開発した教育コンテンツの整備・メンテナンスを行い、必要に応じてリソース(動画等)を制作・追加した。そして学内の他プロジェクトと合同で聴覚障害者のキャリア発達支援に関する教材の開発について意見や経験などを収集し、検討を行った。  コンテンツの利用については、筑波大学ダイバーシティ・アクセシビリティ・キャリアセンターアクセシビリティ部門から利用申請があり、相談対応し、アカウントを発行した。また、学内外で本取組の担当教員が担当する授業でコンテンツを提供・使用し、フィードバックを行った。成果は以下の通りである。  1.高等教育機関に在籍する聴覚障害学生のほとんどがそれまでの学校教育で「ろう者学」に触れたことがなく、ろう者学教育コンテンツの内容に魅力を感じる学生が多いことをあらためて確認できた。  2.ろう者学教育コンテンツは動画と課題をセットで開発したが、課題は教育現場の多様性に合わせる柔軟性に欠けるため、課題ではなく指導案を開発した方が良いことが分かった。 (以下、表) 月日 大学 人数 利用内容 7月 23日 筑波大学ダイバーシティ・アクセシビリティ・キャリアセンターアクセシビリティ部門 1名 アカウント発行 10月24日, 11月 28, 29日 群馬大学 5 名 授業での使用 8月 17日〜 22日 駒沢大学 6名 授業での使用 9月 1, 3, 8,10, 15日 茨城キリスト教大学 5名 授業での使用 通年  筑波技術大学(学内) 67名 登録・授業での使用 2)公開講座「ろう者学セミナー」の企画・開催  10月 3日(土)、平成 27年度筑波技術大学公開講座・ろう者学セミナー「ろう女性学の視点から女性の生き方を考える〜ろう女性が自分らしさを発揮できる社会を目指して〜」を開講した。今回はろう・難聴女性に焦点をあてた内容を用意し、キャリアを積んでいる方や子育て・介護を経験されている方、地域社会で活躍している方など、 20代〜 60代まで幅広い年齢層から 11名の参加があった。参加者同士のディスカッションや意見交換を通してそれぞれが自らの経験をもとに、ろう女性として漠然とした問題意識を抱えていることを確認できた。さらにろう・難聴女性が抱える課題を共有でき、いくつかの重要なポイントを見出せ、大きな収穫であった。 3)一般財団法人国際ユニヴァーサルデザイン協議会との合同ワークショップの開催  10月 14日(水)、一般財団法人国際ユニヴァーサルデザイン協議会手話用語サブワーキンググループとの共催で、「いざという時のボディランゲージについて考えてみよう」ワークショップを開催した。本ワークショップは 2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックに向けて、外国人・高齢者・障害者など様々な人々が集まる場において、緊急事態が起きた際に、視覚的にわかりやすい、そして伝わりやすいボディランゲージを使った誘導方法について検討しようという試みである。本学の学生、筑波大学の学生併せて合計 9名の参加があった。津波、火災、地震ごとに、それぞれのボディランゲージの案の動画を視聴し、改善案として意見やアイデアを出し合い、フィードバックとしてまとめた。手話用語サブワーキンググループに所属しているろう者社会人を含めたメンバー 5名とグローバルに通じるボディランゲージに関して活発な意見交換を行った。学生同士が、多様な考え方や価値観の中、話し合う環境や災害時の対策について意見交換できる機会を提供することができた。報告を下記サイトに掲載している。 http://www.deafstudies.jp/info/news0078.html 4)ろう者学ランチトークの開催  ろう者学の啓発、聴覚障害学生に必要なロールモデルの検討、そして活躍している社会人等と本学学生が交流する機会を設けることを目的として、ろう者学ランチトークを定期的に開催した。今年度は合計 12回実施し、のべ参加者は他大学の学生も含め、 507名に上った(昨年度は計 17回、のべ 578名)。各回のテーマを見ると、海外研修 5件、卒業生のキャリア 2件、在学生の社会経験 2件、ろう者学に関連する研究の紹介 2件、海外のろう者起業経験 1件となっており、聴覚障害学生に必要なロールモデルの一タイプとして国際的視野に立って活躍するろう者像が浮かび上がってくる。ランチトークの内容をろう者学教育コンテンツ開発プロジェクトのウェブサイトに掲載することで、ろう者学の啓発を推進することができた。 http://www.deafstudies.jp/info/news_index.html (以下、表) 平成 27年度ろう者学ランチトーク実施内容 第 1回 4月 22日(水) 仁宮浩氏、高橋雅尚氏「国際ユニヴァーサルデザイン協議会での活動を通して〜誰もがコミュニケーションできる世界を目指して〜」 第 2回 4月 28日(火) 平井望氏「デフリンピックを通して日本のデフスポーツを考える」 第 3回 5月 12日(火) ジョンハン・ウー氏「台湾での経験と日本研修の今まで」 第 4回 5月 15日(金) ティナ・ラティフ氏「モルティブでの経験と日本研修の今まで」 第 5回 6月 10日(水) 平野侑加理氏「夢への挑戦」 第 6回 6月 17日(水) 大杉豊「サル学の面白さ」 第 7回 6月 23日(火) 桑原絵美氏「私が体験した韓国」 第 8回 7月 6日(月) 佐藤太信氏「新たなことへの挑戦」牧谷陽平氏「生まれてから今までそしてこれから」 山本芙由美氏「多様な“性”を生きるろう LGBTの立場から」 第 9回 7月 13日(月) 長野留美子氏「ろう女性学への取り組み〜ろう難聴女性の「キャリアと子育て」の実践から」 第 10回 7月 15日(水) 町田陽伽氏・小國雅治氏・日影舘美樹氏「全日本ろうあ連盟創立 70周年記念碑デザイン」 第 11回 7月 21日(火) エートゥ・ケスキ -レビヨビ氏「フィンランドにおける手話通訳」 第 12回 12月 2日(水) 川上恵氏「今の仕事に活かして〜通訳学の学びから〜」 5)広報活動 ①全国ろうあ者大会「聴覚障害者の生活に関するバリアフリー展」出展  6月 13日(土)〜 14日(日)の 2日間、第 63回全国ろうあ者大会 inぐんま「聴覚障害者の生活に関するバリアフリー展」に産業技術学部と共同でブース出展し、来場者約 200名にろう者学の取組の紹介を行った。また、同時に来場した聴覚障害当事者や聴覚障害の福祉や支援に携わる関係者との情報交換を行い、情報を収集した。 ②「 FD/SD研修会〜障害学生の入学後の支援、ゴールを見据えて〜」出展  7月 24日(金)、上智大学四谷キャンパスにて開催された「 FD/SD研修会~障害学生の入学後の支援、ゴールを見据えて~」に出展し、ろう者学の取組の紹介を行った。また、同時に来場した、実際に支援に携われている方々から、支援現場での様々な様子を伺うことができ、情報交換を行った。 情報保障 担当者:三好茂樹、宇都野康子 1 .取組の目的  近年聴覚障害者の大学進学率はおおむね高くなる傾向があり、日本学生支援機構の調査でも約 1,600人の聴覚障害学生が約 400校の高等教育機関に在籍しており、そのうち約 150校でノートテイクのサポートが行われていることが分かっている( JASSO:平成 26年度大学、短期大学および高等専門学校における障害のある学生の修学支援に関する実態調査結果報告書)。  聴覚障害学生が受講する講義では、ほかの学生と同等の情報を受け取ることができるように情報保障の取組が行われる。この情報保障とは、場を共有するすべての人が「同時に・同質の・同量の」情報を得て、その場に参加できるようにするための活動のことをいう。聴覚障害学生に対する情報保障のうち、多くの大学で用いられているのが手書きのノートテイクもしくはパソコンを用いて行われるパソコンノートテイク(以下、「 PCノートテイク」)である。 PCノートテイクとは、パソコンを用いて教員の発話内容を入力し、聴覚障害学生に提示する方法である。  本取組では、聴覚障害学生支援の体制の充実を目指し、他大学で開催される PCノートテイク講習会や研修会への講師派遣を行った。講習会では、 PCノートテイクを基礎から学び、聴覚障害学生のサポートができる支援スキルをもつ人材を養成することを目的としてカリキュラムの作成を行った。  また、本取組では、本学で PCノートテイクを行う人材も養成している。学内で支援活動をする PCノートテイカーを養成する講座では、実践を中心としながらも少ない回数で基礎的な知識や技術が習得できるようにカリキュラムや教材を作成した。これを本取組の主な目的である全国の高等教育機関で開催する PCノートテイク講習会等でも使用することで、実際の講義支援に入る前に必要な知識や技術が効率よく習得できることを目指した。  そのほか、 PCノートテイクの導入に関するハード、ソフト両面について、アドバイスを提供した。  また、学内で養成した支援経験年数が長い熟練者を対象に、文字による遠隔情報保障の技術習得を目指して講習会を開催したほか、他大学で開講された講義における遠隔情報保障支援の実施、および音声取得方法の改善を含む技術支援を行った。 2 .活動報告  本取組では、下記を中心として活動してきた。 1) PCノートテイカー養成 ■他大学における PCノートテイク講習会等への講師派遣 ■PCノートテイク導入に関する相談対応 ■学内における PCノートテイカー養成のための講習会開催 ■PCノートテイカーのスキルアップを目指した活動 (本学で開講されている講義における情報保障支援活動・講義支援終了後の振り返り・課題抽出) 2)文字による遠隔情報保障技術支援者養成 ■他大学における文字による遠隔情報保障エキスパート養成のための出張技術支援・相談対応 ■他大学で開講された講義における文字による遠隔情報保障支援の実施 ■学内における文字による遠隔情報保障エキスパート養成 3)情報収集および関連機関との意見交換 ■情報収集(学会) ■関連機関との意見交換  本取組で蓄積されたノウハウをもとに、短期間で一定のスキルや知識を得るために、他大学で開催する PCノートテイク講習会や遠隔情報保障エキスパート養成のカリキュラム作成に反映した。 3 .実績・成果 利用件数・利用のべ人数・大学実数: 29件・ 201名・ 8大学支援件数・大学実数: 21件・ 10大学 ※本報告内に記載の学内向け支援活動を除く。 1) PCノートテイカー養成 ■他大学における PCノートテイク講習会等への講師派遣  他大学からの講師派遣の依頼に応じて、依頼のあった大学の担当者と実施時間や回数、受講者情報(初心者のみ or経験者が含まれる、等)に合わせてカリキュラムを検討した。 PCノートテイク講習会への講師派遣の際には、講習会の時間や準備可能な機材を確認するとともに、依頼のあった大学側の直近のニーズ(講習会終了後の活動の目標等)についてヒアリングを行い、なるべく実施時間内で、 PCノートテイクの活動に必要となる基礎的な技術を習得できるように指導案を作成し、講習会前に派遣先の依頼者との確認を行うこととした。講習会の場には、手書きや PCノートテイクなどの情報保障を利用している学生(聴覚障害学生)に同席を依頼し、利用学生本人が見やすい字幕(フォントサイズ、色等)や、提示される字幕に関する意見(速度や誤字の修正等)や感想を発表してもらうことで、受講生の情報保障や支援に関する意識の向上を目指した。  そのほか、受講生 2名が入力している状況をスクリーン等に提示し、入力していない学生は使用している音声教材が聞こえない状態で、提示される字幕から情報を取得する利用者体験を取り入れた。これにより、情報保障(字幕に提示される内容やタイミング、一度に提示される文字の量など)に関する利用学生の立場で、提示される情報について考える機会とした。 平成 27年度他大学における PCノートテイク講習会等への講師派遣 ( 15件、受講生のべ 180名、 7大学 (※1))※1すべて関東地域の私立大学 実施日 対象大学 参加者等 平成 27年 5月 A大学 受講者 16名、利用学生 1名 平成 27年 6月 B大学 受講者 11名、利用学生 1名、職員 3名 平成 27年 6月 C大学 受講者 12名、利用学生 1名、教職員 3名 平成 27年 7月 C大学 受講者 12名、利用学生 1名、教職員 3名 平成 27年 8月 D大学 受講者 10名、職員 2名 平成 27年 9月 E大学 受講者 28名、職員 2名 平成 27年 9月 F大学 受講者 19名、教職員 4名 平成 27年 9月 C大学 受講者 15名、利用学生 1名、教職員 2名 平成 27年 10月 C大学 受講者 20名、利用学生 1名、教職員 3名 平成 27年 10月 G大学 受講者 20名、利用学生 1名、職員 3名 平成 27年 10月 C大学 受講者 6名、教職員 2名 平成 27年 11月 C大学 受講者 6名、利用学生 1名、教職員 2名 平成 27年 11月 B大学 受講者 6名、職員 2名 平成 28年 3月 F大学 受講者 4名、教職員 5名 平成 28年 3月 F大学 受講者 4名、教職員 4名  このほか、平成 27年 12月 19日(土)に開催された「第 11回日本聴覚障害学生高等教育支援シンポジウム」のプログラムであるミニセミナー企画の 1テーマとして「やってみよう!連係入力-基本的な設定と入力体験-」の講師を担当した。 写真:他大学におけるPCノートテイク講習会の様子 (図) 図:他大学における PCノートテイク講習会で使用した資料(一部) ■PCノートテイク導入に関する相談対応  PCノートテイクを初めて導入する大学へ、講座運用や基本的な必要機材等に関する相談対応を行った。  また、他大学で講義の一環として実施する[ PCノートテイク技術研修]のカリキュラム等に関する相談に対応し、 PCノートテイク、連係入力を行うためのソフトウェア IPtalk(※ 2)の設定方法等に関するアドバイスを行った。  そのほか、昨年度に引き続き講習会を開催する大学も多く、継続的に講習会運用や支援学生の養成に関する相談に対応したほか、講義における情報保障( PCノートテイク)の実践に関連した相談も多く寄せられるようになったことから、本事業の取組間で連携を図り、アドバイスを行った。 ※2 IPtalkとは、パソコンを使い、リアルタイムに文字を入力する、事前に準備した文章を表示することで、聞こえに障害のある方のコミュニケーションを助ける情報保障(パソコン文字通訳、パソコン要約筆記、 PCノートテイクなど )用のソフトである。 ( http://www.geocities.jp/shigeaki_kurita/より引用) ■学内における PCノートテイカー養成のための講習会開催  学内で開講されている教養科目や専門科目の支援に携わる支援者の養成を行った。募集方法は、タウン誌や近隣の自治体で発行している広報誌へ受講生募集の案内を掲載し、広く周知した。  学内の PCノートテイクの依頼が前期に開講している科目が多いことから、平成 28年 1~ 3月に養成講座を開講した。養成講座は 6名の受講者を対象として、ガイダンスを含め、計 6回実施した。ガイダンスでは、「聴覚障害と情報保障」をテーマとした講義のほか、受講要件( Windowsノート PCの操作に慣れていること、タイピングスキル 100~ 120/分であること)の確認を行った。 図:PCノートテイカー養成講座受講生募集広告 写真:PCノートテイカー養成講座ガイダンスの様子 PCノートテイカー養成講座各回の実施内容[各回 2時間× 7回(ガイダンスを含む)] (以下、表)       実施内容                   受講者数 ガイダンス 聴覚障害と情報保障、タイピングスキルチェック 6名 第 1回目 PCノートテイカーの心構え、タイピングのコツ 4名 第 2回目 要約筆記の三原則、一人入力に慣れる 4名 第 3回目 連係入力の方法、実践入力 4名 第 4回目 要約について、チーム入力について 2名 第 5回目 連係入力 2名 第 7回目 まとめ 2名 ■PCノートテイカーのスキルアップを目指した活動  現在、平成 23年度 ~26年度までに実施していた前事業において養成した PCノートテイカー( 14名)は、本学で開講されている講義(教養科目、専門科目、教職課程科目)の情報保障支援を担当した。  また、 PCノートテイカーのスキルアップを目指して、講義支援終了後にメーリングリスト(以下「 ML」)を活用して個人での振り返りや、チームで PCノートテイクに取り組む上での課題を抽出、解決方法を検討した。また、 MLでは次回への引き継ぎ等も行い、円滑な講義支援が実施できるようにした。 情報保障支援を担当した科目 (以下、表) 前期 修学基礎 A 1コマ 歴史学 15コマ 知能ロボット工学 15コマ( 2)( ※ 3) 品質管理論 15コマ デザイン学特別講義 15コマ 教育課程論 15コマ 合計 76 コマ(2) 後期 社会学 15コマ エコ環境システム 15コマ( 1)(※ 4) 日本国憲法 3コマ × 5回 =15コマ 熱・空気環境工学 2コマ( 2)(※ 5) 合計 47 コマ(3) ※3~ 5:( )内の数字は研究所見学のため、遠隔情報保障支援を実施したコマ数 2)文字による遠隔情報保障技術支援者養成 ■他大学における文字による遠隔情報保障エキスパート養成のための出張技術支援・相談対応等の実施  遠隔情報保障を実施している他大学からの依頼に応じて、運用等に関する相談に対応した。また、実施に際して必要となる音声取得環境やその改善についてもアドバイスを行ったほか、対象の大学を訪問し、実際に文字による遠隔情報保障支援を実施している授業の教室環境や講義の進行方法等について確認をした上でアドバイスを行った。 ■他大学で開講された講義における文字による遠隔情報保障支援の実施  本取組の PCノートテイカーの文字による遠隔情報保障スキルを付加することを目的とし、他大学で開講された講義における遠隔情報保障を実施した( 1コマ ×13回)。  文字による遠隔情報保障を実施する際に必要となる音声取得環境や教室環境等については、事前に他大学の教職員と打合せを行ったほか、講義で使用されるテキスト等の貸与がなされ、事前資料についても講義前日までに提供があった。そのほか、講義中に行われたグループディスカッション等については文字情報の提示は不要である、映像教材を使用する際には字幕が付与されているため文字情報の提示は不要である、など講義中にも連絡のやりとりが行われ、円滑な遠隔情報保障支援が実施できた。 写真:文字による遠隔情報保障支援の様子 ■学内における文字による遠隔情報保障エキスパート養成  学内で開講されている教養科目や専門科目の支援に携わる PCノートテイカーへ、文字による遠隔情報保障スキルを付加するための講習会を実施した( 6名参加× 2回実施)。  使用するシステムの概要、機能等について説明を行ったのち、実際の場面を想定して話者は別の部屋に移動し、連係入力を行った。 3)情報収集および関連団体との意見交換  本取組では、これまで他大学から情報保障に関連した相談に対応してきた。今後もこれらの相談に柔軟に対応していくための活動として、特徴的な情報保障活動を実施している団体や学会等における情報収集を行った。 ■情報収集(学会)  情報処理学会、ヒューマンインタフェース学会において、聴覚障害者支援に関連した発表がなされるセッションに参加した。情報保障を含む聴覚障害者支援に関する新たな取組・研究成果等の発表を聴講し、今後の取組を推進するための情報を得た。 ■関連機関との意見交換  平成 27年度は遠隔情報保障を中心に実施している関連機関を訪問した。当該機関では、文字による遠隔情報保障を実施しており、また支援者(入力者)を養成していることから、養成のカリキュラムやスキルアップ向上や支援者の評価方法について聴取をしたほか、文字による情報保障を実施する上での課題について意見交換を行い、今後の情報保障支援を実施する上での有益な知見を得ることができた。 まとめと平成 28年度の活動に向けて  大学等における情報保障は、手書きのノートテイクから PCノートテイクへと移行しつつあり、 PCノートテイクの導入や講習会に関する相談が増加していることから、それらの相談に対応し、なおかつ他大学で開催する講習会等ではさらに効果的な養成方法が求められている。今年度、本取組では他大学で開催される PCノートテイク講習会等への講師派遣を通じて、養成に関する課題の聴取や意見交換を行い、即戦力となり得る支援者養成カリキュラムを検討することができた。  学内で開講されている教養科目や専門科目の支援に携わる支援者を養成することを目的とした養成講座においては、受講生の年齢が幅広いことからノート PCの入力・操作に関しては慣れるまでに時間が必要であるが、話しことばから書きことばへの置き替え、和語を漢字熟語で表現する漢語表現に長けているなど、タイピングスキルが向上すれば PCノートテイカーとしての活動が十分可能であることが分かった。  また、現在は学内で開講されている講義の情報保障支援に携わっている PCノートテイカーは、情報保障活動を円滑に遂行するための連絡や引き継ぎに関する情報交換の場として専用の MLを活用している。更に、そのような活用のみならず、この MLは PCノートテイカー同士の練習方法・スキルアップ等に関する情報交換にも活用している。この MLで共有されるノウハウについては、 PCノートテイカーの養成に取り組んでいる他大学へのアドバイスにも役立っている。  来年度以降も、他大学で開催される PCノートテイク講習会等へ講師派遣を行う際には、利用学生のニーズに即した文字による情報保障を提供できるような指導案を検討し、提案していく。  そのほか、文字による遠隔情報保障支援についても、他大学からの要望に応じて、利用学生のニーズや実施環境を確認しながら、入力者の養成や導入に向けて提案をしていく。 視覚障害情報保障機器の評価と大学間連携 担当者:飯塚潤一、宮城愛美 1 .取組の目的  本取組は大きく分けて 2つの支援からなる。 1つ目は、視覚障害のある学生が在籍中または入学予定の大学等と連携し、修学および大学生活での情報保障機器の利活用を推進する。具体的には、情報保障機器に関する最新情報を積極的に収集したり、本学所有の情報保障機器を他大学等で評価したりして、それらの情報を大学間で共有する。また国の機関やメーカーとの連携を実現する。  2つ目は、視覚障害学生の支援に関する相談全般(情報保障機器を含む)に対応することにより、視覚障害学生を受け入れている他大学等に対する支援を行なう。大学間ネットワークを充実させるために、各大学における視覚障害学生支援の状況を把握し、また、支援の技術や考え方を発信することにより、本学を介した大学間の連携構築を図る。 2 .活動報告 1)情報保障機器の利活用の推進  視覚障害学生(入学予定者・卒業生を含む)の修学・日常生活を営む上で有効な最新の情報保障機器(拡大読書器やフラッシュライト他)を揃え、それらの性能や使い勝手を評価した。また、各自の視機能や目的にあわせたフィッティングを行なったうえで貸出し、本人の環境向上とともに機器の評価を行なった。 2)視覚障害学生の支援に関する相談全般  修学に関する各種の相談(教材作成、授業・学習、進学・受け入れ、支援機器、バリアフリー、その他)を受け、メール、電話、来訪、往訪による対応を行なった。 3 .実績・成果 支援件数・大学実数: 27件・ 20大学 1)情報保障機器の利活用の推進 ■新型拡大読書器の導入と評価これまでの据置型拡大読書器(従来型)とデザインが大きく異なる拡大読書器(新型)を購入し、その操作性について評価するとともに、視覚障害学生にも使ってもらった。  ディスプレイの性能が高く、高精細であるので細かな個所まで綺麗に表示できる。 しかし、アームが左側に位置しているので(従来型は奥側)、 XYテーブルに乗せた印刷物が少し移動しにくい。 (図)従来型 新型 ■フラッシュライトの導入と評価  乾電池を使用する高輝度の懐中電灯を購入した。現在、小型・安価に入手できるもので最も明るく、学生の夜間歩行に評価が高かった。 ■シミュレーションキットの充実  大学の障害学生支援室主催の一般学生に、また科学技術週間での本学来学者に視覚障害者への理解を深めるための視覚障害体験シミュレーションキットを更に充実させた。特に体験時に評判が良い視野狭窄と強度近視レンズに絞った。販売元の米国ダス社の廃業の情報をいち早く知り、在庫を早めに押さえることができた。他大学支援に今後活用していく。 ■盲ろう者用機器の充実  本学両キャンパスに、毎年のように視覚・聴覚に重複障害のある学生が入学している。また、将来的に盲ろう者を受け入れる可能性もあり、関連製品の充実が必要と考え、今年度いくつかの製品を購入した。振動する目覚まし時計や腕時計などである。まだ、貸し出し実績がなく評価が十分とはいえないが、関係機関とも連携し評価を進めていく。 ■就労支援関連機関との連携  視覚障害学生の職場定着を支援するため、外部団体(厚労省関係)との連携を推進した。具体的には、 (1)中央障害者雇用情報センター(高齢・障害・求職者雇用支援機構)とは、職場での情報保障機器の整備、 (2)視覚障害者就労生涯学習支援センターとは、『ジョブコーチ』として職場に出向き、就労支援や職場の就労環境向上・理解を促進した。これらは一般企業への就職が多い保健科学部情報システム学科の就職担当教員との連携により実現している。 2) 視覚障害学生の修学に関する相談(計 27件) ■学習資料の作成に関する相談( 7件)  4月から全盲の学生を受け入れる大学から点字資料についての問い合わせがあり、点訳資料の提供方法や点訳グループの紹介を行なった。以前からテキストデータ化を行なっている大学からは、効率的な作業方法や図の表し方について相談があり、校正作業のポイントや図表の表現、触図の作成方法について助言を行なった。 ■授業・学習に関する相談( 6件)  授業における配慮の方法、教育実習における課題などの相談があり、本学および他大学の事例を紹介した。 ■進学・受け入れに関する相談( 4件)  来年度、視覚障害学生の入学が予想される大学に対して受け入れに関する基礎知識の提供および FD研修の講師を担当した。 ■視覚支援機器に関する相談( 3件)  大学として購入したほうがよい支援機器について助言を行なった。 ■バリアフリーに関する相談( 3件)  4月の障害者差別解消法の施行を前に、学内のバリアフリーを検討する際の参考として本学春日キャンパスのバリアフリー環境の見学が 3月に相次いだ。また、その際に各大学の差別解消に関する対応要領の作成状況について意見交換を行なった。 ■その他( 4件)  支援学生の養成や謝金、学外実習における支援についての相談があり、情報提供を行なった。 写真:東北大学支援担当者の来学の様子 体育・スポーツ 担当者:香田泰子、中島幸則、天野和彦、向後佑香、栗原浩一 1 .取組の目的  全国の高等教育機関に在籍する聴覚・視覚障害学生の体育・スポーツ活動に関する教育支援の充実に資することを目的とする。  上記の目的を達するため,アダプテッドスポーツコーディネーター (以下 AdSC)が中心となり、以下の項目に重点を置いて事業を展開する。 1)聴覚・視覚障害学生(者)の体育・スポーツ活動に関する情報の収集および提供 2)聴覚・視覚障害者スポーツに関する講習会の開催および講師派遣 3)聴覚・視覚障害学生の体育授業に関する相談・助言・支援 2 .活動報告  事業計画に基づき、以下の 4項目を実施した。 1)聴覚・視覚障害学生(者)の体育・スポーツ活動に関する情報の収集・提供  聴覚・視覚障害者スポーツに関する情報の収集として、視覚障害者とスポーツに関する講習会を受講し、視覚障害者スポーツの実施環境や、競技者と支援者・指導者についての現状などに関する情報収集を実施した。  また、聴覚・視覚障害者スポーツに関する情報の提供として、本事業で制作した映像資料である、聴覚障害者スポーツ DVD「トップアスリートを目指して~聴覚障がい者スポーツの紹介」ならびに、視覚障害者スポーツ DVD「広がる、世界へ!~視覚障害者スポーツの紹介」を全国の大学体育教員の中でも障害者スポーツに関係する教員や、平成 24年度に実施した「障害学生に対する体育実技についてのアンケート調査」協力校・教員を対象に配付した。また、大学体育や視覚障害に関する学会等において、本事業の取り組みの紹介や、利用事例の報告を目的とした発表を実施した他、障害学生の体育実技支援に関するラウンドテーブルを企画し、開催した (写真 1)。 (写真) 写真 1:第 4回大学体育研究フォーラムラウンドテーブル企画 2)聴覚・視覚障害者スポーツに関する講習会の開催および講師派遣  聴覚・視覚障害者スポーツに関する講習会の開催や講師派遣として、大学体育教員を対象とした FD研修会への講師派遣、将来の指導者や支援者となる体育や教育・福祉などを専攻する学生を対象とした障害者スポーツに関する講習 (写真 2)、一般の大学教職員や学生を対象とした視覚障害者スポーツ体験を目的とした講習会 (写真 3)、視覚障害学生に対する体育実技授業や修学支援全般に関する講習会への講師派遣 (写真 4)など、多様な内容の講習会の開催ならびに講師派遣を実施した。 写真 2:中央学院大学での講義 写真 3:法政大学ゴールボール実技講習会 写真 4:茨城キリスト教大学 FD研修会 3)聴覚・視覚障害学生の体育授業に関する相談・助言・支援  障害学生が受講する体育実技授業の相談・支援として、本学産業技術学部に在籍する弱視学生の体育実技支援を実施した。また、体育授業の相談・助言として依頼元大学の障害学生支援体制や体育授業の内容や指導体制・体育施設に合わせた支援方法の提案、新年度に弱視学生の入学を予定している大学での支援体制構築や、視覚障害者に対する運動指導時における一般的な配慮に関する相談と助言を実施した (写真 5)。 (写真) 写真 5:茨城キリスト教大学での相談 4) AdSCの資質向上  本事業を主に担当する者である AdSCとして視覚障害者スポーツに関する専門性を高めるため、前年度までと同様に、本学保健科学部開講の健康・スポーツ科目において、視覚障害者の体育・スポーツに関する実習を継続した。さらに、聴覚障害に関する相談や支援にも対応する資質を身につけることを目的として、本学産業技術学部の健康・スポーツ科目においても、聴覚障害者の体育・スポーツに関する実習を行い、聴覚・視覚障害者が体育・スポーツ活動を行う際に必要となる支援・配慮や指導法に関する知見と技能の向上に努めた。 3 .実績・成果 利用件数・利用のべ人数・大学実数: 53件・ 443名・ 62大学支援件数・大学実数: 2件・ 2大学 1)聴覚・視覚障害学生(者)の体育・スポーツ活動に関する情報の収集・提供 ①聴覚・視覚障害者スポーツに関する情報の収集 (以下、表) 日時 内容 6月 25日 山梨県視覚障害を考える会主催の「第9回視覚障害者のための社会適応訓練講習会」の受講。テーマ:視覚障害とスポーツ【担当:栗原】 ②聴覚・視覚障害者スポーツに関する情報の提供 (以下、表) 日時 対象・件数 内容 通年 全国の大学体育教員・障害学生支援担当職員など (47件・ 47大学 )関連教育機関・団体 (19件・ 19団体)  聴覚障害者スポーツ DVD「トップアスリートを目指して~聴覚障がい者スポーツの紹介」、視覚障害者スポーツ DVD「広がる、世界へ!~視覚障害者スポーツの紹介」ならびに、本事業広報パンフレットの送付。【担当:栗原・中島・天野・香田】 6月 27日~ 28日 視覚障害リハビリテーション協会 「第24 回視覚リハビリテーション研究発表大会」での本取組に関する発表の実施。【担当:天野】 8月 25日~ 27日 日本体育学会 「日本体育学会第66 回大会」での、本取り組みに関する口頭発表の実施。演題:障害学生との交流を含む聴覚・視覚障害者スポーツに関する講習会筑波技術大学共同利用拠点事業の利用事例報告【担当:栗原】 2月 29日 全国大学体育連合 「第 4回大学体育研究フォーラム」での、本取り組みに関する発表の実施。演題:弱視学生の体育実技支援に関する事例報告-筑波技術大学教育関係共同利用拠点事業の利用事例報告【担当:栗原】 3月 1日 全国大学体育連合(9名・ 8大学 ) 「第 4回大学体育研究フォーラム」での、障害学生 に対する体育実技授業支援に関するラウンドテーブル企画の開催。テーマ:大学体育における障害学生への対応【担当:栗原・中島】 (写真 1) 2)聴覚・視覚障害者スポーツに関する講習会の開催および講師派遣 (以下、表) 日時 対象・件数 内容 6月 30日 中央学院大学法学部学生 (30名・ 1大学 ) 中央学院大学法学部開講の授業ライフスポーツ論( ) での、視覚障害者スポーツに関する講義の実施。テーマ:視覚障害とアダプテッド・スポーツ【担当:栗原・中島】 (写真 2) 9月 29日 法政大学教職員・学生 (12名・ 1大学 ) 法政大学障がい学生支援室主催の、視覚障害者スポーツに関する講習会への講師派遣の実施。テーマ:視覚障がい者スポーツ競技『ゴールボール』実技講習会【担当:栗原】 (写真 3) 11月 4日 筑波大学体育センター (25名・ 1大学 ) 筑波大学体育センター主催 FD研修会での、視覚障害学生の体育指導に関する講義の実施。テーマ:障害学生に対する合理的配慮:障害者差別解消法の施行を前に-弱視学生を含む集団指導での配慮と工夫-【担当:栗原】 1月 14日 筑波大学体育専門学群学生 (194名・ 1大学 ) 筑波大学体育専門学群授業 (アダプテッド・スポーツ科学 )への講師派遣の実施。テーマ:アダプテッド・スポーツの実際受講学生 194名【担当:栗原】 2月 16日 帝京大学医療技術学部学生・教務助手 (10名・ 1大学 ) 本学産業技術学部開講授業スノースポーツ実習で( ) の、帝京大学医療技術学部学生・教務助手を対象とした、聴覚障害者スポーツに関する講習ならびに本学産業技術部学生とのスポーツ交流の実施。【担当:中島・天野・向後】 3月 8日 茨城キリスト教大学文学部教員 (19名・ 1大学 ) 茨城キリスト教大学文学部児童教育学科教員などを対象とした、障害学生支援に関する FD研修会への講師派遣の実施。演題:障害のある学生に対する教育支援の在り方-視覚障害学生への合理的配慮の提供を例に【担当:栗原・宮城】 (写真 4) 3月 14日~ 15日 東海大学体育学部学生 (25名・ 1大学 ) 東海大学体育学部学生を対象とした、聴覚・視覚障害者スポーツ講習ならびに本学学生とのスポーツ交流を行う訪問研修会の実施。【担当:栗原・中島・天野・香田・向後】 3月 19日 北陸体育学会 (23名・ 13大学 ) 「平成27 年度北陸体育学会」での、教育講演の実施。演題:障害学生の体育 (授業 )を考える聴講者 23名 (13大学 )【担当:天野】 3)他大学支援:聴覚・視覚障害者スポーツに関する相談・助言・支援 (以下、表) 日時 対象・件数 内容 通年 筑波技術大学産業技術学部学生 (1名・ 1大学 ) 本学産業技術学部開講の体育授業健康・スポーツ (A、 B)を受講する弱視学生(産業情報学科 1年)に対する授業支援ならびに相談の実施。【担当:栗原】 通年 筑波技術大学産業技術学部学生 (1名・ 1大学 ) 本学産業技術学部開講の体育授業健康・スポーツ (A、 B)を受講する弱視学生(総合デザイン学科 1年)に対する授業支援ならびに相談の実施。【担当:栗原】 通年 筑波技術大学産業技術学部学生 (1名・ 1大学 ) 本学産業技術学部開講の体育授業 (健康・スポーツ C、 D)を受講する弱視学生(産業情報学科 2年)に対する授業支援ならびに相談の実施。【担当:栗原】 6月 18日 法政大学現代福祉学部学生 (1名・ 1大学 ) H26年度に実施された現代福祉学部での弱視学生を含む体育授業支援についての、授業支援の内容に関する調査ならびに今後の支援体制に関する相談の実施。【担当:栗原】 12月 14日 茨城キリスト教大学 (1件・ 1大学 ) 来年度入学の可能性のある、弱視学生の体育実技ならびに修学全般に関する相談の実施。【担当:栗原・宮城】 (写真 5) 語学教育に関するアカデミック・アドバイスの提供 担当者:松藤みどり、須藤正彦、大杉豊、(アカデミック・アドバイザー)細野昌子 1 .取組の目的  授業担当者や聴覚障害学生に対して外国語教育・学習についての助言・指導を行う「アカデミック・アドバイザー」を配置し、語学の授業における教育指導の方法や、障害特性に応じた学習方法について専門的なアドバイスを提供する。 2 .活動報告  アカデミック・アドバイザーに月1回3時間通年で勤務してもらい、学生、教員、支援者などからの相談に、メールや電話、面談などで対応してもらった。  業者に依頼した「やってみようパソコンノートテイク」の英訳を見直し、同じ体裁の英語版の作成の準備をした。  2月 20日(土)、本学天久保キャンパス大会議室において、全国の大学教職員、聴覚障害学生の語学指導担当者および支援担当者を対象とした研修会「語学教育のイコールアクセスを考える」を以下のプログラムで開催した。 発表1 卯城 祐司(筑波大学教授・筑波技術大学 非常勤講師) 「聴覚障害学生を対象とした英文読解指導の課題:授業アンケート結果を基に」 発表2 佐藤 淳一(筑波大学・筑波技術大学 非常勤講師) 「筑波技術大学におけるごく普通のフランス語授業の意義と実状」 説明 細野 昌子(立教大学兼任講師・筑波技術大学 非常勤講師) 「英語技能試験における聴覚障害者対応について」 発表3 森 亜美(日本社会事業大学・筑波技術大学非常勤講師) 「ろうの当事者による英語指導:聞こえない大学生への英語指導の経験から」 発表4 有海 順子(山形大学 障がい学生支援センター 講師) 「英語で行われる授業での情報保障支援の実践と今後の課題」 発表者によるパネルディスカッション (写真)写真:研修会におけるパネルディスカッション  語学教育に関する tipsのうち「英語教員になるには」を新たに作成した。研修会で「技能試験における特別措置」とあわせて配布した。 3 .実績・成果 利用件数・利用のべ人数・大学実数: 2件・ 62名・ 25大学支援件数・大学実数: 2件・ 2大学 アドバイスは2 校から2件。 ①質問:新入生に聴覚障害学生がいるが、英語の受講の準備について  回答: ■基本的には出来るだけ音声はテキスト化する。配布資料や NTなど ■NT/PCNTは英語の得意な学生がいる学部に募集 ■学生の聞こえの確認→相性の良い教員のクラスに配置 ■最初の面談時から担当教員の立ち会い→できるだけ支援に協力をしてもらう ■早めに準備し、始業に間に合うように ■免除措置にしないで学びの機会を与える方向で ②相談:所属する工学部共通学群(英語)で、英語の授業の情報保障に関するガイドラインを作成したい   回答:他大学の FD研修会用に作成した① FD研修参考情報 PPT、② FD研修参考情報 word(日本語)、③ FD参考情報 word(English)を送付 研修会参加は 29機関(そのうち大学は 25)から 35名が参加した。 研修会参加の 35名に tipsを配布した。 英語教育コンテンツ 担当者:須藤正彦、松藤みどり 1 .取組の目的  これまでに TOEIC対策として多くのテキストが市販され、インターネットを介した学習プログラムが存在するが、聴覚に障害がある受験者に有効な個別学習プログラムがなかった。本事業では聴覚に障害のある受験者のためにリスニングテスト部を除くリーディングパート得点向上に役立つ 33講義と問題解説を「聴覚障害者向け TOEIC対策講座」として提供するとともに聴覚に障害のある方々が海外の大学(特にアメリカ)で留学を目指す際に必要な手続きや準備等を説明する「留学準備講座」を作成し、学生の学修や留学に資することを目指している。 2 .活動報告  平成 27年度は TOEIC対策講座の Webコンテンツ使用に要する費用は、共同利用拠点事業の予算からではなく、共同開発した神田外語キャリアカレッジの社会貢献活動分として 15名の枠を頂いた。しかしながら、その利用は留学対策 (準備講座 )を含めて 3大学 4名の利用に留まった。  利用内訳: A大学( 2名)、 B大学( 1名)、 C大学( 1名) 3 .実績・成果 利用件数・利用のべ人数・大学実数: 4件・ 4人・ 3大学支援件数・大学実数: 1件・ 1大学 成果物紹介 ※今年度制作したコンテンツ(主に広報用)の一部をご紹介します。 動 画 視覚障害学生支援アドバイスコンテンツ (動画) 収録内容 拡大読書器 VISIOBookの活用 ▶携帯型拡大読書器と比べて画面サイズが大きい ▶電源がなくてもバッテリで駆動できる ▶折り畳むことができるので教室間の移動が可能 立体コピーの作成方法 ▶言葉で表現できない図を触図にする ▶立体コピー機+特殊な用紙で比較的簡単に作成 ▶Wordや PowerPointで作画が可能 テキストデータ化の方法 ▶点訳のような専門的なスキル習得は不要 ▶テキストデータは音声ソフトで読み上げが可能 動 画 聴覚障害学生のスポーツ・体育授業に関するアドバイスコンテンツ (動画) 収録内容 授業の開始 ▶床を伝わる振動、聴覚障害学生の視界に入る 大きなジェスチャーで伝える 見やすさへの配慮 ▶(体育館など)カーテンを閉めて照明などで 十分な明るさを確保する ▶(屋外)教員が立つ場所は太陽の位置も考えて工夫する コミュニケーション方法(例) ▶口を大きく開けてはっきり話す ▶身振りや手振りも入れる ▶要点を端的に伝える説明は短く、資料を提示するのもよい ▶周りの学生にも理解をしてもらい、学生同士のフォローを促すことも大切 事業パンフレット (図) 平成27 年6 月作成 (図) 平成 28年 3月作成 アドバイスシート(リーフレット) 平成 28年 3月作成 (以下、図) 体育・スポーツ 事業概要 キャリア発達支援(聴覚障害)情報保障 語学教育/ろう者学 視覚障害学生の支援 事業および実績紹介ポスター 7月 24日開催 FD/SD研修会で展示 (図)取組紹介 (図)他大学の教職員を対象としたFD/SD研修会開催実績紹介 (図)各取組の利用実績とコンテンツ紹介 (写真)写真:展示の様子 事業および実績紹介ポスター 7月 24日開催 FD/SD研修会で展示 (図)聴覚・視覚障害学生の体育・スポーツ (図)情報保障 -PCノートテイカー養成と遠隔情報保障- (写真)写真:展示の様子 巻末資料 各取組実績一覧 ※合計数は、取組間の連携による重複分を除く (以下、表) 取組名 利用のべ利用人数 利用大学数  支援のべ支援件数 支援大学実数 他大学の教職員を対象とした FD/SD研修会の開催 294 118 - - キャリア発達支援 65 47 - - ろう者学教育コンテンツ 17 4 - - 情報保障 201 8 21 10 視覚障害情報保障機器の評価と大学間連携 - - 27 20 体育・スポーツ 443 62 2 2 語学教育に関するアカデミック・アドバイスの提供 62 25 2 2 英語教育コンテンツ 4 3 1 1 計 892 148 53 29 以下、表中のカッコ[ ]内は、本事業における担当取組名を記載。 他大学を対象とした FD/SD研修会の開催   ※詳細は、P.5~6の表に記載 (以下、表) 実施月 内容 7月 ■「 FD/SD研修会~障害学生の入学後の支援、ゴールを見据えて~」:[キャリア発達支援][ FD/SD研修会の開催] 9月 ■視覚障がい者スポーツ競技『ゴールボール』実技講習会:[体育・スポーツ] 11月■「障害学生に対する合理的配慮:障害者差別解消法の施行を前に~弱視学生を含む集団指導での配慮と工夫~」:[体育・スポーツ]   ■「第 5回筑波障害学生支援研究会:合理的配慮提供に向けた建設的対話のあり方を考える~障害者差別解消法の施行を目前に~」:[ FD/SD研修会の開催] 2月 ■聴覚障害者スポーツに関する講習ならびに本学学生とのスポーツ交流:[体育・スポーツ]   ■「語学教育のイコールアクセスを考える」:[語学教育に関するアカデミック・アドバイスの提供][ FD/SD研修会の開催] 3月 ■「障害のある学生に対する教育支援の在り方~視覚障害学生への合理的配慮の提供を例に~」:[体育・スポーツ]、[視覚障害情報保障機器の評価と大学間連携]   ■「障害学生の体育 (授業 )を考える」:[体育・スポーツ] 講習会開催・講師派遣 ※他大学の教職員を対象とした研修会への講師派遣については、前項の表に記載 (以下、表) 実施月 5月 ■パソコンノートテイク講習会:[情報保障] 1件 6月 ■パソコンノートテイク講習会:[情報保障] 2件   ■視覚障害者スポーツに関する講習会:[体育・スポーツ] 1件 7月 ■パソコンノートテイク講習会:[情報保障] 1件 8月 ■パソコンノートテイク講習会:[情報保障] 1件 9月 ■パソコンノートテイク講習会:[情報保障] 3件 10月 ■パソコンノートテイク講習会:[情報保障] 3件 11月 ■パソコンノートテイク講習会:[情報保障] 2件 12月 ■「第11 回日本聴覚障害学生高等教育支援シンポジウム」ミニセミナー「やってみよう!連係入力-基本的な設定と入力体験-」講師:[情報保障] 1月 ■アダプテッドスポーツに関する講習会:[体育・スポーツ] 1件 2月 ■聴覚障害者スポーツに関する講習会:[体育・スポーツ] 1件 3月 ■パソコンノートテイク講習会:[情報保障] 2件   ■聴覚・視覚障害者スポーツに関する講習会:[体育・スポーツ] 1件 広報活動 実施月 内容 6月 ■事業パンフレットの改訂および配布(全国の高等教育機関へ):[事務局] 1115部   ■平成 23年度~ 26年度事業報告書の配布(全国の高等教育機関へ):[事務局] 515部   ■第 63回全国ろうあ者大会「聴覚障害者の生活に関するバリアフリー展」における取組紹介展示および事業パンフレット配布:[ろう者学] 7月 ■取組活動および実績紹介ポスターの作成:[事務局]   ■「 FD/SD研修会~障害学生の入学後の支援、ゴールを見据えて~」における紹介展示および事業パンフレット配布:[情報保障、視覚障害情報保障機器の評価と大学間連携、ろう者学、体育・スポーツ、事務局] 70部 11月 ■「第 5回筑波障害学生支援研究会」における紹介展示および事業パンフレット配布:[事務局] 140部 12月 ■日本私立大学協会「教育学術新聞」への記事掲載(「第 5回筑波障害学生支援研究会」開催報告):[事務局]   ■「情報アクセシビリティフォーラム 2015」における紹介展示および事業パンフレット配布:[事務局] 300部   ■「第 11回日本聴覚障害学生高等教育支援シンポジウム」における紹介展示および事業パンフレット配布:[事務局] 400部   ■事業パンフレットの配布(全国の高等教育機関へ):[事務局] 1100部 2月 ■「語学教育のイコールアクセスを考える」における紹介展示および事業パンフレット配布:[事務局] 40部 3月 ■「障害者高等教育拠点アドバイスシート」作成および全国の高等教育機関へ配布:[事務局] 1100部   ■事業パンフレットの改訂および配布(全国の高等教育機関へ):[事務局] 1100部   ■事業 Webサイトのリニューアル作業:[ FD/SD研修会の開催] ※上記の活動のほか、他大学の教職員対象の各 FD/SD研修会開催時や、各学会での発表時において、参加者へ向けて事業パンフレットを配布した。 学会等での発表 (以下、表) 実施月 6月 ■「第 24回視覚リハビリテーション研究発表大会」発表:[体育・スポーツ] 8月 ■「日本体育学会第 66回大会」口頭発表:[体育・スポーツ  ]■情報処理学会アクセシビリティ研修グループ主催第 1回研究会「アクセシビリティシンポジウム」:[ろう者学] 2月 ■全国大学体育連合主催「第 4回大学体育研究フォーラム」発表:[体育・スポーツ] 3月 ■全国大学体育連合「第 4回大学体育研究フォーラム」ラウンドテーブル企画開催:[体育・スポーツ] 研修会等の開催報告 (図) 2015年12 月16日付「教育学術新聞」掲載 本学 Webサイト「ニュース」掲載 (図) (図) (図) 「 FD/SD研修会~障害学生の入学後の支援、ゴールを見据えて~」 (平成 27年 7月 24日開催) アンケート結果[参加者数 63名、回答者数 48名] 【問1】該当する職名の番号に「○」を付けてください。(複数回答あり)①教員 3名②事務系職員 35名③その他 10名[支援コーディネーター (7)、不明 (3)] 【問2】現在、障害学生への指導や支援を担当していますか?①はい 36名②いいえ 11名③その他 1名[不明 (1)] 【問3】現在、貴校に聴覚・視覚障害学生は在籍していますか?(複数回答あり)①はい 36名②入学予定である 3名③いいえ 8名④その他 1名[記載なし (1)] [障害種別] (表) 【問4】今回の研修会開催を何で知りましたか?該当する番号に「○」を付けてください。(複数回答あり)①本学より送付したご案内文 28名②ご案内メール 11名③筑波技術大学ホームページ 1名④メーリングリスト[ PEPNet-Japan(7)、 asagao(1)、不明 (2)]⑤その他 1名[ JASSOの HP(1)] 【問5】本研修会の内容について、どのようなご意見、ご感想を持たれましたか。今後の研修会についてのご要望もぜひお聞かせください。 ①事例報告 [発表内容について(全般)] ■各大学の取組や経緯が分かり、大変参考になった。(同様 7件) ■他大学の様々な事例を知ることができて、良かった。(同様 2件) ■具体的な取組事例が参考になった。(同様 1件) ■どの大学もそれぞれがんばって組織作りをしておられ、参考になった。(同様 1件) ■今後の対応を考える上で、大変勉強になった。(同様 1件) ■本学で取り組みのない事例など、参考になった。 ■大学の組織のあり方等は、もっと聞きたいと思った。とても参考になった。 ■現在、本学には障害のある学生はいないため、組織はないが、組織がないからといってマイナスではないと聞き、これから障害のある学生を受け入れた時、どのようにしていくべきか、とても参考になった。 ■本学では障害学生の受入実績がないので、今後の参考になった。 ■各大学の取組を聞かせていただいたことで、自分のところの課題が整理できたように思う。 ■それぞれの大学での悩み・工夫を直に知ることができたことが、最大の収穫だった。個々の事例を積み上げ、互いに学びあうのが大切だと思う。 ■個別の支援について、対応が違うところがあっても問題の所在やポイントは共通する部分があると感じた。 ■他大学の積極的な取り組み、どこも同じ悩みを抱えていることを確認できた。 ■同じような課題を皆さん持たれているのだなと感じた。 ■どの大学においても、試行錯誤の状態からガイドライン作成へと、多くの悩みを共有できた。 ■どの大学様でも苦労されている点と、他の業務と兼務されながらの支援は、本学も同様であると思った。 ■みなさん苦労されているのが、よく分かった。手探りで支援の手法を考え、他大学に学ぶ姿勢には、学生たちの「学びたい」という想いに応えたいという気持ちを強く感じた。 ■各大学での苦労と、本学での無力感を感じた。 ■3事例がテンポ良く短い時間に要約されて、とても聴きやすい話だった。 ■大学によって、支援体制が大きく違うことが分かった。 ■大学によって、支援の質・レベルも様々だと思った。 [発表内容について(個別)] ■法政大学の実態をそのまま話していただいた報告が良かった。 ■法政大学の話が興味深かった。やはり、教員の理解を得られない中で障害学生をサポートするのは、大変だと思った。 ■他大学のお話を聞いていると、法政大学は大変苦労されたのだなという印象を受けた。今後本学でこのような場面に遭遇した際は、参考にさせていただきたい。 ■本学でも、体育実技は一部の学科では必修となっており、障害者用の別クラスでの対応予定となっているが、他大学の事例を伺えて参考になった。 ■体育の補助について、非常に参考になった。聴覚障害学生の体育(実技)サポートについてどうするべきか考えていたので、視覚障害学生についても知ることができ、今後のためになった。 ■國學院大學の報告について、参考になる部分が多かった。 ■國學院大學の事例では、聴覚障害学生が万が一入学した時に何をしていかなければいけないのか、流れについて掴めた。 ■PCテイクの実際について学ぶことができ、ありがたかった。 [要望等] ■学内で組織的に取り組むことに理解されないことが多く、教職員への働きかけに力を入れたいと考えており、そのような取り組みで有効な事例があれば、取り上げていただきたい。 ■ゴールという点で、発達障害学生(疑い含む)と家族へのサポートについて、もっと具体例を聞きたかった。 ■発達障害などの事例をもっと聞きたかった。 ■可能であれば関西の私大の話を伺いたい。 ■案外、自分の大学のほうが進んでいるかも、と思った。実際どんな学生がいて、どんな支援を行っているのか、たくさんの大学の事例を今後もお聞きしたい。 ■より先進的事例を紹介してほしかった。 ■もう少し具体的な支援内容、合理的配慮について聞きたかった。 ■1人の持ち時間を 40分位にしたほうが、駆け足にならなくてよかったのでは。 ■PCテイカーの事例 ■入学前面接 ■全学的な取組 ②パネルディスカッション ■"キャリア支援 "というものをあらためて考える機会となった。障害学生へのキャリア支援を見直していきたい。(同様 1件) ■「キャリア」という観点から学生を見つめるという視点が、勉強になった。 ■就職を見据えた支援、その後をにらんだ視点、最低限の知識を得ることができた。 ■キャリア教育→就職について考えるということの重要性を痛感した。 ■在学中の支援に終わらないキャリア支援の大切さを学んだ。 ■ゴールが見えた。 ■ゴールとして示された「卒業後 10年」のイメージを持つのは、色々な意味で大変だと感じている。 ■キャリアサポートには一般学生に対しても苦労しているが、困ったときにどこを頼ればよいか、ヒントを頂けた。 ■キャリア支援が今後必要になってくると思うので、参考になった。 ■キャリア支援について、深く心に残った。 ■大変有意義な情報をたくさん頂けて、参考になった。(同様 1件) ■普段知ることのない分野の方々のお話を伺うことができ、参考になった。 ■ディスカッションでは、いろいろな現状に対する対処経験など、企業サイドの障害学生に対するインターンシップ情報など聞けて良かった。 ■取り組み事例や雇用状況などを知ることができて良かった。 ■筑波技術大学の石原先生の、障害学生に対するキャリア支援に関するお話が、とても勉強になった。 ■「セルフアドボカシー」を障害学生に身につけてもらうことが重要だという考え方にもとても共感できた。 ■視覚障害学生の就活の実態について、お伺いできて良かった。通常の学生と同じことは必要だということが、よく分かった。 ■パネラーの先生方の問題提起も参考になったが、参加者の経験・相談への回答が具体的で、勉強になった。 ■ふみ込んだ内容のディスカッションもあり、良かった。 ■フロアーの質問を多く聞いてくださり、良かった。 ■キャリア支援について、発達障害関連は本当に大変なのだと分かった。 ■発達障害と思われる学生がいないわけではないので、その学生のキャリア支援を大学で行っていくことになる。体験が大切だということを聞き、学生指導の際にはその言葉を思い出すようにしたい。 ■キャリア支援には、直接的に関係していないが、発達障害学生とのコミュニケーション方法など、学べることが多くあった。本学に持ち帰って、キャリア支援課へも引き継ぎたい。 ■キャリア支援については、一切たずさわっていないのだが、知っておくべきことだと思っていたので、お話が聞けて良かった。 ■キャリアの面で役に立った。学生に障害を認めさせることはどうすれば良いのか知りたかった(早期に)。 ■特例子会社について初めて知った。今後詳しく調べてみたい。 ■石原先生の進行ぶりが、とてもピリッとしていて面白く、参加してひきこまれた。 ■自分自身の知識が足りず、良い質問が出せなかったのが残念。 ■本学では 1年生が多く、まだキャリアについてはイメージが難しかった。 ■就労関係にたずさわっていないので、勉強不足で残念に思った。 ■全体的に時間が不足していた。 ③情報交換会 ■聞きたかった内容を情報収集できて、良かった。(同様 1件) ■他大学の様々な実態を教えていただき、大変勉強になった。 ■「実情」を教えてもらって良かった。 ■色々お話を伺うことができ、貴重な時間だった。 ■他大学の方々のお話が聞けて、情報交換もでき、とてもうれしかった。 ■各大学が障害学生の対応について、様々なアプローチで考えていることが解り、とても有意義でした。 ■短い時間でしたが、各大学での課題を知ることができて良かった。将来、本学でも新たな事例にぶち当たると思うので。 ■他学の貴重な意見がありがたかったです。 ■障害のある学生の支援を行うにあたり、教員と職員の連携の大変さを共有でき、参考になるアドバイスを頂けた。 ■名刺交換、たくさんの方とお話ししやすくて、とても良い機会だと思う。 ■三好先生のファシリテートのおかげで、他大学の方とやりとりができた。 ■所属するキャンパスでは聴覚のサポートがメインだが、他大学でも同様なのかなと思った。 ■グループに分かれた時、もう少し話す時間があると良かった。(同様 2件) ■時間が短かったので、もう少し話をしたかった。(同様 4件) ■少し他の方との課題が違ったので、あまり意味は薄かった。 ■(研修会の要望として)他大学とのノートテイカーの協定、ノートテイカーの面接や成績基準 ④「障害者高等教育拠点」に関する事業説明・展示 ■次年度入学予定の学生に関するものを見ることができたので、良かった。 ■初めて見るものばかりだったが、勉強になった。 ■様々な取組をしているのを見聞きできたので、勉強になった。 ■拡大読書器のすごさに驚いた。本学には拡大読書器を使用する学生が不在だが、入学した際は貸し出していただきたいと思う。 ■拡大読書器が特に目を引いた。 ■特に、体育サポート(全盲学生への)について質問した。色々資料を送ってもらう約束ができた。 ■DVDなどは、必要になった時ぜひ利用させていただきたい。ゴールボールについても調べてみようと思う。 ■「ろう文化」についての展示が、とても勉強になった。詳しい説明をしていただき、とてもありがたかった。 ■上智大学のアスペルガーの学生が書いているリーフレットは、障害のある学生・ない学生双方にとって、とても参考になる内容だった。 ■見やすい展示だった。 ■何度も見ている内容だった。 ■聴覚障害関連の展示が少なかった。 ■あまり関連がなかった。 ■説明する人がいなくて困った。 【問6】その他、ご意見ご要望がございましたらご記入ください。(運営面、会場、開催時期、テーマ等) ■「支援機器の最前線、導入への視点」のテーマでの講習会を希望。 ■ノートテイクが足りていないため、他大学の状況をもっと教えていただきたい。 ■今回の内容は、障害学生の支援のうち、ソフト面のサポートについて取り上げられていたが、ハード面についてのお話(施設・設備の対応、専用機器の準備等)にもふれていただければと思う。 ■外国語(英コミュニケーション、英リーディング、フランス語、中国語等)の授業支援の仕方など、具体的にお話が聞けると嬉しい。 ■発達障害をテーマとした会があれば、ぜひ参加したい。他大学の事例なども教えていただきたい。(同様 1件) ■(希望テーマ)アスペルガーについて。 ■会場の規模もちょうどよく、発表を聞くのも発言をするのも、しやすい研修会だと思う。 ■情報交換会の時間をもう少し長く取っていただけると、より良いのではないかと思う。 ■快適な環境、良かったです。 ■都内での開催であったため、参加しやすくありがたかった。 ■交通の便が良く、会場として最高の場所だと思う。内容も非常に良いと思う。 ■7月の教授会が終了した後で、非常に助かった。今後もこのような次期の開催を希望。 ■学生のテスト期間中だったので、普段より出やすい時期で良かった。 【問7】「障害者高等教育拠点」について、ご利用を希望する取組や、さらに内容を知りたい取組がございましたら、取組名をご記入ください。(特に興味のある内容がありましたら併せてご記入ください) ■今後も、障害学生のキャリア支援に関するシンポジウムや情報交換会等を開催してほしい。 ■今後とも、このような規模での研修会をぜひお願いしたい。 ■「出口」の問題を引き続き追求してほしい。 ■組織への就職という視点から、独立という選択肢をも考える時代が来ているような気がする。健常者も同様だが…。 ■全盲学生が入学することが決まったら、色々ご相談することも多いと思う。 ■場合によっては、研修等でどなたかに来ていただくことをお願いするかもしれません。 ■パソコンノートテイクの講習会について。(同様 1件) ■聴覚・視覚障害学生への先進的な具体事例(先進的な)が知りたい。例えば、アミボイスを使ったテイクの例など。 ■パソコンのキーボードで入力できない学生が多く、 iPadなどでフリック入力によるテイクをしたいと要望がある。そのような取組を行っている大学があれば、ぜひご紹介いただきたい。 ■(利用希望)「インターネットで学ぶ PCテイク」のコンテンツ(ビデオオンデマンド)。 ■(利用希望)発達障害に特化した取組。 ■発達障害学生をテーマにした事例について、さらに情報交換したい。 以上 「語学教育のイコールアクセスを考える~聴覚障害学生の語学授業の担当教員および支援者の視点から~」(平成 28年 2月 20日開催) アンケート結果[参加者数 38名、回答者数 28名] 【問1】該当する所属機関の番号に「○」を付けてください。 ①国立大学 12名 ②公立大学 1名 ③私立大学 12名 ④短期大学 1名 ⑤高等専門学校 0名 ⑥上記以外の教育機関 2名[特別支援学校 ( 1)、無記入 (1)] ⑦関連企業 0名 ⑧その他 0名 【問2】所属機関の規模(全学生数)について、該当する番号に「◯」を付けてください。 ①499人以下 5名 ②500~ 999人 2名 ③1000~ 1999人 0名 ④2000~ 4999人 3名 ⑤5000~ 9999人 4名 ⑥10000人以上 14名 【問3】該当する職名の番号に「◯」を付けてください。また、差し支えがなければ、具体的な職名・所属を( )内にお書きください。 ①教員 16名[教諭(英語) (2)、英語教員特別支援センター助手 (1)、准教授 (5)、講師 (3)、特任研究員 (1)、無記入 (5)]②専門職 4名[(支援)コーディネーター (3)、無記入 (1)]③技術系職員 1名④事務系職員 7名[学生課 (1)、学生活動支援機構 (1)、学習・教育センター (1)、学務・入試センター (1)、教務グループ (1)、無記入 (2)]⑤学生 0名⑥その他 0名 【問4】現在、障害学生への指導や支援を担当していますか? ①はい 22名②いいえ 5名③その他 1名[無記入 (1)] ※以下、【問5】および【問6】については、高等教育機関の回答(【問1】①~⑤回答者)のみを記載。 【問5】現在、貴校に障害学生は在籍していますか?該当する番号に「◯」を付け、それぞれ人数をご記入ください。(複数回答あり) ①はい 25名②入学予定である 6名*うち、①②両方に該当: 6名③いいえ 0名④不明である 1名 [障害種別](数字は回答数) (以下、表)        聴覚 視覚 運動 発達 他 在籍している 18 10 6 10 4 入学予定    5 2 - - - (以下、表) [障害学生の在籍規模別] 障害学生数 回答数 1 ~ 2 1 3 ~ 5 2 6 ~ 10 1 11~ 30 3 31 ~ 50 1 51 ~ 100 5 100 ~   1 不明 11 【問6】貴校における障害学生支援の主たる担当部署(または組織、役職)名をご記入ください。 ■事務担当課(学生課等) 2名 ■支援センター(学生支援、特別支援、総合支援等) 6名 ■障害学生専門部署(支援室、ユニット等) 8名 ■障害学生支援委員会 2名 ■その他 12名[特になし、無記入 (11)] 【問7】貴校の障害学生支援において、課題と感じられていることがありましたら、ご記入ください。 ■すべて英語で行われる授業で聞こえる学生はリスニングのトレーニングも兼ねているが、聴覚障害学生はテイカーのリスニング能力を借りることになり、何が目的になっているかわからなくなっている。授業担当教員への FDが必要だが、なかなか難しい。 ■担当教員が個別に実施している支援方法を共有する機会がない。 ■障害学生に対する評価をどのように行うか。 ■評価方法。 ■ネイティブ教員による授業の情報保障。発音、発話よりもまず情報保障を !!PCテイカー不足でその人の都合が悪いと代わりの人がいない場合も… ■現在はここの学生に対応したサポートができているが、 4月に聴覚障がいのある学生(英語教員志望)に対してどのようなサポートをしていくか課題。 ■教員との連携と授業の質保証。 ■他部署や先生方との連携。 ■教職員への理解・啓発。 ■担当部署と各学部(研究科)との連携がまだまだ足りない。 ■支援センターがないため、各学部、各教員が各々に支援を行うのが現状である。 ■総合大学ならではの学生のニーズの幅広さ(情報保障への理解をしてもらえないケースもまだまだある)。 ■聴覚障害のアイデンティティに関して。一人ひとり育ってきた環境が違う。 ■発達障害の学生のニーズ・対応の多様化。 ■多岐に亘るそれぞれのニーズに合わせた支援を目指しているが、柔軟性に欠ける部分がまだまだ多く、細やかな整備がこれからの課題である。 ■支援者数の確保。 ■システムができていない。 ■過重支援。手話通訳と PCノートテイクの両者を学生が希望すれば当然のように配置→予算が不足に。 ■障害学生支援専門ではない教員がほとんどのため、何をやるにしても手探り状態で泥縄になる。 【問8】今回の研修会開催を何で知りましたか?該当する番号に「○」を付けてください。(複数回答あり) ①ご案内メール 8名 ②メーリングリスト 17名[ PEPNet-Japan(8)・ asagao(2)・無記入 (7)] ③その他 3名[障害教育専門の教員より (1)、担当している教員・職員から (1)、無記入 (1)] 【問9】今回のプログラムについて、どのようなご意見、ご感想を持たれましたか。下記のうち該当する番号に「○」を付け、ご記入ください(複数回答あり)。 <意見・感想> ■有意義だった。 ■どの発表もすばらしく、学ぶことが多いと感じた。 ■様々なテーマで色々と議論が聞けてよかった。 ■現場からの発表は実際に活用できそうな要素が多く、とても参考になった。 ■授業実践・成績評価方法等、現場の様子がよく伝わり、非常に有意義だった。 ■有海先生のお話にあったように、合理的配慮の観点から論ずれば、シンプルな議論に思われた。 ■言語教育自体(理念)に詳しいパネリストが含まれていると議論がより深まったかと思う。十分勉強になったが。 ■先生方は事前にどういう情報があれば授業がしやすくなるのかと思ったりした。 ■全体的に「聞く、話す(口で)」を過小評価する方向で終わったような感じがする。口話というのは聞こえる人のための口話(相手に伝わる)だけでなく、その言語を獲得しやすくなるための意味もあると思うのだが。つまり、「チューリップ」は指文字や文字だと 6文字だが、韻律情報があると 3音節(チュー /リッ /プ)、 5モーラ(チュ /ー /リ /ッ /プ)となる。この音的な「まとまり」があるから、聴覚障害児もいろいろな語を覚えていく。だから発音は不明瞭でもよいからリズムとともに単語や文に接する必要があると思うのだが…。だから聴覚障害児・生徒は英単語が覚えにくいのではないのだろうか。→非常勤の先生が口唇を動かすことに対して更に消極的にならないか、少し心配している。 ■カナを振るかどうか、または発声するかどうかは、授業を始める前に学生との面談をしたほうが良いと思う。また、授業の評価と照らし合わせて討議すべきだと思う。 ■発声するかしないか、コミュニケーションの円滑さなどを考えることも大切だが、本人がどういうコミュニケーションスタイルを望んでいるか、また身に付けているか。その上で障害が壁になることをどうクリアしていくかを考えさせる力を付けさせることも必要なのではと思う。 [発表 3について] ■森先生の当事者としての語学の学ぶ姿勢、方法についてうかがえ、とても勉強になった。本学の語学の単位がなかなか習得できない学生にもフィードバックしたいと思う。 ■このような話を聞く(見る)機会は本当に貴重で、とてもうれしかった。ろうの英語教員にぜひたくさん聴覚障害学生を教えてほしい。もっと深く広くお話を聞きたいと思った。これからの森先生のご活躍をお祈りしている。 ■当事者の声。 ■実体験を聞くと非常に参考になった。 ■本学の留学生(聴覚障がい有)は、母語も日本語も別の言語も覚え方は一緒なので、聞こえないことはそれほど困らなかったと言っていた。非常にレベルの高い日本語を書き、発音も少しできる。 100dbの重度だが、本人なりの工夫をしていると思うので、成功者の例を集めて言っていただけるとありがたい。 ■当事者の方の意見を知ることができたことが興味深かった。 [発表 4について] ■大学における英語の授業の支援の現場の映像を実際には意見することができて、目から鱗の落ちる思いだった。そして、英語を聞いて英語を打てるテイカーの養成ができれば、大学において聴覚障害学生がディベートやディスカッションの授業に対等に参加できるようになるのではないかと思う。外国人留学生の活用や外国とのインターネットを使っての連携は今後の展望として考えられることだと思った。 ■PCノートテイク支援を英語科目での活用は諦めていたが(英語能力等での問題)、留学生に声をかけるなど英語ピアチューターの導入の可能性があることを知ることができた。 ■本学に活かせる様々なことを聞くことができた。 ■語学授業(特にネイティヴの先生が担当する授業)では、英語を聞き取って正確に表せる PCテイカーの確保が重要ということを感じた。 ■発表 4、パネルデスカッションが特に参考になった。 【問10】その他、本研修会についてご意見等がございましたら具体的にご記入ください(運営面、会場、開催時期、テーマ等)。 ■テイカー募集の方法についての具体例。 ■参加しやすい時期で、関心のあるテーマだったので、大変参考になった。 ■新入生で聴覚障害学生が入学予定なので、 2月の開催は準備をする上で役立った。 ■夏休みに実施してもらえると、後期で対応できてよいのでは。この時期だと学年が変わり、今問題となっている授業をとらない状況になることもあるので。 ■1日開催しても時間が足りないくらいのテーマだと思う。またぜひ開催してください! ■都内の大学(会場)で行われるとうれしい。 ■会場を東京にしてほしい。 ■可能であれば東京で開催してもらえると助かる。そのほかは非常に良かったと思う。 【問11】今後、本事業の研修会でとりあげて欲しいテーマ等がございましたら、ご記入ください。また、そのほかご要望等ございましたら、ご記入ください。 ■ディスカッション授業の工夫方法。 ■大学院、理系・医療系など専門性が高い授業での情報保障方法。 ■聴覚障がい学生の教員免許状について。 ■語学授業における合理的配慮について。 以上 取組担当者 他大学の教職員を対象とした FD/SD研修会の開催 ◎宮城愛美宇都野康子戸井有希 * ◎石原保志 * ◎大杉豊小林洋子管野奈津美 * ◎三好茂樹宇都野康子 * ◎飯塚潤一 *宮城愛美 * ◎香田泰子中島幸則天野和彦栗原浩一 * 向後佑香 ◎松藤みどり *須藤正彦大杉豊 ◎須藤正彦 *松藤みどり (◎は取組主担当、 *は各取組報告文責) 事業運営担当者 事業責任者 : 須藤正彦 企画部会 : 天野和彦 三好茂樹 宮城愛美 事 務 局 : 宇都野康子 戸井有希 筑波技術大学 障害者高等教育研究支援センター 「障害者高等教育拠点」事業 平成27年度(2015)活動報告書 発行者 筑波技術大学 障害者高等教育研究支援センター 〒305-8520 茨城県つくば市天久保 4-3-15 TEL/FAX:029-858-9483 E-mail:krk-net@ad.tsukuba-tech.ac.jp http://www.a.tsukuba-tech.ac.jp/ce/kyoten/ 編集責任者 須藤 正彦 編集幹事 宮城 愛美 宇都野 康子 戸井 有希 編集協力 橋本 万里菜