参加型学習に対応するCG教室 デザイン学科 遊佐 伸弥・森 一彦・松井 智・前島 健 要旨:デザイン学科のCG教育において学生の参加型学習を支援するための環境づくりの一環として,CG教室のレイアウトを変更し,個人学習,グループ学習,作品講評などの色々な授業形態に対応できるようにした。CG教室のレイアウト計画の概要およびその特徴を報告する。 キーワード:CG教室,デザイン教育,参加型学習 1.はじめに  デザイン学科におけるCG教育のねらいは,コンピュータを利用した新しいデザイン技法を修得することに加え,コンピュータを通して明確化されるデザインのプロセスや考え方を学習することにも重点が置かれている。特に,デザイン教育は1つの回答を求めるものではなく,幾つかのデザイン案や作品を検討することで,より良い作品を作り上げるプロセスを学習きせることに特徴があり,学生の参加意識を高めてデザインの展開を体験的に学ばせる学習,いわゆる「参加型学習」が必要とされている。この「参加型学習」を促進きせる上で,コンピュータを利用した教育の有効性が期待されている1)2)一方で,コンピュータ教育では学生の学習の進度に差が生じやすいことや,コンピュータの個人利用によって情報交換や協同作業が妨げられること,コンピュータによる作品を共通的に評価することが難しいことなど,コンピュータ利用に関わる特有の課題があり,これらの課題を踏まえて「参加型学習」が可能となるような環境を構築していく必要がある。  本報告では,「参加型学習」の環境づくりの一環として,本年度9月に実施したデザイン学科のCG教室のレイアウト変更(従来の一般的な教室型のレイアウトからコミュニケーション型に変更)の計画の概要とその特徴を報告する。 2.CG教室の計画 (1)コンピュータの台数とレイアウト  コンピュータの配置と台数は,受講時の学生数とコンピュータ数との配分や授業の進め方などによって決定されるが,学生定員が40人程度の一般的な教室では,図1のように教壇配置型,実験台配置型,周辺配置型,縦列配置型等に分類される。これらの配置タイプは数年に亘る試行によって定着してきたものであり,現実的な対応であるといえる反面,コンピュータの整備上,資金的な背景から台数に制限があり,理想的な配置とはいい難い面もある。  一方,本学では障害者教育を前提とした少人数の受講(10人程度)を基本としているため,より充実したコンピュータ教育の環境を整備することができ,聴覚障害を持つ学生を対象としたより良い配置形態を独自に考案していく必要がある。 (2)従来配置と新規配置  本デザイン学科のCG室の従来のレイアウトは,写真1のように通常の教室型の机配置に対してコンピュータを1台づつ配置した形態であり,先の教室分類での縦列配置型のタイプに近いといえる。このタイプは講義形式の授業には向いているがグループ学習の演習や,アイデアレベルのディスカッションなどには不向きな配置であった。特に,個人個人がコンピュータを利用している時に教官が指導にあたるには動線が複雑で巡回距離が長くなる,又は学生同士のコミュニケーションが隣同士に限定されやすいなどの問題点があった。  新規配置は写真2,図2のように中央のコミュニケーションテーブルを囲むようにコンピュータと机を配し,学生相互のコミュニケーションや教官の視線や動線などが円滑となるように考慮している。さらに,各コンピュータはネットワークで教官のデータベース用の端末につながっており,学生の作品を統一的に管理することができる。また,そのデータベースの中から選ばれた優秀作品や作成中の作品を中央の大画面スクリーンに写しだせるよう配慮されている。 写真1 従来配置(教室型)の利用状況 学生が一方向を向き,コンピューターがじゃまになってコミュニケーションが困難 写真2 新規配置(コミュニケーション型)の利用状況 中央がコミュニケーションテーブル。学生がふりかえることで,コミュニケーションが可能 図1 一般的な教室の配置タイプ(文3)(川島中学) 3.CG教室の活用方法  具体的なCG室の活用方法としては,図3のように,個人学習,グループ学習,作品講評など多種の授業形態に柔軟に対応できるように配慮されている。 (1)個人学習  個人学習では,個々の学生がコンピュータを操作してデザイン課題を作成する授業で,学生の理解度や進行状況に応じて,教官が対応・指導することが必要となる。教官は教官席から直接各学生のコンピュータ画面を見て,大まかな学生の進行状況を確認でき,ざらに,学生の進行状況に応じて気軽に学生の席まで赴き直接個別指導をすることができる。 (2)グループ学習  グループ学習では,学生相互の情報交換が重要となり,特に学生が直接顔と顔を向き合わせて会話することに加え,各学生がコンピュータ画面を見せ合うことによってコンピュータの利用方法の相談やデザインのヒントなど色々な情報交換が生まれやすい。 (3)作品講評  作品講評では,各学生が作成した作品や教官用のデータベース端末に保存された優秀作品などを大画面スクリーン上に映し出し,それを学生・教官が同時に見て意見を出し合い,評価・検討する。特に,学生個々の作品を全員で見ることによって学生の参加意識が高まると考えられる。 図2 CG室のレイアウト図(新規配置) 図3 CG室の授業形態 4.まとめ  デザイン学科におけるCG教育は,社会での情報化が益々進行するのに伴い,コンピュータを利用するデザイン業務も増えていく中で,より重要なものとなって行くと思われる。今後も単にCG室のレイアウト改善だけでなく,授業内容や授業形態などの検討を続けて行く必要がある。特に,作品講評などに代表される情報を共有しながら,学生相互にディスカッションして演習を行う「参加型学習」の授業方法がますますが重要となり,その環境づくりとして大画面のスクリーンの活用方法など,授業の実践を通して具体的に検討して行きたい。 5.文献 1)文部省:わが国の文教施策,大蔵省印刷局,1993 2)文部省:情報教育に関する手引き,ぎようせい,1991 3)森 一彦他:学習情報ネットワーク,地域施設の計画(日本建築学会編),丸善,1995