鍼灸師の卒後研修-筑波技術短期大学附属診療所における試み- 筑波技術短期大学附属診療所 山下 仁 津嘉山 洋 丹野 恭夫 筑波技術短期大学鍼灸学科 坂井 友実 形井 秀一 西條 一止 summary  筑波技術短期大学附属診療所は平成5年度から研修生制度を導入し,鍼灸師の卒後研修システムを模索している。研修の到達目標は現状を踏まえて,まず共通言語としての現代医学的観点および安全な施術の知識・技術を身に付けることに重点を置いている。システムの試行錯誤を繰り返し,現在は鍼灸臨床系教官を中心としたグループに属して研修を行うという形をとっている。5年間で43名の研修生を受け入れた。また本学鍼灸学科研究生(本学卒業生)15名も施術研修に参加させた。研修終了後の進路は病院勤務および開業が多かった。これら2つの進路では必要な知識・技術が異なるため、研修生の将来の志向に配慮した指導が必要と考えられた。また視覚障害を持つ鍼灸師が職業的に自立するための助走期間をサポートする役割としても研修制度が利用された。今後は視覚障害の多方面からの保障、研修達成度の客観的評価、医療における鍼灸医学的観点の追求等が課題として認識された。 keywords 鍼灸師,卒後研修,評価,視覚障害者,東洋医学 1.はじめに  鍼灸師は,養成学校を卒業し国家試験に合格してはり師・きゅう師免許を取得した後は,臨床研修を義務づけられていない。このため卒業したばかりの鍼灸師は,鍼灸院や病院に就職したり即開業して日々の業務を通して知識や技術を身に付ける努力をしているのが現状である。現役の鍼灸学生の44%が,卒業後は治療院あるいは医療施設で何年か勤務してから開業したいとしているという報告があり1),これは卒後研修の必要性を示唆していると解釈できる。しかし鍼灸院の営業の規模は一般に小さいため卒後の鍼灸師を受け入れられる数は限られており2),また病院勤務ができている鍼灸師の数も決して多くはない3)。卒後に入門した流派によっては,他の医療従事者との間だけでなく同業者問でさえ鍼灸について共通の認識がもてないという印象がある。さらに,施術上の注意について十分なトレーニングを受けていれば起こらなかったような施術過誤も報告されている4,5,6)。これらの問題は鍼灸師が最低限の共通認識や安全な施術法を体得できるような卒後研修システムが整備されていないことに原因があると我々は考えている。鍼灸師の卒後研修施設の必要性は少なくとも約20年前から認識されていた7)。それにもかかわらず今日に至るまで,法律的にも実質的にも整備されているとは言い難い。  近年,鍼灸大学,鍼灸短期大学,および一部の専門学校等では,卒業生を中心として研修生(または研修鍼灸師)を受け入れ,施設附属の病院,診療所または施術所において卒後研修を試みているところがある1,9)。その成果が社会で認められるにはまだ時間がかかるであろうが,鍼灸師の資質向上のための必然的な動向といえよう。このような状況の中で,筑波技術短期大学附属診療所は平成5年度から研修生制度を導入し,鍼灸師の卒後研修システムを模索している。本論では現在までの我々の試行錯誤の経過を報告し,その成果と今後の課題について述べてみたい。 2.研修目標  本学附属診療所における鍼灸師の卒後研修の到達目標は, 1)解剖・生理・衛生学的な観点から安全な施術の知識と技術を身に付ける。 2)現代医学的な病態の把握ができる。 3)鍼灸の適応疾患と不適応疾患の判断ができる。 4)臨床所見および検査データの現代医学的解釈ができる。 5)治療効果を客観的に評価できる。 である(表1)。疾病の捉え方や治療法の根拠に関して鍼灸師の説明が全く理解できないという医師その他の医療従事者は少なくない。これは恐らく鍼灸師が東洋医学の概念(陰,陽,経絡,気など)を用いて理論を展開した場合に受ける批判である。患者を取り巻く医療従事者がコミュニケーションを図るには共通言語が必要であり,当然のことながら,医療の世界では現代医学の概念で統一されている。共通言語として現代医学の概念および用語を用いて自分の専門領域を説明できる鍼灸師であることが,医療界で孤立することなく協調性を保ちながら医療サービスに参加できる基本的な条件であろう。  現在,大部分の鍼灸師を養成しているのは専門学校および盲学校である。後で述べるが当診療所の研修生も専門学校と盲学校の出身者がほとんどである。これらの学校で現代医療の実際を卒前・卒後に充分見修することは,現時点では困難と思われる。鍼灸師全体の業務形態としては鍼灸院の自営が最も多く3,ここで必要なのは患者が専門医療を受けるべきかどうかを判断するための現代医学的な知識と技術である。このような状況を勘案すると,当診療所においては,東洋医学的疾病観(あるいは健康観)をもつことについては尊重するが,臨床研修生の到達目標としてはまず最低限の現代医学の常識を身につけることが現時点において適当であろうと考え た。 表1 研修目標 1)解剖・生理・衛生学的な観点から安全な施術の知識と技術を身に付ける。 2)現代医学的な病態の把握ができる。 3)鍼灸の適応疾患と不適応疾患の判断ができる。 4)臨床所見および検査データの現代医学的解釈ができる。 5)治療効果を客観的に評価できる。 3.研修システムの変遷  当診療所における鍼灸師の卒後研修システムの原則は, 1)週5日出席で1年間(4月~翌年3月)を標準的な研修単位とする10)。 2)附属診療所または鍼灸学科の鍼灸臨床系教官を指導教官とする。 3)鍼灸施術以外に,診察室見学および施術所内周辺業務も行わせる(後述)。 である。開始以来5年間,原則を変えることはなかったが,部分的にはシステムの試行錯誤を行ってきた。  平成5年度すなわち研修制度を開始した年には,カルテ等の軽率な取り扱い,会計伝票の患者への渡し忘れ,医師を通さないまま技師に検査を依頼するなど,医療機関の常識について理解していないことによるトラブルがしばしば生じ,他の医療スタッフからのクレームが多発した。そこで研修マニュアルを作成して配布することにした。  平成6~8年度は,指導教官・実習補助員11)・研修生からなる教官グループの概念を創り,1つの教官グループが3~4ベッドを受け持って,その枠の中で施術,研修,および学生実習を行うことにした。このことにより全12ベッドを効率よく使用できるようになり,また各研修生の行動が把握しやすくなった。しかし研修生は受動的にいくつかの教官グループに割り当てられたため,所属していない教官グループの診療スタイルも見てみたいという希望が強かった。  平成9年度は,最初の3ヶ月間をローテーション期間とし,特定の教官グループに属さずに鍼灸臨床系教官および診察室医師教官の診療全てを見学させた。そしてその間に自分が所属して学びたい教官グループを決めさせ,そこで研修を行わせることにした。研修生の研修内容,アルバイト,進路の決定などは所属した教官グループの裁量に任せた。このことにより研修生が能動的に研修環境をアレンジできるようになった。しかし特定の教官と研修生とのつながりが強くなったため,教官グループ内の事情が外からは不透明となり徒弟制度的グループの集まりになっている面もある。研修生の能動性を尊重し個別指導を重視しながら,同時にチーム医療としての秩序と連携を保つことが今後の課題である。 表2 研修生の平均的な研修スケジュールの例 4.研修内容  表2に研修生の平均的な研修スケジュールを示す。研修生の1週間は所属する教官グループによって内容や時間配分に差がみられるが,主な項目を挙げて現状を述べることにする。 1)施術所における鍼灸施術研修  鍼灸臨床系教官の診療を見学し施術の補助をする。1年次は主な運動器の愁訴について問診と診察により情報収集が適確にでき,鍼灸施術の適否を判断して治療計画を立てられ,施術の補助ができるようになることを目標とする。2年次以降も研修を継続する場合は,運動器系以外の愁訴についてもほぼ独力で問診・診察.適否の判断・治療計画・施術ができるようになることを目標とする。ここでの研修が鍼灸師としてのトレーニングの主体をなしているが,研修生によって成長度合の差が著しい。研修生にどこまで施術補助を任せるかという基準を設定し,妥当性のある評価法(後述)によって段階的に研修を進める必要性を感じている。 2)診察室における診療見学  臨床医学系教官(医師)の診療を見学し,適法範囲内で看護婦の補助を行う。ここで現代医療の診察.検査.診断・治療の実際を見修し,保険診療や診療記録など医療機関の常識を体得する。ここでは鍼灸臨床で遭遇しやすい整形外科系の患者の診察に研修生の興味が偏る傾向がある。 3)施術周辺業務  施術所内のベッドや施術器具の整備,滅菌操作,受付窓口の補助などを行う。ここで鍼灸臨床に必要な消毒,滅菌,環境整備,治療機器類のメンテナンス,受付サービスなどの知識と技術を身に付ける。これらの作業は研修の一環として行わせているものの,施術所の運営におけるマンパワーとして彼らに負うところが大きい。 4)資料検索および研究補助  本学附属図書館および筑波大学医学図書館を利用して関連文献の検索を行い,資料を収集する。ここで自分が診た患者の愁訴や疾患について理解を深め,鍼灸の適応と限界や治療計画について考える。また教官の研究活動を補佐しながら鍼灸に関する研究を推進する。 5)カンファレンス  症例を紹介し,病態や治療法について討論する。記録したデータをまとめて人に伝える技法を学ぶ。また文献などを参考にして自分の考えを表現する方法を修得する。現在のところ患者情報をまとめて伝えられることが暗黙の合格ラインとなっている。しかし鍼灸カルテがPOS12を導入しているにもかかわらず,適切な問題リストの作成,ケアプラン,アセスメントを行えるような訓練は今のところなされていない。カンファレンスのときだけ体裁の整った資料を作成させるのではなく,普段記載するカルテにおいて系統的な問題解決作業を行う習慣をつけさせる必要性を感じている。 6)臨床講義,公開講座,勉強会への参加  最初の3ケ月を目度として,夕方以降に鍼灸臨床系教官による臨床講義を設ける。またそれ以降の公開講座や教官の開く勉強会に参加させる。昼間の臨床からだけでなく,聴講13)や文献抄読によって新しい知識を吸収する。日常の研修業務を終えた後の夜の座学は研修生にとっては体力的にきつく,居眠りも多い。 5.統計  平成9年度までの5年間の研修生の統計を表3に示す。5年間で計43名を受け入れた。受け入れ時の年齢は21歳から47歳と幅があるが,ほとんどの研修生がはり師・きゅう師免許国家試験合格直後または免許取得後間もない者であった。平均年齢が29.9歳と高い傾向にあるのは,他の学校を卒業したり就職したりした後で鍼灸師を志望して養成学校に入学した者が多いためである。視覚障害者は全体の28%であり,点字使用者は全体の9%であった。また本学鍼灸学科の卒業生は全体の14%であった。専門学校出身者が多く鍼灸大学または短期大学出身者が少ない理由は,大学(明治鍼灸大学のみ)および短期大学(本学以外では関西鍼灸短期大学のみ)には卒業生が研修生として現代医療を見修できる環境がある14,15)のに対し,専門学校および盲学校にはない場合が多いためであると思われる。研修終了後の進路は病院勤務(29%)と開業(26%)を合わせると全体の半数以上を占めている。このことから,当診療所の研修においてはこれら2つの進路を想定した指導が重要であると考えている。なお鍼灸学科研究生(本学卒業生)15名も施術研修に参加した。 表3 5年間の統計(平成10年3月現在) 6.研修生の評価  前述した研修の到達目標が達成されているかどうかについて,日常の研修態度,カンファレンス,学会活動(後述)などから教官ごとに漠然と評価しているのが現状である。我々は平成8年度に研修生の評価用チェックリスト(表4)を作成し,「医療関係者としての自覚」5項目,「研修鍼灸師としての自覚」7項目,「臨床技術の達成度」8項目,計20項目を設定し,研修生に自己評価させた。また同じリストを用いて指導教官に研修生を評価してもらった。その結果は,研修生が○で教官が×とした項目数が8,研修生が×で教官が○とした項目数が1,両者が一致した項目数は7(いずれも平均)であった。つまり自己評価が甘く,教官の評価は辛く,両者は35%しか一致していなかった。どちらの評価が正しいかは別として,研修生と指導教官との間で認識に大きなずれがあることを示している。また評価する教官によってもばらつきがある可能性がある。前述したように,ある研修生に施術をどこまで任せるかという判断が施術所内では必要であるため,絶対的な評価はありえないにしても少なくとも施設内において妥当と思われる評価法を模索する必要がある。例えばOSCE`の導入'7などは今後の展開として検討する価値があるかもしれない。 表4研修生のチェックリスト 医療従事者としての自覚 1.服装・身だしなみが問題なくできている。 2.社会の常識をわきまえた言動ができる。 3.患者の立場になって考えることができる。 4.医療に携わる者としての患者対応ができる。 5.保険診療機関のシステムを理解している。 研修鍼灸師としての自覚 6.受け身でなく積極的に研修システムを利用しようとしている。 7.公私のけじめがついている。 8.診療業務に支障をきたさないよう配慮している。 9.他の部署の専門性を認め、尊重している。 10.協調を重んじ、他者の負担を斟酌している。 11.指示の意味を理解し、適切な行動がとれる。 12.研修によって更なる知職と技術を修得しようと努力している。 臨床技術の達成度 13.患者の問診をして内容をまとめられる。 14.必要な診察項目を選び、正しく行うことができる。 15.患者の所えと問題点を把握して、それを簡潔に指導者に伝達できる。 16.施術者の補佐が適切に行える。 17.自分で安全な施術ができる。 18.突発的な状況に対し、落ち着いて適切な処置ができる。 19.時間や患者の混み具合を考慮し、効率良い問診・診察・施術ができる。 20.患者からの評価が高く、診療所の運営に貢献している。 7.学会活動  5年間で,研修生が筆頭著者である論文が5編,学会発表は9演題であり,それらの内容のほとんどは症例報告であった。この数は研修生の総数の割には少ないと我々は評価している。研修生が学会活動に積極的に参加しない背景には,臨床家に研究活動は必要ないという考えがあると思われる。しかし学会報告を行なった研修生の中にはその意義を見出した者もいるようである。研修目標をある程度達成した研修生にとって,専門性を深めるために学会報告を行うことは研修の一環としても有効であると思われる。故にその意義を認識できるような指導も必要であろう。 8.視覚障害をもつ研修生の指導  視覚障害をもつ研修生の指導については試行錯誤が続いている。晴眼者のように教官の施術の見学と補助を行うだけで臨床能力を向上させることは困難である。特に点字使用者はカルテ記載に際してもハンディを負っているのが実情である。今までに行ってきた試みは次のようなものである。 1)視覚障害に理解の浅い研修生を対象として年度始めにオリエンテーションを行い,眼疾の知識,手引きの方法,点字資料の作成法などについて説明した。 2)施術所内に拡大読書器を設置し,弱視の研修生はこれを用いてカルテや資料を読み,またカルテ記載を行わせた。 3)鍼灸学科が開発した電子カルテシステムの端末を施術ブースに設置し,晴眼者はディスプレイから,視覚障害者は音声で患者情報が得られるようにした。 4)点字を使用する研修生は,診療中に点字でメモを取らせ,ある程度の猶予を与えてパソコンでプリントアウトした墨字による記録をカルテに貼付させた。 5)施術所内周辺業務は点字使用者にも危険を伴わない限り行わせたが,鍼の滅菌準備や予約表の扱いなど不可能な作業もある。そこでテキストファイルの点字変換や校正,鍼の在庫管理暇,点字シールの作成などを担当させ,晴眼の研修生との仕事量のバランスに配慮した。 6)教官グループによっては臨床業務終了後に研修生を模擬患者として施術の個別指導を行なった。  いずれの試みも視覚障害を十分に補償しているとはいえない。晴眼者と視覚障害者が患者情報を共有するという点では,電子カルテは画期的な視覚障害補償システムである。しかしデータをリアルタイムで入力するマンパワーの補償がなければ現実の診療業務に用いることができない。上述したいずれの試みも,結局は人的・時間的・経済的・精神的なサポートが必要である。究極的には手取り足取りの指導の時間を増やすことであると実感しているが,診療所運営の立場からは収入減少につながるほど診療の効率を落とすわけにもゆかず,ジレンマとなっている。今後は教官グループ内での視覚障害者の割合を平均化して,グループ単位での相互補償を行うことを考えている。  現在のところ研修を修了した点字使用者は2名であり,1名は盲学校勤務,もう1名は鍼灸院を開業している。後者の研修生は研修2年次に開業し,開業の傍ら研修を1年間継続して修了した。また既に就職した本学鍼灸学科卒業生2名が,職場から派遣されて週1日の研修を1年間継続した。これらは週5日出席という原則からすると例外である。しかしこの経験から,視覚障害をもつ初心者鍼灸師が職業的に自立するための助走期間を,卒後研修という形でサポートするという役割を認識した。彼らの意見をフィードバックさせ,視覚障害をもつ鍼灸師の卒後研修の必要性と,その制度的・経済的なバックアップの必要性を主張してゆきたい。 9.おわりに  この5年間,当診療所において鍼灸師の臨床研修システムは,原則は変えないものの様々なアイデアが試されてきた。その過程でいつも心に引っ掛かっているのは,我々の掲げた研修目標の達成が必ずしも鍼灸師としての成功を保証するものではないということである。開業志向者と病院勤務志向者では修得すべき事柄や興味の対象が大きく違うことから,将来希望する就業形態に配慮した指導も必要であろう。また卒業後に更に1~2年間の無収入期間を作って研修を行う鍼灸師に対して,アルバイトができるような関連施設の確保も考えなければならない。  研修目標については,当面は共通言語としての現代医学的観点と安全な施術のノウハウをマスターさせることに力点が置かれることになろう。しかし現代医療が整備された我が国において,医療消費者が敢えて鍼灸治療を受けに訪れる意味も今後は考察させるべきである。それにはまず現代医学の補完的役割19,すなわちcomplementary medicineとしての鍼灸の在り方を問う必要がある。医師による医学的診断という立場だけでなく,POSや看護診断20の手法を導入したカルテ記載やカンファレンスを繰り返すことによって,鍼灸医学的観点というものを追求する姿勢を養いたい。また日本の伝統医学として存続してきた鍼灸の文化的背景21)についても考える時間を与えたい。このことは特に地域に根差して治療活動を行う鍼灸師にとっては重要な意味をもつことになるであろう。 鍼灸について現代医学的な視点から考えられるようにという現在の研修目標は医療従事者として当然であり最低限の目標である。21世紀の鍼灸師として社会に存在意義を認められるためには,周囲の医療環境を踏まえた上で鍼灸の役割を認識し,その役割において専門`性を発揮できるような鍼灸師の素地を作ることを真の到達目標とすべきであろう。今後はこのような視点も含めて,研修生とともに卒後研修の在り方を模索してゆきたい。 謝辞  本稿を執筆するにあたり,資料を提供して下さった明治鍼灸大学の江川 雅人助手,関西鍼灸短期大学の坂口 俊二助手,ならびに資料収集に御協力いただいた本学の根本 由紀子看護婦,和田 恒彦実習補助員,村上 名穂美研修生の皆様に深謝いたします。 脚注および参考資料 1 医道の日本社:「鍼灸科学生の意識調査」,医道の日本,591,pp138-143(1993). 2 中村 辰三,横関 貞克,小田原 良誠,田中 博ほか:「専門学校の卒後研修の方向性をさぐる」,医道の日本,601,pp101-112(1994). 3 小川 卓良:「現代鍼灸業態アンケート集計結果」,医道の日本,600,pp.616-481(1994). 4 原 敬二郎:「ハリ治療中に発生した気胸の一例」,日本東洋医学雑誌,36(2),pp131-132(1985). 5 湯澤 政行,原 暢助,小林 裕ほか:「鍼による尿管異物結石の1例」,泌尿紀要,37,pp1323-1327(1991). 6 赤坂 昭二:「鍼施術後の血気胸事件」,別冊ジュリスト「医療過誤判例百選」,102,pp236-237(1989),有斐閣. 7 芹澤 勝助:「東洋医学,技術振興についての-私案」,理療の科学,8(1),pp3-6(1980). 8 高岡 裕:「明治鍼灸大学附属病院研修鍼灸師制度の紹介」,医道の日本,585,pp174-176(1993). 9 坂口 俊二(関西鍼灸大学):(私信),(1997). 10 事務手続上は6ヶ月毎に更新を申請する必要がある.(「筑波技術短期大学附属診療所受け入れ規定」,平成9年3月31日改正) 11 鍼灸学科学生の臨床実習を補助する短期雇用者(鍼灸師). 12 Problem Oricnted Systemの略.Weedが1968年に提唱し,Hurstが米国に普及させ,日野原が日本に紹介した患者のもつ医療上の問題点に焦点を合わせて情報収集,問題のリストアップ,解決の計画,計画の実施,SOAP方式の経過記録,監査,修正を繰り返す科学的診療記録の方法であり,日本では看護部門で最も盛んに導入されている.(日野原 重明:「POS-医療と医学教育の革新のための新しいシステムー」,第1版,pp7-14(1973),医学書院.) 13 研修生が学生のための講義を聴講することは認められていない. 14 平成7年度卒後研修生ローテーション(明治鍼灸大学),(1995). 15 関西鍼灸短期大学付属診療所診療委員会:「関西鍼灸短期大学付属診療所平成8年度活動報告」,関西鍼灸短期大学年報,12,pp46-51(1996). 16 Objective Structured Clinical Examinationの略.1975年にHarden(「Assessment of Clinical Competence using Objective Stmctured Examination」,Br.Med. J.,1,pp447‐451)によって発表されて以来,臨床能力評価法として急速に普及しつつある.いくつかのStationで問診や診察手技などの課題が出され,受験者はStationを順に回って評価を受ける.(伴 信太郎:「客観的臨床能力試験-臨床能力の新しい評価法-」,医学教育,26(3),pp157-163(1995).) 17 伴 信太郎,津田 司,田坂 佳千ほか:「卒後臨床教育における客観的臨床能力試験(OSCE)の経験」,JIM,6(1),pp68-72(1996). 18 ディスポーザブル鍼灸針の箱には,鍼の太さや長さなどの情報が点字で表示してある. 19 山下 仁,光藤 英彦:「灸療による慢性健康障害をもつ病人のケア(第2報)-灸療を活用した東洋医学的ケアシステムの役割と課題-,全日本鍼灸学会雑誌,41(4),pp359-365(1991). 20 患者の問題状況を示す症状,徴候,関連因子などを明確にして質の高いケアを提供するための手法.例えば医学的診断では単に「インシュリン非依存性糖尿病」であっても,看護診断では「教育を受ける機会が少なかったことに関連した知識不足(により食事療法が守られない)」などとして,患者ケアの方向`性が明確に示される.(松岡 緑,山川 裕子:「看護診断とPOS」,看護教育,36(12),pp1032-1037(1995).) 21 Lock, M. M.(中川 米造訳):「都市文化と東洋医学」,初版,pp271-284(1990),恩文閣出版.