光学干渉フィルタ特性の研究 筑波技術短期大学電子情報学科電子工学専攻 徳永 大輔*・渡辺 隆 1.研究概要  光学センサーに使用される光学干渉フィルタは特定の波長で光の強度を正確に測定するのに適しており、地球大気のリモートセンシングや環境測定など広い範囲で利用される。  本研究では紫外分光装置を使い、干渉フイルタヘの入射角度を変えたときの干渉フィルタ透過率の分光特性を調べた。また、これを考察するために、干渉フィルタのモデルとして単純化した1キャビティモデルを使用して透過率を計算し、その入射光角度依存性を調べた。その結果、この1キャビティモデルによる計算は実験結果をよく説明することが分かった。 2.実験 (1)干渉フィルタ  硝子板または石英板上に半透明金属膜、透明誘電体膜、半透明金属膜の3層構造を形成し、その上へ保護のために硝子、石英または、色硝子フィルタを接着剤で張り合わせたものが干渉フィルタである(図1)。この金属膜の光学的間隔が、特定の波長の1/2またはその整数倍のときにその波長の光を多く透過し、ほかの波長の光はほとんど透過しない性質を持っている。実際の干渉フィルタは透過特性を良くするため図lを2層または3層重ね合わせて作成されている事が多い。今回の実験に用いた干渉フィルタは最大透過波長が300nm付近の日本真空光学製の紫外用フィルタである。 (2)波長特性測定用分光装置 図2実験システム 3.実験結果と考察  図2の実験システムを用いて測定された干渉フィルタの波長特性を図3に示した。 (1)干渉フィルタへの光の入射角度を大きくしていくと、透過率最大となる波長は短波長側に移動する。 (2)入射角度が大きくなるに従い最大透過率の大きさは小さくなる。  この実験結果を説明するため図4のような石英ガラスのみの1キャビティモデルについて考察する。 図3 測定した干渉フィルタ透過率の波長特製 図4  このモデルにより入射光が干渉フィルタを透過した時の光の強度を光の位相差による干渉を用いて計算する。図4において、石英及び空気の屈折率をそれぞれn1、n2かフィルタの光の入射角度θ1、石英の厚さをdなどにすると、屈折の法則より 【数式1】 反射光L1とL2の光路差Dは 【数式2】 これから 【数式3】 【数式4】 (2)の式においてn1=1(空気)、n2=1.49(石英)とし、 θ1=0の時にλ1が 実験値の平均値294.8nmになるようにd値を決めた。このようにして、θ1を0°から50°まで変化させた時の (2)式による透過率ピーク波長の変化を計算したものが表1及び図5である。また比較のための実験値も表1及ぴ図5に示す。これより(2)式は実験結果を定性的に説明することがわかった。  常識的に考えると、干渉フィルタに入る光の入射角度が大きくなると光のパスが相対的に長くなるので、透過する波長は波長が長い方にずれるように思われる。しかし、実験結果とモデル計算は、透過率最大となる波長は短波長側に移動することを示している。 4.結論 (1)干渉フィルタへ入射する光の入射角度を変化させると、透過率が最大になる波長は短波長側に移動する。 (2)干渉フィルタの1キャビティモデルでは、透過率が最大となる波長は、入射角度が増加すると、短波長側に移動し、実験結果を定性的に説明することが分かった。 (3)また、実験からは入射角度が大きくなると、最大透過率が小さくなった。これは一般に光の入射角度が大きくなると表面反射率も大きくなるので、透過率は逆に小さくなると考えられる。 (4)フィルタへの入射角度を変えることより、透過する波長が変わるので、1枚のフィルタだけでも複数の波長帯で分光測定が可能である。これを応用したものにテイルテイングフォトメータがある。 なお、本報告は徳永 大輔が1996年度3年次「特別研究」の中で行なったものである。 表1 透過率が最大となる波長の実験値と理論値の比較 図5 干渉フィルタ最大透過波長の入射光角度依存性