インターネットを介した連弾入力方式リアルタイム字幕提示システム 小林 正幸 石原 保志 西川 俊* 高橋 秀知** 聴覚部教育方法開発センター *聴覚部客員研究員 **聴覚部電子情報学科情報工学専攻 要旨:オペレータ2名によるキーボードの入力作業と誤字、脱字の修正作業を平行して行うことで、より正確な字幕をリアルタイムで提示可能なシステムと、電子会議ソフトウェア「Net Meeting」を利用した、遠隔地でインターネットを介してキーボードの連弾入力が可能なWindows対応のリアルタイム字幕提示システムを開発したので、このシステムの機能、特徴について報告する。 キーワード:聴覚障害、リアルタイム、字幕、連弾入力、インターネット 1.はじめに  我々は、高速で文字入力が可能なMicrosoft WindowsNT Ver.4.0の環境下で動作するDOS/Vパソコン対応の日本語高速入力システム(ステノワードPCシステム)を2セット用意し、1セット目で発話の内容をまずひらがなで入力、表示し、その後かな・漢字変換を行い、漢字かな混じり文を提示する。2セット目で、1セット目で入力した確定文章の誤字、脱字の修正を行うことで、より正確な字幕をリアルタイムで提示可能なキーボードの連弾入力方式によるリアルタイム字幕提示システム(連弾入力方式RSVシステム)、Microsoft Windows95の環境下で動作するMicrosoft電子会議ソフトウェア「Net Meeting」とMicrosoft VisualBasic Ver.4.0で作成したインターネットデータ電送ソフトにより、インターネットを介して遠隔地でキーボードの入力作業が可能な遠隔地連弾入力方式RSVシステムを開発したので、このシステムの機能、特徴について報告する。 2.ハードウェア構成  本システムは文字入力ブロック、音声出力ブロック、字幕提示ブロックの3ブロックで構成されている。図1にシステムの構成を示す。 2.1文字入力ブロック (1)文字入力用ステノワードPCシステム ①パソコン ・FMV-DESKPOWER Tp20(富士通) ・CPU Pentium200Mhz ②ステノワードPCキーボード ・SW-1PC(スピードワープロ研究所) ③キーボード切替器 ・EXA-ATM(エルコム) (2)文字修正用ステノワードPCシステム ①パソコン ・FMV-6200D7(富士通) ・CPU Pentium200Mhz ②ステノワードPCキーボード ・SW-1PC(スピードワープロ研究所) ③キーボード切替器 ・EXA-ATM(エルコム) (3)校正器 ・RSVRPI(スピードワープロ研究所) 2.2音声出力ブロック ①パソコン ・Personal Computer,350(IBM) ・CPU MMXPentium200Mhz ②サウンドポード ・SOUND BLASTER 16 PnP(クリエイテイブメディア) 2.3字幕提示ブロック ①パソコン ・PC-9821Ap2(NEC) ・CPU Overdrive Processor Pentium83Mhz ②サウンドポード ・SOUND BLASTER AWE32 PnP(クリエイテイブメディア) ③ビデオキャプチャポード ・PC-9821AE08(NEC) ④字幕挿入装置 ・VIP-4100R(朋栄) 3.ソフトウェア構成  本システムのソフトウェア構成は次の通りである。 3.1文字入力ブロック (1)文字入力用ステノワードPCシステム ①OS Microsoft WindowsNT Ver.4.0 ②開発ソフトウェア Microsoft Visual C++ Ver.4.2 ③日本語変換システム かな・漢字変換精度が向上したジャストシステム 「ATOK11」 (2)文字修正用ステノワードPCシステム  文字入力用ステノワードPCシステムと同様 3.2音声出力ブロック (1)OS Microsoft Windows95 (2)開発ソフトウェア Microsoft Visual Basic Ver. 4.0 (3)利用ソフトウェア ①Windowsネットワーク通信VBX Synergy Technologies 「AppLink」 ②Microsoft NetMeeting Ver.2.1 3.3字幕提示ブロック 音声出力ブロックと同様 4.システムの動作  システムの動作は次の通りである。 (1)話者の音声は、字幕提示ブロックのパソコンで稼働している電子会議ソフトウェア「Net Meeting」により、マイク、サウンドポード、インターネットを介して、遠隔地に設置してある音声出力ブロックのパソコンへ送出される。 (2)(1)の音声は、音声出力ブロックのパソコンで稼働しているソフトウェア「Net Meeting」により、サウンドポード、スピーカを介して、遠隔地にいるオペレータ2名に伝えられる。 (3)文字入力担当オペレータは(2)の音声を聞きながら高速で文字が入力できる文字入力用ステノワードPCキーボードにリアルタイムで入力する。 (4)入力された文字は校正器を通り文字入力用パソコンと文字修正用パソコンのキーボード入力端子に送出され、それぞれのパソコンでかな・漢字変換が行われる。 (5)文字修正用パソコンでかな・漢字変換された文章を文字修正担当オペレータが確認し、誤字、脱字がない場合は、RS-232C経由で漢字コードとして、音声出力ブロックのパソコンへ送出される。  文字修正用パソコンでかな・漢字変換された文章に誤字、脱字がある場合には、本システムの特徴の一つである校正器が、修正作業中に(3)で入力された文章をバッファメモリに蓄積し、文章修正後、文字入力担当オペレータが入力した文字入力速度と無関係に、バッファメモリに蓄積された文章を字幕が読みやすい一定した送信速度で文字修正用パソコンへ送出する。文字修正用パソコンはかな・漢字変換を行い、RS-232C経由で漢字コードとして、音声出力ブロックのパソコンへ送出される。 (6)音声出力ブロックのパソコンは、(5)の漢字コードを受信し、漢字コードをVisual Basicで作成したRS-232CからWindowsネットワーク通信に変換するソフトウェアにより、インターネットを介して、字幕提示ブロックのパソコンへ送出する。 (7)字幕提示ブロックのパソコンは、インターネットを介した(6)の漢字コードを受信し、漢字コードをVisual Basicで作成したWindowsネットワーク通信からRS-232Cに変換するソフトウェアにより、RS-232Cを介して、字幕提示ブロックの字幕挿入装置へ送出する。 (8)字幕挿入装置は、(7)の漢字コードを字幕としてビデオカメラで撮影した映像にスーパーインポーズし、字幕付モニタへ提示する。 (9)(8)の字幕付モニタへ提示された字幕付映像は、システムが正常に稼働しているかどうかを確認するため、字幕提示ブロックのパソコンで動作している電子会議ソフトウェア「Net Meeting」により、ビデオキャプチャボード、インターネットを介して、音声出力ブロックのパソコンへ送出される。 (10)(9)の字幕付映像は、音声出力ブロックのパソコンで稼働しているソフトウェア「Net Meeting」により、パソコンのCRT画面へ提示される。 (11)遠隔地で入力、修正作業しているオペレータは、(9)の字幕付映像により、システムが正常に稼働していることを確認する。 図1 システムの構成 5.おわりに  今後の課題は次の通りである。 (1)インターネットを介した連弾入力方式リアルタイム字幕提示システムを様々な場面で活用し、問題点、改良点を明確にする。 (2)音声出力ブロックの機能を、文字入力ブロックの文字修正用パソコンへ組み込む。 (3)字幕提示ブロックの字幕挿入装置の機能を、字幕提示ブロックのパソコンへ組み込む。 参考文献 [1]小林 正幸、西川 俊、石原 保志、高橋 秀知:“聴覚障害学生のためのリアルタイム字幕提示システム(2)”、信学技報、ET93-107,93,458,pp9-14,(Jan,1994) [2]西川 俊、高橋 秀知、小林 正幸、石原 保志、柴田 邦博:“聴覚障害者のためのリアルタイム字幕表示システム”、信学論D-Ⅱ、J78-D-Ⅱ,11,pp、1589-1597,(Nov.,1995) [3]小林 正幸、西川 俊、石原 保志、高橋 秀知:“聴覚障害者のためのキーボードの連弾入力方式によるリアルタイム字幕表示システム,'、映像情報メディア学会誌、VOL51,No.6,pp886-895,(Jun.,1997) [4]DavidAllen:“VisualBasicネットワークゲームプログラミング”,1997,ソフトバンク