陽的なCFD手法による任意形状まわりの流体計算 丹野 格 筑波技術大学 産業技術学部 産業情報学科 キーワード:非圧縮性流体計算, 擬似圧縮性法,EDAC 成果の概要 非圧縮性流体の計算手法として,並列計算が容易な完全に陽的な手法に関する研究に注目が集まっている。最近のコンピュータのほとんどが,マルチコアCPUやGPUに代表される並列型であるため,並列計算に向く計算手法に対する期待が集まるのは当然である。現在広く用いられている非圧縮性ナビエ・ストークス方程式をベースにした計算手法では,計算量が多く並列化が困難なポアソン方程式を解く必要がある。一方,陽的な手法として,内部反復のない擬似圧縮性法(ACM)[1],Kinetically reduced local Navier-Stokes equations (KRLNS)[2],そして,Entropicaly damped form of artificial compressibility(EDAC)[3]などの方法が近年相次いで提案されている。しかしこれらの多くは,得られた圧力場に振動(チェッカーボード不安定性)を持つことがあり,例えばOhwadaとAsinari [1]やDeloremeら[4]は圧力振動を抑える項やフィルターを追加している。EDAC方程式には,元々圧力振動を抑制する項が含まれており,特に複雑なフィルター等を使わずに圧力振動の抑制が期待できる。本研究では円柱まわり,角柱まわりの流れ場の計算をEDACにより行った。角柱まわりの計算結果の例を図1,表1に示す。これらから解るように,EDACを用いて1)圧力振動を抑えつつ計算可能(図1),2)抵抗係数(CD),ストローハル数(St)を良好に計算(表1),できることを確認した。また,CPU1コア(Intel Core i7-6700(3.40GHz))で計算したときと比較して,GPU(NVIDIA GTX TITAN BALCK)を用いた場合おおよそ31.7倍高速であり,GPUを用いた並列計算で大幅な高速化が可能であることもあわせて確認した。格子幅Δと擬似圧縮係数βはEDAC,ACM共にそれぞれΔ=0.02Dとβ=10000とした。ここにDは角柱1辺の長さである。EDACで用いた比熱比γとプラントル数Prの関係はγ/Pr = 1000とした。本研究の成果の一部は,第31回数値流体力学シンポジウム(京都)にて口頭発表した。 図1 上:EDAC 下:ACM 表1 抵抗係数(CD)とストローハル数(St) 参照文献 [1] T. Ohwada and P. Asinari, Journal of Computational Physics, Volume 229, 5, PP. 1698 – 1723, 2010 [2] S. Borok, et. al., Phys. Rev. E 76, 066704, 2007 [3] J. Clausen, Phys. Rev. E 87, 013309, 2013 [4] T. Delorme et. al., Computers & Fluids, Volume 150, 3, PP. 84 – 94, 2017 [5] I. Tanno et. al., JSME International Journal, Series B: Fluids and Thermal Engineering 49(4), pp. 1141 – 1148, 2006