X線造影検査(VF)で使用される造影剤が検査試料粘度に及ぼす影響 下笠賢二 筑波技術大学 産業技術学部 産業情報学科 キーワード:X線造影検査,造影剤,増粘剤,嚥下障害,粘度 1.はじめに 現在,高齢者を中心に食品を飲み込む機能(嚥下機能)が低下した嚥下困難者や嚥下障害者が増加している。嚥下障害者は食品にとろみを付加した方が誤嚥を起こしにくいことが介護の世界では広く知られており,誤嚥防止のために増粘剤により粘度を調製した介護食が利用されている。嚥下障害者の嚥下機能評価手法としてX線造影によるVF検査が一般的に用いられる。試料を撮影するためには対象の試料に造影剤を加える必要があり,造影剤と増粘剤を混合した場合の粘度について調べた報告はほとんどない。検査食の粘度を普段の食事の粘度と同等とすることではじめて検査結果の有効な活用が期待できる。そこで,本研究では造影剤が検査試料粘度に及ぼす影響に関する検討を行った。 2.方法 造影剤は非イオン系有機ヨード化合物イオパミドール(オイパロミン 300,コニカミノルタ),硫酸バリウム(バリトップP,カイゲンファーマ),増粘剤は市販のキサンタンガム系増粘剤(ツルリンコ クイックリー,クリニコ)を使用し,粘性特性は回転粘度計(HAAKE,RS600)により0~1000s-1のずり速度範囲において測定を行い,温度は20℃恒温状態とした。造影剤の濃度はイオパミドール50w/v%,バリウム30w/v%とした。この2種類の造影剤を溶媒,および分散媒とし,増粘剤濃度は1~3w%とした。 3.結果と考察 イオパミドールを溶媒,硫酸バリウムを分散媒として増粘剤と混合した場合の粘性特性をFig.1 ,Fig.2に示す。造影剤は水の数倍程度の低粘度であるが,水を溶媒とした場合に対してイオパミドールで1.5~3.2倍,バリウム1.2~3.2倍程度の顕著な増粘効果が見られた。その粘性特性を以下に示すBird-Carreauモデルで近似した結果と良く一致した。 数式 Fig. 1 Viscous property for iopamidol as a solvent Fig. 2 Viscous property for barium as a solvent イオパミドール水溶液とバリウム分散液の濃度の定義は異なるが,造影剤及び水を溶媒とした時の相対粘度として扱うことにより,増粘剤に対する増粘効果をずり応力をベースとしたBird-Carreauモデルから増粘剤濃度の予測が可能であることが示唆された。