視覚障害あはき師向け研修会の充実を目指して ─ 就労視覚障害あはき師の研修ニーズを探る ─ 成島朋美 筑波技術大学 保健科学部附属東西医学統合医療センター キーワード:オンラインアンケート,視覚障害,研修ニーズ 【背景および目的】 近年,あん摩・マッサージ・指圧師,はり師,きゅう師 (以下,あはき師)を取り巻く環境は大きく変化しており,就労あはき師の多くは休日を利用して研修会に参加し,技術や知識の向上を図っている。一方,視覚障害を有するあはき師にとって一般的な研修は視覚障害保障が十分ではなく,有 益な研修とは言いがたい。 視覚障害あはき師の就労の場として,盲学校理療科が挙げられる。近藤 [1]の報告によると,理療科教員の学外の臨床研修を認める学校は 11.1%と少なく,理療科教員が臨床技術を研鑽するためには,休日等に開催される研修会などを利用するしかないとある。実際に東西医学統合医療センターでは臨床技術向上等の目的で現役の理療科教員が長期研修を希望して入所し,本学教員の個別指導を受けている例がみられる(H29,H30年度各 1名)が,現職教員が長期研修を取得するには様々な条件を満たさなければならず,研修の機会は限られてしまう。もうひとつの就労の場としてヘルスキーパー(企業に雇用され社員に対して治療を行う職業)があり,日本ヘルスキーパー協会の会員については月 1回研修会が行われているようだが,開催地は東京を主体に各地をめぐっており,居住地によっては研修の機会は極端に限られる。 平成 30年度の第 26回はり師国家試験の結果によると視覚障害者の割合は,はり師 4.7%,きゅう師 4.9%,あまし師(あん摩・マッサージ・指圧師の略)19.1%という状況があり,少人数である視覚障害あはき師の研修ニーズを探るにはアンケート等で直接的に行うことが効率的と思われた。まず,視覚障害あはき師のオンラインアンケートフォームへの回答の難易度とオンラインアンケートによる研修ニーズの抽出が可能であるかを検討することとした。 【方法】 Googleフォームを利用し,以下の質問項目を設けた。 1.メールアドレス,性別,年代 2.視力,使用文字 3.卒後年数,居住地域(都道府県) 4.実技研修の必要性の有無 5.その理由 6.今年度実技研修への参加回数 7.参加しなかった理由 8.実技研修の費用負担について 9.参加した実技内容について 10.参加した実技研修の満足した部分 11.参加した実技研修の不足を感じた部分 12.今後受けたい実技研修について 13.1回の実技研修として適切な時間 14.実技研修の開催日として適切な日程 15.実技研修時の適切な人数 16.適切な実技研修の費用 対象はアンケートの趣旨説明に同意の得られた本学大学院生 2名とした。オンラインアンケートの内容と目的について説明し,各自の方法でアンケートに回答した後,アンケートの回答のしやすさと質問項目が研修ニーズの探るのに適切であるか 3段階で評価を行った。 【結果】 結果は以下の通りであった。 1.アンケートの回答のしやすさについて 1-1回答は何で行いましたか?(理由) ●WindowsPC 1名(自由記述はキーボードがある PCの方が楽に回答できそうなため) ●iPhone 1名(画面を自分の視野に合わせ拡大縮小できる・画面の輝度を目の状態に合わせ調節できる・白黒反転が可能) 1-2補助なしで回答可能でしたか? ●可能 2名  1-3どのぐらい時間がかかりましたか? ●15分 ●30分 各1名 1-4どのような部分が困難でしたか? ●音声操作スキルが十分ではないので目で確認しながら行ったが,文字認識が難しい場合があった。 ●選択肢を一つだけ回答する設問は自分が選んだものが選べているか確認が難しかった。複数回答可能な選択肢はスペースキーを押せばチェックできるが,1つだけ選ぶものではカーソルキーで選択肢を選んでいく。この時に音声で希望の選択肢が選べたかの確認が難しい。 1-5音声を利用して回答しましたか? ●はい 1名 ●いいえ 1名 1-6音声はきちんと読み上げましたか? ●メールは読みが少し怪しかった 1-7選択式と自由記述はどちらが回答しやすかったですか? ●チェックボックスにチェックする形式の選択肢が一番答えやすかった。次に自由記述式,難しかったのは選択肢 を一つだけ選ぶもの。 ●選択式 1-8今後この形式のオンラインアンケートに回答する意思はありますか? ●ある 2名 2.アンケート内容について 実技研修アンケートの内容として各質問項目は適切だと思いましたか?「思う」を3,「どちらともいえない」を2,「思わない」を1として評価してください。●年代と性別のみ「どちらともいえない」と評価したものが 1名みられた。その他の項目は 2名とも「思う」と評価した。 【考察】 オンラインアンケートの回答は 2名とも補助なしで 30分以内に回答できていた。パソコン,もしくはスマートフォンを日常的に活用しているものは今回のオンラインアンケートの回答は可能であると思われた。 質問項目に選択式(1択,複数回答形式),自由記述形式を設けたところ,回答に使用した媒体で差はあるものの,1択のみを選択する形式が音声回答者には困難な部分であることがわかった。今後,アンケート作成時は音声回答者,墨字回答者ともに回答しやすい選択式(複数回答)が望ましいと考えられた。アンケートの質問項目について,今回の評価では研修ニーズを抽出する目的としておおむね妥当と思われた。 Googleフォームを活用すると,回答の集計が自動的に行われるため,一定数以上の回答が集まる場合かなり利便性が高いものとなる。しかしながら,回答者のメールアドレスが必要であること,Androidやガラパゴス・ケータイからの検討が今回行えていない点などから導入に際しては,より詳細な検討が必要と考えられた。 【結語】 今回,Googleフォームを活用したオンラインアンケートの回答のしやすさと質問項目が研修ニーズの探るのに適切であるかの評価を行った。2名の協力者による評価の結果,アンケートは日常的にパソコンやスマートフォンを使用しているものは回答可能であり,選択式(複数回答)が最も回答しやすいことがわかった。しかしながら,オンラインアンケートを実施するにはより詳細な検討が必要である。 参照文献 [1]近藤宏.理療科教員の鍼灸マッサージの臨床外来および臨床研修に関する調査;テクノレポート 23(2):2326,2016.