視覚障害学生の就職に関する価値分析と就職支援プログラムの開発 堀江則之 筑波技術大学 保健科学部 情報システム学科 キーワード:企業選択,価値観,価値分析,就職支援 1.はじめに 平成 30年 4月1日から,障害者の法定雇用率が引き上げられ(民間企業 2.2%,国,地方公共団体 2.5%,都道府県等の教育委員会 2.4%へ),障害者の雇用を取り巻く環境は,雇用促進へと向かっている。 その一方で,視覚障害学生の内定までの道のりは険しい現状がある。 そこで,就職支援をスムーズかつ効率的に行うためには,学生ごとの企業選択に関する価値観を把握するとともに,学生に適した就職支援を行っていくことが重要である。 こうした背景を踏まえ,本研究は,下記に示す 2点を目的とする。1点目は,学生の職業観に関する事例研究を行い,視覚障害学生の就職に関する価値分析を行うにあたっての理論的考察を行う。2点目は,就職支援プログラム及び開発に関する事例研究を行う。 2.成果概要 大学生の職業観に関する研究では,文献調査を行った(浦上 [1],古田 [2],松並・西尾 [3],加藤 [4]等)。 加藤の研究では,大学生の就職時における企業選好に,個人の価値観がどのように関連しているかコンジョイント分析を用いて探索的研究を行っている。結果として大学生は地元志向が強く,年功要素が強いことを明らかにしている。 今回得られた知見を活かし,今後は学生にアンケート調査を実施し,学生の職業観を明らかにしたい。 就職支援プログラム及び開発に関する研究では,主に公共職業安定所,大学等の就職支援プログラム関連について情報収集及び分析を行った。 情報システム学科では,2018年度の就職支援として表1に示すプログラムを実施した。2018年度には,新たに「就職とダイバーシティ(多様な人材)育成セミナー」と「障がい者のためのマイナビチャレンジドセッションへの参加」を本学科の就職支援プログラムの中に組み込んだ。次年度以降,視覚障害学生にとって内定につながる可能性を向上させるための就職支援プログラムを今後も検討していく。 表1 2018年度実施の就職支援プログラム 公務員試験対策講座 個別企業招致説明会(個別に企業の人事担当者を招いての学生採用プログラム) 平成 31年3月新規大学等卒業予定障害者就職面接会への参加 着こなし講座 メイクセミナー 労働法制講座 就職活動スタートアップ講座 模擬面接等講習会 就職とダイバーシティ(多様な人材)育成セミナー 障がい者のためのマイナビチャレンジドセッションへの参加 参照文献 [1]浦上昌則.大学生の職業観と職業不決断―尾高(1941)による職業の定義に基づいた職業観の把握―.南山大学紀要『アカデミア』人文・自然科学編. 2015.(9): p.41-56. [2]古田克利.学生生活の意味深さと職業観およびキャリア意識との関連―人文系初年次学生を対象として―.キャリア教育研究. 2018;37: p.1-10. [3]松並知子,西尾亜希子.女子大学生のキャリアプラン選択の規定要因―稼得意識,進路選択に対する自己効力,自尊感情,職業観―.女性学評論. 2018;(32): p.25-52. [4]加藤里美.大学生の企業選好と価値観―コンジョイント分析を用いた探索的研究―.日本経営診断学会論集. 2010;9(0): p.72-78.