マルチデバイス対応リアルタイム字幕付きマルチメディアコンテンツ提示ミニ放送システムの開発研究 小林正幸 筑波技術大学 障害者高等教育研究支援センター 障害者支援研究部 キーワード:マルチキャスト,Wi-Fi,スマートフォン,タブレット端末,シースルーメガネ 1.はじめに 近年,様々な機能を有するスマートフォンの開発,提供により,スマートフォンの所有率は年々増加し,全体で41.9%,20 歳未満が52.7%,20 歳代では54.8%となっている(スマートフォン所有率:http://kakaku.com/research/report/054/index.html)。また,平成25 年度本学産業技術学部1 学年26 名の学生を対象とした携帯端末に関する質問紙調査では,次のような結果を得た。「スマートフォンの所有について」は,「所有している」が26 名中22 名(84.6%),「タブレット端末の所有について」が,「所有している」が26 名中2 名(7.7%),「スマートフォンのWi-Fi 機能の利用について」では22名中11 名(50.0%)であった。このようにWi-Fi 機能を搭載したスマートフォンを所有率は5割弱までなり,今後も所有率の更なる増加が見込まれる。これらの最新の技術的な背景と社会の要請を基に,情報難民ともいわれる聴覚障害者のための高速無線通信Wi-Fi機能を搭載しアプリケーション開発の自由度が高いスマートフォン,タブレット端末に,映像や音声,それとリアルタイム字幕等様々な文字データ,パワーポイントのスライド等のコンテンツを視聴できるモバイルミニ放送局の機能を有するシステムを開発した。更に,このシステムを改良し,リアルタイム字幕をシースルーのメガネ型ディスプレイを通して見たいものに自由に視線を移動しながら見ることができ,視線をスマートフォンに移動することなく,実験や学外自習,劇場やプラネタリウム等の鑑賞で臨場感のある生の映像とともに提示するマルチデバイス対応リアルタイム字幕付きマルチメディアコンテンツ提示ミニ放送システムも開発した。 2.機能 本システムである「マルチデバイス対応リアルタイム字幕付きマルチメディアコンテンツ提示ミニ放送システム」の最も 独創的で,特徴的な点としては,携帯電話用エリアワンセグ放送と異なり,高速無線通信“Wi-Fi”マルチキャストを用いるため,免許が不要で,柔軟に基地局を移設でき,どこでも誰にでも簡単に運用できることである。また,Wi-Fi を用い映像やリアルタイム字幕,様々なコンテンツを配信するため,スマートフォンやタブレット端末,シースルーのメガネ型ディスプレイを用い,Web 等を閲覧する際に発生するパケット料金のような通信費は不要である。その他,本システムの特徴的な機能は次の通りである。 2.1 ハードウェア @マルチキャスト対応スイッチ・マルチキャストルーティング機能AWi-Fi アクセスポイント・Wi-Fi 電波送出機能・IP アドレス自動割当機能 2.2 ソフトウェア @送出管理ソフト・専用Android アプリケーション連携 スライド画像送信機能 字幕送信機能 表示スライド指示機能A送出管理ソフト(シースルーのメガネ型ディスプレイ対応)・シースルーのメガネ型ディスプレイおよびAndroid アプリケーション連携・IPtalk 受信機能・字幕送信機能BWi-Fi マルチキャスト配信ソフト・ライブ映像配信機能・録画映像配信機能CAndroid アプリケーション・スライド画像  取得,表示機能 取得済みスライドの任意表示機能 送出管理ソフト側のスライド表示追従機能・字幕 取得,表示機能 受信済み過去字幕の確認機能Dシースルーのメガネ型ディスプレイアプリケーション・字幕 取得,表示機能 3.おわりに 今後は,本システムを聴覚障害者のための講演会,講義支援,実習,実験,イベント等に活用し,その際に実施した質問紙調査を基に,システムの有効性,問題点等を明確にし,システムの改良,改善を図る。