視覚障害を有する後期高齢重複障害患者に対する下肢陽圧式空圧免荷運動療法の有効性の確立 三浦美佐 筑波技術大学 保健科学部 保健学科理学療法学専攻 キーワード:後期重複障害患者,下肢陽圧免荷,運動療法,視覚障害 成果の概要 近年超高齢社会を迎えて,疾病の重度化や障害の重度化のため,長期臥床を余儀なくされている障害者が急増している。中でも糖尿病や心疾患を併せ持つ視覚障害者は加齢と共に増加傾向にあり,晴眼者と比較して身体活動制限や介護負担を伴っており,患者のQOLの低下,医療費向上など大きな社会問題となっている。また,運動習慣のない高齢者や運動耐容能の低い高齢者の生命予後は不良であることが判明している(Johansen KL. J Am Soc Nephrol 2007; 18: 1845-1854)。一方術後早期の整形疾患患者での水中トレッドミルやリフトによる体重免荷トレッドミルによる長期間の運動療法で,筋力やADLが改善したという報告はあるが,後期高齢者で重複障害を併せ持つ者への検討はされていない。従って,重複した障害を有しながらも合併症が少なく,元気で生きがいのある生活を送るための,安全なリハビリテーションプログラムの確立が急務となっている。本研究では視覚障害を併せ持つ重複障害患者を対象として,下肢陽圧式空圧免荷トレッドミル装置(以下LBPP)を用いて,その有効性を検討することを目指す。すなわち,運動耐容能,上下肢筋力,活動量,のパラメーターで介入前後を比較検討した。 対象者は,協力施設入院・入所の平均年齢75歳以上で要介護「1〜2」に該当し,膝痛の訴えがある者のうち3か月以上ADLに変化のない14名。これらの参加者を2群に分け(1)LBPP,運動療法群7名(2)対象群(非,運動群)7名。対象者は,通常のリハビリテーションプログラムに上乗せして,週1回LBPPを6分間,Borg強度「11〜13」で行って,初回実施前後の変化(短期効果)と1か月実施後の変化(長期効果)を比較検討した。短期効果ではLBPP群において,1回目の介入直後に大腿四頭筋筋力と痛みが有意に改善したが,Ctrl群に変化はなかった。しかしその効果は1か月持続しなかった。一方,長期効果ではLBPP群で歩行速度と6分間歩行距離,1カ月後有意に改善を認めたがCtrl群に変化は認められなかった。これらの結果は,第32 回関東甲信越ブロック理学療法士学会(幕張メッセ)2013.11.2(口演)で発表し,7th World Congress of the International Society of Physical and Rehabilitation Medicine(Beijing) 2013.6.16-20 では,オーラル発表に採択され,発表した。また,これらの成果は,英語原著論文としてProceedings of the 7th World Congress of the International Society of Physical and Rehabilitation Medicine. Monduzzi Editore, Bologna, 139-140, 2013 ※雑誌(欧)およびInt J Phys Med Rehabil 2013, 1:9(in press) ※雑誌(欧)に掲載された。