CFRP炭素繊維複合材料の耐雷性評価に向けた簡易型実験モデルの確立 明松圭昭 筑波技術大学 産業技術学部 産業情報学科 キーワード:CFRP,雷,コンデンサ放電回路 1.背景および目的 炭素繊維強化プラスチック(CFRP)は単一材料にはない優れた特徴(比強度,比剛性,耐摩耗性,電気・熱の伝導性に優れているなど)を有するため様々な構造物への適用が進んでいる。特に近年,民間航空機主要構造へ適用され人々の生活に身近な材料になりつつある。しかしCFRPは衝撃を受けると,層間はく離など内部損傷をおこし強度を大きく低下させるため衝撃対策が重要な材料でもある。衝撃が生じる要因にはいくつかあるが,運用中に受ける衝撃としては落雷がある。従来の金属材料の場合には機体に落雷しても重大な損傷が発生する可能性は低かったが,CFRPでは衝撃損傷として材料に蓄積される可能性がある。表面を金属コーティングするなどして雷対策が取られているが十分とはいえない状況である。このような状況であるため,落雷による衝撃対策は重要である。にもかかわらずCFRPの雷損傷の研究としては系統的な研究はほとんどなされていない。これはCFRPが導電性の炭素と絶縁性のプラスティックから構成されるため安定した落雷を発生させることが困難なことが起因している。そこで本研究ではCFRP炭素繊維複合材料の耐雷性評価を行うために簡易型落雷実験モデルの確立を目指した。 2.方法 印加電圧を100Vから600Vまで増加させるために,放電回路を自作し高電圧対応の抵抗およびコンデンサを適応した。落雷持続時間はコンデンサ容量およびインダクタンスで制御した。試験片は電極接地面を研磨し,銅箔を張付けた。図1に実験概略を示す。   図1 実験概略 3.成果の概要 炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の雷損傷におよぼす落雷条件の影響を調査するために雷電圧,電流,持続時間,雰囲気等を制御できるコンデンサ放電回路を設計・製作した。その結果,印加電圧および放電回路のコンデン サ容量を増加すればより安定した落雷が発生することがわかった。また試験片表面を研磨し,金属箔を張付け電気抵抗を低くすることでも落雷は安定することがわかった。安定した落雷条件下で観察された落雷痕を図2に示す。図2より落雷によりCFRP試験片表面に損傷が生じていることがわかる。金属に落雷した場合にはほぼ円形の損傷が生じるが,CFRPの場合には表面の繊維に沿って損傷が進展することがわかった。表面損傷としては,炭素繊維の破断,樹脂の溶融および炭素の凝着などが観察された。本研究ではCFRP炭素繊維複合材料の耐雷性評価を行うために簡易型落雷実験モデルの確立を目指し,安定した落雷を発生させることが可能になった。また雷電圧,電流,持続時間,雰囲気等も制御可能になった。 4.成果の今後における教育研究上の活用 本研究ではCFRP炭素繊維複合材料の耐雷性評価を行うために簡易型落雷実験モデルの確立を行った。今後はこの簡易型落雷実験モデルを用いて研究推進を行い,新たな知見の発見を目指す。 図2 落雷損傷観察 5.成果の情報発信 本研究の一部はJISSE13(Thirteenth Japan International SAMPE Symposium and Exhibition, Nov. 11-13, 2013)で発表された。