視覚障害学生の企業におけるインターンシッププログラム構築のための基礎的調査企業内あん摩マッサージ鍼灸施術所の設置に関する調査(申請テーマ) 近藤 宏 筑波技術大学 保健科学部 保健学科 キーワード:ヘルスキーパー,鍼灸,マッサージ,インターンシップ,施術所数,調査 1.研究背景と目的 視覚障害のあるあん摩マッサージ指圧師がその技術を活かし,ヘルスキーパーとして一般企業に雇用されている。ヘルスキーパーとは,社員として企業に雇用され,事業所内に設置された施術所(治療室)において,産業医等と連携して社員の健康維持,増進を図るため,あん摩マッサージ指圧および鍼灸(以下,あはき)の施術を行う者のことを言う[1]。ヘルスキーパーを導入している企業の多くは大企業であること[2]や社会保障等の雇用条件が他の職種と比較し充実している [3]等,様々な観点から比較的経営の不安定な個人開業よりも,企業に雇用されて安定した身分を確保しつつ施術に当たれるこの職種への期待が高い[4]。ゆえに視覚障害者にとって有望な職域であると言える。 近年,学生が企業等において実習・研修的な就業体験を行うインターンシップに対する関心が急速に高まり,大学等の学校教育におけるインターンシップへの取組は年々増加している[5]。また,障害を有する学生においても同様の取り組みが行われはじめている。あはき師を目指す視覚障害学生の企業でのインターンシッププログラムについては企業と連携協働して構築する必要があるが,十分に検討されていない。さらには,その基盤となる企業内に開設された施術所(いわゆるヘルスキーパールーム)の設置状況については十分に把握されていない。企業内に開設された施術所を把握することは,今後,本学の視覚障害学生のインターンシッププログラムの構築や,新たな実習受入先企業の開拓に必要な方策,また,視覚障害を有するあはき師の雇用拡大に関する研究を推進する上で必要となり,極めて重要な基礎的研究となる。本研究の目的は,全国の保健所に登録されているあはき施術所情報を収集し,企業内に開設された施術所を把握することである。 2.成果の概要 2.1 研究方法 全国の保健所で所管しているあはき業に係る都道府県ごとの施術所名簿のデータ(エクセル・データと一部 PDFデータ)76,505件を収集した。施術所名簿には,①名称,②所在地,③電話番号,④届出業の種類の情報が収載されていた。なお,施術所名簿の全てのデータをエクセル 2013によりxlsxファイルに変換し,名簿情報を管理した。上記の「施術所名簿」には個人と法人が混在しているため,「株式会社」や「有限会社」の法人と名称が付された施術所を「法人施術所」としてスクリーニングを行った。次にスクリーニングにより抽出した施術所の名称について 1件ずつWeb検索サイトを用いて検索し,検索した企業情報と法人施術所と照合させ,企業を特定した。さらに,次に特定した企業の主な事業内容が,あはき業である企業を除外し,データベースを作成した。登録施術所数,法人数,所在地(都道府県別数),届出業の種類について単純集計を行った。集計結果は実数および百分率で示した。 2.2 研究結果 届出された施術所数は,282件であった。企業別では200件であった。届出業の種類は,あん摩マッサージ指圧135件(47.9%)が最も多く,次いで,あん摩マッサージ指圧・はり・きゅう102件(36.2%),あん摩マッサージ指圧・はり12件(4.3%)と続いた。 所在地を都道府県別では,1都 1府 26県で登録されていた。都道府県別では,東京都 147件(52.1%)が最も多く,次いで,大阪府 48件(17.0%),愛知県 23件(8.2%),神奈川 19件(6.7%)と続いた。 3.成果の今度における教育研究上の活用および予測される効果 全国の保健所に登録されている施術所情報を収集し,名称および所在地から企業内に開設された施術所を把握することができた。本研究の実施により,視覚障害学生のインターンシッププログラムの構築のみならず,視覚障害を有する鍼灸マッサージ師の雇用拡大や本学学生の新たなインターンシップ受入先企業の開拓に必要な方策を検討するための基礎資料として役立つことが期待される。 参照文献 [1]日本障害者雇用促進協会,視覚障害者の職場定着推進マニュアル−視覚障害者とともに働くために−,1999 [2]労働省・日本障害者雇用促進協会,平成 5年度研究調査報告書−2「視覚障害者の職場定着方策に関する調査研究」において実施したアンケート調査,1993 [3]関東・甲信越地区盲学校・養成施設進路指導協議会編,関東・甲信越地区盲学校・養成施設卒業生進路実態調査 平成 28年度版,2016 [4]独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構,鍼灸マッサージ業における視覚障害者の就業動向と課題−視覚障害者の職業的自立支援に関する研究視覚障害者の働く場の確保・拡大のための方策及び必要な就労支援策に関する研究にかかる報告−,調査研究報告書NO.69,2005 [5]文部科学省高等教育局専門教育課,大学等における平成 17年度インターンシップ実施状況調査について−平成 17年度インターンシップ実施状況調査結果−, 2006 謝辞 本研究は ,平成 30年度 競争的教育研究プロジェクト事業の助成を受けて行われた。ここに深く謝意を表する。