視覚障害者のための “しゃべるカラー触図 ”の開発と有用性の検討 白岩伸子,周防佐知江,大越教夫 筑波技術大学 保健科学部 保健学科 鍼灸学専攻 キーワード:視覚障害学生,音声カラー触図教材,ドットコード,2.5Dプリンター 視覚障害者の見え方は様々で,全盲者と弱視者が同じ教室で学ぶ場合,各自に応じた教材を制作するのは容易ではない。従来の教材では,点字,拡大文字,DAISY教材などに加えて,学生の理解を促進するため,点字付き触図教材を使用してきたが,点字使用者には細かいオリエンテーションが難しく活用は限定的である。弱視者にとっても拡大によりかえって全体像がわかりにくくなる。 本研究の目的は ,墨字使用者,点字使用者両者が同時に利用できる“「しゃべる」カラー版触図教材 ”を開発することである。視覚障害者の協力を得て評価・試作を繰り返し,その制作ノウハウなどの成果を全国の特別支援学校や視覚障害施設に提供し,晴眼者と共に学べる学習環境を実現することを最終的な目標とした。 2016年度, 音声をリンクさせたドットコードを図に刷り込み,音声ペンで再生する新規教材を試作し,一部の視覚障害学生で評価を行った。また普通紙にドットコードを印刷できるため音声教材制作は比較的短時間で大量にできることが確認された。しかし ,墨字教材ではなく,点字使用者については,触図にドットコードを印刷しようとすると,従来の触図プリンターでは,ドットコード部分を点として認識して紙が膨隆してしまうため,音声ペンで再生できなくなるという問題が生じた。本研究では,そのドットコードの技術をさらに発展させ,触図に取り入れることを考えた。 ドットコードを触図に取り入れる方法としては,ドットコードを市販のシール用紙に印刷したものを触図に貼ることで,触図に音声情報を追加する方法を考え,すでに試作品を作成している。この方法では安価に音声付加シールを量産することが可能である。また,カラーシールによって音声ペンを当てる位置もわかり易くなった。 さらに,今後は,新しい技術である,2.5Dプリントシステムの応用を検討している。これは,物体の凹凸をそのまま再現したカラー画像が,短時間にプリントアウトできる上に,触図プリンターとは異なり,ドットコードを組み込むことが可能な技術である。点字使用者への触図として十分に利用可能と考えられる。 また音声としては複数の音声をリンクできることから内容を歌にする「うたう」教材の開発など,様々な可能性を検討している。