車の自動運転実現に向けた携帯電話網と路車間・車車間通信の連携に関する研究 筑波技術大学 産業技術学部 産業情報学科 服部有里子 キーワード:ITS,携帯電話網,路車間通信,車車間通信,自動運転 成果の概要 1.はじめに  安全で環境に配慮した車の自動運転の実現に向けて,車内のセンシング情報を周囲の車両や路側機に送信す るとともに情報センタにアップロードし,それを用いてセンタが車両に情報配信するための携帯電話網や路 車間・車車間通信の連携技術について研究した。  車の自動運転実現のためには,携帯電話網を含めた路車間・車車間通信により構成される連続的でシーム レスな通信方式が必要となる。本研究では,携帯電話網としてLTE (Long Term Evolution),路車間通信としてDSRC (Dedicated Short Range Communication [1,2]),車車間通信としてWAVE (Wireless Access in Vehicular Environments[3])を採用し,一つの車載器で利用できる連携システムを製作し,実証試験により,システムの機能・性能を検証した。 2.課題設定と要求条件  ITS (Intelligent Transport Systems)サービスとして,自動運転支援サービスを想定する。ここで,連携システムが満たすべき要求条件を以下にまとめる。    車内のセンシング情報を走行中に任意のタイミングで収集することが可能で,車両内に情報提供を行えること。 車両を遠隔操作し,リアルタイムに車両状態を変化させること。 情報伝送が高速で低遅延(伝送遅延0.5秒以下)であること。 セキュリティ性の高い情報伝送が可能であること。 3.連携システムの開発 3. 1 システム構成  連携システムは,情報センタ・路側システム・路側無線装置(アンテナ)・車載器・情報提供機器(カーナ ビゲーション,スマートフォン)・車両から構成される。 センタおよび路側アンテナと車載器が周期的に通信を行い,車両の状態変化を検知すると車両内に情報提供 を行うとともに車載器を介して車両を遠隔操作し,車両状態を変化させるシステムである。 3. 2 LTEとDSRC/WAVE連携の通信プロトコル  路則システムは,車載器が通信領域に入ると,必要に応じて路車間通信(DSRC)のプッシュ型情報配信 によりカーナビゲーション向けのURI (Uniform Resource Identifier)情報を送信する。車載システムは, 携帯電話網(LTE)によりURIに接続し,カーナビゲーション向けのコンテンツや情報を受信する。 LTEと DSRC/WAVE連携の通信シーケンスを図1に示す。 図1 LTEとDSRC/WAVE連携の通信シーケンス 4.実証試験  実証試験では,センタおよび路側システムによる車両状態の監視と車両情報に基づくサービスアプリケー ションの動作と性能を評価した。 @ ヤングおよび路側システムが車載器を介して1秒以内に車両情報を収集する割合はほぼ100%   であり,連携システムによって1秒以内のサンプリング周期で車両情報を収集することを検証   した。 A センタおよび路側システムが車両の異常を検知し,車両内に警告出力を行うまで1秒以下であ   る割合はほぼ100%であり,連携システムの車両内情報提供性能を評価した。 B 路側システムが車載器を介して0.5秒以内に車両遠隔操作を行う(エアコンスイッチをONに   書き込む)割合はほぼ100%であり,車両遠隔操作性能を評価した。 5.おわりに  今後は,走行試験により,通信不安定や高速走行での電波環境において連携システムの実用化評価を行う とともに車車間通信等の他の通信メディアシステムとの連携を可能とする所存である。  一つの車載器で携帯電話網や路車間・車車間通信を効率よく切り替える,あるいは共存させる通信方式の 確立により,様々なアプリケーションを実現することが可能となり,自動運転支援におけるユーザメリット 拡大,システム構成の合理化が期待できる。  本研究の研究成果は, IEEE International Conferenceに英文論文を投稿し,採録された。              参照文献 [1]Association of Radio Industries and Businesses. ARIB   STD-T75, Dedicated Short-Range Communication   System. ARIB Standard (Tokyo),2008. [2]Association of Radio Industries and Businesses. ARIB   STD-T88, DSRC Application Sub-Layer. ARIB   Standard (Tokyo), 2007・ [3] IEEE 802. 11p. IEEE Standard for Information   technology -Local and metropolitan area networks   -Specific requirements -Parti 1 : Wireless LAN Medium   Access Control(MAC)and Physical Layer (PHY)   Specifications Amendment 6: Wireless Access in   Vehicular Environments. IEEE Standard, 2010.