あん摩療法のエビデンス構築: 視覚に障害のあるマッサージ師の職域拡大を視野に入れて(継続) 筑波技術人学 保健科学部 保健学科       殿山 希 キーワード:あん摩マッサージ療法,がんサバイバー,心身の健康,職域開拓 1. 成果の概要 1. 1研究の背景  補完代替医療が世界的に盛んとなった昨今,欧米ではマッサージ療法の臨床研究の論文が増えている。手技療法のうち,日本でもっとも多く利用されているのはあん摩療法Anma massage therapy である。  本学では,あん摩療法は視覚に障害のある人の自立できる数少ない職業のひとつとして,また,人々から期待され信頼される価値ある仕事として,熱心に教育されてきた。しかし,エビデンス構築の点から言えば,まだまだ不十分であり,視覚に障害のある人にあん摩療法を教育する世界で唯一の高等教育機関である本学としては,あん摩療法について科学的・学術的アプローチを行っていく義務を避けることはできない。  著者は,上記の信念から本学着任当初からあん摩療法をキーワードに研究を進めて来た。その結果,あん摩療法は,健康者のみならず心身に不調を抱える人に対しても補完代替医療として貢献する可能性が示唆された[1-3].そこで,平成19年度文部科学省科学研究費補助金萌芽研究(No.17653125)により,がんサバイバーに対するあん摩療法の臨床効果の予備研究を行った[4]。その結果に基づき,平成22〜26年度文部科学省科学研究費補助金基盤研究C『あん摩マッサージ療法のエビデンスに基づいた職域の開拓:緩和ケアチームヘの参入』の中でランダム化比較試験を行ってきた。 本年度は,予備研究[4]から算出した必要対象数が平成21年の科研費申請時より増えたこと,さまざまな関連先行研究を検討して指標とすべき項目が増えたことから,その解析等に係る費用を求めて本学競争的経費を申請した。 1.2研究方法  対象は40人(うち,平成26年度終了分は14人)。  他施設共同研究者が,適格基準に合い除外基準に該当しないがんサバイバー(婦人科がん発症後標準治療を終了して3年以上経過し,リクルート時点で再発の徴候がない人)をリクルートした。本学で口頭と書面で研究説明を行い,同意書提出後,ランダ人化ブロック法であん摩継続群とコントロール群に割り付け,試験を実施した。 試験終了:平成26年11月1日  研究デザインは既に論文発表しており[5],プロトコルはネット上でも公開しているので[6]参考にしていただきたい。 7.3結果 ●結論として,毎週1回40分間のあん摩施術を7回継続することはかんサバイバーの身体的愁訴の軽減に有効である。 2.成果の今後における教育研究上の活用及び予想さ れる効果  本試験結果がpositiveであったことから,がんサバイバーに対するあん摩療法の医療的有用性が示された。 このことは,あん摩療法教育に新たな学術的記述を加えることとなるとともに,あん摩マッサージ指圧師の新たな進路開拓につながると考える。  また,今までは患者の意思のみであん摩療法が選択されてきたが,あん摩療法を選択した場合のメリットをエビデンスを持って患者に説明でき,患者がより正しい情報に基づいて意思決定が出来るようになる。  さらに本研究ががんステージの高い患者へのあん摩療法の貢献を探る研究の礎となると考える。 3.成果の学会発表  第80回日本温泉気候物理医学会(平成27年6月20〜2l日長野県)にて発表予定,既に抄録を提出して いる。 4.文献 [1]Donoyama N, Munakata T, Shibasaki M. Effects of  Anma Therapy (Traditional Japanese Massage)on Body  and Mind. J Bodyw Mov Ther. 2010:14: p.55-64. [2]Donoyama N, Shibasaki M. Differences in practitioners'  proficiency affect the effectiveness of massage therapy  on physical and psychological states. J Bodyw Mov Ther.  20l0:l4: p.239-244・ [3]Donoyama N, Ohkoshi N. Effects of traditional  Japanese  massage therapy on gene expression  (preliminary study). J Altern complement Med・  2011;17(6):p.1-3・ [4]Donoyama N, Ohkoshi N, Satoh T. Preliminary Study  on the Physical and Psychological Effects of Traditional  Japanese Massage Therapy in cancer Survivors. J Jpn  Assoc Phys Med Baln Clim. 2011;74(3):p.155-167・ [5]Donoyama N, Satoh T, Hamano T. Effects of Anma  massage therapy (Japanese massage)for gynecological  cancer survivors: study protocol for a randomized  controlled trial. Trials. 2013 Jul 24:l4: 233. doi:  10.1186/1745-6215-14-233.  http://www.trialsjournal.com/content/14/1/233 [6]UMlN00000909.7  https://upload.umin.ac.jp/cgi-open-bin/ctr/ctr.cgi?functio  n=brows&action=brows&type=summary&recptno=R00  0010670&language=E)