様々な方法による3次元乱流の計算 筑波技術大学 産業技術学部 産業情報科学科 丹野 格 キーワード:CFD, 擬似圧縮性法,フラクショナルステップ法,格子ボルツマン法 1.背景  計算流体力学(CFD)は,研究,開発の現場において無くてはならないものである。これまで多くのCFD手法が提案されてきた。 CFDの利用者は一般に1つの手法を選び,特に大きな問題がない限り,その手法を使い続ける傾向がある。したがって,同一条件でCFDの手法を検討する報告は比較的少ない。  研究代表者は,これまで2次元一様等方性乱流[1]を対象として,各種計算手法の計算精度と計算時間を比較してきた。今回は,三次元一様等方性乱流の計算をいくつかの計算手法で計算し,その計算時間の比較を行う。 2.計算手法とそのコード,および各種条件  本テーマで使用した手法は,内部反復のない擬似圧縮性法(ACM)[2],フラクショナルステップ法(FSM)[3],格子ボルツマン法(D3Q19 LBGK モデル)(LBGK)[4]である。ナビエ・ストークス方程式をベースとするACM, FSMの空間微分項け4次精度中心差分法,時間積分は4段階ルンゲクッタ法を使用した。また,解の振動を抑えるためにスタッガード格子を使用した。  CFDコード内では,各種データを, array of structure(AOS)型またはstructure of array (SOA)型のどちらかで保存することになる。こ二では格計算手法ごとにAOS型, SOA型の2つのプログラムを作成した。ただし,フラクショナルステップ法では圧力を求めるポアソン方程式が,各時間段階で反復計算される。よって,AOS型を採用する場合でも,圧力だけは独立した配列に保存することにした。ポアソン方程式の反復計算回数は, 50回とした。  計算の初期条件はkida vortex とし,計算境界では周期境界条件を課した。 3.計算時間の比較  与えられた条件の流れを計算するとき,各種法ごとにとりうる時間ステップや格子間隔は異なる。今回はそれらの部分には触れずに1ステップあたりの計算時間を比較する。計算はIntel Xeon W3530 上でシングルスレッドを用いて行った。使用したコンパイラはIntel Compiler version 12 である。表1に結果を示す。 表1 各計算手法とデータ構造による1ステップあたりの計算時間(秒) 4.結論  各CFD手法の1ステップあたりの計算時間を, AOS型とSOA型で比較した。その結果,今回の実装ではFSM, ACMではAOSが高速であり, LBMではSOAが高速であった。一方,CFD手法ごとに使用できる最大時間ステップや格子幅が異なっているため,これをもって各種法の優劣を議論することができない。今後は,計算精度,時間ステップ,そして格子幅などを考慮した上で,各種法の性質を総合的に評価したい。 参考文献 [1]Tanno, I., et al , Comparison of virtual flux method on LBM and on other methods on a GPU, Computers & Fluids, 2013 [2]Ohwada, T., Asinari, P., Artificial compressibility method revisited: asymptotic numerical method for incompressible Navier−Stokes equations. J Comput Phys 2010 [3]Chorin, A., Numerical solution of the Navier-Stokes equations, Math. Comp., 1968 [4]Y. H. Qian et al.,Lattice BGK Models for Navier-Stokes Equation, Europhys. Lett, 1992.