論理回路実験の遠隔支援システムの検討 筑波技術大学 保健科学部 情報システム学科 関田巌 キーワード:論理回路実験,視覚障害, USBカメラ,スマートフォン,遠隔支援 1。はじめに  視覚障害学生は手先がよく見えないために配線を単独で行えず,講師の説明通りに配線して確かめたり,自ら設計した回路を配線してその結果を評価し配線や設計の修正などを自学自習することができない。このため,講師が学生の机上まで行き,配線の状況を確認してアドバイスする必要があり,学生が論理回路の実習をより気軽におこなうことができない。  そこで,実験者(視覚障害学生)が論理回路実験の基本作業として,ICの種類を確認し,ICやリード線を正しくブレッドボードの穴(ソケット)に刺せるようにするためにネットワークを通して映像を支援者(教師等の晴眼者)に送り確認してもらえるシステムについて検討した。その概要を報告する。 2.システムの構成と考察 2.1ネットワーク経由で映像と音声を送ることができるフリーウェア  スカイプなどを活用できる。画質は,カメラの性能の他,接続した通信回線の通信容量に依存する。 2.2視覚障害学生側の映像取得カメラと,映像・音声の送受信端末 (1)USBカメラをノートパソコンに接続して用いる場合のメリット  スタンド付きの小型カメラを用いることで,両手を実験の配線等に使うことができる。この場合,前方か ら手元に向かってスタンドを立てることにより,実験者の手元がスタンド等で隠れてしまう影響を少なくで きる。これによりカメラの向きが実験者の向きに対して180度回転してしまうが,フリーウェアManyCam により,上下左右を反転して送信できる。ただし高画質にするとリアルタイム性が低下する。  映像・音声の送受信端末がノートパソコンの場合,有線接続により高速な通信が行えるようになり,より 高精細な映像を支援者側に送ることができる。これにより,ブレッドボード全体(約17cmX11cm)を送ったときにも,ソケット列に付けられた番号等を支援者が読むことができる。 TC をカメラに近づければ, ICに印字され八文字(ICの種類)が摩耗で消えていない場合には判読できる。カメラの光軸と同方向以外にずれていたり曲がったICの足(ピン)も視認できる。  (2)スマートフォンの裏側のカメラを用いる場合のメリット  スマートフォンをスタンドに接続することで,両手を実験の配線等に使うことができる。この場合,画面 を直接見ることができる弱視学生に対しては,ハンディ型の拡大器と比べ映像の画質が高精細である。映像 上の対象物の向きが,実際の対象物の向きと完全に一致しており,さらに映像と実際のICとの距離が近い ため,両者の対応がとりやすい。また,自分のスマートフォンを用いる場合,拡大などのカメラ操作に習熟 している。  映像・音声をスカイプ等でスマートフォンから支援者に送ることができ,機器の構成がシンプルとなる。 3.今後の課題  正しく入っていないICの足(ピン)をソケット中心に押し込むために実験者に技術が必要である。ピン の足を矯正し,ソケットに入りやすくするツールの開発も望まれる。 ICの種類の確認は点字シールが簡便。