鍼灸マッサージ院の開業(本学学生のケーススタディ)に関する研究 筑波技術大学 保健科学部 情報システム学科 嶋村幸仁 キーワード:鍼灸院,マッサージ院,ビジネス,開業 1.はじめに  視覚障害者が技術を習得し,国家資格を取得して,開業や就職する代表として鍼灸マッサージ院がある。 しかし,近年では国家資格を取得せずに開業できるクイックマッサージなどと過当競争が激化しており,視 覚障害者で国家資格を取得して開業している鍼灸マッサージ院が苦境に立たされている。  また,鍼灸マッサージ院については,全国にたくさん点在し,近年では無資格者がフランチャイズ方式で 出店しているところも散見されているが,視覚障害者の開業に焦点を当てた開業マニュアルなどはなく,地 域密着型の鍼灸マッサージ院の経営戦略や資源配分などを研究したものは見つかっていない。  このことから,本研究の実施により,本学保健科学部鍼灸学専攻において,実際の店舗の状況や商圏,顧 客動向などのデータを基にビジネスプラン等を作成することができ,開業する際に即役立つ研究を目指した。  このため,本研究は,各種調査分析から本学学生の開業を支援し,鍼灸学専攻における講義に活用するこ ととした。 2.成果の概要 @ 鍼灸マッサージ院  鍼灸院とは,昭和22年に制定された「あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師等に関する法律」によ り国家資格を取得した鍼灸マッサージ師により開業されている施術所をいう。鍼灸は,施術の実施について 法令により種々の制限が課されていると共に,医療行為にあたることのないような広告上の規制もある。  また,近年では,国家資格を取得しかいでリラクゼーションをテーマとして開業しているカイロプラクテ イック,整体,クイックマッサージなどが駅ビルや駅近郊さらには住宅街にも進出してきており,鍼灸院に とっては大きな脅威となっていると共に過当競争が繰り広げられている。  このようなことから,国家資格を取得した視覚障害者の多くの就業先である鍼灸マッサージ院にとっては, 企業経営上厳しい状況が続いており,新たな経営戦略の策定が必要となっているが,民間コンサルタントな どに依頼する費用等が捻出できない経営環境となっている。  このことから,国家資格を取得したはり師, 灸師,あん摩マッサージ指圧師でしか行えない経営環境の構 築に向けた支援が必要となっていた。 A 鍼灸マッサージ院の現況  今回の研究対象とする国家資格を取得した鍼灸マッサージ院は零細企業又は個人事業における操業形態が 多く,特に視覚障害者が国家資格を取得して進出する業種として約65年近くが経過している古い業種業 態となっている。また,その治療内容として多いのは,肩こりゃ腰痛等に対して「はり十マッサージ」による 施術となっている。  一方,近年においては,公益社団法人日本鍼灸師会などがスポーツ鍼灸の委員会を設立したことや, 2009 年には,一般社団法人日本美容鍼灸協会が設立されるなど,国家資格を取得せずに開業しているカイロプラ グディック,整体,クイックマッサージ店などに対抗する動きがみられる。  また,最近では,表1[1]のとおり国家資格取得者も増加傾向にあり,今後も熾烈な市場間競争が予想され る。