アクセシビリティ型多目的多言語対応リアルタイム 字幕付きマルチモバイルシステムの開発研究 筑波技術大学 障害者高等教育研究支援センター  小林正幸 キーワード:シースルーメガネ,字幕,リアルタイム,マルチキャスト 1.はじめに  近年,Wi-Fi 機能を搭載したスマートフォンの所有率は年々増加し,15〜69 歳で 54.0%となっている。特 に,女子学生で 85.2%,男子学生では 78.3%に達している。(「ビデオリサーチインタラクティブ」プレリリ ー ス : http://www.videoi.co.jp/release/20140225.html , 2014.02.25)  筆者は,Wi-Fi のアクセスポイントを用い,遠隔地でパソコン要約筆記「IPtalk」や速記キーボードで入力 した文字列をリアルタイム字幕として実際の視野に重ねてシースルーメガネ型ディスプレイ(以下,HMD と略す)とスマートフォンへ同時に提示できるシステムを開発した。  また,本学産業技術学部の講義において本システムの視聴実験を実施した。  視聴実験は HMD7 台,スマートフォン 3 台,タブレット 4 台を用い,字幕の入力は講義室内で 3 名のパソ コン要約筆記「IPtalk」で実施した。  本システムの概要,構成,質問紙調査結果等について報告する。 2.システムの概要,特徴,構成  本システムの特徴的な点としては,高速無線通信 Wi-Fi マルチキャストを用いるため,免許が不要で, 柔軟に基地局を移設でき,様々な情報保障機器が未整備な劇場,ライブショー,スポーツ観戦等,どこでも誰にでも簡単に設置・運用できることである。また, Wi-Fi を用いリアルタイム字幕を配信するため,一般 的な使用方法であるスマートフォンで Web 等を閲覧する際に発生するパケット料金のような通信費は不要である。  また,HMD を使用し,見たいものに自由に視線を移動しながらリアルタイム字幕も同時に見ることができる。リアルタイム字幕は数十台の HMD とスマートフォン等の携帯端末に同時に提示できる。  更に,表示される字幕は仮名漢字のみと,特殊なキ ー入力が不要で一般のワープロと同様な入力方法によ り自動で漢字の後に漢字の読みを括弧付きで表示できる。  本システムの構成は,@パソコン要約筆記「IPtalk」 や速記キーボードで入力した文字列を受信し,リアル タイムで Wi-Fi アクセスポイントへ送出する一般的なノートパソコン,AWi-Fi アクセスポイント(バッファロー製,WAPM-APG300N),BHMD(エプソン製, MOVERIO BT-200),Cスマートフォンである。 3.使用結果  本システムを平成 26 年度 2 学期本学産業技術学部 1 学年の講義「情報保障技術とコミュニケーション」の講義において,総合デザイン学科 15 名を対象に HMD とスマートフォンを用いた文字提示の情報保障に関する質問紙調査を実施した。  パソコン要約筆記は講義室内で 3 名が担当し,HMD(MOVERIO BT-200)7 台,スマートフォン 3 台とタブレット 4 台は,講義中順次学生に手渡し視聴させた。 図 1 に HDM の写真,図 2 にスマートフォンでの字 幕提示の写真,図 3 に講義の様子の写真を示す。 また,図 4〜図 8 は質問紙調査の結果である。 図 1 HDM 図 2 スマスマートフォンの字幕提示 図 3 講義の様子 図 4 HMD 字幕提示による講義内容理解度 図 5 HMD とスマートフォン同時使用による字幕提示システムの有効性 図 6 漢字の読み提示による講義内容理解度 (小学3年) 図 7 講義以外での HMD の利用場面(複数回答) 図 8 HDM の必要と思われる機能(複数回答) 4 おわりに  今後は本システムを様々な場面で活用し,システムの問題点と改善点を明確にし,様々なメーカからプレ スリリースされているウェアラブル表示器にも対応可能なシステムの開発と構築を目指す。