インクルーシブ教育環境下にある聴覚障害児者のための遠隔教育支援に関する研究 筑波技術大学障害者高等教育研究支援センタ一障害者支援研究部1)産業技術学部産業情報学科2) 石原保志1),三好茂樹1),西岡知之2),河野純大2),若月大輔2) キーワード:特別支援教育,リソースルーム,通級指導教室,特別支援学級 1.研究の目的  本研究では、平成25年度までに構築した聴覚障害児のためのバーチャルクラスルームに加え、在籍学級における授業の情報保障、自立活動教材の学校間共有、保護者や在籍学級担任が聴覚障害教育の専門性を有する教師から相談、助言を得るための教育相談をWeb上で実施するクラウド環境を構築し、離島、僻地等の通常学級に在籍する聴覚障害児とその担任、保護者が、在籍校に居ながらにして、あたかも自校のリソースルームを利用する如くこのクラウド上にある教育資源を活用するための具体的要件及び教育活動の効果を明らかにすることを目的とした。 2.研究成果の概要 ニーズ調査:インクルーシブ教育環境下にある児童、生徒を対象とした遠隔指導、支援のニーズを把握するため、全国公立学校難聴・言語障害教育研究協議会に加盟している2650校を対象に質問紙調査を実施し、1051校から回答を得た(回収率39.7%)。この調査では、学級、教室を担当している教員による回答を求めた。 図1 遠隔教育支援に関するニーズの内容  図1は、遠隔教育支援に期待する内容に関する質問(多肢選択)の回答を示している。言語指導、発音指導等に関する教材の提供は60%以上と最も多く、直面している児童、生徒の指導に直接結びつく内容を期待する教員が多いことが分かる。また40%程度の学校が教員に対する専門的助言をあげており、現場で課題となっている、教員の指導法に関する知識、技術の不足を改善する方策が求められている様子がうかがえる。  試行版Webサイトの構築と多地点間通信実験:平成25年度までに構築したWebサイトの問題点を間然した新たなサイトを立ち上げた。現在までのところ、ライブによる遠隔指導、支援、交流、教育相談が可能であることが試行実験で確認できている。  遠隔教育支援の実施:平成25年度までに遠隔指導、支援に関する連携関係を築いた鹿児島地区の特別支援学級、通級指導教室の通信ネットワーク環境を強化するため、屋久町立安房小学校難聴児通級指導教室、奄美市立名瀬小学校の通信設備を整備した。長崎地区においては、ろう学校が離島(壱岐)の通級指導教室に対する支援を継続して行い、これに対して、研究代表者、分担者が必要な情報・資料を提供した。長野地区においては、研究分担者が定期的に遠隔教育を実施した。  聴覚障害教育関係機関との連携:各地で行われている聴覚障害教育担当教員が集う研修会等で本研究の取組内容について紹介し、人的リソースの共有、教材の提供と利用等について説明を行った。この結果、沖縄県難聴・言語障害教育研究会との連携を開始することとなった。また特別支援学校(ろう学校)が有する教育資源を活用するため、複数の学校の協力を得ることが可能となった。