筑波技術大学保健科学部附属東西医学統合医療センター患者の利用状況やサービスに関するアンケート調査 3 櫻庭 陽1),武笠瑞枝1),水木知恵1),福島正也1),佐久間亨1),松井 康1),平山 暁1),木下裕光1,2), 筑波技術大学 保健科学部附属 東西医学統合医療センター 1) 筑波技術大学 保健科学部 保健学科2) 要旨:2011年,2013年に続き,2014年も筑波技術大学保健科学部附属東西医学統合医療センターの患者を対象に,利用状況とサービスに関するアンケート調査を行った。その結果,利用部署は鍼灸が最も多かった(59名(59.6%))。来院の動機は,“知人の紹介”(35名(35.4%))が多かった。サービスに関する質問では,スタッフの応対に”満足”とする回答が多かった(78名(78.8%))。今後,利用したいことは“マッサージ”(41名(41.4%))が多かった。 キーワード:統合医療,患者,利用状況,サービス 1.はじめに 筑波技術大学保健科学部附属東西医学統合医療センター(以下,当センター)は開設以来,本学学生や資格取得後の教育と研究,地域医療に貢献することを目的に診療を行っている。当センターは,医師を中心に臨床検査や放射線検査,薬局やリハビリテーションによって構成され,主に保険診療を行う診療部門と,鍼灸治療を行う施術部門にわけられる。機能的には,医師が処方する漢方と鍼灸からなる東洋医学と西洋医学からなり,それら2つを統合することで患者の状態やニーズに即した医療を提供する統合医療施設である。統合医療は世界的に注目されているが,本邦では施設が少なく,全国的にも貴重な存在である。平成26年5月からは内分泌・代謝内科を開設し,施設の充実・発展を図っている。当センターでは患者サービスの向上を目的に2011,2013年に利用状況やサービスに関するアンケート調査を実施した[2,4]。今回,同様の調査を実施したので報告する。 2.方法 アンケートは,平成26(2014)年11月17日〜12月19日(計24日)に実施した。対象は,調査に同意した自力による回答可能な当センターの患者とした。具体的な手順は,総合受付でアンケートに関する説明と口頭での同意を得た後,アンケート用紙を配布した。対象者自身が院内で無記名の選択及び記述式で回答した後,待合室に設置した回収箱へ投函した。アンケートの主な内容は年齢,性別,居住地や交通手段,当センターの認知,利用部門や来院 の動機,サービスに関することである。 3.結果 3.1 回答者の属性 アンケートは99名から回収した。性別は男性35名(35.4%),女性62名(62.6%)であった( 表 1)。年代は60歳代が31名(31.3%)と最も多く,20歳以下と30歳代,80歳代は10名未満の回答だった(各4名(4.0%),8名(8.1%),3名(3.0%))。 表 1 年齢と性別 3.2 居住地と交通手段 居住地は,つくば市内と市外が各々48名(48.5%),47名(47.5%)でほぼ同数であった( 表 2)。近隣では土浦や牛久が多く,少数ではあるが北茨城や日立などもおり,県内全域にわたり患者が来所していた。 交通手段は,自家用車が89名(86.4%)で8割を超え,公共交通機関や徒歩や自転車の利用者はあわせても1割程度(10名(10.1%))と少なかった(表 3)。 表 2 居住地 表 3 交通手段 3.3 利用状況 当センターをはじめて利用した者は12名(12.1%)だった。利用部署を選択式複数回答で聴取した結果,最多は鍼灸の59名(59.6%)で,以下,整形外科,漢方内科が続いた(各42名(42.4%),38名(38.4%))。 表 4 利用部署(複数回答可) 次に鍼灸やリハビリテーションについて,各診療科との併診状況を表5に示す。その結果,”リハビリテーションと鍼灸”,”リハビリテーション”,”鍼灸”のすべてで整形外科との併診が多かった(各11名(26.2%),3名(7.1%),22名(52.4%))。また,漢方内科と鍼灸の併診も19名(50.0%)と多かった。 表 5 併診の状況 3.4 来院前の周知と来院の動機 「来院する前から当センターを周知していたか」という設問では,“知っていた”が45名(45.5%),“知らなかった”が53名(53.5%)であった(図1)。 図1 設問 “本センターを知っていたか?” の結果※名(%)で示す。 表 6 来院の動機(複数回答可) 来院の動機について,選択式複数回答で聴取した結果,“知人の紹介(当センターの患者)”が35名(35.4%)と最も多く,”当センターの患者以外の知人の紹介”と合わ せると,いわゆる口コミが4割(43.5%)を超えた(表 6)。また,当センターの特色である東洋医学の”鍼灸”と”漢方”に対する興味が各々27名(27.3%),26名(26.3%),”統合医療に対する興味”も13名(13.1%)と上位であった。 3.5 サービス等や今後の利用希望に関して サービスに関して表 7に示す10項目について“満足”,“普通”,“不満”の選択式で聴取した。”満足”が多かった6項目のなかでは“スタッフの応対”が78名(78.8%)で最多だった。すべての項目で不満とした回答者は10%未満と少なかったが,そのうち最も多かったのは“休診の案内表示”の9名(9.1%)だった。 表 7 サービスについて 3.6 当センターの採点結果 当センターを10点満点で採点し,その採点理由を自由記述で聴取した。その結果,最多は10点満点で(38名,38.3%),4点以下は無く,無回答者を除く84名の平均点は8.8点であった。理由では,診療科数や施設・設備の充実,休診案内や待ち時間に関する回答で複数の回答があった。 3.7 今後の利用希望部署 今後利用してみたい部署を選択式複数回答で聴取した 表 8-1 当センターの採点結果 表 8-2 当センターの採点の理由 結果,当センターの特徴である東洋医学に関係するマッサージ(41名,41.4%),鍼灸(35名,35.4%),漢方内科(25名, 25.3%)が上位であった(表 9)。なお,アンケート実施当時,あん摩・マッサージ・指圧外来は開設していない。 表 9 今後の利用希望部署(複数回答可) 3.8 自由記述 最後に自由記述欄に記載された内容を,肯定的なコメント,要望,苦情に分けて表 10に示す。 表 10 自由記述 4.考察 今回の結果について,当センターの患者の年齢層と同様である40〜70歳代から多く回答を得ていること,性別も男女比が過去のアンケートと同様の比率(1:2)であったことから,当センターの現況を反映していると考えている [1-4]。以前の報告で述べたとおり,30歳以下の若年層患者が少ないことは,診療時間の問題が影響しているかもしれない[2,4]。本結果では診療時間に関するコメントはなかったが,これは既に診療時間に合う患者だけが来院していることのあらわれだと考える。年齢層について,他の要因として,慢性的な症状を治療することが多い鍼灸利用者が多いことから,来院後から複数回の通院が必要となることも影響しているかもしれない。当センターは急性期の総合病院が隣接する地域において,差別化された施設であり,この問題を是正するよりも,特徴を生かして内容やサービスを充実することが肝要であると考える。患者の居住地は,市内や近隣を 中心に県内全域に渡っていることから,地域の医療に貢献するという当センターの目的は果たされているようである。しかし,交通手段の結果をみると自家用車がほとんどであり,来院の制限になっている可能性も考えられる。交通インフラの整備は自助努力では難しいが,何らかの方策を検討して,少しでも利用しやすい環境づくりが大切である。鍼灸や漢方を利用する患者が多く,それらの併診も5割いた。また,来院の動機でも漢方や鍼灸に対する興味が高かったことから,当センターの特長の一つである東洋医学に対する興味やニーズが高いと考えられる。併診については,整形外科と鍼灸やリハビリテーションの割合も高かった。リハビリテーションの開設以降,患者も増加し,鍼灸との併診患者も多くみられるようになった。今後,リハビリテーションの環境整備や開設日数を増やすことで,さらに患者が増加すると考えられる。そうなれば,当然,漢方や鍼灸と併診する患者も増えるだろう。コメントにもあったように,東西医学の融合はまだまだ改良の余地が有り,期待されている部分である。東洋医学とのコラボレーションをさらに推進して,当センターの特長と魅力を発信していかなければならない。そうすることで来院前の周知(図1)の割合も増えるだろう。一方で,現状の患者について目を向けると,当センターの採点結果では平均8.8点と総じて高い評価を得ていること,来院の動機がいわゆる口コミが多いことから,患者がある程度満足して,口コミで情報を発信してくれていると考えている。これは,スタッフの応対に満足している者が多いこと(表 7)や,採点の理由や自由記述の結果からも容易に推察できる(表 8-2,表 10)。以上のことより,今現状の患者についても今まで以上に親切で節度のある対応をすることが,今後の患者増加につながるだろう。今後の展開として,利用希望が多かったマッサージについても平成27(2015)年4月より試行をはじめ,逐次,整備,改善している。また,カンファレンスやミーティングを今まで以上に充実させて,それらを介したスタッフ間のコミュニケーションを強化していきたいと考えている。さらに,医療安全に関する研修会等の講習会を積極的に開催したり,災害等の非常時に迅速な行動ができるようにセンター独自の防災訓練を実施したりすることで,スタッフ個々のスキルアップも図っていきたい。平成27年度の10月頃より現行の東棟に併設して西棟が稼働する予定である。西棟は,主にリハビリテーション及び施術(鍼灸,あん摩マッサージ指圧)部門の拡張が目的であり,診療自体の充実もさることながら,教育環境の改善や研究施設・設備の充実もはかる。今後もソフトとハードの面を改善して,教育や研究,地域医療に貢献していきたい。 参照文献 [1] 近藤 宏,櫻庭 陽,他 : 地域医療における統合医療を目指して 筑波技術大学保健科学部附属東西医学統合医療センター 2010 年度 鍼灸部門 外来報告.筑波技術大学テクノレポート.2012; 19(2): 73-77. [2] 櫻庭 陽,近藤 宏,他 : 筑波技術大学保健科学部附属東西医学統合医療センター 患者の利用状況やサービスに関するアンケート調査.筑波技術大学テクノレポート.2012; 20(1): P.109-113. [3] 近藤 宏,櫻庭 陽,他 : 筑波技術大学保健科学部附属東西医学統合医療センター 2012 年度 鍼灸部門 外来報告.筑波技術大学テクノレポート.2013; 21(1): 103-107. [4] 櫻庭 陽,武笠瑞枝,他 : 筑波技術大学保健科学部附属東西医学統合医療センター 患者の利用状況やサービスに関するアンケート調査2.筑波技術大学テクノレポート.2014; 21(2): 73-77. A Questionnaire about Patient Usage and Service Conducted at the Center for Integrative Medicine, Tsukuba University of Technology in 2014 SAKURABA Hinata1), MUKASA Mizue1), MIZUKI Tomoe1), FUKUSHIMA Masaya1), SAKUMA Toru1), MATSUI Yasushi1), HIRAYAMA Aki1), KINOSHITA Hiroaki1,2), 1)Center for Integrative Medicine, Tsukuba University of Technology 2)Faculty of Health Sciences, Tsukuba University of Technology Abstract: We created a questionnaire for patients at the Center for Integrative Medicine, Tsukuba University of Technology to learn about patient usage and services in 2011 and 2013. We administered the same questionnaire in 2014. The results of the questionnaire revealed that the service most used by patients was acupuncture (59 [59.6%] patients).We asked patients about their reasons for visiting the center. Some patients responded that they received “an introduction from an acquaintance” (35 [35.4%] patients). For a question about the services, the patients were satisfied with the staff's reception (78 [78.8%] patients). The medicine to use from now on had much massage (41 [41.4%] patients). Keywords: Integrated medicine, Patient, Usage, Service