第10回社会鍼灸学研究会21世紀初頭15年間の日本鍼灸の歩み,そして,これから─ 15年間のあゆみとその分析で読み解く日本鍼灸 ─ 形井秀一 筑波技術大学 保健科学部 保健学科 鍼灸学専攻 キーワード:社会鍼灸学,鍼灸,歴史,20世紀,21世紀 成果の概要  21世紀に入って15年が経過した。ご存じの様に,21世紀に入る直前の1998年に,「柔道整復師等の養成施設の開設制限」が福岡地裁での裁判により規制緩和され,柔整・鍼灸学校の新設・増員が認められるようになった。その結果,鍼灸界に,大きな変化が起きることが予測された。つまり,学校数と学生数,教員数,臨床家数,施術所数,そして患者数のどれもが増加することが予測され,事実,戦後最初の学校設立ブームの1950年代の学校数と学生数の増加に比べると2000年代の増加は大きかった。そのことで,鍼灸の認知度,社会的地位,需要,などが向上し,その結果,国民の心身の健康度がアップし,そして,国民の幸福度が高くなっていくであろうと期待された。21世紀は,日本鍼灸界の新たな幕開けの世紀となるはずであった。一方この15年間に,鍼灸は,その歴史始まって以来,文字通り世界に広がった。そのグローバル化により,西洋医学が中心であった先進国で,鍼灸が認められ,制度化される国も生まれ,その数は増加してきた。WFAS加盟団体は191団体(53の国と地域)となった。また,WHOによる経穴部位や用語の国際標準化,UNESCOの鍼灸の世界遺産への承認,ISOでの鍼灸(湯液も)の標準規格の策定など,国際機関における鍼灸の認証や標準化が,鍼灸のグローバル化の具体例であるとも言えよう。さらにICD-11に東洋医学が入る可能性があることが,非常に大きな意味を持つ。第10回社会鍼灸学研究会では,このような視点から21世紀初頭の15年間に鍼灸のおかれた状況が20世紀とどのように変わってきたのか,あるいは変わらずに来ているかを提示し,これからの鍼灸界がどのように変わっていくかが予測され,期待されるのか,そして,そのために鍼灸界がどのような努力を必要とされるのかを討論した 。 以下に本年度の成果,次ページに2日間のプログラムを示す。 1.第10回研究会の研究発表では,本学大学院生のバトバヤル・ガンゾリグ君が「モンゴルの視覚障害マッサージ師の現状の調査」,井上智寬君が「鍼灸等に対する公的助成制度について」を発表し,研究成果を報告した。  抄録集参照(別冊) 2.また,第10回社会鍼灸学研究会を含め,過去10回の社会鍼灸学研究会の成果の総まとめを,鍼灸分野で最も会員数の多い全日本鍼灸学会の学会誌に下記の論考を投稿した。 ・形井秀一,日本鍼灸を明日へ伝える―明治維新後の鍼灸の歴史を踏まえて―,全日本鍼灸学会誌,2015;65(4):242-55. 3.第9回社会鍼灸学の発刊(別冊) 第10回 社会鍼灸学研究会 2015プログラム 9月12日(土)午後1時から Ⅰ.社会鍼灸学に関する研究の round table 形式の発表会  進行:形井秀一  挨拶:研究発表会開催に当たって・・・     形井秀一:筑波技術大学保健科学部 1:00~1:40(発表20分,質疑20分) ①あん摩マッサージ指圧はりきゅう教員養成機関在籍者の背景と進学動機・在籍目的に関するアンケート 調査  嶺聡一郎:専門学校首都医校鍼灸学科 1:50~2:30(発表20分,質疑20分) ②鍼灸等に対する公的助成制度について  井上智寛,形井秀一:筑波技術大学大学院 2:40~3:20(発表20分,質疑20分) ③戦後日本の理療教育における国際支援プロジェクト に関する概観と比較検討  渡邉 麗恵,本村 みのり,可児 亜沙美,徳竹 忠司:  筑波大学理療科教員養成施設 3:30~4:10(発表20分,質疑20分) ④モンゴルの視覚障害マッサージ師の現状の調査  バトバヤル・ガンゾリグ,  形井秀一:筑波技術大学大学院 4:20~5:00(発表20分,質疑20分) ⑤「養生の村」構想  ─地方にこそある鍼灸師の活躍の場─  山形由紀:市立砺波総合病院 5:00~5:30(全体討論会) 6:00~     交流会(つくばエキスプレス・つくば駅周辺) 9月13日(日)午前9時30分から 午前の部 Ⅱ.21世紀初頭15年間の日本鍼灸の歩み,そして,これから ─15年間のあゆみとその分析で読み解く日本鍼灸─ 09:30~09:35  ①「開会の挨拶」  形井秀一:筑波技術大学保健科学部 09:35~10:20(発表35分,討論10分)  ②明治以降150年の日本鍼灸の歩みについて ─20世紀の鍼灸の歩みと21世紀の鍼灸─  形井秀一:筑波技術大学保健科学部 10:30~11:20(発表40分,討論10分)  ③健康を取り巻く世界と日本の諸問題 ─20世紀型健康政策と21世紀型健康政策はどのように異なるか─  小野直哉:未来工学研究所 11:30~12:20(発表40分,討論10分)  ④鍼灸の臨床の実状分析 ─この15年間に鍼灸臨床の現場は,どのように変わってきたか─:  藤井亮輔:筑波技術大学准教授 12:30~14:00:  昼 食 午後の部 Ⅲ.21世紀初頭15年間の日本鍼灸の歩み,そして,これから ─15年間のあゆみとその分析で読み解く日本鍼灸─ 14:00~14:50 (発表40分,討論10分)  ⑤日本の鍼灸研究の歩み-20世紀後半と21世紀初 頭の鍼灸研究を概観・比較して見えること-  山下仁:森ノ宮医療大学教授 15:00~16:00  ⑥21世紀の鍼灸教育の課題   後藤修司:(公財)東洋療法研修試験財団,  全日本鍼灸学会会長 16:00~16:20:コーヒーブレイク 16:20~17:20  ⑧シンポジウムと全体討論:「21世紀の鍼灸は, 20世紀からどのように発展するか」  司会:形井秀一  シンポジスト:  小野直哉:明治国際医療大学  藤井亮輔:筑波技術大学  山下 仁:森ノ宮医療大学  後藤修司:後藤衛生学園 18:00~20:00  ⑨懇親会(場所未定,つくば駅周辺の予定)