「映像演習」におけるアクティブ・ラーニングの推進 永盛祐介 筑波技術大学 産業技術学部 総合デザイン学科 キーワード:アクティブ・ラーニング 背景と目的  デザイン教育の現場においては,「アクティブ・ラーニング」という言葉が取り上げられる以前から,アクティブ・ラーニング的取組が取り入れられてきた。デザイン教育の特徴をプロジェクト学習に取り入れるといったテーマの研究もあり,デザイン教育のアクティブ・ラーニング的特徴をそれ以外に適用するといった動きもある。本学総合デザイン学科では,教員が理論や技術,具体的なツールの使用方法の指導をした後に,その知見に基づき作品を単独制作する一連の流れが定番である。そのため,本学総合デザイン学科においては,作品を作る際に複数人で作品を作り上げる,または知見を得る際に,教員の一方的な講義では無く,グループ・ディスカッションにより学生が主体的に学ぶといった授業は多くない。このような状況に対し,申請者がアクティブ・ラーニングおよびEラーニングの研究に係わった経験を活かし,実際の授業においてアクティブ・ラーニングを実践することが目標である。具体的には,申請者が担当する2年次対象の授業「映像演習」においてアクティブ・ラーニングの特徴を導入し,試行錯誤の中でどのような方法によって授業を運営すれば,単独での学習より高い効果が得られるかを検討することが目標である。 方法  次のようなアクティブ・ラーニング試行を行った。 1.ソフトウェアの使用方法を説明するチュートリアルビデオのサーバーへアップロード。 2.学生が好みの映像作品を持ち寄り,それについて意見交換をする機会の設定。 3.やりたいこと・わからないことについて数回の意見聴取を行い,それに対する即座なチュートリアルビデオの作成・アップロード。 4.作品発表会の設定。 1,3は自学自習を促進する試み,2,4は学生間の交流を促すことによる協調学習効果を狙ったものである。 評価  効果測定のために,「映像演習におけるアクティブ・ラーニングに関するアンケート」(n=6)を行った。設問と結果は以下の通りで, 5段階で評価した。 1.ビデオ教材は役に立った。(4.83) 2.他の受講生と好きな映像について意見交換する機会は役に立った。(4.50) 3.自分がやりたいこと・わからないことについて,映像で説明する機会があったが,それによって疑問は解決した。(4.17) 4.作品の発表会は自分にとって刺激になった。(4.67) 考察  本研究において取り入れたアクティブ・ラーニングについて,学生からの評価はおおむね好評であったと考えられる。また,教材を作る上で,教員が想定した内容を一方的に教えるのではなく,「何をやりたいのか・知りたいのか?」を積極的に学生から聴取することは,意外な発見も有り,翌年度以降の授業設計に大いに役立つと考えられる。また学生にとって「自分のために作られた教材」という意識により,講義に対する「真剣さ」も向上したようにみられた。今後,他の授業においてもこの試みを適用したいと考える。