視覚障害者の職業教育における医療オイルマッサージ技術導入の検証と実用化─ 海外における医療オイルマッサージの疾患・症状別検証 ─ 緒方昭広 筑波技術大学 保健科学部 保健学科 キーワード:オイルマッサージ,リフレクソロジー はじめに  日本においては現在までに,マッサージの技術を視覚障害者の職業教育として長年実践されてきたのが全国に58校の特別支援学校(盲学校)である。全国の特別支援学校は,明治末に私立の訓盲院や技術学校などとして創設されている。そしてその長きにわたるマッサージ教育は,病院という第一線の医療現場への就労として多くの視覚障害者を輩出し自立させてきた功績は計り知れないものがある。しかし,時代の変遷により視覚障害者の病院就職は激減しており,もともとごく限られた職域のなかで自立してきた視覚障害者の就職先は厳しい環境にあるといっても過言ではない。そのような情勢を踏まえ,マッサージという技術をさらに発展させ,一般国民の需要が多くなりつつある「オイルマッサージ」の技術を教育現場に導入することで,大きな職域の拡大が期待できると考えられる。しかし,現在日本において巷で行われている「オイルマッサージ」は癒し系のマッサージがほとんどであり,疾患を治療や予防するという「医療オイルマッサージ」ではないのが現状である。以上のことを踏まえ著者は,30年以上にわたり永年の医療オイルマッサージを実践しているマレーシアのマッサージ師(Norimah Binti Hj Ahmad女史)の臨床的技術をビデオ収録し,他の資料とともにその技術を専門的立場から検討し,体系化された「医療オイルマッサージの基礎と応用」(仮題)としてテキスト化を図ることを目指している。またそのテキストは視覚障害者に理解しやすいものとするため音声解説入りのDVDと弱視にも見やすい図を導入したものを作成する予定である。 研究機関:平成27年9月16日~9月20日研究場所:Nuri Rifrexology Theraphy(クアラランプールin マレーシア) 【実施内容】  ①1店舗に来院するリフレクソロジー(足裏マッサージ)を受療している患者のアンケート調査  ②リフレクソロジーの施術内容を逐次記録し,その様子をビデオ撮影する。 (方法)  1.リフレクソロジー受領者のアンケート調査著者は,3カ所にNuri Rifrexology Theraphyの店舗を持つオーナー(30年以上のキャリアを持つ施術者)の許可を受け,アンケート調査用紙(マレー語)を作成し,患者の同意の上アンケート調査を実施した。  2.リフレクソロジー施術記録前述のオーナーの許可を受け,ビデオに収録するとともに,足部のうら(足底),足背,内側,外側の図を描画した用紙に,施術順序などを記入し記録した。 (成果)  1.リフレクソロジー受領者のアンケート調査患者(利用者)の許可を受けたものに実施した。アンートの回答は,総計35人より得ることができた。男女比は男性16人,女性19任であった。年代別では,20代4名,30代12名,40代2名,50代14名,60代3名であり,30歳代と50歳代に患者が多い傾向がみられた。治療経験期間別では,2年以上受療している」が13人と最も多く,次いで6か月~1年が8人であった。また2年以上の患者の中には,5年以上が7人,10年以上が4人と長期に治療を受けている患者が多かった。通院頻度では,月に1~3回が18人と最も多かった。愁訴別では肩こり16人,腰痛12人,手足の痛み・しびれ10人,頭痛7人が上位を占めた。自覚的な改善率では,半数近くが80~100%と回答し,ほぼ全員が60%以上の改善率を回答していた。自分の受けているリフレクソロジーを他の人に 紹介したいかどうかは,1人をのぞき,ほぼ全員が紹介したいと回答していた。 2.リフレクソロジー施術のビデオ撮影内容については本報告書では割愛する。 図1 来院患者年齢 図2 受療頻度 (まとめ)  今回の研究では,アンケート調査から,日本における有訴者の愁訴頻度と似通っていることが分かった。このことは,医療的に「リルレクソロジー」を視覚障害者の教育の現場で積極的に導入することで,マッサージの発展的かつ将来性に明るい材料となると確信することができた。本業を生かした自立の展望が広がることも実感することができた。またこのことを基に,リフレクソロジーの学術的論文がほとんど無い現状において,その科学的実証を積極的に積み重ねて行く必要がある。