本学学生および卒業生の障害者スポーツトレーナーの資格取得を目指して 松井 康 筑波技術大学 保健科学部 保健学科 理学療法学専攻 キーワード:障害者スポーツトレーナー,テーピング,足関節内反捻挫 成果の概要 障害者スポーツ協会公認の障害者スポーツトレーナーという資格がある。この資格を取得するためには,障害者スポーツ協会が開催する講習会を受講する必要がある。その講習会を受講する条件は二つあり,一つは日本体育協会公認のアスレティックトレーナーの資格を有していることである。もう一つの条件として,理学療法士や鍼灸・あんまマッサージ指圧師などといった医療資格を有し,かつ障害者スポーツの現場で二年以上トレーナーの経験を積んだものとされている。本学は視覚障害・聴覚障害者を対象としている我が国唯一の高等教育機関であり,障害者スポーツが盛んである。そのため,障害者スポーツの現場でトレーナーの経験をすることは比較的容易であり,かつ医療資格を取得できる専攻を有しているため,資格の取得を目指すことは可能である。2020年には東京オリンピック,パラリンピックが開催されることが決まっており,障害者スポーツトレーナーの資格を取得することにより,2020年の東京パラリンピックでトレーナーとして活躍することも可能であると考えられる。本事業は,障害者スポーツトレーナーの有資格者が,本学の在学生および卒業生の中で障害者スポーツトレーナーの資格を取得したい者を対象に,障害者スポーツトレーナーの資格取得に必要な,知識や技術を教えることにより,今後,医療資格を取得した後,障害者スポーツトレーナーの資格の取得の一助となることを目的とする。参加者は15人(男性12人,女性3人)であった。障害者スポーツトレーナーの有資格者が,参加者に対して,障害者スポーツトレーナーの資格取得に必要な知識や技術を教えた。参加者は視覚障害を有する本学の学生であるため,特にテーピング技術の習得が大変であることが推測されるため,テーピング技術の習得に時間を多くかけた。テーピング技術は,巻くのにかかる時間により,習得の程度を評価できるため,巻き方を覚えた段階で,一度足関節のテーピングを巻くのにかかる時間を計測し(初期評価),その後練習を行い,再度時間を計測し(最終評価),上達したかどうかを判定した。練習前後でのテーピングを巻くのにかかる時間の比較には対応のあるt検定を用いて,効果判定を行った。初期評価と最終評価のどちらも測定をできた学生は8人(男性6人,女性2人)であった。年齢21.6±3.7歳であった。視覚障害に関する情報としては,視力が右0.12±0.12,左0.13±0.19で,中心暗点3人,視野狭窄3人,羞明1人,眼振1人であった。結果は,初期評価時の時間は451±109秒,最終評価時の時間は312±65秒であり,有意に改善がみられた。本事業の結果より,視覚障害者においても,練習を積むことにより,スポーツトレーナーに必須の技術であるテーピング技術を習得することが明らかとなった。今後,テーピング技術の習得希望者に対しては,その視覚障害に応じた配慮を行いながら指導し,テーピング技術の習得を促していくとともに,他のスポーツトレーナーに必要な技術に関しても,検討を行っていく。