熱可塑性 CFRPに対する超音波穿孔加工 ─ 自動送り機構の製作 ─ 後藤啓光,谷 貴幸 筑波技術大学 産業技術学部 産業情報学科 キーワード:熱可塑性 CFRP,超音波穿孔加工,自動送り 1.諸言 樹脂と炭素繊維との複合材料である CFRP(炭素繊維強化樹脂)は航空宇宙産業,自動車産業,建設業,医療器具など,多くの産業分野において用途が拡大している。現在主流であるCFRPは熱硬化性樹脂をマトリックス材に使用しており,成形する際,オートクレーブ法を用いるため,設備にコストがかかることや成形に時間を要することなどが課題となっている。 一方,熱可塑性 CFRPの成形には従来技術のプレス法が適用できるため,設備コストが安価であり,成形加工時間の大幅な短縮が可能なため,自動車などの量産品への応用が期待されている。このような熱可塑性 CFRPに対する孔加工技術として,本研究では図1に示す超音波穿孔加工を考案し,実験に使用してきた。子の手法では針状工具に超音波を付与し熱可塑性 CFRPに対して押し付けることによって生じる,工具 -CFRP間の摩擦熱によってマトリックス材である熱可塑性樹脂が軟化させることにより孔加工が実現する。 本研究では,超音波穿孔加工法を実現できる実験装置の改良を実施した。 図1 超音波穿孔加工の構想 2.自動送り装置の製作 従来の実験装置は,超音波振動を付与した針状工具を下方に設置し,加工ステージに固定した CFRPを上方から押し付ける手法を用いていた。そのため,加工荷重を容易に一定値に定めることが出来る反面,加工面の状態観察が困難であることや,加工箇所の位置決めが困難であるなどの課題があった。 そこで,押し付け力を一定にする手法のほか,押し付け速度を一定に制御することが出来る装置の製作を実施した。本研究で製作した自動送り機構を適用した超音波穿孔加工装置の概観を図2に示す。 一般的な工作機械と同様に上方からの加工を行なうことにより試料の表面状態の観察が容易となった。また,加工ステージを XY手動ステージ上に配置することにより,加工箇所の位置決めを行なうことが出来る。 また,日本ナショナルインスツルメンツ社製の LabVIEW FPGAモジュールを適用することで,加工装置の駆動のみでなく,今後,新たな発想を基にした各種制御を追加することが出来るように構築した。 図2 自動送り機構を適用した超音波穿孔加工装置