ユーザビリティ型リアルタイム字幕付きウェアラブルモバイルシステムの開発研究 小林正幸 筑波技術大学 障害者高等教育研究支援センター キーワード:ウェアラブル,モバイル,シースルーメガネ,字幕,リアルタイム 1.はじめに 平成26年度本学産業技術学部1学年32名の学生を対象とした携帯端末に関する質問紙調査では,次のような結果を得た。「スマートフォンの所有について」は,「所有している」が32名中28名(87.5%)「,タブレット端末の所有について」が,「所有している」が32名中2名(6.3%),「スマートフォンのWi-Fi機能の利用について」では,「常に利用する」が32名中6名(18.8%)「時,々利用する」が13名(40.6%)であった。また,近年Wi-Fi機能を搭載したシースルーメガネ型ディスプレイ(以下,HMDと略す)の提供や,安価なレンタル料で仮想専用サーバ(以下,VPSと略す)を利用できる環境が整った。そこで,筆者はVPS(さくらのVPS,http://vps.sakura.ad.jp/)とスマートフォンのデザリングやモバイルルーターを用いることで,遠隔地で話者の音声を聞きながら,パソコン要約筆記IPtalkで入力したリアルタイム字幕をHMD(エプソン MOVERIO BT-200)に提示するユーザビリティ型リアルタイム字幕付きウェアラブルモバイルシステム(以下,ウェアラブルモバイルシステムと略す)を開発した。本成果報告書では,このウェアラブルモバイルシステムの構成,動作と特徴について述べる。 2.構成,動作,特徴 図1に,ウェアラブルモバイルシステム構成を示す。次に,動作の概要を以下に述べる。 ①遠隔地でスマートフォン等を介して話者の音声を聞きながら,IPtalkパソコンで字幕を入力する。 ②IPtalkパソコンで入力された字幕は,字幕受信パソコンに送出される。 ③字幕受信パソコンは,字幕中継パソコンで受信できるようフォーマット変換処理を行い,その後字幕中継パソコンへ字幕を送出する。また,読み付加提示設定モードの場合は,自動で学年別に対応した漢字の後に括弧付きで読みを付加する。 ④字幕中継パソコンは字幕をインターネット介して,仮想専用サーバ(さくらのVPS)に送出する。 ⑤シースルーメガネ型ディスプレイ(エプソン MOVERIO BT-200)は,スマートフォンのデザリングやモバイルルーターのWi-Fiを介して,仮想専用サーバから字幕を受信し,画面下部に2行表示で字幕をリアルタイムに提示する。ウェアラブルモバイルシステムの特徴は,小型で軽量な可搬型の一般的な機器を用い,リアルタイム字幕をシースルーメガネ型ディスプレイを通して見たいものに自由に視線を移動しながら見ることができ,実験や学外実習等の様々な場面での情報保障として活用可能である。 3.おわりに 今後は,ウェアラブルモバイルシステムを聴覚障害者のための講演会,講義支援,実習,実験,イベント等に活用し,その際に実施した質問紙調査を基に,システムの有効性,問題点等を明確にし,システムの改良,改善を図ることである。 図1 ウェアラブルモバイルシステム概略構成