鍼灸,あん摩マッサージ指圧及び土壌の香り刺激が自律神経機能に及ぼす効果に関する研究 森 英俊,大沢秀雄,久下浩史,田中秀明,渡邉真弓,羽生一予 筑波技術大学 保健科学部 保健学科 キーワード:鍼灸,あん摩マッサージ指圧,鍼通電 , 不定愁訴 , 自律神経機能 はじめに 本研究は,鍼灸・手技療法の科学化において神経(特に自律神経)-内分泌-免疫系のホメオスターシスの三角の関係を明らかにする研究である。今回の事業では, (1)鍼灸療法による不定愁訴症状の効果, (2)温灸刺激の効果, (3)鍼・鍼通電刺激(物理的刺激)の効果, (4)手技療法(指圧・あん摩)の効果, (5)土壌観察における土壌の香りが自律神経機能に与える効果を明らかにする目的で検討した。 1.鍼灸療法による不定愁訴症状の効果について 1.1 冷え症と不定愁訴[1,2,3] 1.1.1 冷え症を識別する項目の抽出とその診断精度調査票を用いて若年者を対象に冷え症の自覚の有無により,性別毎に身体的あるいは行動・適応的な特性を比較検討し,抽出された冷え症の指標となる項目から診断精度を算出することを検討した。対象は医療系3大学学生,医療系2専門学校生,あわせて1,617名(有効回答1,146名:70.9%)(男性887名,女性259名,平均年齢21.7±2.9歳)とした。調査内容は,冷え症の有無と冷え症に関する24項目の調査票で,回答様式はリッカート尺度「‘1.非常に思う’,‘2.かなり思う’,‘3.たまに思う’,‘4.思わない’」の四件法で行った。調査票の項目は,因子分析によって男性7項目,女性7項目を抽出した。ROC曲線からCutoff値を求め,男性が-0.154,女性が-0.380以上で冷え症と判定できた。感度・特異度は,感度が男性84.5%・女性83.3%で特異度が男性86.0%・女性85.2%であった。 1.1.2 冷え症に対する鍼治療の多施設共同ランダム化比較試験 成熟期女性の冷え症に対する鍼治療の有効性を多施設共同ランダム化比較試験で検証した。対象は3大学・1専門学校に属する18歳~39歳の女性で,除外基準に該当せず,冷え症の自覚があり,かつ「冷え症状尺度」の総合得点4点以上の22名とした。割付は,施設毎に登録した被験者を外部のコントローラーにより単純無作為化法で行われた。介入は,鍼治療群では左右三陰交(SP6)への置鍼術と左右次髎(BL32)への低周波鍼通電療法(周波数1Hzで20分間)を,週1回の間隔で4回実施した。対照群は試験期間中無治療とした。主要アウトカムはVisual Analogue Scale(VAS)による冷え症の程度,副次的にはSF-36の8つの下位尺度得点と2つのサマリースコアとした。解析では群間の効果量を求めた。除外対象者1名の混入は解析から除外し,脱落した2名について解析を行った。その結果,鍼治療群12名と対照群9名となり,VAS値,SF-36の各スコアの効果量で鍼治療の有効性はみられなかった。 1.2 肩こりと不定愁訴[4] 肩こりの有無で健康関連QOLに及ぼす影響を検討した。対象は,本研究に説明同意した137名(男86名,女51名,平均年齢28.6±9.0歳)とした。研究は,同一者に2週間をあけて2回の調査を行った。調査の方法は,肩こりのために日常生活を妨げる行動で12項目・4件法とした質問票(肩こり調査票),QOLとして健康関連QOLの振り返り期間24時間(SF-8)を用い,直接回収で行った。解析は,肩こりが"ない"・"たまにある"を肩こりなし群,"ある"・"常にある"を肩こりあり群とした。調査票は,肩こり調査票から"上肢帯の動き","活動力"の得点,SF-8では専用スコアリングで8つの下位尺度得点(身体機能,日常役割の身体・精神,体の痛み,全体的健康感,活力,社会生活機能,心の健康)と2つのサマリースコア(身体的機能:PCS,精神的機能:MCS)を算出した。統計解析は性別に行った。肩こり調査票の合計点の比較はカイニ乗検定,Welch検定,SF-8の比較の3群(肩こりあり群・肩こりなし群・国民標準値)を多重比較(Scheffe's F)で行った。有意水準は5%とした。男性の上肢帯の動きは,肩こりあり群より肩こりなし群の得点が低かった。女性の上肢帯の動きと活動力は,肩こりあり群より肩こりなし群の得点が低かった。男・女とも肩こりあり群は,肩こりなし群,国民標準値より体の痛み,全体的健康感,活力,身体的サマリースコアについて得点が低かった。調査で使用した肩こり症状尺度は,健康関連の包括的QOLの中の身体的要素に影響を及ぼすことが考えられた。肩こり症状尺度は,上肢帯の動きと身体的サマリースコアに関連していた。 1.3 不定愁訴(冷え症,肩こり,下肢むくみ)と東洋医学概念(五臓,気血水)の関係[5] 私たちは肩こり特異的症状尺度と東洋医学的な病態(五臓・気血水)との関連を調査した。調査に同意した大学生165名(男110名,女55名),平均年齢27.8歳(標準偏差10.6歳)とした。研究は,研究倫理委員会の承認を受けた。調査方法は,久下らが作成した肩こり尺度における「上肢帯の動き・活動力」,戸村らが作成した五臓スコアの「肝・心・脾・肺・腎」,寺澤が作成した気血水スコアによる「気虚・気鬱・血虚・気逆・水滞・瘀血」の質問票を使用した。肩こりの程度として「ない」・「たまにある」・「ある」・「常にある」との関連について検討した。評価は,各調査票の合計点を用いた。統計解析は,肩こりの程度の4群間を性別間でカイ二乗検定,多重比較(Sidak)した。重回帰分析(直接投入法)によって従属変数を肩こり尺度,独立変数を五臓スコア・気血水スコアで各関係を検討した。肩こり尺度,五臓スコア,気血水スコアの関係をパス解析した。有意水準は,5%とした。肩こりの程度には,性差が認められた。常に肩こりを感じる者は,男性で五臓・気血水,女性で五臓の肝・脾・肺,気血水の気鬱・気逆・水滞で数値が高かった。重回帰分析は,男性が五臓の肝・気血水の血虚から肩こり尺度(上肢帯の動き・活動力)を説明し,女性が五臓の肝から上肢帯の動きを説明し,活動力では関連を示さなかった。肩こり症状と五臓スコア,気血水スコアの構造方程式モデリングは,五臓の肝から肩こり症状へ関連を示した。肩こり尺度は,五臓の肝と関係が強かった。 研究成果の今後の活用等 鍼灸療法による不定愁訴症状の効果(冷え症)が新たな調査票で評価でき,この評価ツールを用いて臨床経過(outcome)の活用に期待できると考える。課題として評価ツールの再現性である。また,肩こりは,臨床経過(outcome)をこの評価ツールを用いて評価する課題がある。 2.温灸刺激の効果について 2.1 温灸刺激のサーモグラムの変化[6] 足三里穴の左側・右側温灸刺激と1回・3回温灸刺激による下腿部・足部の皮膚温変化に違いがあるのかどうかを検討した。事前に研究の趣旨と概要を説明し,同意の得られた男子学生とした。実験1は34名(平均年齢22.4±4.4歳)が左側温灸刺激(3分間刺激)と右側温灸刺激(3分間刺激)及び無刺激(安静3分間)を無作為に割り付けて行った。実験2は,14名(平均年齢22.2±1.1歳)が1回温灸刺激(3分間刺激)と3回温灸刺激(9分間刺激)をクロスオーバー法で行った。刺激部位は足三里穴に円筒灸を行った。測定方法はサーモグラフィ(日本電子社製,JTG-4310)を用いて,仰臥位で下腿部・足部の皮膚温分布を観察した。下腿部・足部を露出し,安静10分間後から刺激前(Pre.),刺激終了直後(Post 0),5分後(Post5),10分後(Post 10),15分後(Post 15),20分後(Post 20)にサーモグラムを撮影した。皮膚温の分析は4ケ所の任意枠(下腿部,足関節部,足背部,足趾部)を下肢部に作成し,これらの平均皮膚温を求めた。解析は温灸刺激後の下腿部・足部の経時的な皮膚温変化について混合モデルによってBonferroni多重比較で線型解析した。有意判定は,危険率5%とした。①左側温灸刺激(3分間刺激)と右側温灸刺激(3分間刺激)及び無刺激(安静3分間)は,温灸刺激後に下腿部・足部の皮膚温が上昇した。無刺激は経時的な変化がなかった。3群間の皮膚温経過の間に違いはなかった。②1回温灸刺激(3分間刺激)と3回温灸刺激(9分間刺激)は,刺激後に下腿部・足部の皮膚温が上昇した。温灸刺激後の皮膚温経過の間に違いはなかった。足三里穴の温灸刺激は下腿部・足部の皮膚温の上昇を示した。無刺激は変化がみられなかった。また,1回温灸・3回温灸刺激による下腿部・足部の皮膚温変化に違いがなかった。 2.2 温灸刺激が胃運動に及ぼす効果[7] 足三里穴に対する温灸刺激が胃運動及び心拍数に及ぼす影響を検討した。本研究に同意した健常者16名に対して1名の脱落者を除いた15名(男7名,女8名),平均年齢39.0±7.1歳を対象とした。温灸刺激は左足三里穴に温灸1回(カマヤミニ弱)を行った。測定は安静仰臥位30分後に温灸刺激7名(温灸群)あるいは無刺激8名(無刺激群)を行い,刺激後仰臥位で30分間を胃電図,心拍変動,皮膚温を記録した。胃電図は腹壁にディスポーサブル電極を左右不容穴ST19(上腹部 ,臍中央の上方6寸,前正中線の外方2寸)に貼付し,胃電計(ニプロ社製)にて測定した。心拍数の測定は心拍用プローブを左耳垂に装着し,心拍変動解析システム Ver.2.0(Biocom Technologies社製)で記録した。皮膚温は温灸刺激直下の皮膚面にK型熱電対を用いてdatalogger (Picotechnology 社製)で測定した。胃電図は周波数領域解析(高速フーリエ変換法:FFT)によって行った。統計解析は経時的変化を分散分析,Fisher(LSD)多重比較で解析し,危険率5%とした。胃電図の周波数変動は,刺激前に比べて刺激終了18分後(Post 18),刺激終了22分後(Post 22),刺激終了26分後(Post 26)で上昇した。心拍数では,温灸群は刺激前に比べて刺激終了直後から20分後まで減少し,無刺激群では刺激終了25分後(Post 25)で上昇した。温灸刺激は,心拍数を減少させ,胃活動を増大させることが示唆された。その機序として,鍼同様,ポリモダル受容器を通じて反射弓を経由したメカニズムが考えられた。 研究成果の今後の活用等 温灸刺激の効果は,左右どちらの側に刺激しても皮膚温に差がなく,1回または3回の刺激についても差がないことから安全性を考慮すれば1回の刺激で皮膚温上昇を示せると考えられる。胃運動の効果は,足三里で亢進,無刺激で変化がなかった。しかしoutcome研究の効果の検討が今後の課題である。 3.鍼・鍼通電刺激(物理的刺激)の効果について 3.1 鍼刺激(物理的刺激)の自律神経機能に及ぼす効果[8] 鍼刺激が自律神経系に対する影響を観察するための複数の観点より研究した結果,私たちは自律神経系が調整される際,特異的なパターン(交感神経機能減少/副交感神経機能増加)が現れることを見出した。本研究では,下半身(足)に着目し,足に2種の刺激(叩打および振動)を与えた際の指床間距離と心拍数を計測し,自律神経系への影響を考察した。健康な研究対象者20名を2群に分け,叩打または,振動の刺激を与えた。叩打群には足底部に50回叩打の刺激を与え,振動群には振動刺激を2分間与えた。これら刺激による自律神経系の変化を指床間距離と心拍数を計測して評価した。自律神経系を調整する鍼刺激同様,両群ともに指床間距離に変化を認めた。しかし,心拍数の変化に鍼刺激とは異なるパターン(副交感神経機能減少/交感神経機能増加)が見られた。自律神経系調整の違いの原因を,緊急時における下肢の役割に求められる可能性がある。骨格筋が豊富な下肢は,短期ストレスに遭遇すると,エネルギーと血液を要する。血流を支配する自律神経系が,平滑筋が豊富で副交感神経支配の胃から血液分布をシフトさせ,骨格筋が豊富で交感神経支配の足(脚)に集中させると考えられるからだ。以上, 本研究では足部への局所刺激が全身の自律神経系の調整を誘導することが示唆された。 3.2 鍼通電刺激の差異が皮膚血流および筋血液量へ与える影響[9,10] 3.2.1 近赤外分光法と水素クリアランス法 鍼実験における近赤外分光法(NIRS)方法の適用性を決定するため,NIRSと水素クリアランス法(HCM)を用いた鍼通電刺激の前後にMBV(筋血液量)変化を測定した。(1)鍼通電の前後の標準化された反応平均(SRM) について水素クリアランス法のSRMは近赤外分光法の SRMよりも高かった(0.073と6.007)。(2)効果の大きさ(ES)について水素クリアランス法の ES は近赤外分光法の ES(0.202と0.648)より高かった。 3.2.2 鍼通電刺激による血流反応が刺激部位により異なるか 鍼通電刺激による血流反応が刺激部位により異なるかについて検討した。40 人の学生を,各 10 名ずつ刺激部位(上部僧帽筋,脊柱起立筋下部,大腿直筋,腓腹筋)により4群に分けた。鍼は 10 ~ 15 mm刺入し通電刺激を5分間行った。サーモグラフィで皮膚温,レーザードプラーで皮膚血流,近赤外分光法で筋血液量を測定し,刺激前後の変化を解析,検討した。刺激前と比較して,刺激部位すべてにおいて有意な筋血液量の増加が認められた。群間での違いは認められなかった。このことは,筋血液量は刺激部位に関わらず鍼通電刺激により増加する可能性を示唆している。一方,皮膚温,皮膚血流の反応は,刺激部位によって異なる反応を示した。皮膚温・皮膚血流と筋血液量の間で反応になぜ違いが見られたのかは興味深いが今後の研究課題である。 研究成果の今後の活用等鍼・鍼通電刺激(物理的刺激)の効果は,筋血液量が肩・腰・大腿・下腿部でそれぞれ増加し,皮膚血流量は増加しない部位もみられ,この変化の差に興味深いが今後の研究課題と考えている。 4.手技療法(指圧・あん摩・マッサージ)の効果について 4.1 指圧刺激による瞳孔反応および心拍変動(心拍数)・血圧の変化 [11,12] 肩甲間部への指圧刺激が瞳孔直径および脈拍数・血圧に及ぼす効果について検討した。右横臥位による肩甲間部の指圧刺激は,刺激中,刺激後に左側瞳孔直径が縮瞳,脈拍数が低下し,無刺激に対して相加作用(additive action)を示した。また,刺激群は刺激中,刺激後に右側瞳孔直径が縮瞳,血圧が低下し,無刺激に対して相互作用(interaction)はなかった。安静時よりも肩甲間部への指圧刺激が自律神経機能への影響があった。 4.2 あん摩・マッサージ刺激の自律神経機能に及ぼす効果[13] 手指部マッサ-ジ刺激が心拍変動,皮膚温(手部・足部・腹部)の効果について検討した。対象は,男子学生13名(平均年齢23.8±1.4歳)とした。マッサ-ジ刺激は,左右手指部(示指基節部)を各1.5分間,計3分間揉捏法を行った。測定手順は,安静坐位15分後に刺激前(Pre),次に手指部刺激3分間(Stim.)を行い,刺激直後(Post 0),5分後(Post 5),10分後(Post 10),15分後(Post 15),20分後(Post 20)に心拍変動・皮膚温を測定した。心拍変動は,メモリー心拍計 LRR-03(GMS社製)を用いて,専用ソフトで高周波数成分(High Frequency:HF),低周波数成分(Low Frequency:LF),LF成分とHF成分の比率(LF/HF比)を解析した。皮膚温は,サーモグラフィ JTG-4310(日本電子社製)を用いて,専用ソフトで上腹部,左右手部,左右足部について任意枠を作成し,平均皮膚温を解析した。統計解析は,心電図R-R間隔変動のスペクトル解析,任意枠平均皮膚温における経時的変化を一般線型モデルによってFisher(LSD)多重比較を行い,Pre をベースに比較した。有意水準は,危険率5%とした。手指部刺激による心拍数スペクトル周波数変化では,心拍数がStim.で減少し,HFがPost 5で増加,LFがPost 5,Post 10で増加,LF/HF比がPost 5で増加した。皮膚温変化では,左手背部がPost 0で皮膚温低下,Post 10,Post 20で皮膚温上昇,上腹部がPost 10,Post 15,Post 20で皮膚温上昇した。手指部マッサージ刺激で手背部,腹部の皮膚温の上昇,心拍数の減少とHF,LF,LF/HFの増加がみられた。 研究成果の今後の活用等手技療法(指圧・あん摩)の効果は,自律神経機能への影響が瞳孔直径,心拍数変動,皮膚温から観察でき,ある一定の反応と考えている。 5.土壌観察における土壌の香りが自律神経機能に与える効果について 土壌の香りを嗅いだ時の心拍数,手指皮膚温の変化を検討した。対象は男子学生12名(平均年齢24.6±1.8歳)とした。研究手順は,安静坐位10分後に土壌の香りを嗅ぐ1分間(Stim.)行い,香りを嗅いだ後(Post)20 分間を観察した。刺激方法は,土壌入りネジ蓋付瓶を研究対象者の鼻近傍に置き,香りを嗅ぐ1分間のみ蓋を外した(以下,刺激群)。土壌入りネジ蓋付瓶を研究対象者の鼻近傍に置き,蓋を外さずに嗅ぐようにした(以下,対照群)。測定装置は,心拍数をメモリ-心拍計 LRR-03(GMS社製),手指皮膚温をサーモグラフィ JTG-5310(日本電子社製),発汗を流量補償方式換気カプセル型ディジタル発汗計 SKN-2000(西澤電機計器製作所社製)を用いて観察した。手指皮膚温の測定は,任意枠(左右第1~5指のMP関節から指先の範囲)を作成し解析した。統計解析は,土壌の香りを嗅ぐ前(Pre.)をベースに一般線形モデルによる多重比較(Fisher LSD)で危険率5%とした。心拍数は,刺激群は,Pre.に比べてStim.(p=0.01),Post10(p=0.022)で心拍数が減少した。対照群は,変化がなかった。また2群間に交互作用はなかった。左右手指(第1指~第5指)皮膚温は,刺激群,対照群とも,Pre.に比べて経時的変化がなかった。また2群間に交互作用はなかった。精神性発汗は,対照群は,Pre.に比べてPost.5(p=0.041)で発汗量が増加した。刺激群は,変化がなかった。2群間の経時的変化に交互作用を示した(p=0.013)。土壌の香りを嗅いだ時の生体反応は,心拍数を減少させた。交感神経機能の抑制によるものと考えている。 研究成果の今後の活用等土壌観察における土壌の香りが自律神経機能に与える効果は,心拍数の減少を観察し,交感神経機能の抑制が示唆されるが結論まで至っていない。 6.まとめ 今回の事業のまとめでは,一定の成果を示すものの結論づける根拠が小さく,引き続き事業を継続する。冷え症の調査票については,感度・特異度と冷え症者の選出評価として教育に換言できると考えられる。 参考文献 [1]Sakaguchi S, kuge H, Mori H, et al.: Extraction ofitems identifying hiesho (cold disorder) and theirutility in young males and females. 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