視覚障がい鍼灸あん摩マッサージ師の臨床教育をサポートするためのカルテ作成支援システムの開発の研究 櫻庭 陽,菊地勇史 筑波技術大学 保健科学部附属東西医学統合医療センター キーワード:電子カルテ,鍼灸あん摩マッサージ指圧,視覚障がい 【緒言】  鍼灸あん摩マッサージ指圧は,現状では診療録(以下,カルテ)を作成する義務はないが,施術情報や経過の記録は,施術の評価・検討や有害事象時にも重要である[1]。本学東西医学統合医療センター施術部門(以下,センター施術部門)でもカルテ作成を義務化している。視覚障がい者もカルテを作成しているが,作成や読み上げ等に補助者が必要になるなど,バリアフリー化が進んでいない。昨今の医療における電子カルテ化による情報の共有や管理等の効率化をみても,鍼灸あん摩マッサージ指圧施術のカルテ作成および電子化は,障がい補償の観点からも重要である。今回我々は,鍼灸師向けに作成された電子カルテ作成支援システムについて,視覚障がい者のユーザビリティを確認し,その可能性を検討した。 【方法】  センター施術部門で3年間,施術とカルテの作成を経験した全盲の鍼灸あん摩マッサージ指圧師1名が,2020年9月より提供を開始した鍼灸院向け電子カルテアプリ,鍼灸つながるカルテ(セイリン株式会社)をノートパソコンおよびスマートフォンで試用し,その使用感等を確認した。   【結果】 1.ノートパソコンwindouws10(読上ソフト:PCTalkerNeo,ブラウザ:NetReader Neo) (1)使用感:スマートフォンの読み上げ機能であるVoiceOver後にPCで確認すると,全体の作りが把握できて進めやすい。動作はPC-Talkerのほうが快適に処理された。 (2)操作ができた事項:患者選択,診療日選択,担当者選択,いつからの選択,程度の選択,主訴に関するメモ,セルフケアに関する質問,施術に関するメモ,施術前後の記録,その他共有事項メモ,FRS見守り設定(オンオフ切り替え,見守り主訴,チャット送信間隔)。 2.スマートフォンiPhone 11 Pro(ios14.42 VoiceOver) (1)使用感:VoiceOverに不慣れな初心者は,やや難しいと感じた。テキスト形式であれば使いやすくなると感じた。 (2)操作ができた事項:患者選択,氏名選択,施術者選 択,いつからの選択,主訴に関するメモ,セルフケアに関する質問,施術テンプレート選択,施術に関するメモ,施術前後の記録,画像追加,その他共有事項メモ,その他写真,FRS見守り設定(オンオフ切り替え,見守り主訴,チャット送信間隔)。 3.全盲視覚障がい者が使いやすくなるための対策  各選択項目で,①キーボードで操作ができる,②可能な限り音声フィードバックができる,③テンプレート記入はテキストボックスを併用する,などで改善されると考えた。 【考察】  PCやスマートフォンを使いこなす視覚障がい者が増えていることから,今回対象とした全盲に限らず,視覚障がい者のカルテ作成には紙カルテよりも電子媒体が導入しやすく,作業効率も飛躍的に改善すると感じた。また,障がいの有無に限らず,カルテ作成援助システムやアプリケーションの開発・普及は,全ての鍼灸あん摩マッサージ指圧にとって福音をもたらすと考える。 参照文献 [1] 藤枝久世,櫻庭陽,他.鈴鹿医療科学大学鍼灸学部  附属鍼灸センターの患者動態報告 診療録入力支援システムの開発と運用.全日本鍼灸学会雑誌.60(3);518,2010.