エディトリアル・デザイン教育におけるアクティブ・ラーニングの推進 永盛祐介 筑波技術大学 産業技術学部 総合デザイン学科 キーワード:アクティブ・ラーニング 背景と目的 デザイン教育の現場においては,「アクティブ・ラーニング」という言葉が取り上げられる以前から,アクティブ・ラーニング的取組が取り入れられてきた。デザイン教育の特徴をプロジェクト学習に取り入れるといったテーマの研究もあり,デザイン教育のアクティブ・ラーニング的特徴をそれ以外に適用するといった動きもある。本学総合デザイン学科では,教員が理論や技術,具体的なツールの使用方法の指導をした後に,その知見に基づき作品を単独制作する一連の流れが定番である。このような状況に対し,申請者がアクティブ・ラーニングおよびEラーニングの研究に係わった経験を活かし,実際の授業においてアクティブ・ラーニングを実践することが目標である。具体的には,申請者が担当する3年次対象の授業「視覚伝達デザイン論・演習D(エディトリアル)」においてアクティブ・ラーニングの特徴を導入し,試行錯誤の中でどのような方法によって授業を運営すれば,単独での学習より高い効果が得られるかを検討することが目標である。 方法 講義序盤にて,次のようなアクティブ・ラーニング試行を行った。 1.誌面をデザインするエディトリアル・デザインに用いるソフトウェア(Adobe InDesign)の操作を学ぶにあたり,事前課題として,自らが好ましいと考える誌面デザインを選択し,そのデザインの構成要素を手作業で分析した。 2.分析した結果に基づき,Adobe InDesignで誌面を再構成する。その差異にAdobe InDesignの操作方法については最低限のレクチャーを行った。 3.作業を進めて行くにあたり,操作方法でわからない点を共有した後に,その方法についてレクチャーを行った。 4.作品発表会を設定した。 1は美しい誌面のデザインには法則性があることを理解し,2ではその法則を理解した上で,ソフトウェアを用いる事により,その法則性と,それを再現するための機能の関係性が明確になることを狙ったものである。3について,Adobe InDesignに類するソフトウェアは膨大な機能を有しており,1つのことを実現するにも多種多様な方法があり,その方法に個人でも好みや差があり講義内で全てを扱うことは不可能である。ここでわからない点を共有したことにより,問題解決の他,新たな使用方法への気付きを期待したものである。4は学修の総括として困難だった点と解決法を共有し,学びを共有する機会として設定した。 評価・考察 本研究において取り入れたアクティブ・ラーニングについて,学生からの評価はおおむね好評であった。特にエディトリアル・デザインにおける「誌面の美しさ」を一方的に説明するのではなく,自ら紐解いていき,それを再現する段階において,それを再現するための機能がソフトウェアには備わっているということを実感させることにより,ツールの意味をより深く理解できたという反応を得た。本研究により得られた知見の概略は以上である。詳細な分析については今後の課題とする。