総合研究棟の大地震に対する構造安全性評価に関する研究 倉田成人 筑波技術大学 産業技術学部 産業情報学科 キーワード:IoT(Internet of Things),地震観測,地震応答解析,構造安全性 1.目的  本研究の目的は,本学・総合研究棟に対して,センサ間の時刻同期を配線なしで確保できるIoT 地震センサによる地震時計測データをもとに,3 次元モデルを作成し,地震応答解析を行って,大地震に対する構造安全性を評価することである。 2.3次元モデル化と地震応答解析による構造安全性評価  図 1 に示す総合研究棟は,3 階建て・鉄筋コンクリート造であり,各階に図 2 に示す IoT 地震センサを設置して地震観測を行っている。過去に計測された地震時の振動波形の周波数分析結果を参考に,図 3 に示すような 3 次元の力学モデルを作成した。  地震時の振動により建物の各階に変形が生じるが,上下階の間(層)で生じる変位を「層間変形」と称する。層間変形を階高で割った値を「層間変形角」となり,この最大値が 1/200より小さければ,損傷が生じないと考えられる。  高層建物の構造設計に用いられる既往地震波(El Centro 波, Taft 波, 八戸波)を入力波として,3 次元モデルによる地震応答解析を行った。その結果,3 波に対しては,建物の長辺方向(X 方向),短辺方向(Y 方向)のいずれにも,最大層間変形角が 1/200を超えたケースは見られなかった。これより,代表的な既往地震波に対する総合研究棟の構造安全性が確認できる。 図1 総合研究棟外観 図2 IoT地震センサ 図3 総合研究棟3次元モデル 3.まとめ  総合研究棟の 3 次元モデルを作成し,地震応答解析を行って,既往地震波に対する構造安全性を確認した。今後は,3 次元モデルの高精度化と,兵庫県南部地震や東北地方太平洋沖地震等の過去の大震災の際に観測された地震波による検討を進め,総合研究棟の構造安全性評価の高度化を進めていく予定である。