コロナ禍における国際交流 オンラインによる講演会「美術館・博物館とアクセシビリティ(聴覚障害)」の実施概要②〜演会の詳細と成果〜 小林洋子 1),井上正之 2) 筑波技術大学 障害者高等教育研究支援センター 障害者基礎教育研究部 1) 筑波技術大学 産業技術学部 2) 要旨:オンラインを活用した新しい国際交流の形として,講演会「美術館・博物館とアクセシビリティ(Museum and Accessibility)」を開催した。ギャローデット大学にあるナショナルデフライフミュージアムのディレクターより,世界各国にある聴覚障害に特化した美術館や博物館の紹介をはじめ,アクセシビリティの観点から聴覚障害のある人にとって使いやすい施設や設備,情報等についてお話を伺った。本稿では,講演会の詳細及び講演会の実施で得られた成果について報告する。 キーワード:オンライン,国際交流,聴覚障害,アメリカ手話,情報保障 1.はじめに  新型コロナウィルス感染症拡大の影響による対面での国際シンポジウムやキャンパス内の国際交流活動に代わり,オンラインを活用した新しい国際交流の形として,講演会「美術館・博物館とアクセシビリティ(Museum and Accessibility)」を実施した [1]。  本稿では,講演会「美術館・博物館とアクセシビリティ(Museum and Accessibility)」の詳細及び講演会の実施で得られた成果について報告する。 2. 講演会「美術館・博物館とアクセシビリティ(Museum and Accessibility)」の概要 写真1 講演会案内表紙 2.1 スケジュール 講演会当日の流れは下記の通りである。 ① 担当者用教室のセッティング ② 講師,情報保障担当者,Zoom 管理担当者,進行担当者集合(Zoom) ③ 講演会 ④ 質疑応答・交流タイム 2.2 講演会の内容  メレディス氏には,聴覚障害に特化した博物館ならびに聴覚障害者にとって使いやすい博物館とは何か,この 2 点について当事者の視点からお話ししていただいた。以下,概要についてまとめる。 写真2 メレディス氏による講演の様子 2.2.1 聴覚障害に特化した博物館・美術館について ● なぜろう博物館があるのか  ろう博物館は,聴覚障害当事者により運営されており,ろう者の歴史やろう文化,ろう者の人生といった要素を含んだ作品が数多く含まれており,これは一般的な博物館ではほとんど見られない。 ● ろう博物館には何が展示されているのか  ろう者の歴史の中で使われてきたもの,例えば補聴器等の様々な技術,そして手話に関わるものもある。これらのほとんどは,聴覚障害者の生の暮らしの中で使われていたものであり,ろうコミュニティから寄贈された様々な歴史的に貴重なものが展示・貯蔵されている。このように,ろう博物館は聴覚障害者自身で作り上げられてきた。 ● 誰が運営するのか  ろう博物館を運営するにあたり,ろうコミュニティより寄与された様々な所蔵について,管理方法や見せ方,歴史について熟知しておくためにも,運営管理に関するトレーニングを受ける必要がある。博物館の管理に詳しいきこえる人たちは,ろう博物館の運営管理に関わるにあたって,先述の内容について把握しておくのはもちろんのこと,ろうコミュニティが築き上げてきた歴史や文化を尊重し,できれば手話を知り,直接コミュニケーションをとるなど,聴覚障害者が主体になれるように心がけることが大切である。 ● Dyer Arts Center at NTID / RIT  ナショナルデフライフミュージアム(National Deaf Life Museum,以下 NDLM)は歴史に力を入れているのに対して,米国ニューヨーク州ロチェスター工科大学・国立聴覚障害工科大学にあるDyer Arts Center では,絵画に力を入れており,聴覚障害者自身が描いた作品が数多く展示されている。時々,NLDM に展示・所蔵されているものとDyer Arts Center に展示・所蔵されているものを貸与し合うこともある。 ● Museum of Deaf History, Arts, and Culture  米国カンザス州にある美術館である。NDLM や Dyer Arts Center のような大学や学校など教育機関にあるのではなく,独立した美術館でもある。歴史やアートなど様々な展示が見られるが,米国中部に位置していることもあり,訪ねる人は比較的少ない。理事は全員聴覚障害者である。 ● Deaf Culture Center  カナダにある美術館で,歴史やアートなどが展示・所蔵されている。美術館等で経験を有してきている聴覚障害者が運営管理に関わっている。 ● Norwegian Deaf Museum  ノルウェーにある美術館で,ろう学校として使われていた建物を再利用する形で,地域の聴覚障害者たちが,一般の美術専門家からノウハウを得るなど協働しながら設立された。現在は聴覚障害者により運営管理されている。 ● Finnish Museum of the Deaf  フィンランドにある,非常に小さい美術館である。世界で最初にできたろう美術館としても知られるが,今までに何度か経営難のために閉館してはまた開館を繰り返してきている。国によって,政府から助成金をもらえるところもあれば,自分たちで資金繰りをしなければならないなど状況はまちまちである。特に,ろうコミュニティにおいては資金繰りがなかなか難しく,大きな課題となっている。 ● Museum of Deaf History and Culture  フランスにある小さな美術館で,きこえる,きこえないに関係なく多くの人が訪ねてくる。特に現地に住むきこえるフランス人からの人気が高いことでも知られており,芸術の国としても知られるフランスならではと言える。 ● Thai Deaf Museum  タイにある美術館で,南アジアにおける数少ない聴覚障害に特化した美術館でもある。タイには,ギャローデット大学やロチェスター工科大学・国立聴覚障害工科大学のように,聴覚障害のある学生のための大学があり,その大学に在籍する聴覚障害学生が積極的に関わる形で運営管理されている。聴覚障害者自身が描いたアートなどが展示・所蔵されている。 ● KDEC Museum  ニュージーランドにある美術館で,小学から高校までの聴覚障害のある学生が在籍している教育機関内にある。アメリカにも同様に,ろう学校内に美術館が設置されているところがいくつかあり,1 〜 2 名のスタッフが常在している。スタッフは地域のろうコミュニティと関わりを持ちながら,美術や博物に関する貴重な情報や資料,所蔵品などを集めている。このように,学校は聴覚障害者の貴重な歴史を保持するために重要な役割を持っている。 2.2.2 聴覚障害者にとって使いやすい博物館・美術館とは ● 配慮して欲しいこと • 映像に字幕:オープンキャプション(最初から映像に組み込まれており,自分で字幕を表示したり隠したりすることはできない),またはクローズドキャプション(自分で字幕を表示したり隠したりできる)を用意する。 • 手話通訳:特別企画やガイドツアー等に手話通訳をつける。 • テクノロジーや設備:磁気ループやテレビ電話(ヘルプなど必要な時)を配置する。 ● 建物における課題 • 音響や振動が床や壁に反響すると,鑑賞する時に混乱する場合がある。 • 会場が狭かったり鑑賞者で混雑したりしていると,手話でのコミュニケーションが難しくなる。 • 照明が暗いと,絵画の説明に目を通したり手話でのコミュニケーションが見えづらくなる。 ● 案内所について • 様々なコミュニケーション(手話,筆談,ジェスチャーなど)に対応できるスタッフの配置,聴覚障害者への柔軟な態度ができるよう心がける。 • テクノロジー:磁気ループや遠隔手話通訳サービスのためのタブレットなど機器を設置する。 ● 手話ツアー • ツアーに参加する時,きこえる手話通訳者をつけるか,もしくは聴覚障害のあるガイドから直接話を聞くか,大体この二通りある。どちらを好むかは人によって様々である。フランスやブラジルでは,聴覚障害のあるガイドから直接話を聞く方が良いと思う人が多いというデータもある。理由として,直接コミュニケーションが取れる,質問などがしやすい,親近感をもちやすいなどが挙げられる。ただし,いつでもできるわけではなく,例えば月1 回などスケジュール的な制約もある。 • 通訳者は,当日依頼することは大概難しく,大抵遅くても1 週間前くらいまでには予約する必要がある。または,手話通訳の準備ができるまで待たなければいけないこともある。これが,聴覚障害者の美術館へのアクセシビリティを難しくしている一因でもある。 ● 音声ガイドツアー • 音声ガイドの情報が掲載されているパンフレットを読みながら作品を鑑賞できるところもある。また,アメリカでは手話で説明している動画が入ったタブレットを貸出しているところが 2 箇所あるが,これは比較的新しい取組みであり,まだ普及していない。 ● 入館料 • 国や美術館・博物館によって,障害者割引があるところとないところがある。また,障害者本人も障害者割引を使うことに対して,肯定的に受け止める人もいれば,抵抗感を持つ人もいる。例えば,アメリカでは障害者割引を使うことに対して抵抗を感じる人が多く,実際使わない人がほとんどである。 • 手話通訳者が常在している,磁気ループを各施設に設置する,音声ガイドの代わりに手話による説明の動画を用意するなどといったアクセシビリティにおける環境が整備されれば,きこえる人と同じように美術館・博物館にアクセスできるということで,障害者割引は不要という考えもある。 ● 一人で,もしくは誰かと行くか • 一人で行くか,それとも友達や家族と行くか,美術館や博物館におけるアクセシビリティの度合いによって変わってくる。 • 例えば,アートを紹介している動画に字幕がついていないところでは,誰かきこえる人と一緒にいる場合は内容を教えてもらうこともできるかもしれない。 • 一人の場合は,内容について記載されたパンフレットみたいなものがあればより好ましいし,一人でも美術館・博物館へ行こうという気持ちになれる。 ● 作品の説明について • 聴覚障害者のリテラシーに配慮する必要がある。作品の説明文の中には難しい言葉や長文で,内容が把握しづらいと考える聴覚障害者も少なくない。ある調査によると,オランダの聴覚障害者は美術館・博物館には行きづらいという結果もあるが,理由として説明が難しくて内容を理解できないからだという。 • NLDM では,世界から集まってくるため英語が読めないという人も多い。アメリカ手話と国際手話による説明動画も視聴できるようにしている。 • スロバキアにある美術館では,スロバキア語,英語そしてスロバキア手話による解説動画を視聴できるQRコードをセットで用意しているところもある。このように,聴覚障害者が好きな時に作品を鑑賞できるということは,自立や自己決定の機会にもなる,またより美術館へ行こうという気持ちにもなれる。 ● 博物館の職員 • 聴覚障害者が,美術館や博物館を訪れた時,きこえるスタッフとやりとりする機会はおそらく,ほとんどないだろう。お手洗いや館内の場所を尋ねるにしても躊躇ってしまう人が多いのではないかと思う。一番重要なことは,手話ができるかできないかというよりは,スタッフの聴覚障害者に対する姿勢・態度であり,色々な方法でコミュニケーションを取ろうという気持ちを持つことが大切である。 • 職員に対する研修会を開催するなど,聴覚障害について理解する機会を与える取組みは重要である。当事者による講師から話を聞くこと,手話やろう文化など簡単にまとめた資料を配布するのも良い。また,1 回で終わらせるのではなく,継続的に取り組んでいくことが大事になる。 • 館内における施設や,展示に関する説明資料,パンフレットなどを作り変える際に,これまでの経験や鑑賞者からのフィードバックを参考にしながら,より障害のある人にとってアクセスしやすいように心がけていくことも大切である。 • 盲ろうの場合,聴覚障害のある人よりもアクセスしにくいといった状況にある。特にコロナ禍において,自由に作品を触ったり,人に触れたりすることができない。いかに博物館や美術館へのアクセスをよくしていけば良いか,今後における課題でもある。 ● 博物館を変えていくために • 聴覚障害者自身が,美術館を協働しながらこうして欲しいとかきちんと意見を伝える必要がある。美術館側も聴覚障害者の声やフィードバックを参考にしながら,よりよくしていこうとする姿勢や態度を持つことも大事になってくる。 • ボストンにある美術館では,聴覚障害者を対象にアンケート調査を行い,その内容をレポートとしてまとめ,それを公開したことで,その美術館のアクセシビリティ向上につながったという良い例もある。 • 情報保障や字幕,手話動画など,費用がかかる。代わりに,ボランティアの聴覚障害者のガイドを活用したり,音声ガイドの内容が記載されている台本を聴覚障害者に貸出たりするなど,お金をかけずにできる方法もある。 • 美術館・博物館側の聴覚障害者に対する姿勢・態度が最も重要である。障害のある人にとってよりアクセシブルな環境を整えるということは,より多くの聴覚障害者が美術館・博物館にいくということにも繋がる。 写真3 講演会後,参加者全員で拍手を送る様子 2.4 質疑応答・交流タイム ● 質疑応答 1 アメリカや世界各国における聴覚障害に特化した美術館や聴覚障害者にとって使いやすい美術館について研究をしてきている立場として,日本の美術館を見てどう思うか。 →名前は忘れたが,ろう者の生活についてきこえる人に紹介している展覧会に行ったことはある。日本には日本ならではの,ろう難聴者を取り巻く歴史や文化が豊富にあるので,例えば聴覚障害のある学生が多く集まる筑波技術大学やどこか会場を借りて聴覚障害に特化した展覧会や美術プロジェクトなど立ち上げてみるのも良いと思う。 ● 質疑応答 2 ギャローデット大学やロチェスター工科大学など,聴覚障害に特化した美術館についての紹介があったが,具体的に内容やコンテンツとしてはどんなものが展示されているのか。日本の中では,デフアート(ろう者によるアート)そのものがあまり広く知られておらず,学生たちもイメージが持ちにくいのではないかと思う。 →ギャローデット大学の場合は,特に歴史に力を入れており「聴覚障害者に特化した保険会社を立ち上げた経緯・歴史(昔は障害があるが故に自由に保険加入できなかったため,当事者が自分で設立した)」「NASA テストを受けたろう者の経験談」「ろう女性史」「ろう建築家」など,その都度様々なテーマで紹介してきている。 ● 質疑応答 3 ろう者によるガイドや手話通訳など美術館におけるアクセシビリティについてまとめたウェブサイトがあれば教えて欲しい。また,これらの情報はどんな手段を使って収集しているのか。日本にも同様なものがあれば良いと思っているところである。 →美術館におけるアクセシビリティやアクセシビリティ の質に関する情報については,現在集めてリストアップする作業を進めているところである。Facebook など SNSや美術館のウェブサイトから情報を集めたり,または直接コンタクトして確認したりしながら,情報収集作業を進めている。 世界にある聴覚障害に特化した美術館についてまとめたものをリストアップしたものについては,ギャローデット大学ウェブサイトに掲載している。 ● 質疑応答 4 アメリカにおいて,美術館におけるアクセシビリティが進んでいるのはどこだと思うか。 →いくつかあるが,ワシントンD.C. にあるスミソニアン博物館も良いと思う。アメリカ有数の科学,産業,技術,芸術,自然史など 19 の博物館,教育研究機関の集合体であり,米国の国立学術文化研究機関でもある,スミソニアン協会が運営している。国が管轄しているものであり,法律に準ずる形で,情報アクセシビリティを提供している。施設内における音声情報には字幕がついており,手話通訳の依頼もしやすい,また全部ではないが,いくつかの施設では聴覚障害者によるガイドサービスもある。映像に手話による説明を入れた動画をオンライン化し,いつどこでも視聴できるサービスもある。 ニューヨーク,ダウンタウンのワールドトレードセンターツインタワー跡に建てられた 911メモリアルミュージアム(911 Memorial Museum,アメリカ同時多発テロ事件の公式追悼施設)も良いと思う。 ● 質疑応答 5 最 近の技 術 進 化により,拡 張 現 実(Augmented Reality,AR)メガネ(AR により,文字や映像を重ね合わせて表示するメガネ型のウエラブル端末)の使用が広がりを見せるようになってきている。聴覚障害に特化した美術館,もしくは一般の美術館において,AR 技術の使用は進んでいるのか,またはこれからAR 技術を使うことについてどういう考えを持っているか。 →現時点では,美術館におけるAR 技術の活用は進んでいるとは言えない。例えばではあるが,作品を見ながら同時に手元にある端末で手話や字幕による説明を見る際には視線の移動が生じるためにやや手間がかかるのは確かである。もし ARメガネを使えば,一つの視野に見たいものが収まるので,より鑑賞しやすいと思う人は出てくるかもしれない。今後の技術革新に期待したい。 ● 質疑応答 6 世界各地にある聴覚障害に特化した美術館の中に,デフスペースに対応している美術館はあるかどうか。 →あるともないともどちらとも言えない。というのは,聴覚障害者の立場を考えて(デフフレンドリー)デザイン設計されているところもあるものの,デフスペースのルールに従っているとは言えない。例えば,ノルウェーにある美術館は,元々聾学校だったものを再利用したもので,広さや明るさなどでフレンドリーな作りにはなっているが,建物自体は古いのでデフスペースのルールに準じてはいない。いつできたかによって,最新のものであればデフスペースのルールに準じたものが増えてくるのではないかと思うが,はっきりとした状況は把握できていない。 ● 質疑応答 7 アクセシビリティの観点から,手話通訳や字幕,磁気ループなど,聴覚障害個々人のコミュニケーション手段や好み,要望それぞれに応えやすい状況にあるのかどうか。 →基本的にはそれが望ましいし,実際に対応してくれる美術館もある。また,美術館側としても聴覚障害者と言ってもいろんなタイプがいて,好みや使いやすさも様々であることを把握してもらうことが大切だと思う。 ● 質疑応答 8 アメリカは,聴覚障害者に対して日本と比べると比較的理解があるのではないかと思うが,どうか。 →法律 ( 障害を持つアメリカ人法 ) の存在を知っている人は多いと思うが,一般的にはまだだと思う。中には聴覚障害者に会ったことがない人もまだ多い。聴覚障害者のことについて理解しようと思う人はまだ少ないと思うし,中には偏見を持つ人もいる。 ● 質疑応答 9 ギャローデット大学には聴覚障害のある教員だけでなく,きこえる教員もいると思うが,彼らは手話ができるのか。 →きこえる教員は基本的に手話ができる。中には着任した当時は全くできない人もいるが,最初の 1 〜 2 年ほどは手話通訳をつけながら同時に手話を覚えるようになっていく。 写真4 参加学生との質疑応答の様子 3. アンケート結果  本オンライン交流を客観的に振り返り,今後より魅力的なイベントを企画・運営していくために参加学生や教職員を対象にアンケート調査を実施,参加者 44 名のうち17 名(回答率:38.6%)から回答を得た。以下,回答結果のまとめについて報告する。 3.1 国際交流イベントの感想について ● 興味深かった 17 ● どちらでもない 0 ● あまり興味を持てなかった 0 3.2 国際交流イベントの理解度について ● 理解できた 16 ● どちらでもない 1 ● 理解できなかった 0 (上記についてそう回答した理由) • 現状を詳しく,なぜそうなっているのかなど,疑問を投げかけながら説明してくださり,すごく分かりやすかった。 • アメリカでは,障害者(聴覚障害者)のための美術館や博物館での情報保障が手厚く,施設も地域に集中はしているものも多数あること,そしてヨーロッパなどにも聴覚障害者のための施設があることを知ることができた。 • 一昨年知人が,東京の美術館で開催された美術展に手話通訳派遣を依頼したところ,2 週間ほど待たされたと聞いた。行きたい,見たいと思ったときにすぐ行ったり見たりできるように,聴覚障害者,聴者誰でも平等になれることが進むことを期待したいと思うきっかけになった。日本で障害者割引制度があることは,平等ではないことの保障という点ではないかという場面でははっとさせられた。 • ろう通訳が付くなど,講演する人にもわかりやすいようにゆっくり話していた。 • 各国のろうに関する博物館について知ることができた。 • ASLもゆっくりで,通訳もゆっくり表現してくださった。 • 国際交流イベントに興味を持つことができた。 • ASL 講義を受講中ということもあり,ASLを少しだけ読み取れたのと,文字と手話通訳,プレゼンテーションで十分に理解できた。 • 国際規模での博物館を取り巻くアクセシビリティについて状況を知ることができた。 • 世界中の博物館に多様性があることに驚いた。 • オンラインとはいえ直接お話をうかがえたのがよかった。途中までの参加で残念だった。 • スライドがわかりやすい/手話通訳・文字通訳が素晴らしかった。 • 学生が積極的に発言していた。 • ろう者のための美術館・博物館について足りないことや取り組むべきことなどを説明していただき,今までの経験を振り返るとともに,新たに気づけることがあった。 • 情報保障がついていた。 3.3 国際交流イベントの運営(日時,進行,テーマ,情報保障等)について • アメリカ手話と日本手話,字幕,音声日本語それぞれ同時に情報保障ができているのはすごいと思った。 • 今までにない新しいテーマだったのでとても興味深かった。 • テーマについてはもう少し幅広い内容の方が,より多くの学生が興味を持って参加しやすいかもしれない。 • 講演とは別にフリートークなどがあるともっといいと思う。 • フリートークをプログラムに入れた方が良いと思う。 • 画面表示が4分割画面の場合(スピーカービュー時),人によっては不要な情報が入ってくるので,希望者には共同ホスト権限を渡した方が良いと思う。 • 講演者の ASLと日本手話通訳が横並びだと見やすいかもしれない。がんばって ASLを見ようとして,わからない時は日本手話を・・・と思った時に横並びのほうが見やすいかもしれない。 3.4 今後の開催形態の希望について(複数回答) ● 集合(対面) 7 ● リモート(Zoomなど) 13 ● 動画配信・閲覧 2 ● その他 2 3.5 リモート開催の感想について(複数回答) ● (リモートで)疲れた 3 ● (リモートで)集中した 6 ● 移動時間が短縮できてよかった 7 ● 機器の設定に不安があった 0 ● 質問しにくかった 1 ● その他 10 (上記について,そう回答した理由) • この時期にリモートで安心して参加できて良かった。 • 気楽に参加できてよかった。 • 少し休憩があると良いと思った。 3.6 今後の国際交流イベントやテーマの希望について • アメリカ手話講座。 • 電話帳に FAX 番号が載っていない,病院での聴覚障害者に対する配慮など,理解していただくための参考事例等,海外情報を知りたい。 • ヨーロッパなどのろう関係に関する研究。 • 大学紹介など,ベーシックなもの。 • 外国人と交流してみたい。 3.7 オンラインによる国際交流を通して海外への興味が膨らんだかどうかについて ● 興味が膨らんだ 15 ● 興味は萎んだ 0 ● どちらでもない 2 (上記について,そう回答した理由) • 国内の美術館,博物館などに行った際に,受付のところなどに意見箱やアンケートがあれば,聴覚障害者のための配慮を考えていただきたい,ということを書きたいと思った。 • 今まで海外に行ったことがないため,その分どのような制度の国なのかを知れて良かった。 • 自分の知らないことがまだ世の中にあることを知れてよかった。 • 視野を広げたいと思うきっかけになった。 • ずっと前から海外に行きたいと思っていたので,今回講演を聞き,とても興味が湧いた。 • 海外に行きたいが,お金はかかるし少し迷っていたので今回講演を聞けて良かった。 • ろう者の博物館を初めて知り,行きたいと思った。 • 元々海外への渡航は何度かあるが,気軽にオンラインで国際交流できたことは大きい。 • 異国の文化が大好きだから。 • 研究テーマが同じだったから。 • コロナ禍の中でなかなか海外に行けない状況で,久しぶりに海外に行きたい気持ちが湧いてきた。 • また少し考え方の視野が広くなったと感じることができた。 3.8 機会があれば実際に海外での交流をしたいかどうかについて ● 海外に行って交流したい 14 ● 海外に行ってまで交流はしたくない 0 ● どちらとも言えない 3 4. まとめと今後の課題  オンラインを活用した新しい国際交流の形として,講演会「美術館・博物館とアクセシビリティ(Museum and Accessibility)」を開催し,学生と教職員,他関係者を含む 44 名の参加があった。  本学と長年国際交流があるギャローデット大学にあるナショナルデフライフミュージアムにおいてディレクターを務めるメレディス・ペルツィ氏をオンラインで繋ぎ,当事者の視点から世界各国にある聴覚障害に特化した美術館や博物館の紹介をしていただいた。  また,アクセシビリティの観点から聴覚障害のある人にとって使いやすい美術館や博物館とは何か等,施設や設備,情報等における合理的配慮などについてもお話いただいた。  コロナ禍により,海外研修や対面交流といったこれまでの国際交流スタイルの実施が困難になったが,これを契機として新しい国際交流スタイルを模索することで,新たな価値を生み出す機会になれたのではないかと考える。  対面形式・オンライン形式それぞれのメリット・デメリットを整理したうえで,技術・システムの進歩も見据えながら,「with & beyondコロナ時代」におけるより有効な国際交流の実施形態を検討していくことも重要な課題であり,今後の検討・進展に期待したい。 参考文献 [1] 小林洋子,井上正之.コロナ禍における国際交流 オンラインによる講演会「美術館とアクセシビリティ(聴覚障害)の実施概要①〜企画と情報保障〜.筑波技術大学 テクノレポート. 2021(in press) International Exchange during the COVID-19 Pandemic — Outline of the Online Lecture “Museum and Accessibility (Deaf and Hard of Hearing) (2) — Details and Results of the Online Lecture KOBAYASHI Yoko1), INOUE Masayuki2) 1)Division for General Education for People with Hearing and/or Visual Disabilities, Research and Support Center on Higher Education for the Hearing and Visually Impaired, 2)Department of Industrial Information, Faculty of Industrial Technology, Tsukuba University of Technology Abstract: We held an online lecture, "Museum and Accessibility" as a new form of international exchange. (1) Museums specializing in deaf and hard of hearing people around the world, and (2) facilities, equipment, and information that are easy for deaf and hard of hearing people to use from the perspective of accessibility, was introduced by the director of the National Deaf Life Museum at Gallaudet University. In this paper, we report the details of the online lecture and the results obtained by conducting the online lecture. Keywords: Deaf and Hard of Hearing, Online, International Exchange, Remote Interpreting, American Sign Language