「オンライン授業から見えてきた聴覚障害学生支援の特質」 日本聴覚障害学生高等教育支援 シンポジウム報告書 主催: 国立大学法人 筑波技術大学 日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク(PEPNet-Japan) 後援: 文部科学省 独立行政法人 日本学生支援機構(JASSO) 一般財団法人 全日本ろうあ連盟 社会福祉法人 日本視覚障害者団体連合 東京大学 障害と高等教育に関するプラットフォーム(PHED) 京都大学 高等教育アクセシビリティプラットフォーム(HEAP) はじめに 第16回日本聴覚障害学生高等教育支援シンポジウム 大会長 筑波技術大学 学長 石原保志 第 16 回日本聴覚障害学生高等教育支援シンポジウムが、PEPNet-Japan として初めてオンライン特別企画として開催され、配信企画には全国各地からのべ2,145名の方にご参加いただきました。本シンポジウムの開催にあたり、多大なご協力をいただいた講師、情報保障者、オンラインでの実施にあたり助言をしてくださった皆様、そして、ご参加いただいた全ての皆様に深く御礼申し上げます。 これまでの参加者が一堂に会す形でのシンポジウムでは、多くの交流を生み、そこから新たな価値が生まれることを是としてきました。ある意味「密」であることを価値の一つとしてきたとも言えます。それが叶わない状況で、どのような形であれば新たな価値を提供できるか。それを突き詰めたのが、今回のオンライン特別企画だったのではないかと思います。 本シンポジウムは、全体テーマを「オンライン授業から見えてきた聴覚障害学生支援の特質」とし、配信企画では、リアルタイム配信の企画を3本、オンデマンド配信の企画を3本、計6本を実施しました。今年度は、全国の大学でオンライン授業が導入され、聴覚障害学生支援もこれに対応することとなりました。この経験から、我々は何を得て、どのような方向に向かっていくべきなのか。各企画を通して考えることのできた、貴重な時間となりました。 そして、今年度の大きな成果の一つとして、オンラインにおける情報保障のあり方を示すことができたことがあります。遠隔での手話通訳・文字通訳であっても、質を落とさず確実に実施する方法を検証し、企画の実施形態に合わせて講師・資料・情報保障のレイアウトをアレンジし、「コロナ禍だから仕方ない」ではない、対等な参加を実現するためのモデルを提示することができました。 その他にも、「聴覚障害学生支援実践事例コンテスト」は、参加者が投稿し、参加者や審査員がオンラインで審査し、結果発表もリアルタイム配信で実施する「聴覚障害学生支援の思いを伝えるコンテスト」として実施し、好評を博しました。また、例年のパネル展示に代わる企画としてウェブコンテンツ「聴覚障害学生支援で活用できるツール集」「正会員大学・機関紹介特設ページ」を開設し、多くの方にご覧いただきました。 本報告書が、オンラインの状況下における支援のあり方の模索を続ける多くの関係者の目にとまり、一助となることを願っております。そして、この共通の経験を財産とし、新たな時代の聴覚障害学生支援の進展、深化を、皆様と共に実現するべく、今後ともお力添えの程、よろしくお願い申し上げます。 もくじ 1.開催要項 2 2.配信型企画報告 1)オープニング企画「障害者差別解消法見直しから考える障害学生支援」 10 2)企画1「聴覚障害学生を理解する―教育背景と心理から―」 18 3)企画2「オンライン授業で変わるユニバーサルな授業作り」 33 4)企画3「オンライン授業における合理的配慮―渦中にいた学生たちは―」 43 5)企画4「オンライン授業は聴覚障害学生支援に何をもたらしたか」 48 6)学生のための座談会「先輩にきいてみよう!大学生活のちょっとした疑問」 59 3.参加型企画 聴覚障害学生支援実践事例コンテスト報告 68 4.ウェブコンテンツ報告 74 5.配信型企画における収録及び配信の方法 78 6.シンポジウム実施体制 82 第 16 回日本聴覚障害学生高等教育支援シンポジウム オンライン特別企画 開催要項 名称:第 16 回日本聴覚障害学生高等教育支援シンポジウム(オンライン特別企画) 目的:筑波技術大学に事務局を置く日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク (PEPNet-Japan)では、特に聴覚障害学生への支援体制が充実し、積極的な取り組みを行ってきている大学・機関と共同で、聴覚障害学生支援に関するノウハウを積み重ね、先駆的な事例の開拓を行ってきた。そして障害者差別解消法の施行をはじめとする昨今の情勢の変化を受け、本ネットワークは 2018 年度から新体制をスタートさせ、より広く強固なネットワークの構築を目指している。 本シンポジウムでは、全国の大学における聴覚障害学生への支援実践に関する情報を交換するとともに、本ネットワークの活動成果をより多くの大学・機関に対して発信することで、今後の高等教育機関における聴覚障害学生支援体制発展に寄与することを目的として2005 年より毎年 1 回開催してきた。今年度は新型コロナウイルス感染拡大を鑑み、現地開催は中止とし、ウェブ開催の形式で実施するものである。 対象:全国の大学等で障害学生支援を担当する教職員、及び聴覚障害学生、支援者その他高等教育機関における障害学生支援に関心のある方々 主催:国立大学法人 筑波技術大学 日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク(PEPNet-Japan) 後援:文部科学省 独立行政法人 日本学生支援機構(JASSO) 一般財団法人 全日本ろうあ連盟 社会福祉法人 日本視覚障害者団体連合 東京大学 障害と高等教育に関するプラットフォーム(PHED) 京都大学 高等教育アクセシビリティプラットフォーム(HEAP) 実施形式:以下いずれかの方法で、インターネット上で実施する。映像配信を行うものにあたっては、手話通訳及び文字通訳をあわせて配信するとともに、資料は電子データでの配布を行う。 1)配信型企画 (事前収録動画の配信/リアルタイム配信およびアーカイブ映像の配信) 2)参加型企画 3)ウェブコンテンツ 開催期間:2020 年 11 月 5 日~12 月 15 日(各企画により配信期間は異なる) プログラム: 1)配信型企画 <オープニング企画「障害者差別解消法見直しから考える障害学生支援」> (表) 形式 リアルタイム配信 日時 11月5日(木)10時30分~12時 アーカイブ視聴 あり(11月19日(木)~12月15日(火) 再配信 2021年1月19日(火)~3月22日(月) 講師 石川准氏(静岡県立大学/内閣府障害者政策委員会 第4期委員長国連障害者権利委員会 副委員長) モデレーター 白澤麻弓氏(筑波技術大学/PEPNet-Japan 事務局長) 企画趣旨 2016 年 4 月に施行された「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(以下「障害者差別解消法」)は、施行後3 年での見直しを規定している。内閣府障害者政策委員会は、これに基づいて見直しを行い、本年 6 月「障害者差別解消法の施行3年後見直しに関する意見」(以下、報告書)をまとめ、公表した。報告書は、今後行われる障害者差別解消法改正のベースになるものであり、ひいては、各大学の障害学生支援にも影響を与えるものである。本企画では、障害者政策委員会で委員長を務めた石川准氏を講師に迎え、報告書のポイントや委員会で行われた議論を伺い、今後大学に求められる変化について考える。 <企画1「聴覚障害学生を理解する―教育背景と心理から―」> (表) 形式 事前収録動画の配信 配信期間 11月4日(水)~12月15日(火) 司会 藤野友紀氏(札幌学院大学) 講師 中野聡子氏(群馬大学) 岩田吉生氏(愛知教育大学) 企画趣旨 聴覚障害学生が抱えている困難を理解し、適切な合理的配慮を提供するためには、聴覚障害学生特有の成長過程や認知特性を念頭に置いた丁寧なアセスメントが必要である。そこで本講座では、適切なアセスメントを行うための知識として、聴覚障害学生の生育背景としての教育・生活環境、ならびに聴覚障害学生の認知特性に関する知識を学ぶ。 <企画2「オンライン授業で変わるユニバーサルな授業作り」> (表) 形式 事前収録動画の配信 配信期間 11 月 11 日(水)~12 月 15 日(火) 企画コーディネート 池谷航介氏(岡山大学) 司会 谷貴幸氏(筑波技術大学) 講師 池谷航介氏(岡山大学) 小畑千尋氏(宮城教育大学) 松﨑丈氏(宮城教育大学) 企画趣旨 今回の準備期間のないまま実施せざるを得なかったオンライン授業において、教員にとっては授業の進め方・資料の作り方などから見直さな ければならない状況にあった。この経験から、聴覚障害学生への配慮の具体例・課題などの知見の共有を行うとともに、今後の「大学におけるユニバーサルな授業のあり方」について議論する。 <企画3「オンライン授業における合理的配慮―渦中にいた学生たちは―」> (表) 形式 事前収録動画の配信 配信期間 11 月 18 日(水)~12 月 15 日(火) 司会 吉川あゆみ氏(関東聴覚障害学生サポートセンター) 講師 岡田雄佑氏(日本福祉大学学生支援センター) 須山勇希氏(日本福祉大学 学生) 企画趣旨 新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、急遽オンライン授業が導入され、聴覚障害学生の授業参加や情報保障支援の状況はこれまでと大きく変化した。そうした状況が急変した中、聴覚障害学生はどのように感じ、またどんな工夫や支援の活用をしてきたか、現役学生の経験談やアンケート結果をもとに改めて振り返るとともに、支援担当職員の話を聞きながら、オンライン授業における合理的配慮とは何か、聴覚障害学生が必要としている支援とは何かについて検討する。 <企画4「オンライン授業は聴覚障害学生支援に何をもたらしたか」> (表) 形式 リアルタイム配信 日時 11月27日(金)10時~12時00分 アーカイブ配信 あり(12月4日(金)~12月15日(火) 司会 白澤麻弓氏(筑波技術大学/PEPNet-Japan 事務局長) 講師 松岡克尚氏(関西学院大学) 池谷航介氏(岡山大学) 藤野友紀氏(札幌学院大学) プログラム 10 時~ PEPNet-Japan 代表挨拶/文部科学省挨拶 10 時 10 分~ パネルディスカッション 企画趣旨 本企画は企画 1~3 を踏まえ、全体テーマである「オンライン授業から見えてきた聴覚障害学生支援の特質」の観点から、司会および講師によるディスカッションを行う。 コロナ禍において日本各地で試行錯誤されてきたオンライン授業は、聴覚障害学生支援にどのような影響を与え、私たちは何を得たのか。そして今後の聴覚障害学生支援をどのように変えていくのだろうか。講師、視聴者とともに考える機会としたい。 <学生のための座談会「先輩にきいてみよう!大学生活のちょっとした疑問」> (表) 形式 リアルタイム配信 日時 11 月 15 日(日)14 時~16 時 アーカイブ配信 なし 司会 太田琢磨氏(愛媛大学バリアフリー推進室) 講師 現役の聴覚障害学生 4 名 企画趣旨 聴覚障害学生が大学生活の中で悩んだとき、例えば支援についての相談や要望、また友人との関係等に関する悩みを抱えたり、他大学の様子を知りたいと思った時、利用可能な様々な相談窓口や学生間のコミュニティが存在している。しかし、そうしたリソースやコミュニティとつながれずにいる学生もおり、新型コロナウイルス感染症の影響で通学の機会が減る中、そうした情報や人間関係とつながる機会はますます狭まっている。本企画はそうした状況を鑑み、リアルタイム配信で、学生からの質問やよくある問合せについて、聴覚障害のある先輩が話をする場を提供する。これまで、実際に顔を合わせたり集まりの場に足を運ぶに至っていない学生も、他の学生の話を聞いたりチャットなどの方法で質問できる機会を持つことで、自ら情報収集したりコミュニティに参加するきっかけとなることを目的として、開催する。 情報保障:リアルタイム配信を含む全ての動画には、手話通訳及び文字通訳を付して配信した。 2)参加型企画 <聴覚障害学生支援実践事例コンテスト 2020 特別編 聴覚障害学生支援の思いを伝えるコンテスト> 1 参加方法  作品の応募にあたっては PEPNet-Japan ウェブサイトより申込み書をダウンロードして必要事項を記入、メール等で申し込む。作品はウェブサイトならびに公式 Twitter で公開する。 2 部門 (表) 形式 (1)ひとことメッセージ部門(チーム応募型) チームにとっての「障害学生支援」とは何か、大切にしていることは何かを考え、100 字にまとめる。 (2)川柳部門(個人応募型) 「聴覚障害学生支援」をテーマに、川柳を作成する。 募集期間 7 月 13 日(月)~10 月 16 日(金) 審査プロセス 全作品を PEPNet-Japan 公式 Twitter に掲載し、より多くの共感を得た作品上位 5 作品を審査員が審査する。 <聴覚障害学生支援実践事例コンテスト 2020 特別編 聴覚障害学生支援の思いを伝えるコンテスト>(結果発表) (表) 形式 リアルタイム配信 日時 11月27日(金)17時30分~18時30分 アーカイブ配信 なし。ただし、後日コンテスト応募者限定で期間を定め公開する。 司会 石野麻衣子氏(筑波技術大学/PEPNet-Japan 事務局(事業コーディネーター)) 登壇者 石原保志氏(筑波技術大学学長/PEPNet-Japan 代表) 日下部隆則氏(同志社大学学生支援センター障がい学生支援室) 内容 各部門について、受賞作品を発表する。審査員からの講評の他、最優秀作品賞受賞の団体・個人に対するインタビューも行う。 3)ウェブコンテンツ 1 参加方法  PEPNet-Japan ウェブサイト内に特設ページを開設し、期間限定(11 月 16 日(月)~12 月 31 日(木)で誰でも閲覧可能とする。 2 プログラム <聴覚障害学生支援で活用できるツール集>  (表) 形式 ウェブサイト(リンク集) 掲載期間 11 月 16 日(月)~12 月 31 日(木) 内容 聴覚障害学生支援で活用できるツールを紹介するページを作成し、期間限定で公開する。いくつかのカテゴリーに分け(コミュニケーションツール、字幕作成、等)それぞれの活用事例を紹介する。   <正会員大学・機関 紹介特設ページ> (表) 形式 ウェブサイト(リンク集) 掲載期間 11 月 16 日(月)~12 月 31 日(木) 内容 ポスター展示の代替企画として、各大学・機関における聴覚障害学生支援や障害学生支援取り組みを紹介する特設ページを PEPNet-Japan ウェブサイト内に開設する。障害学生支援についての紹介動画やウェブサイト、資料(またはそのリンク)を掲載する。 ※所属は実施当時   配信型企画 報告   オープニング企画 「障害者差別解消法見直しから考える障害学生支援」 講師 石川准氏(静岡県立大学/内閣府障害者政策委員会 第4期委員長/国連障害者権利委員会 副委員長) 司会 白澤麻弓氏(筑波技術大学/PEPNet-Japan事務局長)   1.はじめに  2016 年 4 月に施行された「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(以下「障害者差別解消法」)は、施行後 3 年での見直しを規定している。内閣府障害者政策委員会は、これに基づいて見直しを行い、2020 年 6 月「障害者差別解消法の施行3年後見直しに関する意見」(以下、報告書)をまとめ、公表した。報告書は、今後行われる障害者差別解消法改正のベースになるものであり、ひいては、各大学の障害学生支援にも影響を与えるものである。本企画では、障害者政策委員会で委員長を務める石川准氏を講師に迎え、報告書のポイントや委員会で行われた議論を伺い、今後大学に求められる変化について考えた。本企画は、石川氏と白澤氏の対談の形で行われ、本稿はその要旨を、スライド資料に記載していない内容を中心に掲載する。 2.障害者差別解消法見直しのポイント  障害者政策委員会とは、我が国の障害者基本計画に関して政府に意見を伝え、障害者差別解消法の基本方針を作成すると同時に、障害者権利条約が設置を定める、国内の監視機関でもある。つまり、同条約を我が国で実施していくにあたって、条約の理念に沿った運用がなされているかをモニターする役割を担っているとのことである。  当該委員会では、障害者差別解消法の見直しに向けて、2020 年 6 月「障害者差別解消法の施行3年後見直しに関する意見」をまとめている。この過程では、障害者権利条約との整合性を担保すること、我が国の法律に基づく取り組み状況を踏まえ、今後さらに関係者の相互理解を強化・改善する観点から議論がなされ、以下のような論点がまとめられている。   1 事業者による合理的配慮の提供義務化  事業者による合理的配慮の提供は、現状では努力義務となっている。これについて経済界からは、義務化するためには周知期間が必要という意見があり、障害当事者からは、法律の施行からすでに 4 年が経過していることから、早急に義務化すべきという意見が数多く上がった。石川氏によると「報告書原案の文言は『義務化について検討すべき』とされていたが、委員長提案で『義務化を検討すべき』に修正したほど、ぎりぎりの調整だった」「最終的には、政府関係者が読めば、政策委員会が義務化を求めているということが明確に伝わる表現となった」とのことだった。  ここで言う義務が意味するところについて、石川氏は「『要望通りの合理的配慮を提供することの義務』ではなく『対話を行い、かつ過重な負担ではない配慮の方法を一緒に発見し、提供することの義務』である」と説明した。さらに、「現状の努力義務の場合は、一緒に考えるところで努力義務を達成したと捉えられてしまう可能性もあるが、一緒に考えた上でできることがあり、かつ意味のあることがあれば、それを実施するところまでが義務という考え方になる」と述べた。  さらに、事業者側からは「合理的配慮の『配慮』という言葉に内包される事業者の自発性が、義務化によって薄れてしまうのではないか」との懸念が示されていたという。しかし、石川氏は「日本語の「合理的配慮」という言葉は、英語の reasonable accommodation の翻訳としては最善ではなく、普通に訳せば「合理的調整」あるいは「合理的変更」となるはずのもの。それが、配慮という言葉に置き換わると「配慮や気遣いは義務となじまない」という異論が出てくる。本来人権論であるはずの問題が、人道論になってしまうのである。障害に伴う必要な調整、という正しい概念が広まってほしい」としていた。   (写真) 企画の様子 (上段左から白澤氏、石川氏。下段は手話通訳者)   2 差別の定義・概念について  現行の障害者差別解消法は、差別について明確に定義していないため、具体的にどのような行為が差別に当たるのか、十分な社会的認知がなされていないという指摘がある。これについては、明記することでかえって範囲を狭くしてしまう、誤解を招くという意見も多く、現時点では事例を蓄積しつつ基本方針等で丁寧に説明することを検討すべき、という結論に至ったとのことだった   3 障害者差別解消支援地域協議会について  相談・紛争解決のための体制における課題としては、適切な相談対応窓口が不明でたらい回しに合う、専門知識を有しないため解決しない、事業者に指導権限を有する主務大臣が明確でない等がある。これについては、窓口の質的向上やたらい回し防止に向けて様々な策をとること、地方自治体と国の双方が体制を強化することで、運用面の強化が図られるべきという意見でまとまったとされていた。   3.国際的な監視の枠組みとは  現在の法改正の方向性にも大きな影響を与えるであろう動きに、障害者権利条約に関する国際的な監視の枠組みがある。障害者権利条約においては、批准国は批准後 2 年以内に国内での取り組み状況を報告し、これを国連の障害者権利委員会が審査し、質問、対話、勧告するというモニタリングのプロセスがあるとのことである。日本は現在、対話のための質問に対し、12月に回答する段階にあり(2020年 11 月時点)、国連障害者権利委員会副委員長でもある石川氏は「審査の際には政府報告だけでなく、障害者団体をはじめとする市民社会からのレポートも大変重要であり、これに基づいて政府と対話を行っている」と述べた。こうした国際的な動きも注視していく必要があると言えるだろう。   4.まとめ ―大学として取り組むべきこと―  事業者による合理的配慮の提供については、私立大学の義務化が強調された。差別の定義・概念については、直接差別や合理的配慮の不提供等、複雑化した事例も含めて、今後認識を高める必要があり、大学でも理解・啓発等の強化に努めていく必要があると言えるだろう。そして、紛争解決については、国や自治体のみならず、大学内でもたらい回しになる、窓口に申し出ても解決に至らない事例も多くあり、そうならないための体制を強化すること、学内の差別事例を集約し、事前的改善措置に繋げていくための仕組みを作ることが重要である。  石川氏は、高等教育機関における取り組みについて「高等教育における合理的配慮の浸透は、他分野と比して目覚ましいものの、どの大学でも今日的な障害学生支援を理解し対応しているかというと、残念ながらそうではない大学もある」と指摘した。事例は多くないが、過重な負担を巡って大学と学生が紛争になっているケースも見受けられるとのことである。ただし「過重性はどこで線を引くかが難しい。スウェーデンの事例だが、ろう研究者が大学の人事委員会で最有力候補となったものの、手話通訳の経費を試算した結果、過重な負担であるとして採用を取り消され、最終的に、国連の人権委員会の判断を求められたことがあった」とした。  最後に石川氏は「過重な負担のバーは最初低く設定されており、そのバーを徐々に上げていく必要がある」と述べた。今後は、高等教育における支援事例を積み上げながら、我が国における合理的配慮のスタンダードを作り上げるとともに、それを引き上げていくための取り組みが求められるだろう。 報告 石野麻衣子(筑波技術大学)   オープニング企画 資料 (進行スライド) スライド1 障害者差別解消法見直しから考える障害学生支援 講師 石川准氏 モデレーター 白澤麻弓   スライド2 企画趣旨 障害者差別解消法 平成28年4月施行 附則 第7条:政府は、施行後3年を経過した場合において、事業者による合理的配慮の在り方その他同法の施行状況について検討を加えるべき →平成31年4月に3年経過したことを受けて議論開始 第42~50回障害者政策委員会(座長:石川准氏) 平成31年2月~令和2年6月(計11回)   スライド3 企画趣旨 本企画では・・・ 障害者政策委員会における議論を振り返り、見直しに関する意見のポイントを解説 これからの障害学生支援のあり方について議論を深めたい   スライド4 登壇者紹介 講師:石川准氏 静岡県立大学 教授 内閣府障害者政策委員会 第4期委員長 国連障害者権利委員会 副委員長 司会:白澤麻弓 筑波技術大学 准教授 日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク(PEPNet-Japan)事務局長   スライド5 話の流れ ­­­­・障害者政策委員会とは? ­ ­­­­・障害者差別解消法施行3年後見直しのポイントは? ­ ・国際的な監視の枠組みとは? ­ ・今後大学が取り組むべきことは?   スライド6 障害者政策委員会とは?   スライド7 障害者政策委員会とは? 障害者基本計画の策定または変更にあたって調査審議や意見具申を行うとともに、計画の実施状況について監視や勧告を行う ・­障害者基本計画に対する意見 ­・障害者差別解消法基本方針の作成 ­・障害者権利条約に基づく国内の監視   スライド8 障害者政策委員会とは? 構成員: ­・各種障害者団体・支援者団体 ­・地方自治体(全国知事会、全国市長会) ­・経済界(日本経済団体連合会、日本労働組合総連合会、日本商工会議所等) ­・有識者(障害当事者、弁護士、学識経験者) 委員30名+専門員4名   スライド9 障害者差別解消法施行3年後 見直しのポイントは?   スライド10 見直しの基本的な考え方は? ­・障害者権利条約の理念を尊重し、整合性を確保するために ­・地域における取り組み等の実情を踏まえ、強化・改善すべき点について ­・関係者間の相互理解を促進するために ・・・必要な見直しを行う   スライド11 見直しの論点は? 今回は以下の順で説明 ・差別の定義・概念について 2 ・事業者による合理的配慮の提供について 1 ・相談・紛争解決の体制整備について 3 ・障害者差別解消支援地域協議会について 3   スライド12 1 事業者による合理的配慮の提供 【現在の問題点】 ・障害者権利条約においては、公的・私的の別に関わらず、あらゆる差別が禁止とされているが・・ ・事業者による合理的配慮の提供は、努力義務にとどまっている   スライド13 1 事業者による合理的配慮の提供 【委員から出された意見】 ・中小企業等では、過重な負担や訴訟へのリスクを心配する声があるため、引き続き努力義務として理解促進、事例共有を進めていくべき。仮に義務化する場合も周知期間を設け、段階的に導入する必要がある。 ・法律が施行されて4年が経過していることから、周知期間は不要だし、仮に設けるとしても期限を明示すべき。また、必要性が高い分野は早急に義務化すべき。   スライド14  1 事業者による合理的配慮の提供 【見直しの考え方】 ・建設的対話の促進や事例共有、相談体制の充実等を図りつつ社会全体の取組を進めていくとともに、障害者権利条約との一層の整合性の確保等を図る観点から義務化を検討すべき ・障害者側・事業者側双方への相談体制、周知啓発を強化すべき   スライド15 2 差別の定義・概念について 【現在の問題点】 ・法律では、障害を理由とする差別について一律に定義を定めていない ・具体的にどのような行為が差別にあたりうるのか、十分な社会的認知がされていない(間接差別、関連差別、複合差別障害者の家族や関係者に対する差別等)   スライド16 2 差別の定義・概念について 【見直しの考え方】 ・定義の明確化=差別についての認識を広げ、差別の解消に資する ・But 法律で明記することにより、かえって定義を狭めたり、誤解を招く可能性もある ・特に間接差別や複合差別、家族や関係者に対する差別等については、相談事例等の蓄積を図るとともに、基本方針等でより丁寧に示すことを検討すべき   スライド17 3 相談・紛争解決の体制整備 障害者差別解消支援地域協議会 【現在の問題点】 ・国、地方公共団体で各種相談窓口を設けているが、適切な相談機関がわからなかったり、必ずしも専門性を有していない場合がある ・事業者に対して指導権限を有する主務大臣が明確でないなど、国においてもたらい回しが生じている事例がある   スライド18 3 相談・紛争解決の体制整備 障害者差別解消支援地域協議会 【現在の問題点】 ­ ・地域協議会の設置状況  ・都道府県・政令指定市 100%設置 ­  ・市町村 約48%   開催実績0~1回 約53% ・小規模自治体のため個別に設置できない、地域内で需要が高まっていない、広域的な設置があれば検討したい等の声がある   スライド19 3 相談・紛争解決の体制整備 障害者差別解消支援地域協議会 【見直しの考え方】 ­・市町村は身近な相談窓口を担うとともに、都道府県には広域支援相談員を置くなどして、専門的な助言を行う体制を検討すべき ­・内閣府が各省庁と連携して、全国の相談事例を収集・整理するため、担当課長会議を開催したり、たらい回し防止のためワンストップ相談窓口を国に設ける等の検討をすべき ­・相談対応等を契機に事前的改善措置に繋げる取り組みを促すべき   スライド20 ここまでをまとめると ・事業者による合理的配慮の提供について  義務化を前提に検討 ・差別の定義・概念について  基本方針でより丁寧に説明 ・相談・紛争解決の体制整備について ・障害者差別解消支援地域協議会について  質的向上・たらい回し防止に向けて地方自治体&国、双方での体制強化   スライド21 国際的な監視の枠組みとは?   スライド22 障害者権利委員会とは?  (図)   スライド23 日本の場合は? 批准2014.2 初回政府報告2016.6 事前質問事項2019.10 回答2020.6予定 →9月に延期  ↓ コロナのため延期中 建設的対話 (締約国と権利委員会)  | 総括所見(勧告)  ↓ 勧告事項の実行   スライド24 今後大学が取り組むべきことは?   スライド25 見直しを踏まえて大学として取り組むべきこと ・事業者による合理的配慮の提供について  私立大学の合理的配慮義務化 ・差別の定義・概念について  差別に関する学習・理解啓発の強化 ・相談・紛争解決の体制整備について ・障害者差別解消支援地域協議会について  窓口の質的強化・たらい回し防止策検討  事案の集約体制・事前的改善措置   スライド26 まとめ ・障害者政策委員会とは? ・障害者差別解消法施行3年後見直しのポイントは? ・国際的な監視の枠組みとは? ・今後大学が取り組むべきことは?     企画1 「聴覚障害学生を理解する―教育背景と心理から―」 司会 藤野友紀氏(札幌学院大学) 講師 中野聡子氏(群馬大学) 岩田吉生氏(愛知教育大学)   1.はじめに  聴覚障害は理解されづらい障害と考えられており、特に聞こえる立場からすると、聞こえないことが学習や人間関係、集団活動への参加にどのような影響を及ぼすのか、聴覚障害学生が幼い頃から現在に至るまでどのような経験を積んできたかについてはなかなか想像ができない部分がある。しかしながら、聴覚障害学生が抱えている困難を理解し、適切な合理的配慮を提供するためには、聴覚障害学生特有の成長過程や認知特性を正しく理解することが不可欠である。そして正しい理解に基づき、個々の聴覚障害学生に対して丁寧なアセスメントを行うことが求められる。  そこで本企画は、聴覚障害学生が育ってきた生活環境や教育環境、ならびに聴覚障害学生の認知特性について学ぶことを目的として実施した。   2.聴覚障害学生が受けてきた教育への理解  まず、聴覚障害学生の教育背景について、愛知教育大学特別支援教育講座の岩田吉生氏からお話いただいた。  岩田氏からは、まず聴覚障害学生の日常の理解として、聴覚障害に関する基礎知識や聴覚障害のある子ども達の学校生活の様子について説明がなされた(21,22ページ参照)。聴覚障害学生の聞こえについては「聴覚感度が低下している状態」と「聴覚的弁別力の低下している状態」とがあると話され、さらに補聴器や人工内耳を装用してある程度の聞こえができたとしてもある一定の語彙力や文法の力がなければ、それを情報処理することが困難になることについて説明があった。また聴覚障害学生の心理を考えるにあたっては「聞こえること」と「理解できること」は異なることにも留意する必要があり、「補聴器・人工内耳を装用する」「文字情報を提供する」等の情報保障は情報の入力を支援するものであり学習内容の理解には繋がらないことも多く、聴覚障害学生が理解を深めるためには、授業での教員の配慮が必要不可欠であるとした。さらに、聴覚障害学生のアセスメントに基づき、認知特性に配慮した指導の必要性について指摘があった。  また聴覚障害学生が受けてきた教育として、聾学校(特別支援学校)ならびに通常の学校それぞれの教育の状況や心理について、架空事例を用いながら話していただいた(23 ページ参照)。  最後にまとめとして、聴覚障害学生は多様であり、教育歴だけでなく様々な要因を踏まえた上で合理的配慮を検討していく必要があること、そして大学の教職員は聴覚障害学生が試行錯誤を重ねながら学習を積み上げ、他者との関係の中で自己を知り、自ら合理的配慮を求めていける社会人を育てていけるよう学生をサポートして欲しい、とまとめた。  資料には多くの参考資料も添付されているので参照されたい。   (写真) 企画の様子(左から藤野氏、岩田氏、手話通訳者)   3.聴覚障害学生の認知特性から支援を考える  続いて群馬大学共同教育学部特別支援教育講座の中野聡子氏から、聴覚障害学生支援において「補聴支援や情報保障の配慮だけでは不十分」と言われることについて、認知処理の側面からお話いただいた。  まず聴覚障害者の認知処理の特性として、1音声符号化を伴わない認知処理の特性、2あいまいな情報や通訳を通して理解することの認知負荷、3パラ言語情報が得られないことの影響という 3 点があることについて、具体例を提示しながら解説があった(29 ページ参照)。  そして聴覚障害学生の認知特性から考える支援として、聴覚障害の認知特性からくる支援ニーズは発達障害学生や留学生との共通点も多いことから、個別の支援のみならず、学生の多様な背景に配慮したわかりやすい授業(授業のユニバーサルデザイン化)といった FD へのアプローチなどが考えられることについて指摘があった。  また、情報の視覚化がなされていても聞こえる学生と同量・同質の理解や学習が可能なわけではないことが述べられ、支援を検討する視点として、1聴力レベルや内容の高度性、談話タイプなどにより、どのくらい認知負荷がかかっているのかを見積もって支援を考えること、2支援者養成では、内容的な正確性や情報量のみならず、聴覚障害者が情報をどのように認知しているのかを考慮した対応も指導する必要があることの 2 点が指摘された。また、聴覚障害学生にとって聴者とのコミュニケーション経験が不足することは聴者社会で通用する「社会力」の形成にとって大きなハンディとなることから、キャリア教育では発達障害と同様に障害の特性をふまえた支援や指導が必要となるとのまとめがなされた。  続いて司会の札幌学院大学藤野友紀氏との質疑応答があり、まず学生の認知特性を考慮した授業の組み立てについて質問がなされた。これについては、音声日本語と日本手話の情報の並べ方の違いもあり、結論が最後に来るよりもはじめに要点・結論を述べてから、次に具体的内容が続く構造であればより分かりやすくなると思うとの回答であった。  また、聴覚障害学生がパラ言語情報の不足によって社会性が欠如しているかのような誤解を受け、ネガティブな印象形成がなされやすいという点について、聴覚障害学生自身はその要因や仕組みに気付いているものなのか、という質問については、専門的に学んでいない限りは自分の状況等を分析的に理解するのは非常に難しいと思うとの回答であった。自分で分析ができないことで聴覚障害学生は自己評価が低くなりがちであるため、支援者がこういった背景についてきちんと理解し、聴覚障害学生に伝え、方法を提案していくことも非常に大事であるとの考えが示された。  さらに、社会力の形成のためには聴者とのコミュニケーション経験が重要とはいえ、聴覚障害学生の中には聴者、あるいは 3 人以上の集団に対して苦手意識が高い学生もおり、大学としてどのような学びや交流の機会を提供できるものだろうか、との質問がなされた。中野氏からははじめに聴覚障害学生の気持ちへの共感が述べられ、次のような回答がなされた。例えばグループディスカッションであれば、司会者を立て、記録などで内容の確認ができ、情報保障もある、といった配慮のある環境でまずは参加し、成功体験を少しずつ増やしていくのがよいのではないか。また情報保障については、文字通訳であればグループメンバー全員が見られるようにして情報をモニタリングしながら進めたり、手話通訳であればパラ言語の情報を含め適切に手話に変換する力のある通訳者に依頼すること、なども大切である。さらに聴覚障害学生の発言の保障という観点も重要であるが、音声での会話で聴覚障害学生がタイミングを自らつかむのは非常に難しいため、情報保障者がその点に留意した支援を行うことも求められるとした。また聴覚障害学生には情報保障をうまく使い分けながら、自分自身で会話をコントロールし、場に参加していけるよう経験を積みながら、情報保障を使いこなす力を身につけていって欲しい、とのエールが送られた。   (写真) 企画の様子(中野氏)   4.まとめ  最後に司会の藤野氏からまとめが述べられた。  本企画では、情報保障は音声言語の入力支援だけではなく、聴覚障害学生がどのように学びを深め、また、大学での大事な時間を経て自分に対して自己肯定感を持ちながら、主体的に社会に羽ばたいていく、その支援をすることが聴覚障害学生支援なのだと、改めて実感できた。聴覚障害学生がどのように育ってきたのか、どのような経験をしてきたのかということをいつも学び続けながら、また、知識だけでなく、目の前の学生と生身で付き合いながら、想像を膨らませながら互いに対等に付き合っていくことの重要性も感じることができた、と語られた。 報告 萩原彩子(筑波技術大学) 企画1 資料1 (岩田氏) スライド1 PEPNet-Japan配信企画 聴覚障害学生を理解する −教育背景と心理から− 聴覚障害学生が 受けてきた教育への理解 愛知教育大学 特別支援教育講座 岩田 吉生 スライド2 <話題提供の内容> 〇聴覚障害学生の日常の理解 〇聴覚障害学生の心理 〇聴覚障害学生が受けてきた教育 〇まとめ <参考> 聴覚障害の生理・病理の基礎知識 スライド3 聴覚障害学生の日常の理解 スライド4 1.聴覚障害とは? ・聴覚障害という感覚障害ではあるが・・・。 ⇒ <言語・学習への影響> 聴こえない・聴こえにくいと状態から、語彙・文法の理解と表出が困難になり、学習に影響を受ける者が多い。 ⇒ <心理面の影響> 健聴の友人との関わりを深めることが困難で、健康者の集団にいると心の不安が大きい。 ・・・不登校を起こす子どももいる。 ・・・成人ではうつ病になる者もいる。 スライド5 ○「聞こえにくいと困ること」は何か? (1)日常生活で ・家族との会話が聞こえにくい。 ・ライブ映像の字幕がズレて、わからない。 ・騒音の大きい、屋外やお店で、人の声が聞こえにくい。(→店員との会話を避ける。) ・注意を払って生活しないといけないので、心理的にとても疲れる。 等 スライド6 (2)学校生活で ・教員や友人の声が聞こえない。 →授業や活動の内容がわからない。 授業や活動への意欲・関心が低くなる。 ・大勢の友だちと話せない。後ろから声をか けられたり、名前を呼ばれてもきづかない。 →人間関係を作っていくことに苦労する。 スライド7 聴覚障害学生の心理 スライド8 2.聴覚障害者の聞こえ 外耳・中耳・内耳・聴神経・大脳皮質の聴覚野に至る聴覚伝達経路に何らかの損傷があって、 (1) 聞こえにくくなっているか、聞こえない状態 ↓ 聴力感度が低下している状態 (2) 聞き分けが困難となっている状態 ↓ 聴覚的弁別力の低下している状態 (注)聴力レベル以外に、脳での言語処理、特に「語彙と文法力がない」と聞こえていても理解できない。 スライド9 〇聴覚障害者のことばの蓄積 ★ことばが蓄積されにくい。 (図) スライド10 〇聴覚障害者のコミュニケーションのレベル 人工内耳・補聴器を活用して、 1)音を聞き取ること 2)ことばを理解すること 3)1対1で会話を行うこと 4)少人数の集団で会話を行うこと ------------------------------------------ーーーーーーーーー 5)新しい知識を学習すること 6)大勢での集団の話し合いに参加すること ・・・・ すべて異なるレベルであることを認識しておきたい。 スライド11 (注)「聞こえること」と、「理解できること」は 異なることを再確認したい。 <あくまでも、参考例> ・聴者が音声言語を聴取理解する際 聴くことの注意10%、理解60%、記憶30% → 「聴くことへの注意」の負担が小さい。 ・聴覚障害者が音声言語を聴取理解する際 聴くことの注意40%、理解40%、記憶20% → 「聴くことへの注意」の負担が大きい。 → 聞き漏らしがあっても、理解できる支援を! スライド12 3.聴覚・視覚情報の認知の流れ (入力)音声言語を聞く・文字を読む ↓ (情報処理) 1入力情報の短期記憶 2音声言語・文字の意味理解 3理解した情報の保存-長期記憶 4記憶の貯蔵庫から情報を探す 5情報を集めて、自分の考えをまとめる。 ↓ (表出)音声言語を話す ・ 文字を書く ⇒ 学習に困難を抱える子どもは、上記の認知の流れに不具合がある。   スライド13 聴覚障害学生が受けてきた教育 スライド14 聾学校卒業の学生 聴覚特別支援学校(以下「聾学校」とする)は、重度の聴覚障害があり、聴覚活用による音声言語の聴取理解が困難な子どもが学ぶ学校である。 スライド15 4.聾学校の教育 〇教科指導 -学年に準ずる教育 ・乳幼児教育相談・幼稚部での会話力育成から、小学部以降の教科の学力へ。 ・個々の聞こえ・コミュニケーション方法・個々の能力、教科単元の内容を考慮して指導していく。 〇自立活動 -週1、2時間の指導 ・聴覚障害に関する認識を深める。 ・社会的自立と、ことばの習得。 スライド16 〇聾学校・高等部の進路 1)教育内容 ・学年対応であるが、教科書の内容を精選して授業を行う。 ・個人差への配慮 2)進路指導 ・就職する生徒と、進学する生徒の指導 ・聾学校高等部卒業後の進路(2019年度) 433名卒業 ・進学 145名 (33.5%-内訳;大学 21.0%、専攻科 12.5%) ・就職 212名 (49.0%) ・教育訓練機関等の入学 12名 (2.8%) ・福祉就労 55名 (12.7%) ・その他 9名(2.1%) スライド17 5.聾学校出身の聴覚障害学生の課題 ・受験での配慮申請を行う一方、大学の授業での配慮内容が理解できていないことが多い。 ⇒ 聾学校の進路指導担当の教員は、大学での情報保障の知識を把握し生徒に指導されている方もいるが、進路指導の経験が浅く生徒に対して十分な説明がなされていない場合もある。 ・聾学校在籍時は、教員が音声と手話で授業を行い、周囲の友人も同じ聴覚障害があるので相互に理解し合うことができた。 ⇒ しかし、大学入学後、健聴者の教員や学生に配慮を依頼できない聴覚障害学生がいる。 ・語彙・文法に課題があり、レポートの作文力が苦手。 ・英語が苦手で、学習の仕方を理解していない。 スライド18 6.聾学校出身の女子学生Aの事例 <入学時> ・裸耳聴力; 右耳110dB、左耳115dB ・補聴器装用閾値; 右耳55dB、左耳60dB ・コミュニケーション方法; 口話、手話 ⇒ 合格直後に、情報保障の相談依頼があった。 大学関係者と面談の機会を作った。 ⇒ 発音の不明瞭さを気にするが、初対面の人に自ら聴覚障害の説明を重ねていく。 <授業の配慮> ・学内の支援学生によるパソコンテイクが中心。 ・グループワークでは、学外手話通訳者を活用した。 ⇒ 周囲の学生たちも手話が使えるようになっていく。 スライド19 (6.聾学校出身の女子学生Aの事例の続き) <授業での配慮> 1英語の授業 ・会話練習する場合、彼女の発音がわかる友人とペアを組むことを依頼した。 ・リスニング試験を代替問題で対応した。 2音楽の授業 ・ピアノの演奏は、得意な学生から支援を受け、鍵盤の運指を覚えて、試験に挑んだ。 <就職活動> ・教員採用試験の筆記試験と面接練習を、健聴学生と共に取り組み、合格し、聾学校の先生になった。 スライド20 高等学校卒業の学生 スライド21 7.通常の学校で学ぶ難聴児の教育 〇難聴学級・ろう学校の就学基準 「両耳の聴力レベルがおおむね 60 dB以上のもので、補聴器等を使用しても通常の話声を理解することが不可能又は著しく困難な程度のもの」 (注)60dB=1mくらい離れた相手との話し声の強さ 〇通常の学校で学ぶ難聴児の増加 ・早期発見・早期療育(新生児聴覚スクリーニング) ・補聴器の性能の向上 ・人工内耳装用児の増加 ⇒ 先天性の聴覚障害児の 3分の2程度が通常の学校で学んでいる。 スライド22 〇小中学校、高校での難聴児の一般的配慮1 -教員の話し方の工夫 ・ロジャー(FM補聴援助システム)の活用 ・教員は、前を向いて話をする。 ・・・板書しながら、話さないこと。 ・早く話し過ぎない。 (大学ではテイクの学生が苦労する。) ・DVDの映像をビデオを視聴しているときは、映像を止めてから説明する。 ・難聴児が理解しているか確認する。 スライド23 (参考)現在の集団FM補聴システム 1 特徴 ・混信がほとんどない。 ・音質が良い。 ・どこででも使える。・30m位離れていても安定して音声が聴ける。 2 機能 ・話し手の声の増幅 ・周囲の音の増幅 (図) リオン「FM補聴システム」から引用(https://www.rion.co.jp/product/auditory/fm/) スライド24 〇小中学校、高校での難聴児の一般的配慮2 -授業理解を深める工夫 ・教科書に書かれていない情報は、事前に資料に書いておく。 (特に、実験・観察等は、他の児童生徒も、見通しが立たなくて理解が困難であるため、資料がある方がよい。) ・板書を多くする。 ・他の児童生徒の発言は教師が復唱する。または、板書でメモしていく。 ・グループでの話し合いの際の配慮について、難聴児と話し合う。他の子どもに配慮を求める。 スライド25 〇通常の学校で学ぶ難聴児の心理 -難聴児の教育環境の厳しさ ・小学校入学以降 難聴児は、自分の聞こえなさについて、色々と思いを巡らすようになる。 コミュニケーションが円滑に取れないため、友人ができないことの他、先生の配慮がなければ、授業中の勉強の内容が分からず、独学の状況で学ぶことになる。 ・小学校高学年 ~ 中学生・高校生 周囲の聴児のいじめ、孤立、心理的不安 ⇒ 独力で懸命に学び、言語力は高く、学習成績も良いが、友達ができない・少ない等の友人関係に悩む者がいる。 スライド26 8.高等学校卒業の難聴学生の特徴 ・補聴器・人工内耳を活用し、音声の聴取理解がある程度可能で、教員から多くの配慮を受けずに学んできた者が多い。 ・FM補聴援助システムを活用してきた高校生は多いが、わからないことがあっても、教科書や資料を使用して授業が進められるので、自分で調べて学んだきた。 ⇒ 大学は教科書がない授業が多いので、理解がしにくい。 ・大学入学後も、独力で授業を受け、努力する学生がいる。単位を落として初めて支援の必要性に気づく場合がある。 ⇒ 自分が「授業の情報を受け取っていないこと」「授業が理解できていないこと」について気づくのが遅い学生がいる。 ⇒ 聞こえにくさや理解ができていないことがわかっていても、教員に配慮を依頼できないままでいる者が多い。 スライド27 9.高等学校出身の男子学生Bの事例 <入学時> ・裸耳聴力; 右耳70dB、左耳65dB ・補聴器装用閾値; 右耳35dB、左耳30dB ・コミュニケーション方法; 口話 ⇒ 合格直後に、大学から本人に面談の調整を行った。本人は「情報保障はいらない」と話した。 <授業の配慮> ・パソコンテイクを付けた授業を提案し、試しに経験する。 ⇒ 聞き洩らしがあった時に活用できることを知り、以後、ほとんどの授業でパソコンテイクの依頼を行う。 ・グループワークでも、パソコンテイクを活用した。 ⇒ 手話の必要性を理解し、少しずつ手話が学ぶようになる。 スライド28 (9.高等学校出身の男子学生Bの事例の続き) <授業での配慮> 1 レポート課題の取り組み方がわからない ・受験勉強に熱心に取り組んできたので、知識量が豊富であるが、課題に取り組む「戦略」がわかっていない。 ⇒ 1資料収集、2レポートの書き方、4教員・友人への相談、5締切までの時間の調整等がわからない 等 2 グループワークの関係調整力が低い ・分担を決めたが、自分の役割と集団の進行具合との調整が付かず、話し合いに参加しなくなった。 <就職活動> ・自分が教員に向くか悩み続けていた。教員にはならずに、企業に就職した。 スライド29 まとめ スライド30 10.聴覚障害学生は多様である。 ・聴覚障害学生の教育歴だけでなく、 ・コミュニケーション方法(口話・手話)、 ・聴力レベル・補聴器装用閾値、 ・補聴器期(補聴器・人工内耳)、 ・認知特性(+発達障害の特性を含む) ・言語力(語彙、文法、読解力等)、 ・学力(英語、数学、物理等)、 ・失聴時期、 ・家庭環境(保護者の考え方)、 等の要因とともに、個々の性格や経験等も含めて、聴覚障害学生の人間像が形作られていく。 ⇒ 聴覚障害学生のアセスメントと、様々な要因を踏まえた合理的配慮を模索し続けていくことが重要である。 スライド31 <参考> 聴覚障害の生理・病理の基礎知識 スライド32 (参考1)聴覚器官の概要 外耳: 耳の構造のうち耳介(耳殻)と外耳道を合わせた部分。 中耳: 耳の鼓膜から奥のことをいい、中耳腔、耳小骨、耳管からなる。 内耳: 蝸牛と前庭・三半規管よりなる。 (図) 看護roo「聴覚と嗅覚のメカニズム」から引用(https://www.kango-roo.com/learning/1720/) スライド33 (参考2)障害の部位による分類 ・障害の部位による状態像 (聴覚伝達経路のどの部位に障害が生じているのか) 伝音難聴: 外耳または中耳など、音を伝える部位に障害が生じているもの。 感音難聴: 内耳や聴覚神経など、感覚部位に障害が生じているもの。 混合難聴: 伝音部位及び感音部位双方に障害が生じているもの。 スライド34 (参考3)聞こえの程度(聴力レベル)と環境音の大きさ 表 聴力レベルと会話や騒音の大きさ (表) スライド35 オージオグラム (図) 「難聴の補聴器屋さんのブログ」から引用(https://l-s-b.org/2014/05/audiogram/) スライド36 難聴の程度 WHO(世界保健機関)聴覚障害等級表 0-25dB 正常 ささやき声を聞き取れる 26-40dB 軽度難聴 ある程度の会話ができるが、騒音があると聞き取りができない。 41-60dB 中度難聴 普通の会話が聞き取れず、近距離でないと理解ができない。 61-80dB 高度難聴 大きな声でないと聞き取れない。ほとんどの会話が理解できない。 81dB以上 重度難聴 大きな音は振動として知覚し、ことばとして理解できない。 スライド37 (参考4)補聴器・人工内耳 (1)特徴 ・音を増幅する機器 ・周波数を補正し、騒音を軽減させる機能 (2)性能 ・人工内耳の活用 25~40dB程度の聞こえ ・補聴器の装用 裸耳の聴力レベルの数値の 2分の1 の聴力(dB)に向上 → しかしながら、聴者と同じ聞こえにはならない。 スライド38 〇補聴器の仕組み (図) 「あそう補聴器」ウェブページから引用(https://asohd.com/type/) スライド39 〇注意点 ・聴こえに個人差がある。 ・騒音が大きいところでは聴こえにくくなる。 ・話の内容によって理解度が異なる。 ・長時間使用すると疲労が蓄積する場合もある。 → ・常に、聴覚障害学生の聴こえの状況と、支援に関して、ニーズを把握すること。 ・文字情報が必要な場合は、適宜支援する。 スライド40 〇補聴器の概要の動画 ・補聴器の中の世界 https://www.youtube.com/watch?time_continue=99&v=qRu_OXX5lU8&feature=emb_logo You Tube<1:49> 字幕付き (QRコード) スライド41 〇人工内耳の概要 ・ 人工内耳は、聴神経を電気で刺激し、音やことばの感覚を得ることができる装置である。 ・ 有毛細胞を経由せず、聴神経を直接電気で刺激して音感を得る。 ・ 人工内耳を装用した場合、25~40dB程度の聴覚活用が可能となる。 スライド42 〇人工内耳の仕組み (図) 「コクレア社」ウェブページから引用(https://www.cochlear.com/jp/home) スライド43 〇人工内耳の概要の動画 ・人工内耳の仕組み/アドバンスト・バイオニクス https://www.youtube.com/watch?v=PJ3tnLhOHXo You Tube<2:10> 字幕なしのため、日本語の字幕機能を使って視聴する。 (QRコード) スライド44 (参考5)聴覚障害者に関する用語の説明 一般的な定義 ●「難聴者」・・・90~110dB以下の聴力レベルで補聴器による聴覚活用がある程度可能であるため、主たるコミュニケーション言語を音声言語とする者。 ・「人工内耳装用者」・・・人工内耳を装用した者。聴力レベルは、25dB~40dB程度。「難聴者」に含まれる。 ・「中途失聴者」・・・言語獲得期以降に失聴した者で、主たるコミュニケーション言語を音声言語とする者。「難聴者」に含まれることが多い。 ●「ろう者」・・・90~110dB以上の聴力レベルで補聴器による聴覚活用が困難であるため、主たるコミュニケーション言語を手話とする者。 スライド45 健聴者 25dB------------------------------------------ 難聴者(25~40dB人工内耳装用者) 90dB------------------------------------------ ろう者or難聴者(個人差が大きい) 110dB------------------------------------------ ろう者(人工内耳を装用すると)[難聴者をさす矢印] 企画1 資料2 (中野氏) スライド1 第16回日本聴覚障害学生高等教育支援シンポジウム(オンライン特別企画) 企画1「聴覚障害学生を理解する−教育背景と心理から」 聴覚障害学生の認知特性から支援を考える 群馬大学 共同教育学部特別支援教育講座 中野 聡子 スライド2 今日のテーマ 補聴支援や情報保障の配慮だけでは不十分って聞いたことがあるけれど,どうしてなんだろう? 聴覚障害を認知処理の側面から捉えて考えてみよう ■補聴支援や情報保障により,どのような情報が伝達されているのか ■聴覚障害者は得られた情報をどのように理解するのか ↓ 1. 重度聴覚障害者における音声符号化を行わない認知処理 2. あいまいな情報や通訳を通して理解することの認知負荷 3. パラ言語情報が得られないことの影響 4. 聴覚障害学生の認知特性から考える支援 スライド3 1.重度聴覚障害者における音声符号化を伴わない認知処理 なんと読みますか? ドコモ口座 スライド4 1.重度聴覚障害者における音声符号化を伴わない認知処理 (図) (門田, 1998) 2つの単語について「同じ/違う」を素早く判断する課題 (例はいずれも正解が「同じ」) 音韻判断 wait --- weight 意味判断 area --- region 品詞判断 read --- forget 聴覚障害者は音韻符号化を行わないルートBで処理 (中野他,2011) スライド5 2.あいまいな情報や通訳を通して理解することの認知負荷 文字通訳例1 音声認識にかけ誤変換を正しく修正したもの →話している通りに文字化 自分が全くわからない言語,わからない中でも頑張って交渉しようとするときにも,そのバックに自分の味方がいる,自分の味方がいると思っているのか,自分の何,それに対して自分の他に誰もいないという状況の中で過ごすのか,結果的に社交性がどちらに身につくのかというのは,いろいろな聞こえない人,インテグレーションを経験した人の話を聞くと,逆に,同じ聞こえない人の出会いによって自分の世界が広がったというわけです。 (牧原他,2008) スライド6 2.あいまいな情報や通訳を通して理解することの認知負荷 なぜ意味がつかみにくいのか 話し言葉の複文では,ポーズやイントネーションによって,どこに区切りがあるかを示すことが多いが, 文字化させると,読み手は文法的な手がかりをもとに文の切れ目を探さなければならない。 このような原因によって生じた読みにくさは非常に重大であり,文意が全くとれないということもしばしば起こっている。 (牧原他,2008) スライド7 2.あいまいな情報や通訳を通して理解することの認知負荷 文法的手がかりをもとに正しく意味がとれるように修正すると... 自分が全くわからない言語,わからない中でも頑張って交渉しようとするときにも,そのバックに自分の味方がいる,自分の味方がいると思っているのか[「のか」に取り消し線]場合と,自分の何,それに対して自分の他に誰もいないという状況の中で過ごすのか[「のか」に取り消し線]場合と,結果的に社交性がどちらに身につくのかというのは,いろいろな聞こえない人,インテグレーションを経験した人の話を聞くと,逆に,同じ聞こえない人の出会いによって自分の世界が広がったというわけです[「というわけです」に取り消し線]という人が多いようです。 (牧原他,2008) スライド8 2.あいまいな情報や通訳を通して理解することの認知負荷 文字通訳例2 音声認識にかけ誤変換を正しく修正したもの →話している通りに文字化 もっと言ってしまえば菊池さんには悪いんですが,菊池さんはあくまで,今回の実験の聾学生役という役目なので,字幕が例えば止まってしまったりして混乱したとしても,菊池さんのことをほおっておくという言い方はヘンですが,実験上はそうなったということを理解してもらうということですが,受講している学生は,実験が失敗したから受講できなくなったということだと困るわけですから,常に支援者がスタンバっているという形をとっています。 (牧原他,2008) スライド9 2.あいまいな情報や通訳を通して理解することの認知負荷 なぜ意味がつかみにくいのか 統語的なルールに従うと,従属節「〜ので」の中に従属節「〜が」を含むことはできない。 そのため,この例では,「〜が」で構成される従属節中に「〜ので」が含まれる構造として理解され, 本来「ので」で切るべき意味単位がそこで切れず,意味が不明確になってしまっている。 (牧原他,2008) スライド10 2.あいまいな情報や通訳を通して理解することの認知負荷 文法的手がかりをもとに正しく意味がとれるように修正すると... もっと言ってしまえば菊池さんには悪いんですが,菊池さんはあくまで,今回の実験の聾学生役という役目なので,[「なので,」に取り消し線]です。字幕が例えば止まってしまったりして混乱したとしても,菊池さんのことをほおっておくという言い方はヘンですが,実験上はそうなったということを理解してもらうということですが,[「ことですが,」に取り消し線]になります。しかし,受講している学生は,実験が失敗したから受講できなくったということだと困るわけですから,常に支援者がスタンバっているという形をとっています。 (牧原他,2008) スライド11 2.あいまいな情報や通訳を通して理解することの認知負荷 手話通訳例 手話通訳者に多い,日本語の影響が強い訳出 翻訳 学習者 似る 状態 見る 翻訳 でも 母語 違う 言語 訳出 する 翻訳 通訳 より 訳出 物 慣用 性質 スタイル もっと 言語 的 正確 それ A言語 B言語 スキル 違う 明確 示す スライド12 2.あいまいな情報や通訳を通して理解することの認知負荷 元の日本語文 翻訳の学習者にも似たような状況が観察される。 翻訳でも母語でない言語への訳出は広く行われているし,翻訳では通訳における以上に訳出物の寛容性,スタイル,さらには言語的正確さという点にA言語とB言語のスキルの違いがはっきり現れている。 スライド13 2.あいまいな情報や通訳を通して理解することの認知負荷 高度な内容の学習における聴者と聴覚障害者の注意資源の使われ方の相違 (図) スライド14 2.あいまいな情報や通訳を通して理解することの認知負荷 内容についての分析の例 ●そういえば以前に言ってたあのことも,こういう視点でみると共通してるってことか ●AはBと言えるならばCはDってことだな。 ●ここらへんはあんまり重要ではないから適当に聞いておいても大丈夫だな。 ●...ということは,次はこういう展開がくるんじゃないか ●いや,ああいうふうに言ってるけど,それはこういうふうに考えると違うと思うんだよね。 ●さっき学生が言ったあの発言って,すごい重要なこと言ってたってことだよな。自分にはそういう見方はなかったな... スライド15 3.パラ言語情報が得られないことの影響 1と2,どちらの話し方がわかりやすい/興味深そうだと予想しますか? (写真)1 (写真)2 スライド16 3.パラ言語情報が得られないことの影響 1 「高知サイエンスカフェ」この空のかなた〜第二の地球,ダークエネルギー〜 https://www.youtube.com/watch?v=1dBKmYpte0A (QRコード) 2 喋り上手になる最強方法 スピーチ下手を直すコツがある https://www.youtube.com/watch?v=IQXWu5EHePA (QRコード) スライド17 3.パラ言語情報が得られないことの影響 8人の聴者の会話例 A: 委員の人にも周知しといてって言われたから。 B: なるほどね。ま,とりあえず企画が行ったってことだから C: 入江課長ね。まずひとまず智希にゆうけど D: はいはいはい。 E: 好きじゃないんだよね。 F: まあそれ以降何か例えば,だから長さがどうとか,ま,うちもステージでどうってゆうのを聞くんだけど。だいたい自分で測れって言われるから,そういうのは。こう聞かないで,自分たちでやってって感じでした。 スライド18 3.パラ言語情報が得られないことの影響 8人の聴者の会話例(続き) G: もともそのつもりですって。 H: なるほどね。 B: 事務所巻き込むなってこと。 D: はい。 A: う〜ん。そんな感じかな。 F: 裏を返せば許可,い,許可いらないってことでしょ。忙しいからみたいな。 スライド19 3.パラ言語情報が得られないことの影響 • 判断材料としてどこに注意を向けているか,によって,情報の受け止め方,理解の仕方,分析の仕方が異なってくる。 • 文法的な手がかりや,省略されている言葉を想像して補うことで理解できる範囲を超えている ↓誤解 ■表面的なことだけで判断しようとする ■空気を読まない,協調性がない,思考が硬い...社会性の欠如 スライド20 4.聴覚障害学生の認知特性から考える支援(1) 聴覚障害の認知特性からくる支援ニーズは,発達障害学生や留学生との共通点も多い。 ↓ 個別の支援のみならず,学生の多様な背景に配慮したわかりやすい授業(授業のユニバーサルデザイン化)といったFDへのアプローチなどが考えられる。 スライド21 4.聴覚障害学生の認知特性から考える支援(2) 情報の視覚化がなされていれば,聞こえる学生と同量・同質の理解や学習が可能なわけではない。 1. 聴力レベルや内容の高度性,談話タイプなどにより,どのくらい認知負荷がかかっているのかを見積もって支援を考える 2. 支援者養成では,内容的な正確性や情報量のみならず,聴覚障害者が情報をどのように認知しているのかを考慮した対応も指導する必要がある。 スライド22 4.聴覚障害学生の認知特性から考える支援(3) 聴者とのコミュニケーション経験が不足することは,聴者社会で通用する「社会力」の形成にとって大きなハンディとなる。 ↓ キャリア教育では,発達障害と同様に,障害の特性をふまえた支援や指導が必要となる。 スライド23 引用文献 •中野聡子・山田敏幸・上原景子・金澤貴之・レイモンド B. フー現ブーム・上田一貴・伊福部達(2011)日本人聴覚障害者による視覚提示英単語の語彙情報アクセス―誤変換を含む英語音声認識字幕の改善に向けた実験的検討―.群馬大学教育学部紀要 人文・社会科学編 60, 135-143. •牧原功・金澤貴之・福島智・井野秀一・伊福部達・黒木速人・中野泰志・中野聡子(2008)音声認識技術による字幕運用の課題―音声言語を文字化することの問題―.群馬大学留学生センター論集 7,33-50. 企画2 「オンライン授業で変わるユニバーサルな授業作り」 企画コーディネート 池谷航介氏(岡山大学) 司会 谷貴幸氏(筑波技術大学) 講師 池谷航介氏(岡山大学)    小畑千尋氏(宮城教育大学)    松﨑丈氏(宮城教育大学) 1.はじめに 本企画は、準備期間のないまま実施せざるを得なかったオンライン授業において、教員は授業の進め方・資料の作り方などから見直さなければならない状況にあった経験から、聴覚障害学生への配慮の具体例・課題などの知見の共有を行うとともに、今後の「大学におけるユニバーサルな授業のあり方」について検討することを目的として実施した。 2.各講師の話題提供から 池谷氏からは、障害学生支援を担当する立場からの話題提供がなされた。授業担当教員との確認・調整はもちろん、聴覚障害学生のニーズを十分に聞き取ることが困難な状況下で支援提供を進めていく中で、聴覚障害学生が受講する授業の担当教員が行った様々な試行錯誤の好事例とともに、「例年通り」と今まで思ってきたものはいったい何だったのか、という気付きに基づき話が進められた。この中で、支援室と学部教員の連携、全国的なセンター機能からオンライン授業に活用可能なノウハウをいち早く発信していくことの重要性、オンライン授業は全ての学生に対して授業効果があるのではないか、などの意見が述べられた。 続いて小畑氏より、文字に置き換えるのが難しい音楽を扱うオンライン授業での実践について、事例紹介がなされた。大変だった点として、教員自身が遠隔授業で使用するプラットフォーム活用方法の試行錯誤に多くの時間を費やしたこと、対面時には当たり前にできていた音楽を共有するための方法を模索する必要があったことなどが紹介された。また、受講する聴覚障害学生に対する情報保障に限らず、受講学生全員に対する配慮も必要であったことなどから、「どのような力を身に付けさせたいか」というコンピテンシーベースでの授業の再構築が必要であったことなど、映像や学生の感想を交えながら説明がなされた。 松﨑氏からは、普段は手話で講義し、手話通訳による情報保障(松﨑氏の手話を音声に通訳)を配置して実施している授業を、今回どのように構築したのか、実践例が紹介された。これまでも教育実習期間で欠席せざるを得ない学生への支援として講義動画の YouTube 公開は行っており、そのノウハウを活用してオンデマンド方式での授業を実施した。しかしながら、学生の受講環境が様々であることを考慮し、動画は対面授業に近い雰囲気になるように撮影する、1つの授業動画は 60 分前後にまとめて残りの時間を課題に取り組めるようにするなど負担の少ない受講方法の工夫を行った。毎回の授業後にはアンケートで受講状況を把握し、問題点の改善などの配信時期の変更等調整を重ねながら進めていた。こうした実践を経た授業評価アンケートでは「学びや能力の向上」の得点が非常に良い結果であったことから、オンデマンド方式での授業により着実な学び・深い学びに寄与する可能性があることが述べられた。 (写真) 企画の様子(上段左から谷氏、池谷氏、小畑氏 下段左から松﨑氏、手話通訳者) 3.ディスカッションを通して 各講師からの話題提供を受け、2つのテーマでディスカッションがなされた。最初に今回新たに実感した課題や、どのようなものがあればより良かったと感じているかというテーマで議論がなされた。ここでは、仲間と一緒に学ぶ機会提供の重要性、字幕を用いた大学の授業作りを全ての学生のために進めて行くことが必要ではないか、教員 1 人が負担を抱えることにならないよう組織と共に持続可能な形を考えていくことが必要であること、学生の様々なニーズを引き出して対応方法を試行錯誤するだけでなく、その過程も教育的視点を持って共有する必要性などが意見として出された。これらを受け、池谷氏より大学はコンテンツを提供すればそれでよいのではなく、「学び」という営みを行う場であることが再確認された、とのコメントがなされた。  2つ目のテーマでは、今回の実践をもとに今後のユニバーサルな授業のあり方についての議論がなされた。ここでは、現状や課題点を学生と 共に模索するなかで学生との距離を縮め、様々なノウハウを開発して支援者との対話が始まり、さらに組織との調和をとるという形で上昇していく形なのかもしれないとの意見が出されるなど、視点の広まりが感じられるものだった。さらに、オンライン・オンデマンドは対面授業の劣化版では決してないことが確認されたことから、誰のための支援なのか、という視点から、みんなのための教材という視点に変えてオンラインを取り入れ、多様性のある人たちに対応できるように発信して行きたい、という点でまとめられた。 (写真) 企画の様子(左から谷氏、手話通訳者) 4.まとめに代えて 本企画実施後、松﨑氏からディスカッションを通して感じられたメッセージが講師全員に寄せられた。本企画の本質に迫る内容であることから、ここに掲載させていただく。 「今回の企画では、障害の有無を問わず学生全員が参加できる授業の探求をコロナ状況下での実践を通して何が見えてきたか、ということでしたね。これについて“教えられる側”の私の経験を振り返ると、幼稚園から大学学部までの間、合理的配慮が皆無だったので、これが授業なんだ!面白い!と感動したり思索を深めたりする経験が得られなかったという喪失感が現在も深く横たわっています。情報が得られる以上に、こういう学びまでできるんだ!という授業を経験できず長年喪失感を抱えているからこそ、コロナでも障害の有無を問わず誰一人喪失感を味わわせたくないという強い想いに動かされ、今回発表したように取り組んだのかなと思います。ただ、それは聴者の側にはあまりないことで私個人の経験ですから、今回のディスカッションでどう触れてよいか判断しかねていたのですが、小畑先生や池谷先生のお話しをお伺いして、やはりお二人も、コロナによって喪失感、というか、つながれないという断絶感を経験されて、つながりたい、わかちあいたい、という繋合希求性に動かされて一心不乱で取り組んできたのかなと感じました。そうしてつながれたことに喜びを感じ、情報だけでなく学びの世界でもよりつながれる授業を探求していくものだろうと感じました。 池谷先生は「営み」ということばを使われていましたが、「つながりたい、わかちあいたい」という切実な“祈り”が「営み」の根源にあらねばならないのでしょう。これからもそのことを意識して大切にしていきたいと思いました。小畑先生が今回発表した内容はそれだけでも大変興味深いものですが、先生が赴任された時から聴覚障害学生にどうやって授業したらいいのか一生懸命考えておられて、自身の勉強のために聴覚障害に関する私の授業に出席したり、聴覚障害教育専門の教員と相談したりと何度も足を運んでくださるほど、大変熱意のある素晴らしい先生です。そうした目に見えない自己研鑽の積み重ねが、現在の授業実践にもつながっています。 また、私は、自分自身が面白い!と思える授業を経験したことがないために現在もずっと授業をしても遊離しているようなモヤモヤがつきまとっているのですが、しかし今回の企画を通して、やはり自分の授業を受講すると決めてくれた学生たちから私の仕事に対する評価を受けることで、自分は「授業」をすることができているんだ、と少しずつ「私」を確定していくしか他に道はないのだな、と確認することができました。教育者とは何か?を問う経験にもなりました。」  オンライン授業という観点からユニバーサルな授業のあり方について議論を重ねてきたが、参加頂いた方々が「全員が授業に参加できているのか」という根本の部分から改めて授業のあり方、支援のあり方を見つめ直す機会につながったことを願いたい。 報告 磯田恭子(筑波技術大学) 企画2 資料1 (池谷氏) スライド1 日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク(PEPNet-Japan) 第16回シンポジウム 企画2「オンライン授業で変わるユニバーサルな授業作り」 オンライン授業における聴覚障害学生支援から見えてきたこと 岡山大学 高大接続・学生支援センター 池谷 航介 スライド2 話題提供の流れ (1)2020年前期の状況 (2)個々のニーズに応じた支援の実際 (3)再確認できたこと スライド3 (1)2020年前期の状況 授業担当教員 △例年通りの授業ができない >実習・演習・グループワーク >試験等の方法 >オンラインと言われましても・・・ 支援室 △例年通りの支援ができない >どのような授業形態になりますか? >どんな方法(手段)で支援する? >情報保障のサポート学生を呼べないよね? >どうやって学生のニーズをきく? そもそも「例年通り」ってなんだ?? スライド4 (2)個々のニーズに応じた支援の実際 (岡山大学法学部・大森秀臣教授の実践から) 「(専門内容等を)本人に十分伝えられるようにしたい」 ○オンライン(リアルタイム配信)における支援方法・機材の試行錯誤 >>>使ってみたが使いづらい >>>より使いやすいツール スライド5 (2)個々のニーズに応じた支援の実際 ○一部対面(ハイブリッド)にする上での試行錯誤 >>例:「マスク」という障壁 ・口形が見えない ・テイカーの聞き取り・音声認識への影響 >>距離・座席の試行錯誤 >>機器類・用具類の試行錯誤 試行錯誤から何が見えてきたか スライド6 展望と課題 ○聴覚障がい学生のみならず、全ての学生への学修支援として >>リアルタイムの授業だけでなく、「授業動画(映像)」、「活字」、いくつも方法が準備できれば、それぞれが学びやすい方法を選ぶことができる。 ○連携の効果 >>学部に情報共有フォーラムがあり、オンライン授業のTIPSを共有することができた。 スライド7 展望と課題 △自動字幕機能とその限界 >>修正に時間がかかりすぎる △専門内容のフォローと学生同士の意見交換場面のサポート >>さらなる試行錯誤の必要性 スライド8 (3)再確認できたこと ―連携の意義― ○ 組織内での連携・関係機関との連携 >>支援室がリソース置き場として機能を果たすこと 学部教員の「引き出し」として >>全国的な知見が集約されるセンター※の重要性 各大学支援室の「引き出し」として (図) ※筑波技術大学障害者高等教育研究支援センター・日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク スライド9 (3)再確認できたこと ―波及効果― ○情報保障がもたらす全ての学生への学修効果 (図) 情報保障を組み入れた授業づくりを行うことで、その他多くの学生にも有効な学びが提供できる >>オンラインならではの効果も(繰り返し再生・再生速度 etc) スライド10 (3)再確認できたこと ―支援の本質― (図) 「例年通り」の支援ではなく、個々のニーズやその変化に応じてその都度見直す・・・ 1歩進めば次の課題が・・・支援に結論はなく、=「試行錯誤」こそが大切であること 企画2 資料2 (小畑氏) スライド1 日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク (PEPNet-Japan) 第16回シンポジウム 企画2 「オンライン授業で変わるユニバーサルな授業作り」 オンラインの「音楽科教育法」における情報保障の実際と課題 ー聴覚障がい学生への支援を通してー 宮城教育大学 音楽教育講座 小畑 千尋 スライド2 本発表者が対面授業(~2019年度)で実施してきた聴障生に対する情報保障例 •宮城教育大学:学内で毎年約10名ほどの聴障生が在籍 →基礎免許を小学校で取得予定の学生の「音楽科教育法」を約10年担当(その間、7,8名の聴障生が履修) •動画(音楽を伴うものを含む)→字幕付与(しょうがい学生支援室に事前依頼) •授業内における教員の発言、グループにおけるディスカッション→ノートテイク(手書き・パソコン:しょうがい学生支援室から学生ボランティアを派遣) •毎授業後、聴障生に対して授業内容の理解等についての確認 •授業時間外における、個別の歌唱指導の実施(10年間で5,6名) •グループ活動例:  模擬授業例:聴覚に障がいのある児童に対する音楽科の授業  音楽実技例:コース混合によるボディーパーカッションのパフォーマンス スライド3 オンライン授業を実施するにあたり •困難1:本学の推奨するGoogle Forms, Google Classroom, Google Drive, YouTube等の使用方法と紐づけ、さらに、遠隔授業で出来ること、出来ないことを確認するための試行錯誤に、膨大な時間を要した(ただし、教員の経験値による違いあり)。 •困難2:オンライン授業では、対面時には当たり前のようにできていたことができず、音楽を共有するための方法を模索しなければならなかった。 (例1)リアルタイムで同時に歌えない、同時にリズムを打てない。 (例2)動画の共有は可能だが、動画がスムーズに再生されなかったり、画面と音のタイミングがずれてしまったりする。 •配慮:聴障生Aさん(先天性の重度の感音性難聴)に対する情報保障 初めてのオンライン授業で、Aさんを含む受講学生全員に対する配慮も必要 ↓ 「何をするか」ではなく、「どのような力を身に付けさせたいか」で授業を再構築(遠隔ではできないことがあまりにも多かったため、必然的に) スライド4 オンライン授業「音楽科教育法」(受講学生50名)で実施した情報保障例 1.初回授業開始前から、AさんとE-mailを用いて諸々の確認を行う。 2.毎時間、全受講学生がGoogle Formsから感想等の提出(次週の授業内で共有) ⇒毎授業後、教員に直接連絡する機会にもなる。 3.オンライン(Zoom) 1 前期前半は音声認識アプリを使用。ただし、前期後半は遠隔パソコンノートテイク(ノートテイカー2名)。 2 グループティスカッション:Aさんと同じ班員(毎回異なる)はチャットで会話。 4.オンデマンドの動画コンテンツ(YouTubeで視聴)の字幕 (例)PowerPointで作成した音声入り資料、動画(教員自作の動画、演奏を含む) 5月は動画ソフトを用いて自分で字幕付与作業を行う ⇒6月から学生に謝礼を支払って字幕付与を依頼 スライド5 音楽科における授業動画制作課題を通して •班ごと(1つの班は4~6名)で、遠隔で制作する。 •Aさんの情報保障として、動画には字幕、もしくは、それと同等の情報保障を、各班で工夫する(動画編集ソフト、YouTube上で字幕付与が可能であることを伝えた)。 ⇒10班中、3つの班が動画編集ソフト、7つの班がYouTubeを使用 •学生が制作した音楽科の授業動画事例 1 聴覚に障がいのある小学2年生を対象とした授業 2 知的障がいのある小学3・4年生を対象とした授業 スライド6 聴障生Aさんと受講学生の感想より その1 •初回:受講学生の一人「今日のグループの話し合いでAさんと一緒だったのですが、文字を打つ時間、読む時間がかかるためもう少し時間があった方がいいと思いました。」⇒次回からグループディスカッションの時間を増やした。 •第3回:Aさん「私は~(中略)と思うと発言しましたが、ほかの人たちから『(略)』『(略)』という意見があり、そういう見方もあったのか!と思いました。」 •第6回:Aさん「(前略)基本どんな楽器でも私の聴力ではなんにも耳に入ってこなくて、唯一体に伝わる振動でなんとか今音出てるってわかる和太鼓でも音としては認識できなかったのですが、トーンチャイムは私の得意な音の高さや大きさにドンピシャだったのか、一発で音として認識できました。今何の音を出してるのかまでは判別できなかったのですが、音をきちんと音として認識できたことがとても嬉しかったです。(後略)」 スライド7 聴障生Aさんと受講学生の感想より その2 •第7回:受講学生の一人「前回の感想の共有で、Aさんが音として認識できたということに教材として有効性のあるものだと感じたが、先生の経験上金属の音として聞こえるだけの生徒もいるとのことで、音の聞こえかたはさまざまだと感じた。 •最終回:Aさん「最後の動画づくりも様々な専攻コースの人たちとのグループワークも時間をかけて複数人で話し合うことで、自分だけでは全く思いつかなかった面白い観点や他の人の意見をたくさん知ることができ、全体を通して学ぶことも多く、もっと様々な視点から音楽という教科について深く考えてみたくなりました。最後までありがとうございました。」 •授業終了後:「この音楽科教育法(初等)の講義の情報保障で困ったことは本当に何もありませんでした。先生とテイカーさんがあれこれ協力してくださったおかげです。とても感謝しています。これが私のこの講義の情報保障に関する本音です」 スライド8 課題:持続可能な方法にするには? 1.オンデマンドでの授業動画の字幕付与作業は、分業制にして、教員以外が行う。 ⇒・動画の撮影、編集するための時間に加え、字幕付けには膨大な時間を要する(例:制作した10分の動画の字幕付与に、約4時間かかった)。 ・音楽は自動的に文字化できない ・YouTubeでの字幕付与の弱点 2.リアルタイムのオンライン授業では、遠隔パソコンノートテイクが臨機応変に対応できる。 ⇒・音声認識アプリは、授業形態がシンプルであれば有効。しかし、他の学生の発言や、ゲストの教員も入ってきた場合に、正確に音を拾うことができるのかは疑問。 ・リアルタイムのオンライン授業では、教員は講義をしながら、画面にうつる学生たちの様子を見たり、カメラ、スイッチャー(画面の切り替え)等を1人で行わなければならず、音声認識アプリの操作(確認)まで行うのは難しい(講義中に音声認識アプリで変換された文字を確認することは全くできなかった)。 企画2 資料3 (松﨑氏) スライド1 第16回日本聴覚障害学生高等教育支援シンポジウム オンライン特別企画 企画2 オンライン授業で変わるユニバーサルな授業作り 宮城教育大学 准教授 松﨑 丈 スライド2 今回紹介するオンライン授業の事例「聴覚・言語障害への教育支援A」 ■本授業について ・授業形態は講義。 ・手話で講義し、情報保障として手話通訳者を配置。 ・副免対象の科目のため、毎年150名近くの学生が受講。 ■オンライン化における基本方針 ・YouTubeを活用したオンデマンド方式。 ・毎回の授業でGoogle Formsで全員の受講状況を把握し、オンライン授業の改善に取り組む。 ・受講方法などについて適宜助言指導して、負担の少ない受講環境を整備。 スライド3 YouTube動画の作成 方針 1 対面授業と同様の情報や雰囲気を確保できるような動画に。 具体的には話者の上半身、手話、スライド、字幕が見えるように収録(画像)。 2 動画の内容構成でも、授業の目的や背景(前回の授業とのつながり)を明確に伝え、その目的への到達度を確認する課題も提出することでより学習に集中しやすいようにした。 (写真) スライド4 動画の時間は60分前後におさえる (表) 日時 内容 YouTube 第1回(5月14日) オリエンテーション デジタルデバイスの使用実態に関するWebアンケート 第2回(5月21日) 聴覚障害教育の目標 47分31秒 第3回(5月28日) 聴覚障害教育のカリキュラム:教科教育を中心に 61分39秒 第4回(6月 4日) 聴覚障害教育のカリキュラム:自立活動を中心に 41分22秒 第5回(6月11日) 子どもたちが言語を身につけることの難しさ 56分25分 第6回(6月18日) 子どもたちが身につける生活言語 52分57秒 第7回(6月25日) 生活言語から学習言語へ:日本手話を中心に 51分38秒 第8回(7月 2日) 生活言語から学習言語へ:日本語を中心に 58分40秒 第9回(7月 9日) 合理的配慮 51分32秒 第10回(7月16日) マイノリティとしての聴覚障害のある子どものメンタルヘルス 72分34秒 第11回(7月23日) 聴覚障害領域における防災対策・防災教育 51分57秒 第12回(7月30日) ろう重複障害教育 64分51秒 第13回(8月 6日) 聴覚障害教育における専門性と意思疎通 44分34秒 第14回(8月13日) レポート課題 第15回(8月20日) 予備 スライド5 第1回のオリエンテーションで学生の受講環境を把握する (表) 日時 内容 YouTube 第1回(5月14日) オリエンテーション デジタルデバイスの使用実態に関するWebアンケート 第2回(5月21日) 聴覚障害教育の目標 47分31秒 第3回(5月28日) 聴覚障害教育のカリキュラム:教科教育を中心に 61分39秒 第4回(6月 4日) 聴覚障害教育のカリキュラム:自立活動を中心に 41分22秒 第5回(6月11日) 子どもたちが言語を身につけることの難しさ 56分25分 第6回(6月18日) 子どもたちが身につける生活言語 52分57秒 第7回(6月25日) 生活言語から学習言語へ:日本手話を中心に 51分38秒 第8回(7月 2日) 生活言語から学習言語へ:日本語を中心に 58分40秒 第9回(7月 9日) 合理的配慮 51分32秒 第10回(7月16日) マイノリティとしての聴覚障害のある子どものメンタルヘルス 72分34秒 第11回(7月23日) 聴覚障害領域における防災対策・防災教育 51分57秒 第12回(7月30日) ろう重複障害教育 64分51秒 第13回(8月 6日) 聴覚障害教育における専門性と意思疎通 44分34秒 第14回(8月13日) レポート課題 第15回(8月20日) 予備 スライド6 デジタルデバイスの使用実態に関するWebアンケート(Google Forms) 集計結果の一部 Q.本授業ではどの端末を使う予定ですか? ノートPC:117名、タブレット:1名 スマートフォン:3名 Q.プリンタはありますか? あり:96名 なし:25名(うちノートPC24名、スマホ1名) スライド7 Webアンケート後に伝えた事項 ■動画視聴について オンデマンド方式のメリットを生かして、数分程度の小休止を挟んで40~60分を3回に分けて学習する方法があることを提案。 ■動画の公開期間について 不安定な通信環境にいる学生がいるため、第2回目の授業では公開期間を3日間(水曜0時から~金曜24時)に設定。この公開期間で適切か再度アンケートを実施(その結果は次スライドを参照)。 ■プリンターがない学生に対して 配信動画とPPTをPDFにしたものを画面2分割したイメージで見る方法を提案。 ■目にかかる負担を懸念する学生に対して 目の健康を保つための資料を作成・配布。 Note記事 https://note.com/matsuzakijo/n/n0ca76c69a28e スライド8 第2回目の授業後に行った Webアンケートの結果 ■授業の公開期間を3日間としたことに対して 【このままでよい】103名 【もう1日増やしてほしい】16名 【もう2日増やしてほしい】3名 【もう3日増やしてほしい】1名 ■自由記述欄(【増やしてほしい】と回答した者から) 「リアルタイムの授業が多いため水曜日から金曜日までの期間ではなく木曜日から土曜日までの期間に変更できないか」という要望。 第3回目以降は、木曜0時~土曜24時の期間に変更。その後、公開期間に関する要望はなし。 スライド9 授業評価アンケートから (図) 対面授業と比べて授業内容に関する議論が活発になったと感じる。 聞きもらしによる再度の説明依頼や理解確認に関する質問はなくなった。 回を重ねるたびに前回までの学習内容と関連付けた質問やじっくり自論を述べたうえでの質問が増加。 スライド10 受講生から出された今後も継続すべき点1 ■学生の「受講状況」を常に把握。 〇全体の時間も長すぎず短すぎず、でも深く学べる講義内容で、毎回の講義が楽しみでした。 〇学生のことを第一に考えて、授業毎に授業方法が改善され、より見やすい受けやすい授業へとしていただいたおかげでとても深い学習ができたと感じる。 スライド11 受講生から出された今後も継続すべき点2 ■対面授業と同等の「学びの場」を提供 〇自分は聴覚情報処理障害があるので、ほとんどの講義が音声とスライドと字幕だけであったが、(松﨑先生の授業では)音声、字幕、手話、表情すべての情報が得られ、どの講義よりも内容が入ってきたように思います。 〇資料のスライドと動画が別に配信される授業があるなかで、この授業は先生の隣のテレビに講義資料を映しながら進めてくださったため、いちいちパソコンの画面を切り替えることをせずスムーズに学習を進めることができました。 スライド12 受講生から出された今後も継続すべき点3 ■対面授業以上に授業への「かまえ」を引き出す 〇講義の始めに前回の振り返りをしていただくことで全講義を独立させず繋がりを感じながら理解ができましたし、授業の目的を提示していただくことで内容を整理しながらスムーズに理解することができました。 〇質問に対するフィードバックが私が受けた講義の中で一番丁寧で、参考資料などもたくさん提示して下さり、さらに関心が深まりました。 〇スライドが丁寧に整理されていて本当に見やすく、あとから見直したときに授業内容が思い出せるような構成。 〇毎時間ねらいが明確で、それに関連した課題を提示して下さったことで、目的をもって楽しく受講できました。 スライド13 受講生から出された今後も継続すべき点4 ■自分のペースで動画を見て「着実に」学ぶ 〇視聴するのに1時間で丁度良かったのに加え、1度で理解できなかった部分を見返したり、学んだことを整理して課題を考えたり、気になったことを調べたりといった活動を気持ち的にも余裕をもって取り組む時間をとることができた。 〇オンライン授業の方が、字幕があって認識しやすかったり、再度確認できたり、課題について熟考してから回答したりできるため、授業時間内に考えや感想を記入するよりも自分で復習しながら落ち着いて考えをまとめることができると感じました。 スライド14 受講生から出された今後も継続すべき点5 ■聞こえる学生にも「字幕」の教育的効果がある 〇字幕表示で漢字などわからない語句や聞き取れない語句も理解することができて、とても助かりました。 スライド15 ろう者教員としての課題 1 手話通訳者の音声に関する情報保障 機種や受講環境によって音声が聴き取れない受講生に対し、以下のように対処法を通知。動画収録や動画配信で聴者と様々な機種を使ってチェックしておく必要。 ・Youtubeの音量を100(最大音量)に設定するだけでなく、PC本体の音量も同様にする。 ・周囲の雑音やPC内の別のアプリの作動音の影響がある場合は、イヤホンやヘッドホンを装着したり他のアプリは終了する(メールやSNSの着信音などもミュート)。 2 字幕に関するサポート体制を強化 60分も長時間の動画で字幕を修正する作業の負担は非常に大きく、オンライン授業にあわせた字幕サポート体制の強化が課題。 企画3 「オンライン授業における合理的配慮―渦中にいた学生たちは―」 司会 吉川あゆみ氏(関東聴覚障害学生サポートセンター) 講師 岡田雄佑氏(日本福祉大学学生支援センター)    須山勇希氏(日本福祉大学 学生) 1.はじめに  新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、国内の大学では 2020 年春から急遽オンラ イン授業が導入され、聴覚障害学生の授業参加や情報保障支援の状況は急変した。大学全体が手探りでオンライン授業や感染対策を進める中、聴覚障害学生はどのように感じ、どんな工夫や支援活用をしながら学んできたのだろうか。本企画では、現役学生の経験談とアンケートの結果をもとに、聴覚障害学生にとってのオンライン授業の日々を改めて振り返り、実情と課題を掘り下げた。また、支援担当職員の視点からも話を聞きながら、学生に必要とされた支援は何だったのか、オンライン授業における合理的配慮とは何か、今後どのような支援方法や体制が求められるのかについて検討した。 2.聴覚障害学生を対象としたウェブアンケートの結果から  PEPNet-Japan が大学等に在籍する聴覚障害学生を対象に、2020 年 10 月~11 月に行ったオンライン授業の実態調査をもとに、回答集計の途中経過から、学生たちの状況や生の声を紹介した。学生たちの回答から、オンライン授業の導入に伴い、これまで利用していた(あるいは希望していた)支援方法を変更せざるを得なくなったり、支援のない状態で受講したりするケースが増えたという学生の例がいくつも見られた。また、学生たちは教員からの配慮や提示資料、利用可能な支援を複数組み合わせて授業内容を理解したり参加しようと奮闘しており、心身の疲労や、人的支援が得づらいことへの孤独感、配慮の不十分な授業へのストレスを募らせている状況も分かった。 (写真) 企画の様子(吉川氏) 一方で、オンライン環境になったことで文字ツールの使用頻度が増えたり、オンデマンド授業を自分のペースで繰り返し見ることのできる新 たな学習環境を、以前より快適だと感じている側面もあった。また、教職員とオンラインで行うコミュニケーションを以前より良い状況だと感じている学生もおり、オンラインが聴覚障害学生の選択肢を広げるきっかけとなった点も認められた。ただ、友人や支援学生とのコミュニケーションについては、取りづらくなったという声が多く、人間関係の形成や維持に苦慮する現状が見えた。 3.聴覚障害学生へのインタビューから 今回は、日本福祉大学に入学した聴覚障害学生に、司会の吉川あゆみ氏から、大学生活の開始とともに始まったオンライン授業の様子についてインタビューを行った。 この学生の場合、年度初めに支援学生の募集・養成ができなかったことの影響が大きく、入学時に想定していたパソコンノートテイクによる情報保障が行えず、代替として導入された音声認識ソフトによる字幕にも、修正者が付けられない時期が続いていた。授業担当教員との間で慣れないメールのやり取りをしながら、授業ごとに配慮を得て過ごす日々に戸惑いが大きかったとの思いが語られた。ただ、この学生の場合、感染拡大が落ち着いた一時期のあいだ、対面授業が行われたことが一つの転機となっていた。周囲の聞こえる学生に聴覚障害の事を知ってもらえたのを機に、その後積極的にサポートを担う学生が増えたということだった。聴覚障害のある先輩と直接会い、さまざまな情報保障の方法や大学生活の話をきけたことも支えとなった様子だった。学生同士が同じ空間で学ぶことの意義を物語る、重要なエピソードだと言える。 4.コーディネーターへのインタビューから 続いて、上記の学生への支援を担当する日本福祉大学学生支援センターの岡田雄佑氏に話を伺った。聴覚障害学生からは情報保障支援が万全でなかった状況が語られたが、コーディネーターの立場としても、支援学生の不足が大きな悩みだったとのことだった。ただ、支援がストップすることなく何らかの配慮が提供され続けた背景を聞いてみると、学期開始前から、オンライン授業へ転換する可能性を見据えて他大学から情報収集をしたり、各授業担当者との打合せを重ねたりするなど、周到な準備が奏功していたことがわかってきた。また、オンライン授業の期間中、学生とのインフォーマルな会話の機会がなくニーズの把握が難しかったため、いつでも回答できるアンケートフォームを用意して学生の声を拾う努力をしたり、メールによるこまめな連絡を心がけるなど、日々の積み重ねが行われていた。このように、学生の小さな声も拾い少しずつ状況を改善しようという働きかけが、学生にとっての安心感となり、万全とはいえない情報保障の体制を大きく補っていたことがうかがえた。 5.まとめ 本企画を通し、オンライン授業の導入によって、支援の「周辺」にあるものの重要性がより一層明らかになった。たとえば、事前に学生の状況や授業方法について把握するなど準備にもとづき検討すること、最善の支援手段がとれない場合も代替手段の検討を怠らず、教員のコミットメントも欠くことなく支援を提供すること、学生同士のつながりによってともに学ぶ環境が実現することなどが、アンケートやインタビューからキーワードとして浮かび上がってきた。コロナ禍での経験を通して得られたこれらの示唆をもとに、オンライン授業における情報保障に限らず、今後の聴覚障害学生支援を考えて行きたい。 報告 中島亜紀子(筑波技術大学) 企画3 資料 (吉川氏) スライド1 配信企画3 オンライン授業における合理的配慮 ー渦中にいた学生たちはー スライド2 1.企画趣旨 • 聴覚障害学生はどのようにオンライン授業を受けているか? • オンライン授業の中でどのような問題や課題に直面したか? • 大学側からどのような支援や対策がなされているか? ▶︎聴覚障害学生へのアンケート ▶︎オンラインインタビュー スライド3 2.アンケートの回答より • 対象:大学等で2020年度前期にオンライン授業を受けた聴覚障害学生 • 方法:Webによるアンケート • 期間:10月下旬~11月中旬 • 回答結果:17名(2年生以上、1年生からの回答なし)  ※11月上旬時点の集計をもとにしています スライド4 情報保障利用率の変化(N=17(全て学部2年生以上) (情報保障のある授業/ 履修授業数) (図) スライド5 2019年度(オンライン導入前)の状況 (N=17(全て学部生・2年生以上) (図) スライド6 授業のわかりやすさの満足度の変化 (N=17(全て学部生・2年生以上) (図) スライド7 情報保障への満足度の変化 (N=17(全て学部生・2年生以上) (図) スライド8 オンライン授業の情報保障に関わる困難 (N=17(全て学部生・2年生以上)・複数回答あり) (図) スライド9 リアルタイムのオンライン授業の状況1 (「満足度が低い授業」の情報保障や配慮の内容) (N=17(全て学部生・2年生以上)・複数回答あり) (表) 音声認識ソフト(修正者なし) 6 音声認識ソフト(修正者あり) 2 パソコンノートテイク 4 補足資料 1 文字通訳ログの提供 1 授業の録画 1 支援や配慮はない 1 満足度の低い授業はない 3 受講していない 2 スライド10 リアルタイムのオンライン授業の状況2 (「満足度が高い授業」での情報保障や配慮の内容) (N=17(全て学部生・2年生以上)・複数回答あり) (表) パソコンノートテイク 4 補足資料の提供 4 音声認識ソフト(修正者なし) 2 音声認識ソフト(修正者あり) 1 ログの提供 1 ホワイトボード・チャットの活用 1 満足度の高い授業はない 6 受講していない 2 スライド11 リアルタイムのオンライン授業の状況3 (「満足度が低い授業」について、低い理由として回答された内容の例) 【オンラインゆえの不便さ】 ・聞き取りにくくても、その場で聞き返すことができない ・実質自分1 人で何とかするしかなかった 【授業方法に工夫があれば・・・】 ・ずっと先生が同じことを繰り返し喋っているだけの授業 ・資料がないと情報が少ない ・先生がビデオオフだと聞き取りが難しい 【グループディスカッションでの困難】 ・学生の声の大きさによって情報量が左右されてしまう。 ・自分の意見は言えたが、音声認識ソフトが上手く変換できず他の人の意見はわからないまま ・チャットの入力に時間がかかり、満足に発言できない。 ・グループディスカッションでの配慮がなく、参加できなかった ・もともとディスカッションが嫌い スライド12 リアルタイムのオンライン授業の状況4 (「満足度が高い授業」について高い理由として回答された内容の例) 【授業方法の要因】 ・難易度の高いディスカッションなどがない、講義形式で受けやすかった。 ・観るだけの講義だったので自分のノート取りに集中できた。 ・PPTを用いた説明がわかりやすかった 【情報保障や配慮の効果】 ・基本的なやりとりが文字で行われたため ・ゼミの仲間は理解ある人がほとんどで、1 人ずつ話してくれたから ・パソコンノートテイクがあり、ログも提供されたので安心感があった。 ・先生からの配慮、ノートテイク支援、それぞれがしっかりしていたから スライド13 オンデマンド授業での情報保障や配慮の内容 (N=17(全て学部生・2年生以上)・複数回答あり) 満足度の高いオンデマンド授業  (表) 映像に付与された字幕 7 文字おこしの提供 6 補足資料の提供 5 音声認識ソフト(修正者なし) 3 パソコンノートテイク 1 繰り返し見返せる設定 1 音声がないため支援不要 1 満足度の高い授業はない 2 受講していない 1 満足度の低いオンデマンド授業 (表) 文字おこしの提供 3 音声認識ソフト(修正者なし) 3 映像に付与された字幕 1 パソコンノートテイク 1 補足資料の提供 1 支援や配慮はない 1 満足度の低い授業はなかった 9 受講していない 1 スライド14 周囲とのコミュニケーション1 (昨年度と比べてどのくらいコミュニケーションが取れたと感じるか) (N=17(全て学部生・2年生以上) (図) ・「あまり取れない」「全く取れない」が目立つ ・特に「他の学生」「友人」とのコミュニケーションに、マイナスの変化が表れている ・昨年度より良い評価も一定数ある スライド15 周囲とのコミュニケーション2(自由記述) • 顔が見られないのはやっぱり不安。寂しい。 • 英語の時は字幕がなく、友達とのコミュニケーションが難しかった • チャットだけでは、相手の様子が全く読み取れなくて困った • 授業中に意見を出す時はチャット機能を使用したが、ほぼ自分だけが使用していたので、ある意味公開処刑では、と思った。 • やりとりの手段がある分、コミュニケーションを取ろうと思わないとその機会がない • オンライン授業の方が周りの学生のことを気にしなくても済むから楽だった スライド16 アンケートまとめと考察 • オンライン授業導入後、「授業のわかりやすさの満足度」「情報保障の満足度」が低下。 • 情報保障がつかない、希望する情報保障手段でない授業が加増。 • オンデマンド型の場合は字幕や文字起こし等の使用により、比較的受講がスムーズ。 • リアルタイムオンライン授業では特にディスカッション時に困難を感じる記述が目立つ。 • 友人や同じ授業の学生とのコミュニケーションが取れていないため、孤独感を感じている可能性が高い。 • 支援のためには、特定の一手段に頼るのではなく、情報保障、先生の配慮、周囲の協力等の複数の要素が求められると考えられる。 スライド17 3.オンラインインタビュー • 聴覚障害学生の立場から 日本福祉大学1年生 須山勇希 さん • 支援室の立場から 日本福祉大学学生支援センター コーディネーター 岡田雄佑 さん スライド18 4.まとめにかえて 合理的配慮の「周辺」 *授業開始「前」の準備 *「代替」支援の提供 *「教員」からの配慮 *「一般学生」「支援学生」との関わり 企画4 「オンライン授業は聴覚障害学生支援に何をもたらしたか」 司会 白澤麻弓氏(筑波技術大学/PEPNet-Japan事務局長) 講師 松岡克尚氏(関西学院大学) 池谷航介氏(岡山大学) 藤野友紀氏(札幌学院大学) 1.はじめに 本企画は、本シンポジウムの全体テーマ「オンライン授業から見えてきた聴覚障害学生支援の特質」のもとに実施してきた配信企画の総まとめとして、「オンライン授業は聴覚障害学生支援に何をもたらしたか」の観点から、司会および講師によるディスカッションを行った。コロナ禍において日本各地で試行錯誤されてきたオンライン授業は、聴覚障害学生支援にどのような影響を与え、何を得たのか。そして今後の聴覚障害学生支援をどのように変えていくのか、についてさまざまな角度からの議論が交わされた。  議論に先立ち、本企画で用いる用語については「オンライン授業(リアルタイム授業ならびにオンデマンド授業)」と「対面授業」とし、両者を同時に実施する形式を「ハイブリッド型」と定義した。また、先に企画1~3について各講師に振り返りのコメントをいただいた後、オンライン授業が聴覚障害支援に与えた影響を整理しながら議論を進めることとした。なお、本企画はリアルタイム配信であったため、配信中に Zoom の Q&A 機能を用いて視聴者からの質問を受け付ける形をとった。 企画の冒頭には、本会代表であり筑波技術大学学長の石原保志より開会の挨拶を行い、続いてご来賓として文部科学省高等教育局学生・留学生課課長 西條正明様からご挨拶を頂戴した。西條様は昨年度大阪で開催した第 15 回シンポジウムに来場されており、本学ならびに PEPNet-Japan への大変温かいお言葉を賜った。 (写真) 主催挨拶の様子(右は手話通訳者) 2.ディスカッション1「聴覚障害学生にとってのオンライン授業とは?」 ディスカッションは3つの柱をもとに進められ、まず「聴覚障害学生にとってのオンライン授業とは」について、特に企画3で実施された聴覚障害学生対象のアンケートの内容を振り返りながら議論がなされた。以下、議論の概略を記す。 まずディスカッション1として、上記テーマに関して講師陣から一言ずつコメントがなされた。池谷氏は、オンライン授業開始当初、聴覚障害学生は支援室や支援者、教員とのさまざまな調整をしなければならず、さらに教職員はコロナ禍に応じた様々な手配と並行して情報保障の提供を準備せざるを得なかったため、「当初、聴覚障害学生が授業を受講するにあたっては、非常に大きなハードルがあったのではないか」と語った。  藤野氏は、「複数の聴覚障害学生の様子から、これまで対面授業の参加を得意としていた学生はオンデマンド授業にとても苦労し、逆の学生はオンデマンド授業に安息を求めていたように感じた」と述べた。そのうえで、「聴覚障害学生支援は情報保障だけではないということを強く感じている」と話した。「音声を完璧に字幕化したとしても日本語に苦手意識を持つ聴覚障害学生にとっては、授業へのモチベーションを維持するのはかなり大変だったのではないか。オンライン授業によって、それまでの支援室や支援学生とのインフォーマルの関わりが根こそぎなくなってしまったことも、聴覚障害学生の受講の苦労に影響しているのでは」とのことだった。  松岡氏が所属する関西学院大学では、GW 明けから主にオンデマンド授業が行われ、秋になってから少人数授業のみリアルタイムで実施されたとのことだった。松岡氏は、聴覚障害学生たちが「オンデマンド授業の方が自分のペースで勉強ができる」、「何度も繰り返して確認できるところがオンデマンドの良さ」などと語っていたことに触れ、「対面授業やオンラインによるリアルタイム授業では、情報保障支援がなされていても他人のペースに合わせざるを得ない点が、聴覚障害学生の抱えるつらさの一端だったのではないか」と語った。また、支援学生による対面でのサポートのみならず、聴覚障害学生どうし/支援学生どうしでのピアサポートが難しくなるなど、支援コミュニティの中での相互支援が困難になった一方で、先のようなオンデマンド授業を好む聴覚障害学生の意見から「オンデマンドで事足りるというのであれば、聴覚障害学生にとって支援コミュニティとはそもそもどのような意味を持つのか、という問いが我々に突き付けられているのではないだろうか」と指摘した。  続いて司会の白澤氏は、オンデマンド授業の方がよいと述べた聴覚障害学生の意見について、「裏返せばリアルタイム授業では聴覚障害学生に相当な負荷がかかるとも言えるのではないか」として、企画1でも扱われた「情報保障を受けることの認知的負荷」について各講師の意見を求めた。それに対し池谷氏は、オンデマンド授業で安定した字幕が付いていれば他の学生と非常にフラットな状態で学べるということに多くの聴覚障害学生が気づいたからこその意見だったのだろう、としながらも、「重要なのは授業の本質であり、そこに寄り添った支援のあり方を充分検討することが必要なのではないか」と述べた。  ここで司会より、視聴者からの質問(「リアルタイム授業をオンデマンド授業に変えて欲しいというのは配慮になるのでしょうか?」)が紹介され、講師陣の意見が述べられた。まず藤野氏からは、「両者の違いは参加者同士のやりとりである」とし、「大学はただ知識を頭に入れるだけの場ではなく、多様な考え方を持つ人々同士が語ることで生まれるものが大学ならではの学びであり、リアルタイムのやり取りでなければなし得ないものである。つまり授業の本質によって、オンデマンド授業では目指す教育目標には達しないということであれば、リアルタイム授業で聴覚障害学生も参加しやすい方法や支援手段を追求する方向になるのではと思う」と述べた。また松岡氏は、「コロナ禍でのオンライン授業によって明らかになったメリット・デメリットから、今後は障害学生支援かどうかに限定されず、大学の授業のあり方それ自体が問われてくるだろう」と述べた。さらに、「今回の質問は障害学生支援という枠に留まらず、そもそもの大学教育のあり方という大きな枠につながっていく問いなのではないか」と指摘した。その上で、「障害学生支援に限定して言えば、授業の本質にさえ見合えばオンライン授業を合理的配慮の一環として位置づけていくこともあり得るのではないか」と回答した。 3.ディスカッション2「教職員や大学に生じた変化とは?」 続いて、オンライン授業の経験から得られた示唆に関して、授業動画の文字起こしの効果を例に意見が交わされた。 まず池谷氏が、「字幕挿入をはじめとする文字でのサポートについて、聴覚障害学生に限定した情報保障という観点だけでなく、音声情報だけでは理解に躓きが生じていた聞こえる学生の存在への気づきにつながるなど、周りの学生への波及効果や学修効果にも期待ができるのではないか」と述べた。また、札幌学院大学では字幕付き授業動画が外国人留学生や他の聞こえる学生にとっても理解を深める一助になったとのことで、藤野氏は、「字幕の恩恵は聴覚障害学生支援にとどまらない、大学のユニバーサルデザイン化の 1 つとしてさらに広めていけるとよいのではないか」と述べた。また、「遠隔情報保障をはじめとするさまざまなテクノロジーを実践できたことはコロナ禍のレガシーと言えるのではないか」ともしていた。次いで松岡氏は、「今回の事態を受けて個々の大学の支援部署の力量が問われたのではないか」と述べ、「今後は各支援部署のネットワーク力を活かして、リモートでの人材活用も展開されていくだろう」とした。  ここで、視聴者から寄せられたコメントや質問が紹介された。1 点目は、オンライン授業の普及によって事前に資料がアップロードされるようになり、それをダウンロードしてから授業に臨むという形が標準化されたことについてのコメントであった。2 点目として「大学か ら、オンライン授業では字幕や情報保障が提供できないので音声認識アプリの使用等、自身で工夫して受講するよう言われた。本来であれば、授業形式を問わず合理的配慮は提供されるべきものなのではないだろうか」という質問が紹介された。これに対して白澤氏が、「オンライン授業であっても対面授業であっても大学として修学上のハンデは取り除くべきで、本人との対話の上、何らかの合理的配慮を行うことが望ましい」とまとめた。 4.ディスカッション3「Post/With コロナ時代に向けて」 次いで、Post/With コロナ時代に向けた授業作り・大学作りについて議論がなされた。 (写真) 企画の様子 (上段左から白澤氏、松岡氏。 下段左から藤野氏、池谷氏。右は手話通訳者)  はじめに池谷氏から、オンライン授業の普及によりシラバスの見直しが進んだ点について言及があった。「シラバスに授業形態や実施方法が詳細に記載されるようになったことで、支援部署にとっては合理的配慮のコーディネートが円滑になり、障害のある学生にとっても授業を選択するにあたっての判断材料が増えたと言えるのではないか」とのことだった。また藤野氏は、教職員に生じた変化として、授業担当教職員と支援室が直接授業についてコミュニケーションがとれるようになった点と、授業作りにおける教員同士の連携が生まれた点を挙げた。松岡氏は、今後オンライン授業が合理的配慮の一種として位置づいていくことも見越し、「それぞれの取り組みを大学間で共有し、今後に受け継いでいくことが求められる」と指摘した。また、「障害学生支援は障害学生の学びの保障という側面だけでなく、キャンパスをインクルーシブなものにする重要なツールになり得るものであり、オンライン授業下であってもそれをどのように実現していくかがポイントになるだろう」とも述べた。さらに、聴覚障害学生からオンデマンド授業を好む声が一定数あった点に関連して、「対面で様々な人とかかわりながら聴覚障害学生が大学内でエンパワメントを果たし、それが卒業後の社会での飛躍の基礎・土台になっていくという、これまでのエンパワメント達成の道筋を、オンデマンド授業環境下でどう確保していくのかも今後各大学に問われてくるのではないか」と述べた。  最後に、各講師から一言ずつコメントが話された。まず池谷氏は、コロナ禍での経験が授業の本質を今一度洗い直すきっかけになった点を挙げ、「安易な利便性に流されることなく、授業の本質を見極めた上でサポート方法を検討することが今後求められるだろう」とコメントした。次に藤野氏は、これまでの常識だと思っていたことは常識ではなかったというスタート地点に立ち、「授業の本質に照らして大学のユニバーサルデザイン化を進めていくことが Post/With コロナ時代における課題になるだろう」と述べた。続いて松岡氏は、「合理的配慮としてのオンライン授業の可能性に触れ、コロナ禍での経験を前向きに捉え、授業形態を含め聴覚障害学生と対話しながら望ましい授業のあり方や支援を考えて行く必要があるのではないか」とまとめた。  最後に、「学びが多様化し、大学再構築の時代とも言えるこの時期に、障害学生支援を中心に据えて今後の大学作りを考えていくことで、大学は障害学生のみならずすべての方にとって学びやすい場になるのではないか」と司会が結び、本企画は終了した。 報告 萩原彩子(筑波技術大学) 企画4 資料1 (進行スライド) スライド1 PEPNet-Japan シンポジウム オンライン特別企画 スライド2 プログラム • 10時00分 開会行事 • 10時15分 企画4 「オンライン授業は聴覚障害学生支援に何をもたらしたか?」 スライド3 主催挨拶 PEPNet-Japan 代表 筑波技術大学 学長 石原保志 スライド4 来賓挨拶 文部科学省 高等教育局 学生・留学生課 課長 西條正明様 スライド5 企画4 「オンライン授業は聴覚障害学生支援に何をもたらしたか」 スライド6 PEPNet-Japanシンポジウム ■企画1 「聴覚障害学生を理解する ―教育背景と心理から―」 スライド7 PEPNet-Japanシンポジウム ■企画2 「オンライン授業で変わるユニバーサルな授業作り」 スライド8 PEPNet-Japanシンポジウム ■ 企画3 「オンライン授業における合理的配慮 ―渦中にいた学生たちは―」 スライド9 企画趣旨 企画1~3の議論を踏まえ、改めてオンライン授業が聴覚障害支援に与えた影響を整理し、今後に向けた示唆を得たい スライド10 用語の確認 • オンライン授業 –リアルタイム授業 –オンデマンド授業 • 対面授業 [上記を併せて]ハイブリッド型 スライド11 講師紹介 • 岡山大学 池谷航介氏 • 札幌学院大学 藤野友紀氏 • 関西学院大学 松岡克尚氏 【司会】 • 筑波技術大学 白澤麻弓 スライド12 進め方 • 企画1~3の振り返り • 聴覚障害学生にとってのオンライン授業とは? • 教職員や大学に生じた変化は? スライド13 ディスカッション • 聴覚障害学生にとってのオンライン授業とは? –授業受講上の困難 授業形態による違い –コロナ禍で生まれたもの –今後に向けた示唆 スライド14 ディスカッション • 教職員や大学に生じた変化は? –授業実施上の困難 –コロナ禍で生まれたもの –今後に向けた示唆 スライド15 ディスカッション • Post/With コロナ時代に向けて・・・ 企画4 資料2 (藤野氏) スライド1 企画1 「聴覚障害学生を理解する ー教育背景と心理からー」 講師:岩田吉生氏(愛知教育大学)  中野聡子氏(群馬大学) スライド2 前提 ✔︎聴覚障害学生は多様である ✔︎聴覚障害学生支援は、補聴支援や情報保障の配慮だけでは不十分 ✔︎個々の聴覚障害学生の教育背景、心理面、認知特性に対する理解が必要 スライド3 岩田先生のお話 ✔︎聴覚障害は聞こえの問題だけでなく二次障害的に言語・学習への影響や心理面への影響が生じやすい ✔︎聴覚障害学生は多様。認知特性やこれまで受けてきた教育を踏まえた、適切なアセスメントが必要。十分に理解した上で適切な配慮を考える スライド4 ✔︎心理アセスメントまでいかなくても聴覚障害学生がどのようなフォローを必要としているかを早めに察知する ✔︎授業配慮だけでなく、話しやすい雰囲気を常日頃から作っていく ✔︎科目担当者も支援お任せではなく、学生との関わりを持とう! スライド5 中野先生のお話 ✔︎聴覚障害学生の認知処理特性は「音声化せずに文字を意味につなげる ✔︎「話の内容理解」の認知負荷が重く「内容について分析」する余裕がない ✔︎パラ言語情報が得られないために、周囲から誤解を受けやすい スライド6 ✔︎情報の構造化・視覚化・提示順は、発達障害学生や留学生とも共通する支援ニーズ。大学全体として授業のユニバーサルデザイン化やFDが必要 ✔︎認知負荷を見積もった支援が必要。支援者養成にも活かしていくべき ✔︎場の適切な調整を伴う支援により、聴者との会話に「参加できる」経験を 企画4 資料3 (池谷氏) スライド1 日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク(PEPNet-Japan) 第16回シンポジウム 企画2「オンライン授業で変わるユニバーサルな授業作り」 まとめ(報告) 岡山大学 高大接続・学生支援センター 池谷 航介 スライド2 再確認できたこと―波及効果― ○情報保障がもたらす全ての学生への学修効果 情報保障を組み入れた授業づくりを行うことで、その他多くの学生にも有効な学びが提供できる 岡山大学・大森先生 宮城教育大学・小畑先生/松﨑先生の実践から >>繰り返し確認できるなど、オンデマンドならではの効果も (図) スライド3 再確認できたこと―連携の意義― ○ 組織内での連携・関係機関との連携 >>支援室がリソース置き場として機能を果たすこと 学部教員の「引き出し」として >>全国的な知見が集約されるセンター※の重要性 各大学支援室の「引き出し」として ※筑波技術大学障害者高等教育研究支援センター・日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク (図) スライド4 再確認できたこと ―支援の本質― 「例年通り」の支援ではなく、個々のニーズやその変化に応じてその都度見直す・・・ =「試行錯誤」こそが大切であること (図) 企画4 資料4 (松岡氏) スライド1 日本聴覚障害学生高等教育支援シンポジウム 企画3(オンライン) オンライン授業における合理的配慮 ―渦中にいた学生たちは― 関東聴覚障害学生支援センター 吉川あゆみさん (図) スライド2 企画3 主旨 • 聴覚障害学生へのW e bアンケート調査結果の分析 • 聴覚障害学生、大学職員へのインタビュー調査結果の分析 • コロナ禍を経験して、今後のよりよい「合理的配慮」を考える スライド3 「問い」の内容 • 聴覚障害学生はどのようにオンライン授業を受けているのか • オンライン授業の中でどのような問題や課題に直面したか • 大学側からどのような支援や対策がなされたか スライド4 聴覚障害学生へのWEBアンケート概要 【対象】2020年度前期にオンライン授業を受けた聴覚障害学生 【方法】W e b によるアンケート調査 【期間】2020年10月下旬~11月中旬 【回答】17名(2年生以上、1年生はなし) スライド5 聴覚障害学生へのWEBアンケート結果 (1) ・オンライン授業前後で情報保障の割合が低下 (「あり」が84%から58%) ・授業への満足について、オンライン授業前でゼロだったのが、後は1割強に ⇒ 支援が追い付いていない状況 スライド6 聴覚障害学生へのWEBアンケート結果 (2) ・情報保障への満足も、オンライン授業前後で、満足群が低下減少、不満足群が増加 ・具体的な問題点として「疲れる・集中力が続かない」が最も多く、「ネット環境につながらない」、「相談できない」が続く スライド7 聴覚障害学生へのWEBアンケート結果 (3) ・リアルタイム授業では、相談できない、しゃべるだけで資料がない、口許が見えない、など教員サイドの工夫次第でカバーできる課題 ・グループ討議は、コロナ前の課題がそのまま表れている感 スライド8 聴覚障害学生へのWEBアンケート結果 (4) ・オンデマインド授業では、「満足できない授業はない」の回答が多く、リアルタイムより受けやすい授業形態と認知された可能性 ・周囲とのコミュニケーションは低下傾向、しかしむしろそれを歓迎する声も スライド9 WEBインタビュー調査概要 【対象】聴覚障害学生1名(1年生) コーディネーター(大学職員)1名 【方法】W e b によるオンライン・インタビュー 【インタビューアー】吉川あゆみさん スライド10 インタビュー結果(学生) ・オンライン中は、支援を受けている様子が周囲の学生に伝わらない。対面時に周囲が配慮の仕方を学び、2回目のオンラインの時にそれが活きた ・(特に1年生にとっては)ピアのつながりがオンラインでは形成、維持されにくい スライド11 インタビュー結果(支援者) ・オンラインでは困りごとを拾い上げにくく、Zoomなどオンラインの手法を使って試行錯誤 ・図らずも遠隔化に移行したが、肌感覚の希薄化 ・教員も情報不足であり、相談需要が増え、結果的に教員の障害学生支援への関与が高まった スライド12 吉川さんのまとめ • 対面授業時での困難さは、オンライン授業下で形を変えつつむしろ継続、増幅して現れている • コロナ前に実施すべきだった事項は、そのまま、かつより緻密にコロナ禍下であっても実施することが求められている 学生のための座談会 「先輩にきいてみよう!大学生活のちょっとした疑問」 司会 太田琢磨氏(愛媛大学バリアフリー推進室) 登壇者 愛媛大学 聴覚障害学生 4名 1.はじめに 聴覚障害学生が大学生活の中で、情報保障支援や友人との関係等について悩んだり、他大学の様子を知りたいと思ったとき、さまざまな相談窓口や学生間のコミュニティが存在している。しかし、そうしたリソースやコミュニティがあるにも関わらず、つながることができずにいる学生も少なくない。PEPNet-Japan では、相談対応事業の一環で相談会を開催しても学生の参加者数が大きく伸びないことから、もっと緩やかに、気軽に学生同士が出会い、他の人の悩みや経験を聞く機会の必要性を感じてきた。  そこで本企画では、Zoom のウェビナーを使ったリアルタイム配信という方法で、学生からの質問や悩みについてについて、聴覚障害のある先輩から話をきく場を提供した。コロナ禍で他の学生との交流機会が減っていたり、これまで学生同士の集まりの場に足を運ぶに至っていなかった学生たちが、自ら情報収集したりコミュニティに参加したりしていくきっかけとなることを目的として開催した。 2.オンラインでの企画実施にあたって 聴覚障害学生が参加しやすく、日頃抱える悩みや思いを少しでも解決したり解放できる場をオンライン環境で実現するため、以下のようなポイントについて検討・準備した。 1)情報保障(手話・文字)の見やすい画面構成  登壇者および主な参加者が聴覚障害学生で、利用する情報保障も多様であることが想定されるため、手話や文字の見やすさを最優先にした画面構成を検討した。文字通訳は画面半分を使い大きめに配置し、できるだけ読み返すことが可能なようにした。さらに別の端末で文字通訳だけを表示する方法も案内した。また、画面内の情報量が多くなりすぎないよう、人物は話者 1 人のみを表示することにし、話し手がかわるたびにカメラ切替を行い、その時話している人だけを映す方法にした。聞き取り通訳を行う際は、話者の映像の隣に合成して表示した。スライドには、テーマや質問内容を大きめの文字で表示した。 (図) 配信時の画面構成の様子 2)参加者との双方向性と匿名性の確保 本企画では、一方的に話を聞くだけでなく参加者からの発信を取り込みながら進めていきたいという方向性がある一方、参加者のプライバシーに十分配慮する必要があった。そこで今回は、次のようなルールと進行で試みることとした。 ・参加者はカメラ、マイクとも OFF で参加する ・参加者名は運営側のみで把握し、参加者同士では共有しない ・登壇学生の所属や氏名は当日口頭で紹介する ・録音、録画、他者への誹謗中傷の禁止や個人情報保護のルールについて、参加者に丁寧に説明する ・事前に参加者から質問や話題にしたいことをアンケートで意見収集し、これをもとに当日の内容を構成する ・企画当日は、参加者からの発信ツールとしてウェビナーの「投票」「Q&A」を使う (Q&A は投稿者の氏名が他の参加者には見えない形で運用)  なお、本企画へは聴覚障害学生のほか、情報保障者や保護者、大学の教職員からも多数の参加申込があったが、匿名性が高い中でも“学生同士”でやりとりしているという場を創り出すため、参加対象は聴覚障害学生及び支援学生のみとした。但し、聴覚障害学生の支援に直面している大学の教職員に限って、YouTube Live での中継を視聴できるよう案内した。 3.プログラムと当日の様子 ■パート1 コロナ禍の情報保障支援(登壇者 愛媛大学 4 年生 2 名)  パート1では 4 年生の学生 2 名が登壇し、授業が急遽オンラインに変わった時の思いや、対面での支援と遠隔支援との違い、支援を受けるときの工夫などについて経験を語ってもらった。随時、投票機能やチャットを使って、参加者の状況や意見も取り込みながら進めた。司会の太田氏からは、PEPNet-Japan 発行の「"いつでもどこでも"の情報保障の実現に向けて-遠隔情報保障事業成果報告書-」が紹介され、改めてこうした成果物から支援利用のポイントを学んではどうかと提案があった。 以下、登壇者や参加者のやりとりの一部を紹介する。 学生 A/自分は、支援の選択肢が狭まってしまうのでは、実験の授業で必要な支援が受けられるだろうかという不安がありました。 学生 B/4 年生で卒業論文も控えていたので、オンライン授業になるときいてまず、ゼミの先生と相談ができるのだろうか、と不安になった。 【投票】オンライン授業でどのような支援を受けましたか? ➡結果:遠隔情報保障7、映像への字幕挿入7、音声認識(修正あり)3、遠隔手話通訳1、音声認識(修正なし)1 司会/支援を利用した感想は? 学生 A/実際に遠隔でパソコンノートテイクを受けてみると、コロナの前とほとんど変わらず支援を受けて授業に出られるとわかりました。 司会/実はバリアフリー推進室では日々大変で、自宅にいる支援者のインターネットがつながらないとか、授業中に音声が途切れてしまうというトラブルもありました。皆さんは、オンラインの支援で困ったときどうしていたでしょうか。 参加者(Q&A 入力)/“グループ活動の時、文字通訳が追いつかなくなり困った” 学生 B/私はゼミのグループワークの時、大き目の声でゆっくり話してほしいとお願いし、先生には、わからないときすぐ言い出せるように、全体的にゆっくり進行してほしいとお願いしました。 ■パート 2 コロナ禍のキャンパスライフ(登壇者 愛媛大学 1 年生 1 名、2 年生 1 名) パート 2 では、2 年生の学生と、コロナ禍の中で大学に入学した 1 年生の学生が登壇し、友人や支援室職員のコミュニケーションや学生生活の変化、戸惑いについて意見をきいた。参加者からは Q&A 機能でさまざまな経験が寄せられ、友人とは SNS を使ってコミュニケーションをとったり新しい友達づくりもできたという意見や、支援室職員と対面できない代わりに Zoom 等で相談ができたという例が挙がった。その一方で、「SNS はあまり使わないので友人とさえ疎遠になってしまっている」、「メールだけでは表情が見えず、気持ちが伝わっているのか不安になることがある」というコメントもあり、オンライン環境下での学生の苦しい状況も伝わってきた。  以下、登壇学生の発言の一部を紹介する。 司会/友達づくりはどうしていましたか。 学生 C(1 年生)/SNS をいくつか使っているので、入学する前から同級生のフォロワーが増え、メッセージのやり取りを通して友達になれた人もいた。入学後は、他大学の学生との Zoom 交流会に参加したりして、友達をつくることができました。 司会/支援室とのやりとりはどうだったでしょうか。 学生 D(2 年生)/前期はすべてオンライン授業になり、Power Point 資料が表示されるだけの授業では、どんな支援を受ければいいのかもわからなかった。支援室に相談したら丁寧に対応してもらえて本当にありがたかったです。 ■まとめ  司会の太田氏から、パート 1・2 の内容を受け、オンライン授業の中で聴覚障害学生にとって大事なこととして以下の 2 点が整理された。 ・オンライン授業になったことがきっかけで、遠隔情報保障という新しい支援の形が見えてきたと言える。対面授業の中でも活用できるので、今後うまく活用していってほしい。 ・「合理的配慮」は自分で申し出て必要な配慮や支援を受ける仕組みだが、オンライン授業の導入によって、「自分に必要な支援は何かを知る」「それを自分で説明する」という力が、より一層求められるようになった。ぜひ授業ごと場面ごとに、自分のニーズを伝える力を大事にしてほしい。 4.まとめ 今回は初めてオンラインで行う学生同士の交流の企画であった。事前の質問受付や投票の実施など、進行役がやりとりのコントロールをするための機能を活用して進めることとなったが、参加者の事後アンケートでは、「もう少し学生同士の対話がしたかった」「チャット入力をする時間を区切ってもらえるとやりやすかった」というコメントが挙がっていた。今後はよりリアルタイムで、参加者の質問やコメントを受け止め反応できるような場を作っていくことで、オンラインでの学生交流が深められると思われる。  また、事後アンケートで今後も学生向け企画に参加したいかを尋ねたところ、「オンラインと会場、どちらの方法でも参加したい」との回答が 50%、「オンラインなら参加」25%、「会場に集まる方法なら参加」25%という結果で、方法へのニーズに差はあるものの交流の場が強く求められていることが伝わった。今後もオンライン環境の中で求められる学生同士の交流の設け方を検討していきたい。 報告 中島亜紀子(筑波技術大学) 学生のための座談会 資料 スライド1 パート1 コロナ禍の情報保障 スライド2 パート1講師紹介 司会:太田 琢磨(愛媛大学 バリアフリー推進室) 学生:愛媛大学 社会共創学部 4回生  愛媛大学 工学部 4回生 スライド3 進行中の質問・回答について • 進行中に質問がある場合は、Q&Aに入力してください。 • 進行中に講師から参加者の皆さんに質問が出た場合は、Q&Aに入力してください。 スライド4 ご視聴にあたっての注意事項 1録音・録画・撮影は禁止とします。 2講師や他の参加者への迷惑行為となる言動はお控えください。 3この企画で知った個人の情報や大学の事情などを他の人に話したりSNSで拡散したりしないでください。 スライド5 【オンライン授業】 Q オンライン授業になると聞いて、不安に思ったことは何ですか。 スライド6 愛媛大学の支援の現状 (表) スライド7 文字通訳(遠隔) • captiOnline – ウェブブラウザから利用可 – アプリのインストールが不要 – IPTalkと操作感が同じ (図) • ウェブベース遠隔文字通訳システムcaptiOnline – 開発者 筑波技術大学産業技術学部産業情報学科 若月先生 – https://capti.info.a.tsukuba-tech.ac.jp/ スライド8 【オンライン授業】 Q オンライン授業で文字通訳(遠隔)を受けた感想を教えてください。 スライド9 【オンライン授業】 Q 聴覚障害学生への質問 オンライン授業を受けるときに困ったことは何でしたか? 支援者への質問 コロナ下で支援をする中で困ったことは何でしたか? スライド10 【オンライン授業】 Q 聴覚障害学生への質問 オンライン授業のグループワーク(ブレイクアウトルーム等)で困ったことは何でしたか? 支援者への質問 オンライン授業のグループワーク(ブレイクアウトルーム等)の支援で困ったことは何でしたか? スライド11 オンライン支援のポイント • 遠隔支援のポイント – 事前の打ち合わせが重要  • 支援者が現地にいない  • 利用者が要望を事前に支援者に説明する必要 – 連絡方法の確立 – トラブル発生時の対応手順の確立 引用:“いつでもどこでも”の情報保障の実現に向けて ―遠隔情報保障事業成果報告書― (写真) “いつでもどこでも”の情報保障の実現に向けて スライド12 パート2 コロナ禍のキャンパスライフ スライド13 パート2 講師紹介 司会:太田 琢磨 (愛媛大学 バリアフリー推進室) 学生:愛媛大学 理学部 2回生  愛媛大学 教育学部 1回生 スライド14 【学生生活】 Q 突然始まったコロナ渦 身の回りで起こった大きな変化は何でしたか。 スライド15 【学生生活】 Q 突然始まったマスク生活 学生生活の中でどんなことに困難が出ていますか? スライド16 【学生生活】 Q  1年生 サークルもなく大学にも行けない中で、 友だちづくりはどうしていましたか? 2年生以上 友人とはどうやってコミュニケーションを取っていましたか? スライド17 【学生生活】 Q 支援室の担当者は、コロナ対策としてどのような工夫をしてくれましたか? スライド18 【オンライン授業】 Q 支援室のコーディネーターとのやりとりで困ったことは何ですか 参加型企画 聴覚障害学生支援実践事例コンテスト 報告 参加型企画 「聴覚障害学生支援実践事例コンテスト 2020」 聴覚障害学生支援の思いを伝えるコンテスト 1.はじめに シンポジウムがオンラインでの開催になったことを受け、毎年開催してきたコンテストも、オンラインでの実施を模索することになった。感染対策で聴覚障害学生、支援学生、教職員が一堂に会すことが難しい状況で、どのような形なら、聴覚障害学生支援に思いを巡らし、関係者の絆を深め、大変な中で少しでも明るい気持ちになれるかを事務局で検討した結果、コンテストの特別編として、参加者が投稿する形のコンテストを実施することとなった。 2.概要  本コンテストは、二つの部門を設けて実施した。  一つは、チーム応募型の「ひとことメッセージ部門」である。これは、チームにとっての「障害学生支援」とは何か、大切にしていることは何かを、ひとことに込め、かつ、その言葉のその背景や理由も含めて 100 字に収めるという内容で実施した。  もう一つは、個人応募型の「川柳部門」である。「聴覚障害学生支援」をテーマに、真面目な内容から思わず微笑んでしまうものまで、幅広く作品を募集した。  両部門とも、一次審査として全ての作品を PEPNet-Japan 公式 Twitter に掲載し、1 週間に「いいね」マークの多く付いた上位の作品を、審査員審査の対象とした。審査員は、 PEPNet-Japan 正会員大学の聴覚障害学生支援に携わる教職員で、聴覚障害の有無、教員・職員の別、年代を考慮し 5 名に依頼した。 (写真) 川柳部門 最優秀作品賞の表彰シーン (上段左から受賞者、審査員の日下部氏 下段左から手話通訳者、石原学長、司会) 3.結果  ひとことメッセージ部門は 10 作品、川柳部門は 55 作品が集まり、多くの方にご応募いただいた。結果及び全ての応募作品は、70 ページ以降に掲載している。ぜひご覧いただきたい。  ひとことメッセージ部門は、聴覚障害学生とその関係者が「ともに」支援を作り上げていくことの重要性を伝える作品が多く見られ、審査員からは、ともに手を携え、対等な立場で未来を作っていく姿勢に共感する声が多く寄せられた。川柳部門は、世相を反映し、オンライン授業での支援のやりがい、もどかしさ、いわゆる“あるある”を取り上げた作品も多かった。審査員からは「作品から透けて見える優しさに感動した」「多くの応募作品から伝わる前向きさにパワーをもらった」等のコメントがあり、あわせて、どの作品も甲乙付けがたく、審査員審査に残った作品はもちろん、惜しくも選から漏れた作品にも多くの良い作品があったとの声が上がった。  また、川柳部門は、残念ながら聴覚障害学生の応募が少なかった。この点は、今後の企画設け方を検討する際に反省点として生かしていきたい。 (写真) ひとことメッセージ部門 最優秀作品賞のインタビューシーン (上段左から受賞者、審査員の日下部氏 下段左から手話通訳者、石原学長、司会) 4.まとめ 今年度は、新型コロナウイルスの感染拡大で、日本中の大学がこれまでのやり方を大幅に変更せざるを得ず、聴覚障害学生支援も今までの「会ってこそ価値」からの一時的な脱却を余儀なくされた。しかし、本企画を通して、対面の価値を再確認しつつ、大変な状況下でも全国の関係者とパワーを交換し合い、新たな「会えなくても価値」を見いだすことができたのは、大きな成果だったと言えるのではないか。  最後に、このような状況のもとでも、多くの魅力的な作品をお寄せくださった皆様と、審査員の皆様、Twitter の「いいね」等でエールをくださった皆様に、この場を借りて、改めて御礼申し上げる。 報告 石野麻衣子(筑波技術大学) ひとことメッセージ部門 結果 (表) 賞 ひとこと メッセージ チーム名 1 最優秀作品賞 「人」に寄り添い、ともに未来へ 「不安だった遠隔授業も、先生と話し合い、自ら問題解決できたのが一番の成長だった」と障がい学生の声。サポートしたい気持ちをグッと抑え、見守り、寄り添い、ともに未来へ前進! 佛教大学チームぶったん 2 優秀作品賞 共に悩み、共に作り上げる 状況が変わったことで困難もありましたが、直接会えないからこそ今までの積み重ねの大切さと相手を思いやる心が感じられた今年。遠隔だからこその思いやりの輪を今後も広げていきます! 宮城教育大学しょうがい学生支援室学生運営 スタッフ 3 次点 支援at our home 支援を通して理解や考え方が変わる時があるように、立場関係なく支援に関わる全員が、お互いに学び、支え合える支援現場は我が家のようです。そんな暖かい空気感を大切に日々頑張っています! 大阪教育大学障がい学生修学支援ルーム 4 team up 障がいの有無に関わらず同じ学生というチームのために、サポーターとコーディネーターのチームで協力して、より良い方向を目指すことを大切にしています。 フェリス女学院大学バリアフリー推進室 5 隣にいるかのように お互いが顔を合わせられないオンライン授業だか らこそ、コミュニケーションツールを活用して積極的な支援の振り返りを心掛けています! 時には雑談で盛り上がることも...! 東京都立大学ダイバーシティ推進室 6 隣にいるかのように お互いが顔を合わせられないオンライン授業だか らこそ、コミュニケーションツールを活用して積極的な支援の振り返りを心掛けています! 時には雑談で盛り上がることも...! 神戸学院大学 KAC・KPC 学生サポーター 7 気づきスイッチをオンに 私たちピア・サポーターは気づくことが支援の第1歩だと考えています。「気づきスイッチ」のマークを先輩方から継承し、多様な困り感に敏感に気づき行動できるよう、日々努力しています。 九州大学障害者支援ピア・サポーター 8 同志社スピリット 経験やスキルを皆で伝え合う。日常的な交流を通し、最適な支援を利用学生と共に作る。利用学生もスタッフもチームとして日々成長し、発展する。私達は、この同志社スピリットを誇りに活動する。 同志社大学同志社サポートチーム 9 人一人ハ大切ナリ このたびのコロナ禍で痛感したのは、障がい学生支援の手は止めてはならない、誰一人取り残さないこと。我々は、学祖新島の「人一人ハ大切ナリ」の思いを引き継ぎ、支援の道を開き続けます。 同志社大学阪田真己子とゆかいな仲間たち 10 みんなが同じような生活を 障がいのある人にとって、日常生活を送る上で、障壁を完全になくすことは難しい。しかし、私たち周りの人達が、支え合うことで、その障壁を少しでも小さくできればと、日々頑張っています。 松山大学学生支援団体 POP 受賞チーム以外順不同 川柳部門 結果 (表) 賞 作品 ペンネーム 1 最優秀 表情が あれば良いのに 活字にも  笑形文字 2 優秀作品賞 コーヒーで 手をあたためる 授業前  冷え性のパソコンテイカー 3 次点 支援中 共に夢追い 進化中  こみはる 4 ついていく! わたしのテイク ライクかな?  年齢=テイカー歴のベテラン 5 文字だけじゃ 共有できない この状況  ティアン 6 離れても ツーカー連携 オンライン る~むむの民 7 タイピング 自粛期間に 腕磨く たなっきー 8 マスク着け 目だけの会話 難しい ますけら 9 おしまいの 手話のつもりで おめでとう 初心者 10 次々に 会話の文字が 耳代わり イールイ 11 星の音(ね)を 知らぬ私と 聴く君と 新月 12 支え合う その経験は 宝物 人生は思い出作り 13 WEB授業 画面見切れて 手話見えず Dkey 14 画面みて 通訳者探すが 見つからず ともっち 15 笑う時 同じ感情 届けたい waka 16 WEB授業 無理じゃなかった 手話通訳 奥やん 17 UDで デフリンピックが 不倫ピック エレガントナース 18 自信持て 聞こえなくても 大丈夫 だいじょうぶマイ・フレンド 19 「こんにちは」 出会えた瞬間 ホッとする アートン 20 ヤル気満ち 「こーでねーと!」に 要注意 きーま 21 タイピング うつ速さより 正確さ ナイン 22 ZOOM中 家族の乱入 不可避かな あいみょん 23 離れても 伝えたい気持ちは 変わらない ナスカ 24 みてみたい 君の世界を 考える あき 25 テイカーに 教授絡みし 昼下がり よだれ鶏パクチーのせ 26 レッツ支援 みんながここに輝いて レッツビギン 27 君とはね 同じ言葉で 話したい mii 受賞者以外順不同 (表) 賞 作品 ペンネーム 28 伝えたい 支援の仕方は 無限大  ぱんだまん 29 頼むで支援 まかさんかい  横山きよし 30 いつの間に 4 年続けて カップルに  桃色天使 31 ピエン超え パオンも超えて 文字起こし とむ 32 オンライン 高速字幕 ぐるぐる目  聾ねずみ 33 ボランティア なっておくれよ 潤沢に・・・  かおくん 34 あら残念 学生だとは 思われず  ハモニーさん 35 オンライン 心にしみるよ ありがとう  スーポ 36 知っている? あなたの声も 素敵だよ  TF 37 技術より 気持ちで伝える 僕の手話  オーシャン 38 守りたい 支援の思い その笑顔  ほんまそう思うねん 39 画面から 伝わる手話に 可能性  あやぽん 40 こらどおし コロナコロナ DE 困り果て  肥後のもっこすジイサン 41 ようこそ 支援の世界へ この沼へ(w  沼の守り人 42 あってよい 心が通う 誤変換  ホットスル 43 助け合い 日々の対話が 力になる  ふなな 44 いいね!かと 思った手話は ワンアウト  PEPNet応援隊長 45 支援は続くよ どこまでも やさしいその気持ち つないでる  野を越え山越え♪ 46 誇りたい 学生たちの その思い  学生諸賢よありがとう 47 言遣い 君にすべて 伝えたい  コダック 48 キータッチ そのスピードに 涙する  支援よ今日もありがとう 49 支援への あふれる思い やさしきや  エール 50 信じよう 支え合いの 可能性  PEP さんありがとう 51 映え自慢 君は何映え 支援映え  蠅    52 お互いのリスペクト 支援の秘訣はただそれだけさ  スナフキンからムーミンへ 53 ときに厳しさ 伝えあうのが 支援仲  心友 54 かけた支援は水に流し 受けた支援は石に刻む  支援のマインドセット 55 オンライン 思わず耳を 画面に寄せて  U&K 受賞者以外順不同 ウェブコンテンツ 報告 ウェブコンテンツ 「聴覚障害学生支援で活用できるツール集」 「正会員大学・機関紹介 特設ページ」 1.はじめに これまでシンポジウムではポスター発表の場を設け、聴覚障害学生支援に関する最新情報を発信し、参加者同士が学び会える場を提供してきた。今回オンライン開催にあたって、なにかその代替となる手段をと検討し、今年度については、ウェブコンテンツを作成して期間限定(公開期間:11 月 16 日~12 月 31 日)で公開することとした。 (図) 第16回日本聴覚障害学生高等教育支援シンポジウム オンライン特別企画 聴覚障害学生支援で活用できるツール集 [PEPNet-Japanウェブページ] 2.聴覚障害学生支援で活用できるツール集 聴覚障害学生支援で活用できるツールをカテゴリーごとに紹介するページとして公開した。掲載した内容は下記の通り。 1 遠隔文字通訳、字幕挿入 ・T-TAC Caption(遠隔情報保障システム) ・captiOnline(遠隔情報保障システム) ・おこ助(字幕挿入ソフトウェア) ・Vrew(字幕挿入が可能なソフトウェア) ・Youtube(字幕挿入が可能な動画サイト) 2 遠隔文字通訳に対応できる団体・企業 ・特定非営利活動法人 ゆに ・株式会社アイセックジャパン ・キャプショニング・ペガサス ・認定特定非営利活動法人 長野サマライズ・センター ・パソコン文字通訳者会 ubiquitous(ユビキタス) ・ミライロ(ミライロ・コネクト) 3 遠隔手話通訳に対応できる団体・企業 ・ミライロ(ミライロ・コネクト) 4 音声認識アプリケーション ・UD トーク ・こえとら ・UniTalker 5 就職関連 ・筑波技術大学「聴覚障害者のためのキャリアサポートセンター設置」事業 ・ハローワーク障害者専門窓口 ・Web Sana(ウェブ・サーナ) ・クローバーナビ 6 聴覚障害学生支援や聴覚障害関連の相談ができる団体等 (聴覚障害学生支援に関する相談窓口) ・日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク(PEPNet-Japan)相談対応事業 ・筑波技術大学筑波聴覚障害学生高等教育テクニカルアシスタントセンター(T-TAC) ・筑波技術大学教育関係共同利用拠点「障害者高等教育拠点」事業 (聴覚障害関連の相談窓口) ・一般財団法人全日本ろうあ連盟 ・特定非営利活動法人全国聴覚障害者情報提供施設協議会 ・全日本ろう学生懇談会 7 その他 情報保障に役立つツール ・一般財団法人日本財団電話リレーサービス 3.正会員大学・機関紹介特設ページ 正会員の各大学・機関における聴覚障害学生支援や障害学生支援の取り組みを紹介する特設ページとして開設した。各大学・機関の紹介では、「聴覚障害学生支援 MAP(PEP なび)」のページにリンクさせる形で取り組みの様子を紹介し、また一部の大学については、オープンキャンパスや大学説明会用に作成されたウェブサイト、オリジナルコンテンツなどもあわせて掲載した。 (図) 第16回日本聴覚障害学生高等教育支援シンポジウム正会員大学・機関紹介 特設ページ [PEPNet-Japanウェブページ]  4.まとめ 今回ポスター発表の代替として急遽設けたものであったため、時間の関係で情報収集が充分にできなかった部分もあった。また、全体的に参加者同士の交流という面で課題が残ったが、参加者が時間や場所を問わずに情報が得られる場を設けられた点では意義のある取り組みであったと考える。今後も、オンラインだからこそ可能な情報発信や情報交換ができる仕組みを検討していきたい。 報告 萩原彩子(筑波技術大学) 配信型企画における収録及び配信の方法 配信型企画における収録及び配信の方法 1.はじめに 本シンポジウムをオンライン開催で行うにあたり、事務局では配信型企画における収録ならびに配信方法の検討に非常に多くの時間を割いた。すべての企画に手話通訳と文字通訳を配置することを前提として、講師の人数や構成(音声話者か手話話者か)、配信方法(オンデマンドかリアルタイムか)などによってさまざまな配信方法が考えられ、すべての方が快適に視聴できる環境を整えるために何度も検討を重ねた。  オンライン配信という新たな実施形態の普及が急激に進む現在、聴覚障害のある視聴者もともに参加できる形式が今後もさらに広がってい くことを願い、今回実施した収録および配信の方法について、以下にまとめる。 2.各企画の画面構成の工夫 検討にあたってまず大事にしたことは、情報保障を含めた「見やすさ」であった。画面数が多すぎると情報保障を利用する視聴者がどこを見たらよいか迷ってしまうことが考えられたため、映す画面の数や並べ方に留意して配置を検討した。 また、視聴者の視聴環境はさまざまであるため、パソコンに限らず、タブレットやスマートフォンでも見やすいレイアウトを心がけた。具体的には、画面が複数ページに渡らず、できるだけすべての情報が端末 1 台で見られるよう、資料や情報保障も画面内に合成して配信するなどした(ただし資料は印刷を推奨)。なお「画面共有機能」は視聴者の環境によって見え方が大きく左右されるため、今回は使用しなかった。他にも、画面を見続けた時の目の疲労を考え、話者の映像がまぶしすぎず、柔らかい明るさになるよう光の調整も行った。  このようなポイントで構成した画面配置について、その一部を下記に紹介する。 1 リアルタイム配信における工夫点  リアルタイム配信は Zoom ウェビナーを用いて行い、Q&A 機能や投票機能を使って参加者から質問を受ける体制を整えた。また、Zoom ウェビナーに接続できなかった場合の補助として、YouTube Live でも配信した。 【例:企画4における画面配置に関する工夫点】 ・OBS(Open Broadcaster Software)を用いて司会者と資料をクロマキー合成して配信することで、画面数を6つに抑えた。 ・手話通訳および文字通訳の画面は、読み取りやすいよう講師画面よりも大きめに配置した。 ・手話通訳は、通訳者がそれぞれの自宅から行っていたが、カメラの ON/OFF 操作の手間を省略するとともに、手話通訳の表示画面の位置を固定するため、画面切替機を用いて切り替えながら配信した。 (写真) 写真1:企画4配信時の画面 (図) 図1:企画4における画面構成用パソコンの設定 2 オンデマンド配信における工夫点 オンデマンド配信は Zoom ミーティングを用いて収録した映像を YouTube で公開した。なお、手話通訳ならびに文字通訳の情報保障は収録時にも必要だったため、収録時に行った情報保障を Zoom ミーティングの映像に重ねて表示し、その画面を収録した。即時性を重視したリアルタイムでの情報保障だったため若干の誤りがあったが、映像編集の際に訂正や補足を加えることで補完した。 【例:企画3における画面配置に関する工夫点】 ・視線の移動を少しでも減らすため、手話話者を左側に、音声話者を右側に配置した。 ・修正が必要な場合に訂正や補足を入れることができるよう、画面レイアウトにあえてスペースを多めに入れて構成した。 (写真) 写真2:企画3配信時の画面 (図) 図2:企画3における画面構成用パソコンの設定 3.情報保障面での工夫 オンラインでの手話通訳・文字通訳運用における工夫点を以下にまとめる。 1 手話通訳 全体的に手話話者の映像はある程度の大きさを保つようにした。講師が手話話者か音声話者かで手話通訳者映像の挿入の有無が変わってくるため、画面配置は話者が変わる場面ごとに区切って検討した。 すべての企画において手話通訳者 2 名は別々の場所にいる状態で撮影したが、事前の接続テストや当日の打ち合わせには念入りに時間をかけた。特にオンラインでの通訳が初めての場合は、事前テストのうえで不足機材(Web カメラ、ヘッドセット、モバイルルーター、照明等)を貸し出すなどして準備を整えた。 また、撮影にあたっては画角や明るさに注意し、特に手話通訳者の目線がカメラと同じ高さになるよう、カメラ位置は細かく調整した。また、手話通訳者が交代した時の違和感が少なくなるよう、それぞれの部屋の明るさも調整していただいた。 なお、手話通訳者にはそれぞれ 2 台の端末を準備してもらい、1 台は通訳用(メインルーム)、もう 1 台はブレークアウトセッションや別の Zoom ミーティングを立ち上げて、手話通訳者間だけの会話ツール(交代の合図やフォロー)として使用した。なお、詳細については本会ウェブサイトに掲載している「オンライン授業における遠隔手話通訳」でも紹介しているので参照されたい。さらに、手話通訳者間の会話ツールには事務局スタッフも数名参加し、内容や進行に関わるフォローを行える体制をとっていた。 2 文字通訳 リアルタイム配信の企画については、文字通訳を Zoom の一画面として配信するとともに、希望者が別端末からも見られるよう、マニュアルを作成して事前に配布した。一方、事前収録の企画は文字通訳を動画の中に組み込む必要があるため、資料や話者に視線を落としても遡って情報が辿れるよう、ある程度まとまった行が見られる画面の大きさを確保した。 また、当日は文字通訳対応担当のスタッフを配置し、Zoom 内のチャットで連絡やフォローを実施することとした。「全員」宛にチャットが送信されてしまうと、収録映像にもポップアップがうつりこんでしまうため、事前にチャットの送り先を明らかにしてダイレクトメッセージでやりとりすることとした。 4.まとめ 今回初めてのオンライン開催ということで、事前にさまざまな検証・検討を重ねてようやく実施にこぎつけた。ここでご紹介した方法が最善ということではないが、これらの経験が少しでも、オンラインでの会議や研修会における情報保障の参考になれば幸いである。 (写真) 報告 磯田恭子・吉田未来・萩原彩子(筑波技術大学) 第 16 回日本聴覚障害学生高等教育支援シンポジウム(オンライン特別企画)実施体制 (表) 大会長 筑波技術大学 学長 石原保志 事務局長 筑波技術大学 障害者高等教育研究支援センター 白澤麻弓 配信システムコーディネート 筑波技術大学 障害者高等教育研究支援センター 磯田恭子 吉田未来 幹事 萩原彩子 磯田恭子 中島亜紀子 (表) スタッフ 筑波技術大学 障害者高等教育研究支援センター 三好茂樹 産業技術学部 河野純大 障害者高等教育研究支援センター 萩原彩子(企画 1、4) 障害者高等教育研究支援センター 中島亜紀子(企画 3、学生座談会) 障害者高等教育研究支援センター 磯田恭子(企画 2、配信責任者) 障害者高等教育研究支援センター 石野麻衣子 (オープニング企画、 コンテスト、情報保障 コーディネート) 障害者高等教育研究支援センター 吉田未来 (配信副責任者、企画 2、 事務コーディネート) 障害者高等教育研究支援センター 関戸美音(企画 3、事務) 障害者高等教育研究支援センター 徳丸梨穂 (事務) 肩書きは 2020 年 12 月時点 本シンポジウムのオンラインでの開催にあたり、本学産業技術学部 小林彰夫先生に、技術的な助言及び機材提供等のご協力をいただきました。また、産業技術学部学生の亀田怜史さんには配信の補助で、土橋大幹さん、根本尚哉さん、小川敬也さんには機材準備で、大学院技術科学 研究科情報アクセシビリティ専攻の松谷朋美さんには各種デザイン作成で、大きな力になってもらいました。この場を借りて御礼申し上げます。 日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク(PEPNet-Japan)事務局 【事務局長】 筑波技術大学障害者高等教育研究支援センター・准教授 白澤麻弓 【事務局長補佐】 筑波技術大学障害者高等教育研究支援センター・助教 萩原彩子 【事業コーディネーター】 筑波技術大学障害者高等教育研究支援センター・助教 磯田恭子 筑波技術大学障害者高等教育研究支援センター・助教 中島亜紀子 筑波技術大学障害者高等教育研究支援センター・特任研究員 石野麻衣子 【事務局員】 筑波技術大学障害者高等教育研究支援センター・教授 三好茂樹 筑波技術大学産業技術学部総合デザイン学科・准教授 河野純大 筑波技術大学聴覚障害系支援課・課長 松久保大作 【事務補佐員】 筑波技術大学障害者高等教育研究支援センター・技術補佐員 吉田未来 筑波技術大学障害者高等教育研究支援センター・技術補佐員 関戸美音 肩書きは 2020 年 12 月時点 日本聴覚障害学生高等教育支援シンポジウム報告書 第3号 「オンライン授業から見えてきた聴覚障害学生支援の特質」 (第16回 オンライン特別企画) 発行:日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク(PEPNet-Japan) 発行日:2021年4月30日 編集:日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク(PEPNet-Japan)事務局 〒305-8520 茨城県つくば市天久保 4-3-15 筑波技術大学障害者高等教育研究支援センター ※本事業は、筑波技術大学「聴覚障害学生支援・大学間コラボレーションスキーム事業」の活動の一部です。 国立大学法人筑波技術大学[ロゴ] PEPNet-Japan[ロゴ]