英語圏の点字システムの統一の過程から考える点字の役割 令和3年度 筑波技術大学大学院技術科学研究科 情報アクセシビリティ専攻 石坂 康 筑波技術大学修士(情報保障学)学位論文 目次 0 概要1 1 序論2 1.1 研究の動機及び目的 2 1.2 背景 4 1.3 研究の方法 5 2 考察 6 2.1 リテラシーの獲得を可能にすること 6 2.2 コンピューターと連携すること 7 2.3 点字使用者の情報行動の多様性を保つこと 7 3 結論 8 4 基本事項 10 4.1 点字及び他の触察文字媒体に関する用語 11 4.2 概念 14 5 関連団体の配列 16 5.1 関連団体:国・地域の点字オーソリティー 16 5.2 関連団体:点字に関する活動を有する団体 18 5.3 関連団体:国際組織 21 6 社会的変化を惹起した論文等の検証 21 6.1 "UEB movement" 以前の触察文字媒体のコードに関する議論 22 6.1.1 浮き出し文字と夜間文字の比較、夜間文字からBraille の点字、Decapoint への発展 22 6.1.2 英語圏へのBraille の点字の伝来とその後のコードの改良、複数の触察文字媒体の同時存立 24 6.2 Nemeth・Cranmer 報告(1991 年) 26 6.2.1 点字システムの複雑さ・混乱による点字使用の減少 26 6.2.2 視覚障害者のライフサイクルの変化に伴う点字の役割の変化 27 6.2.3 Nemeth らの提示するa uniform braille code の開発の目的及び限界 27 6.3 墨字との1 対1 対応性について言及した文書 28 6.4 A braille printing house のUEB 移行への対応に関する文書 28 6.5 数学コードをめぐる議論 30 6.5.1 2020 年ICEB 総会におけるU.S.Country Report 30 6.5.2 Carlton Anne Cook Walker による"A Cry for Unity in Creating Textbooks for the Blind" 30 6.5.3 Antonio Guimaraes による"Choices for the future of Braille" 31 6.5.4 Joseph Sullivan による"A Perspective of Braille Unification" 31 6.6 UEB の基本原理 32 6.7 「全訳UEB 規則集」序文からの引用 33 6.8 ICEB の2004 年総会決議 35 7 英語点字の統一の歴史 38 7.1 1784 年から1909 年まで 38 7.2 1913 年から1990 年まで 41 7.3 1991 年から2020 年まで 44 0 概要 本論分は英語圏の点字の統一の過程を文書情報によって調べることにより、社会の中の点字の役割を考察したものである。 1991 年に米国においてAbraham Nemeth らが複数存在する英語点字の統一の必要性を論じた文書を北米の点字オーソリティーであるBANA に提出した。これを受けて、英語点字の統一の任務はその後BANAからICEB(国際英語点字評議会) へと引き継がれる。開発の事業は長期間にわたり、2004 年にICEB は統一された英語点字であるUEB は十分に完成しているとの総会決議を行った。 UEB は英語圏のICEB 加盟8 カ国に採用され、英国や米国、南アフリカやオーストラリアなど、広い範囲で用いられることとなった。 歴史的には英語圏における点字の統一に向けての運動は過去にも存在しており、様々な理由によりコード変更がなされてきた。それらのコードの変更がどのような動機によるものかを文書により調べた。 様々な文書情報を通じて、点字の役割はリテラシーの獲得を可能にすること、コンピューターと連携すること、点字使用者の情報行動の多様性を保つこと、の3 点であることが理解された。そして、点字の役割は視覚障害者が社会においてどのような存在であるかによって変化していくものであるとの結論を得た。 1 序論 1.1 研究の動機及び目的 下記の文章は「全訳UEB 規則集」に寄せられた田中仁の筆によるものである。少し長くなる。しかし、事実を共有するためにここに引用する。 近年、英米を中心とした英語圏では、新しい点字表記法である統一英語点字"Unified English Braille (UEB)" が構想され、米国においては2016 年に、その移行期を経て本格導入された。 視覚障害者の文字である点字はルイ・ブライユ(Louis Braille, 1809{1852)によって,1825 年に創案された。点字はBraille 以来日々使われることによって,新たなことにチャレンジする視覚障害者の絶え間ない営みと共に進化してきたものである。初期には楽譜と言葉の表現を意図して作られ,その後間もなく数式や化学式の表現が工夫され追加された。例えば文化が多発的でありそれゆえ多様であるように,同様に変容する点字も,その進化の過程で分化と多様性を持つことは当然であろう。実際,例示すれば,以前英語圏でも数式の中のプラス記号と情報処理のプログラム中に現れるプラス記号とは違った形で表され,さらに米国における数式表現と日本における数式表現とは大きく異なっている。UEB は,この分化し細片化した点字体系を再度統一し一元化しようとする一つの活動であると考える。 情報技術の進歩は視覚障害者に多大な恩恵をもたらしている。特に,音声(テキスト) による墨字文章の読み書きの獲得は圧倒的だ。しかし,その中で我々は点字に対する敬意と尊敬とを忘れつつあるようにも思われる。点字をさらに育み,情報技術の中にテキストとは別の形でその活用を進めて行くことが肝要であろう。UEB への取り組みはまさにこの点字復権への取り組みであり,点字を通した情報技術のさらなる活用を意図した活動であると考えられる。[1][ 発刊にあたってより抜粋、一部改変] 私はかつて学部の卒業研究として、「視覚障害者の情報への取り組み」というテーマの下で視覚障害者5 名にインタビュー調査を行った。様々な職種の視覚障害者に情報への向き合い方を聞いていく中で、状況に応じて点字と音声読み上げ双方を使い分けていることが分かり、大変興味深く感じたことを覚えている。 視覚障害者の「情報行動」1 においては、触覚を用いる点字が有効である場合と聴覚を用いる音声媒体が有効である場合とがある。点字の出力のあり方においても、点字用紙を用いる場合と点字ディスプレイを用いる場合との違いがある。彼らは日常の業務や私生活においてそれらを使い分けていたのであった。それらは「ある合理性」によって選択されたものであった。そして、その選択の理由(合理性) は確かに納得できるものであった。1この概念については4.2(1) で詳述する。 筑波技術大学大学院情報アクセシビリティ専攻視覚障害支援コースに入学した当初、やはり視覚障害者の情報行動に関するインタビュー調査を行う計画であった。しかし、指導教員である田中仁講師から上記UEB の成立に至る経緯について学び、まず、英語圏8 カ国の点字コードの統一という事業の規模の大きさに驚き、次に、この"movement" 2 の中核をなす思想あるいはその背後にありそれを推進した人々の合理性への理解に対して強い興味を感じた。この私の強い興味が、「他者の合理性理解」3 が、本研究への動機である。 そして、この人々の合理性への理解を通じて、人々の点字に対する行為の分析を通して、点字が有している「社会的な役割」について考えを深めることが、本研究の目的である。 本研究の目的は、UEB の成立の過程やそれ以前の英語圏の点字を含む触察媒体に関する議論及びその表記法から、社会の中での「点字の役割」を考察して、その構造を明らかにすることである。 「点字の役割」の一つは、複数人の間に文字情報を伝達し媒介することである。そのため、点字のコーディング(割付) によって、そのコミュニケーションの質が大きく変化することが推測される。私的点字コード(private codes [31]) とは、専門性の高い点字ユーザー、例えば数学の高度な知識を持つ点字ユーザーが、自らが使用することを主な目的として作り上げる点字コードである。この私的点字コードとは異なり、一般のユーザーによってコンセンサスを持って使われる点字コードは、議論をして承認を行う機関、即ち点字オーソリティー4 がコードを審査し、承認し、社会の各方面に宣言、広報されることによって、初めて適合されるものであろう。 UEB は複数の点字コードを統合したものである。統一に反対する点字ユーザーや当事者団体もあったと考えられる。複数のコードを一つに束ねるという社会的行為は多方面に影響を及ぼすであろう。コードの統一それ自体も機能の側面において様々なトレード・オフの上に成り立つことである。 点字は無論それ自体単独で存立することはできない。点字を生産する機器やそれらに点字を生産するよう命じるプログラム、点字の読み書きを行う人々、点字ユーザーに点字をもってメッセージを送ろうとする晴眼者、点字の規則や技術を教える教師など、点字表記法の変更は点字に関わる様々な人や機器・設備に影響を与えることとなる。必要とされる人的エネルギーや金銭的支出、時間は膨大なものとなるであろう。 点字表記法それ自体も例えば縮約の廃止は「曖昧さの排除」という性質は得られるが、「セル(点字のドットが配置されるスペースのこと) の節約」が一部失われる。さらに、表記法が変更となればそれまで印刷され製本された点字書籍をどのようにするかという判断もせねばならなかっただろう。 上記のような実務上や判断の困難さがありながらもコード変更を行った理由はどのようなものだったのか。 2 4.2(2) 参照。 3 この概念については4.2(4) で詳述する。 4 5.1 参照。 統一以前の点字コードも社会の中で何かしらの役割を果たしてきたはずである。そこにどのような問題、不足があったのだろうか。統一コード作成の必要性を説いた論者はコードの統一によってその問題を解決したかったのであろう。"UEB movement" 5 の行動主体である人々は点字やそれを取り囲む状況をどのように認識し、どのような問題意識を持ったのだろうか。 本研究においては先ず英語圏の点字及びその周囲の状況の理解に努める。同様に、英語圏の点字の統一の歴史に関しても調べる。そして、「統一を選択した人々の合理性」から、社会の中の点字の役割を深く考察したい。 1.2 背景 視覚に障害を持つ人々が情報伝達を行う際に用いる手段の一つに点字が存在する。それは、隆起したドットを指先などの感覚で知覚し、文字情報を受け取るものである。その存在の様相においては、近年のコンピューターによるピンディスプレイの方式の普及などに見られるように多様化を呈している。 Louis Braille が6 点点字の形式を考案する以前は浮き出し文字や夜間文字6 というBrailleの点字よりも1 セル当たりに用いるドットの多い触察文字媒体も用いられていた。触察文字媒体を一つのグループと考えるならば、Braille 点字はその中の1 集団となる。 点字は1 セル当たり6 個もしくは8 個のドットの組み合わせにより文字情報を表現する。そのシステムは様々な国の言語を記述するもの(例えば日本語の点字、フランス語の点字、ヘブライ語の点字など)、楽譜のためのもの、数式を表すためのものなど、複数存在している。さらに、同一国語内における点字においても複数のシステムが存在している場合も見受けられる。 このような点字という一つのグループの中に英語の点字というシステムが存在している。さらに、後で見るように、英語の点字においても独立した複数の表記システムが存在するという状態が長く続いていた。 歴史を概観すれば、近年の英語圏における点字の統合の起点とされるのは米国のAbraham Nemeth らによる文書であることが分かる[32]。ここでは点字システムが複数存在することの害が述べられている。この文書内の提言を受け、後で詳述するように、リサーチ・プロジェクトが設置され、表記システムの統合の動きが始まった。 この統合への営みは、十数年にもわたる議論を要することになる。そして、2004 年、International council on English Braille(以下ICEB と略記する) は、統一英語点字(Unified English Braille、以下UEB と略記する) が英語圏において使用に耐えうる段階にまで完成していると宣言した。 この声明に続き、実際に、南アフリカやオーストラリアをはじめとするICEB 加盟国においてUEB が導入されることとなった。 5 4.2(2) 参照。 6 4.1(9) 参照。 本研究においては(点字の役割を考察し、記述するために) 何を意図して上記のような英語における複数点字コードの統一がなされたのかを考えたい。The American Council of the Blind (以下、ACB と略記する) の議長であった7 Kim Charlson は、UEB が成立する状況を"the Unified English Braille movement" と表現した[2]。 この表現からは"movement" の主体の存在が想起される。 必要な調査、団体間の連絡、実際のデザインなどに関わる多くの人々がこの"movement"の主体となったのであろう。その中心をなす思想は何だったのだろうか。英語圏の点字オーソリティーは表記法の複数共存ではなく統一のコードの制定を選んだ。それは、どのような理由で判断されたのであろうか。点字がどのように存在し、どのような役割を果たすことを企図したのか。先行研究や関連団体の公式声明などから研究を進めたい。 1.3 研究の方法 本研究がデータとするのは英語点字の統一に関する文書情報全般である。このデータを分類し、分析し、解釈することで本研究は進められる。文書情報を収集し、それらをもとに考察を進めた。 先行研究や関連団体の総会において提出されたレポート、Web 上の公開情報等を分析の対象としている。 収集の方針は、まず、歴史的事象に関しては、UEB 関連事項からさかのぼっていくこととした。それは、UEB にいたる点字コードの変遷を時系列でとらえるためである。次に、点字オーソリティーや点字の生産者、消費者などの関連団体に関してはICEB を起点として隣接する組織について調べていくこととした。それは、点字という存在の周囲の構造を理解するためである。 検索エンジンにはGoogle を用いた。私はスクリーンリーダーとして、主にPC-Talkerを用いている。残念なことに、このスクリーンリーダーはすべてのWEB情報を適切に読み上げることができない。本研究は、この束縛条件下で得られたデータを基に展開されている。参照した多くのホームページは巻末の文献リストに示してある。 収集した文書(word ファイル、txt ファイル、pdf ファイル等) の点訳は筑波技術大学の教材制作室、熊本県点字図書館に依頼したほか、BrailleSense によっても行った。 得られたデータは、以下のように分類、分析、解釈されている。 (A) 得られたデータを、歴史的スパンを広めにとって、時系列に配列してみることで、社会的な行為としての点字に対する人々の在り方を俯瞰的にとらえた。(7 章)時間を遡るにあたっては、一つの軸として、「UEB にいたるコード変更や選択」というものを念頭に置いた。これは、Louis Braille の点字(加えてBraille の点字の直接的な契機となったBarbier の夜間文字) からUEB に続く流れを指すものである。 この流れの中で維持されてきた要素、失われた要素、付け加えられた要素は何だったのかを読み取る。 7 任期2013 年から2019 年まで。 (B) 社会的な行為としての点字に対する人々の営みを俯瞰すれば、大きな幾つかの変化において、それを惹起した論文等の存在が確認された。その概要を記述し、分析と考察を進めた。(6 章) (C) 実際に英語圏の社会において点字がどのように存在しているかを俯瞰するために、点字及び点字出版等に関連を持つ団体・組織を配列してみることで、その規模及び深さを確認した。(5 章) 2 考察 本章では収拾した文書群(4 章~7 章) から点字の役割を考察してゆく。特に、本章を読み進める前に、6 章及び7.3 節は最低限ご一読いただきたい。 2.1 リテラシーの獲得を可能にすること 1. 社会の中の点字の役割が何であるかということは、6.2 のNemeth 文書が指摘しているように、社会と視覚障害者の在り方によっても異なると思われる。 Nemeth 文書内で表現されているように晴眼者と隔絶した視覚障害者とその関係者だけから成るコミュニティで生活している場合、墨字文書に現れる書体やアンダーラインなどの強調表現の正確な知識は不要であったかもしれない。しかし、Nemethらが言うような"an enlightenment policy" により、障害者の社会的包摂がなされた場合、学業や職務において晴眼者と文書を共有しなければならない機会は増加することだろう。墨字との1 対1 対応がなされていない点字は点字ユーザーが文字情報の出力の場面に臨んでも、その前段階としての点字を用いた学習の場面においても、その役割を果たすのは困難であろうと考えられる。 2. 6.1.2 の"War of the Dots" の1909 年公聴会に寄せられたKeller の書簡からは、彼女がNemeth とCranmer と同様のニーズを点字に対し持っていたことが分かる。そしてまた、点字が墨字内容を再現させにくい場合、それは文字表現の省略8 を助長し、使用する視覚障害者にilliteracy 9 を生じさせる恐れがあるとも述べられている。 Keller は著述活動をしていたこともあるので、墨字においてどのような表現がとられているかということには(大文字、句読点、空白など) 意識的だったのであろう。 3. 6.11 においてはBraille がBarbier の夜間文字から6 点の点字を開発し、それにより、文字の単位で視覚障害者が「読み」、「書き」という情報行動を自由に行えるようになったことが分かる。 8 この文書において、例に挙げられているのはKeller 宛ての点字使用者からの書簡の中の点字大文字符を用いずに書かれた文章である。 9 Nemeth も同様の語を用いている。 2.2 コンピューターと連携すること 「全訳UEB 規則集」[1] の第1 版の序文において、UEB は、点字(皮肉にも、あらゆる点において最初の“ デジタル”技術の一つ) に他の技術とともに相乗的に進化する柔軟性を持たせようとしたものだとしている。 Braille の開発したDecapoint 10 もその後の英語点字に直接のかかわりはないものの、デバイスを介して視覚的な情報を出力する構造は現在の点字とコンピューターとの関係を連想させるものである。Braille は10 × 10 のドットを用いて「字の形」をデザインしたが、これがプリンターの「ソフトウェア」に当たるとMellor は表現している[20]。 点字についても点字出力が可能なデバイスの普及により、出力の形態も多様化している。点字の概念が点字コードも含む場合、その規則を用いて(6 点入力することで) ディスプレイ上に視覚的情報として現れる。点字は視覚障害者同士のコミュニケーションにとどまらず、他の情報機器との連携で電子データの墨字と視覚障害者間の間のコミュニケーションの媒体の役割をも果たしている。媒体としての点字はその双方向性を強めたとも言い得るかもしれない。 その「墨字との1 対1 対応」、「曖昧さの除去」といった原理によって、UEB は点字の役割を(情報機器との連携を前提として) さらに広げたものであるといえよう。 これは、国際的な情報化社会である今日において必然的な変化であったのだと考える。 2.3 点字使用者の情報行動の多様性を保つこと 点字という情報保障の手段と点字使用者の情報行動について考えたい。 コミュニケーションの最終的な目的は、情報の送り手が受け手にその情報をできるだけ完全な形で手渡すことであろう。より精度の高いコミュニケーションを成立させるためには、情報発信の側はより良く伝達する方法を考えるべきであり、情報を受信する側は、例えば点字を読む能力を高める等、情報を受け取るための能力の向上を図るべきであろう。 そして、より合理的な情報を受け取る方法を模索すべきであろう。 しかし、コミュニケーションの質を決めるのは情報の発信者と受信者の要素だけではない。情報の伝達が行われる環境や状況も少なからずコミュニケーションの質に影響を与えるはずである。 そこで、点字の進化あるいは変化について考えてみよう。それは、確かに情報伝達の環境や状況を変えることになるであろう。そして、それにより、情報の受け手の「読む」以外の情報行動も変容することになるであろう。 1991 年のNemeth らの文書(6.2.3) において、彼らは点字の統一はローマ・アルファベット(Roman Alphabet) にまでは可能であることを述べている。これは、以後に現れる統一106.11 において詳述している。 英語点字が、同じ文脈で他のローマ・アルファベットを用いる外国語(フランス語やドイツ語など) も表現しうることを意味している。 実際に、成立したUEB においてはローマ・アルファベットを用いるヨーロッパの言語に使用されるアクセント記号にそれぞれ固有の前置記号を割り当ててある。これは「全訳UEB 規則集」で示されている、「統一英語点字の基本原理」の次に示す部分に相当している。 1.2.2 UEB の目的は点字の上でも、どの記号が表されているかの曖昧さを読み手に与えないこと(6.6)。 EBAE 11 のアクセント記号はアクセント記号を付けたい文字の前に置かれるドット4であった。例えば、フランス語においてアクサン・グラーブもアクサン・テギュも同じ前置記号ドット4であるので、どちらのアクサン記号であるのか単語の知識がない限り点字からだけでは判断できない。このような問題をUEB は解決している。 さらに、別の例として、iOS により点字を出力することを考えてみよう。iPhone やiPad(Apple 社製品) などでKindle(Amazon 社製品) の図書をUEB で出力すると仮定する。そして、TTS 12 対応の英語で書かれたフランス語参考書を購入し、学習することを仮定する。 すると、もしこれと同じ参考書が紙の本であった場合と比べると、スマートフォンを介しての点字出力は複数の情報行動を省略することができることが分かる。 文字情報を得るために書店へ移動することも不要であるし、紙の本を何らかの手段で点訳することも不要となる。 以上の例から、確かに、情報の受け手の「読む」以外の情報行動は点字の変化により変容されることが分かる。 11 4.1 参照。 12 text-to-speach 合成音声によるテクスト読み上げ。 3 結論 A. 前章において点字の役割である以下の3 点について考察した。 1. リテラシーの獲得を可能にすること 2. 情報機器と連携すること 3. 点字使用者の情報行動の多様性を保つこと 以上の3 点である。そのどれに対しても点字使用者でありデザインや普及に携わった"UEB movement" の主体である人々が能動的に働きかけていた。 点字を用いる人々がどのように「点字の役割」を規定するかにより、点字の姿は変化してきた。すなわち、点字使用者の自己規定が明確にされなければ点字の進むべき道も示されないのである。Nemeth らのアイディアは「社会における視覚障害者の在り方」が変化したことに対応して生み出されたものである。つまり、英語点字の統一は「目的」ではなく、点字使用者の自己規定により生じた「手段」なのであった。そして、その得られた「手段」により実現した点字は、隔絶したコミュニティー内ではなく、視覚障害者が主流化された社会の中で用いられるべくデザインされていた。 UEB は、長い選択の連続の結果、初期のBraille の行った墨字とドット配列の対応を継承し続けている。このことは、U EB 制定に際してローマ・アルファベットを使用するヨーロッパ諸国の点字を、同文脈において表現することを可能にしている。 機械化、情報化するとともに国際化がより加速している今日の社会において、このことはある種合理的なデザインである。 6.5.2 において米国における理数系コードをめぐる議論に関する文書を列挙した。「米国のより多くの視覚障害者は科学、技術、工学、数学13 に参加すべきである」という自らについての考えから、その自己イメージを果たすのに有効なものとして理数系のコードにUEB-Math ではなくNemeth Code を選択した。他のICEB 加盟国は理数系のコードにUEB-Math を用いることを選んでいる。これらも今後視覚障害者の自己規定が変化することによって議論が生じ、別の選択をするのかもしれない。 B. 英語圏点字の統一の歴史に関する文書を読んできたのであるが、英米間での点字コードの統一の側面と、同一言語内での複数コードの統一という側面のいずれにおいても実に多くの文書が存在した(内容のみを確認はしたが、全く本稿に反映させることのできなかった文書も多数存在する)。 UEB の存在を学んだときに抱いた「巨大な事業」という印象はさらに強まった感がある。この事業に求心性を持たせ、長期間の議論を続けてきたその真摯さには敬服するほかなかった14。これが私の得た「他者の合理性理解」とも言える。 点字コードの様々な分野、歴史及び地理的な面と広範な事象のわずかな部分にしか触れることができなかったが、彼らの真摯な姿勢に習い、点字という技術に向き合う必要があると感じた。 C. この論文では、5 章~7 章に多くのデータを分類し配列してみている。これは、社会的な行為としての点字に対する人々のあり方を俯瞰したものになっているはずである。我々は配列はそれ自身で意味を持つと信じている。この幾つかのリストを基に、今後のさらなる深い研究が進展することを真に期待するものである。 13 the fields of science, technology, engineering, and math 14 7.3 を特に参照されたい。 D. 1.1 にも引用されているが、情報技術の進歩は視覚障害者に多大な恩恵をもたらしている。特に,音声(テキスト) による墨字文章の読み書きの獲得は圧倒的だ。しかし,その中で我々は点字に対する敬意と尊敬とを忘れつつあるようにも思われる。点字をさらに育み,情報技術の中にテキストとは別の形でその活用を進めて行くことが肝要であろう。UEB への取り組みはまさにこの点字復権への取り組みであり,点字を通した情報技術のさらなる活用を意図した活動であると考えられる。 本研究を進めることで、上記主張の全く正しいことを確かなデータにより確認した。 E. 6.1.2 にあるように、歴史を振り返ることで、アメリカ点字とニューヨーク点字との間の対立、"War of the dots" について知ることができた。これは、点字について対立し議論し調整を図ることで、local なニューヨーク点字を廃してglobal なアメリカ点字へと統一する戦いであった。 米国は「点字を一新させる経験」を、その歴史の中にすでに一度有していたのであった。必要なら躊躇することなく点字を一新できるこの国の特性が、情報技術の進展によって顕在化した点字表現に関する問題を解決するために、さらに、点字が持ち続けるべき尊厳を守るために、現在の英語圏の活動として再び現れてきた、これが"UEB movement" の持つ様相の一面ではないであろうか。 F. 最後に、これまで陰的(implicit) に述べ続けてきたことを、陽的(explicit) に示したい。すなわち、社会の中の視覚障害者の在り方は、その社会の点字の在り方を規定する。 点字は1 セルに64 個の表現を持つ。もし点字の在り方を極限するなら、この64 個の順列の在り方と言い得る。この結論は、この順列から、社会の中の視覚障害者の在り方が感得されるということである。明らかに、社会の中の視覚障害者の在り方は多様である。ゆえに、この結論に寄れば、それに対応する点字の在り方も多様となる。これは点字の有する可能性を強く示唆するものであろう。 さらに、この結論は直ちに次の主張を導く。 社会の中の障害者の在り方は、その社会のアクセシビリティ15 の在り方を規定する。 これはある意味教訓的であろう。そして、これはアクセシビリティの在り方を通して、社会の中の障害者の在り方が感得できるという主張にもなる。 15この概念については4.2(3) で詳述する。 4 基本事項 本章ではこの論文で用いる用語及び概念について詳述する。 4.1 点字及び他の触察文字媒体に関する用語 以下に用語を配列して示す。 (1) 点字 a. 点字をヒューマン・インターフェイスの観点で考えると、触覚による文字情報の伝達手段と言える。触察文字媒体という集団の中の一集団と位置づけられる。 隆起したドットの組み合わせにより文字情報を表現するシステムである。6 点点字(縦3 ×横2 の配列) の場合、どのドットも隆起していない場合も含め、64通りのドット配列が可能であり、その組み合わせにより何らかの情報を持つ。先行するセルがそれに続くセルに情報を与え、先行するセルと後続のセルとの組み合わせにより特定の文字情報を表す場合もある。つまり、単独のセルにより文字情報を持つ場合と複数個のセルの組み合わせにより文字情報を持つ場合とがある。 b. 歴史の側面において点字を定義する場合、Louis Braille による開発がその定義に加えられることも多い。例えば、「全訳UEB 規則集」[1] においてもその定義に「視覚障害者のフランス人のルイ・ブライユによって開発された視覚障害者が指先を使って触れて読み書きする方法」というその発明者に関する事柄も含めて記述してある。 c. 法律の中で点字について言及される場合、点字の社会的な役割や人権という概念とのかかわりにおいて記述される場合がある。例えば、国連の「障害者の権利に関する条約」の第2 条の定義の中では、意思疎通」を実現せしめる「補助的及び代替的な意思疎通の形態、手段及び様式の中の一つに位置付けられている[4]。 d. 存在形態としてはかつては(ほとんどは点字用に作られた) 紙に書かれたものが主流であったが、近年では点字ディスプレイ上に出力される形態が増加している。紙やデバイス上のものだけでなく、日常生活において使う道具や、市販される薬品のラベル上、玩具上に印刷、生産される場合もある。 (2) UEB UEBは上記(1) の集団の中のグループの一つである。「全訳UEB規則集」によれば、UEB は、音楽を除くすべての分野を記述するための英語の点字システムであり、その目的は点字の上でもどの記号が表されているかの曖昧さを読み手に与えないこと11だとされる[3]。 フランスで発明されたシステムが英語圏に伝わり、英国英語圏と米国との間で異なる点字表記体系が生じることとなった。また、米国内においても点字を含む複数種類の触察文字媒体が存在することとなった(後に詳述)。 言語を表現する点字体系と数学や化学を表す点字体系の別という以前に、一つの言語(英語) を表現する体系が複数存在する状態が長く続いていた。そのため、異なる表記システムを有する地域間では書籍を共有することが不可能であるという問題も生じている。 本稿で取り上げる"UEB movement" においては、90 年代にも残存していたLiteracycode の地域差の統一も含みながら、literacy code と数学や化学、コンピューターなど、異なる主題を表す点字コードがそれぞれ別の体系の下に発展していたことが、英語圏の点字の問題として大きく取り上げられている[5]。 これらのコード群を一つの体系に統合することの必要性が1991 年のNemeth・Cranmer の文書で説かれ、それが可能な点字体系が模索されたのである[5]。 米国においてはUEB導入時に理数系の点字にUEBではなくそれまでのNemethcodeを用いることとした。2020 年の時点においてもUEB とNemeth code を同時に用いる州が存在している。理数系コードの米国における議論の際にこのNemeth code に対し、UEB の数学点字表記規則を特にUEB maths と呼ぶ場合もある。 (3) English Braille American Edition English Braille American Edition(以下EBAE と略記する) は1959 年から2016 年1月にUEB に移行するまで米国で用いられていた点字システムである。UEB への移行後もBANA のページなどで参照目的のためのEBAE の表記法やその変遷に関する情報へのアクセスが可能である。 (4) Standard English Braille Standard English Braille(以下、SEB と略記する) は2015 年にUEB に移行するまで英国で用いられていた点字システムである。the Royal National Institute of BlindPeople(以下、RNIB と略記する) の所有する2 万点以上のSEB によって作成された蔵書にはUEB 移行後もアクセスが可能とされている[15]。 長期間に渡りアルファベット大文字(続くセルが大文字であることを示す大文字符を用いる) を使用しなかったことが特徴の一つに数えられる。近年、視覚障害を持つ学生のmainstreaming などにより大文字の使用が議論の的となり、使用する方向で推移していた。 (5) Nemeth Braille Code for Mathematics Abraham Nemeth により開発された数学と科学のための点字コードである。 Nemeth はそれまで米国において用いられていたTaylor Code(後述) に不満を感じており、彼の数学コード開発は1946 年または1947 年に開始された。 Nemeth はそれ以前に口頭での数学情報の伝達規則を考案しており、そこで用いられる言葉に点字記号作成が行われた。 例えば、"x to the n power" という口頭での表現において、"to the" 部分は「上付き文字を開始する」を意味し、"power" 部分は「ベースラインに戻る」を意味した。 そこから、点字コードにおいて「上付き文字を開始する」、「ベースラインに戻る」に当たる記号の作成が行われた。 米国において1952 年に初版が世に出され、現在に至るまで用いられている。1991年に行われたNemeth 自身へのインタビューにおいて1952 年にAmerican Printing House for the Blind(後に詳述、以下APH と略記する) からNemeth Code が出版される経緯について語られている。 当時彼が勤務していたAmerican Foundation for the Blind(後述) において、同僚であるClifford witcher(自らも全盲である物理学者) から点字において積分のテーブルが存在するかを尋ねられ、彼自身の開発したコードを伝えたところ、Witcher 博士はこの表記法を是とし、公に問うべきだと勧めたことが述べられている[7, 8]。 (6) The Textbook Format Code The Textbook Format Code は1965 年にthe Braille Authority とthe subcommitteesにより既存のコードを改訂して開発された点字表記規則である。 (7) New York Point 発明した人物が不明でありながらも20 世紀初頭の米国において最も広く使用されていた触察文字コードである。縦2 ドット、横1~4 ドットで1 つの文字を表す。開発16及びその広報にはWilliam Bell Wait 17 が従事していたと考えられている。Wait はLouis Braille の2 × 3 ドットの方式がスペースを使用し過ぎであるとしてより少ないスペースで同一文字を表現できるNew York Point の有用性を主張した[9]。 (8) American Braille (Modi ed Braille) New York Point の2 × 1~2 × 4 というサイズよりも元来のLouis Braille の2 × 3の方が読みやすいという判断に加え、アルファベット文字のドット配列との対応も英語における文字の登場頻度に基づき改めた表記法である。Perkins Institution for the Blind の教師であったJoel W.Smith が開発した。 Perkins Institution にて生徒らに使用されたと伝えられるが、公式な表記法でなかったこともあり、開発されてからしばらくの間は広がることはなかった。 16 原文ではdevelopment。who invented NewYork Point については議論があるとのことである。そのため、少なくともある一時点からの開発とした。 17 1860 年代初頭に"a teacher and superintendent of New York institution for the Blind" の職にあった。 しかし、1892 年のconvention of the American Association of Instructors for the Blind において大きく取り扱われることとなる。1900 年にそれまでの名称であるModi ed Braille からAmerican Braille と改められる。 (9) 夜間文字(sonographe) フランスの元砲兵士官Charles Barbier により考案された触察文字媒体である。盲学校の生徒たちからは浮き出し文字よりも読みやすいとの評価を得る。 横2 ×縦6 の隆起したドットにより音節またはその構成要素である子音を指定する。 36 種の1 ないし複数のアルファベ(フランス語におけるアルファベット) が割り当てられた6 × 6 の表が作られており、夜間文字の左右のドットの1 から6 数はその表からどの音を呼び出すのかを表す。 例えば、左に6 つのドット、右に5 つのドットがある場合には"ion" を表す。 この6 × 6 マトリックスには多くの文字情報が含まれてはいる者の、h(アッシュ) のように基本的に発音に反映されない文字は単独では含まれない18 。 (10) Moon Type 自らも視覚障害者であったDr.Wiliam Moon により開発された触覚文字媒体である。 ローマ字、数字、一般的句読点を表すための14 文字から成る。Moon Type のドキュメントは現在でもRNIB とthe Queensland Braille writing Association において生産、配布されている。 (11) Taylor Code 自らも全盲となった英国人、Henry Martyn Taylor が考案した数学のためのコードである。 The National Institute for the Blind のスタッフであり、自らも全盲であるEmblenの助力を受けて完成する。開発されて間もなく英国の標準的な数学・化学表記記号として採用された。また、英国人Taylor が開発したTaylor Code は、1952 年にNemeth Code が導入されるまで米国においても使用されることになる。さらに、これは日本で現在用いられている数学点字の源流をなすものとされる。18 マトリックスにはch という形でh が含まれているが、これはc との組み合わせによって一つの音を形作る例外である。文章中のすべてのh の存在をカバーしてはいない。 4.2 概念 以下に基本的な概念を説明する。 (1) 情報行動 加藤は著書「情報行動」の中で「われわれの五感の感ずるすべてのものが「情報」」であるとし、「人間のあらゆる行動」が「情報行動」であるとしている[10]。また、アクセシビリティ研究会の山田、中村は「情報アクセシビリティとユニバーサルデザイン」の中で情報行動とは、「情報をやり取りしたり、扱ったりする行動」と定義している[11]。 本研究においては情報行動という語をこの意味で用いたい。 (2) "UEB movement" Kim Charlson の談話でmovement という語が用いられていたことを先に述べたが、この"UEB movement" という語を本稿においては以下の範囲を示すものとしたい。その時間的範囲は1991 年のNemeth 文書のBANA への提出をその始まりとする。 米国におけるNemeth code との共存の動きなど、大きく動き続けている状態であるので"movement"としては現在も進行していると捉えている。本稿においては2020年のICEB 総会における文書までを扱う。 地理的な範囲は英国、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、ナイジェリア、南アフリカ、アイルランドの8 か国とする。 (3) アクセシビリティ United Nations の"Convention on the Rights of Persons with Disabilities" の"Article 9 Accessibility" のページにおいて、この条項は以下のように述べられている。 訳出に議論があるため原文のまま引用する。 Article 9 Accessibility: 1. To enable persons with disabilities to live inde- pendently and participate fully in all aspects of life、States parties shall take appropriate measures to ensure persons with disabilities access on an equal basis with others、to the physical environment、to transporta- tion、to information and communications、including information and communications technologies and systems、and to other facilities and services open or provited to the public、both in urban and in rural areas. These measures、which shall include the identi cation and elimination of obstacle and barriers to accessibility、shall apply to、inter alia: (後略) 関根はこの権利条約を「各国における障害者施策の基礎」と位置付けた上で、当事者の能動的なアクセスという行動の主体の明確性を指摘している[12]。上記第9 条においても"to live independentlhy"、"participate fully in all aspects of life" と、当事者の行動という言わばaccessibility の前提となるものが明瞭な文章となっている。 (4) 他者の合理性の理解 「他者の合理性」はマックス・ヴェーバーの理解社会学における概念である。以下にヴェーバーの「理解社会学のカテゴリー」の冒頭部分を引用する。 「人間の(「外的」あるいは「内的」) 行動は、あらゆる出来事がそうであるように、その成り行きのうちに、いろいろな関係やいろいろな規則性を持っている。しかし、少なくとも完全な意味で人間の行動にのみ固有なことは、そうした諸関係や諸規則性の経過を、理解可能な形で解明しうるということである。[13]」。 岸は著書「質的社会調査の方法」において「他者の合理性」を「私たちにはあまり縁のない人々の、一見すると不合理な行為選択の背後にある合理性やもっともな理由のこと」と表現するとしている[14]。 本稿では点字コードの統一を社会的な行為ととらえ、その背後にその行為にかかわる人々の何らかの合理性があると仮定し、その立場において文書情報に臨みたいと考えている。 5 関連団体の配列 本章では英語圏の社会において点字がどのように存在しているかを俯瞰的に捉えるために、点字及び点字出版等に関連を持つ団体・組織を配列してみることで、その規模及び深さを確認する。 5.1 関連団体:国・地域の点字オーソリティー "UEB movement" の指導的役割を果たした各国の点字オーソリティーを以下に示す。 このリストにより、"movement"の規模及び地理的分布等が理解される。なお、そのURLは割愛した。 (1) BANA BANA は米国の点字オーソリティーである。the Braille Authority が他組織を招き入れる形で1977 年に誕生した。複数団体の代表者から構成され、その使命は点字や触図の標準化を通してtactile reader のリテラシーを保障することである。現在、BANA は以下の組織により構成される。 - American Council of the Blind - American Foundation for the Blind - American Printing House for the Blind - ATPC (Alternate Text Production Center) - Associated Services for the Blind and Visually Impaired - Association for Education and Rehabilitation of the Blind and Visually Impaired - Braille Solutions、Region 4 Educational Service Center - California Transcribers and Educators of the Blind and Visually Impaired - CIDI (Center for Inclusive Design and Innovation) - Clovernook Center for the Blind and Visually Impaired - CNIB (Canadian National Institute for the Blind) - Hadley - Horizons for the Blind - National Braille Association - National Braille Press - National Federation of the Blind - National Library Service for the Blind and Print Disabled - Perkins School for the Blind また、以下の団体がAssociate Members(準メンバー) として挙げられている。 - Council of Schools and Services for the Blind - Crawford Technologies - T-Base Communications、Inc. (2) UK Association for Accessible formats UK Association for Accessible Formats(以下、UKAAF と略記する) は英国の点字オーソリティーである。 その使命を「全てのドキュメントをアクセシブルなものにすること」としている。3団体が合併する形で2009 年に発足した。 (3) The Braille Authority of New Zealand Aotearoa Trust The Braille Authority of New Zealand Aotearoa Trust(以下、BANZATと略記する)はニュージーランドの点字オーソリティーである。 (4) Braille Literacy Canada Braille Literacy Canada(以下、BLC と略記する) はカナダの点字オーソリティーである。 1990 年に設立されたCanadian Braille Authority(以下、CBA と略記する) がその前身である。CBA は2013 年にBLC と改められる。国内の点字標準に関する業務のほか、the French Braille Forum にも代表団を送り、連絡している。 (5) The South African Braille Authority The South African Braille Authority(以下、SABA と略記する) は南アフリカの点字オーソリティーである。 (6) The Irish National Braille and Alternative Format Authority The Irish National Braille and Alternative Format Authority(以下、INBAF と略記する) はアイルランドの点字オーソリティーである。 (7) Australian Braille Authority Australian Braille Authority(以下、ABA と略記する) は1981 年に設立されたオーストラリアの点字オーソリティーである。 (8) Braille Advancement Association of Nigeria Braille Advancement Association of Nigeria はナイジェリアの点字オーソリティーである。 5.2 関連団体:点字に関する活動を有する団体 以下に点字書籍の所蔵、コミュニケーション手段における点字の使用、点字出版物の政策等の活動を有する団体を示す。なお、そのURL は割愛し、特に示されていない場合には米国の団体を表している。 (1) American Foundation for the Blind American Foundation for the Blind(以下、AFB と略記する) は米国の非営利団体である。 視覚障害を持つ人々の社会参加のための活動(調査など) を行っている。AFB の初期のリーダーとして、M.C.Migel とHelen Keller が挙げられている。第一次世界大戦において失明した退役軍人の支援を考えていたM.C.Migel のサポートによりAFBは結成された。また、AFB はKeller の文章や書簡などのコレクションを蔵しており、それらに対するアクセスを提供している。 (2) National Federation of the Blind National Federation of the Blind(以下、NFB と略記する) は米国の視覚障害を持つ人々の当事者団体である。 ボルティモアに拠点を置き、当事者のネットワークを通じて権利擁護を目的とした活動を行っている。 NFB の研究開発部門はBANA に提出されたNemeth・Cranmer 文書(1991 年提出)をNemeth とともに作成したTim Cranmer によって設置された。 (3) RNIB RNIB は英国の"one of the UK's leading sight loss charities and the largest community of blind and partially sighted people" であり、彼らのホームページによれば、RNIB は"creating a world where there are no barriers to people with sight loss" する上で重要な役割を果たしている[15]。 (4) The National Library Service for the Blind and Print Disabled The National Library Service for the Blind and Print Disabled(以下、NLS と略記する) は通常の印刷物を読むことのできない、または扱うことのできない人々のための書籍を蔵する。 1931 年に議会法に基づき発足した。発足当時は視覚障害を持つ成人を対象としていたが、1952 年に子供も対象となる。1966 年からは通常の形態の印刷物へのアクセスに困難を生じせしめる障害を有する人々を対象としたサービスを開始する。2016 年にはrefreshable braille displays の提供を開始する19。281、000 を超えるタイトルを所有しており、点字書籍及び楽譜は74、000 強を占めており、残る207、000 点が録音図書である。 利用者(個人・団体) のニーズが満たされているかを調べるconsumer relations officerが存在する[16]。 (5) The South African Library for the Blind The South African Library for the Blind(以下、SALB と略記する) は南アフリカの視覚障害など読書に困難さを有する人々のための国立の図書館である。 (6) National Braille Association National Braille Association(以下、NBAと略記する) は1945 年に設立されたボランティアで構成されたグループである。 その使命は点字制作者に継続的な教育を提供し、視覚障害者に点字の資料を提供することとされる[17]。 19 2020 年ICEB 総会における米国のレポートにおいては地域の図書館の利用者に対しての2 種の点字ディスプレイの無料貸し出し事業が行われていることが述べられている。 (7) Clovernook Clovernook は1914 年に運営が開始された点字生産者である。 毎年3000 万ページを図書館や消費者に出荷している。業務の多くの部分がNLS との契約に基づくものである。 (8) National Network for Equitable Library Service National Network for Equitable Library Service(以下、NNELS と略記する) は、カナダの公共図書館の所有するコンテンツのリポジトリである。 国際的なパートナーや図書館、(主にカナダの) 出版社と協力して通常印刷物にアクセスの困難なカナダ人に向け、様々な読書形態に対応した形式(DAISY、MP3、EPUB、BRF など) の図書のコピーを利用可能にする。NNELS コレクションには約40、520 タイトルが存在する20。 20 2020 年4 月時点 (9) Center for Equitable Library Access Center for Equitable Library Access(以下、CELA と略記する) はカナダにおける印刷物での読書に障害を持つ人々の利用し得る点字やDAISY などの80 万のタイトルを蔵する。 (10) ACB 1961 年に設立されたアドヴォカシー団体である。 約70 の州に支部を持つ。ACB はその使命を「全ての視覚障害者の自立、安全、機会の均等、生活の質を増進せしめること」としている。改正リハビリテーション法504 条の策定方針の作成への積極的関与、障害を持つアメリカ人法の通貨に向けての取り組みとしての他障害団体との協力、連携などを行った。 (11) Horizons for the Blind Horizons for the Blind は自らも視覚障害を有していたCamille Caffarelli により1977年に設立された。 金融機関や公益事業、通信会社への点字や大活字、音声等のサービスを提供している。 (12) Association for Education and Rehabilitation of the Blind and Visually Impaired Association for Education and Rehabilitation of the Blind and Visually Impaired(以下、AER と略記する) は1984 年に設立された。視覚障害者にリハビリテーションや教育を提供する専門家の組織である。BANA を構成する団体の一つである。 (13) The Alternate Text Production Center The Alternate Text Production Center(以下、ATPC と略記する) は印刷されたテクストへアクセスが困難な学生に使用が可能な代替メディア製品を既存の印刷物や電子文書から作成する組織である。 提供される代替メディア製品は(a) 電子テクストファイル、(b) 電子点字ファイル、(c) 点字の本及び文書、(d) 触図。 5.3 関連団体:国際組織 以下に複数国からなる点字に関する活動を有する団体を示す。なお、そのURL は割愛した。 (1) ICEB ICEB の本部はオンタリオ州トロント(カナダ) のCNIB に存在する。 その目的は英語の点字に関する国内(点字) 標準化団体間の国際協力のための媒体の提供だと定められる[18]。ICEB 内に設置されたUnified English Braille Code Maintenance Committee (UEB-CMC) においてUEB に新たに作られた記号や変更された記号などが検討される。 (2) The European Blind Union The European Blind Union(以下、EBUと略記する) は1984 年に設立された非営利・非政府のヨーロッパの組織である。 The World Blind Union の6 つの地域組織の一つである。EBU の目的はヨーロッパの全ての視覚障害者の利益を保護・促進することであるとされる。そのメールにおける情報発信は複数の言語により行われ、英語もその中に含まれる。 (3) The World Blind Union The World Blind Union(以下、WBUと略記する) はthe Union of the International Federation of the Blind とthe World Council for the Welfare of the Blind により1984 年に結成された。 その主要な優先事項は視覚障害者の、(a) 完全な参加(full participation)、(b) 機会の均等(equal opportunities)、(c) 人権の保護(protection of the human rights)、を促進することとしている。 6 社会的変化を惹起した論文等の検証 社会的な行為としての点字に対する人々のあり方を俯瞰すると、大きな幾つかの変化に おいて、それを惹起した論文当の存在が確認された。本章ではその概要を記述し、分析と 考察を進める。 6.1 "UEB movement" 以前の触察文字媒体のコードに関する議論 C. マイケル・メラーによる「ルイ・ブライユの生涯 天才の手法」[20], The New York Institute for Special Education  [22] 及びDHM (Disability History Museum) [23] のページに掲載されているIrwin の筆による"War of the Dots" その他の資料に様々な触察文字媒体の問題や改良、変更、統合の記事が含まれていた。 米国においては国内に複数の触察文字媒体が存在する時期があった。公教育においてどの文字媒体を用いるかの議論においての論点などが記録されている。 視覚障害者が文字の概念を晴眼者と共有するためにDecapoint(デカポワン) という視覚的に感覚されるようドットを用いた文字表現をLouis Braille は考案した。この発明については[20, 21] さらにAFB のインターネット上の記事などが解説している。 6.1.1 浮き出し文字と夜間文字の比較、夜間文字からBraille の点字、Decapoint への発展この項は[20, 21] に寄る。 Barbier の考案した夜間文字はパリの盲学校の生徒たちに好評であった。Mellor は次のように記している。 墨字をそのまま浮き出させた文字の直線や曲線は、触ってもはっきりとしない。それに比べて凸点は、触読が容易で、分かりやすいと生徒たちは即座に評価した。「読む」行為もそれまでの浮き出し文字より容易であり、「書く」行為も点字盤により可能であった。 この触察媒体の欠点は「綴り」と「文法」の不在である。さらに、「音楽」、「数字」の表現も不可能であった。 Louis Braille はBarbier の夜間文字に変更を加え、綴りを表現できるようアルファベット一つ一つに対応するドット配列を定めた。 次の表は「Braille の点字配列表」と呼ばれており、視覚障害者にその文字をもたらしたという偉大な功績を讃えて、パンテオンの彼の墓石に永遠に刻まれている。 Mellor はBraille が採用した「Braille 点字の論理」が「明快さ」を有すると評価している。記憶せねばならない点の配列は10 パターンのみである21。 21 アルファベに関しては以降はそのパターンの上に規則的にドットを拡充していく。 それらはセルの上部にあるドットで構成される。つまり、ドット1・2・4・5 が用いられる。1 行目のそれぞれの列は次のようになる。 1 列…ドット1    2 列…ドット1・2    3 列…ドット1・4    4 列…ドット1・4・5    5 列…ドット1・5    6 列…ドット1・2・4    7 列…ドット1・2・4・5    8 列…ドット1・2・5    9 列…ドット2・4    10 列…ドット2・4・5    2 行目は上記のドットにドット3をそれぞれ加える。3 行目は1 行目のドット配列にドット3・6を加える。空白のセルというパターンを除くとドット配列は63 通りであり、以下この表は7 行まで続く。 後から加えられるw を除くz までの25 文字は上記の表に当てはめられ、a の1 行目1 列から順に対応が行われ、3 行目5 列のz まででこの体系におけるドット配列とアルファベの対応は終わる。w は後にBraille の友人、英国人のHenry Hayter がこの文字の存在についてBraille に指摘したことで点字に加えられることとなった。 1832 年にBraille は前置記号である数符(ドット3・4・5・6)を考案する。数符を上記の表1 行目の各ドット配列に全治するとそれはa、b、c … ではなく1,2,3 …を表すこととなる。 Braille は点字以外の触察文字媒体のシステムとして、1839 年にDecapoint を開発している。10 × 10 のドットマトリックスで文字を墨字と同様の形態で点線の形で表現する。 打ち出されたものは視覚によっても触覚によっても感覚しうるので、これを用いて晴眼者と視覚障害者が文字を介してのコミュニケーションをすることが可能であった。翌1840 年、自らも視覚障害者であるFoucaut がRaphigraph を発明し、Braille のDecapoint を機械により書くことが可能となる。 Raphigraph の機構はピストンが採用されており、トランペットのばね式バルブに似ている。Mellor はFoucaut の音楽的知識が発想源になっているであろうと推察している。 大内の論文には実際の出力の方式が縦の10 ドットのうちどのドットを打ち出すのかを右手側で設定し、左手でレバーにより点が打ち出されると説明されている。また、同論文内で、イタリアにおいてもRaphigraph が利用されていたことを確認した旨報告されている。大内がミラノ盲人協会で確認したRaphigraph はBraille とFoucaut の開発時の状態に改良が加えられ、2 列20 点が同時に打ち出せるようになっていた。 Mellor は現存するBraille によるCharles Carton(ベルギーの神父) への1842 年5 月21日付の書簡を紹介している。この書簡には、Raphigraph がスペインとドイツに輸出されていること、また、Braille とFoucaut の発明によるこの機器が盲教育の改善のためのものであるとした上で、それがCarton の教える児童にも有益である可能性があることが記されている。 Mellor はこのRaphigraph を「世界初のドット・マトリックス・プリンター」だったと位置づけている。また、大内はBraille の研究開発活動を「晴眼者と視覚障害者の相互交流が可能なコミュニケーション手段を目指していた」と評している。 6.1.2 英語圏へのBraille の点字の伝来とその後のコードの改良、複数の触察文字媒体の同時存立この項は主にThe New York Institute for Special Education  [22] 及びDHM (Disability History Museum) [23] のページに掲載されているIrwin の筆による"War of the Dots" に基づく。 英国に伝わったBraille 点字は基本的に共通するラテン文字部分とドット配列との対応を残した。その上に英国英語の綴りに適したコーディングが行われた。 米国においてはBraille 点字が占めるスペースが大きいと考えたWait が縦2 ドット、横1 から4 ドットを用いることで1 文字を表現するNew York Point を開発する。さらに、Smith はNew York Point は読みやすさの面で問題があると考え、ドット構成を再び横2×縦3 の6 ドットに戻し、米国英語において頻出する文字にセル当たりのドット数の少ないコードを対応させるという方針で設計を行った。 当初公的な承認を得ていたNew York Point であったが、徐々に批判者が増え、それに代わる触察媒体を求める声が上がることとなる。公的な承認がなかったために使用が拡大することのなかったSmith のAmerican Braille に注目が集まることになる。 1909 年にニューヨークの公立学校で用いられるべき触察文字媒体の利点を双方の立場から聞くための公聴会が教育委員会により開かれた。Helen Keller は公聴会に出席しなかったが、教育委員会のA.Emerson Parmer に書簡を送っている。彼女の主張を以下に訳出する。 a. New York Point が読みづらく、また、不十分なシステムであると思っていた。New York Point のシステムの不備(明快さに欠ける大文字のルール、扱いづらいハイフン及びアポストロフィ) はユーザーをilliteracy にしてしまう恐れがある。 b. New York Point はローカルなものであり、一方、6 点点字はそのための機器がドイツ、フランス、イギリス、アメリカで生産されており、点字であれば世界中の人々とコミュニケーションが取れる。 c. American Braille は大文字や句読点の問題、読み易さなど、すべての重要な点でNew York Point よりも優れていると確信している。 議論の後、最終的にthe committee of New York Board of Education はAmerican Brailleを採用することを決定した。 The New York Institute for Special Education のページには1910 年の各触察文字コード使用者の割合を調査した結果が示されている。[19] New York Point   57.2% American Braille   28.1% English or European Braille   4.7% Line Type or Letter   23.9% Moon Type   11.1% Kind not reported   6.4% また、コード変更、もしくは統一といった議論において、点字を含む触察文字媒体の使用者の「変化そのもの」に反対する論も"War of the Dots" に現れる。 Line Type, New York Point, American Braille そしてRevised Braille 1 1/2 という4 つのコードを学ぶこととなったアメリカの視覚障害者の存在が記録されている[22]。Irwinの筆はそういった人々を「疲れて」いたと描写している。ある全国大会における"If anyone invents a new system of printing for brind、shoot him on the spot."という一人の論者の発言に聴衆が大いに共感した、という場面がIrwin の同書に記録されている。 浮き出し文字、夜間文字、Boston Line Type、New York Point といった触察文字媒体は多くはユーザビリティの面で現代においては使われなくなっている。例外的に、MoonType はオーストラリアにおいて公的に用いられている[24]。一定年齢以上の失明者が6点点字よりサイズが大きく触察の容易なMoon Type を用いているとの記述が存在する。 "War of the Dot" にはノヴァスコシア州の学校で生徒を対象とした実験が行われたとの記録がある。American Braille、New York Point、British Braille の3 者が比較され、British Braille の著しい優位性が示されたことが述べられている。 1905 年にthe American Association of Workers for the Blind 宛てに送られたCharles W.Holmes からの書簡を引用している。ここでは、複数のコードで印刷物が発行されていることで22 読者にも不利益であるし、制作の面でも時間と費用の浪費であることが述べられている。 また、米国のStandard Dot による統一という意見に対する英国側の反応23 には以下のようにある。 22Holmes の認識では5 タイプの立体文字の印刷物が存在している。 23クレイグミラー盲学校校長W.M.Stone から委員会事務局長H.R.Latimer への公開書簡 British Braille は英国圏で使われている。そして、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、インド、南アフリカ等で用いられている。 利用者人口において統一性を考えるのであれば、英国側の点字を用いる方が良いといった主張が見受けられる。 6.2 Nemeth・Cranmer 報告(1991 年) "UEB movement" の起点とされるNemeth とCranmer のレポートにおいて英語点字における問題や課題として挙げられているのは以下のようなものであった。 6.2.1 点字システムの複雑さ・混乱による点字使用の減少 当時BANA に承認されていた点字システムは音楽に関するシステムを別にして4 種類存在していた。同時に複数のシステムが存在していることが点字の学習を困難にしているのではないかと指摘している。間断の無い点字使用に対する浸食24 が長期間にわたり生じていると報告されている。その数多くの理由の一つとして点字システムの複雑さ、混乱を上げている。この「侵食」の状況は点字使用者の率の低下をもって説明されている。この文書の末尾部分において筆者らはいくつかの統計を参照し、当時において点字使用者は本来使用すべき人々の12 %であり、このパーセンテージは年々減少しているとの認識を示している。いくつかのここで述べられている複雑さとは、個別に独立して開発された以下に挙げる4 つの点字システムの存在を指している。 (a) the literary code (b) the Braille Code for Textbook Formats and Techniques (c) the Nemeth Braille Code for Mathematics and Science Notation (d) the Computer Braille Code 上記の複数コードの同時存在という事態など様々な要因により、子供の世代においても成人の世代においても失明者のコミュニティでは長期間にわたる点字使用の浸食25 にさらされていると指摘している。 24 a steady erosion in Braille usage 25 減少の意味で用いていると考えられる。 6.2.2 視覚障害者のライフサイクルの変化に伴う点字の役割の変化 Nemeth らの認識では、かつて社会から孤立していた視覚障害者にとっての点字の役割はレクレーションと宗教に関する書物にアクセスすることがその主なものであった。Nemethらは宗教上頻繁に用いられる語彙、例えばrejoicing(歓喜) やconceiving(受胎) に縮約が与えられている26 ことにより、かつての点字に求められていた役割を説明している。 しかし、啓蒙的な公共政策27 により、学校や職場など、社会のあらゆる領域への視覚障害者のmainstreaming が義務付けられた。 Nemeth らによれば、この文書がBANA に提出される以前の時点において、ほとんどの視覚障害を持つ学生は目の見える学生とともに地域の学校に通い、視覚障害を持つ成人は教師や科学者など、幅広い職業に従事している。そこでは、学業や職務において、墨字で文書が共有される。かつての孤立の中で生じた点字コミュニティーの中での墨字表記からの逸脱や便宜上の表現は晴眼者と一つの文書を共有する場面においては受容されざるものであると述べられている。 6.2.3 Nemeth らの提示するa uniform braille code の開発の目的及び限界Nemeth らはa uniform braille code の開発の目的として以下の9 項目を挙げている。(以下に訳出して示す。) (1) 墨字を1 対1 の対応性をもって点字で表現できるコードであること。それは、点字の読者と墨字の読者がテキストを同じように理解する必要があるためである。 (2) コードは読者が迅速に情報にアクセスできる書式の提供を行い得ること。 (3) あらゆる主題においてコードの規則が一貫していること。 (4) コードがコンテクストを必要としないこと。 (5) 元のテキスト内の情報と点訳による情報を識別できる手段をコードに有らしめること。 (6) コードは記憶の容易な形で記号を表現せねばならないこと。 (7) コードをシステマティックに拡張することが可能であること。 (8) コードは、点字・墨字間のコンピューターにおける翻訳において、双方向性を持ち得ること。 (9) コードはグレード2 の点字との接点を持つこと。 26rejoicing、conceiving はいずれも4 つのセルにより縮約して表される。 27an enlightened public policy さらに、点字コードの統一に関して、人類の知識は広範囲であるから、単一の統一コードでカバーすることは不可能であるとの認識も述べられている。その一例として、roman alphabet と関係のない言語の書記体系までを包含した統一コードは不可能であるとしている。 6.3 墨字との1 対1 対応性について言及した文書 UEB の基本原理の中には墨字と点字との1 対1 対応性というものがある。「全訳UEB規則集」[1] の「1.2 統一英語点字の基本原理」の中に以下の項目が設けられている。 (前略) 1.2.2 UEBの目的は点字の上でもどの記号が表されているかの曖昧さを読み手に与えないことである。 1.2.3 最も大切な点字規則は、墨字の元資料(純粋に装飾的なものは除く) を読んだときそのままの点字を作ることである。 1.2.4 墨字記号は、UEB においても一つの記号に対応する。墨字記号のその同じ点字記号は、分野に関係なく使用される。 (後略) AccessWorld のコラム[26] において、EBAE において前置記号the "dots 4-6" indicator はイタリック体、下線などの複数の意味を与えられていた。しかし、UEB においてイタリック体や下線の情報をそれに続くセルに付与する前置記号が新たに設けられた事の意味が当時NLS のconsumer relations officer 28 であったJudy Dixon により語られる。 その説明を受けたコラム筆者はかつて点字教科書の中の写真に付された"Picture: Ask the teacher." という注釈を想起したと言う。コラム筆者はその注釈を読んでも教師に写真の説明を求めずに自らそこに何があるのかを考えたと書いている。つまり、the "dots 4-6" indicator にせよ写真にせよ、その内容は(点字で画像情報の解説がなされていない限り) 教師や他の目の見える学生に尋ねなければならなかったのである。 6.4 A braille printing house のUEB移行への対応に関する文書BANA のメンバーであり、NLS で使用する点字書籍を印刷する業務を行うClovernookのEBAE からUEB へ移行する際の取り組みについてのSamuel Foulkes とSaul Garza の筆による文書、"Cracking the Code" [27] がThe Journal of Blindness Innovation and Research に掲載されている。本項は主にこれに従う。 UEB 移行に関しては英語点字の標準化により点字利用者にとってより広範囲の点字リソースが共有できるようになるとの見解を示している。 28 1.1.3 (4) を参照。 UEB への移行により、点字書籍の制作過程の全ての段階において影響を受けることに彼らは気づき、それらへの対応に取り組んだことが述べられる。 点字書籍の製作工程は以下のようなものであり、ここに訳出する29。 1. 印刷物を受け取る。 2. 背表紙が除去され、ページがスキャンされ、画像が収集される。 3. A pre-transcription specialist がページを調べ、文字起こしに関わるテクストを調べる。広告などは無視される。 4. 3 の後、印刷物にテクストドキュメント化する読み取りソフトウェアが使用される。 5. テクストドキュメントはDuxburry の翻訳ソフトウェアを用いて点訳に適した形式にする転記者に渡される。転記者はICEB ルールブックなどを参照する。 6. 文字起こしされたものはエンボス加工され、校正チームに引き渡される。 7. Quickpaw(社内プログラム) を用いてエラーを強調表示させ、対応する。 8. 点字ファイルが校正され、修正が行われる。 9. 修正の後、ファイルはプレート・エンボス・デバイス(PEDs) で用いられ、亜鉛へのエンボス加工がなされる。 10. エンボス加工中の誤りを防ぐため、プレートには刷りが作成され、マスターとの比較が行われる。 UEB への対応に際し、最優先課題としてとらえられたのが数十年のEBAE ユーザーである従業員のトレーニングであった。 校正者と点訳者がUEB Pro ciency 30 を取得するためのトレーニングも実施された。この過程は認定UEB インストラクターをスタッフに配することで多いに助けられた。 指導方法は早期に標準化が目指され、a Braille Technology Lab が設置された。それは、点字使用者である従業員がデジタルでの教育的演習に取り組むためのものである。デジタルでのトレーニングは必要に応じてフリーランスの技術者にも行われた。 システムはFreedom&Scienti c の点字ディスプレイとQWERTYキーボードを入力デバイスとし、JAWSスクリーンリーダーとPerkyDuck 点字入力ソフトウェアで構成される。 トレーニングは個別化のプロセスも有する。"spot checks" と呼ばれる過程である。弱点を補修により強化する目的を持つ。学習者の苦手領域を"concept de ciencies" とし、定期的な演習のパフォーマンスにより推定された。 認識された"concept de ciencies" により、問題が設定され、この強化のための問題演習はUEB インストラクターにより学習者の進歩と概念把握が確認されるまで続く。 29 番号は便宜上のもので原本にはない。 30 the Library of Congress により管理される資格。 6.5 数学コードをめぐる議論 米国においてはUEB maths に対する懸念が複数表明されている。この議論のため、米国においては導入時に理数系の点字に関してはそれまで同様Nemeth Code を用いるとの決定を下した。 この議論に関する文書は、2020 年のICEB 総会における米国による報告や、Karlton Anne Cook Walker による文書などが存在する。 6.5.1 2020 年ICEB 総会におけるU.S.Country Report 2020 年のICEB 総会における米国によるレポート[18] において、レポート執筆辞典までの同国における理数系点字コードの状況が述べられている。 現在、米国においてはUEB コード、Nemeth コードという2 つのコードが公式なものとされ、BANA は資料提供者には理科・数学分野を扱う場合、UEB コンテクストの中でUEB、Nemeth のいずれのコードで提供するかは利用者のニーズに基づいて行う必要があるとしている。 米国では連邦法the Individuals with Disabilities Act により、視覚障害その他の障害を有する学生が無料で適切な公教育を受けることが義務付けられている。 この報告ではその法律に触れたうえで現在の米国内の理数系コードの扱いを説明している。 理数系の点字コードのうち、Nemeth Code、UEB math のいずれの要求に対しても対応している州は約17 である。他の州では主にNemeth Code を使用しているという状況とのことである。 6.5.2 Carlton Anne Cook Walker による"A Cry for Unity in Creating Textbooks for the Blind" 著者Carlton Anne Cook Walker はNFB のJernigan Institute の点字教育マネージャーである。この文書[29] はBraille Monitor の2015 年12 月号に掲載されたものである。 この原稿において著者は、まず、2016 年に行われるEBAE からUEB への移行に際して数学及び科学の分野に関しては従来通りNemeth Code を保持するとBANAが表明していること、次に、それは2012 年、2013 年、2014 年のアナウンスにおいてもその立場が保たれていたこと、を指摘している。同様に、NFB、ACB も上記の立場にあることを指摘している。 この著者は、導入過程において複数人の論者がNemeth Code ではなくUEB maths を採用するべきであると主張しており、これに応じる形で複数州が同様の意見を表明していることに懸念を示している。そして、Nemeth Code ではなくUEB maths を用いようとする一連の言説への反応としてのNFB2015 年次大会(開催地フロリダ) において採択された決議2015 - 29 を挙げている。その決議内容は以下を明確にするよう要請することであった。 ●全米のstate departments of education に対し、数学文書のNemeth Code 使用のBANA guidelines に従うこと。 ●BANA に対し、点字コードの標準の設定は州ごとに独立して行われるものではないこと。 ●The guidance for Nemeth in UEB contexts に準拠するNemeth Code が米国の標準であること。 この著者は技術的にはNemeth Code がUEB maths に比べてセルの使用が少ないことを指摘している。UEB maths は数符と上位ドット(ドット1・2・4・5) を用いるため、下位のドット(下がり数字) を用いるNemeth Code よりも多くのセルが必要となる。 2006 年5 月のJournal of Visual Impairment and Blindness 掲載の"Studies of Braille Reading Rates and Implications for the Unified English Braille" から、UEB においてはthe mathmatical computational format, algebra, and calculus では21~54 %長くなるなどの結果を引用している。 この著者はコードの複数同時存在の状況そのものにも"War of the dots" を繰り返す必要はない、という表現を用い、懸念を示している。社会において複数の理数系コードが存在している場合に起こりうる事態として、まず、進学や就労のためのリハビリテーション機関へのスムーズな移行が妨げられることが予想される。次に、点字ユーザーが別の州に移住する場合に困難が生じる可能性が予想される。それは、州ごとに採用するコードが異なる可能性があるからである。 6.5.3 Antonio Guimaraes による"Choices for the future of Braille" この文書[30] はBraille Monitor 2012 年6 月号に掲載されたものである。 冒頭部分で編集部の解説として機械を介しての点字の翻訳という観点から多数が統一に賛成しているという状況を説明している。その上で米国の議論が2012 年当時にUEB とNemeth Unified Braille System(NUBS) という二つの統一点字システムの候補を擁していると述べる。 NUBS はNemeth が開発したシステムであり、このシステムの支持者はUEB が採用された場合には数学を研究する人間は「取り残される」であろうと予測しているとのことである。 Guimaraes はこの文書においてUEB、Nemeth code、NUBS という選択肢の比較の必要性を論じている。 6.5.4 Joseph Sullivan による"A Perspective of Braille Unification" この文書[31] はBraille Monitor1997 年10 月号に掲載されたものである。 著者のJoseph Sullivan はDuxbury Systems の社長であり、ICEB のCommittee II of the Unified Braille Code Research Project の議長である31。様々な点字使用者がおり、それぞれの使用目的に応じて点字のあるべき姿は異なってくる。しかし、UBC 32 は、初心者や一般的な点字読者を対象とすべきだとの考えを、Sullivan は示している。 6.6 UEBの基本原理 「全訳UEB 規則集」において、UEB の基本原理が示されている。 1.2 統一英語点字の基本原理 1.2.1 統一英語点字(UEB) は、音楽を除く全ての分野を記述するための英語の点字システムである。 1.2.2 UEB の目的は点字の上でも、どの記号が表されているかの曖昧さを読み手に与えないことである。 1.2.3 最も大切な点字規則は、墨字の元資料(純粋に装飾的なものは除く) を読んだときそのままの点字を作ることである。 1.2.4 墨字記号は、UEB においても一つの記号に対応する。墨字記号のその同じ点字記号は、分野に関係なく使用される。 1.2.5 UEB においては、マスあけも含めた64 の点字表現は、前置点か基本点を表している。   及びマスの右欄にある点を組み合わせたものすなわちBraille の点字配列表の第7 行からの表現を含む前置点は8 種である。他の56 の点字表現は基本点である。UEB の前置点は以下の通りである。 1.2.6 表中の最後の二つの点字表現  と   は、特別な前置点である。二つの特別な前置点を組み合わせて、基本点がなくても点字記号を構成する場合がある。このような点字記号は指示符だけに用いられる。 1.2.7 UEB の他の点字記号は、基本点、または基本点にいくつかの前置点を付けて構成される。 31役職はともに当時のもの。 32Unified Braille Code。当時は北米において統一が研究されており、英語であることが半ば前提となっていた。そのため、名称に"English" が入っていない。 6.7 「全訳UEB規則集」序文からの引用 「全訳UEB 規則集」から、序文の一部を抜粋して示す。 第1 版の前書き The Rules of Unified English Braille(『UEB 規則集』) の前書きを執筆できることと約20 年にわたる統一英語点字(UEB) の進展状況を描くことができることを大変うれしく思います。このすばらしい旅は、米国点字委員会(BANA) がその文学的及び技術的な記号の統一の実行可能性を判断するための研究プロジェクトを開始した1991 年に始まりました。1993 年に、オーストラリアのシドニーで開かれた初めての執行委員会において国際英語点字協議会(ICEB) はBANA の提案を受け入れたときに、このプロジェクトの国際化が現実になりました。UEB は、加速していきます。目的地は変わらずにあり続けましたが、旅の大部分は未踏の地を越えることの繰り返しでした。記号及び国の境界を超えて英語の点字を調和させるための研究開発は、下記の6 つの基本原則に基づきます。 1.  6 点点字を使用すること 2. グレード2 点字の縮約に大きな変化をもたらすことなくグレード1 及びグレード2点字を包含すること 3. 点字初心者及び上級者が共に利用できること 4. 各墨字記号の曖昧でない点字表現を用いて、読みやすさを損なわずに、墨字から点字に及び点字から墨字にできる限り自動変換が可能なこと 5. 数学、コンピューター及びその他の技術的コード(楽譜は除く) を文章中に埋め込み可能なこと 6. その形成の中で提示された英語点字記号を全て考慮すること オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、ナイジェリア、南アフリカ、イギリス及びアメリカの各参加国の点字専門家は、UEB を支えるこの6 つの基本原則を変化させずに記号を決定して、UEB の詳細をコード化するための綿密な分析の中で、先の決定について再調査を迫られました。各専門家は、自分自身の視点を、記号開発者、教育者、点訳者、校正者及び点字使用者など多数者の意見であるとしてもたらしました。将来に向けて記号を統一するという夢を実現するために、これらの素晴らしい参加者は、英語点字記号の中に残されたままの相違点に対して、必要な反省をし、しかも妥協できる自らへの能力への信頼により支えられていました。点字使用者の生活は最近の社会と科学技術の変化の影響を強く受けています。学校、勤め先及び一般社会での統合には墨字と互換性のある点字が必要です。これまでの文脈ベースの点字記号の規則は、人間の介入に依存し過ぎているせいで、現代の自動点訳の障害になっています。技術は電子的に作成された資料へのアクセスを可能にし、UEB は6 つの基本原則を守ることによって、今日そして明日へずっと点字記号を提供してきています。 今日まで、電子メールによる数え切れないほどの議論を伴いました。何カ月にもわたる電子メールでの議論を解決するために、縮約、フォーマット、数学及び規則に関する委員会の会議が数日にわたって開かれました。それは例えば次のような場合などです。  縮約の使用及び音節のつなぎはどのようにするのか?縮約に関する委員会はこの数年これらの課題に取り組んできました。  技術文書を表すもっともよい新しいUEB 記号はどれか?数学に関する委員会は2008年に技術文書に対するガイドラインを発表しました。  短形語は、規則によるかリストによるかもしくはその両方によってどのように統制されるべきか?短形語の規則は2010 年3 月に提供されました。  単語のアクセントをどうしたら良いか?最終的にはアクセント記号はアクセントのある文字の前に置き、全てのアクセントが示されることが決定しました。 UEB の主要ロードマップの一つは記号形成の詳細を明らかにすることです。これらは将来の記号の形成の指針となり、必ず記号の始まりと終わりが識別できるようにする必要があります。これは多くの点字記号が複数のマスにより表されるために非常に大切なことです。 2010 年現在、UEB の規則集が出版されています。プロジェクトの関係者は予想していなかった長く複雑な旅に巻き込まれました。しかし、彼らはすぐに、指針を決めるのは重要な一歩ではあるが、最初の一歩にすぎないということに気付きました。もう一つの要素はUEB プロジェクトの参加者全員は、点字の専門家として、ボランティアとして参加したということです。これは彼らにとって正に生涯にまたとないプロジェクトであり、UEBを完成へと進歩させるために彼らが計り知れないほど多くの時間を捧げるに値するものだったのです。 この旅は終わりましたが、すでに別の旅が始まっています。オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、ナイジェリア及び南アフリカの点字委員会はUEB を導入し、その実施が開始されたのです。多数の人々はUEB が多面的な情報社会への視覚障害者の統合を支持する点字記号を新たにすることにワクワクしています。 UEB 規則集は全てのUEB 当事者にとってこれから先も大きな力添えとなります。この価値があり意義のあるプロジェクトを引き受けたオーストラリア点字委員会並びにこんなにも短い時間でこの完成に協力してくれた人々全てを祝福したいと思います。将来の統一英語点字の旅に参加する人々のますますの清栄をお祈り申し上げます。 ダーリーン・ボガート UEB プロジェクト委員会会長 (1991 年~2010 年) 6.8 ICEBの2004 年総会決議 以下の文章は、カナダのトロントで行われたICEB2004 年総会の決議である。決議1.1においてUEBコードが十分に完成しているとの認識を示しているほか、決議1.2 においてはUEBコードが英語点字の国際標準であるとの認識が述べられている。また、決議5.0 においてはUEB コードが一般の読み書きや数学に与える影響を緊急の問題として調査する必要が述べられている。決議14.0 においてはWBU により提言されていたWorld Braille Council の設立を承認している。 International Council on English Braille (ICEB) 2004 General Assembly Resolutions Toronto、Ontario、Canada、 Monday、March 29 through Friday、April 2、2004 1.0 Whereas the Project Committee was charged with the creation of one braille code for English which would expand the literary code in order to embed in it symbols for all technical materials (with the exception of music) this General Assembly resolves that: 1.1 ICEB acknowledge that the Unified English Braille code is suffi- ciently complete; 1.2 the Unified English Braille Code be recognized as an international standard for English braille; and 1.3 respecting the autonomy of ICEB members acting at the national level、this General Assembly refers the UEBC to ICEB members for consideration and possible adoption by their national braille au- thorities after due consultation with their braille users and other stakeholders. 2.0 This General Assembly resolves that ICEB express its appreciation to the Project Committee for its excellent work; that the Project Committee and its working committees be dissolved; and that the Executive Com- mittee be charged with establishing whatever committees are required (including an overarching committee) to complete the task of carrying on the work of the UEBC. 3.0 This General Assembly resolves that the Executive Committee be asked to coordinate the development of UEBC-related training materials for transcribers、teachers、and learners. 4.0 This General Assembly resolves that ICEB establish a committee to co- ordinate Unified English braille-related research among the member coun- tries、generate a list of topics for research、and assign them a priority rating. 5.0 This General Assembly resolves that the impact of the proposed UEBC on writing generally and on the learning of foreign languages and math- ematics needs to be researched as a matter of urgency. 6.0 This General Assembly resolves that the ICEB support research in the area of the use of contractions in syllable bridging and its impact on readability in all English-speaking countries; and that the Executive ap- propriate an amount to be dedicated toward expenses for conducting such research; and that ICEB work in collaboration with other entities (such as the International Braille Research Center、the American Foundation for the Blind、the Canadian National Institute for the Blind、the Royal National Institute of the Blind、etc.) interested in and committed to conducting research on braille reading and writing and which are willing to contribute additional funding as needed to complete such research. 7.0 This General Assembly reaffirms its support for the principles of rules simpli cation、reduction of exceptions to rules wherever possible、and maximizing consistencies in braille usage across English-speaking coun- tries; that to facilitate adherence to these principles a plan be introduced aimed at common usage of contractions and the elimination of differences in the use of bridging syllables、pre xes and suffixes、diphthongs and rules dependent on pronunciation、etc.; that a working group be estab- lished to progress this and priority be given to examining current rules and determining a way forward to resolve this issue. 8.0 This General Assembly agrees that、although format guidelines are not a prerequisite for the implementation of UEBC、braille formatting meth- ods impact on the readability of braille. Good formatting practices in different countries have common elements relating to the need for effec- tive tactile navigation. Therefore、this General Assembly resolves that a working group should be established to formulate these principles of best practice covering materials for children and adults including elementary educational materials. 9.0 The General Assembly resolves that the working group set up under Resolution 8 establish a sub-group to gather information from all partic- ipating countries on current format practice for elementary educational materials; and that the sub-group continue the work of developing for- mat guidelines and encourage their use in the production of materials intended for young readers. 10.0 This General Assembly recognizes that the charges given to the ICEB Tactile Graphics Committee in resolution 14 of the 1999 General As- sembly have not been accomplished and that a new approach is needed. This General Assembly resolves that a Tactile Graphics Committee be re- established by the Executive with an initial focus on information sharing between ICEB countries. 11.0 This General Assembly resolves that the Braille Promotion Committee facilitates the sharing of ideas、promotional and instructional materi- als、together with implementation strategies for the UEBC; and that the Public Relations Officer ’s duties include responsibility for enhancing the ICEB web site accordingly. 12.0 Whereas the executive committee of ICEB has found it difficult to es- tablish communication with developing countries that use English as a second language、in line with resolution 1.0 of the 1999 General Assem- bly; given the limited resources available to these countries which make face to face meeting impractical; recognizing the increased access to In- ternet services in developing countries and the urgent desire of ICEB to reach out to them、this General Assembly resolves that: 12.1 ICEB seeks to identify those involved in the use、production、and teaching of braille in developing countries and communicates with them; 12.2 ICEB encourages and assists those who respond and show commit- ment to the aims of ICEB、and helps them to establish their own braille councils; 12.3 ICEB encourages such braille councils to establish regional commu- nication with each other; 12.4 current member countries of ICEB be encouraged to establish a one- to-one relationship with a edgling braille council to provide appro- priate support. 13.0 This General Assembly affirms the principle of unrestricted international interlending of reading materials in alternative formats among recognized blindness agencies. Therefore the Executive Committee of ICEB should work through the Braille Authority of North America and with other relevant non-governmental organizations and governmental agencies to give non-citizens of the United States access to braille and other accessible format materials produced in the United States through the development of appropriate international protocols and legislative change if necessary. 14.0 This General Assembly resolves that ICEB endorses the proposed estab- lishment by the World Blind Union of the World Braille Council and requests the ICEB Executive Committee to facilitate participation in the WBC by ICEB and its affiliated braille authorities as it deems appropri- ate. (後略) 7 英語点字の統一の歴史 本章では得られたデータを、歴史的スパンを広めにとって、時系列に配列することで、社会的な行為としての点字に対する人々の在り方を俯瞰的にとらえる。 1 節においてはフランスにおけるValentine Hauy による盲学校の設立から1909 年のニューヨークにおける触察文字媒体に関する公聴会までを示す。 2 節において1913 年の米国イリノイ州のthe American Association of Workers for the Blind の大会から1990 年の障害を持つアメリカ人法の成立までについてを記す。 そして、3 節で1991 年のNemeth・Cranmer 文書のBANAへの提出から2020 年のICEB総会までの事項を記す。 点字コードの変更についての事柄を中心として書き進めるが、その周囲の出来事として重要だと思われるものに関しても記してある 7.1 1784 年から1909 年まで フランスにおいて開発された6 ドットの点字が英語圏に伝わり、各国、各地域で様々な形で受容される。英国はBraille のアルファベ(フランス語におけるアルファベット) と点字との対応規則に基本的に従いながら英語を表現せしめるべく改良を加え用いた。米国においては、点字が多くの空間を占めるという問題意識からNew York Point が開発され、さらにそのNew York point から6 ドット点字の形式に戻し、かつ英語における文字出現頻度を中心に据えてアルファベットに点字コードを対応させたModi ed Braille が開発された。複数コードの同時存立が問題視され、コード統一が模索されることとなる。 1784 年フランスにおいてValentine Hauy がL'Institution Nationale des Jeunes Aveugles を設立する。彼の考案した隆起したローマ字での教育も行われる。 1791 年英国において同国の最初の盲学校がリヴァプールに開校する。 1808 年フランスにおいてCharles Barbier が夜間の軍隊行動のための触察文字媒体として夜間文字を開発する。 1821 年フランスにおいてBarbier の夜間文字が盲学校の生徒に紹介される。 1823 年12 月、フランスにおいてBarbier の夜間文字が王立科学アカデミーにより公に認められる。 1829 年米国マサチューセッツ州にthe New England Asylum for the Blind(後のパーキンス盲学校) が設立される。 フランスにおいてLouis Braille が単旋律を点字で表すための書籍を出版する。 1831 年米国においてthe New York Institution for the Education of the Blind 33 が設立される。 33 現在のthe New York Institute for Special Education 1832 年フランスにおいてBraille が点字の前置記号である数符を考案する。 1833 年米国フィラデルフィアにおいて同国初の浮き出し文字の書籍、聖マルコ福音書が出版される。 1834 年フランスにおいてBraille がthe literacy braille code を完成させる。 1835 年米国においてSamuel Glidley Howe によって開発されたBoston Line Type を用いて使徒言行録が作成される。Boston Line Type による最初の本となる。 1836 年William Taylor 牧師がヨークシャー盲学校に就任する(在任中にa Taylor slate を開発する)。 1839 年フランスにおいてBraille がDecapoint を発明する。 1840 年フランスにおいてFoucaut がDecapoint を打ち出すための機器であるRaphigraph を発明する。 1843 年フランスにおいてBraille がソフト面に当たるDecapoint を考案し、自らも視覚障害者であるFoucaut がハード面を開発したドットで表現され、視覚的に読むことのできる文字を出力するための機器であるRaphigraph が国家産業奨励賞を受賞する。 1847 年Moon Type による最初の冊子である"The last days of polycarp" が制作される。 1853 年Sir Charles Lowther の助力を得てDr.Moon はブライトンの自宅近くにMoon Typeの印刷設を行う工房を設立した。 1854 年フランスにおいて点字が"official communications system for blind people" とされる。 米国セントルイスのミズーリ盲学校で点字が使用される。 1858 年ケンタッキー州議会はan Act To Establish the American Printing House for the Blind を可決する。 1861 年英国に点字が導入される。 1868 年英国においてT.R.Armitage によってRNIB が設立される。 1871 年米国においてNew York Point の使用がthe meeting of the American Associationof Instructors of the Blind により承認、奨励される。 オーストラリアにそれまで用いられていたMoon Type に替わるものとして、点字が導入される。 1876 年米国においてAmerican Association of Instructors for the Blind が視覚障害を持つ学生に連邦資金を提供するための法案の起草を行う委員会構成員を選出する。 英語の縮約と略語を有するフランス語を基盤とする表記法が英国に受容される。 1879 年3 月、米国において連邦法であるAct to Promote the Education of the Blind が可決される。 1887 年5 月2 日、米国マサチューセッツ州において同国の最初の視覚障害者の児童のための幼稚園が17 人の児童を受け入れる。 1890 年ニュージーランドにおいてthe Jubilee Institute of the Blind が設立され、国内で初めて点字が教えられる。 1892 年Convention of the American Association of Instructors for the Blind においてNew York Point に代わりうる触察文字媒体としてModi ed Braille が挙げられる。 1893 年英国においてエジンバラの雑誌"The Hora Jucunda" が英国の点字についての議論を開始する。 1900 年Dr. Sibley の提案により、Modi ed Braille がAmerican Braille と改名されることとなる。 1901 年The American Blind People's Higher Education and General Improvement Association がそのカンザス大会において普遍的システムの採用のための調査を行う委員会の設置を決議する。 1902 年米国において上記1901 年のカンザス決議を受け、the Tactile Print Investigating Commission が設立される。4 人の構成員から成り、議長にはAmbrose M.Shotwellが就任する。 英国において1876 年に受け入れた表記法に不備があるとされて改訂された"Revised Braille" が採用される(現在ではグレード2 と呼ばれるもの)。 英国のF.J.Campbell がthe American Association of Instructors of Blind に宛てた書簡において視覚障害者にとっての統一された読み書きシステムの必要性が4 月のロンドンにおいての会議で話し合われ、英米それぞれの方法を検討する委員会が設けられたことを知らせる。 1904 年米国においてHelen Keller が盲ろう者として初めて文学の学士号を取得する。 1905 年The American Association of Workers for the Blind(The American Blind People's Higher Education and General Improvement Association の後継団体) はCharles W.Holmes から点字システムを統一することの重要性に関する手紙を受け取る。 1906 年カナダのオンタリオ州においてBert Robinson らがthe Canadian Free Library for the Blind を設立する。 1909 年ニューヨークにおける公教育で用いるべき触察文字媒体についての意見を示す場としての公聴会が開催される。 7.2 1913 年から1990 年まで この期間、米国ではliteracy code では1918 年のBraille Grade 1 1/2 、1959 年のEBAE 1959 と移り変わり、理数系のコードとしてNemeth Code が登場する。米国においては最後の公民権運動とも位置付けられる障害者の権利運動が規模を拡大し、1990 年にはADA が成立する。 1913 年6 月、イリノイ州におけるThe American Association of Workers for the Blind の大会でStandard Dot の使用のための公布の推奨、また、それに伴うNew York PointとAmerican Braille の両方の廃棄の推奨が委員会によってなされる。 1914 年International Business Machines(IBM) が初の視覚障害を持つ社員が使用するための点字タイプライターを開発する。 米国から点字の調査のための委員会が英国に出航する。 米国においてthe Clovernook Braille Printing House の運営が開始される。 1915 年12 月15 日の日付でクレイグミラー盲学校の校長であるH.M.Stone からthe new American Commission on Uniform Type for the Blindの事務局長であるH.R.Latimer への書簡が公開される。 1916 年6 月、ハリファックスでthe American Commission on Uniform Type の大会が開催される。 7 月28 日に英国においてSir Arthur Pearson を議長としてthe National Uniform Type Committee が結成される。 1917 年英国においてTaylor Code が完成する。 CNIB が設立される。 1918 年米国においてthe American Association of Workers for the Blind とthe American Association of Instructors of the Blind により、正式にBraille Grade 1 1/2 が採用される。 1919 年南アフリカにおいてJosie Wood が自らの家に図書館を作る。このことがSALB の設立と位置付けられている。 1921 年南アフリカ、ロンドンのthe National Library for the Blind などから国際的に点字の書籍を受け取る。点字書籍の需要が国内ボランティアの生産力を上回っていたためにJosie Wood が国際的に行った寄付の呼びかけに応じたものである。 米国赤十字社がボランティアサービスの一つとして点字の文字起こしを採用する。 米国においてAFB が設立される。 1923 年南アフリカのJosie Wood のライブラリーに公的地位を与えるべくa Library Committee が設けられる。 米国においてカーネギー財団がAPH の点字印刷機器の研究に資金を提供する。 1930 年ニュージーランドにおいてWellington Braille Club が設立される。 1931 年ニューヨークで開催されたthe World Conference on Work for the Blind において、英国代表者の数名が点字の"uniformity" に関心があると表明した。 3 月、米国にてPratt-Smoot Act が承認される。 1932 年The American Association of Workers for Blind とAmerican Association of Instructors for Blind の委員会がロンドンに渡り、The Treaty of London が英米間で署名される。アメリカ側代表はLouis W.Rodenberg、英国側代表はD.A.Pain であった。 Standard Dot の採用により、複数の触察文字媒体が生産される状況は終わりゆくことになる。 1933 年米国においてAPH は中・高校生の教科書にStandard English Braille Grade 2 を採用する。 1940 年米国においてNFB が設立される。 1945 年米国においてthe National Braille Association が設立される。 1946 年米国においてTaylor Code が用いられるようになる。 1950 年米国においてthe American Association of Workers for the Blind とthe American Association of Instrutors of the Blind それぞれから3 人ずつのメンバーで構成されるthe Joint Uniform Braille Committee が結成される。 1952 年米国においてAPH にThe Department of Educational Research が設置される。 1959 年米国においてEnglish Braille American Edition 1959 がthe American Association of Workers for the Blind とthe American Association of Instructors of the Blind により正式に採用される。 1961 年米国においてACB が設立される。 1964 年後のADA の参考とされることとなるCivil Rights of 1964 が(米国) 合衆国連邦議会において成立する。 IBM が英語から点字への翻訳の自動化を開発する。 1965 年APH からNemeth Code の改訂版が出版される。通常の文章から数式への切り替えに関する規則変更、括弧記号の一貫性に関する改正がなされる。 3 月、ニュージーランドにおいて全盲あるいは弱視の児童に対する教育機関としてHomai College が開設される。 1972 年APH からNemeth code 1972 年改訂版が出版される。古典的数字記述法に関する補遺が含まれる。 1973 年米国においてリハビリテーション法504 条が制定される。連邦政府による障害者差別の禁止を定めたものである。 1977 年Camille Caffarelli がHorizons for the Blind を共同設立する。 1982 年オーストラリアにおいてABA が同国における数学点字コードの適合性を検討する技術小委員会を設置する。 1984 年オーストラリアは英国点字の伝統を持っていたが、the Royal Institute for Deaf and Blind Children がこの年に大文字の表記を採用した。 EBU が設立される。中心的役割を持つオフィスはフランスのパリに設置される。 米国においてthe American Association of Workers for the Blind とthe Association of Education of the Visual Impaired が統合されることでAER が設立される。 10 月、WBUが設立される。設立総会はサウジアラビアで開催される。 1986 年米国においてリハビリテーション法508 条が制定される。連邦政府による障害者への差別の禁止を電子・情報技術の分野において具体化したものである。 1987 年オーストラリアにおいて新しい数学点字コードが導入される。 1988 年8 月、米国においてリハビリテーション法508 条を改訂する法律に大統領が署名する。 1989 年オーストラリアにおいてABA が米国のコンピューター点字コードを採用する。 ニュージーランドにおいてthe Braille Authority of NZ が設立される。 1990 年Canadian Braille Authority(現在のBraille Literacy Canada) が発足する。 7 月、米国において障害を持つアメリカ人法(ADA) が成立する。これは、企業の雇用や公共の場所での差別を禁止したものである。 7.3 1991 年から2020 年まで Nemeth らはBANA への提出文書の中でan enlightenment policy により視覚障害者のmainstreaming も進み、目の見える同僚やクラスメートらと文書情報を共有する必要が出てきたとの認識を示している。そのような社会状況においてより適切な点字コードとしてNemeth らはA Uniformed Braille Code を提唱した。 1991 年ICEB がカナダのトロントに設立される。 ナイジェリアにおいてNational Braille Council of Nigeria(Braille Advancement Association of Nigeria の前身) が発足する。 1992 年南アフリカにおいてSALB が録音物及び点字の社内での生産ユニットを設立する。 10 月、米国においてJoseph E.Sullivan、Nemeth ら4 名によりUEB の設計を担当するBANA の第2 委員会が原案を作成、点字奉仕者、点字使用者、点字教師の評価を経て報告書を作成する。 1993 年正式にICEB がUBC リサーチ・プロジェクトの任に当たることとなる。 1995 年1 月に英国ケントにおいて第1 回ICEB 総会が開催される。 3 月にICEB の第2 委員会がBANA の案をもとに修正・拡充し、最終報告書をまとめた。 オーストラリアにおいてABA が改訂された化学点字の表記法を発表する。同年、ABAは点字フォーマットのガイドラインを発行する。同年から1997 年にかけてオーストラリア国内で新しい点字コードについて点字利用者等に知らせ、また、フィードバックを得るべくワークショップが行われる。 1998 年米国においてリハビリテーション法508 条が強制法規として改正される。電子・情報技術に関して順守すべき内容をアクセシビリティ・スタンダードとして定める事となる。 1999 年第2 回ICEB 総会が11 月に米国ボルティモアで開催される。 ICEB 第2 回総会の後、その発案当初からの文脈上UBC はUnified English Braille Code:UEBC と呼ばれることとなる。 英国においてBAUK により大文字使用の廃止の取り消しなどの変更が採用される。 オーストラリアにおいてABA が"Braille 2000" を発表する。 2000 年3 月、米国においてアクセス委員会によって作成されたアクセシビリティ・スタンダードの案が公表される。 2001 年米国において改正リハビリテーション法508 条が施行される。 2004 年第3 回ICEB 総会が3 月28 日から4 月2 日までカナダのトロントで開催される。この第3 回ICEB 総会においてUEB が実質的に完成されており、国際的に標準化されているため、各国による採用の検討が可能であると宣言された。UEBC Research Project とその有するところの小委員会群はその宣言に伴い解散、UEB を監督する新しいプロジェクトがそれに置き換えられた。 2005 年5 月、南アフリカがUEB に移行する。 同月、オーストラリアにおいてABA がその年次総会においてオーストラリアの点字の国家標準としてUEB を採用する。 11 月、ニュージーランドでBANZ がUEB の採用を決定する。 2006 年ニュージーランド、BANZ が小委員会を設置し、カリキュラムの支援、成人を対象とした教育、制作、図書館サービスの4 分野にわたりUEB の実相計画を策定する。 12 月、国連において障害者の権利に関する条約が採択される。 2007 年南アフリカが国連障害者権利条約を批准する。 10 月、BANAが登録商標やユーロなどを表すいくつかの新しい記号がliteracy codeに追加されることなどが定められた"Braille Code Update 2007" を発表する。 2008 年4 月、第4 回ICEB 総会がオーストラリアのメルボルンにて開かれる。 5 月、障害者の権利に関する条約が発効する。 7 月、BAUK はConfederation of Transcribed Information Service:COTIS、United Kingdom Association of Braille Producers:UKABP との合併に合意する。 米国においてADA が改正される(施行は2009 年)。 2009 年1 月に前年のBAUK とCOTIS 及びUKABP の合併合意が発効し、UKAAF が発足する。 8 月、8 社の出版社と478 の加盟校によりAccess Text Network が立ち上げられる。 2010 年カナダにおいて、CBA がUEB を優先的なコードとして承認する動議を可決する。 8 月、ニュージーランドにおいてBANZAT が設立される。 2011 年UKAAF がUEB を英国の公式点字コードにすることを決定する。 2012 年アイルランドにおいてINBAF が設立され、ICEB に参加する。 第5 回ICEB 総会が5 月に南アフリカで開催される。 ナイジェリアにおいてかつてのNational Braille Council of Nigeria が改称し、Braille Advancement Association of Nigeria となる。 5 月から6 月にかけてカナダのバンクーバーのprovincial Resource Centre for the Visual Impaired においてCBA UEB サミットが開催される。 11 月、米国においてBANA がUEB の採用を発表する。 2013 年UEB ルールブック第2 版が出版される。 カナダにおいてCBA がBLC となる。 アイルランドにおいてThe Irish Department of Education and Skills の求めにより、同国内でのUEB の実装を監督するためにUEB Steering Committee が設置される。 マラケシュ条約が作成される。 12 月、カナダにおいてNNELS が開始される。 2014 年4 月、カナダにおいてCELA が設立される。 2015 年8 月、NFB のMark Ricobono 会長はNemeth Code とUEB maths に関する問題について説明する書簡を全ての州の教育部門に送る。 12 月、英国においてRNIB をはじめとした主要な点字制作者は全てUEB での制作へと移る。 2016 年カナダにおいてUEB ルールブックのフランス語訳が完成する。 ニュージーランドにおいてBANZAT が同国政府にマラケシュ条約を批准することを求める。 ニュージーランドにおいてAccessible Signage Guidelines の改訂作業が開始される。 1 月、米国において正式にEBAE からUEB への切り替えが行われる。 2017 年EU commission がマラケシュ条約を批准する。 カナダにおいてBLC が点字の重要性と点字使用者の権利に関する文書を連邦政府に提出する。 10 月、英国においてOrbit Reader 20 が発売される。 2018 年2 月、ニュージーランドにおいてマラケシュ条約を批准する法案が議会に提出される。 12 月国連総会において1 月4 日が「世界点字デー」と定められた。 2019 年6 月21 日にAccessable Canada Act 34 が国王の裁可を受ける。 2020 年RNIB により、the updated Welsh Braille Primer が出版される。 1 月、ニュージーランドがマラケシュ条約に加盟する。 10 月、ICEB 総会が英国において開催される。 34 カナダ初の国内アクセシビリティ法。 謝辞 本論文は、国立大学法人筑波技術大学大学院技術科学研究科情報アクセシビリティ専攻障害者支援(視覚障害) コース修士課程在学中に行なった研究をまとめたものです。本論文をまとめるまでに多くの方々のご指導、ご支援、ご協力をいただきました。指導教員の田中仁講師には、本研究を進めるにあたり、研究に対する心構えから、論文執筆完成に至るまで、貴重な時間を割いて、きめ細かくご指導いただきましたこと、そして、貴重なご教示の数々に、本当に心から感謝しております。UEB の存在を教えていただき、点字の面白さを再認識することができました。また、副指導教員の大竹信之教授には、様々なご指導、ご助言を下さったことに感謝申し上げます。 本論文をご精読頂き、有用なコメントをいただきました修士論文主査の飯塚潤一教授,副査の金堀利洋准教授に深謝しております。 横田弘美様、納田かがり様、筑波技術大学の教材作成室の皆様には点訳やそのほかのお手数、心から感謝いたします。熊本県点字図書館の皆様には必要な資料の点字印刷や音訳をしてくださったことに感謝を申し上げます。 同じ学年の情報アクセシビリティ専攻の大学院生として共に学ばせていただいた石川恵理様、谷川ふみえ様、須藤とよ子様、高橋彩加様、平石量子様山田京子様に感謝申し上げます。皆様のご研究や教えてくださった情報、資料からは多くを学ばせていただきました。 このように多くの方々の、ご指導、ご支援、ご協力があってこそ、本論文をまとめあげることができました。心より感謝申し上げます。 最後に,理解と協力を惜しまず、支え続けてくれた家族に、感謝致します。 組織・団体、その他の事項の略称一覧 読者の便のために、組織・団体、その他の事項の略称の一覧をここに示す。 ABA Australian Braille Authority ACB the American Council of the Blind AER Association for Education and Rehabilitation of the Blind and Visually Impaired AFB American Foundation for the Blind APH American Printing House for the Blind ATPC the Alternate Text Production Center BANA Braille Authority of North America BANZAT the Braille Authority of New Zealand Aotearoa Trust BLC Braille Literacy Canada CBA Canadian Braille Authority CELA Center for Equitable Library Access EBAE English Braille American Edition EBU the European Blind Union ICEB International council on English Braille INBAF the Irish National Braille and Alternative Format Authority NBA National Braille Association NFB National Federation of the Blind NLS the National Library Service for the Blind and Print Disabled NNELS National Network for Equitable Library Service RNIB the Royal National Institute of Blind People SABA the South African Braille Authority SALB the South African Library for the Blind SEB Standard English Braille UEB Unified English Braille UKAAF UK Association for Accessible Formats WBU the World Blind Union 参考文献 [1] 「全訳UEB 規則集」、田中仁発刊、2018 年 [2] Perkins e-Learning、 [3] クリスティーヌ・シンプソン「全訳UEB 規則集第2 版」2013 年。 [4] 日本福祉新聞障害者虐待防止法研究部会著「障害者虐待防止法」(日本福祉新聞)、2016 年 [5] T.V. Cranmer and Abraham Nemeth“ A Uniform Braille Code ”(1991)。 [6] RNIB ホームページ、最終閲覧日2020 年5 月27 日。 https://www.rnib.org.uk/braille-and-moon-%E2%80%93-tactile-codes-braille-codes/unified-english-braille-ueb [7] ABA ホームページ、最終閲覧日2020 年12 月17 日。 http://brailleaustralia.org/about-braille/international-honour/ [8] NFB のCaryn Navy によるNemeth へのインタビュー記事、"The History of the Nemeth Code", 最終閲覧日2020 年12 月6 日。 https://www.nfb.org/history-nemeth-code-interview-dr-abraham-nemeth#:~:text=Nemeth%20Code%20is%20the%20code、had%20developed%20this%20Braille%20code.&text=I%20began%20working%20on%20my%20Braille%20math%20code%20in%201946%20or%201947. [9] The New York Institute For Special Education ホームページ、最終閲覧日2020 年12 月6日。 https://www.nyise.org/apps/pages/index.jsp?uREC_ID=438103&type=d&pREC_ID=948719 [10] 加藤秀俊「情報行動」(中央公論)1972 年。 [11] 情報アクセシビリティ研究会著「情報アクセシビリティとユニバーサルデザイン」(アスキー)2003 年。 [12] 関根千佳、広瀬洋子編著「情報社会のユニバーサルデザイン」(放送大学教育振興会)、2014 年。 [13] マックス・ヴェーバー著、林道義訳「理解社会学のカテゴリー」(岩波書店)、1979 年 [14] 岸政彦、石岡丈昇、丸山里美著「質的社会調査の方法-他者の合理性の理解社会学(電子書籍版)」(有斐閣)、2017 年。 [15] RNIB ホームページ、最終閲覧日2020 年12 月10 日。https://www.rnib.org.uk/about-us [16] NLS ホームページ、最終閲覧日2020 年12 月24 日。https://www.loc.gov/nls/about/overview [17] NBA ホームページ、最終閲覧日2021 年1 月2 日。https://www.nationalbraille.org/about/ [18] ICEB ホームページ、最終閲覧日2020 年12 月24 日。http://www.iceb.org/ICEB_Constitution.htm [19] Source: Department of Commerce-Bureau of Census、the Blind in the United States [20] C. マイケル・メラー著、金子昭、田中美織、水野由紀子共訳「ルイ・ブライユの生涯 天才の手法」(日本点字委員会)、2012 年。 [21] 大内進著「普通文字へのアクセスを目指したルイ・ブライユ」(2009 年) http://www.nise.go.jp/kenshuka/josa/kankobutsu/pub_d/d-291/d-291_2_1.pdf [22] the New York Institute for the Blind におけるIrwin の"War of the Dots", 最終閲覧日2020 年12 月7 日。 https://www.nyise.org/apps/pages/index.jsp?uREC_ID=438103&type=d&pREC_ID=948716 [23] Disability History Museum におけるIrwin 原稿、最終閲覧日2021 年1 月5 日。 https://www.disabilitymuseum.org/dhm/lib/detail.html?id=2697&&page=16 [24] ABA の点字その他の触察文字の開発者に関するページ、最終閲覧日2020 年12 月17 日。 http://brailleaustralia.org/about-braille/international-honour/ [25] The New York Institute of Special Education のページ、最終閲覧日2020 年12 月26 日。 https://www.nyise.org/apps/pages/index.jsp?uREC_ID=438103&type=d&pREC_ID=948719 [26] AFB の"Making the transition from English Braille to UEB" のページ、最終閲覧日2020年5 月17 日。 https://afb.org/aw/17/1/15405 [27] The Journal of Blindness Innovation and Research に掲載された"Cracking the Code", 最終閲覧日2020 年12 月19 日。 https://nfb.org/images/nfb/publications/jbir/jbir16/jbir060302.html [28] 2020 年ICEB 総会のU.S.Country Report、最終閲覧日2020 年12 月19 日。 http://www.iceb.org/2020_country_USA.docx [29] Carton Anne Cook Walker: "Cry for in Creating Textbooks for 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のホームページ、最終閲覧日2020 年12 月19 日。 https://www.accesstext.org/about-us [38] 2008 年ICEB 総会におけるニュージーランドのレポート、最終閲覧日2020 年6 月19 日。 http://www.iceb.org/2012-07-UEB_in_New_Zealand.docx [39] 2020 年ICEB 総会におけるアイルランドのレポート、最終閲覧日2020 年12 月29 日。 http://www.iceb.org/2020_country_Ireland.docx [40] 2020 年ICEB 総会におけるカナダのレポート、最終閲覧日2020 年12 月29 日。 http://www.iceb.org/2020_country_Canada.docx [41] 2020 年ICEB 総会における英国のレポート、最終閲覧日2020 年12 月19 日。 http://www.iceb.org/2020_country_UK.docx [42] 2020 年ICEB 総会における米国のレポート、最終閲覧日2020 年12 月19 日。 http://www.iceb.org/2020_country_USA.docx [43] SALB のホームページ、最終閲覧日2020 年12 月29 日。 https://www.salb.org.za/about-the-salb [44] RNIB のホームページ、最終閲覧日2020 年12 月29 日。 https://www.rnib.org.uk/sites/default/files/rnib_braille_chronology.dot [45] The New York Institute for Special Education のホームページ、最終閲覧日2020 年12 月7 日。 https://www.nyise.org/apps/pages/index.jsp?uREC_ID=438103&type=d&pREC_ID=948716 [46] BANA のホームページ、最終閲覧日2020 年12 月12 日。 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による記事、最終閲覧日2021 年1 月10 日。 https://nfb.org/images/nfb/publications/bm/bm08/bm0804/bm080405.htm [71] Carlton Anne Cook Walker: "A Cry for Unity in Creating Textbooks for the Blind"(Braille Monitor) 最終閲覧日2020 年12 月26 日。 https://www.nfb.org/cry-unity-creating-textbooks-blind [72] Helen Kuncicky: "Saving Raised Dots" http://www.helenkbailey.com/Documents/Braille_Preservation_Survey_Report.pdf