修士論文 ルワンダ共和国におけるろう・難聴者の就労移行支援体制 令和2年度 筑波技術大学大学院修士課程技術科学研究科情報アクセシビリティ専攻 高橋 彩加 目次 第1章 序論 1 1.1 はじめに 1 1.2 研究背景・目的 2 第2章 本論 3 2.1 ルワンダの基礎情報 3 2.1.1 国土、気候、産業 3 2.1.2 経済政策 4 2.1.3 産業構造 4 2.1.4 ジェノサイド 5 2.2 教育 7 2.2.1 教育制度 基礎教育 7 2.2.2 ルワンダ国内の教育目標 8 2.2.3 学校教育現場に在籍する生徒数とその割合 8 2.2.4 学校の数と教師数 9 2.2.5 ルワンダ の進級制度 9 2.2.6 ナショナルイグザム(全国学力試験) 10 2.2.7 高等教育 10 2.2.8 職業訓練教育 11 2.2.9 職訓準備・日常生活のための再教育の教育機関 11 2.3 インクルーシブ教育 11 2.3.1 世界におけるインクルーシブ教育の定義と変遷 11 2.3.2 ルワンダにおけるインクルーシブ教育の定義と変遷 12 2.3.3 筆者が見たインクルーシブ教育の成功事例 13 2.4 障害者を対象とした教育 16 2.4.1 教育機関における障害者の割合 16 2.4.2 教師の課題 17 2.4.3 特別支援教育が学べる大学について 17 2.4.4 学齢期の子どもを対象とした特別支援学校とその他のセンター 18 2.4.5 学校進学の壁 18 2.4.6 障害児教育の変遷 19 2.5 ルワンダ国内のろう学校について 19 2.5.1 ろう学校の分布状況 19 2.5.2 ろう学校の基本的な情報 21 2.6 職業訓練教育 23 2.6.1 技術職業教育・訓練 23 2.6.2 ルワンダ国内のTVETの変遷 26 2.6.3 雇用開発局(WDA:Workforce Development Authority) 26 2.6.4 カリキュラムについて 27 2.6.5 インターンシップ 28 2.6.6 インターンシップの価値 29 2.6.7 障害者への職業訓練教育 29 2.7 一般的な雇用 31 2.7.1 ルワンダの雇用・失業状況 31 2.7.2 企業の形態 34 2.7.3 人々の就職活動の方法 35 2.8 サブサハラアフリカの障害者雇用 36 2.8.1 サブサハラアフリカにおける障害者雇用の状況 36 2.8.2 アフリカ大陸内国同士の障害者雇用に関する関わり 36 2.8.3 ルワンダの障害者雇用 37 2.8.4 就労しているルワンダの障害者の例 37 2.8.5 アフリカの障害者雇用に関する法律 40 2.9 質問紙調査 40 2.9.1 質問紙調査結果 - 教員 40 2.9.2 教員への調査結果のまとめ 61 2.9.3 質問紙調査結果 - 生徒 63 2.9.4 生徒への調査結果のまとめ 82 2.9.5 教員と生徒の集計結果 83 第3章 考察 85 3.1 考察 85 3.1.1 開設科目について 85 3.1.2 就労移行支援 88 3.1.3 インターンシップ 89 3.1.4 運営体制 91 第4章 結論 93 謝辞 95 参考文献 96 参考資料 104 参考資料1 TVET科目・コースの例 104 参考資料2 WDAカリキュラムのインターンシップ内容 107 参考資料3 教員の記述 109 参考資料4 質問紙(対訳) 114 参考資料5 質問紙(生徒用) 119 筑波技術大学 修士(情報保障学)学位論文 第1章 序論 1.1 はじめに 筆者は2015年から2017年にかけて青年海外協力隊としてルワンダ共和国(以下、ルワンダ)の南部に位置する『セントガブリエルろう学校(CJSM:Center of Deaf-Mute Brothers of St. Gabriel in Butare)』で活動を行った。その際に家が貧しく、ろう学校に通うことのできないろう・難聴児や、ろう学校に通うことができても、卒業した後に働く先がないというろう・難聴者に多く出会った。 ルワンダ政府は就学率向上のために、2003年に6YEB(Six Years Basic Education policy)、2006年からは9YBE(Nine Years Basic Education polic)と義務教育期間の公立学校の学費を無償化にする取り組みを行っているが、ろう学校をはじめとした特別支援学校は私立運営にあたるため、その多くが学費無償化の対象になっていない。また、学費の支援を政府から受けているろう学校でも、寄宿舎制を導入しているため、在学生は生活費に一定のお金が必要となる。そのため、ろう学校に通うことができず、一般の学校に通学するものの、コミュニケーションが取れず退学してしまうろう・難聴生徒が多くいた。 その一方で、ろう学校に通い、しっかりと学習の機会を獲得できているろう・難聴生徒もいた。筆者は、農業を営みながらわずかな収入で生活を切り詰めながら、息子をろう学校に通わせている家族と出会った。Aさん(当時11歳)は南部のセントガブリエルろう学校の小学部に在学する優秀な生徒だった。兄弟は他に3人いたが、他の3人は障害がないため、山奥の一般の小学校に通っていた。Aさんだけが聴覚に障害があるため、一般の小学校ではなく、家から離れ、山をいくつも超えた都市部のろう学校に在籍していた。筆者はこの家族の家を実際に訪ねて、村の様子や家族の生活の様子を見た。両親や近所の村人は初めてみる外国人の私をとても歓迎してくれ、本当に温かく迎え入れてくれた。生活の様子は慎ましく、どんな思いで息子を都市部の学校に送っているのか、頭が下がる思いだった。山奥から都市部のろう学校に通うことのできたAさんには、今後家族を支えるような存在になってほしいと感じた。 このような出会いがきっかけとなり、ろう学校を卒業したろう・難聴者が確実に就職できるようにするために、どんな支援が求められているのか考えるようになった。そこで本研究を通して、様々な家族の思いや期待を背負ったろう・難聴者が、いつか家族を支えることができるような仕事に就くためには、学校教育現場あるいは社会との繋がり中で、どのような支援が必要とされるのか、ということについて考察したい。 本研究は、最新のルワンダの現状を表すものであることを念頭に置いて文献を引用した。その理由は、筆者自身が2015年〜2017年の中でルワンダの発展は目まぐるしく、経済・社会を含め大きく変わり続けていることを目の当たりにしたからである。  街の様子で言えば、都市では新しいビルは次々と増え、バスの料金システムも現金からタッチ式のICカード利用に変わるなど手の届く小さな範囲でも様々な様子が変わっていくことを感じた。 その後、研究の事前調査として2019年に2年ぶりにルワンダに訪れた際には、首都ではタクシーが完全メーター制になり、人々も交通マナーをより遵守するようになるなど、インフラだけでなく人やモノの流れにゆとりが出てきているという変化を感じることができた。 ろう・難聴者を取り巻く環境も同様である。2017年に難民キャンプで出会ったろう児が2019年の再訪の際には、政府の支援を受け、地元のろう学校に通えるようになっていた。ろう学校の職員に理由を聞くと、「障害のある子どもに対しても教育を推進するように国の考え方が変わってきているのだ」と述べていた。その話を聞き、ルワンダという国のろう・難聴者の教育場面においても、国の発展とともに大きな変化を受けているということがわかった。 そこで、本研究はルワンダのろう・難聴生徒の現状を調査することによって、ルワンダに適した就労移行支援の在り方について考察する。なお、この論文は、一ろう学校の事例に着目したものであり、必ずしもルワンダ国内の全てのろう学校が、同じ条件にあるというものではない。 1.2 研究背景・目的 ルワンダ共和国(以下、ルワンダ)は東アフリカに位置する内陸国で、千の丘の国という愛称で親しまれる丘陵に囲まれた緑豊かな小国である。現在国民一人当たりのGDPが789USドルで、低所得国ではあるが、GDPの成長率は2018年の国連統計によると世界第3位となる8.62%となり、経済発展のスピードが著しい(世界銀行2018)。 政府はVISION2020という政策を皮切りに中所得国になることを目指し、国家雇用計画をはじめとした雇用政策を打ち出しており、大規模な雇用創出プログラムが、職業訓練、勤務中の訓練、および遠隔学習などを通して行われている。 自給自足の農業活動に依存する人口を2006年の72%から2020年までに50%に減らし、新たに220万人の農業外の雇用を創出することを目標としている(The New Times 2015)。 しかし、国が急速に発展している一方で、障害者は教育や就労の面でその恩恵を充分に受け取りきれていないと考えられる現状がある。 例えば、教育においては、2003年から義務教育に当たる小学校、2006年から中学校の学費が無償化になったにも関わらず、特別支援学校はいずれも公立校ではないため、学費無償化の対象になっておらず、依然として障害児の教育機会が限られている(Stephen Kidd, Krystle Kabare 2019)。就労に至っては、働くことができる154,000人の障害者のうち1.2%しか実際は雇用されておらず、98%以上の障害者が仕事を持っていないことが示唆されている (The New Times 2019,1)。 現在、ルワンダでは、ろう・難聴生徒が在学するろう学校は全部で7校ある。ろう学校でも同様に学費が高いことで、通えない子どもにも多く出会った。 多くのろう学校には職業訓練コースが併設されているものの、筆者が活動をしていた学校の職業訓練コースの生徒から「卒業後どんな仕事につけるのか不安がある。」と相談されたことが多く、就労に際しても漠然とした不安感を抱いているように感じた。 そこで本研究では、ルワンダのろう学校における職業訓練コースでは、就労へ移行する段階において、どのような支援をしているのかという現状を調査し、論点を整理し、更なる就労移行支援のあり方を提言することを目的とする。 第2章 本論 2.1 ルワンダの基礎情報 2.1.1 国土、気候、産業 ルワンダ共和国Republic of Rwanda(以下、ルワンダ)は東アフリカに位置する内陸国で、北はウガンダ共和国、東はタンザニア連合共和国、南はブルンジ共和国、西にコンゴ民主共和国と国境を接している。 図1:ルワンダの地図 (図)  ルワンダは、One thousand hills, One thousand smiles(千の丘の国、千の笑顔の国)という愛称で親しまれる丘陵に囲まれた緑豊かな小国である。赤道から南に2度の位置にあるにも関わらず、海抜1,500メートル程度の高地にあるため、気温が年間を通じて16度から30度程度と過ごしやすい。北西部には標高4,000メートルを越える火山帯から湖周辺の低地まで、国土はまさしく起伏に富んでいる(外務省2018)。  季節は、3月−5月の長期間の雨季、6月−9月の長期間の乾季、10月−11月の短期間の雨季、12月−2月の短期間の乾季、の4つのシーズンに分けることができる。 表1:ルワンダの基礎情報 (表) 面積 2.63 万平方キロメートル(四国の 1.5 倍) 人口 1,230 万人(2018 年,世界銀行)アフリカ大陸で最も人口密度が高い 首都 キガリ(Kigali) 言語 キニヤルワンダ(以降、ルワンダ語),英語(2009 年,公用語に追加され,フランス語に代わって教育言語となった)、フランス語、スワヒリ語 宗教 キリスト教(カトリック・プロテスタント)、イスラム教 外務省、Republic of Rwanda,基礎データ、2019  ルワンダの主な輸出品は、コーヒー、紅茶、皮革、スズ鉱石等で、コーヒーは全輸出額の4分の1を占めている。観光産業も徐々にルワンダ経済に利益をもたらしている。火山国立公園の珍しいマウンテンゴリラや、ニュングウェ国立公園やアカゲラ国立公園の多数の動物などにより観光客数が年々増加している(UNDP)。 2.1.2 経済政策  2018年のルワンダの国民総生産は101億ドル、国民一人当たりのGDPが789USドルである。現在はまだ低所得国ではあるが、2018年の国連統計によると GDPの成長率は世界第3位となる8.62%となり、経済発展のスピードが著しい(世界銀行 2019)。  政府は,2000年に20 年後の経済達成目標を定める VISION 2020を策定した。それによると、国民一人当たりの所得を 2000 年 の 220 米ドルから 2020 年に 900 米ドルに上げ、中所得国に入ることを目指し、農業依存型経済から知識基盤型経済に転換することを目標とした(VISION 2020)。また、自給自足の農業活動に依存する人口を、2006年の72%から2020年までに50%に減らし、新たに220万人の産業やサービス業などに携わる農業外の雇用を創出することを目標とした(The New Times 2015,1)。  さらに2017年には、新たに7年間の政府プログラムである国家変革戦略(National Strategy for Transformation(NST1))を樹立した。それによると、2035年までに中所得国、2050年までに高所得国となることを目指し、民間部門を主導して変革と経済成長を加速するための政策を打ち出している。NST1では、経済変革の柱として、民間部門主導の経済成長と生産性の向上を加速するための戦略を提示すると言及し、主に産業の部門では、現在より、やりがいのある人間らしい仕事を創出すると定めている他、生産的な雇用創出、工業化の促進、輸出基盤の構造的変革、年間17%の輸出増加を目指す商品とサービス、農業と家畜の近代化と生産性の向上を目標としている。  VISION 2020から引き続き、農業に依存する経済体制を見直し、知識基盤型経済にするために農業外雇用のさらなる創出や、工業化の促進が引き続き提唱されている(NST1)。 2.1.3 産業構造  ルワンダ国立統計局(NISR)の2019年の調査によると、2019年のGDPは101億2,200万USドルで前年の96億2,800万USドルより約4.8%増加している。そのうちサービス産業は 49%、農業は24%、工業は19%であった(NISR2019)。  GDP の産業のセクター別割合の推移と今後の展望は下記の図の通りである。 図2:GDP の産業のセクター別割合の推移と今後の展望 KEY STATISTICS ON RWANDA2019 、VISION2050 を基に筆者が作成 (図)  この産業構造の推移を見ると、農業の割合が2005 年の37%から2019 年現在は24%と13%の縮小が予想され、2050 年には21%になり、2005 年より16%の縮小が予想されている。一方で、工業は年々増加すると予想しており、実際に2005 年から2019 年現在にかけては、7%の増加率、2005 年から2050 年(予測値)を比較すると20%もの増加率が見込まれている。 2.1.4 ジェノサイド  1994 年までルワンダでは民族を3 つに分けていた。人口の約85%を占めていたフツ族、14%のツチ族、1%のおよびトゥワ族である。  1950 年代頃から何度か民族間での紛争が勃発し、1994 年4 月6 日、フツ族の当時の大統領であるハビャリマナの搭乗機が襲撃され、大統領が殺害されたことで民族同士の紛争が激化し、100日間で約100万人の国民が死に至らしめられるという悲惨なジェノサイド(大虐殺)へとつながった。 ルワンダの虐殺と虐殺生存者のための国家支援基金(FARG)によると、このジェノサイドにより、30万人の生存者が障害を負い、約26,000人が1つ以上の手足を失っていると推定している(Thomas 2005)。Mutabaziは、当時、聴覚障害者の大規模な虐殺があった他、フツ族の兵士がルワンダの精神病院で精神障害のある750人の患者のほぼすべてを殺害したと述べている(Mutabazi P,1998)。  1994年4月から約100日間に渡る内戦は、現大統領のポールカガメ率いるルワンダ愛国戦線(Rwandan Patriotic Front: RPF)による首都の制圧によって、ようやく終息するに至った。  この悲劇を忘れないよう、ルワンダでは毎年4月7日からの1週間は虐殺追悼週間(Genocide commemoration week)が設けられ、 普段の経済活動や営業を縮小するなどし、各地で集会を行い、死者を弔い同じ悲劇を繰り返さないよう、国民全体で平和について深く考えるという機会が設けられている。 (1)ジェノサイド前の障害者  ルワンダ国内での障害のある子どもと大人の特別なニーズへの積極的な関心は、HVPガタガラセンター(ベルギーの司祭Abbé Joseph Fraipont Ndagijimanaにより1960年に創設)をきっかけに高まったとされる(NCPD 2018)。  創設当初は身体障害者を対象としたセンターとして運営を開始し、視覚障害者を対象とした盲学校は1979年に設立された。(盲学校教員へのインタビュー2020年11月11日)  同センターは現在も存在し、教育・リハビリテーション・雇用を推進している。  1979年、HVPガタガラセンターの元学生は、「Association Génèraledes Handicapésdu Rwanda(AGHR)=ルワンダ障害者協会」(曽田 2016)を立ち上げた。この協会の立ち上げによりルワンダの障害者運動の取り組みが始まったとされる。 (2)ジェノサイド後の障害者  全国障害者評議会(NCPD:National Council of Persons with Disabilities)の戦略計画書によると、 ジェノサイドやその前後の断続的な紛争によって、兵士や民間人、子どもの身体だけでなく、精神面でも様々な障害が生じたとされている。  ようやく民族紛争から脱し、国の運営が軌道に乗り始めたことで、障害者についての全国調査が行われ、その結果、障害者が多数いることが明らかになった。加えて、障害者の課題やニーズが整理され、その改善についての重要性が政府内で認識されるようになった。  ジェノサイド以前のルワンダでは、障害者がきちんと定義されておらず、関連の法律や制度が存在していなかった。しかし、ジェノサイド後に、政府は包括的な障害者政策の策定と採択を含む状況に対処するための措置を講じた(NCPD 2013-2018)。  2003年、ルワンダ共和国憲法が改正され、全国障害者評議会(NCPD:National Council of Persons with Disabilities)(以下、NCPD)に関する記述が憲法第188条の中に明記された。同憲法は、2015年に改正され、NCPDは、第139条に『国の委員会、専門機関、国会および公的機関として国が直面する重要な問題の解決を支援する責任を委任された委員会、専門機関』として位置付けられている。また、第75条では、下院の構成とそのメンバーの選出下院は80人の議員で構成されるとし、 NCPDもその下院の人員に含まれている(ルワンダ憲法2015)。  このように、障害者の存在が顕在化されていなかったジェノサイド以前から、ジェノサイドを契機としてその存在が明らかになり、法律や制度が策定されるようになったということがうかがえる。それだけではなく、NCPDが、国を司る重要な任務を担う役割の一員として、憲法の下で障害者の当事者団体が公的な機関であると認識された。また政治にも参画していることが、ルワンダの障害者の位置付けを考える上での一つの重要な要素になると考えられる。 2.2 教育 2.2.1 教育制度 基礎教育  ルワンダの一般の学校教育制度は、6,3,3,4年制となっており、義務教育期間は9年間(小学校6年間、前期中等学校(Secondary 1~3)3年間、高等学校(Secondary 4~6)3年間、大学(4年間))という構成になっている。政府は2003年にSix Years Basic Education policy(6YEB)、2006年からはNine Years Basic Education policy (9YBE)という政策を打ち出し、義務教育にあたる公立校の学費の無償化を開始した。 図3:一般の学校教育制度 筆者作成。参考:外務省 諸外国・地域の学校情報 TECHNICAL and VOCATIONAL EDUCATION andTRAINING (TVET) POLICY in RWANDA (図)  これにより就学率は、2018年度は小学校95%、前期中等学校(Secondary)で36%、後期中等学校(Upper Secondary)7% (UNESCO) であった。これは、法律制定前年度(2000年)の初等教育73%、中等教育17%と比べ、大きく向上したことが分かる。 また、教育省が発行した2017年の教育統計によると、初等教育総入学率(139%:2017年)、留年(16%:2016)、ドロップアウト率(6%:2016年)は大きな課題であると政府は認識し、これらの問題を解決することは、今後の優先事項の1つであると言及されている。 小学校の就学率が高いのは、就学開始年齢が遅れたり、生徒自身が何回も留年を繰り返したりするということを意味し、その結果、中等学校の年齢層がまだ小学校に留まって学習を続けていることから、中等教育の純就学率の低下(35.8%)に影響を与えていると示唆されている(ルワンダ教育統計2017)。 2.2.2 ルワンダ国内の教育目標 ルワンダ政府は、教育を国の経済開発と貧困削減のために、重要な柱の一つであると捉え、経済開発貧困削減政策 (EDPRS:Economic Development and Poverty Reduction Strategy)の中で、教育の上位目標を下記の通り7つ定めている。 1)すべての人の教育へのアクセス、2)すべてのレベルでの質の高い教育、3)すべてのレベルでの教育における公平性、4)効果的かつ効率的な教育システム、5)教育における科学技術とICT、6)ポジティブな価値、批判的思考、7)ルワンダの文化・平和・団結の促進そして和解 このように国の開発の支えとして教育を重要視している開発政策は評価に値し、2012年には9年間基礎教育プロジェクト(9YEB) がCommonwealth Educationの Good Practice Awardを受賞した(GPE 2012)(The New Times 2015,2)。この受賞におけるベストプラクティスとして、主に教育におけるジェンダーの格差の解消、教育の質の向上などが評価された。 2.2.3 学校教育現場に在籍する生徒数とその割合 ルワンダの教育省が発行した2018 EDUCATION STATISTICSによると、2018年にルワンダの教育システムに登録された学校数は13,012校、学習者の総数は3,626,362名、教員数94,699名とされている。 教育省は2017年の教育統計レポートの中で、年齢別の学習者の参加率について,図4の通り示した上で、3歳から6歳および19歳から23歳の生徒数を増やすために特別な措置をとる必要があると述べている。 図4:年齢別の就学者数:2017ルワンダ教育省教育統計の本文を参照し、筆者作成 (図) 各教育機関における就学者率を表したグラフは下記の通りであり、国民の識字能力を高めるために簡単な読み書きや計算を指導する再教育の場である成人識字教育(Adult literacy)の参加率の割合が、産業人材を育成するために運営されている技術職業訓練教育(TVET)よりも多いことに注目される。 図5:各教育機関における就学者数 2018 EDUCATION STATISTICS REPUBLIC OF RWANDA MINISTRY OF EDUCATIONより引用 (図) 2.2.4 学校の数と教師数 ルワンダ教育統計によると、ルワンダ国内には2,877校の認可された小学校があり、小学生の総数は2,540,374名で、各教室に約43名の生徒が在籍している。小学校の教員数は、43,878人 となっている。また、中等・高等教育においては、1,375校の認可された学校があり、生徒の総数は531,377名で、教員数は23,304名となっている(ルワンダ教育統計2018)。 内海によると、小学校の教員のうち、女性は54 %となっている。ルワンダでは小学校教員養成は高等学校卒業が必要であるが、実際は 25 %が中等学校卒である。加えて、無資格者は48%という状況であり(JICA 2016)、教師の質の低さが問題視されている。 それだけでなく、ルワンダでは、2009年から公的な教育言語がフランス語から英語に変更になった。Jan Willemによると、ほとんどの教員はフランス語のみで教育を受けており、英語への変更は教員にとって大きな負担であったと言及されている(Jan Willem 2016)。 2.2.5 ルワンダ の進級制度 ルワンダでは、2001年に自動進級政策(automatic promotion policy)が採用され、学校の中退を抑制した。これにより、クラスに在籍する学生の90%は留年することを免れた(The New Times 2020,1)。しかし、2020年2月には教育の質を担保するために、この政策は廃止された。 質の高い教育を確保するために、自動進級制度を望まない教育者も多くいる反面(The New Times 2016)、学校中退者が増えるのではないかという懸念もある(The New Times 2020,2)。また、貧困や障害などによる不利な立場にある生徒は特に留年する割合が高いという課題もある。ルワンダでは、同じ学年を2回以上繰り返す割合は、話したり理解したりするのが困難な子どもでは、そうでない子どもに比べて15%高く、行動に問題がある子どもでは9%高かったというデータが出ている(UNESCO 2020)。 2.2.6 ナショナルイグザム(全国学力試験) ルワンダの基礎教育期間にはナショナルイグザムと言われる全国学力試験が3回ほど行われる。小学校卒業時(P6)(小学校卒業試験)、前期中等教育の修了時(S3)にO-LEVEL、高等学校修了時(S6)にA-LEVEL のテストが行われ、小学校卒業時には 自身が取得したグレードに応じて、国内の学校レベルの順に中学校に割り振られる(Ministry of Education A)。 P6:Primary Leaving Examinations (The New Times 2019,2) S3:Ordinary Secondary School Level= O-LEVEL(The New Times 2019,3) S6:Advanced Secondary School Level= A-LEVEL  小学校卒業試験は、数学、科学技術、初等技術、社会科、英語、ルワンダ語の6科目で、各科目につき受験者は1(最高)から9(最低)までの点数がつけられる。6科目の合計点を集計し、下記の通り41点以上のスコアは4段階にレベル分けされ、42以下のスコアの場合は不合格となる(Jan Willem 2016)。 5 to 15 Division1 16 to 30 Divison2 31 to 37 Division3 38 to 41 Division4 42 to 45 Unclassified また、ルワンダの「一般の障害者の保護に関する法律」(LAW N°01/2007 OF 20/01/2007 RELATING TO PROTECTION OF DISABLED PERSONS IN GENERAL)の12条では試験の際に障害者に対する合理的配慮について下記の通り明記している。 「他の生徒と同じように、または他の生徒と同じ方法で試験を受けることができない障害のある生徒は、特別な方法で試験を受ける権利を有する。」(障害法2007) 2013年にA-LEVELの試験申請書に、障害の有無についての項目があり合理的な配慮を行うためのシステムが整っていることが、UNICEFのレポートにも言及されている (Unicef 2016)。 2.2.7 高等教育 ルワンダの高等教育機関は45校あり、そのうちの29校が大学などの高等教育機関となり、16校は高等職業訓練教育機関という内訳になっている(2016-17)。生徒数は91,193名が在籍しており、そのうち大学など高等教育機関の在学者数は80,773名、高等職業訓練教育機関の在学者数は10,420名である(ルワンダ教育統計2017) 。 障害のある学生の高等教育における在学者数は154名で、そのうち聴覚障害が19名、視覚障害が26名、言語障害が11名、身体的な障害が84名、重複障害が11名となっている。 なお、ルワンダ 国内の高等教育進学率は6.3%となっている(TRADING ECONOMICS 2019)。 大学進学率は 1999 年の 0.8%から一貫して増加して 2016 年には 8.0%となっている(正木 2018) 。 2.2.8 職業訓練教育 Technical Vocational Education and Training (TVET)=技術・職業教育・訓練は、若者の雇用促進を支援する要とみなされている(Ministry of education B)。2008年より全国各地に職業訓練校が設立され、資格を持ち、競争力のある労働者を育成するために教育が提供されている。国の経済の基盤を支える人材育成に欠かせない役割を担っている教育機関である。この項目については「2.6 職業訓練教育」で詳しく後述する。 2.2.9 職訓準備・日常生活のための再教育の教育機関  スコットランド大使館が2019年に発刊した調査報告書によると、ルワンダでは2019年現在、約200万人の成人が、識字能力がなく、読み書きができないことから、就職が難しく、日常生活で困難を経験しているとされている(Scottish 2019)。そこで何らかの学校を中退した成人や、学校に通ったことのない成人に、簡単な読み書きや基本的な算数を行うために必要な知識の習得を目的としたAdult literacy centrerが運営されている(The New Times 2019,4)。その数は年々増加傾向にあり、2016年にはセンター数4,654校、生徒数126,165名であったが、翌年2017年にはセンター数5,160校、生徒数152,015人に達し、前年2016年と比べるとその増加傾向は明らかである(ルワンダ教育統計2017)。 2.3 インクルーシブ教育 2.3.1 世界におけるインクルーシブ教育の定義と変遷 日本の文部科学省のホームページには、   障害者の権利に関する条約第24条によれば、「インクルーシブ教育システム」(inclusive education system、署名時仮訳:包容する教育制度)とは、人間の多様性の尊重等の強化、障害者が精神的及び身体的な能力等を可能な最大限度まで発達させ、自由な社会に効果的に参加することを可能とするとの目的の下、障害のある者と障害のない者が共に学ぶ仕組みであり、障害のある者が「general education system」(署名時仮訳:教育制度一般)から排除されないこと、自己の生活する地域において初等中等教育の機会が与えられること、個人に必要な「合理的配慮」が提供される等が必要とされている(文部科学省) 。 と記載されている。 英国マンチェスター大学名誉教授のMittlerによると、インクルーシブ教育は、児童・生徒たちがいかに学習に参加し、地域社会(例えば児童・生徒たちの居住する地域)から除外されずに生活できること、学校現場にとどまらず地域社会で児童・生徒たちを支えていくこと、全ての教師が全ての教育に責任を持つこと、が必要であると主張している(Mittler 2000)。 2.3.2 ルワンダにおけるインクルーシブ教育の定義と変遷 ルワンダにおけるインクルーシブ教育の定義は、Revised Special Needs And Inclusive Education Policyによると、「インクルーシブ教育とは、主流の教育環境ですべての学習者(子ども)の教育ニーズに対応するプロセスのことであり、それぞれにあった学習ができるという原則に基づいている。教育システムは、学習者のニーズに合わせて柔軟に適応することが期待されている。ルワンダの社会文化的文脈では、この概念はしばしば“Uburezi Budaheza=ウブレジ ブダヘザ”または“非排他的教育”として解釈される」と言及されている(Ministry of Education,2018)。 ルワンダは、障害者の権利条約を2008年12月に批准した。その後、2019年3月に行われた障害者権利条約の国連に提出した第1回の報告書によると、ルワンダではインクルーシブ教育の促進を図るため、2019年に国家インクルーシブ教育と特別支援政策(The National Inclusive Education and Special Needs Policy)を採択し、全国的にインクルーシブ教育を実施する努力が続けられているということが報告されている(UNHRC 2019)。 筆者が2019年8月にルワンダの中学校に訪問し、同年、教育省により発行されているシラバスを読んだところ、小学校・中学校・高校全ての全教科にインクルーシブ教育について言及している章が設けられていることを確認した(写真1)。 写真1:中学校で実際に用いられていたシラバス:2019年8月16日筆者撮影 (写真) 2.3.3 筆者が見たインクルーシブ教育の成功事例 2015年7月~2017年7月に筆者はJICA青年海外協力隊として、南部の『セントガブリエルろう学校』(以下、ろう学校)に2年間赴任した。その際、2015年8月に赴任していたろう学校の小学部3年から6年全員が、同じ地域の公立の小学校に通い、インクルーシブな環境で授業を受けていた(写真2:2015年8月、小学校6年生のクラス。聴生徒50名、ろう生徒8名)。 写真2:公立小学校の授業風景、黄色い制服がろう学校の生徒。(2015年8月筆者撮影) (写真)  ろう学校から手話のできる教員が引率し、授業中の手話通訳を行っていたが、小学校のクラス担任やクラスの生徒たちも手話を覚えているようで、手話のできる教員が不在の場合でも、クラス担任の教員が手話で授業を進めている様子が見られた。また、聴生徒とろう生徒が共に手話でコミュニケーションをとっているのが日常的な光景であった。ディベートの授業ではろう生徒は堂々と手話で発言をし、その内容をろう学校の手話のできる教員が通訳をしたり、授業中の発言でも、ろう学校の生徒は積極的に手話で質問したり、クラス担任教員が手話を読み取り、質問に答える光景もみられた。 ちなみに、ろう学校の生徒の1人は、聴者と同じクラスで常に1位の成績をとっていた。 ろう学校の生徒が5人〜10人ほどの人数でまとまって一般の学校のクラスに入ったことと、手話通訳の教員がしっかり同行していたことで、手話言語環境が整えられたことにより、インクルーシブな環境が作られたのではないかと考えられる。 2020年7月にユネスコから発行されたGlobal Education Monitoring Report:Inclusion and education:ALL MEANS ALL によると、“世界ろう連盟は、最高の質の高い教育は、完全な手話環境を提供することによって、個々の子どもを完全に含めることができる学習環境で提供される”とされている(UNESCO)。また、同レポートによると、エチオピアでは、一般の学校に転籍したろう・難聴の小学生の学業成績は、特別支援学校で学んでいた時より下がったと記載されている(UNESCO)。このことから、手話環境の整備なしに、ろう・難聴生徒を含むインクルーシブ教育環境は作ることはできない。手話教育環境の整備が先決されるべき事柄であり、それが実現されてこそ、ルワンダのケースのようなインクルーシブな学校教育が実現しうるのではないかと考える。 また、2016年にろう学校の敷地の中に新たに私立の中等学校が新設された。2019年8月の時点で全生徒数は156名で、そのうちろう生徒18名が在籍していた。また、ろう学校に在籍する教員が教務主任として中等学校の役職も担っていたため、定期的な朝礼や生活指導などは、その教員がルワンダ語とその対応手話で全て伝えていた。  そのほかの教員は 4 人で、授業ごとに担当をする形式であったが、レベルはまちまちであっても全員が手話をつけた状態で授業を行なっていた。手話の表出が漏れるような状況もあったが、その場合、ろう生徒は隣の生徒に手話で質問し、隣の生徒が手話でその内容を伝えるという場面が見られた。  中等学校の新設後、ろう学校の寄宿舎も改装され、中等学校に在籍する聴者の生徒もそこで生活を共にすることになった。寄宿舎で中等学校の聴者の生徒と親しくなり、聴生徒とろう生徒のあいだに良好な人間関係が築かれていた。  ろう学校で行われているインクルーシブ教育環境の事例を図式化したものが下記の図 6-1~6-4 である。◎はろう生徒、〇は聴生徒を表している。図 6-1 は、一般的に分けられている分離教育としてのろう学校と一般校を表した図である。図 6-2 は、一般校の聴者が在籍するクラスにろう生徒が 1 名ずつ入っている構図である。図 6-3 は、ルワンダのろう学校の敷地内に中等学校が新設され、双方の交流が可能になったという状態を表している。図 6-4 は、図 6-3 を教室単位でみたときのイメージで,聴学生が多く在籍する教室に、複数人のろう生徒が在籍している状況を表している。 図 6-1:分離教育の例 (図) 図 6-2:インクルーシブ教育の例 (図) 図 6-3:ルワンダのろう学校の例 (図) 図 6-4:ルワンダのインクルーシブ教育環境の例 (図) ルワンダのろう学校におけるインクルーシブ教育環境の事例は、障害の社会モデルの考え方を体現化しているよう感じられる。ここで、社会モデルを実現したアメリカの事例を紹介したい。  「みんなが手話で話した島」で知られるマサチューセッツ州南東部の大西洋岸から8キロほど沖合に浮かぶ島であるマーサズ・ヴィンヤード島では、300年以上にわたり、先天性のろう者の数が飛び抜けて高い比率を示したことから、同じ島で共に暮らす聴者が島の手話を覚え、実生活の場でそれを用いていたという話がある(ノーラ・エレン・グロース, 1991, )。 その他にもこのような例は世界中で多数報告されているが、ルワンダの教育現場でも似たような状況にあると言える。 何人かの人数がまとまって同学校にインクルーシブされることにより、教室という社会の中で、障害の社会モデルとしての考え方が浸透され、手話が共通の言語として認識されるのではないかと考えられる。 しかし、このようなケースはルワンダ国内の中であくまでもいくつかの事例であることに過ぎず、他の全ての一般の小学校でこのようなインクルーシブな環境が整っていないケースも多々あることが下記の通り報告されている。 UNESCOによる2020年のGlobal Education Monitoring Reportによると、障害などを理由に不利な状態にある生徒の留年の可能性が高いことについて言及されている。ルワンダにおいては、同じ学年を2回以上繰り返す生徒の割合は、話すことや学習内容を理解することが難しい生徒が、そうでない生徒に比べて15%ほど多いと記載されている(UNESCO)。 ルワンダのろう学校でも、一般の小学校に通っていた生徒が授業についていけなくなったことから、途中でろう学校に転入してくるケースも多く見られた。ろう学校の小学部1年に在籍する17歳の生徒もいるなど、ろう学校のクラス構成は年齢層が幅広かった。 2.4 障害者を対象とした教育 2.4.1 教育機関における障害者の割合 教育統計2018によると、幼稚園教育(Pre-primary)から中等教育(Secondary)までの障害のある児童・生徒は30,899人となっている。 一方,2012年のルワンダ国立統計研究所(NISR)の調査によると、3歳から18歳までの間で障害のある人は、87,239人がいるとされていることから(ルワンダ教育統計2018)、学校に通っていない障害児が多くいることを示している。 図7:2016年度の学校在籍者数の比較 (図) 表2:学校教育現場における全体数及び障害者数の比較 (表) 統計値を基に高橋が作成(教育統計2016) また、NCPD Strategic Plan 2013 – 2018によると、ルワンダ政府が発刊している教育統計は障害のある生徒の2%未満しか記録されておらず、特に小学校教育を修了できない子どもが多くいると言及されている。また、小学校1年に登録されている生徒が小学校6年まで残る割合は32%であり、国の算出する人数と現状の人数の差異があることが示唆される(NCPD)。 2.4.2 教師の課題 障害者の保護に関する法律(LAW N°01/2007 OF 20/01/2007 RELATING TO PROTECTION OF DISABLED PERSONS IN GENERAL )の第11条では、「障害者は、自分の障害の特性に応じて適切な教育を受ける権利を有する。」とし、「政府や、他の人と一緒に勉強できない障害者のニーズに応えるためのセンターは、彼らが特別な学校で勉強ができる様式を提供し、資格と訓練を受けた教師と適切な設備を備えるものする(Ministry of justice) 」と明記されている。 法律面では、必要とされる場合、障害者は、特別支援学校において資格を有し適切な訓練を受けた教師から教育を受ける権利を有することが記載されている。しかし、実際には、教師の有資格者数は少なく、能力は低いと言われている(UNICEF 2016)。 NGO団体であるHumanity and Inclusionが運営し、ユニセフが資金を提供するプロジェクトとして、インクルーシブ教育の発展を目指して、ルワンダ国内の480の教師教育カレッジで教育者を訓練し、2020年に3,160人の教員を訓練する計画を立てている(UNESCO 2020)。 2.4.3 特別支援教育が学べる大学について ルワンダにおける最大の大学であるUniversity Of Rwandaに、2014年から教育学部の中に、特別支援教育を専門的に学ぶことのできる学科が創設された。取得できるプログラムは下記の通りである。 ・Master of Education in Special Needs Education (MEd SNE):特別支援教育修士課程 ・Postgraduate Diploma in Special Needs Education (PgD SNE):特別支援教育ポストグラデュエート・ディプロマ(修士論文の執筆を必要としない修士課程) ・Bachelor of Education (Hons) (Special Needs Education) (Primary Teacher Education) [BEd (Hons) (SNE) (PTE)]:教育学士(優等学位)(特殊教育)(初等教育) ・Diploma in Education (Special Needs Education) [Dip. Ed (SNE)]:教育(特別支援教育)のディプロマ ・Continuous Professional Development Diploma in Special Needs Education (CPD SNE):特別支援教育における継続的な専門能力開発のディプロマ 第一期生46名は、教師養成校(TTC)で取得した教育資格を向上させるために、政府から奨学金を受け、特別支援とインクルーシブ教育の学士号を取得するために勉強中である。 現行のREB(Rwanda Education Board)が管轄する教員養成のシステムでは、インクルーシブ教育や特別支援を必要とする子どもの教員向けの養成プログラムがない。そのため、特別支援教育学部は、インクルーシブ教育をすべての教師のpre-service training(教員養成前トレーニングか、事前研修に)に統合できるように、教員養成校内のトレーナーの専門知識を開発することを計画している(UNICEF 2016)。 視覚障害学生のための教材についての研究を行なっている在学生がいたり(2020.11在学生へのインタビュー)、ろう学校からベテランの教員を招いて講義が行なわれたりしている。 2.4.4 学齢期の子どもを対象とした特別支援学校とその他のセンター E Karangwaによると、ルワンダの障害のある学習者や特別支援教育は,植民地時代(1894までドイツ、1962年までベルギー)から植民地時代後も、国策の中で取り上げられることはほとんどなかった。2000年になっても、国内には障害児・者向けの教育やリハビリテーションを目的としたセンターが5か所あるだけで、あとはチャリティーサービスとして宣教師が運営しているところだけであった(E Karangwa 2015)。 その後、特別支援学校(segregated educationを提供してる学校)は40校に増え(UNCEF 2016)、障害児・者対象のセンターも59か所ある (NUDOR 2018) 。  また、児童委員会による2016年の調査では、4,349人の障害児と若者をケアする49のセンターがあると記載されており、その内訳は、71%が在宅ケア、29%がデイケアセンターである。ただし、このレポートもこれまで発行された報告書同様に、性別や障害のタイプごとの正確なデータは記されていない(NUDOR 2018)。 2.4.5 学校進学の壁 学校進学の壁になっているのは、主に「高額な学費」と「保護者の理解不足」が要因であると考えられる。 「高額な学費」に関して、東部のろう学校の学校長は、VSOのインタビューの中で、「ルワンダのろう学校は公立で運営されているところがなく、生徒から学費を徴収する必要があるため、経済的な面で多くのろう児の学校教育へ就学の機会は限られている。」と述べている(University of Edinburgh,2019)。 2015年から2017年に筆者が赴任していたろう学校においては、学費は徴収されていなかったが、寄宿舎(全寮制)にかかる諸経費を捻出できないために、通学ができないろう児が多くいた。 ルワンダ政府は2003年にSix Years Basic Education policy(6YEB)、2006年からは Nine Years Basic Education policy (9YBE)という政策を打ち出し、義務教育の年齢にあたる公立校の学費の無償化を開始したことにより、障害のない生徒たちは学校に通いやすくなった。 一方で、何らかの障害のある子どもにとって、特別支援学校に通うことは依然として容易ではない。特に田舎の貧困地域で、兄弟姉妹が5,6人いて (2018年のルワンダ女性の平均出生率は4人である(世界銀行2019))、自給自足の農業で生活を営んでいる家庭の場合、障害のある子どもに対してのみ学費を捻出し、都会の学校に通わせることは容易なことではない。 Stephen Kidd and Krystle Kabareによると、ルワンダの特別支援学校はいずれも公立学校ではないため、在籍する生徒は郡の学費無償化制度に申請することができず、教育を受ける権利が少なく、教育の質も低く、通学すらできない、などの問題につながっていると言及している。学費は概して高く、「1学期あたり60,000ルワンダフランにも達する場合もあるため、障害児の通学は,ほとんどの家族の手の届かない存在になっている」と言及している(Stephen Kidd and Krystle Kabare 2019)。 また、「保護者の理解不足」として、自身も教育を受けていなかった世代の両親は特に、障害のある子どもを学校に通わせる意味を見いだすことは難しいと考えられる。  Josephは、女子の就学機会についても同様に「識字能力のある親は、非識字の親よりも娘を学校に通わせる可能性が高い。したがって、学校では、識字率の低い成人が最も多い地域は、ジェンダー格差が最も大きい。」と言及していることからも、保護者の教育歴は子どもの学校教育の機会にも大きな影響を与えることが理解できる(Joseph P. G. Chimombo 2005)。 また、ろう学校に至っては、そもそも「ろう・難聴児のための学校がどこにあるのか、その存在すら知らない」(職場体験実習で出会った農村の女性の発言)という状況が珍しくないことも、現地に滞在する中で身をもって感じたことであった。 2.4.6 障害児教育の変遷 障害児のための教育を提供する学校は、1960年にベルギーの司祭Abbé Joseph Fraipont NdagijimanaによってHVPガタガラセンターが創設されたことが始まりである。開学当初は身体障害者を対象としたセンターとして運営され、1979年に視覚障害者を対象とした盲学校が設立された(友人へのインタビュー2011年11月11日)。 その後、1971年にルワンダ初のろう学校であるセントガブリエルろう学校(Center of Deaf-Mute Brothers of St. Gabriel in Butare)が南部のブタレ郡(現フイエ郡)に設立され、その後各地に特別支援教育を提供する学校やセンターが設立された。 2.5 ルワンダ国内のろう学校について 2.5.1 ろう学校の分布状況  筆者は2019年8月に現地フィールドワークを行なった。その際にルワンダろう協会(RNUD: Rwanda National Union Of the Deaf)から、ろう学校および、ろう・難聴生徒の一定数が通う学校のリストをもらい、そのリストを参考に各ろう学校を訪問した。リストの作成時期が不明で、多くは担当者が変わっていたり、リストに空白があったりした。ろう協会自体も正確に情報を把握しているわけではなかったため、筆者が現地の学校に出向いて、リストの情報の更新と共にそれらの学校の実情を調査した。なお、調査期間中はエボラ出血熱がコンゴで流行し、コンゴとの国境が封鎖されていたため、安全上の都合により西部にあるろう学校の訪問は行っていない。 そこで作成したろう学校の位置を地図上に示した(図8)。 図8:ろう学校の分布図 (図) 赤:ろう学校 青:ろう・難聴生徒がある一定数通っている一般の中学校 黄:私立運営されているあらゆる障害のある生徒の通う小学校 黒:データなし  ルワンダではろう・難聴者を対象とする学校(Deaf School)は小学部(小学1年〜6年)までで編成されており、中学部はないため、卒業後は地域の中等学校に通うこととなる。 図8に示した通り、ろう学校はルワンダ国内には7校あり、その全ての学校は私立である。 ろう学校としての中学部は存在しないため、小学部を卒業した生徒はまとまってその地域の一般の中等学校(私立ないし公立)に通うことがある。それを図8の青で示す。 これらの中等学校では、地域間の繋がりがあり、学校間の校長同士が繋がっているという理由や、地域の小学校で勉強を共にした同学年の生徒が、ある程度手話についての知識があるなど、先生や生徒が聴覚障害に関してある一定の理解を示している。 また、ルワンダでインクルーシブ教育ではなく、特別支援教育を希望する者は、隣国のウガンダのろう学校の中学部に通っているという例もある。同校には、タンザニアなどからもろう生徒が多く通っているという情報を得た。(2019年8月ウガンダのろう協会(Uganda National Association of the Deaf)でのインタビュー) 黄色で示した学校は、宗教団体や海外のNGOによって運営されている障害のある生徒のための学校であり、それぞれの学校に一定数のろう・難聴生徒がいる。特徴としては、知的障害や重度心身障害などと聴覚障害が重複した生徒が多く在籍しているということである。 2.5.2 ろう学校の基本的な情報 ルワンダに7校あるろう学校は、寄宿舎を兼ね備えた全寮制がほとんどである。学校によっては、家から通う生徒と寄宿舎で生活する生徒がそれぞれ在籍するというケースもある学校があるが、大体は全寮制のケースが一般的である。隣国から越境している生徒も多く、学校が長期休みに入ると、ブルンジ、コンゴ、タンザニアおよびウガンダなどの隣国に帰国する生徒もいる。 ここで、あるろう学校を紹介する。 『セントガブリエルろう学校』は、ルワンダで一番歴史のあるろう学校であり、1971年にSt. Gabrielによって建てられた。2020年12月現在、全校生徒数は152名となっている。 敷地内には教室、寄宿舎、給食室、プール、講堂、売店、畑、牛舎、男性教会職員の居室、女性の生活支援スタッフの居室などがある。畑ではバナナやジャガイモやキャッサバなどの野菜を育て、牛舎では約10頭、豚舎では約30頭、そのほかに鶏やうさぎも飼われていた。それぞれの売り上げは学校の運営費として回し、それぞれの農業活動に従事する専用のスタッフが雇われており、生徒は何か労働をさせられるといったことはない。 前述したように、ルワンダのろう学校は全て私立として運営されているため、進級の条件やプロセスはそれぞれの学校によって多少異なる。図9に、筆者がセントガブリエルろう学校の修学体系を図式化したものである。なお、D1~D3は幼稚部のクラス、P1~P6は小学部、SC4~SC10は職業訓練コースを示している。 図9:セントガブリエルろう学校の教育システム (図) 年齢はあくまでも目安としてルワンダの就学年齢を当てはめている。入学した生徒は年齢に関わらず、幼稚部で3年間在籍し、その後小学部6年間か職業訓練コース6年〜7年に在籍するプロセスになっている。以下に、それぞれのコースやクラスでどのような内容の学習が行われているか示す。 (1) 幼稚部 セントガブリエルろう学校では、幼稚部は3年間である。幼稚部の役割はあくまでも、ろう児の母語であるルワンダ手話を習得させることである。そのほかに基礎的な学習(文字の読み書きや簡単な計算)や遊びを通した体の使い方などを身に付けるための指導が行われている。学期末には定期試験が行われ、算数やルワンダ語のテストが行われて成績が出される。その成績が芳しくない生徒の場合は、留年するケースもある。学期末には保護者に対して成績順位の発表・通知が行われる。 幼稚部の3年間を修了すると、成績によって小学部に進学するか職業訓練コースに進学するかが、ろう学校の教員によって振り分けられる。小学校卒業時には、ナショナルイグザムと呼ばれる全国学力試験を受験する必要があり、さらに中学校では地域の中学校に通うことになる。そのため幼稚部卒業時に成績がよく、学力が高い生徒は小学部に進学する。一方、今後の授業の進度に耐えうる学力がないと判断された生徒は職業訓練コースに進級する。また、小学部に進学をした生徒であっても、各学期のテストの結果や授業での様子などを相対的に判断され、学習を続けていくことが難しいと判断された場合は、新学期のタイミングで職業訓練コースに移動するというケースもある。 (2) 小学部 カリキュラムやシラバスは,ルワンダの教育省から発行されている一般の公立校と同様のものを利用する。2015年〜2017年の間は小学部3年から6年(P3~P6)は同じ地域の公立の小学校にクラス全員で通い、インクルーシブな環境で他の生徒と混ざって授業を受けていた。 授業中のやりとりは全てルワンダ手話で行われ、聴者の教員はルワンダ語に対応した対応手話を用いていた。小学部5年〜6年にかけてはナショナルイグザム受験対策のために、夜まで先生・生徒とも残って補習が行われていた。 (3) 職業訓練コース 職業訓練コースの教員から、職業訓練の内容と項目に関する資料を入手した。カリキュラムの抜粋は下記の通りである。 編み物 クラス名:SC4 ターゲット:手袋 目的:編み針の持ち方を知る クラス名:SC9 ターゲット:機械を使ってのセーター編み 目的:編み器の使い方を学習する 洋裁 クラス名:SC4 ターゲット:ネックレス 目的:機械の使い方を知る 職業訓練の内容と項目が記されているが、この項目以外に学齢期の学力を身につけるための授業も行われている。午前は学習指導・午後に職業訓練という構成になっている。カリキュラムは教育省雇用開発局(WDA)から発行されているものではなく、教員が独自で作成したものを用いていた。 2.6 職業訓練教育  本章では、ルワンダにおけるTVET(技術教育及び訓練並びに職業教育及び訓練:文部科学省訳 Technical and Vocational Education and Training)(以下、TVETとする)について設立経緯と概要、および現状について記述する。 2.6.1 技術職業教育・訓練  ルワンダの技術職業教育・訓練は、TECHNICAL and VOCATIONAL EDUCATION and TRAINING (TVET)と表現され、職業訓練教育(Vocational Training)と(技術教育)Technical Education で運営されている(Ministry of Education2015)。 2017年までは,ポリテクニック(Polytechnic)、工業高校 (TSS:Technical Secondary Schools)、職業訓練センター( VTC:Vocational Training Centre)の3つの教育組織がその技術を提供する場として機能していた。 しかし、2018年に学校構造の改革があり、現在、技術中等学校(TSS)と職業訓練センター(VTC)が統合されたため、1つの学校として扱われることとなった(図10)。 図10:TVETシステム Kaleeba B. Ali, 2020 (p.19)を引用。2018 EDUCATION STATISTICSを元に編集。 (図) 2018年度において、ルワンダ国内にある施設数は360校(そのうちポリテクニックは17校)で、生徒数は102,485名である。TVETで開設されている主なコースの種類と生徒数の内訳を表3に示す。在籍者数の総数では、建設・建築サービスが突出して多く、続いてテクニカルサービス、情報通信技術と続いている。男性では建設・建築サービスサービスが他のサービスに比べて最も多いが、女性に限るとビジネスサービスが最も多いが、集中的ではなく分散している傾向が見られる。 表3:主なコースの種類と生徒数の内訳 (表) 出典:上記表2つとも2018年教育統計(2018 EDUCATION STATISTICS)より引用 次に、在籍者数と年齢構成を示す(図11)。在籍者数では、いずれの年齢層でも男女差はほとんど見られない。入学は男女とも概ね16歳から始まり(これは、図3:一般の学校教育制度で示したS1:中等学校1年に相当)、18歳が最も多く在籍している。(S4〜S5:高等学校1年〜2年に相当)。また、24歳以上の在籍者も多い。 図11:年齢と性別の内訳 (図) 2.6.2 ルワンダ国内のTVETの変遷  ルワンダは2000年にVISION 2020を策定し、農業に依存する体制を見直し、中所得国となるために知識基盤型の経済をめざして様々な政策を打ち出している。2002-2007年のPRSP(貧困削減戦略)、2008-2013年のEDPRS(経済開発貧困削減戦略)などである。教育セクターについては、2006年に2006-2010年ESSP(教育セクター戦略計画)を打ち出し、基礎教育9年制への拡大(9 Years Besic program(9YEB)と、科学技術教育の強化を新重点的な課題として位置付けた。 2008年からはTVETセクターの改革が承認され、教育省内に労働開発局(WDA:Workforce Development Authority)(以下、WDA)と、統合ポリテクニック地域センター(IPRC:Integrated Polytechnic Regional Centres)が設立された。WDAは全国レベルでTVET戦略を編成する部門として、IPRCは地方レベルの専門拠点センターとしての役割を担っている(VVOD)。 2015年には、TVETポリシー(Technical and Vocational Education and Training Policy)を策定し、インフラ、農業、鉱業、観光などの民間部門をさらに関与させることを目的として、TVETの方針を変更し、地域全体で競争力のある卒業生を生み出すことと同時に、年間最低20万人の雇用を創出することを目標とした(Ministry of Education 2015 )。 2017年から実施されている第一次国家変革戦略(NST1)では、スキル不足と失業の課題に対処するために、2024年までに9年間の基礎教育卒業生の60%をTVETに吸収するという目標が設定されている。 最新の動向としては、知識ベースのトレーニングプログラムから、能力ベースのトレーニングプログラムに変革していることに加え、女性の参加を奨励することで男女平等を促進し、また、障害のある人が経済的および社会的発展に貢献する機会を増やす取り組みが活発化してきている(O Serfling, L Paßelewitz 2018 )。 2.6.3 雇用開発局(WDA:Workforce Development Authority)  WDAは、国際競争力と、労働者のスキルと能力の開発を促進、指導するために2008年に設立された政府機関である(Sweden 2018)。労働力開発における拠点としての役割を担うために教育省の管轄として設立され、2008年1月18日に内閣により正式に承認された。主に、技術的および職業的教育と訓練(TVET)の教育・認定基準を設定し、その実施を監視することや、TVET認定証の開発を行う機関として位置付けられている(WDA)。 2020年現在、WDA認定校は369校あり、首都のキガリ63校、東部73校、北部66校、南部88校、西部79校である。そのうち、公立校は98校(26%)、政府から財政支援を受けている学校は47校(13%)、私立学校が224校(61%)という内訳になっている(WDA)。 認定は,WDAに申請し、教育省の監査を受ける。その際,必要器具や施設等の不足により教育の質を保てないと判断された場合はその承認がおりないことがある(セントガブリエルろう学校教員による発言2019年)。また、認定校と認められた後でも監査は定期的に行われ、教育の質の改善に務められる。2019年The New Timesの記事によると、「2018年10月~11月に行われた監査により、教育の質が低いことを理由に69校の職業訓練校の認定が取り消された」というニュースが報じられた(The New Times 2019,5)。 2.6.4 カリキュラムについて WDA認定校では、WDAから発行されるカリキュラムが用いられている。そのカリキュラム開発には、DACUM (Developing A CUrriculu Method)という職務分析手法が採用されている(世界銀行2013)。 ルワンダ政府は教育の質を向上させるために、知識ベースの社会を発展させ、雇用市場における地域的および世界的な競争の成長を掲げ、カリキュラムの改革に着手している。その上で、知識と技術の習得から、知識の創造と応用へ移行するために、従来の教科・コンテンツベースの教育から、生涯学習などを通して能力ベースの教育を行うことへの認識が高まっている(E Ngendahayo, H Askell-Williams 2016)。このことからも、技術だけに特化した形ではなく、働く上での規律や態度を養うことも就業に必要な能力の一つとして捉え、カリキュラムの中に構成されている。 筆者は、2019年ルワンダの職業訓練校に視察に行き、その場で用いられているカリキュラムを教員から入手した。REQF Level 3 CURRICULUMの洋裁コース(ACTTAL3001-TVET CERTIFICATE III Tailoring)のカリキュラムであり、Art&Craft の部門のTairolingに位置し、87単位で構成されている。 目次を表4に示す。 表4:職業訓練学校洋裁コースのカリキュラム目次 (表) No 指導内容 章 項目 ページ番号 単位 1 職業と学習プロセス 4 13 P13 3 2 コンピューターリテラシー 5 28 P32 3 3 職場でのコミュニケーションスキル 4 13 P71 3 4 職場環境への適応 5 17 P94 3 5 職場で使う中級程度の英語の習得 4 18 P122 33 6 ルワンダ語 5 39 P147 3 7 起業・事業創出 4 14 P179 3 8 産業アタッチメントプログラム 5 18 P202 30 9 縫製と靴下の基本的なポイント 4 11 P224 12 10 洋服の作り替えと修理 3 7 P253 12 11 子どもと大人の服作り 4 23 P267 12 (全11章、128節、201項) 洋裁の技術(9〜11)を学ぶだけでなく、職場での円滑なコミュニケーション方法(3,4)やコンピューターリテラシー(2)の向上に向けたトレーニングなど、生涯学習に向けたコンピテンシー(高い業績・成果につながる行動特性)(1,4,7,8)の向上を目的とした多岐にわたるカリキュラム内容になっていることが理解できる。 科目・コースの詳細は参考資料1に示す。 2.6.5 インターンシップ  世界銀行が2013年に発刊したPOSTBASIC EDUCATION AND TRAINING IN RWANDA SKILLS DEVELOPMENT FOR DYNAMIC ECONOMIC GROWTH によると、『北米と英国では,学校ベースの知識・技術の習得に加え、パートタイムや夏のインターンシップでの職場体験の経験を総合した“School-to-Workプログラム(STW)”が多く導入されている』とある。そして、『企業やNGO、政府機関でのインターンシップは非常に効果的であることが証明されている』と言及している。また同報告書では、『北米での調査によると、STWプログラムが、仕事とは何かを生徒に理解させ生徒のキャリア選択に影響を与えている』と報告している(The World Bank 2013)。  ルワンダ政府は2015年に、National Policy on Workplace Learning to Prepare Rwandan Youth for Employment(Workplace Learning Policy)を導入し、TVETや高等教育制度の抜本的な改革に乗り出している。その政策の中で、北米と英国のSTW同様に、インターンシップについて3つの言葉を用いて定義づけを行なっている(Republic of Rwanda 2015 )。 ⑴Attachment (or industrial attachment)(アタッチメント) 教育プログラムの必修項目。通常はTVETセクターおよび高等教育で実施される。参加者は学生であり、アタッチメントが完了することが卒業と認定の前提条件となる。TVETセクターのアタッチメントプログラムはIAPと呼ばれ、WDA傘下のTVET校では2011年からこのプログラムが導入されている。 ⑵Internship(インターンシップ) インターンシップはアタッチメントに似ているが、教育学習プログラムの一部ではなく、若者の仕事への入り口を容易にすることを目的とした自立型の仕事体験スキームとして取り扱われる。Youth National Internship Programmeを通して、若者を対象とした積極的な労働市場への介入や企業を通したインターンシッププログラムが提供されている。(Republic of Rwanda 2015 )。また、REB(Rwanda Educaton Board)は、2009年からTVET、HLI、海外からのすべてのルワンダの新卒者を対象としたインターンシッププログラムを導入し、平均して6ヶ月(農業など実践に時間がかかる分野は最大12ヶ月)のインターンシッププログラムを行なっている(RDB)。 ⑶Apprenticeship training(見習い訓練) 主に仕事の経験を目的とするアタッチメントやインターンシップとは異なり、見習い訓練は、実際の仕事の現場での構造化された(通常は就職前の)トレーニングである。  このWorkplace Learning Policyで示されているように、技能のミスマッチが若者の失業の主な原因とみなし、学習が理論にだけ基づき、実践的なスキルを欠いていたことが、教育訓練システムの大きな課題として挙げられていた。そこで、より実践的で即戦力となるスキルに焦点を当てた新しい教育訓練プログラムの発案が求められている。関連して全国雇用プログラム(NEP)でも、企業と連携した多様なインターンシッププログラムを求めている。 アタッチメントとして位置付けられているWDAカリキュラムの中には、インターンシップを申し込むのための履歴書(CV)の作成方法、効果的な面接のためのデモンストレーション方法、職場での適切な態度や時間管理,など多岐にわたる項目で構成されており、実際の職場における必要事項を重点的に学べる内容となっていることが認められる(参考資料2)。 2.6.6 インターンシップの価値 他の国々においても,大学で獲得したスキルと企業の求めるスキルのギャップが乖離していること、インターンシップが効果的であることなどが言われている。 南アフリカでは、大学を含む高等教育機関の卒業生の失業が課題になっており、最新の統計によると、2019年第1四半期の卒業生の失業率は31%とされている。南アフリカ大学のAngelo Fynn教授がallAfricaというニュースメディアで分析した内容によると、失業率が高い理由の一つとして、卒業生が有するスキルと雇用主が期待するスキルの間にギャップがあると言及した上で、仕事統合学習(work-integrated learning)がそのギャップを対処するための方法として適切であると述べている。また、仕事の経験と大学でのカリキュラムを統合することで、学習からキャリア開発へ効果的な支援に繋がると言及されている(all Africa 2020)。 ちなみに日本の大学の約70%が、インターンシップを単位認定していることからも(松尾 2015)、インターンシップを通して職場体験を行うことが、効果的な学習に結び付くという認識が、世界的な潮流となっている。 また、ルワンダにおける文脈では、以前では知識と技術の習得から、知識の創造と応用へ移行するために、従来の教科・コンテンツベースの教育を行なっていた。これからは、技術だけに特化した形ではなく、働く上での規律や態度を養うことも就業に必要な能力の一つとして、カリキュラム導入や、インターンシップの推進を行なっているということが明らかになった。 2.6.7 障害者への職業訓練教育  障害者を対象とした職業訓練を提供する場として、マサカ視覚障害者リハビリテーションセンター(Masaka Rehabilitation Centre for the Blind)や、インクルジーザ、ガヒニ地域リハビリテーション(Community Based Rehabilitation (CBR) Inkurunziza、Gahini)などがある。しかし依然としてその数が少ない(Dusaberurema 2009)ことから、全ての障害者が平等にその教育機関で学べていないと言える。  TVET政策の中では、「少数民族、難民、先住民族、障害者など、特に障害を持つ人々がTVETにアクセスできるようにするために、積極的な行動をとるものとする。彼らは可能な限り「包括的」な訓練機関で学ぶものとする。」という記載がある(TVET Policy 2015)。  TVET政策に基づき,全ての職業訓練校はインクルーシブ教育を提供するように務めることが求められている。  しかし、ルワンダ教育統計2017によると、現実にはTVETに通っている障害者の数は560名(障害の種別は聴覚障害93名、視覚障害56名、言語障害56名、身体障害305名、学習障害22名、重複障害28名)で、これはTVETに通う学生全体数のわずか0.5%でしかないとされている(2017 EDUCATION STATISTICS)。  TVET卒業者の就労状況について、2014年にNGO団体であるUPHLS(Umbrella of Organizations of persons with disability in the fight against HIV/AIDS and for Health promotion)によって行われた調査では、ルワンダの3つの地区の障害のあるTVET卒業生107人(83人の男性、24人の女性)のうち、36%が失業者、58%が自営業、6%がインフォーマルセクター雇用、約3割が就業できていないということが明らかになった(UPHLS, 2014)(図12)。 図12:障害のあるTVET卒業生の就労状況 (図)  ルワンダにおける障害者は、基礎教育課程の就学および職業訓練の機会損失に加え,就労に際しても大きな困難を抱えている。 これに対して障害者が適切な技術を身につけ,職業教育の機会を拡大し、就労できるようにするために、国連に協力を得て,国内の障害者団体、海外のNGOらによって様々なイニシアチブが展開されている。 例えば、オーストリアのNGO団体LIGHT FOR THE WORLDが主体となってルワンダ、ケニア、エチオピア3地域を対象としたプロジェクト行われた(Baart,mJ.; Maarse, A. 2017) 。 2014年から2016年までの第1フェーズでは、120人の若者がさまざまな技術スキルを身に付け、2017年から2019年の第2フェーズで16歳から30歳までの300人の障害者やその他の若者を訓練することを目標としている(The New Times 2017) 。この例のように、障害者への職業訓練教育の現場において、国策としてだけではなく、民間レベルでの草の根的支援が実働している。 2.7 一般的な雇用 2.7.1 ルワンダの雇用・失業状況  ルワンダの2019年の年次労働力調査(2019 Labor force surveys annual report) によると、労働年齢人口(16歳以上)は7,231,536名で、そのうち3,862,799名(53.4%)が就業者、3,368,737人が非就業者とされている。非就業者のうち、1,693,174名の大部分が自給自足の食料生産に従事している。  年間失業率は15.2%であり(労働力のおよそ7人に対して1人),失業率は男性(13.8%)よりも女性(17.0%)の方が高く、31歳以上の成人(12.0%)よりも16〜30歳(19.4)の若者の方が高い。 表5:労働人口の割合 (表) 2019 Labor force surveys annual report、p.5の表を筆者が和訳  ここで着目すべき点は、雇用されている人々の3,273921人のなかで、非公式(インフォーマル)に雇用されている人は、2,931,494人にも上っており、総雇用者の89.5%を占めているということである。この非公式雇用者は,国に登録や報告をおこなわないため、税金を支払う必要がないが、その代わりに国から保護されることもない(Ornella 2020)。  これはルワンダに限った話ではなく、例えば、(C Afoakwah, F Dauda 2016)らの報告によると、ガーナでも成人の80%以上が契約や正式な雇用者と従業員の関係を結んでいない(GSS 2014)。毎年約25万人の若者が労働市場に参入しているにもかかわらず、公式部門(フォーマルセクター)は約5,000人(2%)にとどまっており、残りの98%は、非公式経済(インフォーマル経済)と言及されている(C Afoakwah, F Dauda 2016)。 次に、2019年の労働力調査(2019 Labor force surveys annual report)による性別ごとの主な仕事における経済活動別雇用者数のグラフを和訳したものが図13である。オレンジが女性、青が男性を示している。 図13:性別ごとの主な仕事における経済活動別雇用者数(%) (図) 農林業と漁業に従事している人口が男女ともに最も多く、続いて女性は小売業と自動車やオートバイの修理、男性は建設業に従事している人口が多いということが明らかになった。農業外の雇用を創出し、知識基盤型の経済を目指した経済政策が求められているが、依然として農業従事者の割合が高い。 次に、性別ごとの主な雇用における平均月収額のグラフを図14に示す。 図14:性別ごとの主な雇用における平均月収額(Frw:ルワンダフラン) (図) 2019 Labor force surveys annual report、p.13の表を筆者が和訳 男女共、農業や建設業は月収額が低く、一方、男性は科学技術、金融関連、女性は国連職員、電気・ガス供給などへの従事者が高い。 次に、従事者数と月収額をまとめたものを図15に示す。 図15:従事者数と平均月収の関係 (図) 男女共、農林業と漁業に従事している者の割合は突出して高い一方、平均月収は非常に低いということが見られる。 この図については、第3章3.1考察にて再考する。 2.7.2 企業の形態 (1)中小企業  ルワンダでは中小企業が全企業の98%であり、2008年のルワンダ民間セクター連盟(Rwanda Private Sector Federation)の調査によると、ルワンダでは72,000社を超える中小企業があるとされているが、正式に登録されているのは34%に当たる25,000社のみであるというデータもあり(UWITONZE 2016 )、企業数の正確な数はいまだ明らかではない。 (2) コーペラティブ  コーペラティブは、日本の「協同組合」に相当し,技術や知識を備えた人々が集まり、各自が資本を出し合い、日々の糧を稼ぎ出す組織のことである。ルワンダ政府の場合、様々な分野でコーペラティブの結成を積極的に促しており、専門の機関を設置し、登録申請を積極的に受付け、活動の様子を見定めてから正式に認証を行うというプロセスを踏んでいる(石野 2015)。コーペラティブはルワンダ国民の日常生活に深い関わりを持っており、16歳以上の43%がいずれかの組合に属しているとされている(RCA 2018)。  その一例として、農業、手工芸、職人協同組合、貯蓄と信用(448協同組合)、貿易協同組合、サービス協同組合、鉱業、住宅協同組合、漁業、輸送(オートバイとバス輸送など幅広い範囲でのコーペラティブがある(RCA)(COOPnews 2019) 。  同じ目的を持って生業を営む近隣の住民が集うことで、行政のサービスや支援が受けやすくなるメリットがあるほか、中小企業を立ち上げるより規制が厳しくないため、一般の民衆に広まっている。 2.7.3 人々の就職活動の方法 ルワンダ労働力年次調査2019によると、ルワンダの失業者が行う就職活動の方法は、 ・雇用主に直接応募し、職場、農場、工場、市場、その他の集会所で確認する(59.5%) ・友人・親戚・その他の種類の仲介業者に支援を求める(34.1%) ・財源の手配・ライセンスと許可の申請(13.1%) ・新聞やオンラインの求人広告または求人広告を用いた求人検索(10.8%) ・オンラインの専門家向けソーシャルネットワーキングサイトへの履歴書の投稿と更新(8.5%) ・公的または民間の雇用サービスへの登録または連絡( 6.9%) ・土地、敷地、機械、物資、農業投入物を探す(2.3%) という結果になっている(図16)。 図16:就職活動の方法 (図) 2019 Labor force surveys annual report (P.27)を元に筆者作成 3番目の割合を占めている“ライセンス許可と申請”に関しては、自らが中小企業の立ち上げを行う際の諸手続等によるものと考えられる。これは、就職活動をするルワンダの人々にとって、求人広告やオンラインなどの雇用サービスを用いる形でどこかに雇用されるという方法を探すよりも、コーペラティブや中小企業を自らが立ち上げる方が身近であるという点が興味深い。 2.8 サブサハラアフリカの障害者雇用 本章では、ルワンダの障害者およびサブサハラアフリカの障害者の雇用の潮流について概観し、ルワンダでの障害者雇用はどのような現状になっているのか、ろう・難聴者の雇用の現状について特に詳しく言及する。 2.8.1 サブサハラアフリカにおける障害者雇用の状況  国際労働機関(ILO)の発表によると、世界で障害のある人々の人口は推定10億人であり、世界の人口の15%を占めている(ILO)。Shimelis によると、そのうちの約 80%は労働年齢であると公表されている。また、世界中の障害者は労働権を拒否されることが多く、統計によれば、障害者 の失業率は他の人々の2〜3倍であると推定し、一部の国では、6〜8人に1人の障害者が失業状態であると言及されている(Shimelis 2014)。  サブサハラアフリカの障害者人口は8000万人とされ(Africa Renewal 2018) 、アフリカでも同様に障害のある人はない人に比べて失業率が2倍高いとされている(Africa 2016)。アフリ カ諸国における障害のある若者は、教育や職業訓練を受けられないこと、教員が適切に訓練されていないこと、適切な施設が利用できないことなどが理由となり、公式な部門(フォーマルセクター)での仕事を探す上でさらに不利になる(UNDSPD, UNDESA 2016)と言われている。 2.8.2 アフリカ大陸内国同士の障害者雇用に関する関わり 2006年、国連は“障害者の権利に関する条約”を採択した。それを受け2016年には、アフリカ諸国が自国の障害者雇用のフレームワークを策定する際のガイドラインとなる“ツールキット(THE RIGHT OF PERSONS WITH DISABILITIES TO WORK Toolkit on disability for AFRICA)”を発刊した。同ツールキットは、初めて国連により公式に作成されたものである。 このツールキットの中では、障害者の働く権利を守るために“憲法の中で、就労上の差別の撤廃を求める表記をするべきである”と述べている他、憲法で明記した上で,さらに実働に関わるそれぞれの法律と結びつける必要がある、という旨が明記されている(UNDSPD, UNDESA2016)。 そのほかにも東アフリカ共同体では、定期的に東アフリカ地域障害者会議を行い、各国の既存の国内雇用政策をレビューするなど、障害者雇用における現状の国同士の意見交換などが行われている。 2014年6月にケニアのナイロビで行われた『東アフリカ地域第二回障害者会議』のレポート(EAST AFRICAN COMMUNITY 2ND EAC CONFERENCE ON PERSONS WITH DISABILITIES REPORT OF THE CONFERENCE)によると、ケニアでは、雇用主が人員を雇用する際に障害者を差別することを違法にする雇用法の策定が行われた,またタンザニアでは情報アクセシビリティの取り組みの一環として、職業訓練に手話通訳を導入する、という取り組みを行なっているという報告がされている。  しかし、依然として国際開発アジェンダの中で、あらゆる開発計画のなかに障害者を位置付ける障害の主流化に課題が残ることや障害者雇用プログラムに資金を提供するための計画予算が実現されていない国もあるなど各国で課題が残っていることも報告されている(EAC 2014)。 2.8.3 ルワンダの障害者雇用  次にルワンダの障害者雇用の現状について言及する。  2014 年 6 月にケニアのナイロビで行われた『東アフリカ地域第二回障害者会議』のレポートである EAST AFRICAN COMMUNITY 2ND EAC CONFERENCE ON PERSONS WITH DISABILITIES REPORT OF THE CONFERENCE によると、2012 年のルワンダ 国内の障害者数 446,453 (総人口の 4.2%)人のうち、225,303 人が女性 、221,150人が男性である (NISR 2012)。そのうち、労働年齢人口の 52.3%が雇用または自営業を行なっていると報告されている。  Labour force survey Annual report, 2019 では、「障害者の失業率(14.2%)は、健常者の失業率(15.2%)よりもわずかに低く,健常者よりも雇用されていることに注目できる」と言及している。  しかし、このレポートでは全障害者数を 332,192 人として計算をしているため、障害者雇用率が高いという結論について筆者は疑問であると考える。  また、東アフリカ地域第二回障害者会議によると、ルワンダ国内の障害者数は総人口の4.2%である 446,453人と算出し、ルワンダ政府が発表している障害者の割合も約5%と報告されている。 しかし、WHOが発表している世界の障害者人口の割合 15%と比較すると、これらの割合は、かな り低いことから、J Njelesani らなどによると、障害者雇用率等のデータは信ぴょう性に欠けると考 えられている( J Siegel, E Ullrich 2018) 。  また、2019 年 12 月 10 日のルワンダ The New Times の記事によると、全国障害者協議会 (NCPD)の事務局長である EmmanuelNdayisaba 氏は、「ルワンダの障害者の失業率は依然 として高い」と述べた上で、「働くことができる 154,000人の障害者のうち 1.2%しか実際は雇用されておらず、それは 98%以上の障害者が仕事を持っていないことを意味している」と発言している(The New Times 2019,6)。  以上のことから、政府が公表している統計的数値から算出される“障害者の失業率”は、必ずしも実態を表していないと筆者は考えている。 2.8.4 就労しているルワンダの障害者の例 (1)視覚障害者  ルワンダの盲学校に勤務する知人からの情報によると、ルワンダ政府は2008年に、障害のある学生を対象に高等教育機関に進学するための奨学金を出した。これにより教育学を専攻し、その後,教員,ジャーナリスト、IT技術を活かした起業家、など数々の博識高い視覚障害者の輩出に繋がった、と聞く。  その一方で、就労できない視覚障害者もまだ多く存在している。そのためルワンダの首都キガリのMASAKAにあるリハビリテーションセンター(Masaka Rehabilitation Centre for the Blind)で、農業や編み物などの社会適応のためのショートコースが設けられている、と聞いた。しかし、依然としてそこにも参加する機会のない人たちが数多くおり、それ以上の手立ては乏しいようだ。(2020年11月10日 Whats Appによるディスカッション)  障害者の修学に際しての奨学金に関しては、2018年にルワンダ教育省から発行された REVISED SPECIAL NEEDS AND INCLUSIVE EDUCATION POLICYで、高等教育機関で学ぶ障害学生への投資を強化するために、2008年から2017年にかけて、165名の障害学生に、返済不要の奨学金が授与されたと示されている。 (2)ろう・難聴者  筆者が2015-2017年、2019年8月の1ヶ月に渡る事前調査でルワンダに滞在した際には、様々な場所でろう・難聴者が働いている様子を見ることができた。ルワンダのろう・難聴者の雇用に関する先行研究は極めて少ないため、この章ではあくまでも筆者が現地で得たろう・難聴者の雇用情報について紹介する。 表 6:ろう・難聴者の雇用形態 (表) 雇用形態 被雇用  職種 MTNエアタイム販売、地方の飲食店の厨房、地方の飲食店のウエイトレス、日本の企業で画像加工を行う、機械系修理、理容室、ろう学校の教員、外資系障害者関係 NGO職員、ルワンダ国内障害者団体職員、仕立て屋、理容室   雇用形態 コーペラティブ 職種 衣料品の仕立て・販売、金属製ボックスの製作 雇用形態 個人事業主 職種 シルクスクリーンのプリント、アフリカンアート製作・販売、市場で使用済みのペットボトルなどの販売  “被雇用”として雇用されているろう・難聴者も多くいる反面、ろう者同士での“コーペラティブ”を組み、洋裁や金属製のボックスの製作・販売をしている場合、“個人事業主”としてアート作品やプリント業を営んでいる場合など多様な働き方をしているようであった。  次に、それぞれの詳細を紹介する。 (3)大手企業  ろう・難聴者を積極的に雇用する大手企業も数は少ないが存在する。アフリカ大陸でスーパーマーケットを展開するケニア系の“ナクマット(Nakumatt)”は、ろう者の従業員を積極的に雇用している。2016年1月13日の HopeMAGAZINEの記事によると、同社では、従業員同士の手話によるコミュニケーションを推進するとともに、3名のろう女性の従業員に対し、他の従業員と同様に、ボーナス支給、医療保険完備、昇進や福利厚生があり、ギフトの梱包担当として雇用していると紹介されている(HopeMAGAZINE 2016)。  その他にも、ルワンダで乳製品を取り扱う大手企業“マサカクリーミー(Masaka Creamery Ltd)”の工場でも、積極的にろう者の雇用を推進している。2018年10日のThe New Timesの記事によると、28名の従業員のうち17名のろう者を雇用していると報道されている(The New Times 2018,1)。  筆者が実際に2019年8月に同工場を訪問した際にも、ろうの管理職のスタッフに手話で工場の中を案内していただいた。工場内は靴を履き替え、ビニールの帽子を被り、上下の防護服を着た上で2回の消毒を行い立ち入る厳重な衛生管理のもと、ラベルに刻印をする仕事や、乳製品を加工する機械の取り扱いなど、責任のある仕事に従事していた。 (4)コーペラティブ  2章で述べたように、ルワンダでは多くの人々がコーペラティブという形で事業を運営することが一般的である。ろう・難聴者が参加するコーペラティブもいくつかある。  ろうの女性だけで構成される洋裁・仕立てをメインに洋服やカバンの製作販売を行うコーペラティブや(The New Times 2018,2)、男性がメインでボックスの製作と販売を行うコーペラティブなどが各地域に存在している。(ボックス=ルワンダで大衆に使用されている物を入れて移動する 際に使われる金属製のボックス) (5)個人事業主  個人でシルクスクリーンの製作・販売を行うろう者や、アート作品を作成し販売しているろう者にも出会った。販売の場所は主に、外国人を対象にしたクリスマスマーケットやエクスポと呼ばれる年に何回かあるイベントでの出展、主流な市場やスーパーマーケットへの売り込みなどによる方法である。ちなみに、個人でアート作品を作成し販売するろうの男性にヒアリングしたところ、「個人ではなかなか融資などを受けにくいため、コーペラティブを作ろうと思っている」と話してくれた。  このように様々な形態で就労しているろう・難聴者がいる一方で、ろう・難聴者の失業率などの実態は、いまだ明らかでない。  ルワンダろう協会でも、労働しているろう・難聴者の総数は正確に把握しきれていない(2019.8 月メールインタビュー)。すなわち実際には失業状態にあるろう・難聴者も多く存在すると考えられる。2019年 8月にろう学校卒業生にインタビューをした際には、“自身を含めた周りのろう・難聴者は季節労働者として、建設工事など招集がかかった際にのみ仕事をしているという場合が多い”という話を聞いた(2019年8月:2017年度ろう学校卒業生に対するインタビューより)。 2.8.5 アフリカの障害者雇用に関する法律  ケニアでは 2003 年の障害者法第 14 号(The Persons with Disabilities Act No.14)により、雇用されている全ての人々のうち 5%を障害者で構成する必要があると規定し、その他に、2003年の公務員倫理法(The Public Officers’Ethics Act 2003)では、公務員の雇用機会における障害者の無差別化が規定されている(W KHAEMBA 2017)。  また、障害者の雇用者を税制上の優遇措置の対象にすることにより、障害者の雇用に有利な優遇措置を提供し、さらに障害者の所得税が免除されている(Njoroge 2017)。  ガーナでは、C Afoakwah らの報告によると、2006 年に採択された障害者法(The Disability Act (Act 715))第 10条では,「障害者を雇用する雇用者に対し、雇用された各障 害者に関する課税所得の年次税金還付を与える」という措置を規定している。また、同法の第13条により「障害のある個人の名前が2年以上雇用待機リストに留まっていた場合、その個人に対して失業者の障害者に適切な訓練サービスを提供するための規定された範囲でのトレーニングを行う」ことが定められている(C Afoakwah, F Dauda 2016)。  ウガンダでも、障害者を雇用する雇用主に対して、障害者法(The Person with Disability Act 2019)に準拠し、障害者を雇用する雇用主は、インセンティブとして、所得税法の規定に沿って、課税対象所得の最大10%の控除を認めるという税制優遇措置が設けられている  こうした様々な取り組みにもかかわらず、どの国においても,依然として障害者の失業率は高い ことが問題になっている。2007 年のガーナ人間開発報告書によると、障害者の失業率は 31%で あり、障害のない人の失業率は 19.8%であった(RK MPRAH 2020) 。 2.9 質問紙調査 2.9.1 質問紙調査結果 - 教員  2020 年 11 月 18 日に、ルワンダのろう学校 1校に質問紙調査を依頼した。その結果、18名中 11名の教員から回答を得た。そのうち 10 名は質問紙による回答方法、1名は Googleフォームを利用した回答方法で受け取った。 (筆者は、コロナ禍で渡航がかなわなかったが、仕事でルワンダを訪れる知人に質問紙を託し、ルワンダ国内にあるろう学校で実施した。)  また、質問紙の設問には、ルワンダと英語を並列した形で記述し、その用紙に回答を直接記入するよう依頼した。  なお、質問紙に記載した中学部とは、セントガブリエルろう学校の敷地内に併設されている私立の中等学校のことを指す(詳細は 2.3.3 参照)。  調査期間:2020年 11月 18日  調査機関:セントガブリエルろう学校に勤務する教員  調査方法:質問紙調査  なお、本研究は筑波技術大学研究倫理委員会の審査を受け、承認を得た(2020年 1月)。 質問紙調査内容: 問 1:年代を教えてください。 問 2:性別を教えてください。 問 3:あなたはどのコースの教員ですか。 問 4:ろう学校では何年働いていますか。 問 5:あなたは何の教科を指導していますか。 問 6:今教えている学習指導の量はどうですか。 問 7:今教えている学習指導の質はどうですか。 問 8:小学部と職業訓練コースへの振り分けはどのように行なっていますか。 問 9:コース選択の方法はどうしていますか。 問 10:現在開講されている職業訓練コース設定やカリキュラムの内容についてどう考えていますか。 問 11:今のろう学校をさらに良くするためにはどんなことがあるといいとおもいますか。 問 12:生徒の就職を助けるためにあなたはどんなことをしていますか。 問 13:職業体験(インターンシップ)を導入したことがありますか。 問 14:あなたは就業体験(インターンシップ)を導入したですか。 問 15:インターンシップを導入したいと回答した理由はなぜですか。 問 16:インターンシップを導入したくないと回答した理由はなぜですか 問 17:国の福祉政策に関して政府に対して何か希望はありますか。 アンケート調査におけるそれぞれの回答概要を下記に示す。 Q1. 回答者のプロフィール Q1-1. 年齢別構成  35-44 歳が 5名、45-54歳が 6名 Q1-2. 性別  女性が 7名、男性が4 名であった。男女比は 2:1 という構成比になった。ろう学校の全教職員数 18名のうち 14名が女性で 4名が男性であるため、男性教員全員からの回答を得ることができた。 Q1-3 在籍コース構成比  小学部が 8名、職業訓練コースは 3名であった。中学部の教員は 15名であるが、今回の調査では中学部の教員の回答者は 0 名であった。 Q1-4 ろう学校での勤務歴  5 年未満が 1名、6〜10年が 3名、11〜20年が 6 名(白紙回答 1名) Q1-5 指導教科  小学部学習指導(一般教養)は小学部の教員 8 名(67%)によって指導されている。洋裁・編み物は職業訓練コースの教員 2 名(25%)、木工・建設系は同コースの教員 1 名(8%)によって指導されている。職業訓練コースでは、「洋裁・編み物」と「木工・建設系」を指導している。 Q2. ろう学校の教育に関する設問 Q2-1 学習指導の量 【問 6:今教えている学習指導の量はどうですか。】(択一回答) 指導している学習指導の量についての回答を図 17 に示す。 図 17:学習指導の量 (図) 「多すぎる」と回答したのは 4 名(36%)の教員、「ちょうどいい」と回答したのは 7 名(64%)、 「少ない」と回答した教員はいなかった。4 割の教員が「勉強量が多い」と感じていることが明らかとなった。 Q2-2 学習指導の質 【問 7:今教えている学習指導の質はどうですか。】(択一回答) 指導している学習指導の量についての回答を図 18 に示す。 図 18:学習指導の質 (図) 「難しい」と回答した教員は 6 名(55%)、「ちょうどいい」と回答したのは 5 名(45%)、「やさしい」と回答したのは 0 名であった。勉強が難しいと感じている教員と、ちょうどいいと感じている教員がほぼ同じ割合であるということが明らかとなった。 Q2-3 小学部と職業訓練コースへの生徒の振り分け方法について 【問 8:小学部と職業訓練コースへの振り分けはどのように行なっていますか。】(択一回答) 小学部や中学部で一般教養を学ぶ”小学部”と、職能を獲得する ”職業訓練コース”への生徒の振り分け方法に関する回答を図 19 に示す。 図 19:小学部(一般教養)と職業訓練コースへの生徒の振り分け方法 (図) 「本人や保護者の希望」と回答した教員は 3 名(27%)。「学力等により判断する」と回答したのは 8 名(73%)であった。およそ 7 割の教員が生徒のコースを振り分ける際、生徒の学力等により判断していると回答した。 本人や保護者の希望を選択した教員はその理由を、「生徒と両親のニーズを聞く時間を作る」や、「私は彼らの望みに応えるために働いている。」などと述べていた。  また、学力等により判断すると回答した教員の理由を示す記述の中には、「小学部の学習に適応していける生徒とその他は職業訓練コース」、「生徒がインクルーシブ教育に適応できるかどうか、特別支援教育を続けるべきかどうかを確認する」、「生徒が幼稚部の授業に適応できなかった場合、学年を上がる時により困難になるから」、「中等学校や大学に可能な限り行くことができるように支援する。中等学校に行けない人は、彼らを助けるスキルを学ぶために職業訓練に参加するべき。」など、生徒の学力によってクラスを小学部と職業訓練コースに振り分けるのは、一般学校でのインクルーシブ教育に耐えうる学力があるかどうかを判断基準として振り分けているということが認められた。  そのほかには、「ろう生徒は、通常のクラスでは困難に直面することもあるが、職業訓練コースではパフォーマンスが向上する場合がある」という意見や、「将来、子どもが自分自身をサポートするのを助ける」、「生徒がその学習を好きであり、今後利益をもたらすかどうか」など、職業訓練コースの役割について述べている意見や、「年齢が高い生徒は成績が低い」という現状を示す意見もあった。  これらの記述から、教員らは生徒や保護者の意見は聞く時間を設けるものの、基本的には生徒の学力に合わせて、一般学校で勉強するか職業訓練コースで職能を学ぶ方がその生徒にあっているのかということを判断して、コースの振り分けを行なっているということが明らかになった。 Q2-4 職業訓練コースのコース選択方法について 【問 9:コース選択の方法はどうしていますか。】(択一回答) 職業訓練コースにおける科目選択の方法に関する回答を図 20 に示す。 図 20:職業訓練コースの勉強科目の選択方法 (図)  「本人や保護者の希望」と回答した教員は 1 名(9%)、「適性(向き不向き、器用さ)」と回答した教員は 8 名(73%)で、「性別や障害の程度」と回答した教員は 2 名(18%)であった。本人や保護者の希望よりも適性を重要視して振り分けていることが認められた。 Q2-5 コース設定やカリキュラム内容 【問 10:現在開講されている職業訓練コース設定やカリキュラムの内容についてどう考えていますか。】(択一回答) 現在開講されている職業訓練コースのカリキュラム内容の適切さに関する回答を図 21-1 に示す。 図 21-1:コース設定やカリキュラム内容の適切さ (図)  「適切である」と回答した教員は 6 名(55%)、「改善の余地がある」と回答した教員は 5 名 (45%)であった。  カリキュラムの満足度は、約半分に意見が分かれる結果となった。  主な記述では、改善の具体的な内容について、「ろう・難聴者のトレーニングにはプロジェクターとインターネットが必要」、「十分なツール(機械や資格証明書)を揃える」などのハード面について追加で必要なものを述べる記述や、授業科目の充実について「溶接・縫い物・理容の科目を増やす」という記述があった。そのほかに「社会の中の人々に雇用の機会を提供する」や「インターンシップや職場訪問」など、雇用に関することを述べている教員がいた。  図 21-2 では、勤続年数がどのように回答に影響を与えるのかを知るために、問 4 の着任期間と問 10 の問題意識の設問間の相関を調査した。 図 21-2:勤続年数とコース・カリキュラム内容への意見 (図)  在職期間が6年以上の教員は、その半数が“改善の余地がある”と回答していることから、勤務年数が増えるに連れ、現在開講されている職業訓練コース設定やカリキュラムの内容に改善の余地があると考えるようになるということが窺える。  なお、回答数が非常に少ないため、当該校の組織・教育方針や教員個人の考え方の違いにより、この結果が妥当であるかは、現段階では結論付けらず、調査人数を増やした追加調査が必要であると考える。 Q2-6 ろう学校の改善案 【問 11:今のろう学校をさらに良くするためにはどんなことが考えられますか。】(複数回答) 学校に求める改善案の内容を図 22-1 に示す。 図 22-1:学校に求める改善案 (図) 提示した選択肢は下記の通りである。 施設や設備の充実 教職員の人数と質 再教育の機会(スキルアップ) 就職担当係の設置 職業開拓や職業斡旋をしてあげたほうがいい ろう・難聴者の就労に適したカリキュラムの開設 その他  「教職員の人数と質」と回答したのが 7 名(33%)、「ろう・難聴者の就労に適したカリキュラムの開設」も同様の 7 名(33%)、「施設や設備の充実」が 5 名(24%)、「教員への再教育の機会」が 2 名(10%)となった。なお、「就職担当係の設置」、「職業開拓や職業斡旋」と回答した教員はいなかった。  「溶接・縫い物・美容(の新設)」を望む声や、「十分なツール(機械・サティフィケート)を揃える。インターンシップや、職場訪問など」という意見や、「彼らがコミュニティで成長するのを助けるためにワークショップをおこなう」など、新しく導入したいカリキュラムの提案などについての意見があった。その中で、「ろう学校がうまくいくためには、最新の教材を備えた十分な設備と教師(プロの手話教師)が必要である」という意見があり、高い手話スキルを持った専門性を身につけた教員も同時に必要とされているということが見られた。  この設問に関しては、職業訓練コースの教員がどのように回答したのかを深化するために同コースの教員の回答を分析した。その内容を図 22-2 に示す。 図 22-2:職業訓練コース教員の学校に求める改善案 (図)  職業訓練コースの教員の結果を見ると、3 名中 3 名全員が「ろう・難聴者の就労に適したカリキュラム開設」と「教職員の人数と質」の 2 つを選択しているというということが明らかになった。 Q3. 就労移行支援に関する設問 Q3-1 就活への支援内容 【問 12:生徒の就職を助けるためにあなたはどんなことをしていますか。】(複数回答) 生徒の就職のために行なっている取り組みについての結果を図 23-1 に示す。 図 23-1:就活への支援内容 (図) 提示した選択肢は下記の通りである。 授業の中で職業を紹介する 就業体験(インターンシップ)を推進 職業開拓 特にやっていない その他  「就業体験(インターンシップ)を推進している」と回答した教員は 8 名(73%)。「授業の中でどのような職業があるのかを紹介している」と回答したのは 2 名(18%)、「特にやっていない」と回答したのは 1 名(9%)、「職業開拓を自分が行なっている」と回答した教員はいなかった。  記述では、「彼らに職業技能を教えるとき、学校を卒業した後の助けになるので、私は彼らにそれを上手く、速くすることを勧めている(裁縫など)。」と授業の中の工夫について述べている教員がいた。  図 23-2 では、小学部と職業訓練コースで行なっている就労移行支援に違いがあるのか、その回答をコース別に知るためにコースごとに回答のクロス集計を行なった。 図 23-2:コースごとの就労移行支援内容 (図)  小学部コースの教員 8 名のうちの 1 名を除き、小学部・職業訓練コースの教員ともに、授業の中で職業を紹介するか、就業体験を推進するという形で就労移行支援を行なっているという回答が得られた。コースによるその回答の結果に大きな差は見られなかった。 Q3-2 インターンシップの経験 【問 13:職業体験(インターンシップ)を導入したことがありますか。】(択一回答) 今までに、インターンシップを導入したことがあるか、という問いに対する結果を図 24 に示す。 図 24:インターンシップ導入の経験 (図)  「インターンシップを導入した経験がある」は 6 名(55%)。「インターンシップを導入した経験がない」は 5 名(45%)となった。インターンシップ導入経験の有無は約半数ずつに分かれる結果となった。  「インターンシップを導入した経験がある」と回答した教員のコース別の内訳は、5 名中 4 名が小学部の教員、そのうち 1 名が職業訓練コースの教員であった。 Q3-3 インターンシップ導入の希望 【問 14:あなたは就業体験(インターンシップ)を導入したいですか。】(択一回答) インターンシップ導入の希望についての結果を下記の図 25-1 に示す。 図 25-1:インターンシップ導入の希望 (図)  「インターンシップを導入したい」と答えたのは 9 名(82%)、「インターンシップの導入をしたくない」と答えたのは 1 名(9%)、「分からない」という回答は 1 名(9%)という割合になった。  問 13 でインターンシップ導入経験があると回答した教員は、またインターンシップを導入したいと考えるのか、について導入経験の有無と希望について調査したものが図 25-2 である。 図 25-2:インターンシップ導入経験と導入希望の相関 (図)  インターンシップを導入した経験のある教員は 6 名で、6 名全員がインターンシップを導入したいと回答した。インターンシップの導入経験のない教員は 5 名で、そのうち 2 名は「やらせたくない」「分からない」と回答した。  インターンシップ導入を過去に経験した教員は全員が導入を希望するということが明らかになった。 Q3-4 インターンシップ導入を希望する理由 【問 15:インターンシップを導入したいと回答した理由はなぜですか。】(択一回答) アンケート調査に回答した問 14 でインターンシップを導入したいと選択した教員の中で、導入したいと思う理由についてその理由の回答の構成比を下記の図 26 に示す。 図 26:インターンシップの導入を希望する理由 (図) 提示した選択肢は下記の通りである。 生徒の今後のキャリア(職業選択)に活かせそうだから 普段の勉強に活かせるから 学校で学べない経験が体験できるから その他  「普段の勉強に活かせるから」と回答した教員が 6 名(60%)と最も多く、「生徒の今後のキャリアに活かせそうだから」という回答は 4 名(40%)となった。「学校で学べない経験ができるから」と回答した教員はいなかった。  インターンシップ導入を希望する理由は、今後のキャリアや普段の勉強に活かせるという理由が約半数ずつを占めているということが見られた。 Q3-5 インターンシップ導入を希望しない理由 【問 16:インターンシップを導入したくないと回答した理由はなぜですか】(択一回答) 問 14 で「インターンシップを導入したくない」と回答した理由について図 27 に示す。 図 27:インターンシップ導入を希望しない理由 (図) 提示した選択肢は下記の通りである。 生徒の今後のキャリア(職業選択)に役に立たないから 普段の勉強に活きないから 学校の勉強がもっと大事だと思うから カリキュラムに時間的余裕がないから インターンシップの導入に手間がかかるから  回答した 3 名の中で、「インターンシップの導入に手間がかかるから」と回答したのは 2 名 (67%)で、「カリキュラムに時間的余裕がないから」と回答したのは 1 名(33%)、「生徒の今度のキャリア(職業選択)に役に立たないから」、「普段の勉強に活きないから」、「学校の勉強がもっと大事だと思うから」と回答した教員はいなかった。  記述では、「現在のレベルでは彼らはインターンシップを開始していないから。」と現行のカリキュラムでインターンシップが組み込まれていないということを理由に、インターンシップの導入を希望しないと述べる記述があった。 Q4. 国の福祉政策に関する要望 【問 17:国の福祉政策に関して政府に対して何か希望はありますか。】(複数回答あり) 国の福祉政策への要望についての回答を図 28-1 に示す。 図 28-1:国の福祉政策への要望 (図) 提示した設問は下記の通りである。 インクルーシブ教育を進めて欲しい(ろう生徒が普通校へ進学する機会を増やして欲しい) ろう学校の学費に対して配慮してあげたい ろう学校間の情報共有・情報交換・勉強会などの実施、推進 法律面で障害者の雇用を促進して欲しい 終業後のコミュニケーション支援など働きやすい環境づくりを改善して欲しい ろう・難聴者のための職業訓練校(高等教育)を開設して欲しい その他  最も回答数が多かったのは、「インクルーシブ教育を進めて欲しい(ろう生徒が普通校へ進学する機会を増やして欲しい)」が 7 名(39%)となった。その次は「法律面で障害者の雇用を促進して欲しい」が 4 名(22%)、「ろう学校の学費に対して配慮してあげたい」が 3 名(17%)、「ろう学校間の情報共有・情報交換・勉強会などの実施、推進」が 2 名(11%)。「ろう・難聴者のための職業訓練校(高等教育)を開設してほしい」は 1 名(5%)であった。「就業後の職場環境改善に関する要望」 は回答者がいなかった。  その他と選択した教員の記述は、「ろう者にとって必要なものなので、6 つすべてを提供するよう政府に要請したいと思う。」とその全てが必要であるとする意見が述べられていた。 図 28-2 では、着任年数がどのように回答に影響を与えるのかを知るために、問 4 の着任期間と問 17 の国の福祉政策への要望の設問間の相関を調査した。 図 28-2:着任年数別国の福祉政策に対する要望 (図)  着任年数が 5 年未満の教員 1 名はインクルーシブ教育の推進を選択した。6〜10 年教員はインクルーシブ教育推進の回答が 2 名、ろう学校の学費に対する配慮に関する回答が 1 名、ろう学校間の情報共有などに関する回答が 1 名となった。11〜20 年のベテラン教員の回答はさらに細分化し、インクルーシブ教育推進が 4 名、学費に対する配慮が 2 名、ろう学校間での情報共有に関する 回答が 1 名、ろう・難聴者のための職業訓練校(高等教育)の開設が 1 名、その他に回答した教員は「ろう者にとって必要なものなので、6 つすべてを提供するよう政府に要請したい。」と回答した。  以上の結果から、着任年数が長い教員は、短い教員に比べて、国の福祉政策に要望する内容が多種に渡ることが明らかになった。  また、インクルーシブ教育の推進にあたっては、経験年数にかかわらず、その必要性が求められている。このような回答になった理由を改めて何人かの教員に追加で聞いたところ、「生徒を一般の学校に送りたい、と考えて回答をした教員は、ルワンダの社会に早く生徒を統合させたいと考えたためだと思う。」という回答を得た。詳しくは次章の考察で詳しく述べる。 2.9.2 教員への調査結果のまとめ  ろう学校小学部・職業訓練コースの合計 18 名のうち 11 名から回答を得た。年代の構成は 35~ 44 歳と 45~54 歳が約半数ずつの割合であり(問 1)、ろう学校の全教職員数 18 名のうち 14 名 が女性で 4 名が男性であるため、男性教員全員からの回答を得ることができた(問 2)。  18 名の教員のうち 12 名が小学部、6 名が職業訓練コースの教員であった。そのうち、回答を得たのは、小学部 8 名、職業訓練コース 3 名であった(問 3)。  日本の公立のろう学校の場合は、澤によると聴覚特別支援学校の人事異動が 3〜5 年と短く、専門性の維持が困難な状況にあることが示唆されているが(澤 2019)、今回アンケート調査で回答を得たルワンダのろう学校では、勤続年数 11 年〜20 年ものベテラン教員が 4 名いることが明らかになった(問 4)。  職業訓練コースでは、「洋裁・編み物」と「木工・建設系」を指導しているということが確認された (問 5)。  勉強の量と質では、「量が少ない」と「内容が易しい」と回答した教員はいなかった。(問 6・問 7) 職業訓練コースのカリキュラム内容の適切さは、「適切である」「改善の余地がある」と約半数ずつに意見が分かれる結果となった(問 10)。  改善提案に関する記述では、必要機材についての記述や新設コースの案、インターンシップの導入などについて言及されていた。  また、着任年数が 5 年以上になると、約半数以上がカリキュラムへの改善の余地があると考える教員が増えるようになることが明らかになった(図 20-2)。  小学部と職業訓練コースの振り分け方法は、学力等により判断されるという場合が多いということが分かり、コースの内容は「生徒本人の適性(向き・不向き)」や「性別や障害の程度(例:男女・重複障害)」などによって決められている場合が多いということが確認された(問 8・問 9)。教員らは生徒や保護者の意見は聞く時間を設けるものの、基本的には生徒の学力に合わせて、一般学校で勉強するか職業訓練コースで職能を学ぶ方がその生徒にあっているのかということを判断してコースの振り分けを行なっているということが明らかになった。  生徒の就職のために行なっている指導内容の中で、「就業体験(インターンシップ)を推進している」と回答した教員が最も多く、「職業開拓を自分が行なっている」と回答した教員はいなかった(問 12)。コースによる回答の結果に大きな差は見られなかった(図 22-2)。  インターンシップ導入経験の有無は約半数ずつに分かれる結果となり(問 13)、導入の希望は、約 8 割の教員が「導入したい」と回答した(問 14)。  インターンシップ導入を希望する理由は、「普段の勉強に活かせる」が 6 割、「今後のキャリアや普段の勉強に活かせる」という理由が 4 割を占め、「学校で学べない経験ができるから」と回答した教員はいなかった(問 15)。  また、導入を希望しない理由では、「インターンシップの導入に手間がかかるから」と「カリキュラム に時間的余裕がないから」という回答を得た(問 16)。  インターンシップ導入を過去に経験した教員は全員が再度導入を希望するということが明らかになった(問 14)。  学校に求める改善案の中で、「教職員の人数と質」、「ろう・難聴者の就労に適したカリキュラムの開設」が最も多く、一方で「就職担当係の設置」、「職業開拓や職業斡旋」と回答した教員はいなかった。(問 11)  職業訓練コースの教員の結果を見ると 3 名全員が「ろう・難聴者の就労に適したカリキュラム開設」と「教職員の人数と質」の 2 つを選択しているというということが明らかになった(図 21-2)。  国の福祉政策に関する要望で最も回答数が多かったのは、「インクルーシブ教育を進めて欲しい(ろう生徒が普通校へ進学する機会を増やして欲しい)」が 4 割であった(問 17)。  着任年数が長い教員は、短い教員に比べて、国の福祉政策に要望する内容が多種に渡ることが明らかになった(図 27-2)。 2.9.3 質問紙調査結果 - 生徒  2020 年 11 月 18 日に、ルワンダのろう学校1校(セントガブリエルろう学校)、および同ろう学校の敷地内にある別の中学校に質問紙調査を依頼した。 その結果、152 名中 60 名の生徒から回答が得られた。(筆者はコロナ禍で渡航がかなわなかったが、仕事でルワンダを訪れる知人にアンケート用紙を託し、ルワンダのろう学校で実施した。)  また、質問紙の設問には、ルワンダ語と英語を並列した形で記述し、その用紙に回答を直接記入するよう依頼した。なお、必要な箇所は筆者が文章の横にイラストを描き、設問内容をわかりやすくした(参考資料5にイラスト付きの質問用紙を添付した)。  また、質問紙に記載した中学部とは、セントガブリエルろう学校の敷地内に併設されている私立の中等学校のことを指す(詳細は 2.3.3 参照)。 調査期間:2020 年 11 月 18 日 調査機関:セントガブリエルろう学校で学ぶ児童・生徒 調査方法:質問紙調査 質問紙調査内容: 問 1:年代を教えてください。 問 2:性別を教えてください。 問 3:あなたはどのコースの生徒ですか。 問 4:あなたは学校で何を学んでいますか。 問 5:学校の勉強の量はどうですか。 問 6:学校で学んでいる勉強の質はどうですか。 問 7:今、勉強していることを将来の仕事にしたいですか。 問 8:仕事を得るためにどんなことが必要だと思いますか。 問 9:職業体験(インターンシップ)という言葉をきいたことがありますか。 問 10:あなたはインターンシップをやったことはありますか。 問 11:あなたはインターンシップをやってみたいですか。 アンケート調査におけるそれぞれの回答概要を下記に示す。 Q1 回答者のプロフィール Q1-1. 年代別構成 【問 1:年代を教えてください。】(択一回答) アンケート回答を得た生徒の年代別構成を図 29-1 に示す。 図 29-1:年代別構成 (図)  年代は、7~9 歳が 1 名(2%)、10~12 歳が 5 名(8%)、13~17 歳 20 名(34%) 、18~24 歳が 32 名(54%)25~34 歳が 1 名(2%)であった。 図 29-2:年齢とコースの関係 (図)  7 歳〜12 歳までの年齢のコース別の割合は、6 名中 5 名が小学部で、1 名のみ職業訓練コースという内訳になった。13 歳〜17 歳では、21 名中 10 名が一般教養を学ぶコースである小学部と中学部、12 名が職業訓練コースと約半分ずつの割合になった。18 歳〜24 歳は、12 名が一般教養コースで、20 名が職業訓練コースとなり、職業訓練コースの人数の割合が多いということが見られた。25〜34 歳の生徒も 1 名職業訓練コースに在籍しているということが見られた。  以上の結果から、職業訓練コースに在籍している生徒の年齢層が高くなっているということが明らかになった。 Q1-2. 性別 【問 2:性別を教えてください。】(択一回答) 生徒の性別構成を図 30 に示す。 図 30:性別の構成 (図)  人数は女性が 28 名(47%)、男性が 31 名(53%) 、男女比は、ほぼ同じであった。 Q1-3 在籍コース構成比 【問 3:あなたはどのコースの生徒ですか。】(択一回答) 在籍コースの構成比を図 31 に示す。 図 31:在籍コース (図)  小学部が 18 名(30%)、中学部が 8 名(14%)、職業訓練コースが 33 名(56%)から回答を得た。 Q1-4 学んでいる科目 【問 4:あなたは学校で何を学んでいますか。】(複数回答) 生徒の学んでいる科目の構成比を図 32 に示す。 図 32:学んでいる教科 (図)  「一般教養」と回答した生徒は 24 名(35%)、「洋裁・編み物」24 名(35%)、「木工・建設」18 名 (26%)、「繊維・インテリアデザイン系」3 名(4%)であった。 Q2 ろう学校の教育に関する設問 Q2-1 勉強の量 【問 5:学校の勉強の量はどうですか。】(択一回答) 学校の勉強量についての回答を図 33-1 に示す。 図 33-1:勉強の量 (図)  「ちょうどいい」と回答したのは 29 名(48%)の生徒、「少ない(もっと勉強したい)」と回答したのは 24 名(40%)、「多すぎる」と回答したのは 7 名(12%)であった。約 5 割の生徒が現在の勉強量は「ちょうどいい」と感じている一方、4 割の生徒がその勉強量では不十分で「もっと勉強したい」 と感じていることが明らかになった。 次に、勉強量について得られたデータをコース別に集計したものを図 33-2 で示す。 図 33-2:勉強の量 (図)  「学習の量が多い」と回答したのは全て小学部の生徒であった。「ちょうどいい」28 名の中の内訳は、小学部:5 名、中学部:8 名、職業訓練コース:15 名。「少ないは」、23 名中、小学部:5 名、 中学部:0 名(全員ちょうどいいに回答)職業訓練:6 名であった。  「多い」と感じていると回答をしたのは小学部のみであり、中学部全員は「ちょうどいい」と回答していたことから、一般教養(小学部・中学部)のなかでは、学年が上がるほど、量が多いと感じる生徒がいなくなるということが明らかになった。一般教養のコースと比べて、職業訓練コースの生徒は勉強の量が少ないと回答する生徒が多いということが明らかになった。 Q2-2 勉強の質 【問 6:学校で学んでいる勉強の質はどうですか。】(択一回答) 現在学校で学んでいる勉強の質についての回答を図 34-1 に示す。 図 34-1:勉強の質 (図)  「ちょうどいい」と回答したのは 28 名(46%)の生徒。「難しい」と回答したのは 23 名(39%)で、「簡単(もっと難しいものがやりたい)」と回答したのは 8 名(14%)であった。  約 5 割の生徒が勉強の質について「ちょうどいい」と感じていることに対し、約 4 割が「難しい」と感じていることが見られた。 次に、勉強の質について得られたデータをコース別に集計したものを図 34-2 で示す。 図 34-2:勉強の質 (図)  勉強の質に関しては、小学部は「普通」が最も多く 8 名、「難しい」が 5 名、「簡単」が 4 名であった。中学部は「普通」が最も多く 8 名、「難しい」が 3 名、簡単が 1 名で、職業訓練コースは「普通」と「難しい」が同数で 16 名ずつ、「簡単」が 2 名となった。職業訓練コースの生徒は他のコースに比べて、勉強が難しいと感じている生徒の割合が若干高いということが認められた。 Q3 仕事について Q3-1 将来の仕事について 【問 7:今、勉強していることを将来の仕事にしたいですか。】(択一回答) 今学校で学んでいることを将来の仕事にしたいかどうかについて得られた回答を図 35 に示す。 図 35:今、勉強していることを将来の仕事にしたいですか。 (図)  「はい」と回答したのは 51 名(89%)の生徒、「他の仕事をしてみたい」と回答したのは 3 名 (5%)、「いいえ」と回答したのは 2 名(4%)、「分からない」と回答したのは 1 名(2%)であった。  約 9 割の生徒が今学校で学んでいる内容を将来の仕事にしたいと考えていることが見られた。  主な記述では、「うまくできると思うから」「エキスパートになれるだろうから」や「持っている技術を最大化できるから」など自分の将来についてのイメージについて言及するものや、「好きだから」「今勉強していることは私の幸せだから」など現在学んでいる内容への考えを述べる記述があった。「知識があるから」と記述した生徒が最も多く、そのほかに「お金を稼いでたくさん物を買いたい」と記述した生徒もいた。 【問 8:将来どんな仕事をしたいですか。】(自由記述)  自由記述形式で、将来就きたい仕事の希望について質問した得られた記述を所属コースごとに概観すると、そのレパートリーに大きな違いが見られた。 小学部 ・自営業・ホテル・校長(Head Teacher)・空港職員・教師:2 名・大工:2 名・運転手・パイロット・車関係の仕事・エンジニア 中学部 ・看護師・電気技師・銀行職員・貿易・テイラーの教師・TVETの教師・牛の飼育・機械技師 職業訓練コース ・テイラー:12 名・理容師・大工:11 名・ホテル:2 名 Q3-2 就職に際して必要だと思うこと 【問 9:仕事を得るためにどんなことが必要だと思いますか。】(複数回答あり) 仕事を得るためにどんなことが必要であると考えるかについて得られた回答を図 36-1 に示す。 図 36-1:就職に際して必要だと思うこと (図) 提示した設問は下記の通りである。 どんな仕事があるか知りたい まずは現場で働いてみたい もっと勉強して知識をつけたい 何をしたらいいか分からない  「もっと勉強して知識をつけたい」と回答したのは 45 名(74%)の生徒、「どんな仕事があるか知りたい」と回答したのは 15 名(24%)、「まずは現場で働いてみたい」と回答したのは 1 名(2%) 、「何をしたらいいか分からない」と回答した生徒はいなかった。  7 割以上の生徒が学校で「もっと勉強をして知識をつけたい」と考えているということが明らかになった。 さらに、コースごとにこの回答にはどのような違いがあるのかその相関を示した図が図 36-2 である。 図 36-2:就職に際して必要なこと (図)  小学部は「もっと勉強して知識をつけたい」と「どんな仕事があるか知りたい」の回答が 9 名で半数ずつであった。中学部は 8 名全員が「もっと勉強して知識をつけたい」と回答し、職業訓練コースは「もっと勉強して知識をつけたい」が 28 名、「どんな仕事があるか知りたい」が 6 名、「まずは現場で働いてみたい」が 1 名という回答になった。  職業訓練コースの生徒の中の 80%の生徒が「もっと勉強して知識をつけたい」と回答し、「どんな仕事があるのか知りたい」と回答した生徒はわずかであった。このことから大部分の生徒がもっと勉強したいと感じているということが明らかになった。小学部では「どんな仕事があるか知りたい」と「もっと勉強して知識をつけたい」の回答が半数ずつとなったが、中学部では全員が「もっと勉強して知識をつけたい」と回答した。  以上のことから、コース別に就職に際して必要だと思うことに大きな差異は認められなかった。 Q4. インターンシップについて Q4-1 インターンシップという言葉の認識 【問 10:職業体験(インターンシップ)という言葉をきいたことがありますか。】 ※インターンシップとは学校の外で就業体験(Work experience)をすること インターンシップという言葉の認識について得られた回答を図 37 に示す。 図 37:インターンシップという言葉をきいたことがあるか (図)  「きいたことがない」と回答した生徒は 40 名(78%)、「きいたことがある」と回答した生徒は 11 名(22%)であった。約 8 割の生徒がきいたことがないと回答した。 Q4-2 インターンシップ経験の有無 【問 11:あなたはインターンシップをやったことはありますか。】 インターンシップ経験の有無について得られた回答を図 38-1 に示す。 図 38-1:インターンシップ経験の有無 (図)  インターンシップを「やったことがない」と回答したのは 47 名(78%)で、「やったことがある」と回答したのは 13 名(22%)であった。 約 8 割の生徒がインターンシップを経験したことがないと回答したことが明らかになった。    しかし、実際にインターンシップを経験した生徒は、そのインターンシップの効果をどのように感じているのか、インターンシップを経験した 12 名が「インターンシップを行いたいかどうか」について回答した結果が図 38-2 である。 図 38-2:インターンシップを行いたいかどうか (図)  インターンシップを経験した 12 名の回答者の約 7 割が「やりたくない」と回答し、約 3 割が「やりたい」と回答した。  結果、インターンシップを経験した生徒の多くは、インターンシップをもう一度行いたいと考える生徒が少ないということが明らかになった。 Q4-3 インターンシップへの興味 【問 12:あなたはインターンシップをやってみたいですか。】 インターンシップに興味があるかどうかについて得られた回答を図 39-1 に示す。 図 39-1:インターンシップへの興味 (図)  「やってみたい」と回答をした生徒は 32 名(54%)、「やってみたくない」と回答をしたのは 14 名 (23%)「分からない」と回答したのは 14 名(23%)であった。  「やってみたい」と回答をした生徒の記述では、「学んでいることをより理解するために」「今学んでいる内容をもっと学びたいから」など、今の学習と関連つけているものや、「知識をもっとつけたいから」「経験を積むため」「経験により技術を身につけるため」「エキスパートになるために」など、より経験や知識をつけたいとするもの、その他に「情報をもっと手に入れるために」「仕事がどういうものなのかを勉強するために」など新たに仕事に関しての情報を得るためにインターンシップに参加したいとする回答があった。  一方で、「やってみたくない」と回答をした生徒の記述では、「難しいから」「今はインターンを行う時期ではないからその時期を待っている。」という回答があった。  そこで、コースごとにこの回答の内訳がどのようになったのかを合わせて調査した。在籍コースとインターンシップへの興味の相関を図 39-2 にて示す。 図 39-2:在籍コースごとのインターンシップ導入の希望 (図)  小学部の生徒は「希望する」と回答した生徒が 7 名、「希望しない」と回答した生徒が 11 名で、「希望しない」と回答した生徒が多かった。  中学部では、「希望する」と回答した生徒が 7 名、「希望しない」と回答した生徒が 1 名で「希望する」と回答した生徒が多かった。  職業訓練コースの生徒は、「希望する」と回答した生徒が 18 名、「希望しない」と回答した生徒が 2 名、「分からない」と回答した生徒が 14 名で、「希望する」と回答した生徒は「希望しない」と回答した生徒の数を上回っているものの、小学部・中学部では選択されることがなかった「分からない」と回答した生徒がとりわけ多かった。  一般教育コース(小学部・中学部)と職業訓練コースを比較してみると、一般教養コースは「希望する」が 14 名、「希望しない」が 12 名とほぼ半数ずつ回答が割れる結果となったが、職業訓練コースは「希望する」が 18 名、「希望しない」が 2 名と 9:1 の割合で「希望する」と回答した生徒が多いということが見られた。  しかし、「分からない」と回答した生徒は 14 名で、「希望する」とほぼ同数の回答数であったことから、職業訓練コースの生徒が一般教養コースの生徒に比べてインターンシップの導入を強く希望しているという訳ではないということが明らかになった。 さらに、インターンシップという言葉の認識【問 9:職業体験(インターンシップ)という言葉を聴いたことがありますか。】の設問では、約 8 割の生徒が「インターンシップという言葉について聴いたことがない」と回答していた。すなわち、インターンシップへの認識が広まっていないという可能性があるとも考えられる。 2.9.4 生徒への調査結果のまとめ  年代別構成は、“2.2.3 学校教育現場に在籍する生徒数とその割合”で述べた世代別の学習参加率では、7~12 歳が47%、13~18 歳が 34%、19~23 歳が 8%という割合が示されていたが(図 4 参照)、今回の調査の 60 名から得られた回答では、18~24 歳が 53%、13~17 歳が 35%であったことから、『ろう学校で学ぶ児童・生徒の年齢は、一般の学校で学ぶ児童・生徒よりも年齢が高めである』可能性がある(問 1)。また、ろう学校の職業訓練コースに在籍している生徒は、一般教養のコースの生徒に比べて、年齢層が高くなっているということが明らかになった(図 29-2)。 図 4:年齢別の就学者数:2017 ルワンダ教育省教育統計の本文を参照し、筆者作成 (図)  ろう学校の職業訓練コースは洋裁・編み物(女子)と木工・建設系(男子)で授業が構成されていたことを再確認することができた。これは、筆者の 2 年間の活動経験と、2019 年の訪問時と変わっていない。女性は洋裁・編み物コース、男性は木工・建設コースを学んでいるということが分かり、性別構成は約半分ずつであった(問 2・問 4)。  勉強の量は、約 5 割の生徒が現在の勉強量は「ちょうど良い」と感じている一方で 4 割の生徒がその勉強量では不十分で「もっと勉強したい」と感じていることが確認された。(問 5)  「多い」と感じていると回答をしたのは小学部のみであり、中学部全員は「ちょうどいい」と回答していたことから、一般教養(小学部・中学部)のなかでは、学年が上がるほど、量が多いと感じる生徒がいなくなるということが明らかになった。一般教養のコースと比べて、職業訓練コースの生徒は勉強の量が少ないと回答する生徒が多いということが見られた(図33-2)。  勉強の質に関しては、約 5 割の生徒が勉強の質について「ちょうどいい」と感じていることに対し、約 4 割が「難しい」と感じていることが明らかになった(問 6)。 また、職業訓練コースの生徒は他のコースに比べて、勉強が難しいと感じている生徒の割合が若干高いということが認められた(図 34-2)。  約 9 割の生徒が、今学校で学んでいる内容を将来の仕事にしたいと考えていることが確認された。その理由としては、自分の将来のイメージについて「うまくできると思うから」などと言及するものや、「今勉強している内容が好きだから」や、それに対して「知識があるから」と回答した生徒が多くいた(問 7)。  就職に際して必要だと思うことに関しての回答では、7 割以上の生徒が学校でもっと勉強をして知識をつけたいと感じているということが明らかになった(問 9)。  コース別に就職に際して必要だと思うことに大きな差異は認められなかった(図 36-2)。  インターンシップについての質問では、インターンシップを「聞いたことがない」と答えた生徒は全体の約 8 割を占め、「聞いたことがある」と回答した生徒は全体の約 2 割に留まった(問 9)。  また、インターンシップの経験の有無に関しても同様に、インターンシップの「経験がない」生徒は全体の約 8 割、「経験がある」生徒は全体の約 2 割であった。(問 10)  インターンシップの興味に関する回答では、「やってみたい」「やってみたくない」「分からない」と回答は 3 分化し、「やってみたい」が約半数の 50%、「やってみたくない」もしくは「分からない」が合計で約半数を占める結果となった。(問 11)  インターンシップを経験した生徒の多くは、インターンシップをもう一度行いたいと考える生徒が 少ないということが明らかになった(図 37-2)。 2.9.5 教員と生徒の集計結果  教員と生徒に同様の質問を行なった結果、得た回答を下記に示す。  指導内容の質において、教員は「難しい」と回答した者が 6 割、「普通」が 4 割で、「易しい」と回答した者はいなかった(問 6)。  一方で職業訓練コースの生徒は、勉強の質は「難しい」と「普通」が約半数ずつで、「簡単」と回答した生徒は 2 名と少数であった(問6)。  質に関しての見解は教員・生徒共に似たような回答結果で多くが「難しい」と回答した。教員は、指導内容の量を「多い」と回答した者が 4 割、「普通」が 6 割で、「少ない」と回答した者はいなかった。一方で、職業訓練コースの生徒が感じている勉強の量は、「少ない」と「普通」が半数ずつであり、  教員が指導している量を「多い」と感じていても、生徒は「少ない」と考えているということが明らかになった。(問 5)  小学部(一般教養)と職業訓練コースへの生徒の振り分け方法は、生徒や保護者の意見を聞くものの、基本的には生徒の学力によって判断しているということが明らかになった。 問 7 の「今学んでいることを将来の仕事にしたいですか。」という問に対して「はい」と回答した生徒が全体の約 9 割という結果から,学力によってコースは判断されてしまうにもかかわらず、生徒自身は振り分けられたコースが自分に合っていると満足している人数が多い,ということが明らかになった。  就職に際しての設問では、教員は、約 7 割が「就業体験を推進している」と回答していることに対し、生徒の「まずは現場で働いてみたい」と回答したのはわずか 1 名(2%)であった。生徒の約 9 割 がそれよりも「学校でもっと勉強したい」と考えていることが確認された。  インターンシップについては、教員の 7 割が授業で「授業の中でインターンシップを推進している」 と回答していたが、生徒の中でインターンシップについて「聞いたことがある」と回答したのは 2 割で、「聞いたことがない」と回答したのは約 8 割であった。  また、約 5 割の生徒の約 5 割が「やってみたい」と回答したことに対し、残りの半数は、「やってみたくない」「分からない」と消極的な回答をしていることが確認された。  自由記述では、「やってみたくない」と回答した生徒のうち 15 名が、その理由を「難しいから」と記述していることから、教員の 7 割が授業で推進している就業体験を、生徒はその意味を理解していないか、または難しいものであるという印象を与えている可能性が示唆される。 第3章 考察 3.1 考察  本項では、ろう学校職業訓練コースにおいて、就労移行支援のあり方について考える上で、まず生徒たちの意識について取り上げる。  将来なりたい職業について得た回答結果では、選択する職域の差がコースごとに大きく異なることが認められた(問 7)。小学部・中学部の生徒は「空港職員」「エンジニア」「看護師」「TVETの教師」など様々な種類の職業を回答するなど職業選択の幅が広かった。以前ろう学校の生徒と話をしている時のことを思い返すと、当時中学校 1 年の女子の 4 人中 4 人 は「医者になりたい」や「大学に行って弁護士になりたい」など、夢があり、やる気を向上させる具体的な職種をあげて答えていた。  一方、職業訓練コースの生徒のほとんどの回答が現在職業訓練コースで開講されている「仕立て」か「大工」という希望する職業選択の幅が狭い結果になった(問 7)。この結果は小学部・中学部の生徒の回答とは対照的であった。また、職業訓練コースの生徒は、自分たちの将来の仕事を、現在学んでいる職業以外を考えたり、希望したりすることができないことが明らかとなった。  上述の対話でも、職業訓練コースの生徒からは、「卒業後どんな仕事につけるのか不安がある」と相談されたことが多かったように思われる。その漠然とした不安感は、「将来への直接的な不安感」からではなく、職業選択がすでに決定されてしまっているという「人生への意欲の低下」に起因するものなのではないかと考えた。  そこで、生徒がろう学校で希望を育み、今後の就労への準備を整えるために、以下のように考察を行い、提言につなげた。 3.1.1 開設科目について ろう学校職業訓練コースの現状  ルワンダのろう学校は全国で 7 校あり、そのほとんどの学校に一般教養を学ぶ小学部と、職能を獲得する職業訓練コースがある。ルワンダではろう・難聴者を対象とする中学校はない。小学部まで一般教養を学んでいたろう生徒の場合は、中学校では必ず一般の学校に通うことが必要になるため、進学時には高い学力が必要とされる。そのため、ろう学校では、中学校に進学し、一般学級でのインクルーシブ教育に耐えうる学力があるかどうかで、コースの配属が決定されている。教員へのアンケート調査結果から、コース振り分けの際には、生徒や保護者の意見を聞く時間を設けるものの、基本的には生徒の学力に応じて、“中学校で勉強するか”“職業訓練コースで職能を学ぶ方がその生徒にあっているのか”ということを判断してコースの振り分けを行なっているということが認められた。  この結果から、職業訓練コースに在籍している生徒は、小学部に在籍している生徒と比べて学力が低いということが推測される。また、質問紙調査の結果では、職業訓練コースの生徒は小学部に比べて年齢層が高いということも明らかになった。すなわち、職業訓練コースでは、卒業後はすぐに就職することを念頭に置いた指導が必要になっているということが窺える。 開設科目について  調査協力を得たセントガブリエルろう学校では職業訓練コースの科目は、「洋裁・編み物」と「木工・建設」の 2 コースのみの開設となっており、女子生徒は「洋裁・編み物」、男子生徒は「木工・建設」と配属コースが決められており、コース選択の余地はない。  また、教員 11 人への質問紙調査によると、授業科目の充実について「溶接や理容の科目を新設する必要がある」と言及している教員もいた。教育省労働開発局が管轄する一般の職業訓練校は約 360 校あり、開設されているコース数は約 90 コースにも及ぶことと比較して、ろう学校の職業訓練コースの科目開設数は非常に少ないといえる。 開設科目の将来性  洋裁・編み物については、以下のような調査がなされている。  ILO,スウェーデン大使館による「ルワンダの縫製産業への市場システム分析 ルワンダの衣料品と仕立て」の調査によると、ルワンダで仕立て屋として働いている者の 46%はその技術を正式な教育機関ではなく、仕事や有給の見習い場面で学んでいる他、収入も仕事内容も教育場面でトレーニングを受けた人と同様であるということが示唆されている。また、同調査報告書では、国内市場が伸び悩んでいることに加えて、より安価でより良い品質の輸入衣料との競争が激化しており、縫製産業や洋裁産業はあまり有望ではないと明記されている。  木工・建設については、ルワンダでは建設ブームが進行中であり、この分野の収益は 2012 年から 60%以上増加している。2018 年の建設の収益は 5 億 6,050 万ドルに達し、GDP の 6.2%、 産業セクターの総収入の 38.2%に相当する割合になった(AsokoInsight 2019)。主な仕事における経済活動別雇用者数では、従事者数が多いが、一人当たりの月収の平均額は著しく低いということが見られる。  これらのことから、「洋裁・編み物」コースは、現状では時代の潮流に適しているとは言えないのではないかと考えられる。また、「木工・建設」コースに至っては、業種としては、増収しているものの、従事者個人の月収は著しく低い、もしくは約 7 割が単発的な雇用形態(WB 2015)である点から、安定した仕事であるとは言いにくい。 開設科目の新設  そこで、開設科目の新設について以下の通り提言する。同コースでは、「洋裁・編み物」「木工・建設」のコースと併せて、時代の潮流に合わせた成長産業を積極的に開設科目に取り入れていくことが必要になるのではないかと考える。例えば、宿泊・飲食サービス業の分野を学べるような科目を開設するのはどうか。  ルワンダの GDP に占める産業別の分野割合の推移では、農業の割合が減少し、従事者数は突出して高い一方、平均月収は非常に低いということが見られる。  中間所得者層や外国人観光客の来訪により、サービス産業が伸びてきている。またサービス産業の従事者数も、2011 年から 2014 年にかけて 37%の増員となっている(Eric 2016)。  従事者数と給料別の散布図を見ると、サービス産業である「宿泊・飲食サービス」は、現在ろう学校で開設されている「洋裁・編み物(工業に分類)」や「木工・建設(建設業に分類)」よりもわずかではあるが、収入が上がる。従事人数と給料のバランスも均衡が取れており、産業規模として従事者 を十分受け入れられる土壌が整っている。  将来就きたい職業について回答を得た中に、「ホテル」と回答した生徒も 3 名いたことから、「宿 泊・飲食サービス」はろう学校の生徒にとっても身近な職業であり、筆者も、実際に飲食店で接客業に従事するろう者を見た(2.8.4 章参照)。そこで、新設科目の内容を考える際に、特に有望な職域として「宿泊・飲食サービス」に目を向けることができると考える。 基礎教育の充実  現在、ルワンダでは、一般の識字率は 73%(世界銀行 2019,2)であり、聴者であっても読み書きが得意でない人も少なくない。そこで注目されるのは、人々の読み書きなどの基礎教育を提供している成人識字教育センター(Adult Literacy center)の数である。教育機関のうち、国が力を入れている技術職業訓練・教育(TVET)分野が 3%、大学が 2.2%である。これに対して、成人識字教育センターはそれらよりも多く全体の 4.2%を占めている。またそのセンター数は年々増大傾向にあり、基礎的な知識習得を国を挙げて推進する機運が高まっている。  識字能力の重要性とその習得への取り組みが行われつつある社会の潮流に対して、ろう学校の教員・生徒への質問紙調査の回答結果からは、ろう・難聴者に即した書記言語能力向上のための 文法へのアプローチを主軸にした教育を行う必要性については言及されていなかった。  おそらくこの理由は、インクルーシブ教育下であっても(第 2 章 2.3.3 インクルーシブ教育参照)、手話を対等に用いることが当たり前であるという全体の雰囲気や、すでに英語やルワンダ語の授業が行われているため、今回はあえて特筆しなかったのではないか、と筆者は考える。  また、ろう学校の教員と生徒が現在の学習指導の質について得た回答では、教員・生徒ともに「難しい」と感じていることが確認された。 コース振り分け時期の再考  国民の識字能力強化の動向を考慮すると、今後、ろう学校でも、識字能力を向上させるような基礎的な内容を重点的に盛り込んだ指導をする必要がある。職業訓練コースでも、基礎的な学習に使える時間を増やす必要があると考える。  加えて、幼稚部から職業訓練コースおよび小学部のコースを振り分けるタイミングの見直しを提言したい。なぜならば、現状では、幼稚部修了後に学業成績によってコースが振り分けられているため、生徒の適性や能力を正しく評価出来ていないと考えるからである。具体的には、コースの振り分けは、本人の資質や適性を見極めて、小学部 5 年生あたりの時期(小学校卒業時に行われるナショナルイグザム(第 2 章 2.2.6 ナショナルイグザム)の 1 年前に相当)でも良いのではないかと考える。 3.1.2 就労移行支援 情報提供  教員が、就労移行に関する内容を授業の中で教えているかどうかに関して、「授業の中で職業を紹介する」と回答した教員はわずか 2 名であった。また、職業訓練コースの生徒の約 23%が将来なりたい職業について「わからない」と回答したことから、現状では職業に関する情報が十分に提供できていないと考えられる。 情報提供  そのため、将来の仕事に関する情報をより多く提供をしていく必要があると提言する。また、必要に応じて卒業生を学校に招くなどし、どのような仕事をしているのかなど、ディスカッションをする機会を設けるのはどうか。社会に出て働くろう・難聴者のロールモデルを実際に見て職業に関する情報を得ることで、在学生の仕事への意欲の向上にも期待ができるのではないかと考える。 職場開拓や職業斡旋の実践  必要な技術習得以外の就労移行支援に関して興味深い回答があった。生徒の就職のために行なっている取り組みについて「職業開拓を自ら行なっている」(図 23-1)と回答した教員はおらず、また、学校に求める改善案の問でも(図 22-1)「就職担当係の設置」や「職場開拓や職業斡旋」を求めると回答した教員もいなかったという点である。すなわち、今回の調査結果からは、“生徒の就労支援や就職先の斡旋は、ろう学校の役割ではない”と考えられているのではないかと考察する。 職場開拓や職業斡旋  職業訓練コースでは卒業時に就職先と生徒を繋げるような、職場開拓や職業斡旋が必要であると提言したい。なぜならば、一般の雇用場面においては、ルワンダの失業者が行う就職活動の主な方法として約 60%が「雇用主に直接聞く」、約 35%が「知人等に支援を求める」と回答しており(2 章 2.7.3 人々の就職活動の方法参照)、就職活動には雇用者や知人とのネットワークが非常に重要であることが理解できるからである。  このような社会的な背景を考慮すると、教職員自らが就職に対する積極的なアプローチを行うことも、生徒の就職先を見つける上で必要となると考える。 規律や規範の指導  ろう者を積極的に雇用する乳製品を取り扱う“マサカクリーミー(Masaka Creamery Ltd)”の工場に筆者が訪問した際に、責任者から雇用したい人物像について話を聞いた。責任者は、「工場での仕事は、時間厳守や規律を守ることが重要視されている。学校では規律や規範を守ることについてしっかりと指導して欲しい。」と話していた。ルワンダで会社を経営する日本人にも同様に話しを聞いたところ、同様に「時間や規律を守れない人が多い。学校では最低限、時間厳守や規律を守ることについて身につけて欲しい。」と話していた。 時間遵守の徹底  就業を視野に入れて日頃の指導を行う際には、規律や規範の指導に加え、時間順守の徹底もしっかり指導することが大切である。例えば、各教室に時計を設置するようにするなど、日頃から時計を見る習慣をつける指導をする必要があると考える。なお、現状では、時計は学校の入り口に 1カ所しか設置されていなかった。 3.1.3 インターンシップ インターンシップの動向  職場体験実習やインターンシップは、日頃学校で勉強している内容を実地的に学べる絶好の機会である。さらにインターンシップは、就労にむけたプロセスを支援する上で重要な一旦を担うのではないか、と筆者は考える。  ルワンダ政府も、“技能のミスマッチが、若者の失業の主な原因である”とみなし、新しい教育訓練プログラムでは、より実践的で即戦力となるスキルに焦点を当て、企業と連携した多様なインターンシッププログラムの実施を求めている。こうした状況の中、職業訓練教育現場におけるインターンシップへの需要は、高まりを見せている。 ろう学校でのインターンシップの役割  就労移行支援は,学校から就職活動を通じて社会に移行する上で必要なプロセスとして位置付けられ、職場体験実習などをはじめとした School-to-Work プログラム(STW)などが北米や英国でも多く導入されている。北米での調査によると、「School-to-Work プログラム(STW)が、仕事とは何かを学生に理解させ、学生のキャリア選択に影響を与えている」と報告している(2 章 2.6.5 インターンシップ参照)。 しかしルワンダのろう学校の職業訓練コースには、キャリア選択という自由な概念を育てるカリキュラムが整っていない。また、同コースの生徒は現在自分が学んでいることを将来の仕事にしたいと考える傾向が強い。したがって、職業訓練コースに所属することになった時点で、生徒は自分の将来は決まってしまったも同然と思い込み、その結果、キャリア選択の効果的手段であるはずのインターンシップに意味を見出せない、のではないかと考えられる。  就職に際して必要だと考えることを問う項目についても、生徒らは「もっと勉強して知識をつけたい」とする回答が 45 名と最も多く、「まずは現場で働いてみたい」とする回答はわずか 1 名であった(図 36-1)。  一方、教員はインターンシップを授業の中で導入したいと考える理由について、「生徒の今後のキャリア(職業選択)に活かせそうだから」が 4 名、「普段の勉強に活かせるから」が 6 名であった。教員はインターンシップをキャリア・職業選択としてだけでなく、勉強によい影響を与えることにも価値 を見出している(図 26)。  すなわち、現段階で職業訓練コースにおけるインターンシップは、職業選択の幅を広げるためではなく、自分の将来に直接結びつく「洋裁・編み物」や「木工・建設」の現場で行うことで、普段学習に活かし、さらに実地で求められる技術の習得を目的とされている意味合いが強いのではないだろうか。 インターンシップの意識  教員の約 7 割が生徒の就職のために行っている取り組みとして所属コースに関わらず、「インターンシップを推進している」と回答していた(図 23-1)。一方で、生徒はインターンシップを「聞いたことがない」と回答したのが約 8 割であった(図 37)  また、教員の約 8 割が「インターンシップを導入したい」と回答していることに対し(問 14)、約 5 割の生徒が「やってみたくない」か「分からない」と消極的な回答をしていることが見られた(図 39-1)。自由記述では、「やってみたくない」と回答した生徒はその理由を「難しいから」と記述した生徒が多かった。  つまり、教員はインターンシップを積極的に導入したいと考えているが、生徒はインターンシップの意味を理解しておらず、かつ難しいものであるという印象を持っているという意識の違いが明らかになった。 インターンシップ経験者の意見  インターンシップを実際に導入したことがあると回答した教員は 6 名で、全員が「インターンシップをもう一度行いたい」と回答していた(図 25-2)。  一方、「インターンシップを経験したことがある」と回答した生徒は 13 名であったが、そのうち「インターンシップをもう一度行いたい」と回答したのは約 3 割にあたるわずか 4 名という結果となっ た(図 38-1)。  結果、インターンシップを導入した経験のある教員はその効果を認識し、再度導入したいと考えるようになるが、インターンシップを経験した生徒の多くは、その効果を実感することができず、もう一度行いたいと考える者が少ないということが認められた。  教員と生徒間のインターンシップにおける双方の見解の違いは、教員がインターンシップによって達成させたい目的を生徒が十分理解できていない、ということに起因するのではないかと考えた。 インターンシップ導入方法の検討  そこで、以下に、インターンシップ導入の提言をおこなう。インターンシップを何らかの形で導入する場合は、導入前の指導や実施後のフィードバックなどをすることによって、生徒にもその意義や目的を共有できる形で行う必要があると考えた。  また、インターンシップをより効果的にするためには、受け入れ先の態勢が整っているかどうか、ろう学校との間で事前に協議を重ねる必要があると考える。受け入れ側のろう・難聴者に対する理解に併せて、インターンシップ生のための作業の切り出しなども依頼する必要がある。  これらの準備なしに、インターンシップを導入したとしても、調査結果のようにその効果の実感に差が生まれてしまうということが考えられる。生徒への導入前の指導、インターン先との協議、実施後のフィードバックを必須とすることで、教員・生徒が同様にインターンシップの効果を実感できるようになるのではないかと考えた。 インターンシップ以外の方策  インターンシップ以外に技術力を競う国内の大会などに参加を促すことも提言したい。現段階では、求められているインターンシップは、職業選択の幅を広げることを目的とされておらず、生徒の日頃の学習意欲を高めるための新たな方策が必要と考えるからである。  例えば、ルワンダ国内で行われている技能大会、The Art-Rwanda-Ubuhanzi を活用する方法があるのではないかと考える。同大会は、青年文化省とルワンダ言語文化アカデミーが共催しているもので、若者の技能を認めて表彰するものである。具体的には、6 つの異なるカテゴリ(造形芸術・ダンスと音楽・ファッション・演技と演劇・映画撮影と写真・文学)でクリエイティブアート業界内の若く才能のあるルワンダ人を支援することを目的としている。  ろう学校の生徒もこのような大会に参加させることができれば、業界で求められている技術を確認することができ、日頃の学習や実習へのモチベーションもより上がる。また、ろう学校外の人々と競い合い、交流をする機会も生まれるという副次的な効果も得られる。 3.1.4 運営体制 教員数  教員は着任年数が 5 年以上になると、約半数以上がカリキュラムへの改善の余地があると考える者が増えるようになることが明らかになった(図 21-2)。  その主な回答として、「学校に求める改善案」の中で、「ろう・難聴者の就労に適したカリキュラムの開設」「教職員の人数と質」が必要であると回答した教員は全体の 3 割をずつを占める多数の回答を得た。  また、職業訓練コースの教員は 3 名全員がこの2つを必ず選択するという結果になったことからも(図 22-1)、特に教員の増員は喫緊の課題であることが認められる。  加えて、職業訓練コースの教員は洋裁や編み物を指導しているだけでなく、クラス担任もしていることが見られた。 教員の増員  新しい科目を開設することと教員の増員は一体で進める必要である。  正規教員が望ましいが、予算や体制を考慮すると、非常勤教員の活用も代替案として考えられる。筆者の経験では、あるろう学校で、非常勤講師として卒業生を短期間雇用している状況も見られた。また、最高学年になると短期で美容師を雇用し、女子生徒に対して髪の毛を編むなどの美容の技術を習得させる指導を行なっていた。  加えて、生徒たちの第一言語は手話であり、教員からも「手話の高い技術を持った教員が必要である」という回答得た。本来であればろう学校では、手話ができる教員を正規雇用することが望まれる。 施設や設備  学校に求める改善案として、11 名中 5 名の教員から「施設や設備の充実」があり、教員らもそれを強く認識しているということが明らかになった。また、「充分なツール(機械・サーティフィケート)を揃えること」という記述もあった。  職業訓練コースでは、一般の職業訓練校で用いられている教育省の雇用開発局(WDA)が編成するカリキュラムではなく、教員が独自に作成したものが用いられている。筆者はルワンダに再訪した際、「なぜ教育省にカリキュラムの使用許可を申請しないのか、」とろう学校の校長に対し疑問を投げかけたところ、「申請はしたものの、労働開発局の職員の監査の結果、設備が不充分なため、雇用開発局の認定校として認定されることができなかった」という回答を得た。 施設や設備の充実  コースの新設をしたり、充分な数の教員を揃えたりすることと、同時に必要な設備の充実も提案したい。教員らも施設や設備の充実が必須であると認識しているにも関わらず、実行できずにいる背景にはろう学校の財政面が大きく関わっているということが考えられる。  ルワンダ国内のろう学校は公立でなく、私立として運営されている。一部政府からの金銭的補助を受けているものの、その補助額が充分であるかどうかは疑問が生じる。  政府は国の経済開発と貧困削減のための重要な柱として、開発計画の中に教育を位置付けとしている。経済開発貧困削減政策では、教育の上位目標を定め、その中に、「1)すべての人の教育へのアクセス、2)すべてのレベルでの質の高い教育、3)すべてのレベルでの教育における公平性」と「すべての」とうたわれている項目がある(2 章 2.2.2 教育目標参照)。  なお、ろう学校が未だに私立として運営され、現場からは設備充実の必要性の声が上がっているという事実に対して、果たしてこれは社会で求められている生産技術を獲得する教育環境になっているかどうか、という点についてはいささか疑問に感じざるを得ない。  そこで、ろう学校職業訓練コースには、施設や設備の充実が必要不可欠であると提言する。その上で、ろう学校などの特別支援教育機関へのより一層の力添えを期待したい。 インクルーシブ教育についての現状と希望  教員への「国の福祉政策への要望」で最も回答が多かったのは、インクルーシブ教育を進めて欲しい(ろう生徒が普通校へ進学する機会を増やして欲しい)」であった。経験年数にかかわらず、その必要性が求められていることが明らかになった。  このような回答になった理由を、改めて何人かの教員に追加で聞いたところ、「生徒を一般の学校に送りたい、と考えて回答をした教員は、ルワンダの社会に早く生徒を統合させたいと考えたためだと思う。」という回答を得た。  就労移行支援の文脈で、ろう学校の職業訓練コースでは、社会との移行の段階における「職場開拓・職業斡旋」が行われていないということについて前述した。この理由の一つには、ろう学校だけで特別な移行支援を必要と認識されていないためと考えられる。  “第 2 章 2.3 インクルーシブ教育”で言及したように、ろう学校におけるインクルーシブ教育環境は非常に整っていると見られる。その環境を間近でみている教員が、安心して、国が推進するインクルーシブ教育を、引き続き推進してほしいと希望しているということが明らかになった。  筆者が以前、ろう協会で雇用されていた 20 代前半の男性手話通訳士と話をした際、彼は手話通訳士になったきっかけについて、「小学・中学校とろう・難聴の生徒がクラスにたくさんいて彼等と関わる機会が多く、自然に手話を覚えた」と話していた。  このように、ルワンダでの学校におけるインクルーシブ教育の推進は、インクルーシブな社会の形成にも役立っていると言える。また、今回対象としたろう学校のように、同じ敷地内に一般の学校を併設し、ろう生徒と聴生徒が共に学ぶインクルーシブ教育環境が実現している例を、ルワンダ国内外の多くの人に知ってもらいたいと願っている。 第4章 結論 本研究は、ルワンダのろう学校における就労移行支援の実態について調査し、その上でルワンダのろう・難聴者にとって必要な就労移行支援のあり方について考察し、提言することを目的とした。 ルワンダのろう学校における就労移行支援体制の実情を調査するため、歴史があり、現在、ルワンダでは最も大きなろう学校の生徒・教員に質問紙調査を行った。 その結果、学校では技術を習得することに重点が置く職業教育が行われており、職域開拓や職業斡旋は行なっていないということが明らかとなった。 インターンシップについては、自分の将来に直接結びつく「洋裁・編み物」や「土木・建設」の現場で行うことで、普段の学習に活かし、さらに実地で求められる技術の習得を目的とされている。 また、同コースの生徒は現在自分が学んでいることを将来の仕事にしたいと考える傾向が強いことが明らかになった。 そこで、生徒がろう学校で希望を育み、今後の就労への準備を整えるために、職業訓練コースの現状の就労移行支援を考慮した上で、提言したい内容は下記の通りである。 提言 1:開設科目の新設(3.1.1 開設科目を参照) 成長産業として有望な「宿泊・飲食サービス」が学べる科目を現行の科目と併せて開設する。 提言 2:コース振り分けのタイミングの再考(3.1.1 開設科目を参照) 全ての生徒の基礎教育の充実に重点を置くために、コースを振り分けるタイミングについて再考する。 提言 3:就労移行支援への提言(3.1.2 就労移行支援を参照) 3-1 情報提供 仕事の情報や卒業生の就職状況などを積極的に提供する。 3-2 職場開拓や職業斡旋 教員自らが職場開拓や職業斡旋を推進する。 3-3 規律や規範の指導 時間厳守や規律遵守などの指導を日常的に行う。 提言 4:インターンシップ導入方法についての検討(3.1.3 インターンシップを参照) 4-1 インターンシップ導入方法の検討 生徒への導入前の指導、インターン先との協議、実施後のフィードバックを行う。 4-2 インターンシップ以外の方策 技術力を競う国内の大会などに参加を促す。 提言 5:教員の増員(3.1.4 運営体制を参照) 非正規雇用としてでも教員は採用すべきだが、本来は正規雇用として手話の技術を持った教員を雇用すべきである。 提言 6:施設や設備の充実(3.1.4 運営体制を参照) ろう学校職業訓練コースには、施設や設備の充実が必要不可欠であると提言する。その上で、ろう学校などの特別支援教育機関へのより一層の力添えを期待したい。 最後に、適切な就労移行支援を含んだこれらの提言の実現により、ろう・難聴生徒の学習意欲を高め、エンパワメントをより一層強める。それにより、社会におけるロールモデルとなりうる人材が育 成されると考える。 その結果、卒業生があらゆる職種で活躍できれば、個人の就労だけにとどまらず、ルワンダが推進しているインクルーシブ社会の形成に一層寄与できると筆者は考える。 謝辞 本論文は、国立大学法人 筑波技術大学大学院 技術科学研究科 情報アクセシビリティ専攻 障害者支援(聴覚障害)コース修士課程在学中に行なった研究をまとめたものです。本論文をまとめるまでに多くの方々のご指導、ご支援、ご協力をいただきました。 本論文の作成にあたり、指導教員の佐藤正幸教授には、終始適切な助言を賜り、ご指導い ただきましたこと、そして、貴重なご教示の数々、心より感謝しております。また、副指導教員の須藤正彦教授には、要所要所で、見落としがちであった重要なところや貴重なご教示、 ご指導くださいましたこと、心から感謝しております。 また、本論文をご精読頂き、数々のご経験を基に有用なコメントをいただきました修士論文主査の中島幸則先生、副査の脇中起余子先生に深く深謝申し上げます。 また、磯田恭子先生、中島亜紀子先生、萩原彩子先生をはじめとした PEPNet-Japan 事務局・障害者高等教育研究支援センターの皆様には、本論文発表会の情報保障支援だけでなく、 研究の進め方について適確な助言の数々をいただきました。本当にありがとうございました。 また、日本社会事業大学 大学院博士後期課程、益子徹さんには、研究の進め方で悩んだとき、いつも親身になってご相談に応じていただき、精神的にも本当に支えていただきました。 心から感謝しております。 また、筑波技術大学 障害者高等教育研究支援センター 飯塚潤一教授には、論文発表会の際、ルワンダへの質問紙調査の実施についてご意見をいただきました。あのご意見があって こそ、コロナ禍でも諦めず、ルワンダのろう学校への質問紙調査を実行することができまし た。貴重なご意見、本当にありがとうございました。 ろう学校への質問紙調査の受け渡し、回収においては、古賀聖啓さんにご協力を賜りまし た。貴重な現地滞在の時間を割いて、2 度にわたりろう学校に訪問していただいたこと、心 より感謝しております。 また、質問紙調査の翻訳については、筑波技術大学 障害者高等教育研究支援センター、藤井拓哉先生、筑波大学 大学院博士課程の HappyBuzaaba さんにご協力をいただき、適確な翻 訳をしていただきました。本当にありがとうございました。 そして、本研究の対象校となったルワンダのセントガブリエルろう学校の皆様には、本研究調査にご協力いただき、心から感謝しております。同ろう学校との出会いがなければ、私 はこの研究領域に足を踏み入れることはありませんでした。明るく元気いっぱいな生徒と、 生徒思いで熱心に職務を全うする教員の皆様に心から感謝と尊敬の意を表します。 最後に、これまで私を温かく応援してくれた家族、支えてくれた友人に深い敬意と感謝を示し、心よりお礼申し上げます。 参考文献 (Africa 2016): Mark P Mostert, 2016, The African Disability Rights Yearbook, [STIGMA AS BARRIER TO THE IMPLEMENTATION OF THE CONVENTION ON THE RIGHTS OF PERSONS WITH DISABILITIES IN AFRICA] http://www.saflii.org/za/journals/ADRY/2016/2.html,2020 年 10 月 7 日閲覧 (Africa Renewal 2018): Finbarr Toesland, 2018, Africa Renewal https://www.un.org/africarenewal/magazine/december-2018-march-2019/double- challenge-disabled 2020 年 10 月 1 日閲覧 (all Africa 2020):Angelo Fynn 2020, all Africa [South Africa: How to Narrow the Gap Between What Universities Produce and What 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Business Services(ビジネスとサービス) Business Services(ビジネスサービス) Accounting(経理) Custom and Tax Operations(税関と税務) Media and Film Making(メディアと映画製作) Multimedia(マルチメディア) Hospitality and Tourism(おもてなしと観光) Culinary arts(料理芸術) Food and Beverage services(食品および飲料サービス) Front Office Operation(フロントオフィスオペレーション) Housekeeping services(家事代行サービス) Tourism(観光) Hospitality Management(接客マネジメント) Wildlife Management(野生生物管理) Wildlife Tourism(野生生物観光) Information and Communication Technology(ICT)(情報通信技術) Computer Applications(コンピューターアプリケーション) Computer Systems technology(コンピューターシステムテクノロジー) Networking(ネットワーキング) Software development(ソフトウェア開発) Computer maintenance(コンピューターメンテナンス) Digital Media production(DMP)(デジタルメディアプロダクション) Software Programming(ソフトウェアプログラミング) Administration(行政) Office Management(オフィス管理) Construction and Building Services(建設及び建設サービス) Interior Design(インテリアデザイン) Road Construction(道路建設) Quantitative Surveying(定量調査) Plumbing(配管) Masonry(石積み) Land Surveying(土地調査) Carpentry(大工工事) Painting & Decoration(塗装・装飾) HighWay Technology(高速テクノロジー) Geotechnical Engineering(地盤工学) Water and Sanitation Technology(水と衛星技術) Engineering Surveying Technology(エンジニアリング測量技術) Land Surveying Technology(土地測量技術) Manufacturing and Mining(製造と鉱業) Mining(鉱業) Production Technology(生産技術) Welding and Fabrication(溶接と製造) Transport and Logistics(輸送と物流) Automobile Body Works Technology(自動車ボディ ーワークステクノロジー) Automobile EngineTechnology(自動車エンジン技術) Motorcycle Technology(オートバイ技術) Automotive Transmission system technology(自動車用トランスミッションシステムテクノロジー) Auto electricity and electronic system(自動車電 気および電子システム) Construction Material Testing(建材試験) Automobile(自動車) Labor Based Road Maintenance(道路整備) Driving(運転) Heavy Machine Operations(重機オペレーション) Transportation Engineering Technology(輸送工学 技術) Auto electricity and Electronics System(自動車電気および電子システム) Auto Transmission & Control System Technology(自動変速機および制御システム技術) Automotive Technology(指導者技術) Agriculture and Food Processing(農業および食品加工) Irrigation and drainage(灌漑と排水) Forestry(林業) Food processing(食品加工) Crop production(作物生産) Animal health(動物の健康) Agri-Mechanisation(農業機械化) Welfare, Health & Social Services(福祉、健康、社会福祉) Early Childhood Development(幼児期の発達) Community Health(コミュニティヘルス) Technical Services(テクニカルサービス) Electronic Services(電子サービス) Telecommunication(電気通信) Bio-Medical technology(バイオ医療技術) Air Conditioning And Refrigeration(エアコンと冷凍) Electromechanical technology(電気機械技術) Mechanical Engineering Technology(機械工学技術) Natural resources Management(天然資源管理) Forest Resources Management(森林資源管理) Arts and Crafts(芸術と工芸) Graphic Arts(グラフィックアート) Ceramic and Sculpture(セラミックと彫刻) Visual/Plastic Art(ビジュアル/プラスチックアート) Tailoring(洋裁) Music(音楽) Fashion design(ファッションデザイン) Basketry(かご) Knitting(編み物) Leather Craft(レザークラフト) Energy(エネルギー) Peat Energy(泥炭エネルギー) Renewable Energy(再生可能エネルギー) Hydropower Energy(水力エネルギー) Electricity(電気) Solar Energy(太陽光エネルギー) Geothermal energy(地熱エネルギー) Methane Gas Energy(メタンガスエネルギー) Power Plants Management(発電所管理) Physical fitness and sports services(体力とスポーツサービス) Football Volley Ball Basketball Tennis Cricket Athletics Handball Beauty and aesthetics(美容とエステティック) 参考資料2 WDAカリキュラムのインターンシップ内容 (表) Elements of competence  Apply for internship/ employment Performance criteria  Appropriate use of resources in the community or nationwide to find internship/employment information Writing of a basic accurate and neat CV Proper writing of application letters Proper demonstration of effective interviewing skills Elements of competence  Demonstrate workplace behavior and attitudes Performance criteria Appropriate application of workplace habits and attitudes Adequate implementation of strategies to manage time effectively Efficient management of personal and work lives Elements of competence Respect worker’s and employer’s rights and responsibilities Performance criteria Respect of universal human rights Respect of worker’s and employer’s obligations according to the Rwandan Labour code Respect of worker’s rights and responsibilities at the workplace Respect of employer’s rights and responsibilities at the workplace Appropriate reaction when the labor code is broken Elements of competence Organize and evaluate one’s internship Performance criteria Appropriate securing of the internship agreement with the enterprise Adequate outlining of findings and experience Proper writing of the internship report that contains all the required elements as well as one’s own findings and experience Active participation in the assessment of one’s internship Elements of competence Develop one’s competences on the workplace Performance criteria Adequate performance of tasks assigned according to the agreement with the enterprise Positive response and active participation in meetings with the internship supervisor (“maître de stage”) Adequate demonstration of work behavior and attitudes 参考資料3 教員の記述 Description of Teachers (表) T001 Q8-2 Kiny: muri secondaire hajyamo umumtu ufite ubushobozi bwo kuhiga ikindi buri umunyeshuri agomba kvuga aho ashoboeye, kuko ntiyoyja muri secondarie urugero imibare kwyiga byara munaniye. muri secondarie haba hagomba ubushobozi bwisumbuyeho kubasha guha amahirwe buri mwana yo kwiga icyo shoboye. Eng: only able people can go to secondary and again every student should say what he can do because he cannot go to secondary if he failed mathematics. secondary requires advanced ability for students to have equal opportunity. Q9-2 Kiny: iyo ukurikije ubuhanga bwabanyeshuri bituma umenya aho umwana agomba kujya n' wbushobozi afite. Eng: according to student knowledge you can decide where the student can go and their ability. T002 Q8-1 Kiny: 1. ibyo bakunda 2.amasomo yatsinze 3. ibizamugirira akamaro Eng: 1. what they like 2. subject he past 3. what will benefit him Q8-2 Kiny: ibyo umwana akunda aranabikora yishimye bikazamugirira akamaro Eng: what the child likes and does happily will benefit him Q9-2 Kiny: ubuhanga nikimwe mu Biyobora umuntu ku cyo azaba cyo. Eng: knowledge is one factor that will determine destiny of the students Q10 Kiny: guhugura no kwiga ku batumva hakenewe projecteur nyinshi na murandashi nyinshi. Eng: skill is one of the Guidelines for what a person will be. training the deaf require the projector and internet T005 Q8-1 Kiny: Umuwana wiga akuze kandi agira amanota make mu sihuri Eng: An adult child who scores less In the classroom Q8-2 Kiny: Gufasha umuwana kwizirwanaho mu buzima busanzwe buri imbere Eng: Helping the child support himself or herself in the future Q9-2 Kiny: Gufasga buri wese kwibona aho ashobora kwiteza imbere Eng: Helping everyone see where they can thrive T006 Q8-2 Kiny: Kugirango ibyifuzo by abanyesyuri n’ ababyeyi bihabwe umuwanya Eng: For the needs of students and parents to be given time Q9-2 Kiny: Dushingira ku buhanga bwatuma abasha gukurikirana amasomo akuikiyeho Eng: We rely on the discipline that allows these students to compete in the lessons that follow Q10 Kiny: gusyuiraho amahugurwa yo kubafasha mugukora imishinga yo kwiteza imbere muri societe Eng: to set up workshops to help them develop in community T007 Q8-2 Kiny: Mbikorera kugirango ibyifuzo byabo bihabwe agauiro Eng: I work for them to get their wishes to meet Q9-2 Kiny: Dushingira kubushobozi afite muri ayo masomo Eng: We rely on the abilities he has in those courses Q10 Kiny: Gutanga imirimo yo gukorana n’abanidi muri societe Eng: Providing job opportunities for people in society T008 Q8-1 Kiny: Abatumva hari igihe amasomo asanzwe abakomerera ariko bagashobora cyane amasomo ajyanye n’imiyuga Eng: Deaf people sometimes face difficulty in normal classes but perform better in vocational class Q8-2 Kiny: Nkoresha ububuryo kuko aricyo gipimo Kigaragaza ubushobogi bwa abanyeshuri mu bijyanye n’amasomo Eng: I use this method as a measure of student ability to learn Q9-2 Kiny: kuberako kurwego rwuburinganire abanyeshuri bose barashoboye. kandi baba bahawe ubumenyi bumwe. Kubijyanye nubumuga nabo barashoboye. Eng: in terms of gender all students are equal and given same knowledge. same applies to disable children. Q11 Kiny: kugirango ishuri ny' abafite ubumuga bwo kutumva nirusheho kuba ryiza ni ngombwa ko riba rifite ibikoresho bihagije n’abarimu bafite ubumenyi bwo kubigisha ( umuwarimu w’amarenga ) kandi bakaba bafite infasha njigisho zijyanye nikiciro cyabafite ubumuga bwo kutumva no kutavuga zihagije. Eng: for Deaf school to succeed it needs enough equipment and teacher (professional sign language teachers) who are equipped with updated teaching materials. Q12 Kiny: iyo mbigisha umwuga mbashishikariza kuwukora neza kandi vuba kuko ariwo uzabagirira akamaro ishuri rirangiye. Eng: when I teach them vocational skill i encourage them to do it well and fast because it will help after school Q17 Kiny: Ndumva ibi byose uko ari 6 nabisaba reta kuko mbona ko byose aringombwa kandi bikenewe kubafite ubumuga bwo kutumva no kutavuga. Eng: I can request the government to provide all the 6 because they are all necessary for the deaf people T009 Q8-1 Kiny: Kureba niba ashobora gukurikira gahunda ya inclusive education agakomeza special education Eng: To see if he can follow the inclusive education program and continue special education Q8-2 Kiny: Gufasha ushoboye kugera kure hashoboka mu masomo (Secondary, University) Udashoboye akajya mumyuga kugirango azagire icyo yigezaho Eng: Helping the Able to Go as far as possible in Secondary, University. the one who cannot go to secondary should join vocational training to learn skill that will help them. Q9-2 Kiny: Kugirango nudasobora gukurikirana amasomo yandi kubera ubushobozi buke, amenye umuga uzamufasha Eng: In order for the one who cannnot attend secondary to learn a skill that will help him Q10 Kiny: -Snudure -Couture igezweho -gutunganyo imisatsimu buryo bwimbitse Eng: welding sewing hair dresseing T010 Q8-1 Kiny: Tureba amanota umunyeshuri yabonye mu masomo ya science twabona ari make tukamuyobora mu myuga Eng: We check the students’ performance in science courses if it is not good we guide them to vocational courses Q8-2 Kiny: Impamvu n’uko iyo ayo masomo amunaniriye hasi muri D3 iyo ageze hejuru atangiye gukomera biramurusha cyane hejuru Eng: the reason is that if he fails the lessons in D3 it becomes more difficult when he goes up. Q9-2 Kiny: Impamvu n’uko iyo ukurikiye ubumenyi afite aribwo ashobora amasomo umwigisha kandi nibwo biba bizamugirira akamaro. Eng: when you follow his knowledge thats when he can pass that lesson you teach and gain from it. Q14 Kiny: oya kuko ishuri beigamo ntibarageza aho batangira kwimenyereza umwuga. Eng: no. because in the current level they have not started internship 参考資料4 質問紙(対訳) 左:ルワンダ語,右:英語 ルワンダ語 英語 witwa nde? What is your name? Q1. Imyaka: Ufite imyaka ingahe? Q1. Age: What is your age? 1. Imyaka 18-24 1. 18-24 years old 2. Imyaka 25-34 2. 25-34 years old 3. Imyaka 35-44 3. 35-44 years old 4. Imyaka 45-54 4. 45-54 years old 5. Imyaka 55-64 5. 55-64 years old 6. Imyaka 65-74 6. 65-74 years old 7. Imyaka 75 cyangwa irenga 7. 75 years or older Q2. Uburinganire Q2. Gender 1. Umugore 1. Female 2. Umugabo 2. Male 3. Ibindi 3. Other Q3. Wigisha muri Q3. You teach at 1. Primary school (primere) 1. Primary school 2. Secondary school (segondere) 2. Secondary school 3. Vocational Training class (TVET) 3.Vocational Training class Q4. Umaze imyaka ingahe wigisha mwishuri ryabatumva? Q4. How many years have you been working at Deaf school? Q5. Wigisha iki? Q5. What do you teach? 1. Uburezi Rusange 1. General Education 2. Ubudozi 2. Tailoring 3. Sisitemu ya mashini (imashini ya elegitoronike, imodoka, nibindi) 3. Mechanical System (electronic machine, automobile, etc) 4. Amashanyarazi / Electronic / Ikoranabuhanga mu makuru (imirima ijyanye na siyanse ya mudasobwa) 4. Electrical / Electronic / Information Technology (fields related to computer science) 5. Ubwubatsi / Ubwubatsi 5.Architecture / Civil Engineering 6. Chimie / Ibikoresho 6.Chemistry / Materials 7. Ibindi 7.Other Q6. Mutekeraza iki k’ubwinshi bwamasomo? (Utekereza iki ku bwinshi bw'uburezi ku ishuri?) Q6. What do you think about the quantity of education at school? 1.cyane 1.too much 2.Nibyo 2.reasonable 3.bike cyane (ndashaka kwiga byinshi) 3.too little (I want to study more) Q7. Wumva ubuziranenge y’amasomo bumeze gute? Q7. What do you think about the quality of education at school? 1.biragoye cyane 1.too difficult 2.Nibyo 2.reasonable 3.biroroshye cyane (ndashaka kwiga akazi katoroshye.) 3.too easy (I want to study more difficult task.) Q8-1. Nigute ushobora guhitamo abanyeshuri baziga icyiciro cyibanze nubuhe banyeshuri baziga amasomo yimyuga? Q8-1. How do you decide which students will take the primary education class and which students will take the Vocational training class? 1.Duha ibyifuzo byabanyeshuri na / cyangwa ababyeyi. 1.We grant students’ and/or parents’ requests. 2.Turabigena ukurikije amanota yabo nibindi bintu. 2.We determine it by their grades and other factors. Urugero: For instance: 3. Ibindi (Wadondora uburyo?) 3. Other (Would you describe how?) Q8-2. Watubwira ukoresha ubu buryo? impamvu Q8-2. Would you tell us why you use this method? Q.9-1. Nigute ushobora guhitamo abanyeshuri bazakurikirana amasomo ki? Q 9-1. How do you decide which students will take which courses? 1. Duha ibyifuzo byabanyeshuri na / cyangwa ababyeyi. 1.We grant students’and/or parents’ requests. 2.Tuzirikana ubuhanga bwabanyeshuri. 2. We consider students’ aptitude. 3.Turasuzuma urwego rwuburinganire bwabo / cyangwa ubumuga. (Kumva nubundi bumuga bwinshi nibindi ..) 3. We consider their gender and/or disabilities level. (Hearing and other multiple disabilities etc..) Q9-2. Watubwira impamvu ukoresha ubu buryo? Q9-2. Would you tell us why you use this method? Q10. Utekereza iki ku guhitamo amasomo yo guhugura imyuga na gahunda yo kwiga ku batumva? Q10. What do you think about the selection of vocational training courses and the curriculum at the deaf school? 1.Birakwiriye (guhuza ibikenewe na societe) 1.Suitable (meet the needs of the society) 2.Hariho imirima imwe nimwe dukeneye kunonosora.(Watanga uburyo ushobora kubateza imbere?) 2.There are some fields which we need to improve.(Would you provide how you could improve them?) Q11. Utekereza ko wakora iki kugirango ishuri ryigipfamatwi rirusheho kuba ryiza? Q11. What do you think you can do to make your deaf school better? 1.Tanga ibikoresho nibikoresho byiza 1.Provide good facilities and equipment 2.Ongera umubare w'abarimu kandi utezimbere ubushobozi bwabo. 2.Increase the number of teachers and improve their abilities. 3.Amahirwe yo kongera kwiga (ubuhanga hejuru) 3.Opportunity for re-education (skill up) 4.Gushiraho serivisi ngishwanama zijyanye no guhiga akazi. 4.Establish a consulting service regarding job hunting. 5.Shaka imirimo myinshi kuri twe kandi utegure kubona akazi. 5. Find more jobs for us and make an arrangement to obtain a job. 6.Shiraho integanyanyigisho yigisha imyuga ibereye abatumva kandi bigoye kumva 6. Establish a career education curriculum suitable for the deaf and the hard of hearing 7.Abandi (ibisobanuro ...) 7.Others(description ...) Q12. Ni ibihe bikorwa bimwe ukora kugirango ufashe abanyeshuri kubona akazi? Q 12. What are some activities you do to help students obtain jobs? 1.Kumenyekanisha ubwoko butandukanye bwimirimo iboneka mu Rwanda. 1.Introducing different kinds of jobs which are available in Rwanda. 2. Gushishikariza abanyeshuri kwitabira kwimenyereza umwuga (Uburambe ku kazi) 2.Encouraging students to participate in internships (Work experience) 3. Kubona akazi kenshi kubanyeshuri no gukora gahunda yo kubona akazi. 3.Finding more jobs for students and make an arrangement to obtain a job. 4.Ntacyo nakoze 4.I have not done anything in particular 5.Abandi (Ibisobanuro): 5.Others (Description) Q13. Wigeze utanga amahirwe yo kwimenyereza abanyeshuri bawe? (Kwimenyereza umwuga bisobanura kugira uburambe bwakazi hanze yishuri.) Q13. Have you ever provided any internship opportunities to your students? (Internship means to have a work experience outside of school.) 1.Yego 1.Yes 2.Oya 2.No Q14. Urashaka ko abanyeshuri bawe bitabira kwimenyereza umwuga? Q14. Do you want your students to participate in internships? 1.Yego. 1.Yes. 2.Oya. 2.No. 3.Sinzi 3.I don't know Q15. Niba wahisemo “1. Yego ” muri Q17. kuki ubitekereza utyo? Q15. If you chose “1. Yes” in Q.17, why do you think so? 1. Kuberako bisa nkaho bifasha imyuga y'abanyeshuri ejo hazaza. 1.Because it seems to be helpful for students’ future career. 2. Kuberako ubumenyi bashobora kubona binyuze mumyimenyerezo bushobora gushimangira imyigire yabo kwishuri. 2.Because the knowledge they can acquire through internships may reinforce their study at school . 3. Abanyeshuri barashobora kwiga ikintu kigoye gutangwa kwishuri. 3.Students may possibly learn something that are hard to be provided at school. 4. Abandi 4. Others Q16. Niba wahisemo “2. Oya ”muri Q17. kuki ubitekereza utyo? Q16. If you chose “2. No” in Q17. why do you think so? 1.Kuberako bisa nkibidafite akamaro kubikorwa byabo bizaza (cyane cyane guhitamo akazi) 1.Because it seems to be useless for their future career (especially occupation selection) 2.Kuberako bids nkibyingenzi mubyigisho byabo bya buri munsi kwinshuri. 2.Because it does not seem useful for their daily studies at school. 3.Kuberako kwiga kwishuri ari ngombwa 3.Because studying at school is more important. 4.Kuberako integanyanyigisho yishuri irakomeye, kandi ntamwanya uhagije wo kubareka bakitabira kwimenyereza umwuga. 4.Because the school curriculum is too tight, and there is no enough time to let them participate in internships. 5.Bifata igihe kinini cyo gushiraho gahunda yo kwimenyereza umwuga. 5.It takes too much time to establish an internship program. 6.Abandi 6.Others Q17. Kubijyanye na politiki yimibereho yigihugu, hari icyo usaba leta? Q17. In terms of the national welfare policy, do you have any requests to the government? 1.Ndashaka ko bateza imbere uburezi burimo (nizere ko abanyeshuri benshi batumva babona amahirwe yo gukomeza amashuri asanzwe) 1.I would like them to promote inclusive education (hoping that more deaf students to get opportunities to go on to regular schools) 2.Ndashaka ko batekereza kubyerekeye amafaranga yishuri kumashuri yabatumva. 2.I would like them to rethink about the school fee for Deaf schools. 3.Ndashaka ko bashyira mubikorwa no guteza imbere guhanahana amakuru, kungurana ibitekerezo, amasomo yo kwiga, nibindi mumashuri yabatumva mu Rwanda 3.I would like them to implement and promote information sharing, exchange, study sessions, etc. among Deaf schools in Rwanda 4.Ndashaka ko bateza imbere inkunga y'akazi, cyane cyane ubufasha mu by'amategeko, ku bafite ubumuga kurushaho. 4.I would like them to promote the employment support, especially legal support, for persons with disabilities even more. 5.Ndashaka ko batezimbere aho bakorera, nko gutanga inkunga yitumanaho nyuma yakazi. 5.I would like them to improve the working environment, such as providing communication support after work. 6.Ndashaka ko bafungura ishuri ryigisha imyuga (amashuri makuru) kubatumva kandi bigoye kumva. 6.I would like them to open a vocational training school (higher education) for the deaf and the hard of hearing. 7.Ibindi (ibisobanuro byubusa) : 7.Other (free description): 参考資料5 質問紙(生徒用) ろう生徒のためのイラスト付き質問紙(1 ページ目) (表) (2 ページ目) (表) (3 ページ目) (表)