修士論文 聴覚障害者の防災の意識に関する調査 令和2年度 筑波技術大学大学院修士課程技術科学研究科情報アクセシビリティ専攻 須藤とよ子 目次 1.研究の背景と目的 4 2.方法 5 1)対象者 2)調査期間 3)倫理的配慮 4)質問紙 3.結果 8 1)属性に関する回答の結果 2) 防災に関するアンケートの結果 4.考察 29 5.結論 31 6.今後の課題 32 文献 33 資料 35 謝辞 45 筑波技術大学 修士 (情報保障学) 学位論文 1. 研究の背景と目的 日本は、地理的要件や気象的要件の特殊性から世界でも稀にみる災害多発国であり、近年大規模な地震や台風、豪雨被害が頻発している。そこで、いかに災害に伴う被害を少なくするかが防災対策上の重要な課題の一つである。これには、地域住人の防災に対する自助、共助、公助の意識の関与が指摘されている(山田・柿本, 2008)。防災意識の中でも、特に自助と共助の高まりが重要とされ(吉田・柿本, 2014)、住民の防災意識を向上させる取り組みが行われてきた。立花ら(2013)は、居住地域の防災の実態に関する情報を住民集会などにより地域住民に伝えることで、防災意識に高まりがみられたことを報告した。また、山田ら(2008)は、「リスクコミュニケーション」を行うことによって、地域住人の防災意識の向上が見られたことを報告している。リスクコミュニケーションとは、行政と住民と専門家の間で災害がもたらすリスクについて、相互にコミュニケーションを繰り返し、害発生時のリスクに関する認識を共有する作業である。  以上のように、住民の防災意識の向上は、地域の防災関連情報を共有し、地域住民がコミュニケーションを行うことによってなされることが明らかにされてきた。  音声情報でのコミュニケーションに支障をきたすことが多い聴覚障害者は、地域住民とのコミュニケーションがとりにくく、そのため災害に関する情報の入手に困難が生じる可能性が考えられる。このため、聴覚障害者の防災意識が、聴者と異なる蓋然性があると考えられる。聴覚障害者の災害に関しては、被災時のコミュニケーションや情報収集における困難の実態の報告は見られるものの(川内, 2011; 松崎, 2013; 松崎ら, 2016)、減災に必要な防災意識を明らかにした調査は見られない。  そこで、本研究では、聴覚障害者と聴者に、質問紙による調査をおこない、聴覚障害者の防災の意識の実態を明らかにすることにより、聴覚障害者の防災対策に寄与する資料の提供を目的とした。 2.方法 1)対象者  全国の20代から60代の聴覚障害者、聴者を対象に、テーマ「聴覚障害者の防災の意識に関する調査」のアンケートを394部配布した。  聴覚障害者は、筑波技術大学の教員と20歳以上の学生や筆者と交流のある18人に対面で研究の説明書を用いて説明し、協力を得た。その他聴覚障害者12人と聴者25人にアンケートを郵送し、職場や地域での協力者の紹介を受け、協力の承諾を得られた対象者から回答を収集した。 2)調査期間  調査実施期間は、令和2年5月25日(月)から9月30日(水)までとした。 3)倫理的配慮 筑波技術大学倫理審査委員会の承認(承認番号2020-02)を得た。 4)質問紙  質問紙は、内閣府の防災に関する世論調査(2009,2014,2018)を参考に作成した。調査項目は、「属性(年代、世帯数、被災経験、被災した自然災害の種類、居住地域)」(1問)、「防災の関心や意識」(2問)、「災害の備えに対する行動」(8問)、「防災に関する地域との関わり」(4問)、「聴者とのコミュニケーションについて」(1問)、「防災に関して知りたいことや意見(自由記述)」(1問)の計17問とした。なお、「聴者とのコミュニケーションについて」は、聴覚障害者のみを対象とした。表1に調査項目と問いを示した。また質問紙を資料に添付した。 表1 調査項目と質問 (表) 属性 問1 1 性別 2 聴覚障害の有無 3 年代 4 世帯員数 5 居住する都道府県 6 被災経験の有無 7 被災経験有の場合、その災害の種類 防災についての関心や意識 問2 あなたは防災について関心がありますか。 問3 あなたはご自分の住んでいる地域が災害に対して安全だと感じていますか。それとも危険だと感じていますか。 災害の備えに対する行動 問4 防災全般に関する知識や情報を入手するために、積極的に活用しているものはどれですか。(複数回答) 問5 最近、家族や身近な人と、災害が起きた場合どうするかなどについ て話し合ったことがありますか? 問6 問5で「ある」とお答えの方、話し合った内容に当てはまるものに (✓)をしてください。(複数回答) 問7 問5で「ない」とお答えの方、その理由について当てはまるものに (✓)をしてください。 問8 災害が起きた時の連絡方法(安否確認方法)について、どのようなものを考えていますか。当てはまるものに(✓)をしてください。 (複数回答) 問9 ご家族以外の方で、災害について話し合う人はいますか。当てはま るものに(✓)をしてください。(複数回答) 問10 防災のために用意してある備蓄品や非常持ち出し品について(✓) をしてください。(複数回答) 問11 外出中の被災に備えて身につけているものに(✓)をしてください (複数回答) 防災に関する地域との関わり 問12 防災に関する「自助」「共助」「公助」という言葉をご存知ですか。 当てはまるところに(✓)をしてください。 問13 災害が発生した時の被災軽減には、国や地方公共団体による「公 助」、地域の住民やボランティア、企業などの連携による「共助」 自ら身を守る「自助」という対応があります。災害発生時に取るべ き対応としてあなたの気持ちに最も近いものを(✓)してください。 問14 防災訓練や避難訓練に参加し、経験したことのあるものに(✓)を してください。(複数回答) 問15 地域で大規模な災害が発生し、住民同士の助け合いが必要になった 場合、何ができると思いますか。当てはまるものに(✓)をしてく ださい。(複数回答) 聴者とのコミュニケーションについて 問16 聴者とのコミュニケーションについて当てはまるものに(✓)をしてください。(複数回答) 防災に関する自由記述 問17 防災に関して知りたいことや、ご意見がございましたらご自由に ご記入下さい。 5)分析方法  聴覚障害者と聴者の、属性や選択肢の回答数をカウントし、聴覚障害者と聴者を比較、検討をした。自由記述は記述内容の類似性にしたがってまとめた。 3.結果 1)属性に関する回答の結果  質問紙の配布数は394部で334部(聴覚障害者167人、聴者167人)の回答 があった。回収率は、84.8%であった。対象者の性別は、聴覚障害者の男性89人、女性78人、聴者の男性51人、女性116人であった。欠損値は各項目で除外した。 問1では対象者の属性を調査した。 (1)対象者の年代別の人数を表1に示した。30代の聴者が聴覚障害者と比較してやや少なかったが、他の年代では両者に大きな違いは見られなかった。 表2 対象者の年代別人数 (表) (2)対象者の世帯員数別世帯数を表2に示した。聴者の2人世帯がやや多かったが、他の世帯員数での聴覚障害者と聴者との間に大きな差は見られなかった。 表3 世帯員数別の世帯数 (表) 未記入数は、聴覚障害者が15人、聴者が3人であった。 (3)被災経験の有無を表3に示した。被災経験について聴覚障害者は有が125人、無が42人、聴者は有が113人、無が54人で聴覚障害者と聴者ともに約7割の人が被災経験有の回答であった。 表4 被災経験の有無の人数 (表) (4)被災した自然災災害の15種類の結果を表4に示した。聴覚障害者、聴者 ともに地震が最も多く、台風、豪雨、河川の氾濫、津波、豪雪と続いた。 被災経験には聴覚障害者と聴者の間では大きな違いは見られなかった。 表5 被災経験のある災害の種類の回答数 (表) (5)対象者の居住地を表5に示した。対象者は関東地方で聴覚障害者がやや多 く、中部地方には聴者がなく、さらには九州地方に聴者が多いという偏りは見 られたものの、その他の地域では聴覚障害者、聴者の対象者数に大きな違いは 見られなかった。 表6 回答者居住地別人数 (表) 2) 防災に関するアンケートの結果 問2「あなたは防災について関心がありますか」の回答人数を図1に示した。「非常に関心がある」の聴覚障害者の回答数は聴者と比較して多かった(g=0.14, p<.01)。その他の回答数には差が見られなかった。  このことから、防災に強い関心を持つ人が聴覚障害者には多いことが示された。 図1 防災の関心の程度 **p<.01 (図) 問3「自分の住んでいる地域が災害に対して安全だと感じていますか」の回答人数を選択肢ごとに図2に示した。「ある程度安全だと思う」は、有意に聴者が多く(g=0.17, p<.01)、「安全とも危険とも言えない」の人数は聴覚障害者が有意に多かった(g=0.16, p<.01)。その他には有意な差は見られなかった。  このことから聴覚障害者のほうが、居住地域に対する安全感は低いことが示された。 図2 地域の災害に対する安全性への意識 **p<.01 (図) 問4「防災全般に関する知識や情報を入手するために、積極的に活用しているものはどれですか(複数回答)」の回答数を選択肢ごとに図3に示した。  ラジオの利用は聴者が多く(g=0.41, p<.01)、防災訓練・避難訓練(g=0.12, p<.05)と所属する協会やサークルなどの団体(g=0.38, p<.01)の回答数は聴覚障害者のほうが多かった。他に差は見られなかった。  このことから、聴覚障害者は、防災に関する情報を一般のメディアに加え、個人の人的なネットワークを聴者よりも多く利用して入手していることがわかった。 図3防災全般に関する知識や情報を入手するために積極的に活用しているもの**p<.01 (図) 問5「家族や身近な人と災害が起きた場合についてどうするかなどについて、話し合ったことがありますか」の回答は、「ある」が聴覚障害者117人,聴者106人、「ない」が聴覚障害者50人、聴者61人であった。人数の偏りに有意な差はなく、災害に関して家族や身近な人と話す経験については、聴覚障害者と聴者に差は見られなかった。 問6は、問5で「ある」と回答した者に対しその内容を尋ね、その回答を図4に示した。「家族や親族との連絡手段(安否確認)」の回答数は、聴覚障害者のほうが有意に多く(g=0.11, p<.01)、また「非難が必要になったときの方法、時期、場所について」も聴覚障害者のほうが有意に多かった(g=0.11, p<.01)。その他には有意な差は見られなかった。  このことから聴覚障害者は、防災に関して家族と概ね聴者同様の話し合いをしていることが認められた。 図4 家族や身近な人と災害に関する話し合いの内容 **p<.01 (図) 問7は、問5で「ない」と選択した回答者に対してその理由についての回答を図5に示した。いずれの選択肢にも差は見られなかった。 図5 家族や身近な人と災害に関する話し合いをしない理由 (図) 問8「災害が起きた時の連絡方法(安否確認方法)について、どのようなものを考えていますか(複数回答)」に対する選択肢ごとの回答を図6に示した。 災害伝言用ダイヤル(g=0.40, p<.01)、災害用音声お届けサービス(g=0.41, p<.05)は聴者が多く、学校や勤め先の安否確認システム(g=0.11, p<.01)と所属する協会やサークルなどの団体(g=0.33, p<.01)は、聴覚障害者の回答数が有意に多かった。他は有意な差はなかった。 このことから、聴覚障害者、聴者ともにSNSなどの大衆向けの連絡手段を利用し、他にも学校や勤め先の安否確認システムや所属する協会やサークルなどの個人的な人的ネットワークを多く利用していることが判明した。 図6 災害が起きた時の連絡方法 (安否確認方法) *p<.05 **p<.01 (図) 問9「家族以外の方で、災害について話し合う人(複数回答)」について選択肢ごとの回答数を図7に示した。聴覚障害者は、聴者よりも「所属する協会やそれに類する団体の人」の回答数が有意に多かった(g=0.22, p<.01)。その他の回答に有意な差は見られなかった。  このことから、聴覚障害者は、所属協会などの個人的なネットワークを通して災害に関する連絡を取っていると推察できる。 図7 家族以外で災害について話し合う人 **p<.01 (図) 問10「防災のために用意してある備蓄品や非常持ち出し品について(複数回答)」の回答を選択肢ごとに図8に示した。聴覚障害者と聴者の間に違いは見られなかった。 図8 防災のために用意してある備蓄品や非常持ち出し品 (図) 問11「外出中の被災に備えて身につけているもの」について選択肢ごとの回答を図9に示した。聴覚障害者のほうが、身元や血液型、緊急連絡先などを記したカード(g=0.20, p<.01)、メモ帳、筆記具(g=0.13, p<.01)、携帯電話やスマートフォンなどのモバイルバッテリー(g=0.13, p<.01)、かかりつけ病院の診察券や、処方箋を書いたメモ(g=0.12, p<.05)、携帯用LEDランプや笛(g=0.16, p<.01)の回答数において聴者よりも多かった。  このことから、聴覚障害者は、災害時のコミュニケーションに有用なものを聴者よりも多く携行していることが窺えた 図9 外出中の被災に備えて身につけているもの *p<.05 **p<.01 (図) 問12「防災に関する、『自助』『共助』『公助』という言葉」の理解について」の回答を図10に示した。聴覚障害者と聴者に差は見られなかった。 図10 「自助」「共助」「公助」の言葉の理解 (図) 問13「災害が発生した時の被害軽減には、国や地方公共団体による『公助』、地域や住民やボランティア、企業などの連携による『共助』、自ら身を守る『自助』と言う対応があります。災害が発生時に取るべき対応として、あなたの考えに最も近いもの」に対する回答を図11に示した。聴覚障害者と聴者の回答数に差は見られなかった。 図11 「公助」「共助」「自助」に対する考え方 (図) 問14「防災訓練や避難訓練に参加し、経験したことのあるもの(複数回答)」に対する回答数を図12に示した。地震経験において聴覚障害者と聴者の人数の偏りが有意であった(χ2(1)=13.2, p<.01)。残差分析の結果、聴覚障害者のほうが地震体験者の数は多かった。その他には有意な差は見られなかった。  このことから防災訓練・避難訓練の体験は聴覚障害者と聴者では、ほとんど違いがないことが示された。 図12 防災訓練・避難訓練で体験したこと **p<.01 (図) 問15「地域で大規模な災害が発生し、住民同士の助け合いが必要になった場合、何ができると思いますか(複数回答)」の回答を図13に示した。聴覚障害者と聴者に回答数の差は見られなかった。  このことから、災害発生時における聴覚障害者の地域住民との協働可能とする行動には聴者と同様な共助意識があることが示された。 図13 住民同士の助け合いが必要になった場合できると思うこと (図) 問16「聴者とのコミュニケーションについて当てはまると思うものについて(複数回答)」は、聴覚障害者のみに質問し、その選択肢別の回答数を図14に示した。「学校や職場や地域の人たちに自分が聞こえないことを発信している」に136の回答数があり「学校や職場や地域の行事などに参加し、顔見知りを増やすようにしている」に73、「聴者とのコミュニケーションは積極的に取っている」では93であった。また「聴者とのコミュニケーションは消極的になってしまう」に40の回答数があった。「その他」では、「聞こえないことに気づいてもらうことの困難さ」や、「少人数なら聞えないことを発信できるが大勢の中では伝えにくい」、「聞こえなくても声を出すと聞こえると思われるので、声を出さないように注意している」、「手話はできないので筆談をするようにしている」などであった。  このことから、多くの聴覚障害者は聴者と積極的にコミュニケーションを取っているものの、場面や状況により困難を抱えていることも窺えた。 図14 聴者とのコミュニケーションについて (図) 問 17 の自由記述では防災に関して知りたいことや意見など、聴覚障害53 人、聴者 63 人の記述があり、後述の分類項目ごとの記述数は、それぞれ 399、389 であった。自由記述数について二項検定を行った結果、両者に有意な差は見られなかった (g=0.0063)。記述を内容の類似性にしたがってまとめ、「被災経験の有無との関連」、「聴覚障害の理解とコミュニケーションの課題」、「災害時の情報に関すること」、「防災・避難訓練のあり方」、「防災の心構え」、「日頃からの備え、自助」、「日常生活における地域のつながり、共助」」、「避難や避難所での課題」、「協会やサークルなど団体、組織とのつながり」、「行政・関係機関への要望」、「感染症の不安、影響」、「その他」の12分類項目を抽出した。分類項目の妥当性を検証するため、筆者に加え、大学院生2人が独立して、自由記述を12項目へ分類した。分類の一致率は聴覚障害者88%、聴者90%であった。 図15に聴覚障害者と聴者の分類項目ごとの記述数を示した。また、分類項目における聴覚障害者と聴者の記述例を表7に示した。  被災経験の有無との関連(g=0.22, p<.01)、防災・避難訓練のあり方(g=0.18, p<.01)、防災の心構え(g=0.23, p<.01)、日頃からの備え、自助(g=0.16, p<.05)において聴者の記述数のほうが多かった。一方、聴覚障害理解とコミュニケーションの課題(g=0.21, p<.01)、災害時の情報に関すること(g=0.23, p<.01)、行政・関係機関への要望(g=0.19, p<.01)では聴覚障害者の記述数のほうが多かった。このことから、聴覚障害者は、災害時のコミュニケーションや情報収集に関する不安や災害時の情報の取得に関する配慮、機器の発展を行政や関係機関に望む意見を有していることがわかった。 図15 防災に関して知りたいことや意見 *p<.05 **p<.01 (図) 表7 「防災に関して知りたいことや意見」の自由記述の分類項目と記述例 (表) 分類項目    1 被災経験の有無との関連 聴覚障害者の記述例 熊本地震で得た。2~3 日分の食べ物は日ごろから用意。夜の災害の際、懐中電灯などは常に用意する。緊急災害で、停電か携帯の混戦で情報を得られない時は不安を感じる。日本は自然災害が多い国ではありますが、災害被害を少なくするため、日頃から気象情報等の情報をスマホまたはTV などで得ることが必要と思っています。 聴者の記述例 阪神大震災を経験しました。まずは己の身の安全、家族の安全確保。次に近所。少し離れた(徒歩圏内)知人の安否確認。1995 年は携帯電話、スマホなど一切なく、当日朝、幸運にも大切な家族には電話がつながり、そこから親戚などへ安否を伝えることができました。我が家の電話で隣人も親戚へ連絡。通りすがりの見知らぬ人との会話も重要な情報でした。(例:○○病院に井戸があり、水がもらえる) 正確な情報の収集が重要。最近は災害時でも情報があふれる。その中で真偽を判断する力も日常から気をつけておかなければならないと思います。 分類項目 2 聴覚障害の理解とコミュニケーションの課題 聴覚障害者の記述例 聴覚障害は、情報障害、コミュニケーション障害という側面もあり、災害時に必要な支援を受けられるよう、日頃から近所づきあいを大事にする等、自分で自分を守る努力をしなければならないのですが、時に負担を感じることもあります。(コミュニケーションがうまくはかれるようになるには多くの時間が必要ですし、都市部では引っ越しなどで近所づきあいが難しいとも聞いています。)行政や社会福祉協議会、自治会の方で聴覚障害について知って頂けるような取組をお願いしたいと思っています。 聴者の記述例 東日本大震災を実際経験し、聴覚障害のある方の苦悩や不便さを見聞きしました。避難所では、情報が分からず大変だった、コミュニケーションが取れなかったなど、生徒から教えてもらいました。いかに聴覚障害者が聴者のコミュニティで生活していくのが大変なのかを生徒から学びました。マイノリティである障害を持った方々をどのようにコミュニティに参加してもらい、どのように一緒に生活していくのかということをこの共生社会と言われている今、真剣に考えていかなければならないのではないでしょうか。ともすれば、ろう学校で避難していた子どもたちは、地域に帰り生活することの方が社会に参加できず、情報も取れず、コミュニケーションも取れず大変なこともあったのではないかと思うこともあります。 分類項目 3 災害時の情報に関すること 聴覚障害者の記述例 聴覚障害があるため、情報を得にくいことが最も不安です。今はスマホがあるので、スマホのアプリを活用できますが、スマホも使えなくなった場合、どのように情報を集めればよいのか。公民館や区役所は近くにないので、そのことが災害時の最も大きな不安です。 聴者の記述例 私は聴者ですが、子どもが重度難聴なので災害時の対応などに関心を持っています。普段から近隣の人にも知っていただくことが大事だと思いますが、あまりできていないのが現状です。新型コロナウイルスの感染に伴い、知事などの記者会見に手話通訳がついているのを多く見かけるようになり、また SNS 等で以前よりは情報を得やすくなっているとは思います。しかしまだ十分とは言えないので、セミナーなどに参加するなどして学びながら、発信していきたいと思っています。 分類項目 4 防災・避難訓練のあり方 聴覚障害者の記述例 自分の地域の指定避難所宿泊体験に手話サークルの仲間と一緒に参加しました。体育館で寝袋で寝た経験から、真っ暗でろう者は周囲が見えない、足音が響いてよく眠れないことを体験しました。手話サークル全員と手話で話している状況を回りが見て、私がろう者だと理解していただいたことがわかることがありました。それは、たまたま私が一人でいた時、放送内容を見知らぬおじさんが口話で話しかけられたことでした。それを機会に、自分からろう者であること、協力できることはするという発信が大切だと実感しました。公助=50%国、県行政として聴覚障害者に対する支援(例えば情報を表示する掲示板、テレビに字幕や手話言語の導入)をきちんとしておく。共助=30%公助システムをうまく活用しながらお互いに助け合っていく。自助=20%自分のことを助けて欲しいことを発信していく。とても大切なことだと思っています。 聴者の記述例 防災に関する訓練は必ず必要になると思う。どんな状況下でも能動的に動ける様、心と身体と知識を身につけ、対処できる体制を作っておきたいと思います。「災害はいつでもやってくる」 分類項目 5 防災の心構え 聴覚障害者の記述例 当方は肢体不自由(車いす)と感音性難聴の重複障害なので複合的な防災を心構える必要がある。医学的障害の部位は異なれど、当方のような方は多数いらっしゃると思われる。そのためには当事者団体間のネットワークは当然のこと、共同ワークショップなどの開催を通じて防災意識を高めることが重要だと考える。 聴者の記述例 まさか電気が絶つなんて思いもしてなかったけど地震の影響で、二日間もブラックアウトでした。我が家のトイレは自動で流れる設定だったし、オール電化なので、生活のほとんどが機能しなく本当に大変でした。そんな体験をしたのに、日常に戻り時間が経つとついついあの頃のことを忘れてしまっていた自分に今回のアンケートをきっかけに気付かされました。改めて、様々なことを想定して毎日を送っていきたいと思います。 分類項目 6 日頃からの備え、自助 聴覚障害者の記述例 緊急会見での手話通訳の配置がないため、情報が遅れて入る。今回のコロナウイルスによる会見で手話通訳が入ることが多かったので、今後期待していきたい。災害は、いつ、どこで起きるか予測不可なので、普段から備えることが大切だと思います。最終的に自分の命を守るのは自分。北海道胆振東部震災による停電でかなり苦労したので、被災後にガスコンロ(ボンベ用)とランプを購入しました。 聴者の記述例 想定外が起こりうるのが災害であるので、基本線は災害に備えた訓練に準ずるとして、多くの場面ではその都度、柔軟に対応する必要があると感じている。とくに、その時集まったメンバーの個人的意見等がその場の意思決定に大きく影響するように感じている。(現場のルールが各地で違っていく。)そのため、「基本線を確認する時点で、排除されないようにする」「想定外の事態発生時にも、理解を得られるような関係を作っておく」ことは、聴覚障害児者にとって、とても重要と思われる。一般にイメージされる聴覚障害者像でとらえられてしまうと、個々のニーズの違いに合わない対応をされてしまうだろう、そういう誤解を防ぐためには、普段から「個と個の付き合い」を身近に作っておくことが大事であり、様々な障害像、それぞれのニーズが存在する」ことの「自分がどうして欲しいか」を他者に上手に伝えられるような本人のスキル向上が大事であると考える。 分類項目 7 日常生活ににおける地域のつながり、共助 聴覚障害者の記述例 聴覚障害があるため、いざという時は地域の助けが必要と思い、ふだんから近所の人とのお付き合い、コミュニケーション(筆談・ジェスチャー)をとるように心がけています。(主人の生まれ育ったところなのでやりやすい面もあったので)又、地域の(市)聴覚障害者協会の活動の中で、防災に関するいろいろな情報・体験(応急救護や避難訓練を、手話通訳付きでできたこと)があり、知識として備わっているので安心感はあります、、が本当に災害が起きたらどうなんだろうと、備えがあってもパニックになりそうで心配です。このアンケートを書くことで、防災への意識が高まり(今、九州などで豪雨があることもあり)、きちんと備えておこう!!と改めて思ったのでよかったです。ありがとうございました。 聴者の記述例 マンションに住んでいるため不安があります。近所の人との付き合いもなく、災害があった場合手伝いたくても消極的になってしまうと思うので、防災に関すること、体験等に積極定期に参加したいと思います。 分類項目 8 避難や避難所での課題 聴覚障害者の記述例 災害が起きた時、避難場所に身体障害者専用の受付を設置して欲しい。聴覚障害者の対応には手話通訳者派遣と筆談など用意して欲しい。情報を伝えるため、ポスターのように書いて貼りだして欲しい。防災の情報は音声が多いので、字幕デジタルの形での機械を作って欲しい。 聴者の記述例 これまでの火災訓練、地震訓練は、集合場所までの円滑な避難誘導が中心であった。 (例:全員が避難完了するまでの○○分でした。)今後は、避難後、保護者に子どもを安全に引き渡すまで、避難場所における対応が重要であると思う。(例:コロナウイルスが猛威を振るう中、大雨警報中での避難場所での対応もありうるかもしれない。) また、地震で得られた貴重な体験や重大事態、避難所生活等々の話題が学校現場から「風化」されることがないよう、語り継ぎや訓練、行政が掲げる「全国」「県下」主催の実地訓練に対応すべきと思う。 分類項目 9 協会やサークルなど、団体・組織とのつながり 聴覚障害者の記述例 私は、防災に関して行動しているけど、音が異常発生時聞こえないのでどうすればよいかわからないので、一番大切な事は目視確認(360 度)をしてから行動する。又は負傷者を見つけたら私から触らないで他人に知らせて助けてもらう。手話通訳者と手話をできる限り(少しでも)に一緒に行動する。去年の台風 19 号の時、坂戸市聴力障害の会の役員と手話サークル会など団体のスマートフォンの LINE を使用して安否確認と情報など連絡して大変良好でした。 聴者の記述例 災害のニュースを見るたびに、もし自分が避難しなければいけない状況に陥ったらと想像はしますが、なかなか本気になれない自分がいます。それでもと思い避難用品を購入して、これで大丈夫なのかと思いながら保管はしています。豪雪時にとても不便な生活を強いられた経験はありますが、原発の近くに居住していますので、その不安はありながら、本格的な避難生活については想像できない状況です。聴覚障害者団体の人たちと県、市の訓練に参加したことはありますが、災害時に通訳として支援する立場にもなると思いますが、具体的にその状況になった時の動き方についての訓練や話し合いの経験はなく不安に思っています。 分類項目 10 行政・関係機関への要望 聴覚障害者の記述例 災害時に強い携帯電話・スマートフォン(回線パンクしないもの)。字幕付きのニュース(特に地方局のニュースに字幕なし)。車のテレビにも字幕を。安否確認の方法は、聞こえないとわからないまま。 情報弱者への正しい情報提供方法はおいてきぼりにされる。 避難訓練のあり方。大川小の例を考えて欲しい。 「大丈夫だろう」は通用しない。 震災うつの方への対処は? あらゆることを想定する難しさ、何があるかわからない。 地域の人から理解してもらう難しさ。口でしゃべると相手も口でしゃべってくる。(聞こえないのでわからないのに) 聴者の記述例 地震などの災害時にも安定して使用できる公共 Wi-Fi や、インターネット環境は今後整備されるのか、そもそも実現可能なのか知りたいと思います。 分類項目 11 感染症の不安・影響 聴覚障害者の記述例 今後、聴覚障害者に対する防災について不安。安否、情報伝達が必要だと思います。コロナウイルスも含めて、地震が来ると感染されてしまう可能性があります。どのように感染防止の対応をすべきかなどお願いしたいです。交通機関の情報も必要です。以上です。 聴者の記述例 外出中に被災することをあまり考えていませんでした。もう少し家族と相談しておきたいと思いました。今はコロナのこともあり、避難所でどう過ごしたらいいのか新しい課題について学習する機会も早めに必要だと思いました。透明マスク、フェイスシールドなど、通訳やサークルの時使っているけれど避難所でも外出中でも持っておいたほうが良さそうですね。そのあたりの情報をどこまでろう者が理解しているか、なかなか手話サークルなどでもゆっくり話せない。ろう者と一緒に参加した社協の防災セミナーがまた今年有ればいいが、、人が集まれないので難しいかも。いろんなルートから情報を発信するのが大事なんでしょうね。取り留めなく申し訳ありません。 分類項目 12 その他 聴覚障害者の記述例 アンケート結果報告書を下さい。 聴者の記述例 アンケートの結果から、学校、寄宿舎で取り組むべきことなどありましたら、教えていただきたいです。研究の目的とは異なりますが。 4.考 察  本研究は、聴覚障害者の防災意識を明らかにするため、全国の聴覚障害者と聴者を対象に、防災意識に関するアンケートを行った。アンケートは、対象者の属性要因と防災意識に関する質問で構成された。 防災意識の違いには、性別、年齢、所属、居住形態、出身地域、家族構成等の属性要因の関与が知られている(有馬, 2011; 平石・石川, 2012; 田中・佐土原・村上, 1993; 河田・舩木, 2004; 吉村・石川・井村, 2004; 原田・田中・張替, 2012; 重松ら, 2009)。本調査においては、聴覚障害者と聴者の属性要因に差が見られなかったことから、以下、防災に関する質問の回答は、両者の防災意識の差を反映しているものとして考察を述べる。  防災意識に関する質問のうち、防災への関心は、聴覚障害者のほうが高い値を示した。  防災の備えに関する行動面のうち、災害関連の情報の入手ルートについては、聴者がテレビや防災情報に関するホームページ等の大衆を対象としたメディアの利用を回答する者が多かったのに対し、聴覚障害者は、大衆を対象としたメディアを利用しながらも、「所属する協会やサークルなどの団体」を回答する者も多く、個人の人的ネットワークの利用が広くなされていた。個人的なネットワークは、災害発生時の安否確認方法としても多くの聴覚障害者が利用していると回答していたことから、聴者よりも多様なルートを用いて災害に関する情報を収集していることがわかった。また家族間で、災害発生時の対応について、どのような話をしているかを尋ねた問いでは、「家族との連絡手段(安否確認)」や「避難が必要になった時の方法、時期、方法について」とする回答が聴者よりも多く、家族間で災害発生時の対応に関する話題が多く取り上げられていることがわかった。  防災に関する物的な備えとしては、身元や緊急連絡先などを記したカード、メモ帳、携帯電話やスマートフォンのモバイルバッテリーとの回答が聴者よりも多く、聴覚障害者は、災害時のコミュニケーションに役立つと思われる物を携行していることが明らかとなったことから、聴覚障害者は、災害に対する連絡手段や対応さらには物的な備えを行っていることが明らかとなった。これらの防災に対する関心の程度や行動は、聴覚障害者の自助意識の高さを窺わせるものであり、特に災害関連情報の収集とコミュニケーションに関する備えが手厚いことには、 災害発生時のこれらに対する危機感の強さを窺わせる。ただし、聴覚障害者の自助、共助、公助に対する考え方(問13)は、聴者と同様に、左記3者のバランスを重視した考え方を重視する回答が多かったことから、聴覚障害者が、自助、共助、公助を何ととらえ、またバランスを如何に考えているかの点の詳細な検討が今後必要であろう。  地域における災害対応のあり方や行動については、上記の通り聴者と同様に自助、共助、公助のいずれをも重視する考え方を有し、また防災訓練や避難訓練の経験状況と災害発生時に行動可能と想定される共助行動も、聴者と同様であった。加えて学校や職場や地域において自分が聞こえないことを発信し、積極的に聴者とのコミュニケーションへの工夫をしているとする回答が多く見られ、これらは災害発生時にも地域の住人と共同した行動をとる意識の現れと考えられる。ただし自由記述では、災害が発生した状況を具体的に想定した際には、音声情報での災害情報取得の困難、情報機器の不備に対する焦燥感、周囲の人の聴覚障害の理解やコミュニケーション方法の不安が多く示され、自助意識や共助意識および、これらの行動に関する記述は、ほとんど見られず、他者や公的機関に対する支援の要望が多く見られた。これらのことから、聴覚障害者の考える防災のあり方や行動は、平時については、自助意識が高く、共助意識についても聴者同様であることが窺えるが、実際の災害発生場面では、自助意識や共助意識よりも、公助意識が高くなることが想定された。聴覚障害者は、災害発生時においては被災現場で交わされている情報や指示が得にくくなることや、コミュニケーションが困難になることから共助行動がとれなくなるとする報告があり(川内, 2011)、本調査の結果からも、多くの聴覚障害者は、災害発生の前後で自助意識と共助意識に変化が生じ、公助意識が高まる可能性が推察された。  上記のことから、聴覚障害者の防災意識向上の課題は、災害発生時の共助意識の維持にあり、そのためには、災害発生時における聴者とのコミュニケーションや災害情報の入手に対する不安軽減が重要である。そこで、この視点を含んだ防災訓練プログラムの設計と実施が望まれる。具体的には、災害発生時を模した実践的な防災演習を聴者と行い、その場で聴者とコミュニケーションをとり、災害情報を得る体験をすることが考えられる。 5.結論  聴覚障害者は、防災に関する自助意識が高く、共助意識は聴者と同様であるものの災害発生時には、公助意識が高くなる。これらには、ともに災害時の災害関連情報の入手とコミュニケーションの困難に対する危機感の関与が窺われる。このことから聴覚障害者の防災意識向上の課題は、災害発生時の共助意識の維持にあり、その対策としては、災害発生時を模した防災訓練において、災害関連情報の入手方法とコミュニケーションの取り方に関する実践的な演習を行い、これらに対する危機意識を低減する取り組みの実施が重要と考えられる。 6.今後の課題  最後に本研究の課題を述べる。本研究においては、年代や居住地域など防災意識に関与する属性要因に幅広い分布が見られる聴覚障害者の防災意識をまとめて明らかにし、聴者との違いを検討した。しかし、聴覚障害者の防災意識に属性要因間による違いの存在が想定されることから、今後、この視点における分析が必要であろう。また、本研究の属性要因には、聴覚障害の程度や日常使用するコミュニケーション手段が含まれていなかった。これら2点は、地域住人とのコミュニケーションの頻度や内容との関連が想定されることから、今後の検討が必要であろう。また、アンケートの実施形態については、今後、手話や筆談を用いたインタビュー形式を用いて、聴覚障害者の質問の内容理解を容易くし、また聴覚障害者が表現しやすい方法を用いて調査を行い、本研究で行った質問紙による調査結果との比較が求められる。最後に結果の分析方法の課題も指摘できる。本研究においては、聴覚障害者の防災意識について、質問項目による回答と自由記述による回答を総合的に判断し、災害発生時における聴者とのコミュニケーションや災害情報の入手に対する不安が、自助意識に促進的に働き、災害発生時の共助意識には抑制的に働くとの関係性モデルを推定したが、今後は、多変量解析が利用可能な調査方法を用いてモデルの妥当性の検証を行うこと、あるいはグラウンデッドセオリー等の定式化された質的分析方法を用いてモデル提案を行うことも課題である。 参考、引用文献 1)有馬昌宏(2011)住民の防災意識および防災対策の地域差に関する研究-全国ウェブ調査の結果から-,日本地域学会第48回年次大会学術発表論文,http://www.jsrsai.jp/Annual_Meeting/PROG_48/Resume1/rA05-4%20ArimaMasahiro.pdf ],3.13. 2)原田秀子・田中周平・張替直美(2012)災害訓練への参加を通しての看護学生の災害看護についての学び,山口県立大学学術情報 看護栄養学部紀要 5:37-46. 3)平田京子・石川孝重(2012)地震に対する家庭の備えと防災拠点設置に関する住民の意識調査,日本女子大学紀要 家政学部 59:79-84,2012 4)河田惠昭・舩木伸江(2004)大学生の防災意識についての調査研究,災害情報 2:114-119. 5)川内規会(2011) 震災時における聴覚障害者の情報授受の課題-人と人との関わりとコミュニケーションの視点から-.青森県保健大学地域連携・国際センター雑誌,12,11-19. 6)松崎丈(2013) 東日本大震災で被災した聴覚障害者における問題状 況―情報アクセスの視点から―.宮城教育大学特別支援教育総合研究センター研究紀要,8,15-32. 7)松崎丈・芳賀隆人(2016) 東日本大震災の発災直後における聴覚障害者の情報 獲得行動とその背景にある心理状況~TEMによる分析を通して~ 宮城教育大学特別支援教育総合研究センター研究紀要,11,1‐11. 8)内閣府 防災に関する世論調査(2009,2013,2017) https://survey.gov-online.go.jp/h29/h29-bousai/index.html 9)内閣府防災に関する世論調査の概要(2002,2014,2018) https://survey.govonline.go.jp/h29/h29-bousai/gairyaku.pdf 10)内閣府 防災白書(2018) http://210.149.141.46/kaigirep/hakusho/h30/honbun/1b_1s_01_01.html 11)重松幹二・向井峻大・石本哲人・亀井一郎・正本博士(2009)福岡大学学生および教職員の防災意識調査,福岡大学工学集報83:79-87. 12)総務省 災害用伝言サービス,災害発生時における通(2009) https://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/ictseisaku/net_anzen/hijyo/dengon.html 13)立花秀夫・中村和之・川口恵一郎・熊谷浩二(2013)防災活動における自助・共助・公助と市民意識 -その事例- 地盤工学会誌,61(3),20‐21. 14)田中希代・佐土原聡・村上處直(1993)横浜市住民の家庭レベルでの防災対策及び防災意識に関する調査研究その1,日本建築学会大会学術講演梗概集(関東):693-694. 15)山田文彦・柿本竜治・山本幸・迫大介・岡裕二・大本照憲(2008)水害に対する地域防災力向上を目指したリスクコミュニケーションの実践的研究. 自然災害科学, 27(1),25-43. 16)吉田護・滝本竜治(2014) 災害マネジメントフェーズを考慮した住民の自助・共助・公助意識と減災行動. 日本都市計画論文集,49(3),297‐302. 17)吉村敦子・石川孝重・伊村則子(2004)都心キャンパスに通う大学生の地震防災に対する認識と行動に関する研究-その2 地震・防災に関する意識と体験に注目した分析-,日本建築学会大会学術講演梗概集(北海道):443-444. 資料 質問紙 問1.当てはまるところにご記入や(✓)をしてください。 性 別 ( )①男性 ( )②女性 聴覚障害 ( )①あり ( )②なし 年 齢 ( )①20 代 ( )②30 代 ( )③40 代 ( )④50 代 ( )⑤60 代 世帯員数 ( )①1人 ( )②2人 ( )③3人 ( )④4人 ( )⑤5人以上 お住まいの都道府県   都  道  府  県 被災経験の有無 (本調査において、災害とは下記の①~⑭を指しています。) 被災をした、または身近に危険を感じた経験( )①有 ( )②無 ➀有の場合、災害の種類 ( )①地震 ( )②津波 ( )③台風 ( )④豪雨 ( )⑤河川の氾濫 ( )⑥土砂崩れ・崖崩 ( )⑦高潮 ( )⑧豪雪 ( )⑨雪崩 ( )⑩火山噴火 ( )⑪落雷 ( )⑫ガス爆発 ( )⑬竜巻 ( )⑭火災 ( )⑮その他(          ) 問2.あなたは防災について関心がありますか。この中から1つだけ(✓)をしてください。 ( )①非常に関心がある ( )②どちらかと言えば関心がある ( )③どちらかと言えば関心がない ( )④まったく関心がない ( )⑤わからない 問3.あなたは、ご自分の住んでいる地域が災害に対して安全だと感じていますか。それとも危険だと感じていますか。この中から1つだけ(✓)をしてください。 ( )①安全だと思う ( )②ある程度安全だと思う ( )③安全とも危険とも言えない ( )④ある程度危険だと思う ( )⑤危険だと思う ( )⑥わからない 問4.防災全般に関する知識や情報を入手するために、積極的に活用しているものはどれですか。当てはまるものにいくつでも(✓)をしてください。 ( )①テレビ ( )②ラジオ ( )③新聞 ( )④雑誌・書籍 ( )⑤国や地方公共団体などのパンフレット ( )⑥防災訓練・避難訓練 ( )⑦ツィッター・フェイスブックなどの情報 ( )⑧防災情報のホームページ・アプリなどの情報 ( )⑨防災に関する展示会・講演会・セミナー・シンポジウムなど ( )⑩地域の会合 ( )⑪防災ボランティア ( )⑫勤務先 ( )⑬家族・知人 ( )⑭所属する協会やサークルなどの団体 ( )⑮その他( ) ( )⑯特にない ( )⑰わからない 問5.最近、家族や身近な人と、災害が起きた場合どうするかなどについて話し合ったことがありますか。あてはまる方に(✓)をしてください。 ( )①ある ➡ 問6へ ( )②ない ➡ 問7へ 問6.問5.で「①ある」とお答えの方、話し合った内容についてこの中から当てはまるものにいくつでも(✓)をしてください。 ( )①心構えについて ( )②避難が必要になった時の方法、時期、場所について ( )③食料、飲料水の備蓄や非常持ち出し品の用意について ( )④家族や親族との連絡手段(安否確認など)について ( )⑤家屋の安全性について ( )⑥地域の災害危険個所について ( )⑦居住地域で過去に起きた災害について ( )⑧居住地域以外で過去に起きた災害について ( )⑨その他( ) 問7.問5で「②ない」とお答えの方、その理由についてこの中から当てはまるものに1つだけ(✓)をしてください。 ( )①十分な話し合いがしてあると思うから ( )②話し合う時間がないから ( )③話し合う相手がいないから ( )④どのような方法があるかわからない ( )⑤面倒だから ( )⑥その他( ) 問8.災害が起きた時の連絡方法(安否確認方法)について、どのようなものを考えていますか。当てはまるものにいくつでも(✓)をしてください。 ( )①災害用伝言ダイヤル(171) ( )②災害用伝言板 ( )③災害用伝言板(Web171) ( )④災害用音声お届けサービス ( )⑤SNSやLINE、メールなど ( )⑥遠くの親戚や知人を中継役と決めて連絡 ( )⑦学校や勤め先の安否確認システム ( )⑧所属する協会やサークルなどの団体に連絡 ( )⑨その他( ) ( )⑩どのようなものがあるか知らない 問9. ご家族以外の方で、災害について話し合う人はいますか。当てはまるところにいくつでも(✓)をしてください。 ( )①近所の人 ( )②自治会・町内会の人 ( )③親せきの人 ( )④学校や職場・アルバイト先などの人 ( )⑤趣味の講座やサークルなどで会う人 ( )⑥所属する協会や、それに類する団体の人 ( )⑦友人、知人 ( )⑧話し合う人はいない ( )⑨その他( ) 問10.防災のために用意してある備蓄品や非常持ち出し品について、いくつでも(✓)をしてください。 ( )①飲食品など (飲料水・清涼飲料水・米、乾パン、缶詰、お菓子等) ( )②衛生用品、医薬品 (体ふきシート、歯磨きシート、ごみ袋、常備薬 ( )③調理器具や食器(カセットコンロ・ボンベ、紙皿やラップ、アルミホイル、割箸等) ( )④照明器具、暖房器具(懐中電灯ランタン,ろうそく,マッチ,ライター,石油ストーブ等) ( )⑤排泄用品(簡易トイレ、ごみ袋、トイレットペーパー、ティッシュペーパー等) ( )⑥生活用品(テント、毛布、ビニールシート、石鹸、タオル、眼鏡、ナイフ、爪切り、紐ひも等) ( )⑦情報機器 (モバイルバッテリー、ラジオや予備電池等) ( )⑧その他( ) 問11.外出中の被災に備えて身につけているものにいくつでも(✓)をしてください。 ( )①身元や血液型、緊急連絡先等を記したカードなど ( )②メモ帳、筆記具など ( )③マスクやハンカチ、ティッシュペーパーなど ( )④飲み物やチョコレートや飴など ( )⑤かかりつけの病院の診察券や病名・処方薬を書いたメモなど ( )⑥携帯用LEDランプや笛 ( )⑦携帯電話やスマートフォンなどのモバイルバッテリー ( )⑧ その他( ) 問12.防災に関する、「自助」「共助」「公助」という言葉をご存知ですか。 当てはまるところに(✓)してください。 ( )①聞いたり見たりしたことがあり、言葉の意味も理解している ( )②聞いたり見たりしたことはあるが、言葉の意味はわからない ( )③聞いたことも、見たこともない 問13. 災害が発生した時の被害軽減には、国や地方公共団体による「公助」、地域の住民やボランティア、企業等の連携による「共助」、自ら身を守る「自助」という対応があります。災害発生時に取るべき対応として、あなたのお気持ちに最も近いものを1つだけ(✓)してください。 ( )①公助に重点を置いた対応をすべきである ( )②共助に重点を置いた対応をすべきである ( )③自助に重点を置いた対応をすべきである ( )④公助、共助、自助のバランスが取れた対応をすべきである ( )⑤その他( ) ( )⑥わからない 問14. 防災訓練や避難訓練に参加し、経験したことのあるものにいくつでも(✓)をしてください。 (表) 訓練名 1.消火訓練 有無 ( )①有 ( )②無 内容 ( )㋐消火器使用方法 ( )㋑バケツリレー ( )㋒その他(   ) 訓練名 2.応急救護訓練 有無 ( )①有 ( )②無 内容 ( )㋐異物除去や止血方法 ( )㋑AED や心臓マッサージ ( )㋒その他(   ) 訓練名 3.救助訓練 有無 ( )①有 ( )②無 内容 ( )㋐負傷者の救出・搬送 ( )㋑その他(   ) 訓練名 4. 緊急連絡訓練 有無 ( )①有 ( )②無 内容 ( )㋐災害用伝言版、伝言ダイヤルなど体験 ( )㋑公衆電話の使用体験 ( )㋒その他(   ) 訓練名 5.地震体験 有無 ( )①有 ( )②無 内容 ( )㋐起震車に乗り疑似体験 ( )㋑その他(   ) 訓練名 6.煙体験 有無 ( )①有 ( )②無 内容 ( )㋐ 煙中ハウスの体験 ( )㋑その他(   ) 訓練名 7.備蓄品体験有無 ( )①有 ( )②無 内容 ( )㋐飲料水・食料品の備蓄について ( )㋑非常用持ち出し品について ( )㋒その他(   ) 訓練名 8.避難訓練 有無 ( )①有 ( )②無 内容 ( )㋐情報の伝達 ( )㋑指定された場所への避難・安否確認 ( )㋒その他(   ) 訓練名 9.その他 有無 ( )①有 ( )②無 内容 (   ) 問15.地域で大規模な災害が発生し、住民同士の助け合いが必要になった場合、何ができると思いますか。当てはまるものにいくつでも(✓)をしてください。 ( )①救助活動(例:倒壊した建物から、協力し合って人を助け出すなど) ( )②消火活動 (例:初期の火災が発生していた場合、水や砂や布、消火器などで消火) ( )③安否確認活動(例:隣近所の人が無事かどうか確認するなど)のケア(例:怪我をしているような人がいたら応急処置をしたり連絡などの協力) ( )⑤身体の不自由な方や高齢者のケア(例:自分で行動できない人への手助けや連絡などの協力) ( )⑥食料・備蓄品の提供(例:公的な配給が間に合わない時、自分の家の飲食品や日用品の提供) ( )⑦井戸水の提供 ( )⑧空いている安全な自宅スペースの提供 ( )⑨その他( ) ( )⑩何もできないと思う 問16. 聴覚障害者にお伺いします、聴者とのコミュニケーションについて、当てはまると思うものにいくつでも(✓)をしてください。 ( )①学校や職場や、地域の人たちに、自分が聞こえないことを発信している ( )②学校や職場や、地域の行事などに参加し、顔見知りを増やすようにしている ( )③聴者とのコミュニケーションは、積極的に取っている ( )④聴者とのコミュニケーションは、消極的になってしまう ( )⑤その他( ) 問17.防災に関して知りたいことや、ご意見などがございましたらご自由にご記入ください。 ご協力誠にありがとうございました。 謝 辞  本研究を進めるにあたり、お力添えをいただいた多くの方々に心よりお礼を申し上げます。  指導教員である長南浩人先生には、2年生になってから担当していただきましたが、遅々として進まずにいた研究のご指導だけに限らず、新型コロナウイルスの影響で、1人でいることの多い私の精神的なフォローも含めて、励まし導いて下さいましたことに厚くお礼申し上げます。  アンケート作成の重要さをご教示くださった大鹿先生、調査結果の分析への適切なアドバイスをいただいた脇中先生、アンケート調査の奥深さを感じることができました。加藤宏先生、河野先生、内藤先生には統計について教えていただき感謝申し上げます。  佐藤専攻長にはいつも温かいお声かけをいただき、感謝しております。  諸先生方を始め、事務室や図書館の方々にも大変お世話になりました。  また遠く離れた卒業生、同期生の皆様にはアンケートのご協力や、励ましの言葉をいただき、折れそうになる心を保つことができました。後輩の皆様にもアンケートのご協力をいただき感謝しております。  最後に、本調査に快く協力して下さいました方々、全国の皆様のご協力のお陰で貴重なデータをいただき、本研究を形にすることができましたことに改めて心より深く感謝申し上げます。  今後はこの二年間で学ばせていただきましたこと、研究で見いだせたことを社会に還元できるよう力を注いで参りたいと思います。 令和3年3月