統一英語点字(UEB)解説マニュアル翻訳事業 田中仁 筑波技術大学 障害者高等教育研究支援センター障害者支援研究部 講師 キーワード:UEB統一英語点字 成果の概要 統一英語点字 “Unified English Braille(UEB)”とは,英語点字体系を統一的に与えるものです。具体的には,記号の定義から見直され,これまでの点字表記の中で定義を満たさないものは廃止・変更されるなど,大幅な変更になる表記もあります。さらに,点訳の自動化のため点字・墨字の一対一対応向けにも設計されています。 視覚障害者の文字である点字はルイ・ブライユ(LouisBraille,1809--1852)によって,1825年に創案されました。 点字はブライユ以来日々使われることによって,新たなことにチャレンジする見えない人の絶え間ない営みと共に進化してきたものです。初期には楽譜と言葉の表現を意図して作られ,その後間もなく数式や化学式の表現が工夫され追加されました。 文化が多発的でありそれゆえ多様であるように,同様に変容する点字も,その進化の過程で分化と多様性を持つことは当然です。 例えば,米国における数式表現と日本における数式表現とはずいぶん違っています。UEBは,この分化し細片化した点字体系を統一し一元化しようとする一つの活動であると思っています。 IT技術の進歩は視覚障害者に多大な恩恵をもたらしています。特に,音声(テキスト)による墨字文章の読み書きの獲得は素晴らしいものです。 しかし,その中で我々は点字に対する敬意と尊敬とを忘れつつあるのではないでしょうか。 点字をさらに育み,IT技術の中にテキストとは別の形でその活用を進めて行くことが大切だと思っています。 UEBへの取り組みはまさにこの点字復権への取り組みであり,点字を通した IT技術のさらなる活用を意図した活動であると信じています。 本学からの資金を得て,UEBの制定委員会である“International Council on EnglishBraille(ICEB)”のホームページで公開されている『The Rules of UnifiedEnglish Braille』を全文翻訳し,それを公開しました。 この本は UEBの全てが解説されている規約書であり,古典的で非常に重要なものであると考えます。 ・平成 29年度,「教育研究等高度化推進事業」により,基本的な訳出。 ・平成 30年度,「障害者高等教育研究支援センター教育研究等推進経費事業」により訳出の完成及び製本原稿の作成。 ・結果として,総計 A4サイズ 350ページの大部な翻訳書となった。・平成 30年度,「高大連携事業」により,これを製本し,特別支援学校(60校)へ配布。 ・令和元年度,「学長のリーダーシップによる教育研究等高度化推進事業」により,これを増刷し,全国の点字出版所,図書館,点訳ボランティア団体等に配布。